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巻頭言



【2025.3.13】
トランプの英語公用化の大統領令
 ──排外主義をさらに助長

【2025.3.6】
プーチンに寄り添い停戦急ぐ
 ──醜悪なトランプの点数稼ぎ

【2025.2.13】
「ガザ所有」を公言するトランプ
 ──「米国第一」は領土拡張も辞さぬ帝国主義そのもの


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トランプの英語公用化の大統領令
排外主義をさらに助長
2025年3月13日


        
 トランプ大統領は1日、英語をアメリカの公用語とする大統領令に署名した。「共通の国家の価値観を強化し、団結した効率的な社会をつくることにつながる」と説明するように、それはトランプ政権が進める移民排斥などの排外主義をさらに助長するものだ。
    
        
英語公用化の大統領令

        
 米国では建国以来、250年近く公用語を定めていない。国民約3億4000万人の78%以上が家庭では英語のみを話すが、約6800万人がスペイン語や中国語、タガログ語など英語以外の言語を話す。それゆえ基本的な生活の保障や公民権の行使に、多言語サービスの提供が欠かせないものとなっている。
        
 これに対して、英語の公用語化を求める共和党が支援する団体があり、連邦や州の議会において英語公用語化法案のロビー活動に力を入れ、連邦では実現していないものの、32を超える州で英語公用語の立法化や宣言をしている。多言語サービスは政府の財政を圧迫し、国民の一体感を喪失させ国家の分裂につながるというる理由で、多言語サービスに反対し廃止を求めている(角知行『移民大国アメリカの言語サービス』明石書店参照)。
        
 今回の大統領令に、反動的な英語公用語化運動が反映されていることは明らかだろう。
        
英語公用化の意味するもの

        
 大統領令では、連邦政府の文書で英語以外の言語を使用することは認めるが、政府機関に非英語話者への言語支援を義務付けた2000年にクリントン大統領が署名した大統領令は撤回するとした。これによって、政府機関等の多言語サービスは後退するであろう。
        
 世界の約180ヵ国が公用語を持っており、国際連合やEUなどでも公用語は指定されている。民族国家形成運動の経済的基礎は、「商品生産の完全な勝利をかちとるためには、ブルジョアジーによる国内市場の征服が必要であり、同一の言語を話している諸地域を国内的に統一することが必要であり、そして、ひとつの言語の発達とその言語の文書における固定化をさまたげているあらゆる障害をとりのぞかなければならない」(レーニン『民族自決権について』大月書店)という点にあり、その共通化を求める公用語は必然的なものである。
        
 しかしトランプ政権の英語公用化は、すでに政府の公式サイトなどでスペイン語の使用を停止し、スペイン語の排除が進められていることに現れているように、トランプ政権が進める移民排斥などの排外主義政策の一環であり労働者に敵対するものだ。(S)

プーチンに寄り添い停戦急ぐ
醜悪なトランプの点数稼ぎ
2025年3月6日



 ロシアによる侵攻に抗してウクライナでの闘いは2月24日で3年が過ぎ、甚大な被害に会い戦力も消耗する中で、ロシアによる侵略戦争が続いている。そうした情勢の中で、バイデンに替わったトランプ米大統領のウクライナでの戦争を終結させようという動きが強まっている。
        
 トランプは大統領選において「(自分なら)24時間以内にロシアとウクライナの戦争を終わらせられる」と豪語していた。すでに大統領就任後1か月が過ぎ、はったりの効果も薄れ「停戦の早期実現」に向けて、主導権を発揮せんと画策している。プーチンの重大犯罪に目をつむり、侵略されているウクライナの頭越しにプーチンと協議し、融和的な態度でロシアによるウクライナ侵略の現状での戦争終結を実現させようというのだ。どちらも帝国主義者としてウクライナの犠牲で利益を得ようとしている。
        
 G7においては、ロシアがウクライナから全面撤退しない限り対ロ制裁を強めるとしてきた従来の路線を修正し、ロシアへの非難を最小限に控えているが、それはG7の結束のためだというのである。ロシアの脅威を目の当たりにする欧州であるが、超大国大統領であるトランプの自分本位の「頭越し」終結を容認した。そうした米国の姿勢は国連総会や国連安保理においても一貫して押し出され、「欧米の間の亀裂が鮮明となった」(2/26朝日)とか、「国際秩序に亀裂」(2/26日経)などと報じられた。
        
 トランプは戦争終結に向けて、「頭越し停戦」に反発するゼレンスキーに対して、「選挙のない独裁者だ」と〝口撃〟する一方、「これまでの支援で多くを支払ったことへの見返りをよこせ」と、ロシアによる攻撃で疲弊しているウクライナにえげつなく要求したが、来年の中間選挙に向けてMAGAのような支持者を納得させるためでもあり、衰退する米国を代表する大統領ならではの態度ではある。
        
 ウクライナ憲法108条で、「大統領は、新たに選ばれた大統領が就任するまで、その権限を行使する」と謳われ、ロシア侵攻後の23年11月にはウクライナ議会で、野党を含めた全ての政党が、戦時体制が解除されるまで選挙を延期することで合意する「覚書」が交わされている。まして激戦の現在、投票所の安全が確保できるのか、被占領地に暮らす有権者や国外に約690万人いるウクライナ難民、兵士たちの投票機会をどう確保するのか、ロシアの干渉を防げるかなど、大統領選が困難であることは簡単に想像がつく。
        
 トランプが「任期が切れているのに大統領に居座っている」とゼレンスキーを非難したのは、ロシアへの反撃をやめさせ停戦するのにじゃまだからだ。プーチンが同様に非難しており、トランプはプーチンに同調して米ロで「頭越し停戦」を実現できると考えるのだ。プーチンが交渉での主導権確保を狙いゼレンスキーを非難していることをトランプは承知していながら、自分の手柄として停戦させることで点数を稼ごうという狙いだ。
        
 ロシア経済はウクライナ戦争の膨大な軍事支出で過熱状態だと言われ、「深刻な冷え込みに転じる瀬戸際にある。大規模な景気刺激策や金利の急上昇、インフレの高止まり、そして西側諸国による経済制裁の影響が浸透しつつあるからだ。それだけに、戦争の早期終結を目指すトランプ米大統領の方針はロシアにとって助け船になりそうだ」(2・25ロイター)。戦争の早期終結は結構だが、トランプは一時的であろうが不安定であろうが停戦させればよいと、「戦争を始めたのはウクライナ」などと平気でデマを飛ばし、ロシアを免罪しようとしている。
        
 トランプはプーチンがゼレンスキーを大統領として正統だと認めなければ交渉は始まらないと考え、ゼレンスキーを「独裁者」と〝口撃〟し排除しようとしたが、ゼレンスキーは「もしウクライナに平和をもたらせるなら、必要なら私は辞職する用意がある」とかわした。
        
 トランプはその後「独裁者」発言について、「そんなことを言ったか」としらを切った。そんなトランプに対し、ゼレンスキー側近は、「米国が(ロシアとウクライナの)戦争を適切な形で終わらせたいと考えていることに疑いはない」と記者の質問に答え、「(米国に)一定の信頼感を示した」(2/25毎日)。トランプからのプーチンと同様のゼレンスキーへの攻撃ではあるが、米国に対しては強く批判することは避けており、ロシアへの反撃への米国からの支援を望むウクライナの困難さを示している。
        
 「見返り」について、鉱物資源の権益を譲渡するため、2月28日にゼレンスキーは米国大統領官邸でトランプと会談を行ったが、両者の意見が合わず決裂した。決裂については9日発行の『海つばめ』1494号にて論じているので参照していただきたい。
        
 プーチンによるウクライナへの軍事侵攻によってもたらされたウクライナでの戦闘は、米国の強力な介入によって転機を向かえている。労働者は戦争終結を望むが、それがどれほど恒久的か見定めるし、戦争責任の徹底的な追及も課題として、闘いを前進させていく。(岩)
        

「ガザ所有」を公言するトランプ
「米国第一」は領土拡張も辞さぬ帝国主義そのもの
2025年2月13日



 「米国がパレスチナ自治区ガザを長期的に保有し、再開発する」――このトランプ発言は世界に衝撃を与えた。トランプはパレスチナ人を域外に移住させ、ガザ地区から不発弾を撤去し、再開発を行うとも付け加えた。これは去る2月4日、イスラエルのネタニヤフ首相との共同記者会見で述べたものだ。
        
 この発言は唐突に出たのではなく、ネタニヤフとの協議の上のことであるが、トランプが以前から考えていた野心の発露でもあった。
        
 まず、ユダヤ人強国を目指すネタニヤフは、国内ではユダヤ国粋主義による国家化――ユダヤ愛国主義を掲げて、国内のアラブ人を差別し隔離し追放する――を進める一方、ガザ「入植」という名の占領政策を拡大しながら、さらに、レバノンやシリアにまで戦地を拡大して一部を領有さえしている。
        
 イスラエルの支配地域を確立し、さらに拡大するためには、パレスチナ人をガザから追い出す必要があった。しかし、ガザを完全に占領しイスラエル化するためには米国の後ろ盾を必要とし、さらに長期の軍事侵攻をせざるを得ない。だが、その帝国主義的な占領政策はアラブ諸国のみならず世界の労働者の猛反発を招くのは必至である。
        
 トランプの方も、先の大統領選で、この戦争を早期に終わらせると息巻いたこともあってか、早速、ガザを「購入する」という〝商売〟話を持ち出した。米国がガザを「長期的に保有し、再開発する」構想を打ち出せば、イスラエルの占領とは違って、少しはマイルドになると考えたのだろう。
        
 トランプは自分のガザ所有構想を実現させるために、米国から多額の支援を受けているヨルダンとエジプトに圧力をかけ、ガザの住民を恒久的に受け入れろと要求し出した。ヨルダンのアブドラ国王は「病気の子ども約2000人」を受け入れる意向を表明したが、それ以上の回答を出していない。エジプトもトランプ構想に反対を表明している。
        
 この構想がうまくいく保証はなく、挫折後にトランプがどう出るかは不明だが、黙って引っ込むことはないだろう。
        
 結局、トランプのガザ購入とは、戦争終結の名のもとにイスラエルに代わってガザを占領し、イスラエルと共同して米国の領地拡大と中東での覇権を強大化するためである。
        
 トランプの「米国第一」や「強い米国復活」は、衰退しつつある米国製造業の保護のみならず、ヒットラー並に帝国主義的な領土拡張を求めていることを暴露した。 (W)