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巻頭言



【2024.9.26】
裏金解明を放棄、軍同盟拡大を目指す
 ──自民党石破政権が発足

【2024.9.26】
原発維持は軍事強国化のため
 ──高価格の原発費用を押付ける自公政府

【2024.9.5】
野党連携、政治手腕を売り込むが
 ──立憲代表選に野田元首相が立候補

【2024.8.29】
‶確トラ〟から‶もしハリ〟へ
 ──流れが変わった米国大統領選?!

【2024.8.16】
低迷する支持率に耐えられず
 ──岸田の総裁選不出馬表明


 過去のメッセージへ

裏金解明を放棄、軍事同盟拡大を目指す
自民党石破政権が発足
2024年10月3日


        
 「裏金づくり」発覚で、自民党への大衆の批判が高まり岸田が首相の座を下りざるをえなくなる中、開かれた自民党総裁選は過去最高の9人が立候補したが、石破、高市の決選投票となり、石破が高市を破り総裁となった。石破は「政治への信頼の回復」、「国民生活を守る」、「日本を守る」と訴えた。しかし、石破は裏金づくり解明の約束は反故にし、経済政策は破綻した岸田経済政策の継承でしかなく、「日本の平和」という名目で更なる軍備増強が行われようとしている。
    
        
◇「裏金づくり」の根本的反省なし

        
 石破は「裏金づくり」問題について、「ルールを守る政治でありたい。政治のためのカネは節度をもって集め、限りない透明性をもって国民に公開する」ことが必要。「さらに透明性を高める努力を最大限する(総裁選所信表明)と訴えていた。
        
 そして当初「裏金づくり」の議員の選挙での「非公認」とする考えであることを述べていた。しかし、テレビの候補者共同討論番組では、党の聴き取り調査で終わっている裏金議員を再調査するかどうかの質問に対して、同意の手を上げかけたが、他の8人が同意しないのを見て、挙手を辞めている。結局、「公認権者である総裁がきちんと確認する」ということで済ませている。
        
 また総裁選のさなかに明らかになった、13年参議院選を前にしての安倍首相と旧統一教会幹部らとの選挙応援のための会議についても「自分は分からない」といって逃げている。
        
 「ルールある政治」「政治への信頼の回復」というのならば、「裏金づくり」問題や旧統一教会と自民党との癒着の実態を徹底して再調査し、その責任を明らかにすべきである。にもかかわらず、これらは決着済みの過去の問題として済まそうとする意図が見え見えであり、石破の「政治改革」は空文句でしかない。
        
 石破新総裁は首相就任を前に、臨時国会で衆院解散・総選挙に踏み切り、10月5日告示、27日投票・開票の日程を決めた。
        
 石破は総裁選の討議で、「できる限りはやく総選挙を」と言う小泉に対して、「裏金づくり」などについて、「国民に判断していただける材料を提供するのが、新しい首相の任務だ。本当のやりとりは予算委員会だと思う」、「首相にもなっていない者が言及すべきでない」と批判的な態度をとっていた。ところが総裁になると一転、「早期解散」に豹変した。
        
 石破は自分の政権について「謙虚で誠実で温かい政治」と述べた。裏金問題の追及を避けるために、早期解散に踏み切り「討論を通じて国民に判断材料を提供する」という約束を反故にしたのである。ここにどんな「謙虚、誠実」もない。
        
◇破綻した岸田の経済政策を継承

        
 経済政策では、「アベノミクス」による異次元の金融緩和政策の長期化によって国家財政の借金依存が深刻化してきたと指摘、財政再建を訴えてきた。また実質賃金を上げるために〝労働者への分配〟を上げる必要がある。南海トラフ地震や台湾有事などの危機に備えるために財政余力の確保が必要だとして「法人税の引上げ」を言い、富裕者優遇の見直し、金融所得課税の強化にも言及した。しかし、党内から批判があがると、「金融所得すべてに課税強化するという考え方には反対」と一気にトーンダウンした。
        
 石破は、岸田の経済路線を継承すると述べている。岸田は首相就任当初、「新自由主義は経済格差を拡大した」として、「新自由主義を転換し」、格差を縮め、貧困層の生活を改善するための「新しい資本主義」を唱え、金融所得への課税強化を謳った。だが財界からの批判がでると、金融所得への課税強化はなくなり、代わりにNISAなどの個人投資が奨励されるなど、「新しい資本主義」は消えた。
        
 石破の生活改善、財政再建も岸田の「新しい資本主義」と同様の道をたどることは避けられない。
        
◇更なる軍備拡大へ

        
 石破が総裁選の政策の最初に掲げた項目が「日本を守ること」であったように、安全保障問題を新内閣は最重要課題としている。実際、閣内では、林官房長官、岩屋外相、中元防衛相、党では小野寺政調会長はいずれも防衛相の経験者である。首相秘書官を束ねる政務秘書にも元防衛官僚が任命された。閣僚の中での防衛相経験者の突出は、石破内閣の反動的性格を暴露している。
        
 27日の記者会見では石破は、「相対的に米国の力が低下していく中で、アジア地域の集団安全保障体制をつくるかについて、日米や米韓、米フィリピン等多くの同盟国を有機的に結合すべきだ」と述べた。
        
 石破は言う。国連の常任理事国であるロシア自らがウクライナの軍事侵攻を行っているように国連は無力化している、ウクライナがなぜロシアの軍事侵攻を受けたのか、ウクライナが集団安全保障の体制をとるNATOに加盟していなかったからだ、したがって、中国抑止のためにはアジアにもNATOのような集団安全保障の体制が必要だというのである。
        
 総裁選では、軍事力の更なる強化や米軍の核の使用に関して同盟国の意志決定に関与する「核の共同所有」の検討も提起している。
        
 それと共に日米安全保障条約を改定し、米国は日本「防衛」の義務を負い、日本は「基地提供」の義務を負うという「非対称」の同盟関係を改めること、また「対等な同盟」関係とするために、日米地位協定を改め米国本土に自衛隊の基地を設置することも考えられるとした。
        
 しかし、「対等な関係」に改めるというなら、在日米軍基地への巨額の維持費の負担を止めること、米軍人の犯罪に対する日本の法律の適用など不平等な関係をなくすべきである。
        
 そして石破のこれらの構想は、憲法改定と一体である。石破は戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否定を謳った憲法9条を否定し、「軍隊」の創設を主張してきた。
        
 岸田政権は日米両軍の指揮の一体化、反撃(攻撃)戦力の保持、5年間で軍事費の1・5倍化などを行ったが、石破はさらに自衛隊の活動領域の拡大、軍備増強を進めようとしているのである。
        
◇労働者の階級的闘いを

        
 総裁が岸田から石破に代わったからといって、反動的で腐敗した自民党が変わり、労働者、働く者の生活が改善されるなどとは言えないし、期待するとしたらそれは全くの幻想ある。
        
 アジア版NATO構想に見られるように、石破の「安全保障」構想は、「日本の安全」の名のもとに軍備を増強し、自衛隊の活動をさらに拡大しようとするものであり、日本の軍事強国化を推し進め、国際関係の緊張を強めるものである。
        
 立民をはじめ現在の野党は、「日本の平和と安全」は日米同盟を中心とすると言って自民党に追随している。これに対して、日本を米国の従属国家であるかに言って、現在の自衛隊は米国に従属する軍隊だから反対、自立する国家の軍隊には反対しないと言う共産党の主張は、実際には日本の国家的権益、大資本の利益を維持、拡大するために軍備を増強し、軍事同盟を拡大しようとする日本大資本の帝国主義的野望から目をそらし、免罪する反動的な役割を果たしている。
        
 現在の野党では、自民党、資本の勢力の軍拡策動と闘えない。資本の支配に反対し、一切の差別、搾取の克服を目指す労働者の階級的な闘いとその発展こそが追求されなくてはならない。 (T)
        

原発維持は軍事強国化のため
高価格の原発費用を押付ける自公政府
2024年9月26日


        
 「最大限の原発活用」を掲げる政府と原発建設のコスト高を「国民」に負担させようと企む電力資本の動きが急ピッチになっている。岸田は7月、GXを進める会議で、原発を含めた「電力投資について制度・資金両面で支援策を強化していきます」と宣言し、その後、今年中にまとめる「エネルギー基本計画」改定に向けて経産省主催の審議会を重ねている。
    
        
◇「原発は安い」とでっち上げ

        
 経産省による「エネルギー基本計画」の見直しを進める有識者の審議会が8月20日に行われた。その中で、大手電力会社で作る電気事業連合会は、政府が求める原発建設には巨額の投資が必要であり、しかも、事業期間が長期わたる――原発建設だけでも、調査や工事に掛かる期間はおよそ20年――ことから、投資を回収できなくなる恐れがある、だから、それ相当な支援を求めると発言。
        
 既に、昨年度(23年度)から電力会社のコストを電気料金に上乗せすることが決まり、今年の6月には、各電力会社は大幅な値上げに踏み切ったばかりだ。原発推進派はこの審議会でも、「エネルギーの安全保障や脱炭素に向けて原子力の必要性は明らかで、莫大な資金調達には政府によるサポートが重要だ」と、労働者・働く者への税負担や消費電力料金への価格転嫁を当然のように発言し出した。
        
 今更のように、原発の〝高コスト論〟を何故言いだしたのか。政府=経産省は原発の建設費は安いと言ってきたのではないのか?
        
 15年の経産省試算によれば、原発の発電コストは1kWh当たり10・3円であり、石炭火力の12・9円やLNG火力の13・4円よりも安いと公言してきた。その後、幾らか建設費用の上昇を見積もっているが、世界の常識とは雲泥の差があったにもかかわらず、「国民」を誤魔化し続けてきた。
        
 それもそのはずである。原発の発電コストを安く見せるために、政府=経産省は建設費用も事故対策費用も恣意的に過少評価してきたのだ。例えば、英国では14年時点で、資本諸費の一つである「原発建設費」(出力120万kW、40年稼働)は1kWh当たり120万円と算定していたが、日本では15年時点で、37万円という極めて低い価格設定を行い、その結果、「原発の発電コストは安い」という神話を作り上げてきた。
        
 その神話をこっそりと後ろに隠し、電力資本や原発推進論者が「国民へのコスト転嫁」を言いだしたのは、現実の原発の発電コストが太陽光や風力やバイオマスなどに比べて、またLNG火力などに比べても割高であることが誰の目にも分かるようになってきたからだ。
        
 原発建設費用及び廃炉費用を政府など他人に肩代わりさせ、燃料費と賃金とメンテナンス費のみの運転費用(業界では「限界費用」と言っている)でも、他の発電より高コストであることが明らかになっている。要するに、原発を止めれば消費電力の費用は下がり、労働者の負担が減るということだ。
        
◇原発発電コストは太陽光や風力発電の3倍

        
 米国の投資会社Lazardが毎年発表している各種発電コストの推移を見ると、最新の23年版では(ネットで見ることが可能)、大規模太陽光の発電コストは1MWh当たり60ドル、陸上風力が50ドル、ガス混焼が82ドルなどに対して、原発は何と180ドルである。
        
 日本では太陽光や風力も適さないという宣伝が出回っているが、ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン型よりはるかに製造が容易であり、しかも、多色の印刷や塗布が可能であり、また透明にもなり、住宅やビルの壁や窓ガラスにも自動車などにも応用できる。加えて、曇り空や雨空でも発電できる高性能な発電装置である。現在、これを利用した社会的規模の実証試験が行われようとしている。技術的課題が解決され量産されるなら、現在のシリコン型太陽光発電より半分以下の発電単価になると発表されている。
        
 こうなると、高コストであり、しかも、福島のような事故が発生した時の甚大な被害、また使用済み燃料の廃棄や廃炉の方法さえ解決できない原発は無用となる。しかも、日本でも原発大国フランスでも、度重なる原発の運転中止が相次いでいる有様であり、安全安心の発電所とは到底言えない。
        
 政府は、その原発を維持し、さらに新型原発を建設しようとしている。太陽光や風力発電だけでは不安的であると政府は言い、また気候温暖化対策だと称して、原発を「ベースロード電源」に位置づけこだわり続けている。それは、火力発電と共に原発を抱えている電力大企業を擁護し、電力大企業の利潤を確保するために他ならない。
        
◇安全保障が真の狙い

        
 政府や御用学者たちが原発推進にこだわるのは、米国政府が「安全保障」のためだと公言しているように、将来のいざという時に、原子爆弾への転用を考えているからである。安倍や岸田や高市らが原発コストは安いというデマを吐き、この推進にこだわってきたのは、中国やロシアの核保有(原子兵器)に対抗しようとするものである。
        
 日本は原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、現在、約46トンを保有する。
        
 日本の電力業界などは、日本が保有するプルトニウムは「原子炉級」であり、「兵器用に適さない」と主張してきた。だが、日本が保有する「原子炉級」でも少し手を加えれば、核分裂の連鎖反応を起こすことが可能だと言われる。自民党・公明党の原発維持路線の真の狙いが浮き彫りになっている。反動的な自公政権を打倒しよう! (W)
        

野党連携、政治手腕を売り込むが
立憲代表選に野田元首相が立候補
2024年9月5日


        
 自民党の新総裁選挙に並行して、立憲民主党(以下立憲)の代表選(4日告示、23 日投開票)に向けた動きが活発となっている。8月末現在、野田、枝野、泉の3名が立候補を決定、その他、江田、西村、馬淵、吉田らの名が上がっている(9月5日時点で、西村や馬淵は立候補を辞退している)。毎日新聞の全国世論調査(8月24、25日)によれば吉田を除く6名の支持率は、野田27%、枝野14%、泉7%、江田4%、西村2%、馬淵2%、6名の中には支持する人の名はない24%となっている。ここでは断トツの支持率である野田の政策を検討しよう。
    
        
民主党政権破綻の真剣な総括なし

        
 野田は代表選出馬を決断したこと理由について「再び首相を目指す決意を固めた」、「国家を背おう覚悟と力量が問われる。刷新を実現するために経験が必要ではないかと思い始めた」と述べた。
        
 野田は「国家を背負う力量」と政治「刷新を実現するための経験」の必要を訴える。党内からも、首相を務めた経験や野党連携への期待から、「新鮮味は乏しいが、元首相としての安定感がある。経験不足の自民党新総裁と差別化できる」(衆院若手議員)との期待の声も上がっているという(朝日、8・30)。
        
 野田は、民主党菅内閣総辞職を受けて2011年9月、民主党と国民新党連立の野田内閣を発足させたが、民主党の公約にない消費増税を謳い、公約違反を追及され解散・総選挙に追い込まれ、その後の自民党安倍長期政権誕生のきっかけとなった。
        
 野田は首相としての経験と実績を売り込んでいる。しかし、首相になった経験があるといっても、労働者・働く者の生活改善・向上としてその後に残るような功績はなにもない。
        
 社会保障を充実すると公約に掲げはしたが、実際には現状を変えないバラ撒き政治に終始し、財政ひっ迫に陥り、公約違反の消費税増税に突き進んだのである。民主党政権は自民党の批判によって解体したというよりも、自ら行き詰まり崩壊した。野田は民主党政権崩壊の原因について何の根本的な総括もしていない。したがって、首相としての「経験」とか「実績」を吹聴するのは無責任である。
        
無力で反動的な「野党共闘」

        
 野田を強く後押ししているのは小沢である。小沢は、共産党を含む野党共闘を重視した枝野を批判、自民党政権との対決というよりも問題解決の政策を提案して、国民の支持を広げる「提案型」路線を掲げ代表となった泉に反対し、野党共闘を軽視しているとして野田を押している。
        
 政権を奪取するためには野党共闘を重視すべきだというのである。とはいっても、小沢の野党が塊(かたまり)になるというのは、共産党抜きの話である。
        
 野田なら国・民や維新との話し合いができると言うのだ。野田自身も、「共産党とは対話できる環境は必要だが、一緒に政権を担うことは出来ない」とする一方、「本来国・民とは合流を目指さなければならない」と言い、政権を取るためには「中道から右のサイドの保守層の野党」との協力が必要というわけで維新との共闘を重視している。もともと「分厚い中間層の復活」を政策課題の中心とし、「国家経営の要諦」として日米を基軸、皇室を大切にすることを掲げる野田と維新とは政治的に近い関係にある。
        
 実際に野田は、8月 23 日、維新の企画した「政治改革」をテーマとした勉強会に講師として出席している。そして「候補者をなるべく一本化した方が良い。与党を過半数割れに追い込む絶好のチャンス、問題意識は(維新と)共有できた」と語り、維新も「野田氏の感覚は我々と変わらない」とエールを送っている(朝日、8・24)
        
 「現実政治」を掲げる国・民は野党として初めて、自公政権の当初予算案に賛成(22年度)した。国・民が要求してきた高騰化するガソリン価格負担を軽減する国家からの助成金が計上されているというのが賛成の理由であった。一方、維新は裏金づくり問題では、政治資金の使途の内容公表は 10 年後とするという提案を行い、自民党を助けている。その他、「第二自民党と呼ばれてもいい」(馬場代表)と公言したり、「米国と日本の核の共有」を唱えたりしたこともあった。
        
 野党と言っても、「現実政治」を掲げ、「労資協調」で資本にすりよったりする政党(国・民)や、「第二自民党と呼ばれてもいい」と公言し、労働運動を敵視するような政党(維新)と一緒になって、仮に自民党にかわって新政権がつくれたとしても、こんな政権はたちまち破綻し、労働者、働く者に見捨てられるか、もっと反動的な政府にとって代わられるだけであろう。
        
資本に反対する闘いの構築を

        
 野田の目指す自民党に代わる「政権構想」とは反動的なものであり、労働者・働く者はどんな期待や信頼も持ちえない。労働者は20数年前の、自ら公約違反を行い自滅した民主党政権の経験から真剣に学ぶべきである。
        
 民主党への不信は今なお強く残っている。それは、裏金づくりで自民党が支持率を大きく後退させ、信用を失墜させているといっても、自民党の支持率29・9%に対して、立憲は5・2%、維新2・4%、共産2・6%、国・民0・8%、社民0・5%、れいわ新選組0・8%等々と野党は伸びず、支持政党なしが45・7%に膨らむ結果(8月、NHK調査)に示されている。自民党への怒りや不信が野党への支持に向かわず、支持政党なしが有権者の半分近くにまで膨れ上がっているのだ。
        
 労働者・働く者にとって求められているのは、労働の搾取に基礎にたった資本の体制の下でのあれこれの改良を約束する無力なブルジョア的、小ブルジョア的改良政治ではなく、労働者・働く者に依拠し、資本の支配そのものに反対し、差別と搾取を克服していく社会を目指す階級的な政治を目指していく闘いである。(T)
        

‶確トラ〟から‶もしハリ〟へ
流れが変わった米国大統領選?!
2024年8月29日


        
 8月22日の民主党全国大会でハリスが正式に民主党大統領候補に指名され、指名受諾演説を行い11月の大統領選挙は、トランプとの一騎打ち(他にも何名か立候補するが)になった。バイデンが指名されても一騎打ちに違いはなかったが、バイデンは6月のトランプとの討論会で衰えを感じさせる醜態をさらけ出し、民主党内の「バイデンでは戦えない」という危機感を急速に生み出した。大統領選挙に向け民主党が追い詰められた末の、バイデン撤退発表とハリスの後継指名であった。
        
 ‶高齢と認知機能〟に不安を抱えるバイデン(81歳)で、戦えるかという不安は、若いハリス(59歳)の登場によって払しょくされた。トランプの政権奪還に対する危機感と相まって民主党と支持者を結束させ、支持率は14日に発表された選挙分析機関クック・ポリティカル・リポートによれば7州の激戦州ではハリスが5州でリードし、22日に発表された全国レベルの世論調査でもハリス47・6%、トランプ46・7%とわずかであるがハリスがリードしている。
        
 両候補の支持層について、「ハリス氏が大卒の白人、黒人やヒスパニック系、若年層の支持を集め、トランプ氏は非大卒の白人を中心に支持を固めている。」と報じられた。11月に行われる大統領選まで2か月あまりであるが、‶確トラ〟が‶もしハリ〟に変わったように何が起こるかわからない。
        
 民主党全国大会でハリスは、トランプの「米国を再び偉大に」(MAGA)に対して、議事堂襲撃を例に挙げて、「もし再び権力を与えたら、彼が何をするつもりなのか考えてみてほしい」と〝民主主義の危機〟を訴えた。ハリスは、大統領選に向けたスローガン「我々は後戻りしない」を繰り返した。
        
 トランプの手法同様に、星条旗やUSAのプラカードを代議員に配り、演説では愛国心を訴え、USAコールが繰り返された。共和党トランプの米国第一主義のポピュリズムに対抗するハリス民主党の立場は、「我々は世界史上、最高の民主主義を受け継いでいる」、「世界最大の特権に伴う、壮大な責任を維持しよう。米国人であることの特権と誇りだ」(朝日新聞デジタル8月22日)。
        
 世界支配の‶帝国主義的特権〟を誇り愛国心を鼓舞し、自由と民主主義の盟主として、米国第一主義のトランプに対抗する立場をハリスは強調している。どちらもアメリカ帝国主義の特権維持の立場に変わりはない。労働者の課題は、ブルジョア政治から独立した階級的立場で大統領選挙に〝介入〟(例えば、トランプの女性差別主義の中絶禁止政策への抗議やハリスのイスラエル支援への抗議など、大衆的な運動の広がりを支援するなど)し、トランプやハリスの反動的立場を暴露して、闘う労働者の階級的な団結を打ち固めることだ。
        
 日本を振り返れば、‶確トラ〟や‶もしハリ〟に右往左往する日本政府、自民党総裁の椅子をめぐる政策論争無き長老による多数派工作の暗愚の政治であり、埋没し忘れられている立憲の代表選である。日本の政治の劣化を克服できるのは、労働者政党の闘いの発展にかかっている。政治の秋にはまだ暑い日が続くが、共に頑張ろう!  (古)
        

低迷する支持率に耐えられず
岸田の総裁選不出馬表明
2024年8月16日


        
 14日午前、岸田が総裁選不出馬を表明した。岸田はつい最近まで、「道半ばの課題に結果を出す」と、続投に意欲を示していたから、突然の表明に〝衝撃〟が走った。労働者にしてみれば岸田は総理をいつ辞めてもおかしくなかった。むしろ遅すぎた〝決断〟である。
        
 内閣支持率低迷に対して物価高対策のバラ撒きなど政権浮揚策を次々打ち出しながらも、退廃する資本主義を「成長と分配の好循環」させるような打開策は打ち出せず、総理の座を譲ることになったのである。
        
 岸田は、「専守防衛」を投げ捨てる「安保3文書」の閣議決定をもって、軍事強国化の道を突き進み、軍事費の2倍化、日米軍事同盟の一体化など、反動的な帝国主義を深化させ、それを手柄だと並べるほどであった。
        
 しかし、安倍暗殺を機に旧統一教会と自民党の癒着が明るみに出て政治不信が強まった上に、政治資金パーティー裏金問題が発覚。物価高への批判も相まって政権の支持率回復が簡単に望めないばかりか、裏金問題の対応で自民党内の支持も失っており、岸田政権の継続は困難と判断したのであろう。
        
 首相官邸での総裁選不出馬会見では総理総裁としての実績を並べ立て、「新しい資本主義のもと大きな成果を上げることができた」と自賛したが、黒を白と言いくるめようという魂胆が丸見えであった。率直な反省など無縁の虚勢を張ることで、「一兵卒」の存在感を示そうという狙いだ。
        
 会見で「大きな成果」と多々並べていることにも、岸田が志し半ばでの退場への未練がにじんでいるが、実態を見たら胸を張って言い張れるものなどなく、虚勢で「最終の美」を飾ろうとでも思ったのか知らないが、みっともない醜態を晒した記者会見であった。
        
 岸田はバラまきで借金財政を悪化させたばかりか、経済的に不安定さを増幅するような施策で、労働者の生活状態の悪化を一層深刻化させた。官製春闘で労働者を応援したと言うのか、とんでもない。景気回復も労働者の生活向上もできなかったではないか。
        
 政治資金規正法の改正を成立させたことなど自慢しているが、それが尻抜けなことは万民の知る所であり、「今回の総裁選挙では、自民党が変わる姿、新生自民党を国民の前にしっかりと示すことが必要」と、自民党の腐敗さえ是正できなかったことを示した。
        
 政権は自民党政治に馴れ合う野党に助けられて延命してきたが、アベノミクスを踏襲した無能な総理総裁として岸田は引っ込むしかなかった。労働者・働く者を瞞着し負担を押し付け、金権腐敗で軍事強国化の自民党政治への批判に岸田は耐えきれなかったのだ。

 岸田は「身を引くこと」で自民党への支持を繋ぎとめられると期待しているが、政権運営に行き詰まったことを示した総裁選不出馬であり、労働者は自民党政治をさらに追い詰め一掃していこう。 (岩)