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GDP上昇は「経済成長」を意味しない
イラン攻撃で生活悪化は必至
2026年3月12日
トランプとネタニヤフによるイラン攻撃で、まず石油関連物資の価格が上昇し始めた。
物価上昇が「経済成長」にとってプラスであるという観念に染まるブルジョア(高市ら)にとって、元来、善であるはずの物価上昇に危機感を丸出しにしている。高市らは物価上昇を手放しで喜ぶことができない事態に突入したと感じているようだ。そこで、この間の物価上昇が何を意味するのかを、各種統計資料から検討してみた。
物価上昇をGDPやGDIなどから見る
22年から名目GDPが大幅に増えている。それを見て、高市政権は「経済成長」が始まった、これをさらに確実なものにするためにと「経済成長戦略」を立ち上げている。
確かに、25年10~12月期(年換算)の名目GDPは671・6兆円であり、21年同期の579・5兆円と比較すると92兆円(増加率は16%、年増加率は4%)も急速に増えている。17年から21年の名目増加額はわずかに9・8兆円(増加率は1・7%、年増加率は0・4%)に過ぎなかったのだから、21年以降の増加は相当なものだ。
それでは、上記の数値を実質GDPで見るとどうなるか。21年10~12月期では、それは580・0兆円であり、25年同期では591・9兆円となっている。
この間の増加額は11・9兆円(増加率は2・1%、年増加率は0・5%)であり、17年から21年までのそれと大差がないばかりか、上記に示した名目GDPの増加率とほとんど一緒である。つまり、21年~25年の実質的なGDP拡大はほとんど無かったことを意味している。
他方、GDIはGDPに対して輸出入金額の変動を加えた統計であり、円安による生活への影響が反映された数値になっている。17年度の実質GDIは576・0兆円であり、21年度のそれは566・6兆円、24年度のそれは577・5兆円となっている。
これを見ると、17年度と21年度の比較では9・4兆円も減り、17年と24年の比較ではわずかに1・5兆円増額しているに過ぎない。このように、実質GDIの最近の変化を見れば分かるように、円安の増進によって物価が上昇し、「実質の総所得」(企業の利潤と労働者の賃金など)はほとんど増えていないことが分かる。
それはなぜか?企業は実質的に利潤を増大させたが、労働者の実質賃金低下によって実質GDIが大して増えないことが起きているのだ。例えば、20年の実質賃金を100とした場合、24年のそれは99と1%も大きく下落している――政府の「毎月勤労統計調査」より。
次に、GNI(国民総所得)という海外から入ってくる、企業の「利益」や労働者の「所得」を加えた数値を見ていこう。
これによると、17年度の実質GNIは596・6兆円であり、21年度のそれは595・1兆円、24年度は613・2兆円であった。17年度と21年度の比較では、1・5兆円も減少したが、21年度と24年度の比較では、実に18・1兆円も増加している。それは、国際収支のうち、海外との取引の結果を示す経常収支が近年大幅に増額していることと大いに関係している。
経常収支の一項目である「第一次所得収支」(対外直接投資によって設立した海外子会社が得た利潤を親会社の会計に還流させるなど)は、21年には20・4兆円の黒字を計上し、24年には40・2兆円、25年には41・6兆円もの大幅な黒字を弾き出し、貿易収支の赤字やサービス収支の赤字を補い、国内経済の低迷をカバーしているからだ。
実質GNIや経常収支の「第一次所得収支」を見れば明らかなように、日本資本主義は国内の資本の過剰を尻目に、さらに「資本輸出」を強めており、ますます「帝国主義化」した資本主義に、また軍事強国化を目指した国家なっていくのは必至である。
以上、各統計を見ながら、名目GDPを持ち上げて自慢する高市政権の論拠を掘り崩してみた。どの経済統計を見ても、物価が高騰し始めた22年以降にいくらかの名目的な上昇があるだけで、実質的な「経済成長」は見られない。
要するに、物価が上がりそれにつれてGDPも上昇する、その結果、「経済成長」につながり労働者の生活も良くなるというのは詭弁である。むしろ、物価上昇が起きれば、労働者の実質賃金が低下するのは明らかであり、各種統計もそれを証明している。
労働者は高市政権が繰り出す「経済成長論」に与せず、理論的に武装し、組織的にも団結し、「資本と賃労働」の関係を打破するために反撃しなければならない。そうした質と量によって広範囲に組織された労働者の闘いが無ければ、今後の生活も未来もおぼつかない!
労働者は急きょ始まったイラン攻撃に抗議すると共に、高市政権のGDP上昇が経済成長に繋がり、財政不安も打ち消すことが可能であるかに言う欺まんと矛盾を暴露し、断固として高市政権の打倒を目指して闘わなければならない。 (W)
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