野党連携、政治手腕を売り込むが
立憲代表選に野田元首相が立候補
2024年9月5日
自民党の新総裁選挙に並行して、立憲民主党(以下立憲)の代表選(4日告示、23 日投開票)に向けた動きが活発となっている。8月末現在、野田、枝野、泉の3名が立候補を決定、その他、江田、西村、馬淵、吉田らの名が上がっている(9月5日時点で、西村や馬淵は立候補を辞退している)。毎日新聞の全国世論調査(8月24、25日)によれば吉田を除く6名の支持率は、野田27%、枝野14%、泉7%、江田4%、西村2%、馬淵2%、6名の中には支持する人の名はない24%となっている。ここでは断トツの支持率である野田の政策を検討しよう。
民主党政権破綻の真剣な総括なし
野田は代表選出馬を決断したこと理由について「再び首相を目指す決意を固めた」、「国家を背おう覚悟と力量が問われる。刷新を実現するために経験が必要ではないかと思い始めた」と述べた。
野田は「国家を背負う力量」と政治「刷新を実現するための経験」の必要を訴える。党内からも、首相を務めた経験や野党連携への期待から、「新鮮味は乏しいが、元首相としての安定感がある。経験不足の自民党新総裁と差別化できる」(衆院若手議員)との期待の声も上がっているという(朝日、8・30)。
野田は、民主党菅内閣総辞職を受けて2011年9月、民主党と国民新党連立の野田内閣を発足させたが、民主党の公約にない消費増税を謳い、公約違反を追及され解散・総選挙に追い込まれ、その後の自民党安倍長期政権誕生のきっかけとなった。
野田は首相としての経験と実績を売り込んでいる。しかし、首相になった経験があるといっても、労働者・働く者の生活改善・向上としてその後に残るような功績はなにもない。
社会保障を充実すると公約に掲げはしたが、実際には現状を変えないバラ撒き政治に終始し、財政ひっ迫に陥り、公約違反の消費税増税に突き進んだのである。民主党政権は自民党の批判によって解体したというよりも、自ら行き詰まり崩壊した。野田は民主党政権崩壊の原因について何の根本的な総括もしていない。したがって、首相としての「経験」とか「実績」を吹聴するのは無責任である。
無力で反動的な「野党共闘」
野田を強く後押ししているのは小沢である。小沢は、共産党を含む野党共闘を重視した枝野を批判、自民党政権との対決というよりも問題解決の政策を提案して、国民の支持を広げる「提案型」路線を掲げ代表となった泉に反対し、野党共闘を軽視しているとして野田を押している。
政権を奪取するためには野党共闘を重視すべきだというのである。とはいっても、小沢の野党が塊(かたまり)になるというのは、共産党抜きの話である。
野田なら国・民や維新との話し合いができると言うのだ。野田自身も、「共産党とは対話できる環境は必要だが、一緒に政権を担うことは出来ない」とする一方、「本来国・民とは合流を目指さなければならない」と言い、政権を取るためには「中道から右のサイドの保守層の野党」との協力が必要というわけで維新との共闘を重視している。もともと「分厚い中間層の復活」を政策課題の中心とし、「国家経営の要諦」として日米を基軸、皇室を大切にすることを掲げる野田と維新とは政治的に近い関係にある。
実際に野田は、8月 23 日、維新の企画した「政治改革」をテーマとした勉強会に講師として出席している。そして「候補者をなるべく一本化した方が良い。与党を過半数割れに追い込む絶好のチャンス、問題意識は(維新と)共有できた」と語り、維新も「野田氏の感覚は我々と変わらない」とエールを送っている(朝日、8・24)
「現実政治」を掲げる国・民は野党として初めて、自公政権の当初予算案に賛成(22年度)した。国・民が要求してきた高騰化するガソリン価格負担を軽減する国家からの助成金が計上されているというのが賛成の理由であった。一方、維新は裏金づくり問題では、政治資金の使途の内容公表は 10 年後とするという提案を行い、自民党を助けている。その他、「第二自民党と呼ばれてもいい」(馬場代表)と公言したり、「米国と日本の核の共有」を唱えたりしたこともあった。
野党と言っても、「現実政治」を掲げ、「労資協調」で資本にすりよったりする政党(国・民)や、「第二自民党と呼ばれてもいい」と公言し、労働運動を敵視するような政党(維新)と一緒になって、仮に自民党にかわって新政権がつくれたとしても、こんな政権はたちまち破綻し、労働者、働く者に見捨てられるか、もっと反動的な政府にとって代わられるだけであろう。
資本に反対する闘いの構築を
野田の目指す自民党に代わる「政権構想」とは反動的なものであり、労働者・働く者はどんな期待や信頼も持ちえない。労働者は20数年前の、自ら公約違反を行い自滅した民主党政権の経験から真剣に学ぶべきである。
民主党への不信は今なお強く残っている。それは、裏金づくりで自民党が支持率を大きく後退させ、信用を失墜させているといっても、自民党の支持率29・9%に対して、立憲は5・2%、維新2・4%、共産2・6%、国・民0・8%、社民0・5%、れいわ新選組0・8%等々と野党は伸びず、支持政党なしが45・7%に膨らむ結果(8月、NHK調査)に示されている。自民党への怒りや不信が野党への支持に向かわず、支持政党なしが有権者の半分近くにまで膨れ上がっているのだ。
労働者・働く者にとって求められているのは、労働の搾取に基礎にたった資本の体制の下でのあれこれの改良を約束する無力なブルジョア的、小ブルジョア的改良政治ではなく、労働者・働く者に依拠し、資本の支配そのものに反対し、差別と搾取を克服していく社会を目指す階級的な政治を目指していく闘いである。(T)
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