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巻頭言



【2024.9.5】
野党連携、政治手腕を売り込むが
 ──立憲代表選に野田元首相が立候補

【2024.8.29】
‶確トラ〟から‶もしハリ〟へ
 ──流れが変わった米国大統領選?!

【2024.8.16】
低迷する支持率に耐えられず
 ──岸田の総裁選不出馬表明


 過去のメッセージへ

野党連携、政治手腕を売り込むが
立憲代表選に野田元首相が立候補
2024年9月5日


        
 自民党の新総裁選挙に並行して、立憲民主党(以下立憲)の代表選(4日告示、23 日投開票)に向けた動きが活発となっている。8月末現在、野田、枝野、泉の3名が立候補を決定、その他、江田、西村、馬淵、吉田らの名が上がっている(9月5日時点で、西村や馬淵は立候補を辞退している)。毎日新聞の全国世論調査(8月24、25日)によれば吉田を除く6名の支持率は、野田27%、枝野14%、泉7%、江田4%、西村2%、馬淵2%、6名の中には支持する人の名はない24%となっている。ここでは断トツの支持率である野田の政策を検討しよう。
    
        
民主党政権破綻の真剣な総括なし

        
 野田は代表選出馬を決断したこと理由について「再び首相を目指す決意を固めた」、「国家を背おう覚悟と力量が問われる。刷新を実現するために経験が必要ではないかと思い始めた」と述べた。
        
 野田は「国家を背負う力量」と政治「刷新を実現するための経験」の必要を訴える。党内からも、首相を務めた経験や野党連携への期待から、「新鮮味は乏しいが、元首相としての安定感がある。経験不足の自民党新総裁と差別化できる」(衆院若手議員)との期待の声も上がっているという(朝日、8・30)。
        
 野田は、民主党菅内閣総辞職を受けて2011年9月、民主党と国民新党連立の野田内閣を発足させたが、民主党の公約にない消費増税を謳い、公約違反を追及され解散・総選挙に追い込まれ、その後の自民党安倍長期政権誕生のきっかけとなった。
        
 野田は首相としての経験と実績を売り込んでいる。しかし、首相になった経験があるといっても、労働者・働く者の生活改善・向上としてその後に残るような功績はなにもない。
        
 社会保障を充実すると公約に掲げはしたが、実際には現状を変えないバラ撒き政治に終始し、財政ひっ迫に陥り、公約違反の消費税増税に突き進んだのである。民主党政権は自民党の批判によって解体したというよりも、自ら行き詰まり崩壊した。野田は民主党政権崩壊の原因について何の根本的な総括もしていない。したがって、首相としての「経験」とか「実績」を吹聴するのは無責任である。
        
無力で反動的な「野党共闘」

        
 野田を強く後押ししているのは小沢である。小沢は、共産党を含む野党共闘を重視した枝野を批判、自民党政権との対決というよりも問題解決の政策を提案して、国民の支持を広げる「提案型」路線を掲げ代表となった泉に反対し、野党共闘を軽視しているとして野田を押している。
        
 政権を奪取するためには野党共闘を重視すべきだというのである。とはいっても、小沢の野党が塊(かたまり)になるというのは、共産党抜きの話である。
        
 野田なら国・民や維新との話し合いができると言うのだ。野田自身も、「共産党とは対話できる環境は必要だが、一緒に政権を担うことは出来ない」とする一方、「本来国・民とは合流を目指さなければならない」と言い、政権を取るためには「中道から右のサイドの保守層の野党」との協力が必要というわけで維新との共闘を重視している。もともと「分厚い中間層の復活」を政策課題の中心とし、「国家経営の要諦」として日米を基軸、皇室を大切にすることを掲げる野田と維新とは政治的に近い関係にある。
        
 実際に野田は、8月 23 日、維新の企画した「政治改革」をテーマとした勉強会に講師として出席している。そして「候補者をなるべく一本化した方が良い。与党を過半数割れに追い込む絶好のチャンス、問題意識は(維新と)共有できた」と語り、維新も「野田氏の感覚は我々と変わらない」とエールを送っている(朝日、8・24)
        
 「現実政治」を掲げる国・民は野党として初めて、自公政権の当初予算案に賛成(22年度)した。国・民が要求してきた高騰化するガソリン価格負担を軽減する国家からの助成金が計上されているというのが賛成の理由であった。一方、維新は裏金づくり問題では、政治資金の使途の内容公表は 10 年後とするという提案を行い、自民党を助けている。その他、「第二自民党と呼ばれてもいい」(馬場代表)と公言したり、「米国と日本の核の共有」を唱えたりしたこともあった。
        
 野党と言っても、「現実政治」を掲げ、「労資協調」で資本にすりよったりする政党(国・民)や、「第二自民党と呼ばれてもいい」と公言し、労働運動を敵視するような政党(維新)と一緒になって、仮に自民党にかわって新政権がつくれたとしても、こんな政権はたちまち破綻し、労働者、働く者に見捨てられるか、もっと反動的な政府にとって代わられるだけであろう。
        
資本に反対する闘いの構築を

        
 野田の目指す自民党に代わる「政権構想」とは反動的なものであり、労働者・働く者はどんな期待や信頼も持ちえない。労働者は20数年前の、自ら公約違反を行い自滅した民主党政権の経験から真剣に学ぶべきである。
        
 民主党への不信は今なお強く残っている。それは、裏金づくりで自民党が支持率を大きく後退させ、信用を失墜させているといっても、自民党の支持率29・9%に対して、立憲は5・2%、維新2・4%、共産2・6%、国・民0・8%、社民0・5%、れいわ新選組0・8%等々と野党は伸びず、支持政党なしが45・7%に膨らむ結果(8月、NHK調査)に示されている。自民党への怒りや不信が野党への支持に向かわず、支持政党なしが有権者の半分近くにまで膨れ上がっているのだ。
        
 労働者・働く者にとって求められているのは、労働の搾取に基礎にたった資本の体制の下でのあれこれの改良を約束する無力なブルジョア的、小ブルジョア的改良政治ではなく、労働者・働く者に依拠し、資本の支配そのものに反対し、差別と搾取を克服していく社会を目指す階級的な政治を目指していく闘いである。(T)
        

‶確トラ〟から‶もしハリ〟へ
流れが変わった米国大統領選?!
2024年8月29日


        
 8月22日の民主党全国大会でハリスが正式に民主党大統領候補に指名され、指名受諾演説を行い11月の大統領選挙は、トランプとの一騎打ち(他にも何名か立候補するが)になった。バイデンが指名されても一騎打ちに違いはなかったが、バイデンは6月のトランプとの討論会で衰えを感じさせる醜態をさらけ出し、民主党内の「バイデンでは戦えない」という危機感を急速に生み出した。大統領選挙に向け民主党が追い詰められた末の、バイデン撤退発表とハリスの後継指名であった。
        
 ‶高齢と認知機能〟に不安を抱えるバイデン(81歳)で、戦えるかという不安は、若いハリス(59歳)の登場によって払しょくされた。トランプの政権奪還に対する危機感と相まって民主党と支持者を結束させ、支持率は14日に発表された選挙分析機関クック・ポリティカル・リポートによれば7州の激戦州ではハリスが5州でリードし、22日に発表された全国レベルの世論調査でもハリス47・6%、トランプ46・7%とわずかであるがハリスがリードしている。
        
 両候補の支持層について、「ハリス氏が大卒の白人、黒人やヒスパニック系、若年層の支持を集め、トランプ氏は非大卒の白人を中心に支持を固めている。」と報じられた。11月に行われる大統領選まで2か月あまりであるが、‶確トラ〟が‶もしハリ〟に変わったように何が起こるかわからない。
        
 民主党全国大会でハリスは、トランプの「米国を再び偉大に」(MAGA)に対して、議事堂襲撃を例に挙げて、「もし再び権力を与えたら、彼が何をするつもりなのか考えてみてほしい」と〝民主主義の危機〟を訴えた。ハリスは、大統領選に向けたスローガン「我々は後戻りしない」を繰り返した。
        
 トランプの手法同様に、星条旗やUSAのプラカードを代議員に配り、演説では愛国心を訴え、USAコールが繰り返された。共和党トランプの米国第一主義のポピュリズムに対抗するハリス民主党の立場は、「我々は世界史上、最高の民主主義を受け継いでいる」、「世界最大の特権に伴う、壮大な責任を維持しよう。米国人であることの特権と誇りだ」(朝日新聞デジタル8月22日)。
        
 世界支配の‶帝国主義的特権〟を誇り愛国心を鼓舞し、自由と民主主義の盟主として、米国第一主義のトランプに対抗する立場をハリスは強調している。どちらもアメリカ帝国主義の特権維持の立場に変わりはない。労働者の課題は、ブルジョア政治から独立した階級的立場で大統領選挙に〝介入〟(例えば、トランプの女性差別主義の中絶禁止政策への抗議やハリスのイスラエル支援への抗議など、大衆的な運動の広がりを支援するなど)し、トランプやハリスの反動的立場を暴露して、闘う労働者の階級的な団結を打ち固めることだ。
        
 日本を振り返れば、‶確トラ〟や‶もしハリ〟に右往左往する日本政府、自民党総裁の椅子をめぐる政策論争無き長老による多数派工作の暗愚の政治であり、埋没し忘れられている立憲の代表選である。日本の政治の劣化を克服できるのは、労働者政党の闘いの発展にかかっている。政治の秋にはまだ暑い日が続くが、共に頑張ろう!  (古)
        

低迷する支持率に耐えられず
岸田の総裁選不出馬表明
2024年8月16日


        
 14日午前、岸田が総裁選不出馬を表明した。岸田はつい最近まで、「道半ばの課題に結果を出す」と、続投に意欲を示していたから、突然の表明に〝衝撃〟が走った。労働者にしてみれば岸田は総理をいつ辞めてもおかしくなかった。むしろ遅すぎた〝決断〟である。
        
 内閣支持率低迷に対して物価高対策のバラ撒きなど政権浮揚策を次々打ち出しながらも、退廃する資本主義を「成長と分配の好循環」させるような打開策は打ち出せず、総理の座を譲ることになったのである。
        
 岸田は、「専守防衛」を投げ捨てる「安保3文書」の閣議決定をもって、軍事強国化の道を突き進み、軍事費の2倍化、日米軍事同盟の一体化など、反動的な帝国主義を深化させ、それを手柄だと並べるほどであった。
        
 しかし、安倍暗殺を機に旧統一教会と自民党の癒着が明るみに出て政治不信が強まった上に、政治資金パーティー裏金問題が発覚。物価高への批判も相まって政権の支持率回復が簡単に望めないばかりか、裏金問題の対応で自民党内の支持も失っており、岸田政権の継続は困難と判断したのであろう。
        
 首相官邸での総裁選不出馬会見では総理総裁としての実績を並べ立て、「新しい資本主義のもと大きな成果を上げることができた」と自賛したが、黒を白と言いくるめようという魂胆が丸見えであった。率直な反省など無縁の虚勢を張ることで、「一兵卒」の存在感を示そうという狙いだ。
        
 会見で「大きな成果」と多々並べていることにも、岸田が志し半ばでの退場への未練がにじんでいるが、実態を見たら胸を張って言い張れるものなどなく、虚勢で「最終の美」を飾ろうとでも思ったのか知らないが、みっともない醜態を晒した記者会見であった。
        
 岸田はバラまきで借金財政を悪化させたばかりか、経済的に不安定さを増幅するような施策で、労働者の生活状態の悪化を一層深刻化させた。官製春闘で労働者を応援したと言うのか、とんでもない。景気回復も労働者の生活向上もできなかったではないか。
        
 政治資金規正法の改正を成立させたことなど自慢しているが、それが尻抜けなことは万民の知る所であり、「今回の総裁選挙では、自民党が変わる姿、新生自民党を国民の前にしっかりと示すことが必要」と、自民党の腐敗さえ是正できなかったことを示した。
        
 政権は自民党政治に馴れ合う野党に助けられて延命してきたが、アベノミクスを踏襲した無能な総理総裁として岸田は引っ込むしかなかった。労働者・働く者を瞞着し負担を押し付け、金権腐敗で軍事強国化の自民党政治への批判に岸田は耐えきれなかったのだ。

 岸田は「身を引くこと」で自民党への支持を繋ぎとめられると期待しているが、政権運営に行き詰まったことを示した総裁選不出馬であり、労働者は自民党政治をさらに追い詰め一掃していこう。 (岩)