労働の解放をめざす労働者党トップヘージ E-メール

労働の解放をめざす労働者党ホームページ
巻頭言



【2024.11.14】
米国の最高権力者に復帰
 ――民主党支持者が「鼻をつまんで」トランプに投票

【2024.11.2】
自公連立敗北の総選挙は勝利か
 ──「敗北」や「勝利」、いかに闘うか

【2024.10.17】
石破自公政権打倒を掲げて闘おう
 ──総選挙を労働者の闘いの発展の契機に

【2024.9.26】
裏金解明を放棄、軍同盟拡大を目指す
 ──自民党石破政権が発足

【2024.9.26】
原発維持は軍事強国化のため
 ──高価格の原発費用を押付ける自公政府

【2024.9.5】
野党連携、政治手腕を売り込むが
 ──立憲代表選に野田元首相が立候補

【2024.8.29】
‶確トラ〟から‶もしハリ〟へ
 ──流れが変わった米国大統領選?!

【2024.8.16】
低迷する支持率に耐えられず
 ──岸田の総裁選不出馬表明


 過去のメッセージへ

米国の最高権力者に復帰
民主党支持者が「鼻をつまんで」トランプに投票
2024年11月14日


        
 米国大統領選は、大接戦という事前のマスコミ予想を覆して、大差でトランプの勝利となった。トランプは、バイデン民主党政権の物価対策失敗や不法移民急増による治安悪化に照準を合わせて攻撃し、返す手で、AIやIT化の波に取り残されたと感じる製造業労働者らに向かって、「製造業を復活」させ「偉大な時代を取り戻す」と扇動し、かつては民主党支持層であった製造業労働者、生活困窮者、非白人層を引き寄せた。
    
        
◇米国の製造業の復活を賭けて

        
 米国経済は08年のリーマンショック以降、製造業や農業などが長期に低迷し、歴代の政権によって「政策金利」の引き下げや補助金バラ撒き策が行われたが、大した効果は出なかった。
        
 この「閉塞状況」を打ち破ろうと、16年の大統領選で「米国第一」を掲げたトランプが泡沫候補から一躍共和党の大統領候補になった。そして、「雇用を守る」ために輸入関税を引き上げる、「中国製造2025」を掲げて世界一の製造立国を目指す中国の台頭を阻止すると叫んで勝利した。製造業が中国に「負ける」なら、米国の安全保障が崩壊すると言うトランプは中国からの輸入を制限し、高度技術の輸出を阻止する中国封じ込めを開始した。
        
 このマネをしたのが、21年に大統領になったバイデンである。バイデンは中国からの輸入製品に高関税をかけ、半導体技術や設備などの輸出を阻止し、軍事的・経済的「対中包囲網」を作り強化してきた。安全保障が絡んだ「米中貿易戦争」の結果、中国からの輸入は減ったが、その代わりにメキシコ、カナダ、ASEAN諸国からの輸入が増え、また輸入関税引上げを続けた結果、国内の物価が上昇した。
        
 米国の支配階級が製造業の衰退を阻止しようとしているのは、単に労働者の雇用を守るという表向きの理由だけではないのは明らかであろう。しかし、今回の大統領選では、トランプの方がハリスより「製造業復活」を強く押し出し、「雇用を守る」という労働者向けのトーンを高く響かせた。それが選挙結果に大きな影響を与えることになった。
        
        
◇経済に強いと印象付けることに成功

        
 16年からのトランプ政権の4年間と、21年からのバイデン政権の4年間が比較された。とりわけ、物価や雇用などを始め、経済問題に注目が集まった。
        
 トランプは、中国製EV自動車に関税率50%をかけて自動車産業を守ると吹聴し(ほとんど輸入されていないのに)、また、他の輸入品についても関税率を引上げて「製造業を守る」と叫びたてた。さらにトランプは、バイデン政権下で「不法移民が増え、治安が悪化した」とも煽り、政権を奪取したら移民流入を阻止すると国家主義を振りかざして〝強い権力者〟を演出した。加えて、バイデン政権は物価高騰を阻止できなかったと批判し、トランプ在任中は物価高がなかった、自分なら物価高騰を阻止できたとも豪語した。トランプは〝経済に強い〟と印象付けることにも成功したのだ。
        
 他方、バイデンが降板し急遽後継ぎ候補となったハリスは、女性の保護や生活困窮者の救済を訴え、物価高騰はトランプ時代からのものだと反撃したが、トランプの攻勢に有効に反撃できなかった。
        
        
◇低所得者ほどトランプに投票

        
 選挙結果の分析が行われ、それらがロイターやAP通信などで報道されている。
        
 今回の選挙の課題を尋ねた調査によると、「経済・雇用」が39%と最多で、「移民」が20%、「人工妊娠中絶(規制)」は11%、「医療」が8%と続いた。「有権者の景況感の認識」では、「経済が不調だと答えた人の割合が、4年前の前回選挙時の14%から24%に大きく増えた」。これらの意識の変化を反映して、トランプ共和党は若者・中年層(18歳~44歳)、低所得者、非白人の支持を20年の大統領選より増やし、反対にハリス民主党は減らしている。
        
 例えば、「世帯所得別に投票行動を前回と今回の大統領選で比較」した分析によると、民主党が獲得した票は「世帯年収10万ドル未満の全ての層」で減少している。しかも、「最も減少幅が大きかったのは2万5000ドル未満の層で、56%から50%に減少し、所得水準が低いほど民主党の得票率が低下している」。
        
 この様に、バイデン政権下で経済が悪化したと感じた有権者が多く、民主党支持が多かった若者・中年層や黒人層から多くの票がトランプに流れた。貧困世帯層にとって、食料品や家賃が2割~5割と高騰し、さらに保育料が他のOECD諸国より高く、貧困層では保育料が可処分所得の3割、4割を占め(資料はStatistaより)、生活は困窮している。こうした少なからずの人々は「現状を何とかして欲しい」と「鼻をつまんで」(米国AEIの報告)トランプに投票したし、民主党は共和党と大差ない政党であると評価して目の前の僅かの光を求めて、民主党から共和党支持に鞍替えしたのである。
        
        
◇資本主義が諸悪の原因だ

        
 トランプは「米国第一」を叫ぶ国家主義者であり、女性差別を温存する人物であり、また「黒人は綿花労働に戻れ」と黒人蔑視を扇動する右翼勢力や保守的宗教勢力と結びついている。だが、選挙戦になると本性を隠し、ポピュリスト(大衆迎合者)よろしく労働者や貧困者の生活向上を公約に掲げ、経済政策を優先させると息巻いた。中国製品に限らず全ての輸入品の関税率を引上げることで「製造業を保護する」、「ドル安政策」で輸出を増やす、「法人税引下げ」で国内経済を活性化させると。そして、それらが労働者の雇用を守り所得を増やすことに繋がると豪語して、低所得労働者層の票をかすめ取った。
        
 「ドル安」や「関税率引上げ」が進めば国内物価の上昇に繋がり、民主党の物価高騰を非難したことと矛盾する。しかし、トランプにとって矛盾した言動などはお構いなしである。米国の〝強い権力者〟を演出し、また労働者を守るのは自分だと売り込んだ。
        
 トランプの言動に迷わされ、またトランプに「鼻をつまんで」投票したのは、米国の産別労働組合などが経済主義・組合主義に浸かっていることとも関係していた。なぜなら、米国内で発生している貧困の増大(22年の「貧困率」=総人口に対する「貧困ライン」を下回る人々の割合は18%。OECD加盟国38カ国の中ではコスタリカの20%に次いで2番目の高さ――統計サイトStatistaより)や、所得格差の拡大(23年度第4四半期において所得階層の上位10%が国の富の66・9%を保有、下位50%の世帯が保有する富はわずか2・5%――Statistaより)が米国資本主義そのものに起因していることを認識せず、資本主義と闘う姿勢が皆無であったからである。さらには、資本主義を止揚する労働者階級の闘いが未成熟であることの現れでもあった。 (W)
        

自公連立敗北の総選挙は勝利か
「敗北」や「勝利」、いかに闘うか
2024年11月2日


        
 10月27日に行われた総選挙は、自公が219議席と過半数を割り込み、野党の勝利に終わった。野党の勝利と言っても、維新や共産党は議席も得票数も減らした。首班指名の国会開催は11月11日であり、自民は非公認当選者を取り込こみ、躍進した国・民に「部分連合」を提案している。自民党内でくすぶる石破首相に対する退陣要求が顕在化し、石破退陣の動きが新たな政界再編に繋がらないとも限らない。敗北した公明、維新も代表交代の動きがある。労働者はブルジョアマスコミやネット上で拡散される膨大な情報に踊らされることなく、階級的立場に立脚し、労働の解放をめざす闘いを貫くだけである。
    
        
1、自公連立政権への労働者大衆の怒り

        
 今回の総選挙の最大の争点は、自民党において綿々と繰り返されてきた政治資金不正疑惑であり、自民党一強体制に安住し裏金隠しを当たり前と考える派閥に身を置く金権腐敗政治である。労働者大衆を見下し舐め切った自民党は、裏金問題も政治改革、派閥問題も小手先の改革や政治資金報告書の訂正で乗り切れると高をくくったが、労働者や国民大衆の反発と怒りは収まることが無かった。労働者大衆から収奪した税金から政党に交付される政党交付金(自民党は156億円!)を原資に政党から議員に支給される政策活動費を、自民党や維新などの政治家は飲み食いなど私的にも流用し、観光気分で‶海外視察〟する‶エッフェル姉さん〟など、‶おバカな〟議員がなんと多いことか!
        
 日々疎外された労働において社会を支え、維持している労働者や困窮者が、情け容赦なく上がり続ける物価や生活費の高騰で苦しい生活を強いられている。その一方、裏金作りに励みながらろくに政治活動もしない議員にも、議員報酬(年収2100万以上)や調査費・立法事務費(年合計1980万)他にも秘書の給与や交通費の支給などで6千万を超える税金(労働者が生み出した剰余価値こそ源泉だ)が、税金泥棒たちに支払われている。
        
 このような不条理に対する労働者大衆の怒りが、自民党岸田政権を退陣に追い込み、自民党総裁選後の国会審議から逃げた、石破首相が仕掛けた解散総選挙に対して、至極当然の返答をしたことに他ならない。
        
2、‶勝利〟した立民、国・民の「穏健保守路線」と敗北した維新

        
 今回の選挙で勝利したのは、立民、国・民であることは間違いない。しかし投票率は戦後三番目に低い53・85%である。選挙を巡ってざわつくような盛り上がりはなく、政権交代を前にした緊張感は全く感じられなかった。選挙結果が明らかになってから開かれた東証株式市場の日経平均は691円の大幅高で引けした。ブルジョア的な連中にも裏金や政治資金不正、派閥政治の旧態依然で‶ガバナンス〟も‶コンプライアンス〟にも劣る自民党の敗北は〝歓迎され〟、驚くことではなかった。
        
 勝者が、立民や資本と一体となって大企業の職場支配を支える連合の支援政党である国・民であるとすればなおさらである。議席数では立民が国・民を遥かに上回っている(立民148、国・民28)が、政党支持を示す比例区の得票率は、立民21・20%、国・民11・32%で前回と比較すると立民は1・02%増加、国・民は6・81%増加で、国・民の得票率は実に2・5倍伸びている。
        
 立民が掲げた「政権交代こそ最大の政治改革」は、裏金問題そして終盤戦で暴露された「自民の非公認候補にも2千万」で怒りをさらに深めた有権者が、「穏健保守路線」で自民党政治の受け皿を掲げる立民や国・民に投票した。しかし比例区の伸びが横ばいであるように、立民に対する大衆の支持の熱量は低い。自民党を支持してきた小ブルジョアや若者が、自民党に対する怒りを小選挙区では立民や国・民の候補者に投票した消極的なものでしかない。
        
 野田が立民代表選前に記者団の取材に対して、「自民党を過半数割れに追い込むために、自民党に失望した自民支持層の心をつかむ」(8月29日東京)と言っていた答えと、同じ選挙結果が出たのであるが、次の選挙で立民や国・民に失望して簡単に、自民やほかの保守政党に変わることは容易に考えられる。立民の比例区得票率が横ばいだったことは、「敵失」頼み選挙の限界を明らかにしたのではないだろうか?
        
 31日、自民と国・民は、公明を含めて三党で1.補正予算、2.税制改正、3.新年度予算案の三項目について連携することを確認し、10日に玉木と石破の党首会談を開くことを決定した。「自公国が『部分連合』を事実上組むことになった」と11月1日付朝日新聞は報道した。国・民の政策は財源を考慮しないバラ撒き政策である。政府試算では国・民の「年収の壁」(基礎控除)引上げを実施した場合、7・6兆円の税収減になると発表された(10月30日共同)。国・民ばかりか全ての政党が、バラ撒きを競い合う無責任なポピュリズム政治を競い合い、待ち受ける財政破綻や爆発的インフレには無関心である。
        
 発祥の地・大阪選挙区で決戦に臨んだ公明と維新の対決は、維新の全勝に終わった。しかし維新は、全国政党化を目論んだが、馬場の「第二自民発言」があったように、万博がらみで岸田政権の補正予算に初めて賛成した。政治資金規正法案では自民に‶騙された〟と言い訳しつつ、衆院で賛成したくせに参院であわてて覆した。これらによって維新は、自民党の補完勢力であることを自ら暴露し、有権者の離反を招き、大阪での全勝がありながら議席を44から6議席減らした。
        
3、比例区でもれいわを下回り敗北した共産党

        
 維新、自公と共に敗北者である共産党は、維新や自公以上に敗北にショックを受けているだろう。彼らは、自公連立政権が「歴史的大敗を喫しました」、それに決定的役割を果たしたのが「しんぶん赤旗」であり、「日本共産党は、自公政権を追い詰めるうえで大きな貢献をすることができたと確信しています」(10月28日日本共産党中央委員会常任幹部会)と、党員や支持者に「敗北」をごまかし、負け惜しみの評価を行った。
        
 しかし彼らも認めるように議席は10から8議席に後退し、比例区の得票は336万票(得票率は6・16%)と22年参院選と比較(得票数361万票、率6・82%)して、「党伸長の絶好の好機」にもかかわらず、少なくない後退をした。21年に行われた衆院選では、得票数416万票、率7.25%を獲得していた。れいわは9議席、得票数380万票(21年221万票)、率では6・98%(同3・86%)と、「党伸長の絶好の好機」を活かし、いずれも共産党を上回った。
        
 共産党の選挙公約は「腐敗政治を根本から正し、政治に信頼を取り戻す」、「大企業大金持ち優遇から暮らし優先」、「日米軍事同盟絶対から外交で平和」、「気候危機から人類を守る」、「ジェンダー平等のムーブメント」の‶5つのチェンジ〟を掲げて闘い、「第29回党大会以来の理論的開拓の到達点にたち、日本共産党のめざす未来社会――社会主義・共産主義社会が、『人間の自由』が全面的に花開く社会であることをおおいに訴えてたたかう、初めての選挙戦」で「これらの訴えが共感を集め、とりわけ若い世代、労働者のなかで新鮮な注目と期待をよんだ」(同上)などと自らを慰めている。現実は残念ながら共産党が期待したような共感と支持は集まらなかった。
        
 共産党はマルクスの「『資本論』導きに」、「人間の自由」を剽窃したが、マルクスの理論の核心を捨て去りマルクスを曲解する日和見主義者は、資本家の労働者に対する搾取労働による利潤生産を目的とする資本主義社会が、労働者階級と資本家階級の敵対する階級国家であると理解しようとしない。
        
 「人間の自由」が全面的に花開く社会に発展・進化するためには、資本家階級とその国家との断固たる闘いを勝ち抜かなければそれは「画餅」でしかない。彼らは、「国民多数の合意で」「アメリカ・財界中心のゆがんだ政治をかえる」、その後で「これも国民多数の合意で、社会主義・共産主義に進んでいく」(共産党HPのQ&A「共産主義と自由」)と言うのである。
        
 共産党は「国民多数の合意」とは一体何かを語らないし語れない。順法精神と議会主義にどっぷり浸かった共産党の言う「国民多数の合意」とは、国会議席の過半数か三分の二か?「来年から社会主義です」というような法案を採決するのか?
        
 共産党は「国民多数の合意」なる訳の分からない概念を持ち出すことによって、ブルジョア、小ブルジョアに、社会主義・共産主義は遥か未来の国民が選択することであると弁明する。「国民の政党」である共産党は、決して断固として社会を根底から変革するような〝危険〟政党ではないと、現状埋没のブルジョア世論に拝跪するのである。
        
 総選挙での共産党の後退は、彼らがブルジョアジーやその政治的代理人である自民党と闘う労働者階級の階級的立場に立った政策や訴えを、明瞭に語ることが出来ないからである。
        
 比例区で得票数、率とも共産党を上回った、れいわの政治的立場は、カネをバラ撒けば問題が解決するかの幻想を煽るポピュリズム政党である。彼らへの支持の高まりは、資本主義の矛盾が深まる中で、困難にあえぐ人、社会や政治に不満を持つ人々が、共産党の観念的、独りよがりな政治に魅力を感じず、目先の利害で支持政党を選択する人々が増大していることを示している。共産党などがれいわのブルジョア的・小ブルジョア的な政治の批判をしないことも、そうした傾向を助長している。
        
4、労働者政党の発展こそ必要、直ちに取り掛かろう!

        
 今回の総選挙の投票率は53・85%と戦後3番目の低さを記録した。その原因は、自公連立側の安定多数を背景にした国会審議を軽視する中で進んだ金権腐敗政治に、国民の多くが嫌気を差しながら、選挙戦の中で野党が自公政権を追い詰める能力も意志もないと判断しながらも、自公よりは「少しは増し」と思えた立民や国・民などに投票したからである。
        
 自公の後退の中で、参政党や保守党のような民族主義の反動政党が伸長したことは、現状の閉塞状況が労働者の階級的な団結の強化による闘いの発展を求めているのだ。
        
 国会の演壇から、自公や立民、国・民のブルジョア、小ブル政治や策動を開始した右翼政党を暴露し、今や国民政党に堕落した共産党やれいわなどのポピュリズム政党を暴露して、労働者に闘うべき方向と立場を明らかにする労働者政党が必要なのだ。
        
 労働者政党の議員が、国会の演壇から高らかに、資本の支配による搾取や腐敗を暴き、労働の解放のために資本との闘いを呼び掛ける。資本と闘う世界中の労働者や帝国主義者の侵略と闘う労働者人民に連帯の意思を表明し、労働の解放のための国際主義的連帯を現実的・実際的なものにするために前進しなければならない。
        
 労働者党は呼び掛ける!
        
 労働者党に多くの労働者、若者は結集し共に闘おう!未来を切り開けるのは、‶鉄鎖〟以外失うべきものを何も持たない労働者階級だけである! (古)

(11月7日一部校正)
        

石破自公政権打倒を掲げて闘おう
総選挙を労働者の闘いの発展の契機に
2024年10月17日


        
 裏金事件の対応で労働者大衆の決定的な不信を招き、岸田は首相辞任に追い込まれ、9月27日の自民党総裁選を経て、10月1日の臨時国会で石破内閣が成立した。しかし石破は内閣成立8日目の9日に、「国民の納得、共感なくして政治を前に進めることはできない」と言って衆議院を解散し、15日告示、27日投開票の総選挙が始まった。労働者は選挙戦をどう闘うかを考える。
    
        
石破政権の選挙公約

        
 石破は4日の所信表明で、「ルールを守る」そして「日本」、「国民」、「地方」、「若者・女性の機会」を「守る」の「5本の柱で、日本の未来を創り、そして、未来を守ります」とし最後に「憲法改正」に言及した。10日に発表した自民党の衆院選政権公約も同じ内容である。
        
 所信表明では、冒頭「政治資金問題などをめぐり、国民の政治不信を招いた事態について、深い反省」を表明した。しかし、石破は10日の立憲・野田代表との党首討論で、野田からの「裏金隠し解散」との論難に対し、「裏金は決めつけ。不記載だ」と言い逃れた。
        
 石破は「ルールを守る」どころか、「ルール」破りをまったく「反省」しない態度を示した。9月30日に東京地裁は、元安倍派松本事務局長に「政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪」の判決を出した。裏金づくりのための「虚偽記載」を単なる「不記載」と言うなど、石破は悪質である。石破には、「政治改革」は全く期待できない。
        
 そもそも「ルールを守る」ことを「政治改革」として公約の冒頭で宣言する自民党は、裏金づくりと言う「ルール破り」をやって、労働者大衆の怒り引き起こしたのだ。石破は「国民の皆様にもう一度、政治を信頼していただく」と言うが、「虚偽記載」を「不記載」として「裏金を認めない」石破は、労働者大衆の信頼を失うしかない。
        
 自民党公約の「五つの守る」の本質は、憲法を改正し軍事力増強に進もうということであり、経済的な困難を先延ばす財政膨張を無責任に押し進めるものであり、「政治改革」は見え透いた空約束だ。
        
選挙で訴える立憲の「政治改革」

        
 対する野党では、第1野党の立憲が「政権交代こそ、最大の政治改革」を掲げる。9月23日の立憲の代表選で野田は、小沢グループの支援を受けて代表を勝ち取ったが、それは「他の野党とも取り合って政権交代を実現する」ことを主張する小沢と野田の考えが一致したからであった。
        
 しかしその「政権交代」による政権の内容は、「政治改革」では企業・団体献金の禁止、政策活動費の廃止、裏金事件の真相究明を公約で掲げるが、「政治の信頼回復」、「分厚い中間層の復活」、「安定した外交・安全保障政策」、「超高齢化社会に対応した社会保障」、「子育て・教育」、「地域再生」、「共生社会」などの政策の中身は、自民党と変わらない。
        
 例えば立憲の提唱する「最低賃金1500円」は、自民とともに、維新、共産などの野党とも同じだ。それは微々たる改良でしかない。賃上げは労働者の闘いで勝ち取るのだ。最低賃金の要求は、その限界を不問にするなら、労働者を搾取し抑圧する賃金制度の維持を図り、その変革の課題から労働者の目をそらさせる。
        
 また、野田は外交・安全保障政策でも、自公政権との継続性を強調している。
        
 労働者は、自民党政治と変わらないようなこんな政権交代ではなく、資本の支配と闘う労働者の階級闘争を発展させ、その過程で政権交代を実現させるであろう。
        
石破内閣打倒は労働者の闘いの一歩

        
 裏金問題は岸田政権の崩壊につながり、石破政権においても裏金問題に真剣に取り組まない態度に、労働者大衆の批判が向けられているが、NHK世論調査(NHKニュース7、10月15日)では、衆院選挙で投票先を選ぶ際に「最も重視すること」としているのは景気・物価対策(34%)、社会保障制度の見直し(17%)である。
        
 これは労働者大衆が、これまでの自公政権のもとで生活難に陥り、不安を覚えていることを反映している。しかし、立憲の「政権交代」は、資本主義社会が行き詰まり、労働者大衆に犠牲を転化してきた資本の支配は、指一本触れないもので、歴史の進歩を押し止め、資本の支配の維持を図るものだ。
        
 労働者大衆の生活を根本的に解決するには、労働者が団結して行き詰まった資本の支配を打倒し、社会の根底からの改革をするしかない。労働者は石破内閣打倒を断固闘い、資本の支配を打ち破り、労働の解放を目指して労働者の闘いを発展させるのみだ。
        
          
 今回の衆院選で我々労働者党は、立候補して闘うことができないことに忸怩たる思いである。我々は労働者の闘いを前進させるべく、党活動を活発化しなければならないと決意する。我々は衆院選に臨んで、労働者が各地において、階級闘争発展のための自主投票で、自公政権を打倒するため、それぞれの状況に応じて投票することを呼びかける。 (佐)
        

裏金解明を放棄、軍事同盟拡大を目指す
自民党石破政権が発足
2024年10月3日


        
 「裏金づくり」発覚で、自民党への大衆の批判が高まり岸田が首相の座を下りざるをえなくなる中、開かれた自民党総裁選は過去最高の9人が立候補したが、石破、高市の決選投票となり、石破が高市を破り総裁となった。石破は「政治への信頼の回復」、「国民生活を守る」、「日本を守る」と訴えた。しかし、石破は裏金づくり解明の約束は反故にし、経済政策は破綻した岸田経済政策の継承でしかなく、「日本の平和」という名目で更なる軍備増強が行われようとしている。
    
        
◇「裏金づくり」の根本的反省なし

        
 石破は「裏金づくり」問題について、「ルールを守る政治でありたい。政治のためのカネは節度をもって集め、限りない透明性をもって国民に公開する」ことが必要。「さらに透明性を高める努力を最大限する(総裁選所信表明)と訴えていた。
        
 そして当初「裏金づくり」の議員の選挙での「非公認」とする考えであることを述べていた。しかし、テレビの候補者共同討論番組では、党の聴き取り調査で終わっている裏金議員を再調査するかどうかの質問に対して、同意の手を上げかけたが、他の8人が同意しないのを見て、挙手を辞めている。結局、「公認権者である総裁がきちんと確認する」ということで済ませている。
        
 また総裁選のさなかに明らかになった、13年参議院選を前にしての安倍首相と旧統一教会幹部らとの選挙応援のための会議についても「自分は分からない」といって逃げている。
        
 「ルールある政治」「政治への信頼の回復」というのならば、「裏金づくり」問題や旧統一教会と自民党との癒着の実態を徹底して再調査し、その責任を明らかにすべきである。にもかかわらず、これらは決着済みの過去の問題として済まそうとする意図が見え見えであり、石破の「政治改革」は空文句でしかない。
        
 石破新総裁は首相就任を前に、臨時国会で衆院解散・総選挙に踏み切り、10月5日告示、27日投票・開票の日程を決めた。
        
 石破は総裁選の討議で、「できる限りはやく総選挙を」と言う小泉に対して、「裏金づくり」などについて、「国民に判断していただける材料を提供するのが、新しい首相の任務だ。本当のやりとりは予算委員会だと思う」、「首相にもなっていない者が言及すべきでない」と批判的な態度をとっていた。ところが総裁になると一転、「早期解散」に豹変した。
        
 石破は自分の政権について「謙虚で誠実で温かい政治」と述べた。裏金問題の追及を避けるために、早期解散に踏み切り「討論を通じて国民に判断材料を提供する」という約束を反故にしたのである。ここにどんな「謙虚、誠実」もない。
        
◇破綻した岸田の経済政策を継承

        
 経済政策では、「アベノミクス」による異次元の金融緩和政策の長期化によって国家財政の借金依存が深刻化してきたと指摘、財政再建を訴えてきた。また実質賃金を上げるために〝労働者への分配〟を上げる必要がある。南海トラフ地震や台湾有事などの危機に備えるために財政余力の確保が必要だとして「法人税の引上げ」を言い、富裕者優遇の見直し、金融所得課税の強化にも言及した。しかし、党内から批判があがると、「金融所得すべてに課税強化するという考え方には反対」と一気にトーンダウンした。
        
 石破は、岸田の経済路線を継承すると述べている。岸田は首相就任当初、「新自由主義は経済格差を拡大した」として、「新自由主義を転換し」、格差を縮め、貧困層の生活を改善するための「新しい資本主義」を唱え、金融所得への課税強化を謳った。だが財界からの批判がでると、金融所得への課税強化はなくなり、代わりにNISAなどの個人投資が奨励されるなど、「新しい資本主義」は消えた。
        
 石破の生活改善、財政再建も岸田の「新しい資本主義」と同様の道をたどることは避けられない。
        
◇更なる軍備拡大へ

        
 石破が総裁選の政策の最初に掲げた項目が「日本を守ること」であったように、安全保障問題を新内閣は最重要課題としている。実際、閣内では、林官房長官、岩屋外相、中元防衛相、党では小野寺政調会長はいずれも防衛相の経験者である。首相秘書官を束ねる政務秘書にも元防衛官僚が任命された。閣僚の中での防衛相経験者の突出は、石破内閣の反動的性格を暴露している。
        
 27日の記者会見では石破は、「相対的に米国の力が低下していく中で、アジア地域の集団安全保障体制をつくるかについて、日米や米韓、米フィリピン等多くの同盟国を有機的に結合すべきだ」と述べた。
        
 石破は言う。国連の常任理事国であるロシア自らがウクライナの軍事侵攻を行っているように国連は無力化している、ウクライナがなぜロシアの軍事侵攻を受けたのか、ウクライナが集団安全保障の体制をとるNATOに加盟していなかったからだ、したがって、中国抑止のためにはアジアにもNATOのような集団安全保障の体制が必要だというのである。
        
 総裁選では、軍事力の更なる強化や米軍の核の使用に関して同盟国の意志決定に関与する「核の共同所有」の検討も提起している。
        
 それと共に日米安全保障条約を改定し、米国は日本「防衛」の義務を負い、日本は「基地提供」の義務を負うという「非対称」の同盟関係を改めること、また「対等な同盟」関係とするために、日米地位協定を改め米国本土に自衛隊の基地を設置することも考えられるとした。
        
 しかし、「対等な関係」に改めるというなら、在日米軍基地への巨額の維持費の負担を止めること、米軍人の犯罪に対する日本の法律の適用など不平等な関係をなくすべきである。
        
 そして石破のこれらの構想は、憲法改定と一体である。石破は戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否定を謳った憲法9条を否定し、「軍隊」の創設を主張してきた。
        
 岸田政権は日米両軍の指揮の一体化、反撃(攻撃)戦力の保持、5年間で軍事費の1・5倍化などを行ったが、石破はさらに自衛隊の活動領域の拡大、軍備増強を進めようとしているのである。
        
◇労働者の階級的闘いを

        
 総裁が岸田から石破に代わったからといって、反動的で腐敗した自民党が変わり、労働者、働く者の生活が改善されるなどとは言えないし、期待するとしたらそれは全くの幻想ある。
        
 アジア版NATO構想に見られるように、石破の「安全保障」構想は、「日本の安全」の名のもとに軍備を増強し、自衛隊の活動をさらに拡大しようとするものであり、日本の軍事強国化を推し進め、国際関係の緊張を強めるものである。
        
 立民をはじめ現在の野党は、「日本の平和と安全」は日米同盟を中心とすると言って自民党に追随している。これに対して、日本を米国の従属国家であるかに言って、現在の自衛隊は米国に従属する軍隊だから反対、自立する国家の軍隊には反対しないと言う共産党の主張は、実際には日本の国家的権益、大資本の利益を維持、拡大するために軍備を増強し、軍事同盟を拡大しようとする日本大資本の帝国主義的野望から目をそらし、免罪する反動的な役割を果たしている。
        
 現在の野党では、自民党、資本の勢力の軍拡策動と闘えない。資本の支配に反対し、一切の差別、搾取の克服を目指す労働者の階級的な闘いとその発展こそが追求されなくてはならない。 (T)
        

原発維持は軍事強国化のため
高価格の原発費用を押付ける自公政府
2024年9月26日


        
 「最大限の原発活用」を掲げる政府と原発建設のコスト高を「国民」に負担させようと企む電力資本の動きが急ピッチになっている。岸田は7月、GXを進める会議で、原発を含めた「電力投資について制度・資金両面で支援策を強化していきます」と宣言し、その後、今年中にまとめる「エネルギー基本計画」改定に向けて経産省主催の審議会を重ねている。
    
        
◇「原発は安い」とでっち上げ

        
 経産省による「エネルギー基本計画」の見直しを進める有識者の審議会が8月20日に行われた。その中で、大手電力会社で作る電気事業連合会は、政府が求める原発建設には巨額の投資が必要であり、しかも、事業期間が長期わたる――原発建設だけでも、調査や工事に掛かる期間はおよそ20年――ことから、投資を回収できなくなる恐れがある、だから、それ相当な支援を求めると発言。
        
 既に、昨年度(23年度)から電力会社のコストを電気料金に上乗せすることが決まり、今年の6月には、各電力会社は大幅な値上げに踏み切ったばかりだ。原発推進派はこの審議会でも、「エネルギーの安全保障や脱炭素に向けて原子力の必要性は明らかで、莫大な資金調達には政府によるサポートが重要だ」と、労働者・働く者への税負担や消費電力料金への価格転嫁を当然のように発言し出した。
        
 今更のように、原発の〝高コスト論〟を何故言いだしたのか。政府=経産省は原発の建設費は安いと言ってきたのではないのか?
        
 15年の経産省試算によれば、原発の発電コストは1kWh当たり10・3円であり、石炭火力の12・9円やLNG火力の13・4円よりも安いと公言してきた。その後、幾らか建設費用の上昇を見積もっているが、世界の常識とは雲泥の差があったにもかかわらず、「国民」を誤魔化し続けてきた。
        
 それもそのはずである。原発の発電コストを安く見せるために、政府=経産省は建設費用も事故対策費用も恣意的に過少評価してきたのだ。例えば、英国では14年時点で、資本諸費の一つである「原発建設費」(出力120万kW、40年稼働)は1kWh当たり120万円と算定していたが、日本では15年時点で、37万円という極めて低い価格設定を行い、その結果、「原発の発電コストは安い」という神話を作り上げてきた。
        
 その神話をこっそりと後ろに隠し、電力資本や原発推進論者が「国民へのコスト転嫁」を言いだしたのは、現実の原発の発電コストが太陽光や風力やバイオマスなどに比べて、またLNG火力などに比べても割高であることが誰の目にも分かるようになってきたからだ。
        
 原発建設費用及び廃炉費用を政府など他人に肩代わりさせ、燃料費と賃金とメンテナンス費のみの運転費用(業界では「限界費用」と言っている)でも、他の発電より高コストであることが明らかになっている。要するに、原発を止めれば消費電力の費用は下がり、労働者の負担が減るということだ。
        
◇原発発電コストは太陽光や風力発電の3倍

        
 米国の投資会社Lazardが毎年発表している各種発電コストの推移を見ると、最新の23年版では(ネットで見ることが可能)、大規模太陽光の発電コストは1MWh当たり60ドル、陸上風力が50ドル、ガス混焼が82ドルなどに対して、原発は何と180ドルである。
        
 日本では太陽光や風力も適さないという宣伝が出回っているが、ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン型よりはるかに製造が容易であり、しかも、多色の印刷や塗布が可能であり、また透明にもなり、住宅やビルの壁や窓ガラスにも自動車などにも応用できる。加えて、曇り空や雨空でも発電できる高性能な発電装置である。現在、これを利用した社会的規模の実証試験が行われようとしている。技術的課題が解決され量産されるなら、現在のシリコン型太陽光発電より半分以下の発電単価になると発表されている。
        
 こうなると、高コストであり、しかも、福島のような事故が発生した時の甚大な被害、また使用済み燃料の廃棄や廃炉の方法さえ解決できない原発は無用となる。しかも、日本でも原発大国フランスでも、度重なる原発の運転中止が相次いでいる有様であり、安全安心の発電所とは到底言えない。
        
 政府は、その原発を維持し、さらに新型原発を建設しようとしている。太陽光や風力発電だけでは不安的であると政府は言い、また気候温暖化対策だと称して、原発を「ベースロード電源」に位置づけこだわり続けている。それは、火力発電と共に原発を抱えている電力大企業を擁護し、電力大企業の利潤を確保するために他ならない。
        
◇安全保障が真の狙い

        
 政府や御用学者たちが原発推進にこだわるのは、米国政府が「安全保障」のためだと公言しているように、将来のいざという時に、原子爆弾への転用を考えているからである。安倍や岸田や高市らが原発コストは安いというデマを吐き、この推進にこだわってきたのは、中国やロシアの核保有(原子兵器)に対抗しようとするものである。
        
 日本は原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、現在、約46トンを保有する。
        
 日本の電力業界などは、日本が保有するプルトニウムは「原子炉級」であり、「兵器用に適さない」と主張してきた。だが、日本が保有する「原子炉級」でも少し手を加えれば、核分裂の連鎖反応を起こすことが可能だと言われる。自民党・公明党の原発維持路線の真の狙いが浮き彫りになっている。反動的な自公政権を打倒しよう! (W)
        

野党連携、政治手腕を売り込むが
立憲代表選に野田元首相が立候補
2024年9月5日


        
 自民党の新総裁選挙に並行して、立憲民主党(以下立憲)の代表選(4日告示、23 日投開票)に向けた動きが活発となっている。8月末現在、野田、枝野、泉の3名が立候補を決定、その他、江田、西村、馬淵、吉田らの名が上がっている(9月5日時点で、西村や馬淵は立候補を辞退している)。毎日新聞の全国世論調査(8月24、25日)によれば吉田を除く6名の支持率は、野田27%、枝野14%、泉7%、江田4%、西村2%、馬淵2%、6名の中には支持する人の名はない24%となっている。ここでは断トツの支持率である野田の政策を検討しよう。
    
        
民主党政権破綻の真剣な総括なし

        
 野田は代表選出馬を決断したこと理由について「再び首相を目指す決意を固めた」、「国家を背おう覚悟と力量が問われる。刷新を実現するために経験が必要ではないかと思い始めた」と述べた。
        
 野田は「国家を背負う力量」と政治「刷新を実現するための経験」の必要を訴える。党内からも、首相を務めた経験や野党連携への期待から、「新鮮味は乏しいが、元首相としての安定感がある。経験不足の自民党新総裁と差別化できる」(衆院若手議員)との期待の声も上がっているという(朝日、8・30)。
        
 野田は、民主党菅内閣総辞職を受けて2011年9月、民主党と国民新党連立の野田内閣を発足させたが、民主党の公約にない消費増税を謳い、公約違反を追及され解散・総選挙に追い込まれ、その後の自民党安倍長期政権誕生のきっかけとなった。
        
 野田は首相としての経験と実績を売り込んでいる。しかし、首相になった経験があるといっても、労働者・働く者の生活改善・向上としてその後に残るような功績はなにもない。
        
 社会保障を充実すると公約に掲げはしたが、実際には現状を変えないバラ撒き政治に終始し、財政ひっ迫に陥り、公約違反の消費税増税に突き進んだのである。民主党政権は自民党の批判によって解体したというよりも、自ら行き詰まり崩壊した。野田は民主党政権崩壊の原因について何の根本的な総括もしていない。したがって、首相としての「経験」とか「実績」を吹聴するのは無責任である。
        
無力で反動的な「野党共闘」

        
 野田を強く後押ししているのは小沢である。小沢は、共産党を含む野党共闘を重視した枝野を批判、自民党政権との対決というよりも問題解決の政策を提案して、国民の支持を広げる「提案型」路線を掲げ代表となった泉に反対し、野党共闘を軽視しているとして野田を押している。
        
 政権を奪取するためには野党共闘を重視すべきだというのである。とはいっても、小沢の野党が塊(かたまり)になるというのは、共産党抜きの話である。
        
 野田なら国・民や維新との話し合いができると言うのだ。野田自身も、「共産党とは対話できる環境は必要だが、一緒に政権を担うことは出来ない」とする一方、「本来国・民とは合流を目指さなければならない」と言い、政権を取るためには「中道から右のサイドの保守層の野党」との協力が必要というわけで維新との共闘を重視している。もともと「分厚い中間層の復活」を政策課題の中心とし、「国家経営の要諦」として日米を基軸、皇室を大切にすることを掲げる野田と維新とは政治的に近い関係にある。
        
 実際に野田は、8月 23 日、維新の企画した「政治改革」をテーマとした勉強会に講師として出席している。そして「候補者をなるべく一本化した方が良い。与党を過半数割れに追い込む絶好のチャンス、問題意識は(維新と)共有できた」と語り、維新も「野田氏の感覚は我々と変わらない」とエールを送っている(朝日、8・24)
        
 「現実政治」を掲げる国・民は野党として初めて、自公政権の当初予算案に賛成(22年度)した。国・民が要求してきた高騰化するガソリン価格負担を軽減する国家からの助成金が計上されているというのが賛成の理由であった。一方、維新は裏金づくり問題では、政治資金の使途の内容公表は 10 年後とするという提案を行い、自民党を助けている。その他、「第二自民党と呼ばれてもいい」(馬場代表)と公言したり、「米国と日本の核の共有」を唱えたりしたこともあった。
        
 野党と言っても、「現実政治」を掲げ、「労資協調」で資本にすりよったりする政党(国・民)や、「第二自民党と呼ばれてもいい」と公言し、労働運動を敵視するような政党(維新)と一緒になって、仮に自民党にかわって新政権がつくれたとしても、こんな政権はたちまち破綻し、労働者、働く者に見捨てられるか、もっと反動的な政府にとって代わられるだけであろう。
        
資本に反対する闘いの構築を

        
 野田の目指す自民党に代わる「政権構想」とは反動的なものであり、労働者・働く者はどんな期待や信頼も持ちえない。労働者は20数年前の、自ら公約違反を行い自滅した民主党政権の経験から真剣に学ぶべきである。
        
 民主党への不信は今なお強く残っている。それは、裏金づくりで自民党が支持率を大きく後退させ、信用を失墜させているといっても、自民党の支持率29・9%に対して、立憲は5・2%、維新2・4%、共産2・6%、国・民0・8%、社民0・5%、れいわ新選組0・8%等々と野党は伸びず、支持政党なしが45・7%に膨らむ結果(8月、NHK調査)に示されている。自民党への怒りや不信が野党への支持に向かわず、支持政党なしが有権者の半分近くにまで膨れ上がっているのだ。
        
 労働者・働く者にとって求められているのは、労働の搾取に基礎にたった資本の体制の下でのあれこれの改良を約束する無力なブルジョア的、小ブルジョア的改良政治ではなく、労働者・働く者に依拠し、資本の支配そのものに反対し、差別と搾取を克服していく社会を目指す階級的な政治を目指していく闘いである。(T)
        

‶確トラ〟から‶もしハリ〟へ
流れが変わった米国大統領選?!
2024年8月29日


        
 8月22日の民主党全国大会でハリスが正式に民主党大統領候補に指名され、指名受諾演説を行い11月の大統領選挙は、トランプとの一騎打ち(他にも何名か立候補するが)になった。バイデンが指名されても一騎打ちに違いはなかったが、バイデンは6月のトランプとの討論会で衰えを感じさせる醜態をさらけ出し、民主党内の「バイデンでは戦えない」という危機感を急速に生み出した。大統領選挙に向け民主党が追い詰められた末の、バイデン撤退発表とハリスの後継指名であった。
        
 ‶高齢と認知機能〟に不安を抱えるバイデン(81歳)で、戦えるかという不安は、若いハリス(59歳)の登場によって払しょくされた。トランプの政権奪還に対する危機感と相まって民主党と支持者を結束させ、支持率は14日に発表された選挙分析機関クック・ポリティカル・リポートによれば7州の激戦州ではハリスが5州でリードし、22日に発表された全国レベルの世論調査でもハリス47・6%、トランプ46・7%とわずかであるがハリスがリードしている。
        
 両候補の支持層について、「ハリス氏が大卒の白人、黒人やヒスパニック系、若年層の支持を集め、トランプ氏は非大卒の白人を中心に支持を固めている。」と報じられた。11月に行われる大統領選まで2か月あまりであるが、‶確トラ〟が‶もしハリ〟に変わったように何が起こるかわからない。
        
 民主党全国大会でハリスは、トランプの「米国を再び偉大に」(MAGA)に対して、議事堂襲撃を例に挙げて、「もし再び権力を与えたら、彼が何をするつもりなのか考えてみてほしい」と〝民主主義の危機〟を訴えた。ハリスは、大統領選に向けたスローガン「我々は後戻りしない」を繰り返した。
        
 トランプの手法同様に、星条旗やUSAのプラカードを代議員に配り、演説では愛国心を訴え、USAコールが繰り返された。共和党トランプの米国第一主義のポピュリズムに対抗するハリス民主党の立場は、「我々は世界史上、最高の民主主義を受け継いでいる」、「世界最大の特権に伴う、壮大な責任を維持しよう。米国人であることの特権と誇りだ」(朝日新聞デジタル8月22日)。
        
 世界支配の‶帝国主義的特権〟を誇り愛国心を鼓舞し、自由と民主主義の盟主として、米国第一主義のトランプに対抗する立場をハリスは強調している。どちらもアメリカ帝国主義の特権維持の立場に変わりはない。労働者の課題は、ブルジョア政治から独立した階級的立場で大統領選挙に〝介入〟(例えば、トランプの女性差別主義の中絶禁止政策への抗議やハリスのイスラエル支援への抗議など、大衆的な運動の広がりを支援するなど)し、トランプやハリスの反動的立場を暴露して、闘う労働者の階級的な団結を打ち固めることだ。
        
 日本を振り返れば、‶確トラ〟や‶もしハリ〟に右往左往する日本政府、自民党総裁の椅子をめぐる政策論争無き長老による多数派工作の暗愚の政治であり、埋没し忘れられている立憲の代表選である。日本の政治の劣化を克服できるのは、労働者政党の闘いの発展にかかっている。政治の秋にはまだ暑い日が続くが、共に頑張ろう!  (古)
        

低迷する支持率に耐えられず
岸田の総裁選不出馬表明
2024年8月16日


        
 14日午前、岸田が総裁選不出馬を表明した。岸田はつい最近まで、「道半ばの課題に結果を出す」と、続投に意欲を示していたから、突然の表明に〝衝撃〟が走った。労働者にしてみれば岸田は総理をいつ辞めてもおかしくなかった。むしろ遅すぎた〝決断〟である。
        
 内閣支持率低迷に対して物価高対策のバラ撒きなど政権浮揚策を次々打ち出しながらも、退廃する資本主義を「成長と分配の好循環」させるような打開策は打ち出せず、総理の座を譲ることになったのである。
        
 岸田は、「専守防衛」を投げ捨てる「安保3文書」の閣議決定をもって、軍事強国化の道を突き進み、軍事費の2倍化、日米軍事同盟の一体化など、反動的な帝国主義を深化させ、それを手柄だと並べるほどであった。
        
 しかし、安倍暗殺を機に旧統一教会と自民党の癒着が明るみに出て政治不信が強まった上に、政治資金パーティー裏金問題が発覚。物価高への批判も相まって政権の支持率回復が簡単に望めないばかりか、裏金問題の対応で自民党内の支持も失っており、岸田政権の継続は困難と判断したのであろう。
        
 首相官邸での総裁選不出馬会見では総理総裁としての実績を並べ立て、「新しい資本主義のもと大きな成果を上げることができた」と自賛したが、黒を白と言いくるめようという魂胆が丸見えであった。率直な反省など無縁の虚勢を張ることで、「一兵卒」の存在感を示そうという狙いだ。
        
 会見で「大きな成果」と多々並べていることにも、岸田が志し半ばでの退場への未練がにじんでいるが、実態を見たら胸を張って言い張れるものなどなく、虚勢で「最終の美」を飾ろうとでも思ったのか知らないが、みっともない醜態を晒した記者会見であった。
        
 岸田はバラまきで借金財政を悪化させたばかりか、経済的に不安定さを増幅するような施策で、労働者の生活状態の悪化を一層深刻化させた。官製春闘で労働者を応援したと言うのか、とんでもない。景気回復も労働者の生活向上もできなかったではないか。
        
 政治資金規正法の改正を成立させたことなど自慢しているが、それが尻抜けなことは万民の知る所であり、「今回の総裁選挙では、自民党が変わる姿、新生自民党を国民の前にしっかりと示すことが必要」と、自民党の腐敗さえ是正できなかったことを示した。
        
 政権は自民党政治に馴れ合う野党に助けられて延命してきたが、アベノミクスを踏襲した無能な総理総裁として岸田は引っ込むしかなかった。労働者・働く者を瞞着し負担を押し付け、金権腐敗で軍事強国化の自民党政治への批判に岸田は耐えきれなかったのだ。

 岸田は「身を引くこと」で自民党への支持を繋ぎとめられると期待しているが、政権運営に行き詰まったことを示した総裁選不出馬であり、労働者は自民党政治をさらに追い詰め一掃していこう。 (岩)