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赤字国債によるバラまきの提言
「薔薇マークキャンペーン」批判



  赤字国債の日銀引き受けによる
         究極のバラまき政策
   ――「薔薇マークキャンペーン」
          (松尾匡代表)の提言

2020年4月27日

1.真っ先に掲げるべきは、安倍政権総辞職ではないのか

 「れいわ新選組」の理論的支柱となってきた松尾匡氏を中心とするグループ、「薔薇マークキャンペーン」がコロナ禍・経済危機に対して、いくつかの提言を発表し、国会議員や内閣に働きかけるなど活発な活動を展開している。しかし、その提言は、安倍政権の政策・対応に対する徹底したラジカルな批判になっているか、労働者・働く者に未来を指し示すものかどうか、それが問題である。

 3月1日の「緊縮政策が招いた人災・新型コロナウィルス感染拡大と生活防衛に向けて」薔薇マークキャンペーン事務局コメント〔以下、「コメント」〕は、①新型コロナ感染拡大は「緊縮政策が招いた人災」である、②安倍政権の全国一斉休校要請は「無謀」だ、③政府に「人びとの生活を守るための財政出動を求め」るの3点がポイントである。

 新型コロナ対応について言えば、感染拡大は緊縮政策によって「感染症検査の体制が極度に脆弱になっていた」からだというのは、全く一面的な批判であろう。「背景」にはそういう事情があるとしても、コロナウィルスの蔓延を単に過去の「緊縮政策」に帰せしめることは政府の責任を曖昧にするものである。

 安倍政権は、この間、森友・加計問題、「全世代型社会保障」の名によるバラまき政策、「桜を見る会」問題、検事任期延長の法改正などで、政権の私物化、権力維持の自己目的化姿勢をさらけ出し、労働者・働く者はもとより国民各層からも批判され、末期症状を呈していた。新型コロナウィルスの感染症が中国で発生してからも、安倍は習近平来日や東京オリンピック開催によって政権を延命させるために、入国規制を遅らせた上、感染者を少なく見せようとPCR検査を抑え、その結果、すべてが後手に回り、打つ手打つ手がことごとくその場しのぎの中途半端な対応だったが故に、ウイルスを全国に蔓延させ、今や医療崩壊を招いている。国内の感染者は増加の一途をたどり、死者もうなぎ登りの増加だ(国内の感染者は12,861人<前日比433人増>、死者345人<同17人増>―4月24日23:15時点。厚労省発表)。

 安倍政権は、無為無策、無知無能、無駄金使い〔布マスク配布に466億円!〕と無責任によって医療従事者を危険にさらし、国民の命を奪っているのだ。安倍政権は万死に値すると言わなければならない。当然、責任をとって即刻総辞職すべきである。

 総辞職したら、その後の政府はどうするのかと言うのか。国会内外の見識あり有能な人材によりコロナ危機管理のための臨時政府を組織すれば良いではないか〔もちろん、安倍内閣の閣僚経験者や業界と癒着している国会議員、この際国民の権利を制限し強権国家への道を切り開こうと企む策士などは最初から除外する〕。当面、コロナ危機脱出、医療崩壊阻止に全力を挙げ、ある程度事態が収束したら、選挙制度を改革し、全国比例代表制一本の選挙制度を確立、衆院を解散して総選挙を行う。臨時政府は、ここまでを自らの任務とし、速やかに“民意”を代表した政権に交代すれば良い。

 我々は、「コメント」に表れた薔薇マークキャンペーンの主張は、安倍政権の責任を曖昧にし、安倍政権に何らかの政策を期待することで「人びとの生活を守る」ことができるかの幻想を抱かせるものだと断じざるを得ない。

2.安倍政権と同じバラまき路線

 ③は、一カ月で3.1兆円の休業補償、消費税の5%への減税という内容であるが、財政出動については、3月22日に発表された「消費税・新型コロナショックへの緊急財政出動を求めます」薔薇マークキャンペーン提言〔以下、「提言」〕でより具体的に提起されているので、こちらを検討しよう。

 3・22提言は、「現在、非常に深刻なデフレ不況の危機にあります」として、「大規模な新規国債の日銀引き受けによる、人々への財政出動」を求め、約55兆円の財政支出を掲げている。まずは、「日本の全人口円1.26億人に一人当たり20万円の給付をひと月間」支給し(25.2兆円)、消費税停止(20兆円)を補い、コロナ対策及び社会基盤整備に約10兆円を投入する、その他医療・社会基盤の充実(財政支出を必要としないもの)、労働不足リスクへの対処として「オリンピック、万博、カジノの中止または延期」〔何故「中止または延期」など曖昧なことをいっているのか、当然中止すべきではないのか〕などが並べられている。

 見られるように、「提言」は、コロナ対策より景気対策に重点が移っている。項目の「1.情勢」は、昨年10月の消費税10%への引き上げによって「日本国内の景気は、さまざまな指標で軒並み大きな落ち込みを記録」した、「地域密着型の自営・零細企業が廃業の危機に晒され、低賃金や非正規雇用などをますます増やし、弱い立場の人に痛みがしわ寄せされている」、「新型コロナウィルスによる世界的な経済活動の抑制[が]加わり、手をこまねくならばさらに円高が加わり、この移行[=格差社会への移行]が急激なジャンプになる恐れが出てきて」いる、「すでに非正規雇用の雇い止め(クビ)や内定取り消しという異常事態が起きて」いると危機感を煽っている。

 我々もまた、経済危機の「痛み」を労働者・働く者に「しわ寄せ」し、その犠牲によって危機を乗り切ろうとする資本の勢力に断固反対する。「労働者の賃金と雇用を保障せよ」は我々の第一の要求である。

 しかし、労働者・働く者の生活を守るにはひと月「20万円」の給付で十分なのかという議論はさておき(*)、何故それを富裕層も含め一律に支給するのか、また何故その財源を赤字国債でまかなわなければならないのか。

(*)「提言」は、20万円は「平成30年度賃金構造基本統計調査」の正社員・正職員以外の賃金20万9400円に基づいており、「経済状況次第では、金額や期間の追加などの調整もあり得る」としている。当然のことながら、もし3カ月間支給することになれば、25.2兆円×3=75.6兆円必要となる。

 一律支給について松尾氏は、3月22日付「提言と財政支出額の根拠解説と補足」で、「おカネに十分に余裕のある富裕層に給付することには賛否がある」ことを認めつつ、「手続きや審査なく生活困窮者に速やかに配布するためには、一律配布が唯一の方法」だと言う。だが、会社員は源泉徴収されているのだから、高給取り社員の給与は直ちに把握できるし、富裕層の所得は確定申告などで確認できるのだから、こんな言い訳は成り立たない。富裕層まで含めた一律支給は、安倍と同じ究極のバラまき政策ではないか。

3.労働者・働く者の救済は大企業、富裕層の負担で

 赤字国債を持ち出す前に、我々は、労働者・働く者の救済は、大企業・富裕層の負担で行うことを要求する。何故なら、企業の利潤も富裕層の所得も、元はといえば労働者から搾り取った剰余価値だからである。

 日本の企業が毎年、「内部留保」という形で巨額の利潤をため込んできたことは周知の事実だ。財務省発表の法人企業統計では、2018年度の内部留保(利益剰余金)は7年連続で過去最大を更新し、金融業・保険業を除く全産業ベースで463兆1308億円(前年度比3.7%増)となった。これに金融・保険業を加えれば500兆円を超えるのであり(2017年度は、金融・保険業を含めた総額は507兆4454億円)、実に日本のGDP(国内総生産)の1年分に匹敵する利潤を企業はため込んでいるのだ。このごく一部を吐き出させるだけでも、労働者・働く者の生活を何カ月か持たせることができるではないか。

 さらに、日本の大企業や富裕層が税制上様々な形で優遇され、潤っていることに注目しなければならない。法人税の基本税率は1984年の43.3%から数次にわたって引き下げられ、2018年度には23.2%と1984年の税率の半分近くまで低下している〔それによる国庫の税収減を消費税が埋め合わせてきた〕。しかも各種の優遇措置により、この法定税率よりはるかに低い税しか納めていない。富岡幸雄氏は税引き前純利益を法人税等で割った「実効税負担率」を主要企業別に計算しているが、それによれば、持株会社ソフトバンクは、1624億2200万円の税引き前純利益をあげながら、納税額はわずか500万円、実効税負担率は0.003%である。その他、新日鉄(現・日本製鉄)が1.46%(税引き前純利益約1110億円に対し納税額は約16億円!)、本田技研工業1.23%、出光興産が2.46%など、日本の名だたる大企業は純益のほんのわずかしか納税していない(2017-18年の決算期、富岡氏著『消費税が国を滅ぼす』文春新書、110-4頁)。富岡氏は、すべての企業が法定税率どおりに納税すれば、年間9兆円弱の増収になると推定している(同、90頁)。

 また、勤労所得は累進制だが、金融所得は税率が20.315%と低く、しかも分離課税だから株式売却益や配当金、債券利子などで不労所得を得ている富裕層は高額所得者ほど税負担率が低い。例えば、所得が100億円になると、負担率はわずか15.9%であり、年間所得が1500~3000万円の層と変わらない。ちなみに、年収1億円超の富裕層は、2018年の確定申告では2万3673人(前年比580人増)に達する。大企業の税逃れを許さず、富裕層に有利な分離課税をやめて総合課税にすれば、たちまち10兆円以上の税収増になるのだ。

 しかし、松尾氏らは内部留保の取り崩しや法人税率の引き上げ、富裕層への課税の強化など一言も口にしない。彼らは何故、大資本や富裕層の金庫に手を触れようとしないのか。それは彼らが資本の勢力と決定的に対立することを恐れる臆病な日和見主義者であり、資本との協調による景気回復を望む階級協調主義者だからである。例えば、次の発言を見よ――「適切な経済成長があれば、誰かのイスを奪うことなく誰もが仕事を得て豊かになれるはずなので、格差や貧困の問題を解決しようとしたら、まずはデフレを脱して景気を良くすることを考えなければなりません」(『そろそろ左派は<経済>を語ろう』(共著、亜紀書房、2018年4月刊)②、21頁)。「適切な経済成長があれば・・・誰もが[つまりブルジョアも労働者も]豊かになれる」とはまさに労資共存共栄、階級協調の思想ではないか。

 赤字国債を持ち出す前にやるべきことはまだまだある。例えば、日本の軍事費だ。2020年度の防衛予算は前年度当初比1.1%増の5兆3133億円となり、6年連続で過去最高を更新した。次期戦闘機更新の関連経費は約280億円、宇宙への監視域拡大の費用が506億円、サイバー防衛関連が256億円など新規事業が目白押しだ。イージス・アショア関係では約130億円、米政府からの有償軍事援助(FMS)による調達経費は4713億円と過去3番目の大きさだ(最新鋭ステルス戦闘機6機793億円、F35A3機281億円が含まれる)。これら新規事業・購入を停止しただけで、5885億円が浮く。

 沖縄の辺野古基地建設も即刻中止し、事業費を浮かすべきだ。辺野古基地は、軟弱地盤が見つかり、その対策から政府想定の総工費は3500億円から2.6倍の9300億円に膨れ上がったが、これで済むはずがない〔沖縄県の独自試算では総事業費は2兆5550億円となる見通し〕。工期も埋め立てから合計で13年かかる見込みだ。こんな金食い虫の工事は即刻中止して、辺野古基地建設案そのものを見直すべきだろう。

 無駄な、少なくとも不要不急の工事と言えば、リニア新幹線建設もその一つだ。JR東海の「全額自己負担」を前提に国が認定した事業に対して、安倍政権は「世界危機を回避する」との名目で、2016年7月に総額20兆円超の経済対策を打ち出し、その一環としてリニア新幹線建設促進のため、財投債(国債)を発行して約3兆円調達、それを長期・固定の超低金利でJR東海に貸し出すことを決めた(葛西敬之JR東海名誉会長が安倍の“お友だち”の一人であることは言うまでもない)。南アルプスをぶち抜く総延長約25kmのトンネル工事など、自然破壊以外の何物でもなく、おまけにリニア新幹線は電力消費量が極めて大きく原子力発電を前提にしていることを想起すれば、この工事も即時中止させ、国費投入も撤回すべきであろう。

 さらに、国会議員の歳費だ。最近、自民党と立憲民主党は衆議院歳費〔何故、衆議院だけなのだ〕の一年間2割削減で合意したと報じられているが、こんなものは全くのごまかしにすぎない。一般の国会議員は、歳費を1552万8000円(以下、すべて年額)に加え、期末手当635万円を支給されている他、文書通信費1200万円、立法事務費780万円、JR乗車券と国内航空券441万6000円、秘書給与2100万円、政党交付金からの支給0~1000万円を受け取っている。合計6709万4000~7709万4000円になる(他に、都内一等地にある議員会館・宿舎の家賃優遇などと合わせれば、議員1人当たりの“コスト”は年額1億円超と言われている)。仮に歳費の2割を返上しても、310万円強減るだけで、総額6000万円以上受け取っていることには変わりない(年収の減少率は4.6%にすぎない)。今、国家議員の受け取っている額を7000万円として計算すると(参議院議員の歳費の方が衆議院のそれより少し多いが、それは無視する)議員定数は衆議院が465名、参議院が245名、合計710人に支給されている額は497億円になる。

 ビートたけしや橋下徹元大阪市長はせめて5割減とすべきだと発言しているが、5割減でも年収3500万円なのだから、多すぎることには変わりない。年収が何千万円もあって“国民と痛みを分かち合う”など、ちゃんちゃらおかしい。国会議員の歳費を日本人の平均年収441万円(2018年の国税庁の民間給与実態調査による)としたらいいではないか。通信費や事務費、交通費は実費支払いとすれば良い。そうすれば、金儲けのために、権力欲のために国会議員になろうというような不埒な連中、世襲議員を排除する一助ともなるだろう。もちろん、公選法違反で雲隠れしているような議員、「セクシーキャバクラ」通いや北方領土視察でごねまくった不良議員に支給するなどは問題外であり、彼らは即議員資格停止、議席剥奪処分とすべきだ。

 そんなことは無理だ、到底不可能だというのか。いや、そんなことはない。人類はそうした政府・議会を既に経験しているではないか。マルクスは、1871年3月にパリの労働者人民の蜂起によりパリ・コミューンの政府が成立したとき、「コミューンは、代議体ではなく、執行権であって同時に立法権を兼ねた、行動体」であり、「コミューン議員以下、公務は、労働者賃金において執行されなければならなかった。国家の高位顕官たちの既得利権と交際費とは、高位顕官たちそのものとともに姿を消した。公職は、中央政府の手先どもの私有財産足ることをやめた」(『フランスの内乱』岩波文庫、95頁)と報告し、高く評価した。今が“非常時”だ、“緊急事態”だというなら、今こそマルクスの提案を実行すべきだろう。

 それは、社会主義ではないか、という人がいれば、我々は言おう――いや、まだそれは社会主義ではない〔私有財産制は残っているのだから〕、だが労働者はさらに前進することを、社会主義に向かって進むことを恐れない、社会主義、即ち「共同的生産手段で労働し自分たちの多くの個人的労働力を自覚的に一つの社会的労働力として支出する自由な人々の連合体」(マルクス『資本論』第1巻)に向かって前進することこそが、この危機に瀕した国家と社会を変革し、労働者・働く者が本当に安心して豊かに暮らしていける唯一の道なのだ、と。社会主義を目指す労働者の団結した断固たる闘いこそが、いくらかでも徹底したラジカルな改革を可能にするのだ、と。

 松尾氏らは、資本主義の枠内で、大資本や富裕層の利益を損ねることなくあれこれの〔「反緊縮」の?〕「経済政策」を考え出そうとあくせくするだけであり、だからこそ、安易に赤字国債を発行すれば良いと言い出すのだ。これは、今まさに既成野党が言っていることであり、結局は安倍政権と同じ路線ではないのか。

4.赤字国債大量発行は破滅への道

 松尾氏らは、最初は消費税を5%に戻すと言っていたが、すぐ0%、消費税停止と言い出した。それは、彼らが消費税の10%への引き上げが現在の不況をもたらしたと考えるからだ。彼らは、不況は消費不足から生じると信じているから〔過少消費説だ〕、消費税引き上げが消費の冷え込みをもたらし、不況に導いたと考えるのだ。

 だが、日本経済が消費税の10%への引き上げ以前から、既に景気後退に向かいつつあったことは多くの指標から確認されており、消費税引き上げが不況をもたらしたわけではないことは明らかである。単純に考えても、消費税という形で国民から取り上げた分を財政支出の拡大という形で“還元”すれば、“総需要”は変わらず、少なくとも一定の期間の後には“景気中立的”になるだろう。

 それに、消費税をゼロにすれば、景気は回復するかどうかを考えてみよう。コロナ危機下で、三密回避の名の下に外出自粛と“蟄居生活”を強いられているときに、消費税がゼロになったからと言って、爆買いする国民がいるだろうか。はずもないことは明らかだ。何しろ、買い物に出る機会をなるべく減らせ、不要不急の外出は控えろと口やかましく言われているのだから。あるいは、消費税ゼロなら先行きもっと物価が下がるだろうと見越して、消費者は買い控えるかもしれない。また、消費税10%で原材料等を仕入れた生産者は、消費税ゼロになればコスト上昇分を価格に転嫁できず、経営が悪化するかもしれない。消費税ゼロにすれば、景気が回復する云々は、妄想以外ではない。

 さらに、赤字国債の大量発行提案に至っては論外と言うほかはない。松尾氏は「日銀が政府から国債を直接引き受けすることが望まれます」「国債を政府の子会社である日銀に買わせて塩漬けにしてしまうことが効果的でしょう」(3月22日付「提言と財政支出額の根拠解説と補足」)とおっしゃる。

 日銀の国債直接引き受けは、戦前、軍費調達のため軍国主義政府によって継続され、経済の解体とハイパーインフレをもたらした教訓から財政法5条によって禁じられている。しかし、松尾氏は財政法5条には「特別の事由がある場合」、国会の承認があれば認められるとしているのだから、問題ないと言う。安倍政権成立以来、「異次元の量的質的緩和」の名の下に日銀が国債を民間銀行から買い上げ、事実上の日銀引き受けが進んでいるとはいえ、この制限を取っ払って大規模に日銀引き受けを進めるとなれば、性格は違ってくるだろう。

 日銀が際限もなく国債を直接引き受けるということは、日銀券が政府紙幣化するということである。政府紙幣は、世界的に見ても経済の解体とインフレをもたらしてきたことはよく知られている。有名な例では、フランス革命後に国民議会が発行したアッシニア紙幣がある。これは、当初は土地を担保としていたが、不換紙幣に切り替えられ、戦費調達のために増発されてハイパーインフレをもたらした。その他、ワイマール共和国時代のドイツのインフレ(年率200億%以上)や現代では中南米諸国のスーパーインフレなど、枚挙にいとまがない(野口悠紀雄著『異次元緩和の終焉』日本経済新聞社、207-9頁)。

 松尾氏は、この毒薬を日本も服用するよう勧めるのだ。とんだ藪医者もいたものだ。松尾氏に問おう――もし中央銀行による国債引き受けに何の問題もないなら、どうして欧米の資本主義国はこの政策をこれまで採用してこなかったのか。松尾氏は、どのブルジョア国家も発見し得なかった“秘薬”を遂に発見した“超人”〔ノーベル経済学賞にふさわしい?〕だというのか。是非とも答えてほしいものだ。

 日銀は民間銀行からの買い上げを通じて、既に発行された国債1111兆円弱のうち477兆5497億円(43.0%)を保有しているが(2018年12月現在)、さらに日銀の国債引き受けが進めば、世界中の投資家は、国債償還は困難になり、日本の経済解体、インフレ高進が進むと見越して、国債購入をやめ、あるいは売却し、日本から撤退する投資家も出てくるだろう。国債のうち外国人(機関投資家や外国政府)が保有する分は134兆4000億円強(12.1%)になっているから、これは無視できない大きさである。彼らが日本国債を売却すれば、円売りが進んで円安になり、輸入品の価格上昇を契機にインフレが昂進する可能性が高まる。「日銀の『国債爆買い』は財政規律の崩壊にとどまらず、日銀への信頼を根底から覆すリスクを発生させた」(藤巻健史氏、プレジデントオンライン4月23日)のであり、日本経済はますます不安定になり、解体への道を突き進むだろう。

 ついでにいえば、日銀は4月27日の金融政策決定会合で、「国債の購入額は現在年80兆円としているめどを撤廃し、必要な量を際限なく変えるようにする方向で議論する」と報じられている(2020年4月23日付「日本経済新聞」電子版)。つまり、松尾氏の提案は安倍政権下の日銀によって今まさに採用されようとしているのだ。かくして、松尾氏は安倍政権の応援団、もしくはピエロでしかないことが明らかになる。

 労働者・働く者は、労働者の味方を装いながら、現在の危機的状況の根源が資本主義体制そのものにあることを曖昧にし、安倍政権に輪をかけたバラまき政策で矛盾が解消されるかの幻想を振りまき、労働大衆の労働と生活を破滅の道へと導く松尾氏や「れいわ新選組」にどんな期待も抱くことなく、隊列を拡大強化し、独自の闘いを進めていかなければならない。(K.S)

〔 〕内は筆者のコメント