セミナー報告(その2)

 最初にチューターの林紘義氏から、「安倍の“憲法秩序”破壊策動――我々はいかに闘うか」という報告が、問題提起としてなされました。林氏は、A4の表裏に4点にわたってまとめた報告要旨に沿って、第一に憲法秩序の意味、第二にリベラルや共産党の“憲法観”、第三に日本国憲法の位置づけ、第四に働く者は安倍政権の憲法改悪とどう闘うか、について報告しました。

 簡単に紹介すると、第一については、法の支配、法治主義、或いは“民主主義”を歴史的、現実的に評価すること、封建主義から資本主義への歴史的意義、「政治的解放」と規定されるブルジョア的“解放”の意味を確認すべき。第二については、反動派の「国体論」にふれた後、リベラルや共産党などの「憲法は国や政府を“縛る”もの」という憲法論を取り上げ、九条の平和条項を見ても支配階級は勝手に解釈して軍事力を整備してきたのであり、憲法を守ればいいといった問題ではないと指摘。第三については、労働者、働く者は天皇制や私有財産性などを根底とする現行憲法をそのまま容認できない、天皇制条項と前文や第一四条などとの矛盾を具体的に暴露。「押しつけ憲法論」についても戦後の成立

 課程をたどりつつ(ここでは共産党は憲法9条は個別的自衛権は持たないとした吉田発言を批判し、以来一貫して国家には固有の自衛権が存在しているとブルジョア国家の自衛=武装を擁護してきたことも紹介された、しかもそれを自慢している)、占領軍によって「国体=天皇制」を温存してもらったことの恩義を忘れているとその矛盾を暴露した。第四では、安倍政権を“ファシズム志向”政権と特徴付けた後、その憲法改悪、安倍のファシズム志向の政治と闘うことと、現行憲法の本性、その限界を明らかにして闘うことは矛盾しない。そのような形で闘うことは、リベラルや共産党などの闘いのブルジョア性、プチブル性、裏切り可能性を明らかにし、彼等に手を縛られたり、制約されたりしないで闘い抜くためには必要不可欠なことだ。彼等が闘うというなら、「別個に進んで一緒に撃て」でいい。労働者、勤労者の闘いの自立性を損なうことは悔いを千歳に残すことになる、と強調しました。

 大きな議論となったのは、安倍とどう闘うかについてでした。会場から、天皇制を廃止し、第1章を平和条項にするなどした対案を対置し、自民党の改悪案と闘ったらどうか、方向としては直接民主主義を追求したい、との意見がだされた。これに対し、対案というが私的所有の条項はどうするのか、ドイツの経験を見ても直接民主主義を絶対化するのはどうか、対案を対置するというのではなく、安倍の策動の狙いや背景を暴露して闘うべき等々、会場から活発な意見が出されました。

 また、安倍政権を「ファシズム志向」と説明したが、どういう意味かという質問に対しては、現状がファシスト政権ということではないが、最近の安倍のやり口を見てみるとその行き着く先がファシスト政権というのは正当ではないか。ただ、本当に安倍政権がファシスト政権になるかどうかは、(“お坊ちゃん”政治家として甘い面もあるので)推移を見る必要があるという説明がなされました。

 他にも、九条の会との関係、社会主義と憲法、明治憲法と現憲法との関係(継続と断絶)、私法(商品取引)と公法(法秩序)についてなど、興味深い問題が提示され、真剣に議論されました。

 こうした議論の中で、労働者、働く者は憲法問題とどう向き合い、安倍の策動といかに闘っていくべきかが明らかになった、少なくともそのきっかけになったと思います。

 (働く者のセミナー実行委員会)

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