現代資本主義の本質に迫る
林紘義氏の新著作『変容し解体する資本主義』


 林紘義氏の著作、『変容し解体する資本主義――管理通貨制度とは何か、そしてそれは歴史的に何を意味しているか』が出版されました。

 値段は三千円、四千円にしてもおかしくないほどの本ですが、できるだけ多くの労働者、青年の手にという著者の願いから、二千二百円に抑えられています。しかしA四版四百頁に字がぎっしりつまった、ある意味で大変な書物であり、読み通すだけでも容易ではありません。まして書かれている内容を実際に深く理解するには、読書会などでじっくりやる必要があるように思われます。

 その内容は基本的に、筆者が序文でも述べているように、現代資本主義にとって本質的な側面をなす“貨幣的”現象の徹底的な批判的分析であり、現代資本主義の根底的な理解にかかわっています。

 ブルジョアどもは、今では資本主義の変容を知っており、その修正を謳うばかりか、強調さえしています。「福祉国家」、「修正資本主義」は彼らの決まり文句でさえあります。ケインズは、資本主義が変容したことを最初に自覚したブルジョアの一人であり、この資本主義の変容の最も重要な環として、“貨幣”的現象を認め、金本位制に反対して“管理通貨制度”を擁護する論陣を張り続けました。

 今では、ケインズの理想は現実のものとなったかです。彼が望んだ通り、貨幣は“管理通貨”となり、「野蛮な金属」の呪縛から人類は解放されたのですから、経済は人間の「理性的な」統制、規制に従うことになり、かくして資本主義的矛盾は過去のものとなったはずです。

 しかし実際には、現代資本主義はありとあらゆる矛盾に苦しんでいます。ケインズが“管理通貨”によって期待した「完全雇用」は実現しておらず、財政膨張政策も不況をなくさなかったばかりか、慢性的なインフレ経済をもたらし(いわゆるスタグフレーション)、財政崩壊、バブル経済、企業の腐敗を一般的なものにしてしまいました。通貨は腐り、経済全体が腐朽し、頽廃したのです。

 林氏が論じるものこそ、まさにこうした現代資本主義にとって本質的なことなのです。本書の意義とか基本的な内容は、四面に全文掲載した序文に詳しいので、ここでは触れませんが、とにかくこれが自覚した労働者、青年の必読の書であることだけはいくら強調してもしすぎることはありません。労働者の中に広く持ち込み、新しい労働者党建設の一つの有力な手段として活用する必要があると確信します(本書は全国の主要な書店の他、全国社研社でも取り扱っています。郵送料三百円をそえてお申し込み下さい。三冊以上まとめての場合は郵送料は無料です)。

『海つばめ』第593号1996年8月11日