郵政民営化の中で
何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!
十月二十二日、JPUと全郵政はそれぞれ解散大会を行い、同日、新労組「JP労組」が結成された。全郵政から山口委員長、JPUから難波書記長が選出され、副委員長、執行委員はそれぞれ両組合から同数で選ばれた。当初、初代委員長に就任するのが確実視されていたJPU菰田委員長の名がどこにもなく意外感は否めないが、誰が役員になろうが、この「JP労組」の基本的性格は、JPUの解散大会の議案書を見ればわかるように、反動的な御用組合というしかないものであることは明らかである。そこで、この議案書について、まず見てみよう。
◆一、「JP労組の三つの視点」
JPUの解散大会・第六四回臨時全国大会の議案書は、第一号議案だけで、三二七頁にも及ぶ膨大なものであるが、そのほとんどが今までに発表されたものの繰り返しで、新しく付け加えられたものは少ないが、最も目に付くのが、その運動方針で「日本郵政グループ労働組合の三つの視点」として「改革者の視点」「事業人としての視点」「労働組合の視点」が新たに打ち出されたことである。
「改革者の視点」の項では、「政治改革・生活者中心の社会」「格差社会の是正」等を「労働組合の視点」から区別しているのであるが、これらは、本来労働組合の本質的な課題であり、それらを労働組合の視点から区別することは、後に見るように「労働組合の視点」で「労働組合の本来的任務」を見直すとして、更なる企業内組合的体質、労使協調主義を強めるための布石なのである。
更にこの項では、平和運動として、原水禁運動など従来関係を築いてきた平和団体とは一切手を切り、連合の運動に一本化することを宣言するだけでなく、全郵政が力を入れてきた右翼的な運動である「北方領土返還運動」をなんと平和運動の象徴的存在にまで祭り上げているのである。
これらに加えて「国の基本政策への対応」として「憲法問題」「安全保障問題」等も検討課題とされているのであるが、検討の結果、民主党右派的な憲法改悪支持が打ち出されるのは確実で、「改革者の視点」とは小泉改革と同様の改悪を単に変化することから改革と言いくるめるペテン的なものであることは明らかである。この項では直接には述べていないが、「事業人としての視点」と合わせて考えると、言外に「郵政民営化」自体を社会変革として位置づけているのも明白で、これまで不倶戴天の敵として、その改革をペテンとしてきた小泉改革の立場をいつの間にか自らの立場にしているのである。
「労働組合の視点」でも「郵政労働者の賃金の改善」について、「企業業績を反映させ、民営化に相応しいインセンティブの確立」を唱え、更なる差別選別体制の強化を推進することを強調している。特徴的なのは、労働組合活動の基本中の基本である組合員の労働条件や権利を守り向上させる為の闘争の組織化については一言も言及が無いことである。議案の言う「労働組合の役割の見直し」とは、闘争をその役割から排除することであり、したがって賃金や労働条件の改善、非正規労働者の地位改善等は全てお題目に過ぎない。ここでは「組合員とともに歩む労働運動」として、組合員との対話・コミュニケーション重視が打ち出され、「定期的な訪問活動を展開する」など、組合員との対話活動「こんにちは運動」を展開するとしている。しかし、ここで、「訪問活動」と呼ばれているのは、本部や地本の組合役員が職場を訪問して、現場組合とのコミュニケーションを図るという意味なのであるが、この議案の立場が、彼ら組合幹部の立場からのみ書かれていて、決して現場組合員の立場から書かれてはいない事をそのことは示している。したがって、コミュニケーションの重視と言っても、「職場集会」「学習会」「決起集会」という現場組合員相互のコミュニケーションと関係する言葉は議案とは無縁であって、彼らの行なう「訪問活動」の内実は、組合員の不満をチェックし、それが爆発しない為の懐柔や弾圧の為の調査と言う意味しか持たないであろう。
◆二、労働組合が持つ「事業人としての視点」とは
そして、議案が最も強調したいのが「事業人としての視点」である。
「日本郵政グループ各社は、これまでの国営事業から民間企業に移行し、日本国内ばかりか世界に認知される企業体質、経営品質などのCSR(企業の社会的責任)が求められます。労働組合がステークホルダーであると同時に、最も身近な存在としてガバナンス機能を発揮することは、事業と雇用を発展させるためにも不可欠です」と議案は「事業人としての視点」の項の冒頭に書いている。英語が多用されていて、非常に判りにくい文章であるが、要するに、民営化されたからといって、利益確保一辺倒になるのではなく、それと企業の社会的責任を民営郵政は両立すべきであり、労働組合はその為にチエック機能を発揮しなければならないと言うことを述べている。この理念を郵貯・簡保に関連させて具体的に展開したのが、今年九月に「JPU総合研究所」が発行した「『社会的企業』への道程―民営郵政の経営課題とサービスのあり方」という冊子である。このなかで、ここ数年、JPUが非常に重視してきた概念である「コーポレート・ガバナンス」の概念規定とその出所が示されている。この冊子によると、それは、「企業の不正行為の防止ならびに競争力・収益力の向上という二つの視点を総合的に捉え、長期的な企業価値の増大にむけた企業経営の仕組みを如何に構築するかという問題である」というのである。ここでは、「企業の不正行為の防止」が、「長期的に見た企業価値の増大」と言う全く打算的な目的から導き出されている。目先の利益に目を奪われて、「ミートホープ」や「赤福」のようになっては、元も子もないと言うわけである。しかし、この概念規定の中には、真の社会的責任感や倫理観と言ったものはいささかも感じられないのであり、全てを企業の利益から考えるという点では、むしろ偽装会社の社長たちと同様の立場に立っていると言わざるを得ないのである。それもそのはずで、先の概念規定の文章は、経団連の「わが国におけるコーポレート・ガバナンス制度のあり方について」というレポートからの引用なのである。この純然たるブルジョア団体の概念を自らの最重要な指導理念にしているのだから、JPUが、現実にそのチェック機能を発揮すべきであったケース、すなわち「集配拠点の再編」や「郵便収集回数の減」「ATMの撤去」等のこの間指摘されている郵便局のサービス低下についてJPUが全くそのチェック機能を発揮しなかったのも偶然ではない。
ところが、議案では具体的に何をやるかと言うことになると、「組合員自らが意識改革に努めると共に、事業人として成長することが重要です」として、郵便事業では「全社的に展開できる生産性向上運動の導入」が唱えられ、ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険では「金融関係セミナー」を労働組合が開催し、郵便局会社では「独自のカタログ販売など新たな業務や郵便・ゆうちょ・かんぽ各社からの委託業務など、職員に多くの資格、知識を求める事業運営となる」ことに対する労働組合によるフォローが述べられている。これらは、労働組合が企業の肩代わりをすることであり、組合員に対する一種のただ働きの強要である。コーポレート・ガバナンスとそのための企業に対する労働組合のチェック機能はどこかへ行ってしまい、民間企業として競争を勝ち抜くことと、その中で、組合員が職員として如何に差別選別体制の中で勝ち抜いていくかについての労働組合の役割についての言及があるだけである。打算的でブルジョア的なコーポレート・ガバナンスの理念さえ、お題目に過ぎない物にされているのである。
◆三、反マル生越年闘争を完全否定
更に、議案はこの項で、「生産性運動の積極的展開」として、「日本における生産性運動は、政・労・使の三者で展開され、日本経済を支えてきた基本理念として定着しています。日本郵政グループ各社に対しては、生産性向上における成果配分の基本理念として、生産性運動に基づく公正な三分配を行なうよう強く求めていきます」と全郵政の生産性向上運動に対する考え方を全面的に採用している。しかし、JPU・全逓の歴史を考える時、これは単にそれに留まらず、あの「反マル生越年闘争」の全面的否定を意味するだろう。四・二八被免職者の支援を打ち切り、組合員資格を剥奪したことが正しいとするだけでなく、あの闘争自体が誤りであり、当時郵政省が、全逓組合と全郵政組合との間に格差を設け、全郵政組合員を優遇したこと自体を「日本経済を支えてきた」生産性運動の一環であったと言っていることを意味する。そして同時に、新組合「JP労組」が「生産性運動」に反対する労働者に対し、郵政当局と一体となって敵対することをも示唆しているのである。
◆四、民営化後の職場はどうなっているか
さて、ここで議案からは少しはなれ、民営化後、職場はどうなっているかを見てみよう。
民営化に伴い、新たな三・六協定が締結されたが、十月十一月の二カ月で百四十四時間、一日最高四時間という年繁並の長時間労働を労働者に強いるもので、民営化への移行の混乱の中、実際に四時間超勤が発令されている職場も珍しくない。実際の年末始繁忙は更にえげつない労働条件が課せられるのは確実で、郵便事業会社では、正月三が日連続出勤や元旦の午前七時出勤も予想される。
年賀の予約活動では、昨年三十七億枚であった発行枚数が四十億枚に引き上げられ、それを受けて、ある局では昨年の一人当たりの目標が九千枚と約二〇%増しに引き上げられ、おまけに「これは目標ではなく、必達(目標)である」と言われている。そして、まず「本人、家族、親戚、友人」に購入・販売する年賀の枚数を提出することが強制され、毎日年賀の予約活動で訪問した件数を報告することが義務づけられ、予約販売枚数が個人ごとに掲示される。集配課長が「年賀を売らないものには給料は出さない」と公然と叫んでも物議をかもすことさえ起こらない。
今年のカモメール販売では、販売実績の最下位から一番目と二番目の班の班長を職員の前でつるし上げたことで有名になった兵庫県の宝塚郵便局では、今年の年賀予約販売に関しては、郵便事業会社集配課において、年賀販売予約活動に関して下位十番目までの職員を他の職員の前で成績が低いことについて謝罪させたという。
◆五、衝撃的な合併とその背景
以上のような民営化移行の職場の混乱と変化の中、十月五日には、日本郵政は、宅配部門の統合を核とする日本通運との業務提携を発表した。実質的な郵政による「ペリカン便」の吸収合併であり、新宅配便会社は郵政の子会社となる。東京新聞によると、ペリカン便の約五千人の労働者は全員出向・転籍となり、郵政でも出向・転籍が行われるとされている。来年十月の発足に向けて郵政職場でも人選がこれから始まるのは確実で、民営化による新制度である出向・転籍が早くも強烈な形で現れたと言える。
業界三位のペリカン便と四位のゆうパックの両者を合わせても、二〇%のシェアーであり、各々三〇%強の一位、二位のヤマト、佐川には追いつかないのであるが、日本郵政・西川社長は、この合併の記者会見の席上、業界h黷目指すと強気である。宅配便に限れば三位と四位の両者であるが、郵便事業会社と日通全体では、各々その取扱商品量は約一兆四千億円という巨人同士なのだが、両者には決定的な違いがある。それは、日通の資本金が七百一億円なのに対し、郵政においては持株会社である日本郵政だけでその資本金が三兆五千億円もあることである。しかし、周知のようにこの資本金は株式資本として、日本郵政・ゆうちょ銀行・かんぽ保険の三社については、民営化移行三年目からは公開され、市場の評価を受けねばならないのであり、どういう評価を受けるかがこれだけ巨大な資本金であるだけに各社にとって一層決定的に重要であることは想像に難くないであろう。
先のJPU総合研究所の冊子によると、日本郵政グループの場合、その株の公開は、新規公開株銘柄の上場となる。その際、重要となるのは、資本金だけでなく、それを含む純資産であるが、郵政全体でそれは約十五兆円もある。それに郵政を取り巻く条件を勘案して、このJPグループの株の時価総額を約三十兆円のトヨタには及ばぬものの、二位の三菱ファイナンシャル・グループ(約16兆円台)と並び、NTTドコモとみずほファイナンシャル・グループの各十兆円台をはるかに上回るのは確実という市場関係者の予想をこの冊子は紹介している。ただし、冊子は「もっともこうした株式市場の期待感は、民営化から株式市場までの間に日本郵政グループがどのように明確かつ魅力的なエクイテイ・ストーリを市場に発信できるのか、上場時点前後における株式市場の市況などによって大きな影響を受けることは踏まえておかなくてはならない」と言うことも付け加えている。
したがって、民営化後一週間も経たないこの衝撃的な合併劇もその三年後の株式市場の評価を見据えた一種のパフォーマンスとして考えれば十分納得がいくのである。
日通は、昨年まで、その宅配部門を最重要部門としてその経営方針に挙げていたのだが、それを今年の経営方針では挙げていない。それは昨年末に大量の百貨店小包の配送を取り付けたのだが、配達が追いつかず、生もの小包を腐らせるなど、信用失墜と損害賠償を被っていることに加え、日通本体で利益の減少が生じ、採算の低い宅配部門にこれ以上資金をつぎ込む余裕が無くなったからである。現在宅配便業界は、全体の取扱物数自体が伸び悩むなか中小資本の倒産も出始め、ヤマト、佐川による寡占化が一層進行しているところである。したがって、あまり利益率の高い業界とは言えず、それでも郵政がこれまで以上にこの業界に進出しようとするのは、本体の郵便の量が毎年激減しているからである。つまり、そこには将来展望が全く無いからであり、利益率が低くとも少しでも将来展望がある以上、宅配便業界に資本投下をせざるを得ないのである。そして、この日通の宅配便部門からの撤退に対し渡りに船とばかりに、すばやく吸収合併に動いたのである。
◆六、吹き荒れるコスト削減の嵐
西川がこの宅配便業界や国際物流への進出や新規業務(例えば引越し支援として、転居情報を元に電気やガスの住所変更代行や引越し業者の仲介、転居の挨拶状の印刷サービス)と共に、利益確保の為に最も重視しているのが、コスト削減であり、関連会社との取引の見直しである。
本誌「書架」欄でも取り上げられていたが、彼はその著書『挑戦―日本郵政が目指すもの』の中で、次のように述べている。
「私は銀行時代にも、調達コストの見直しを二度にわたって行なっています。住友銀行で一回、合併後も三井住友銀行で一回です」「もともと住友銀行は雑巾を絞りきったようなところだと言われていて、あらためてコストを見直す必要などないだろうと言われていました。それが、項目にして千三百か千五百ぐらいと、かなりの数が出てきた。経費に関して、年間百四十〜百五十億円ぐらい叩き出しました。あの住友銀行だって絞りきれていなかったのですから、郵政はかなり絞り甲斐があるはずです。また郵政は何と言っても規模が大きいので、コストを一%削減するだけでも、その金額は膨大です。そこで専門のコンサルタントに入ってもらい、全面的な見直しを始めました」「調達全体の実態をすべて正確に洗い出して、調達コストの単価を比較できるようにベンチマークを導入するという作業を進めています」
関連会社との関係見直しについては、郵政の関連会社二百十九社の関係見直しの結果、郵政福祉をはじめとする九十一社については、民営化後出資不要の裁定を下したこと、残り百二十八社についても更に検討するとして、その代表的なものに日逓をあげているのである。「関連会社で一番大きいのが日本郵便逓送という会社、いわゆる日逓グループですが、ここについては次回の検討対象になりました。このグループは、公社からの委託を受け、封書、はがき、ゆうパック等の郵便物を全国各地にトラック輸送している会社です。しかし出資関係が複雑で公社決算に連結されず、ガバナンスにも不透明なところがあります」と西川は述べている。
その後の報道によると、日本郵政は、日逓をはじめとする関連運送会社十社については、連結子会社化し、自前の運送経路の確保に動いたといわれている。幸い、そのほとんどがJPU組合員、したがって、JP労組組合員である日逓労働者の首は切られずに済んだようであるが、子会社化されるのは、関係のあった運送会社約百中の十社に過ぎず、残りの九十社との契約については見直されるということである。
したがって、今回の日通との提携で考えられるのは、郵便郵送体系の中に日通が大きく割り込んでくることである。いずれにしても、この関連輸送会社九十社の元で働く労働者がどうなるのかについては報道もされず、問題にもされないのであるが、悲惨なものであるのは先ず間違いないであろう(たとえそれが建前であっても)。「公社時の労働条件が守られる」とされるのは、郵政本体の正規労働者だけであり、関連会社の労働者はその限りではないのである。
更に、その本体においても、コスト削減に関連して、西川は現状は郵政は人員不足で人員削減などとんでもないといいながら、「もちろん、郵便事業のIT化を進めることになどにより、将来的には、今より少ない人員で、よりクオリティの高い業務を目指してはいます」といずれは本格的に人件費の削減にも取り組むことを隠していないのである。
◆七、新パートナー宣言の内実
以上述べてきたように、JPU菰田委員長が確約した「郵政公社時を下回らない労働条件」などどこにも無いのであり、菰田の確約が全くの出鱈目である事が日々明らかになっている。この著書で西川は、「二大労組が、全特などに比べて先取りする形で民営化に積極的になった」と述べているのであるが、言い換えれば、全特に比べ、二大労組は扱いやすい相手だと言うことである。実際、特定局長の定年を六十五歳から六十歳に引き下げる問題では、五年間の移行期間を設けるなど、特定局長らはごねたおして、多くの譲歩を西川から引き出しているが、我がJPU菰田執行部は、従順な飼い犬として、大幅な労働条件の引き下げに同意するだけでなく、労使一体となって労働者の闘いに敵対さえしている。
話を再び大会議案に戻すと、議案に載せられた新規約では「二重加盟の禁止」の条項が新たに付け加えられているが、これこそはその敵対の最たるものであろう。これは、これまでにも何度か実際にあった、正規労働者や非常勤労働者がJPUに加盟しながらもそれでは当局の強制配転攻撃や解雇攻撃を跳ね返すことが出来ず、地域ユニオンに加盟して闘う例を想定して、それらに敵対する為に設けられているのは明らかであり、これが議案で提案されている「新パートナー宣言」の内実なのである。
この「二重加盟の禁止」以外で規約で目に付く変化はその「目的」の項で一番目に「自由にして民主的な労働運動の推進」を掲げ、三番目の「組合員の労働条件の維持向上」より上位においていることである。これは明らかに全郵政に配慮してのことであるが、それにしても「自由にして民主的な労働運動の推進」すなわち「左右の全体主義の排除」=左翼活動家の排除をその目的の第一とするとは何と言う労働組合であろうか。
したがって、その制裁の項の内容は、二重加盟の禁止以外は基本的に従来と同じであるが、その制裁の第一の条件である「綱領や規約に違反した場合」の綱領や規約が全く違ったものになっているのであるから、形式的には同じでも、その内実は違ったものとなっている。つまり、職場の劣悪な労働条件を批判するだけで、民営化に異を唱えるだけで、それが綱領違反となる可能性があるのである。
実際、十月一日に「人事交流=強制配転に反対する近畿郵政労働者の会」が行った大阪中央郵便局前での民営化反対行動の際、テレビ局のインタビューに応えて、ある活動家が民営化反対を唱えたのを全郵政の役員が見てJPUの役員に文句を言ったことが、きっかけとなって、その活動家に対しJPU近畿地本から勧告処分が出されているのである。
◆八、労働者の闘いの火を消すことは出来ない
以上のように、民営化と組合統合によって、事態は労働者にとって、ますます悪化するばかりであるが、そうであればあるほど、本当の労働者の闘いも必然的に起こってこないわけにはいかない。
その兆候として特筆すべきは、このJPU第六十四回臨時全国大会の大会代議員選挙において、兵庫選挙区において近畿地本の書記長が落選したことである。
「人事交流=強制配転に反対する会」推薦の候補者が大量に立候補する兵庫選挙区では第五十六回全国大会でその反対派候補二名が当選し、地本役員が落選すると言う波乱があって以来、本部派と協会派を中心とする左派との間で反対派当選阻止の協定とも言うべきものが築かれてきたのであるが、今回それが崩れ、この地本書記長に対抗して候補が左派から擁立されたのである。きっかけは、この書記長が在籍専従期間が済んだのにもかかわらず、離職専従届けを出さずに、地本書記長を続けていることに対する批判等であるが、この地本書記長の落選という事態は、書記長個人に対する批判に留まらず、郵政民営化を当局と一体となって推し進め、全郵政との統合でますます御用組合化を深化させようとしているJPU菰田体制そのものへの兵庫の労働者の怒りの表出であることは明らかである。
また、本部提案に対する反対票が前回大会では僅か十票であったのであるが、今回の解散大会ではそれが倍増したことも注目に値するであろう。
◆九、最後に
十月一日を境に確かに職場は変わった。「真面目でおとなしく、文句を言わない」だけでは職場に残ることさえ危うい時代が到来したのだ。そういう人ほど出向・転籍のターゲットになりやすく、リストラの対象になりやすい時代が来たのである。そうであるならば、我々郵政労働者も労働者として、労働組合員として、革命的に変わらなければならない。職場で、集会で、闘いの声を挙げよう。大胆に、大胆に、大胆に!
『海つばめ』第1055号●2007年11月4日
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郵政現場からの報告(1)
明治以来百三十年もの長い間、国営企業として郵便・郵便貯金・簡易保険の異業種の三事業が、いわゆる三事業一体として行われてきた郵便局が、十月一日民営・分割されました。その結果、日本郵政(持ち株会社)の下に郵便事業会社(九万九千人)、郵便局会社(十一万九千九百人)、ゆうちょ銀行(一万千六百人)、かんぽ生命(五千四百人)合計で社員数二十四万人、総資産三百三十八兆円の日本郵政グループという超巨大な企業グループが誕生しました。その民営・分社化から一カ月が経ちました。今民営化された職場において、かつて経験したことのない変化の中で労働者はどのような状態に置かれ、何を考えているのか、筆者や仲間の職場での経験を何回かに分けて報告します。
◆S郵便局の民営・分社化
私の勤めるS郵便局は県内では五番目の規模の郵便局で、だいたい正規社員二百数十名・非正規社員二百数十名程度の大きさです。その元郵便局が郵便事業会社、郵便局会社、ゆうちょ銀行の三つの会社に分割される事になった。
十月一日の民営化に間に合わせようと三か月ほど前から局内の突貫工事が行われ始めた。当初は平常業務の妨げにならないような配慮がなされていたが、九月末の民営化の日時が迫ってくると工事の遅れを取り戻す為昼間でも工事が行われるようになる。郵便局の窓口、職場の天井裏から「ガガーン」「バターン」、ドリルや様々な工事の騒音が局舎内に鳴り響く、「やかまっしい」のである。窓口では局員が普段より大きな声で「〇〇さーん」と呼ぶことが日常の情景となっていった。そうこうするうちに狭い郵便局がりっぱに?三つの会社に仕切られてしまった。さらに十月一日にはドアにセキュリティの鍵が付き、それまで自由に行き来できたそれぞれの部屋に当然の事ながら所属する会社の社員以外立ち入れなくなった。その結果として仕事上支障をきたすようになる。その顕著な例として、三mほどの廊下に三つの会社のドアが面している箇所があるが、各々の会社員用IDカードがないと入れない。各々の会社に用事がある時は、お互いに自分の会社に戻って社内電話で要件を伝えるかドアを開けてもらうしかない。笑える例では、薄い壁越しに要件を伝えたり、FAXでドアの開閉を依頼する所もあり不便極まりない民営・分社化なのである。
ゆうちょ銀行では
◆十月一日に変わったこと
民営化初日は、特別なセレモニーもなく前の週の金曜日九月二十八日と変わらない朝礼が始まった。店長が本社からの訓辞を読み始めた。曰く「民営化を成功させお客様に満足いただけるサービスを提供しましょう」というような内容であった。そんな調子で淡々と朝礼が終わった。良いか悪いか分からないが、大きな変化の割にあっさりしたものだった。長い間使っていた名称が「S郵便局貯金課」から「ゆうちょ銀行S店」に変わっただけにしか私には感じられない。それでも少しは表面的に変化が見られる。朝礼の際、雛壇に並ぶ管理職の顔ぶれが二人増え店長と渉外部長ポストが新設され、その代わりいつも私の横に並ぶ二人の職員が配置替えで職場から去った。なんてことはない、結局のところ管理職の人数が増えただけじゃないか。それから呼称の変更もあったりして、民営化前までの課長代理が課長に、課長が部長に呼称だけ昇格したのである(筆者の友人の課長代理の人から「課長と呼ばないで、恥ずかしいから」と頼まれているが)。
何か釈然としないが、全体の人員はかわらず管理職だけが二人増えた形となり、呼称だけの管理職も含めると民営化前の二倍の四人に一人が管理職になってしまったことになる。これが民営化なのだろうか?
◆コンプライアンスと防犯が全てに優先
ゆうちょ銀行発足にあたり社員向けのメッセージは言う、「ゆうちょ銀行は、『信頼』・『変革』・『効率』・『専門性』の四つを経営理念に掲げ、スタートしました。(中略)中でもお客様から『信頼』を得る為には『コンプライアンスが全てに優先する』ことを改めて認識してほしい(以下略)」このようにコンプライアンス(いわゆる説明責任義務)の重要性を訴えているのである。さらに公社時には民間金融機関と比べて部内者犯罪が極めて多いと言われていた。そのため部内者犯罪を防ぐ目的から、内部統制を強化し防犯に努めることをことさら強調している。そしてコンプライアンスについてはマニュアル冊子の備え付けを義務づけているし、防犯についてはより一層厳しい対応が日々義務づけられているのである。
一日の防犯に関する義務化された作業手順を追ってみる。まず朝一番に窓口貯金端末機用のIDカードと現金格納機用IDカードを取り出すため自分専用ID番号と暗証番号がそれぞれに必要となる。それだけでは端末機が作動しないため、管理職二人が立ち会いで責任者カードを取り出し端末機を立ち上げる。つまり毎朝一台の端末機を立ち上げるのに三人が必要となり(三台の端末機があるから三台分)、それ以外にも顧客確認用パソコン等々にアクセスするたびに専用コードと暗証番号が必要となり、その都度専用帳簿に使用目的・時間を記載し、その上押印を要するのである。その他これと同様の作業手順が五〜六種類にわたってあり、一日に押印する回数が民営化前と比べ数倍増えてしまった。このような過剰なまでの防犯マニュアルが、「効率」の掛け声とは裏腹に「非効率」をまねくこととなっているのは皮肉なことである。職場ではこの現象を、民営化による「お役所化」と呼んでいる(笑)。
◆エリートになれなかった「ゆうちょ銀行員」
我々の職場のジョークで「ゆうちょ銀行員」はエリート、つまり“選ばれた職員”なんだというたわいもない話である。つまり、全国二万数千局のうち二百三十四局だけが「ゆうちょ銀行」に“選ばれた”?局(県内でも五局だけ)であり、日本一大きい銀行の銀行員になれるからまさに“エリート”なんだそうだ。事実民営化前にはゆうちょ銀行にならない局からゆうちょ銀行希望の職員が多数いることを知っていたし、相談を受けたこともあった。しかし民営化してから一カ月が過ぎようとしている今、私の職場でも「ゆうちょ銀行」の行員になれて積極的に良かったと言う人は誰もいないし、以前希望していた人に聞いても「行かなくて良かった」と言う人も結構多い。何故かというと、ゆうちょ銀行では行員への要求が過大なのだという話が伝わり始めている。
窓口の行員の例と渉外(外務)の例を上げてみよう。
まず窓口の行員の場合:行員はお客から苦情を受けたらこちらに非がなくても問責の対象になる。民営化直後のある日、オタク系の客が「貯金通帳にゆうちょ銀行の記念スタンプを押したい」と来店、行員は「まだありませんし、今のところ作る予定も聞いてません」と応えた、その事に誤りはない。ところがそのお客が苦情の電話を掛けた。すると本社から管理職に連絡が入り、早速その行員は管理職に呼び付けられ、「対応がわるい、スタンプは今準備中と言いなさい」と説教、それまでスタンプなど作る気配もなかったのに即日注文、その後本社にリスク管理の報告と称して延々と事情聴取。本人曰く、「被害者は私の方だ」。
渉外(外務)の場合:渉外の行員は普段、朝外回りに出て昼食を店で取り休憩して午後また出かけるという作業である。民営化後、朝礼・中礼・終礼のうち中礼が追加された。以前なら午前中外回りして帰局、昼食を食べた後のんびりと休憩して午後の外回りに備えるというのが普通であった。ところが今や昼帰店しようものなら中礼で午前中の成績を報告させられ、その日良かった人は問題ないが、たまたま悪い人は管理職から叱責される始末、おちおち昼食どころではなく、休憩もそこそこに出かける羽目になってしまった。あーあ、昼食も満足に落ち着いてとれない有様だ。だから昼食は外で食べようとなる。「こんなんなら、ゆうちょ銀行でない方が良かった」とボヤいてももう遅いのである。
こんな中、十月二十五日ゆうちょ銀行の目標が本社から各店に示された。この目標は公社時代と異なり、「収益目標」がメインで、店単独でどれだけの黒字を出すかを求められており、結果のみが評価される民間手法が前面に押し出されていて、内外の行員を問わずなかなか厳しい目標設定となっている。そんなこんなではや一カ月でメッキが剥げ落ちてしまった感のある“エリート”?ゆうちょ銀行員の苦闘は始まったばかりだ。
『海つばめ』第1055号●2007年11月4日
郵便局会社はどうなったか
郵政現場からの報告(2)
◆郵便局会社とは
旧日本郵政公社から、郵便貯金のゆうちょ銀行直営部門、簡易保険のかんぽ生命直営部門、郵便集配の運送配達部門が抜けて残った組織が郵便局会社である。本社、支社、現業部門で構成される。現業はいわゆる○○郵便局で、名称も公社からの「郵便局」をそのまま継続使用している。町の小さな郵便局(無集配特定局)では看板は変わったが公社時代そのままに「三事業」(代理店業としての制約やシステムの変更はある)を営んでいる。
大きく変わったのは旧普通局から郵便局会社に移行した郵便局である。当初の仕切りでは、「窓口会社」と称されていた通り普通局の窓口部門と貯金課・保険課(内外含む)を合わせた会社である。こうした郵便局では公社時代には貯金・保険業務を専門担当していたが、民営化以降郵便商品の販売目標が加わった。その額も半端ではなく、郵便・貯金・保険それぞれの目標額(ノルマ)が重く職員の肩に圧し掛かることとなった。
くしくも現在、「年賀ハガキ」販売の真最中であり、職場では毎日、「Aさん年賀△△枚、Bさん年賀××枚」と売り上げが読み上げられている。公社時には簡易保険の推進が保険料○○円、推進率○○%などと発表されていた事を思うと様変わりの感がする。
渉外担当(外務員)の成績も、郵便商品の販売に時間を割かれ「ゆうちょ」や「かんぽ」の販売は大きく落ち込んでいる。外務員曰く、「俺は保険屋から郵便屋になったから」。
◆“特定郵便局長会”郵便局会社
ここで一言触れておかなければならない事に、郵便局会社の指揮・命令系統がある。公社時代の支社からの郵便局への指示は、「普通局推進連絡会(普推連)」と「特定局推進連絡会(特推連)」の2つのルートで行われていた。この2組織はそれぞれ“独立”していて相互の連絡もほとんどなかった。「特推連」は10〜20の郵便局で部会を組織、10程度の部会をもって連絡会を構成していた。この「特推連」を牛耳っていたのが「特定郵便局長会」であり、相互の役員は“兼任”されていた。A連絡会会長はA特定局長会会長という風に。
これらに対抗して、生田郵政公社は公社改革の柱の一つとして、「特定局制度」の改革と特定局長の“特権”の排除を打ち出した。この当時の特定局長の多くは展望を失い打ちひしがれた感があり、会う人は皆元気がなかった。
ところが、西川日本郵政になると潮目が変わった。西川体制は「特定局制度」の温存(利用)に方針転換したのである。その一環として、郵便局会社の中間組織として「地域グループ・地区グループ」の編成を打ち出した。この地域グループは、「現在の特推連の連絡会(全国238)を基本に編成」すると言うものであり、旧普通局も地区グループ(旧特推連の部会)に組み入れたのである。「アドバイザー」と呼ばれる両グループの責任者も特推連の連絡会長や部会長がそのまま横すべりで就任している。
こうなると、“やっていられない”のは旧普通局の管理職や支社の諸兄である。ちなみに小見出しの“特定郵便局長会”郵便局会社は支社の幹部から頂いた一言である。また、旧普通局出身の郵便局長の何人もがこの年度末での退職を考えていると言う話も小耳にはさんだが、なるほどと思わせる状況にある事は間違いないだろう。
西川日本郵政の判断が、吉とでるか凶とでるかは今後の結果次第だが、ひとり嬉々としているのは生き返った「特定郵便局長会」である。彼らの心境をある連絡会役員の一言から引用させて頂く、「生田のヤロー、西川社長さん」。
◆ナイナイづくしの職場
民営化して40日以上経過するが、職場はナイナイづくし状態である。まず、皆さんウソだと思うかもしれないが必要な書類がない。郵便局ではお客さんとの金銭授受の際に交付する領収書などの書類を「重要式紙」と言って通番を付けて保管し持ち出しも厳重に管理されている。こうした書類が不足していて人数分ないのである。使用量が多かった訳ではなく最初からずっと不足しっ放しなのだ。ある局では、端末機分の領収書がなく集金の出来ない状態が何日も続いたと言う。今も、数種類の領収書は共用でしのいでいる。
次に、人がいない。今度、旧普通局へ一度足を運んでみて下さい。「郵便」の窓口が2つある。一つは郵便局会社の窓口、もう一つは郵便事業会社の窓口(ゆうゆう窓口を使用している所が多い)だ。民営化により業務が分割されたことによるが、たとえば不在郵便物・小包の受け取りは郵便事業会社の窓口である。
しかし、販売している切手などの商品は同じであり、郵便物の引き受けも同様である。お客さんはどちらの窓口も利用できるのである。まさしく分割ロスそのものである。正規・非正規職員が2会社に分割され、熟練者も不足して常時人手不足の状況である。つけは、「バカバカしい、アホなことをする」と思いつつ毎日苦労しながら業務をこなしている職員に押し付けられている。これは分割の結果、よりコストが掛かるようになった一例だがこうした事態は多くの部門で発生している。
人がいないをもう一つの側面から見てみる。そう人材がいないのである。「かんぽ」を例にとると良くわかる。公社時代からも徐々にそうした傾向があったが、優績者(保険販売の高実績者のこと)の民保への流失である。民営化により“先がない”と踏んだ彼らが民営化を機にどっと民保にくら替えしたのだ。保険営業を牽引してきた人材が欠けたことにより、「かんぽ」営業は停滞を招いている。
◆展望もない
公社時代から経営側はCSと並べてES(職員満足度)の向上を推進(中身はどうあれ言葉上は)してきたし今もしている。しかし、それとは裏腹にESは下がりっぱなしである。自局、他局で会う人に「どう?」と声をかける。返答は決まって「ダメだな、これは」とか「持たないな」の類いである。皆、現場労働者の直感でこのままでは「潰れる」と思っている。ゆうちょ銀行の報告にもあったが、民営化後一つの業務に手間が掛かるようになり、これに伴い超勤も増加している。経営側は「簡素な業務」の遂行を謳っているが、複雑怪奇な手続きが「非効率」を生んでいる。仕事に整合性がない。あれやこれやの重なりが職員のヤル気を削いでいる。今、郵便局職員の100人中99人(100人の可能性も大)は、宝クジでも当たったら早く局を辞めたいと思って仕事をしている。表向きは公社時代とさほど変わらない仕事をしている様に見える郵便局(会社)ではあるが、内部から“崩壊”の兆しが見え隠れしている。
『海つばめ』第1056号●2007年11月18日
面倒な手続きや超勤増える
郵政現場からの報告(3)
私が所属するのは「郵便事業株式会社」です。簡単に言えば、手紙や小包の区分・運送・配達までを扱う会社です。「民営化」というより「分社化」ということによって職場ではいろいろ混乱が生じています。この観点から私は「内務」の現状を報告します。
私の職場は郵政省時代から交代制で二〇〇四年からは苛酷な深夜勤も導入されています。民営化されたからといって作業内容が激変することもないので勤務時間を含め労働条件に(今のところ)変わりはありません。担務によっては民営化前とまったく同じ作業をしています。ただし電話に出る時は「○○郵便局です」から「日本郵便○○支店です」と名乗るようになりました。
◆民営化前の下準備
民営化実施の一年ほど前から「集配拠点の再編」ということが全国で行われました。以前ですと、例えばA市に本局と呼ばれるA郵便局があって周辺のB町C町には小さな集配特定局B、C局があるのが一般的でした。「分社化」されるので窓口と配達は別の会社になります。したがってこのB、C局の内務と外務を分離して、外務をA局の所属(郵便事業会社)に、内務を無集配特定局(郵便局会社)にしたのです(する必要があったのです)。このことにより、私がいるようなA局の内務(郵便事業会社)はB、C局の窓口以外の内務事務もすることになってしまいました。B、C局で配達する郵便物はA局で区分してB、C局へと運送便で運ぶのです。私はここで言うA局の社員ですから仕事量がかなり増えました。この「再編」は地方へ行くと悲惨の度合いはかなり深刻のようです。A局とC局との距離が山をいくつも越え数十キロにもおよび、片道一時間ともそれ以上かかるとも聞いています。観光シーズンで幹線道路が渋滞するときなどは郵便が遅延することも十分に考えられます。
◆代金引換の地獄
ここ数年パソコンが急激に普及して、郵便物はいわゆる「手紙」と呼ばれるものは減少し、ゆうパックなど「荷物」が増えてきています。オークションサイトも盛んで個人間の荷物のやりとりも増えました。そんな状況で「代金引換」の荷物が急増しました。この「代金引換」が民営分社化によって郵便事業会社にかなりの負担をかけています。公社時代までは、配達時に受け取った代金は「貯金課」によって差出人に送金の事務が行われていました。しかし分社化されたことにより「ゆうちょ銀行」はこの面倒な手続きを行わなくなりました。郵便事業会社が送金の手続きをしなくてはならなくなったのです。現在は旧総務課から郵便事業会社の所属になった社員が主に担当しています。私の支店では非組である「労務担当」もこの仕事をしています。旧総務課時代は土日休みが当たりまえだったのに今では曜日に関係なく出勤しています。民営化前では考えられなかったことです。昇進意識を持っていたであろう彼らが今、どのような気持ちで、この仕事をしているか聞いてみたい気もします。
◆増えた超勤
関連することですが、十月から「決済系システム」なるものがスタートしました。私たちが日常の業務において取り扱うすべての現金、例えば切手とか葉書の売り上げや代金引換や着払いといった収納金などを決済系システムで本社一括管理するというものです。外務員は各自携帯端末を持って出かけ、追跡情報とか販売などの入力を行います。夜間窓口でもすべて売り上げ情報などは入力されます。データはその日のうちに集計され、内務者が納められた現金と証拠書類の突合を行います。これが大変な作業になっていて、現金が合致しないと担当の夜勤者(二十二時終業)が午前三時ごろまで帰れない、ということも見受けられます。先日近隣局の人と話す機会があったので聞いてみたら、やはり夜遅くまで帰れない状態が続いているようです。慣れてくればスムーズに行くようになるのか、慣れても改善されないのか、後者だとすれば何らかの対応が必要ということになります。
◆二つの窓口
前号一〇五六号の報告2でも少し触れられていますが、普通局の郵便の窓口が切手などの販売や郵便物を引き受ける郵便局会社の窓口と、不在郵便物などの受け取り窓口とに分かれました。規模にもよりますが私の支店では常時千通ほどの不在郵便物を保管しています。ここ数年は「取りに来ていただくではなく再度お届けする」ということを強調していて再配達の依頼も増えましたが、昔の名残で窓口で受け取る人も多く、日に百通以上の窓口交付があります。ですから分割された「お受け取り窓口」も片手間でできる仕事ではありません。正規社員二名と非正規社員二名が交代制で対応している状況です。公社時代には口を開けば「経費節減」だったのがこの有様です。これも分社化による弊害です。
◆もうすぐ年末繁忙期
すでに年賀葉書が発売され、まもなくお歳暮のゆうパックも始まり、一年のうちで一番忙しい季節がやってきます。民営化されてまだ二カ月弱で迎える最繁忙期、会社側曰く「世間からも注目されているので失敗は許されない」状況下だそうです。終わってみないとわからないが、全国の職場から不満の声が多数聞こえてきそうな気がします。
『海つばめ』第1057号●2007年12月2日
新システムで負担増え
郵政現場からの報告(4)
◆公社から持ち越した矛盾
公社から民営会社に移行した現在ですが、私の職場は公社時に比べ大きく変わりました。
今、小泉改革の負の遺産として、労働の格差が問題視されていますが、集配現場もその例外ではありません。元々集配労働者の仕事は、普通郵便と書留郵便とを一緒に持ち出し配達していました。一人完結の仕事です。
ところがそこに受箱配達と対面配達とに分ける配達方法が導入されました。「新集配システム」です。ポストに投函するだけで済む普通郵便は非正規社員に、利用者と接する速達・書留・小包郵便は対面で営業機会が増えるということで、正規社員による配達となりました。
私の職場では、配達する区域ごとに班が作られており、一つの班は四区から五区の配達区に分かれています。その一区はおおよそ一人の労働者が八時間労働して配達し終えるようになっています。
その班のうち二区分を非正規社員の配達にし、残りの区を正規社員で配達となったのです(現在では三区に増えている)。正規社員は一区につき三人雇用し、一人五時間労働で一区を二人で配達しローテーションします。
いままで正規社員の定員は四区班で七名、五区班で九名でしたが、各班とも二名の定員減となりました。まさに郵便局版格差労働の始まりでした。
ちなみに現在はさらに進んで、正規社員は百五名、非正規社員は百二十五名で、半数以上が非正規社員です。
◆新集配システムの問題点
私がこの集配の職場に入った時、「通区(区に精通すること)は宝」と言われ、その班の班長は五区全てを通区しており、一人の職人でした。この人に聞けば大抵のことは分かりました。
しかし、新集配システム導入により、五区全て通区することは困難になりました。非正規社員担当区を正規社員が覚えることができないからです。
その上、非正規社員は、その労働条件の悪さにより入れ替わりが激しく、配達を覚えたかと思うとやめてしまうことが多くあります。現場では、「品質管理というがこのシステムの一体どこが品質管理なのだ」との声も上がりました。この結果、誤配達の可能性が高まるのですから、こういった声が出るのも当然です。通区できない正規社員と不慣れな非正規社員を絶えず生み出すこのシステムは、人材費削減のみで集配現場の将来を考えないシステムといえるでしょう。
もっとも、このシステムも行き詰まりを見せています。非正規社員がなかなか集まらないのです。実はこのシステムは他の近隣局にも導入の予定でした。しかし、非正規社員の雇用が困難のせいか今でも未実施です。
◆非正規社員の劣悪の労働条件
外務非正規社員の採用時の時給は八百五十円です。その後経験によって多少単価は上がりますが、総じて低賃金です。年齢は十代から六十代半ばまでと幅広く、女性は外務作業ということもあってか数名です。
五時間労働なので、社会保険の適用なしで雇用保険のみの労働となっています。こうした低賃金、低保障の下で、大雨の時や冬の寒さや夏の炎天下での配達は本当にたいへんです。
システム導入当初雇用した非正規社員の定着が悪く、雇用してもすぐにやめてしまったのもうなずけます。軽い気持ちで入ってきた人は三日と持ちません。一日でやめた人も何人かいました。また募集をかけてもなかなか人が集まらず、いつも現場は欠員状態です。そこで仕方なく当局は、なれてきた非正規社員や退職者を八時間雇用にして、区分全て担当させることで急場をしのいでいるのです。
◆決済システムと配達センター化
公社時の新集配システムへの変更とあわせて、民営化して大きく変わったのが、「決済システム」と「配達センター」です。
まず「決済システム」ですが、それまでは集配課の売上金は国庫金として翌日貯金課へ納められていました。それが民営化によって各事業会社に分割された結果、会社ごとの決済が必要となり、その日ごとの決済となりました。
そのため対面配達をする外務労働者に携帯端末を持たせて売上品ごとに入力し、決済させるようにしたのです。しかし、その操作が煩雑で、私はこの操作が大変で仕事がいやになり(特に年配者)退職した人を何人か知っています。
また、外務作業の終わったあとに決済入力をする内務担当者は、毎日残業です。このため、全国ではかなりの超過勤務代が必要なはずです。
一方、「配達センター」ですが、公社時は山間僻地に集配特定局(配達業務のある小規模局)があり、その局単位で局長が配達業務の管理をしていたのですが、分社化の結果、いままでの局長は郵便局会社の社員となり、郵便事業会社の配達業務には携われないようになりました。
そこで、地域ごとにある普通局が基点となり統括局としてその周辺にある特定局の配達業務を引き継ぎ(配達センター)として管理することとなりました。
これは大変なことで、統括局は配達センターの内務事務のほとんどをこなし、何十キロと離れた見ず知らずの地域の再配達コールを受けることとなり、土地勘がないもの同士の会話でトラブルの元になっています。また、配達センターの外務労働者は外務作業の他、センターの内務事務の一部を担わされることになり、連日の超過勤務はほぼ当たり前状態です。
最近、近隣局の外務労働者と話をしたのですが、「とにかくひどい」というので、何がひどいのだと聞くと、「何もかもJPSが悪い。金をかけるなと言っているが、毎日超過勤務で金(コスト)が掛かるばかりだ。皆辞めたがっている。職場のみんなの愛読書がドーモ(コンビニなどに置いてある転職情報誌)だもん。昼休みには休憩室で皆読んでいる」とのこと、どこの職場もいっしょです。
◆領収書がない、年賀状がない
今、郵便事業会社では西川社長の掛け声の下、「年賀状四十億枚販売キャンペーン」を実施中です。
予約期間が延びて九月から予約を受け付けていましたが、十一月も近づき、さあ販売の段になっても年賀状を売るための「領収書が足りない」のです。急遽市販のもので急場をしのぐ有様でした。
そして領収書が何とかなったと思った矢先、今度「無地の年賀状が足りない」と言い出しました。さんざん予約を取っておきながら物がないとは情けない。
「郵便局会社にはある」と言うので、「融通できないか」と聞くと、「会社が違うのでダメ」とのこと。結局、予約された方に入荷するまで待ってもらうことになりました。
このように、同じ局舎の中に年賀状がありながら売ることができないことや、同じようなサービスをする窓口が二つあることなど、郵便局会社と郵便事業会社の分割の無駄が様々のところで現われています。
◆新しい事業展開
日本郵政株式会社の西川社長は、自らの著書の中で郵便事業会社の新しい事業展開の基本姿勢として、「顧客サービスのレベルを上げながら、低コスト化を進める」としています。
そしてつい最近、郵便事業会社はここ数年間に、高齢者退職のあと補充をせずに新規採用を控える方法で、二万人の合理化計画を発表しました。
このことは、今後ますます非正規社員化が進むということです。労働組合もJP労組として完全に御用組合化し、このことで会社にとって何の障害もありません。現在の劣悪な職場状況がさらに悪化することだけは間違いありません。
郵便労働者に犠牲を転嫁することで、郵便事業会社は生き延びようとしているのです。
『海つばめ』第1058号●2007年12月16日
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恐竜化か、リリパット化か
郵政民営化のジレンマ
十月一日から、「郵政」が民営化された。民営化といっても、金融部門と郵便部門の民営化はそれぞれ違った性格と意義があって、一律に論じることはできないが、しかしこの両者は明治以来の百三十年間という長い間、国家経営のもと、ともに“手をたずさえて”発展してきたのである。
もちろん、両者をつなぐものは、「地域(国民)に密着している」ということで、それは日本資本主義が未発展であり、直接生産者が圧倒的に農民であった時代――日本が“農村社会”であった時代――に対応していたのである。
そしてこの“伝統”は資本主義が高度化し、“過疎化”や“高齢化”が進むなかで持ち越されてきたのであった。
しかし今や「郵政」は金融の面でも郵便の面でも“非効率”が言われ、その“改革”のために民営化が必要だと結論され、かくして小泉内閣によって郵政民営化が強行されたという次第である。
もちろん、国有事業の“民営化”といったことは明治の初期からしばしば実行されてきたことであって――当時は、官営事業の“払い下げ”と言われたが――、そのこと自体特別に驚くことでも珍しいことでもない。
それが今大きな社会問題になっているのは、小泉民営化が果たして“非効率”とか、行き詰まりとか、頽廃とかを本当に解決するようなものなのかが少しもはっきりしていないからであろう。
“官営企業”として行き詰まり、腐敗したといって、“民営化”されなければならないということにはならない。特殊法人にまつわる頽廃を言うなら、国有郵政のままでもいくらでも「改革」は可能であったろうし、また郵貯が時代遅れだというなら、それを簡単に廃止すれば済むことだ。
かつて郵便局に集まったカネは、特殊法人に流れ、特殊法人などの公企業や高級官僚たち、政治家たちの利権や寄生や腐敗の温床となり、それを支えてきた。
そしてそれが規制された後は、国債の引き受け手(国への安易な貸し手)として、ご都合主義に走る政府や自民党や財務省などにとって好都合な「なくてはならない存在」になり、国家の寄生化や頽廃や破綻を深化させてきたのである。
「ゆうちょ」「かんぽ」が集めているカネは三百兆円という巨額なものだが、そのうちの二百兆円が国債の購入に当てられている。国債残高の三分の一である。
もちろん、国債運用による儲けはたかがしれている、つまり「ゆうちょ」の利回りは民間銀行に比べれば問題にならないほどに低いのである。それなのに郵貯が何とかやってくることができたのは、国家の“手厚い”保護や優遇があったからである。
そして今、郵政は国という保育器からようやく出され、冷たい外気に触れ、自ら生きて行かなくてはならないというのである。
例えば、民営化されて、一気に五十兆円もの政府保証がなくなるカネが生まれたが(そして今後ますますこうした性格のカネは増えていく、というのは新規預金には定期も含めて政府保証がつかないから)、「ゆうちょ」はこれをどう扱っていいのか困惑するしかないのである。これまでのように安易な国債購入でやっていくことはできない、というのは、それでは預金者たちに高い利子を保障することができず、そして高い利子がなければ「ゆうちょ」にカネを預ける人はますます少なくなっていくだろうからである。
「ゆうちょ」はまずこの五十兆円を“効率的に”つまりリスクがあろうともっと大きな収益を上げるように“投資”するしかないが、そんなところがゴロゴロと転がっているわけではない、というのは、今はかつてと違い、“カネ余り”の世の中だからである。
「ゆうちょ」や「かんぽ」の会社は郵便事業の会社とは違って、三年後には株式上場され、その株は十年後にすべて売却され、“完全に”民営化されることがすでに確定されている。
これら金融二社は最初から相矛盾したことを要請あるいは期待されている、つまり一方では民間企業として生き延び、“成功”することを、他方では、新しい巨大な金融資本として、金融の世界を混乱させたり、禍のタネを持ち込んだりしないことを、である。
そもそもさらに規模拡大を追求すべきか――資本として、それ以外に生き延びていく道はない――、それとも金融会社の二倍もあるような巨大な図体を維持するどころか、その縮小を図るべきなのか。
これは全く相反した要求であるが、資本としての新生「ゆうちょ」や「かんぽ」にとって避けることのできないジレンマである。
「ゆうちょ」などにとって、この恐竜なみの図体を維持し、あるいはさらに巨大化することも容易ではないし、ましてうまく規模を縮小していくことも至難のわざである。いたずらに、実力不相応に巨大化すれば、恐竜と同様に破綻し、死滅するかもしれず、また規模縮小を図るといったことも資本の本性と矛盾する。
郵政事業とても同じであり、「全国的ネットワーク」を維持し、「サービスを後退させない」で、生き馬の目を抜くような資本同士の激しい競争裡場にあって、民間企業としてやって行ける保障は何もない。
こんなわけのわからない政策がまかり通ったのも、政府や自民党や官僚たちが自分たちの利害やメンツのために、その場かぎりの“民営化”を強行したからであって、小泉は大した「改革」をやったと自画自賛したが、実際には中途半端でいいかげんなものにすぎなかったのである。最初から形だけの民営化だったが、さらに途中で妥協や後退を積み重ねることによって、何ともいえない不細工で混乱したものになったのである。もちろんそのしわ寄せはすべて現場の労働者に転嫁される。
『海つばめ』第1053号【主張】●2007年10月7日
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西川善文著
『挑戦――日本郵政が目指すもの』
民営化に賭けるトップの本音
郵政民営化の意味を改めて考え、今後の闘いの参考になればと思って本書を読んでみた。著者はこの10月から、持ち株会社、日本郵政株式会社のトップとして、民営化後の日本郵政グループを率いると言われる人物である。
西川総裁は民営化の意義について次のように言う。郵政民営化は「単に金融界の話ではなく、日本の国の形を変える国家的な挑戦」だ。どういうことかと言うと「かつては、財政投融資という国の仕組みが成り立っていて、郵貯や簡保もその中に位置づけられていた。しかし、経済の活性化のために、政府が非効率なところに資金を流すのではなく、民間に直接資金を流すように仕組みを変えよう」ということだ。要するに、民間でできることは民間でやり、市場原理に貫かれた社会にしていこうということだ。
「郵政だけでなく、今後は政府系金融機関の統合・民営化も進みますし、公社、公団なども随分と整理されました。これはいわば、国の形を変える改革だと言ってよい。国の形自体が変わってきたと言うことですから、別に郵便局が悪いとか、郵政事業を民営化することがよくないという話ではない」という。何でも民営化し、リストラをやれば経済が活性化するというのだが、それが本当かどうかは別にして.仮に経済が活性化するとしても、労働者にとってはさらなる負担が増し、労使の対立は深まらざるを得ないだろう。
本書の前半は、西川が日本郵政株式会社の取締役になる前の話、すなわち、住友銀行時代のことが綴られている。これが結構面白い、というのは、61年に彼が大学を卒業し、住友銀行に就職し、調査部員として、様々な企業の経営危機を見てきた過程が、ちょうど日本資本主義の矛盾が深化していく過程と重なっているからである。
「安宅産業の経営危機問題」が起きる。安宅産業を「伊藤忠商事に吸収合併」してもらう一方で、「安宅の不良債権」は、今で言う「産業再生機構のような」ことをやって処理した。また、「イトマン事件」が発生すると、「住友物産がイトマンを吸収合併」し、「不良資産は評価を下げて会社から切り離し」て処理した。そして、住友銀行の頭取に就任した半年後、「北海道拓殖銀行、山一証券が相次いで破綻し、金融危機が表面化した。これは、私の生涯の中でも一番大きな事件と言っていいほど、衝撃的な事件でした」という。
そして何より「1996年には金融ビッグバン構想が発表され、金融自由化の時代を生き抜くための攻めの経営が求められた。その一方、不良債権処理という、過去の負の財産の精算が私たちの足下を脅かしていた」。結局、住友銀行は大和証券と提携したり、さくら銀行と合併することによって、その危機を「乗り切る」。その過程で「コストの見直し」を徹底的にやった。「雑巾を絞りきったようなところ」と言われていた住友銀行さえ、コストカットが「項目にして1300か1500ぐらいと、かなり出てきた。経費に換算して、年間140〜150億円ぐらい叩き出した」と自慢げに言っている。
郵政だともっと「絞り甲斐があるはず」だというのだから恐ろしいが、危機に陥った企業の再生と言っても、優良部分と不良部分に分け、一方はどこかと合併、他方は切り捨てて最後は公的資金で面倒をみてもらうと言うことに過ぎない。郵政も今後、優良部門の郵貯金、簡保はどこかと合併し、不良部門の郵便は再国有と言うことになるかも知れないが、それはともかくとして、10月1日から実際に何が始まるのか?
その一つとして「民営化後最初の大イベントとして、年賀状40億枚」というのがある。昨年などは33億枚と聞くから、この目標は、2割増しの売り上げ枚数だ。さらに、完売しても配達できるのか?という代物だ。今年1月、年賀遅配はマスコミも取り上げた。要は人員不足が解消されないからであるが、これまでも2週間近く休みなしに働いていた。今年は3週間も休みなしで働かなければならないのか。ケガ、入院、病気、それに退職前の辞職など、悲惨な状態は改まりそうにない。労働者の仕事への責任感にあぐらをかき、どれだけ搾取を強化すればすむと言うのか。
もう一つ西川社長は、「郵便局が持っている総額1兆4600億円の不動産資産の活用」も考えている。東京、名古屋、大阪の中央郵便局も「再開発」されるというが、地代という、不労所得の獲得に血眼になっているだけである。
最後に社長は「単なる金儲けではなく、社会に貢献する事業を通じて利益を上げていく」と言うが、実際に社会に貢献する事業を支えているのは労働者である。資本との闘いに団結して立ち上がる以外、労働者の劣悪な状況を変えていく道はない。
幻冬舎新書 『挑戦―日本郵政が目指すもの』
『海つばめ』第1053号【書架】●2007年10月7日
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