新刊案内
林紘義著『第一次安倍政権の二大“前科”を問う――教育基本法と従軍慰安婦問題で教育・報道への政治介入』
時宜に即した出版
第一次安倍政権の二つの“前科”を告発
安倍第二次政権が発足し、「経済政策」がたまたま功を奏したこともあって、高い支持率――つかの間の――を誇っているかです。まさに「最初は処女のごとく」とやらで、その反動的、国家主義的な本性は参院選までは押し隠し、朝鮮人女性の従軍慰安婦問題への“持論”も差し当たりは封印すると言います。
しかし衣の下に鎧が見えるのたとえ通り、すでに憲法改悪の策動や、反動教育の新たな攻撃を着々と準備し、参院選後に備えています。参院選で圧勝し、両院で多数を占めたら、他のろくでもない諸党――そんな党は維新の会とかみんなの党とかいくらでも出てきていますが――を引き連れて労働者階級への悪辣で露骨な攻撃――政治的、経済的な――に打って出ようというのです。今こそ、安倍政権に対する断固たる労働者階級の反撃が準備されなくてはなりません。
そんな時、『第一次安倍政権の二つの“前科”を問う――教育基本法改悪と従軍慰安婦問題で教育・報道への政治介入』(林紘義著)が出版された意義はいくら強調してもしすぎることはありません。
これは第一次安倍政権時代(2006〜7年)、安倍の反動政治について論じられたものですが、その一歩一歩について、鋭く、深く、その本質をつく批判が展開されおり、まさに今、安倍と闘うための労働者の思想的、実際的な支柱の一つになることは確かです。
06年12月に成立した改悪教基法は、15年も続いた帝国主義戦争であったアジア・太平洋戦争を反省して、平和主義や民主主義を謳い、権力や「政治」の教育への「介入」を原則的に否定したものでしたが、安倍政権は、平和主義や民主主義を国家主義や愛国主義に置き換え、さらにもとの教基法にあった、「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」という文節を、「教育は不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」と修正したのです。
些細な修正に見えますが、しかしこの修正こそ安倍政権と自民党が教基法の改悪に際して、最も重要視した点の一つであって、まさにこれによって、彼らは権力や支配政党による教育への「政治介入」に広く道を開いたのです。
彼らはこの条文によって、共産党や日教組による「政治介入」――彼らは教育行政をずっと担ってきた自分たちの責任を棚上げして、それこそが戦後教育をくさらせ、教育現場の頽廃や荒廃を招いてきたとデマるのです――を排除し、教育の真の「中立性」を確保し、今後は天皇制国家主義や愛国主義によって教育を刷新し、立て直すことができる、と言いはやすのですが、何のことはない、1945年の敗戦までの天皇制軍国主義教育の再現を夢見る時代錯誤者にすぎません。
自民党の改悪教基法は、教育(行政)は「法律」に従って行われるべきだと言うのですが、実際には彼らが最近でっち上げた国旗・国歌法や改悪教基法のことを言っているだけで、憲法のことは無視するのですから、言っていることとやっていることが少しも一致しません。
実際、改悪教基法は多くのつまらない観念、余計で、有害でさえある観念をごたごたと詰め込んでおり、とうてい教基法の名に値しないことを、林氏は具体的に明らかにしています。
また第一次安倍政権の行った、もう一つの大きな悪事は、従軍慰安婦問題などと関連してマスコミに対して悪質な「政治介入」を繰り返し、それを正当化したことで、そこには安倍の反動的な本性とともに、陰険な権力主義的本質が露呈されていました。
そうした事実もまた徹底的に暴露、告発されており、安倍政権の根底にある政治の本性を確認する上で重要な意義を持っています。
第二次安倍政権に対する断固たる闘いが客観的に提起されているときに、まさに時宜に即した出版になっています。今こそ、第一次安倍政権を総括し、今後の闘いに生かして行ってほしいと思います。また労働者や若者の中で宣伝、紹介して広く浸透させて下さい。(「海つばめ」1194号から)
《全国社研社刊・1500円(+税)、送料210円》