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労働者党理論誌

『プロメテウス』第63号
特集・斎藤幸平〝理論〟を撃つ

(2024年10月30日発行)



 昨年末に本誌62号を発行したのち、2024年は年二回発行を目指して取り組んできたが、63号発行は10月末にずれ込んでしまった。最初の原稿提出以来、刊行までにおよそ4ヵ月を要したのは、論文をより十全なものに仕上げようという執筆者と編集者、校正担当者などの努力の結果である。「海つばめ」への執筆や『資本論』学習会の開催、集会へのビラ配布など、日常活動に奮闘してきた中での刊行ということで、ご理解を賜りたい。

 東大大学院総合文化研究科准教授、博士(哲学)という大層な肩書きを持つ斎藤幸平氏は最近、著作を相次いで公刊し、テレビにも度々登場するなど、若手の“マルクス学者”としてもてはやされている。
 しかし、彼の著作を子細に検討すると、マルクスの見解を歪め、手前勝手に解釈して――改良の積み重ねによって未来社会が実現できるかに説く――自説を権威づけようとしていることがすぐ分かるのだが、おかしなことに、我々の知る限り、誰も彼の“〝理論〟を真正面から批判しようとしていない。
 新奇な〝学説〟に――資本主義の延命につながる説であるが故に安心して――すぐ飛びつくマスメディアの風潮はいつものことだ。しかし、マルクス主義を活動の根底に据え、活動を導く羅針盤ともしてきた労働者党と労働者活動家にとって、彼の〝理論〟は決して見逃せない。
 我々は既に、本誌60号(2021年10月発行)で斎藤著『人新生の「資本論」』におけるマルクスの未来社会論の歪曲を批判したが、昨年10月に『マルクス解体』が発行されたのを契機に斉藤〝理論〟の根本的な批判を展開することにした。その努力の結晶が本号の特集である。

 第一論文(田口氏執筆)は、斎藤の「『脱成長コミュニズム』論批判――マルクスの未来社会論を否定する『環境社会主義』」のタイトルの下に、斎藤の試みを詳細に批判している。

 第二論文、「労働価値説を改変して『マルクス解体』――資本主義の擁護に帰着した『脱成長』論」(渡辺氏執筆)は、田口論文とはまた少し違った視点から斎藤〝理論〟に挑んでいる。

 特集の二つの論文を読まれた方は、斎藤氏の貧弱で〝夢のない〟未来社会に比べて、『資本論』などで描出されたマルクスの未来社会が実に豊かで発展的な内容を持ち、労働者に希望と夢を与え、闘いの意欲を呼び覚ますものであることを知るだろう。そのことを感じとっていただければ、特集の意義はあったというものである。

 古川論文は、日本資本主義の〝希望の星〟(?)トヨタの徹底した労働者搾取・下請け企業収奪の本性を容赦なく暴き出した力作である。労使交渉での生々しいやり取りといい、豊田章男会長の開き直りの糾弾といい、臨場感がある。本論文をトヨタの、いやトヨタのみならず日本を支配する大企業、その傘下にある中小零細企業の労働者の手元に届けたいものだ。

 「神奈川労働者くらぶ」通信(月報)から転載させていただいた柄谷行人批判の小論は、小粒でもピリッとした山椒の味わいがある。

 坂井氏の研究論文は、未来社会における生産と分配をめぐる議論の一助となることを期待して掲載することになった。

 読者の皆さんからのご意見をお待ちしています。なお、現代ロシア論(下)は次号掲載予定です。(S)

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