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巻頭言



【2022.8.18】
自ら招いた政治不信
 ──岸田第二次改造内閣の打算とジレンマ

【2022.8.4】
旧統一教会と自民党の癒着を糾弾する
 ──資本主義はカルト宗教団体を生み出す温床

【2022.7.28】
憲法改悪に進む岸田に反撃を
 ──憲法闘争を堂々と闘おう

【2022.7.15】
反動・腐敗の安倍の国葬に断固反対する
 ──安倍を美化することは出来ない

【2022.7.14】
安倍元首相の死
 ──容疑者、山上の深い闇

【2022.7.1】
自公政権との闘いの弱さ示す参院選
 ──労働者党の組織建設こそ急務

【2022.6.17】
破綻する〝異次元〟金融緩和政策
 ──金利上昇必至で、財政危機深まる

【2022.6.3】
ブルジョア政党へ脱皮した共産党
 ──政権に加われば「自衛隊合憲の立場とる」と

【2022.5.20】
沖縄から一切の基地の撤去を
 ──沖縄と本土の労働者による岸田政権一掃の闘いとともに

【2022.4.28】
さらに 自衛隊の戦力、より攻撃的に
 ──自民党、「反撃能力」保有を首相に提言


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自ら招いた政治不信
岸田第二次改造内閣の打算とジレンマ
2022年8月18日



 参院選で勝利した岸田内閣の支持率が急落し始め、岸田は慌てて内閣改造に踏み切った。だが、改造後の支持率も下がり「異常事態」になっている。

内閣改造に踏み切った岸田の思惑と挫折

 そもそも、7月に行われた参院選(7月10日投開票)で圧勝した岸田は、今後国政選挙が3年間行われず岸田流の采配が可能という「黄金の3年」を手に入れたと言われたが、実際には岸田内閣への支持は参院選前から低下し始めていた。

 例えば、日経新聞が6月20日に報じた調査結果によれば、内閣支持率は60%で5月の前回調査から6ポイント低下し、毎日新聞やANNの調査結果では5割を切っていた。その理由は「物価や円安対策」への不信であり、「資産所得倍増プラン」や「防衛費増額」に対する「不支持」でもであった。

 さらに、共同通信が7月30~31日に行った世論調査によれば、内閣支持率は同月11~12日の調査と比べ12.2ポイントも急落し、昨年10月の岸田政権発足以降で最低の数字(支持率51.0%)になっていた。

 この世論調査の結果を分析した共同通信は、岸田内閣の支持率が急落した原因について、安倍元首相の国葬決定、物価高騰、コロナ対策、旧統一教会問題を挙げている。

 岸田が安倍の「国葬」を9月27日に行うことを発表したのが7月14日であり、国家予算をつぎ込んでまで、旧統一教会と最も深い関係にあった安倍の「国葬」を行うことには反対だという意見が53.3%(賛成45.1%)もあった。

 物価高騰に対しては、円安に歯止めをかけられず輸入品価格が軒並み上昇し、6月には消費者物価指数(総合指数)はとうとう対前年比で2.4%となり、政府の物価対策に対する否定的な評価は63.6%(肯定的評価28.1%)と高まった。

 コロナ対策については、政府の対応に肯定的な評価は直前の調査(7月11~12日)に比べて、7.7ポイントも大きく下落し53.3%になった。それは、「コロナ第7波」に対する対策放棄とも言える政府方針が明らかになったからだ。

 選挙明けから、コロナ感染者数が急増し過去最高を記録したが、政府も専門家も「重症者数が少ないから」と何ら手を打たず、挙げ句に、自治体の確保した感染者入院用ベッドに「空き」がある筈なのに、実際には、入院できず自宅待機を余儀なくされた感染者が相次いで死亡した。感染者の統計についても、政府は保健所がパンクしていることを理由に、統計を中止すると言いだす始末であった。

 開業医や薬剤師の協力を得て大規模に感染検査と把握を行う体制(発熱者用の臨時検査場など)さえ考えておらず、臨時の隔離施設(ホテルなど)を確保することも出来ていなかった。7.7イントも下落したのは、政府の無策と対策放棄が暴露された結果であったろう。

 加えて、安倍殺害事件をきっかけに、旧統一教会(教団)と自民党との癒着や〝協業〟関係(教団は自民党を強く支持し自民党議員の選挙運動を担い、自民党は教団の霊感商法や信者から資産を巻き上げる不法行為に対する社会的追及の盾となり、教団の権威と広告塔の役割を果たしてきた)が明るみに出るや、次々と閣僚や自民党議員との濃密な関係が暴露された。

 岸田内閣に対する人々の 不信が高まり、自民党支持率も下がり、 いよいよ 岸田は 人々の目先を変え支持率の回復を策動せざる を得なくなった。こうして岸田は、9月に予定していた新体制作りを早め、今月(8月)10~11日に第二次改造内閣を発足させたのだ。

 しかし、岸田改造内閣の新たな閣僚と執行部の顔ぶれは、皆、ごりごりの反動ども(経済安全保障の担当大臣に収まった高市早苗、総務政務官に収まった杉田水脈らを見よ!)であり、しかも、教団と縁が深かった人物が大臣や副大臣に収まった。

 大臣20人のうち、少なくとも6人が教団と関係を持っていたし、副大臣26人と政務官28人の計54人のうち、すくなくとも19人(副大臣8人、政務官11人)が教団と関係していたとマスコミは報じている。

 岸田は新内閣人事に当たって、「教団との見直しを約束した者を任命する」かに言ったが、「議員は自ら責任説明をはたすべきだ」と個人任せであり、自民党と教団との縁を断ち切るとの宣言さえできない有様だ。

 岸田政権は自らが招いた政治不信を払拭しようと内閣改造に打って出たが、労働者は岸田の内閣改造の狙いをとっくに見抜いており、改造が成功する材料は皆無だ。

 その結果が世論調査にも現れている。

 NNNと読売新聞が緊急に行った世論調査によれば、「岸田改造内閣を『支持する』と答えた人は51%で、政権発足以来、過去最低となった。改造直前の前回調査(8月5~7日実施)から6ポイント下落。不支持率は34%(前回32%)と過去最高だった」、「今回と同じNNNと読売新聞による7月11日から12日の調査では、『支持する』が65%だった。参院選後の1ヶ月で14ポイント下落したことになる。政権発足から高い支持率を誇った岸田政権だが、一気に瓦解した格好だ」( SmartFLASH、8月12日)。

自民党政権を打倒するために労働者党と共に闘おう

 岸田政権に対する人々の不信は根深く、そう簡単に収まりそうもない。労働者はこの機を逃さず、岸田政権打倒の烽火を上げなければならない。そのためには、「安倍国葬」を中止させることはもちろん、軍事拡大路線の着火点となりうる補正予算についても、その内容を暴露し、執行停止に(予算案の廃案)に追い込んで行かなければならない。

 今秋には、今年度の補正予算編成の議論が行われる予定だ。軍事費のGDP2%超への拡大を目指す岸田政権は補正予算の全てを国が直接支出する「真水」で50兆円規模(実際は国債発行 による借金で揃える)を計画しているとされる。

 しかし、野党は岸田政権の数字ありきを批判するが口三味線の類であり、労働者の闘いを発展させることなど(従って「労働の解放」という歴史的事業を前進させること)、さらさら考えていない。だから、共産党はロシアのウクライナ侵攻や米中対立(日中対立でもある)を目の当たりにして、自ら「自衛隊の活用」を宣言し、政権についたら「自衛隊合憲の立場をとる」と明言するのである。

 社民党や立憲民主党もまた、自民党の「暴走を止める」と言うのみであり、自民党の軍事増強策が日本資本主義の覇権主 義、帝国主義化の一環であることを暴露して闘おうとしない。日本資本主義は今や帝国主義化(この経済的基礎は「資本輸出」の増大であり、海外に築いた巨大な資本権益を防衛するために軍事拡大を必然としている) しているが、彼らはほどほどの軍拡を望み、ほどほどの帝国主義ならいいというスタンスで労働者を裏切るのである。

 さらに資本主義を克服することなどは、おくびにも出さず、能天気に「北欧型の福祉社会」や「平和」をめざすとも言うのである。

 しかし、資本主義が続く限り、帝国主義化やその帰結である帝国主義戦争は不可避である(共産よ、社民よ謹聴!)。かつての二つの大戦でもそうであったように、そのたびに労働者や家族が最大の被害者になってきた。軍事費拡大や「自衛隊活用」は、世界の労働者双方を敵対させ、闘わせることに繋がる。

 労働者にとって必要なことは、帝国主義、覇権主義の根底である資本主義を打倒し、賃労働の廃絶と「労働の解放」を勝ち取ることである。これ無しに、「恒久平和」は訪れない。   (W)
        

旧統一教会と自民党の癒着を糾弾する
資本主義はカルト宗教団体を生み出す温床
2022年8月4日



 安倍元首相の銃殺事件をきっかけに、自民党の現職閣僚や国会議員とカルト集団、「世界平和統一連合」(旧統一教会)との癒着関係が次々と明るみに出てきている。岸田内閣の閣僚では、安倍の実弟である岸信夫防衛相(安倍派)が過去に自分の選挙で旧教会にボランティアで投票を呼び掛ける電話作戦など手伝ってもらったことがあると告白。同じく安倍派の末松信介文部科学相は教会メンバーにパーティ券を買ってもらったことがあると公表した。

 安倍派ばかりでなく、二之湯国家公安委員長(茂木派)は、2018年に関連団体のイベントで「実行委員長」を務めたことを明らかにし、磯崎仁彦官房副長官(岸田派)も21年に関連団体のイベントに参加していた。

 教会と自民党との関係について、「党として組織的な関係はないことは確認している」(茂木幹事長)とか「社会的な問題になっている団体との関係については、政治家の立場からそれぞれ丁寧に説明していくことは大事」(岸田首相)と、個々人の問題であって自民党としてはまるで無関係であるかに言いはやしている。

 しかし、教会との癒着は、自民党の個々の党員だけの問題ではなく、党全体に関わることである。

 かつて自民党の幹事長代理、自民党の参院国対委員長も務めたことのある伊達忠一前参議院議長(2019年引退)は、2016年参院選の比例区に出馬した宮島喜文を応援した際、教会の組織票を回すように依頼し当選を果たしたが、22年の選挙では安倍に断られ、宮島は出馬辞退に追い込まれたことを証言している。この伊達発言は、安倍が教会の票を取り持つ役割を果たしていたことを明らかにしている。

 自民党と教会との癒着は昨今のことではない。〝東西冷戦〟時代の1968年、教会は反共産主義を掲げる政治団体「国際勝共連合」を創設した。当時から安倍の祖父、岸信介元首相ら自民党右派を通じて自民党と結びついてきた。

 安倍と教会の深い関係は、2012年安倍が首相に返り咲いて以降である。憲法改定を掲げる安倍や自民党にとって、教会は「組織票に加え、選挙の運動員などの人員を提供してくれる有用な存在」であった。一方、教会にとって安倍ら有力な政治家、政権政党と結びつくことは、彼らの政治的、カルト集団としての目的にとって好都合であった。教会は、政権政党と関係を深めることによって、日本での勢力を拡大してきたのである。

 統一教会の名称変更問題も自民党政権との癒着を象徴している。

 統一教会は新興のキリスト教団を名乗っているが、内実は、反共産主義を掲げ、教祖の決めた見知らぬ者同士が一堂に会し、結婚する〝合同結婚式〟や霊感商法で壺や印鑑などを法外の高値で売りつけ、また信者から土地や建物、多額のカネ巻き上げる反社会的カルト集団である。1980年代から90年代にかけて彼らの〝合同結婚〟、霊感商法が訴訟になるなど社会的非難を浴び、一時勢いが衰えた。

 教会は社会の非難をかわすために、97年、名称の変更を企てた。だが当時、文化庁はこれを認めなかった。ところが18年後の安倍政権の下での2015年、突如、文化庁は、1年間は、新名称の「世界平和統一家庭連合」に「統一教会」の旧名称も併記するという条件付きで変更を承認し、事前の報告を受けた文科省もこれを認めた。1年間の旧名併記など、名称変更を認めるためのごまかしでしかなく、霊感商法や献金という名目で信者に多額のカネ、財産をむしり取ることが続けられてきたのである。

 名称変更当時の文科省の大臣は、現自民党政調会長の下村博文(細田派)であった。2013~14年当時、統一教会の日刊紙『世界日報』や同月刊誌『ビューポイント』に下村のインタビュー記事が複数掲載され、また世界日報社長は16年、下村が代表を務める自民党東京第11区支部に6万円を寄付していた。統一教会が犯してきた反社会的な犯罪を隠すための名称変更を国家が認めた背景には、統一教会と下村とのこうした密接な関係があったのである。

 カルト集団統一教会は、自民党だけでなく、他の政党にも浸透している。立憲では中川正春元文科相や篠原孝幹事長代行らが関連団体の会合に祝電を送っていた。維新では藤田文武幹事長ら国会議員13人が教会と接点があったと公表されている。国民では玉木雄一郎代表も、教会と深い関係にあると言われ、「世界日報」の元社長から16年に6万円の寄付を受けたことが明らかにされている。

 これらは氷山の一角に過ぎないのであり、政党幹部だけでなく国会議員も含めればはるかに多くが教会と接点を持っている。例えば日刊ゲンダイ(7月29日)によると教会との関係のある歴代の閣僚、幹部は34人、国会議員は98人(衆院78人、参院20人)に上っている。

 反社会的なカルト集団・統一教会が霊感商法など数々の犯罪を行いつつも、罰せられることなく、存在していることの責任は、政権維持、議席確保のために選挙で利用・結託してきた自民党にある。

 しかし、法律で教会のような反動的な団体を取り締まるだけでは、それはなくならない。私有財産を基礎として、利潤獲得を目的とする資本主義的生産の下では、多くの人々が将来に展望を持つこともできず、貧困、労働苦をもたらしている。資本主義は統一教会のような宗教団体を生み出す温床である。自民党政治と闘い、資本の搾取からの解放を目指す労働者の階級的な闘いを発展させていかなくてはならない。  (T)
        

憲法改悪に進む岸田に反撃を
憲法闘争を堂々と闘おう
2022年7月28日



 参院選では、憲法改定が争点の一つとなったが、自民が改選議席125のうち過半数63議席を獲得し、参院新勢力は、与党公明に加え改憲に積極的な維新、国民民主と合わせ改憲発議に必要な 3分の2以上を獲得した。「9条を守れ」だけの共産、 社民などの護憲勢力は、労働者をはじめ国民の支持を得ることはできなかった。岸田はこの勝利を利用して、改憲に前のめりになっている。我々労働者は、新たな岸田政権との闘いを始めなければならない。

 参院選の偶然の勝利を利用する岸田政権

 岸田は、参院選の結果を受け、「安倍元首相の思いを受け継ぎ、情熱を傾けた拉致問題や憲法改定など、自身の手で果たすことができなかった難題に取り組む」とし、憲法改定について「選挙で示された民意を受けて与野党全体で一層活発な議論が行われることを強く希望する」と述べた(7月11日)。

 しかし、岸田は今年1月の施政方針では、「最優先課題は、新型コロナ対応」であるといい、憲法改定は最後に「国民的議論を喚起していく」と触れた程度であった。参院選の自民公約でも、憲法改定に関して「早期の改定を実現する」とし、 改定時期は明記しなかった。

 改憲に積極的だったのは安倍で、4月3日の憲法改定を目指す集会で「やるべきことをやる」と憲法改定に強い意欲をみせ、今回の参院選でも「9条を変えて、自衛隊の違憲論争にしっかりと終止符を打つことに集中すべき」と安倍はぶち上げていた。

 これに対し、「(岸田は)改憲を押し出す考えはさらさらない」と側近議員が言っていた(7月5日朝日)。その岸田が参院選勝利を受けて、「憲法改定」を俄かに言い出した。安倍が会長だった自民党内最大派閥清和会を取り込んで自らの政権基盤の強化を図る意図がみえる。

 しかし、世論調査に表れているように、国民が投票で重視した政策は、「経済」(NHK出口調査で45%であった。憲法改定は5%で選択肢の中では最下位だった。自民は公約で「新しい資本主義で、強い経済と豊かさを実感できる社会を創る」と謳った。実質賃金は1991年を100とすると2019年は105とほぼ横ばいで、安倍・菅そして岸田になっても賃金上昇は全く達成されていない。

 労働者は非正規などに追いやられ生活苦に陥っている。しかも物価上昇は、今年に入ってから食品やエネルギーなどが値上がりし、消費者物価指数(実質賃金をみる時に用いる「持ち家の帰属家賃を除く総合」)は、4~6月は前年同月比3%ほどの上昇が続いている。多くの労働者・働く者、そして、下がり続ける年金を頼りに生活する高齢者などで生活困難が深まっている。岸田政権は経済改善に有効な手立てを立てることができず手詰まりになっているが、掛け声だけでも「新しい資本主義」を掲げざるを得ないのである。

 そんな岸田政権は、野党の不甲斐ない闘いで参院選勝利を得たにすぎない。憲法改定などやっている場合ではないが、岸田は安倍の提唱した改憲に前のめりになっている。

 憲法闘争を堂々と闘い、岸田の反動攻勢に反撃を

 岸田政権のもとで、憲法改定をすることの賛否については、選挙前の世論調査では賛成36%、反対38%であった(7月6日朝日)が、選挙後では賛成51%、反対33%となり(7月19日朝日)、憲法改定賛成の「世論」が増えつつある。

 しかし、このときも首相に一番力を入れてほしい政策は、「物価対策」30%、「社会保障」23%、「景気・雇用」22%、「外交・安全保障」15%、「憲法改定」6%であり、国民の願いは生活改善に直結する「物価対策」であることに変わりはない。

 憲法改定は安倍の執念であったが、2018年3月に自民党は、当時首相の安倍の「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」という改憲案を受けて、「改憲4項目」条文素案を公表した。その中で9条改定は、第9条全体を維持した上で自衛隊の存在を明記するというもので、「第9条の2として、(第1項)前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持す る。(第2項)自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する」を加えるものであった。

 しかし、現憲法9条2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と、明確に戦力の保持と交戦権を認めていない。戦力である自衛隊との矛盾はあまりにも明らかである。2012年の自民党改定草案では、この矛盾を解消するために2項を削除し、「自衛権の発動を妨げるものではない」とし、国防軍の保持を明記していた。

 岸田は、安倍の改定案を基にした2018年の自民改憲案で改憲を進めるようであるが 、9条と自衛隊の矛盾の解消にはならない。自民党保守派はむしろ2012年草案を是としており、自民党内も一枚岩でまとまっているわけではない。

 自民党が改憲を持ち出すなら、野党はそれを正面から受けて立って、岸田政権と闘うべきである。自民・岸田は参院選の勝利に酔っているが、自民の比例区の絶対得票数は2割ほどである。大きな顔をして国民の代表と言えるわけもない。

 岸田が安倍の改憲策動を引き継ぐなら、野党は共産のように現憲法の「全条項を守る」ではなく、堂々と改憲論議をリードする気概を持って闘うべきである。例えば、「自衛隊が合憲であるということは明確な一貫した立場であり、自衛隊を明記することが国民投票でたとえ否定されても変わらない」(2018年安倍)というのであるから、自民の論理からいえば、9条を変える必要はないことになる。

 そして自民公約で「憲法改定に関して「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つの基本原理を堅持」というのであるから、むしろ、憲法の第1章に「国民主権」を、そして、法の下の平等という民主主義の原則に反する天皇制の廃止を掲げるのが先決ではないか。

 このように岸田を追い詰め、国民投票で勝って岸田政権を打倒するくらいの意気込みで、岸田の目論む改憲を粉砕しなければならない。我々もこの闘いに参加し、労働者の階級闘争発展の契機としていくであろう。  (佐)
        

反動・腐敗の安倍の国葬に断固反対する
安倍を美化することは出来ない
2022年7月15日



 岸田首相は、14日の記者会見で、参院選挙応援演説中に銃撃を受けて亡くなった安倍元首相の「国葬」を行うことを明らかにした。

 戦前の「国葬令」が1947年に廃止されて以降、首相経験者の葬儀の形式については、明確な根拠はなく、これまで吉田茂元首相を除いて「国葬」を行った例はなく、極めて異例なことである。

 岸田は、安倍の「国葬」を決めたことについて、次のように言う。

 「安倍元首相は憲政史上最長の8年8カ月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力で厳しい内外情勢に直面する我が国のために首相として重責を担った。外国首相を含む国際社会から極めて高い評価を受けている。こうした点を勘案し、この秋に『国葬儀』の形式で儀式を行う。我が国は暴力に屈せず、民主主義を守り抜くという決意を示す」。

 岸田は、安倍が長期にわたって「卓越したリーダーシップと実行力で首相としての重責を担った」とほめ讃えている。しかし真実は、安倍の9年間は、反動政治の強化と経済の低迷であった。

 安倍の政治は極めて悪質で下劣であり、従って反動的であった。

 例えば安倍は、戦前のアジア侵略による植民地支配のもとで、アジアの多くの女性が甘言や圧力で集められ、戦地に日本軍の「慰安婦」として送り込まれた、という歴史的事実を歪曲し、否定し続けた。この問題についての安倍の攻撃先は、社会科の教科書やNHKや他の多くのマスコミに対してであり、さらに、「慰安婦」問題の歴史的事実を調査・確認した「河野談話」に対してであった。

 また、国会での議員多数を頼みとして、安保関連法が強行採決され、これまで違憲とされてきた日米の集団軍事行動を合法化、自衛隊の行動範囲も世界的な規模にまで一挙に広げるなど日本の軍事大国化がすすめられた等々。

 一方、リーマン・ショック以来の日本経済の停滞を打破するということを謳い文句とした経済政策=「アベノミクス」では、経済は回復するどころか低迷を続けた。国内総生産(GDP)は、2012年の6272億ドルから2021年には5103億ドルへと減少、この結果、世界経済の日本経済の割合も8.3%から5.3%に低下した。この間労働者の実質賃金も、0.5%増とほとんど上がらず、物価上昇の下で多くの労働者が生活苦に見舞われている。

 増えたのは国の借金であり、超緩和政策で国債を日銀が買い取るという形式で国家は借金に借金を重ねた結果、現在、国の借金は1千兆円を超し、国の財政は破綻寸前である。

 岸田は「民主主義を守り抜く」ために安倍の「国葬」を行うという。

 だが、安倍政治はウソまみれの政治であった。

 「桜を見る会」で安倍事務所の関与はないと国会で嘘をつきとおし、森友学園の国有地売却では、「私や妻が関与していたということになれば首相も国会議員もやめる」と国会で約束したにも関わらず、ウソが発覚しても首相・議員に居座り続けたり、加計学園では便宜をはかった公文書を書き換え隠蔽を図ったり、その他働き方改革ではデーターを改竄する、オリンピック誘致では、IOC会議で、汚染水が垂れ流しになっているにもかかわらず「福島(原発)は国の完全なコントロールの下にある」と大ぼらを吹き、世界を欺いて誘致に導いたのは安倍である。

 ウソでごまかす政治は、「民主主義を守り抜く」どころか「民主主義」に悖(もと)る。こんな政治家を世界の要人を招いて「国葬」を行うことは世界に恥をさらすことではないのか。ウソでごまかす政治を世界中に認めよと宣言することではないのか。

 カルト集団「旧統一教会」にカネを搾り取られて、一家離散、生活苦に突き落とされた派遣労働者の恨みを買い、狙撃され死亡した安倍の死もまた、安倍の腐敗政治家ぶりを象徴している。安倍が狙撃の対象となったのは、生活を破綻させられた悪辣な教会から安倍が選挙の支援を受けるなど密接な関係にあったからである。

 岸田が、早々と安倍「国葬」を決めたのは、最大派閥の安倍派を取り込み、自己の政治的基盤を強めようとするためであり、また世界の要人を招き日本をアピールすることで点数を稼ごうという思惑からであろう。

 国民の税金を注ぎこみ安倍の「国葬」を行うことに労働者・働く者は断固反対である。安倍政治は労働者・働く者にとって災厄であったし、それをいささかでも美化することは出来ないからである。 (T)
        

安倍元首相の死
容疑者、山上の深い闇
2022年7月14日



 安倍元首相が選挙応援の演説中、山上元自衛官に狙撃され死亡した。選挙期間中のことであり、自民党政府や野党も含めた各政党、マスコミは、暗殺によって言論の自由を圧殺する「民主主義への破壊」行為として、一斉に非難声明を出した。

 しかし、これは的外れな非難だろう。山上が警察に語ったところによれば、母親が入信していた世界平和統一連合(旧世界基督教神霊協会=統一教会)に家族の生活をめちゃめちゃにされ、恨みを持っていたが、「安倍が(家庭連合の)友好団体にメッセージを寄せているのを見て、つながりがあると考え」たという。

 山上の母親は、1998年に、親族の死去に伴い建設会社の経営を引き継いだが、その頃に入会した統一教会に寄付(土地売却、生命保険など1億円超)を繰り返して破産。このため山上は、奈良県内トップクラスの公立高校を卒業するも大学への進学を断念、生活のために任期制自衛官として自衛隊に入隊している。山上は3年の任期満了で自衛隊を退任後、派遣社員として様々な職場で働いてきた。しかし、母親は一時統一教会を離れたが、2018~20年頃から再び教会と連絡を取りだした。そして21年、山上は安倍が教会の友好団体にメッセージを寄せたビデオを見た頃から、安倍殺害を決意したという。

 安倍暗殺の動機となったのは、宗教団体=統一教会に母親が寄付金を徹底的に搾り取られ、生活を破綻させられたことに対する強い憤りである。

 1954年、韓国で設立された「反共産主義」を掲げるカルト団体である統一教会は、日本では80年代以降、壺や印鑑などを法外な価格で購入させる「霊感商法」が社会的問題となり、教会への献金問題も含め、教会側は、「改めた」としているが、山上の母親の例を見ても、少しも改めてこなかった。

 山上の怒りは、こんな反社会的なカルト団体=教会、そしてまた教会と結びついている政治家に対するものである。山上は教会責任者を狙ったが、コロナで機会がなく、つながりのある安倍にターゲットを変えたと言っているという。

 生活苦や悩みにつけ込んで、高額の金銭をだまし取り丸裸にするようなカルト集団=統一教会、それを野放しにし、結託して、そこから資金援助を受けたり、選挙の票集めのために政治的に利用する政治家=安倍に対して、強い憤りを山上が持ったとしても当然である。

 だが、安倍を殺害したとしても、安倍のような反動政治家は出てくるし、山上のような人々を生み出している社会は変わらない。資本主義の下では真面目に働いているにもかかわらず生活苦にやんでいる人々が多く存在している、そしてまた社会の矛盾から目をそらし、「天上の幸福」や「心の幸福」を説く統一教会などの宗教がなくならない。しかし、山上はこのことを知らなかったとしても、それは山上の罪ではない。山上の不幸は社会の矛盾に目を向けることができず、社会的に孤立した存在であったからだ。孤立と絶望が〝テロ〟に走らせたと言える。
        
 労働の搾取に基づく、私的利益を追求する資本の支配に反対し、その根本的変革を目指す労働者の階級的な団結と闘いが追求されなくてはならない。 (T)
        

自公政権との闘いの弱さ示す参院選
労働者党の組織建設こそ急務
2022年7月1日



 共同通信社が参院選の有権者動向を探るための全国電話世論調査(第2回トレンド調査)を26~28日実施した。結果を見ると、比例代表の投票先は自民が18、19日の前回調査より1.0ポイント増の28.3%、前回3位の立憲は1.2ポイント増の8.2%で2位。公明が1.0ポイント増の7.2%、前回2位の維新が1.6ポイント減の6.1%であった。改選前から倍増の勢いとか言われていた維新は後退しているが、まだ激減というわけではない。

 憲法改正に「賛成」44.8%、「反対」44.7%と賛否拮抗。物価高への首相の対応については、「十分だと思う」との回答が15.3%、「十分だとは思わない」は79.8%であるが、岸田内閣の支持率への影響はまだ低い。日本の防衛費に関しては「今のままでよい」が36.3%で前回より4.8ポイント増えて最多だったというが、GDP「2%までの範囲で増額する」は3.1ポイント減の34.1%。「2%以上に増額する」は2.2ポイント減の13.7%、「減らす」は1.9ポイント増の9.5%で、防衛費増額賛成が半数近い。

 岸田内閣の支持率は前回より0.1ポイント増の57.7%、不支持率は1.8ポイント増の35.8%ということで、自公政権との闘いがほとんど前進していないことが窺える。

 物価高への政府の対策が不十分とはいえ、円安や戦争によるものという表面的な説明に終始する各政党やマスコミの解説ばかりで、資本主義体制への批判は深まっていない。

 円安に関しては、立憲が「岸田インフレ」と批判し、一面的に日銀の金融政策を問題にしたものの、なぜ金融緩和が必要だったのか、日米の金利差の関係もあるが、世界的な資本の体制の行き詰まりについて明らかにできず、原因究明や責任追及は尻すぼみであった。

 ロシアによるウクライナ侵攻での戦争を利用しての軍拡の動きには、外交での安全確保やアジア圏の安全協力といった野党の対案では、軍拡攻勢に反撃できないことを示している。ブルジョア的秩序維持の国際法の限界を問題にすることすらできず、反動派がのさばるのを許している。

 平和のために労働者の国際的な連帯を進めるということは、日本における岸田政権打倒の闘いを前進させ、各国の労働者も自らの政権獲得の闘いを進める中で勝ち取られるものである。ブルジョアの〝平和的〟施策に追従、期待することは破滅への道である。

 たいした効果のない「野党共闘」へのこだわりの強い野党への失望からか、れいわに左派系活動家が引き付けられるのは、「弱い者の立場」に立っているからであろう。「改革派」気取りの維新との対決も目立つ。はたしてれいわを労働者は支持できるだろうか。

 れいわの強がりは資本主義の生み出している矛盾に無自覚な〝闘い〟であって、「消費税ゼロ」にしても、MMT活用にしても、ポピュリズムでの人気取りであって、ブルジョア国家への幻想を強化させ、資本の支配への批判をマヒさせる反動的なものでしかない。

 選挙戦では各党のバラまき政策の競い合いの面もあって、労働者の階級意識の後退をもたらしているが、資本の矛盾の深化は労働者の闘いを強めざるをえない。労働者党の働きかけを強め、組織建設を前進させよう。 (岩)
        

破綻する〝異次元〟金融緩和政策
金利上昇必至で、財政危機深まる
2022年6月17日



 インフレを背景に米連邦準備理事(FRB)の利上げが加速するとの予想から米長期金利の上昇は勢いを強めている。欧州でも 2014 ~15 年にかけて導入されたマイナス金利政策は、インフレ抑制のために一斉に利上げに向かっている。ユーロ圏各国のほかスイスやデンマークの2年以上の長期金利はプラスとなった。

 早く利上げに踏み切った米国や英国では今後も利上げを継続するみこみであり、昨年末 1%以下だった2年債利回りはそれぞれ2.8 %、1.8 %まで上昇している。

 これに対して、利上げに向かう世界から 日本は取り残された形だ。 2 年債利回りはマイナス0. 007である。 日銀は金利操作で 10 年債利回りを人為的に0. 25 %以下に抑えている。〝異次元〟の金融緩和策で 投資を促す という政策を継続しているためだ。このため海外との金利は開く一方になっている。

 金利の低い国の通貨は、金利の高い国の通貨に比べて下落しやすい。金利の高い国の通貨を持っている方が有利なためだ。このため円 の為替相場は1ドル=135円余と1998年の リーマンショック以来の、24年ぶりの低い水準に低落した。

 かつて円安は競争力を強め輸出を伸ばし、経済を発展させると言われた。しかし、 現在 では、円安は国内総生産を押し下げる要因に様変わりした。製造業は低賃金と販売市場に直結した海外に移転し、輸出効果よりも、円安による原材料など輸入価格の上昇によるマイナスの影響が大きくなったためである。円安に加えて、新型コロナ、ウクライナ戦争の影響も加わり、物価上昇は深刻である。4月の輸入物価指数は円ベースで前年同月比 44.6%上昇した。円安による輸入物価の上昇は3割に達する。物価上昇は原材料、石油・ガスから食品はじめ生活物資全般に及んでいる。

 6月6日、日銀総裁黒田は、講演で「日本の家計の値上げ許容度も高まっている」と述べたが、あまりに現状からかけ離れたこの発言に批判が集中し、撤回に追い込まれ、 13 日には「大きな円安や急速な円安はマイナスになる」ことを認めざるを得なかった。世界的な利上げの中で、日本の超低金利政策の維持はますます困難になっている。

 「アベノミクス」のもとで2013年に日銀が異次元の金融政策に踏み切り、日本の国債は極めて低い金利が続いてきた。それを可能にしたのは日銀の国債買い取りである。法律で国債の日銀の直接買い取りは禁止されている が、銀行が買った国債を日銀が買い取るという形で、法の網をくぐりぬけてきたのである。

 新規発行された 国債のうちで日銀が購入する比率は、〝異次元〟の金融緩和が始まった 10%台から60%前後に上った。2016年に長短金利操作で金利を抑え始めた時には9割前後の国債を日銀が買い取った。こうして日本の普通国債残高は、21年度末に990.3兆円と過去最大に膨らみ、国内総生産に対する比率は177 %に達する。金利が上がれば新規国債及び借換債発行の金利が上昇する。金利の上昇で財政負担は雪だるま式に重くなるばかりであり、日銀の金融緩和策の矛盾は、ますます深まっている。 (T)
        

ブルジョア政党へ脱皮した共産党
政権に加われば「自衛隊合憲の立場とる」と
2022年6月3日



 さる5月27日、朝日新聞のインタビューに応えて、志位は共産党が参加する「民主的政権」では「自衛隊合憲の立場をとる」と次のように述べた。

 「自衛隊と共存しているので、政権としては理の必然として合憲の立場をとる。国民多数の合意なしに自衛隊を合憲から違憲に憲法解釈の変更はしない。党としては憲法9条と自衛隊の矛盾を、国民合意で一歩一歩解消するよう力を尽くす」(『朝日新聞』5月28日)。

 この志位の発言は4月の共産党会合で「急迫不正の主権侵害に際しては自衛隊を活用する」と発言したことを補強したものだが、「自衛隊と共存しているので」「合憲の立場をとる」とは一体何か。「自衛隊と共存している」というのは、自衛隊が災害時のみならず急迫不正の恐れから国民を守っていると言いたいのだろう。沖縄・那覇市議会の共産党議員団が沖縄復帰50年を記念して、自衛隊の「感謝決議」に賛成したが、志位も那覇市議団と同様に自衛隊を救世主の如くに描きだした。そうでなければ、こうした言葉は出てこない。

 さらに志位は「国民多数の合意なしに自衛隊を合憲から違憲に解釈変更しない」と言ったが、これは一体何だ? 共産党と市民連合は安倍政権が集団的自衛権を自衛の範囲だと憲法解釈を広げたことを批判したのではなかったか。今度は、「自衛隊と共存している」と、安倍や岸田が大喜びするような解釈を行い、「自衛隊は合憲」だと言い、次には、この「合憲解釈」を「違憲解釈」に変更しないと宣言したのである。

 共産党員や共産党支持者(批判的支持者も)は次々と繰り出す志位の発言を許すのか? 志位の発言は「民主的政権」を前提していると言っても意味はない。「朝日」の記者にさえ、共産党は「参院選に向けて現実路線をアピールする」と書かれる始末だ。

 政権に入るためなら、否、立憲と選挙共闘をするためなら、自身の党是であろうと、これまで「憲法違反」だと言ってきたことであろうと、全て投げ捨てるのである。原則など、もうどうでもいいと言うのである。

 共産党のブルジョア政党への脱皮は、もう完璧だ。共産党のブルジョア化は必然だと、我々は何十年も前から言ってきたが、その通りになった。SNSで、旧社会党が自衛隊は違憲だが合法的存在と現実路線を歩み始めた頃よりもっと堕落しているという批判が出て来ている。まったくそのとおりだ。

 共産党は未だに日本の帝国主義化を認めようとせず、対米従属論を掲げ、半永久的に日本の民族民主革命を追い求める小ブルジョア民族主義政党であった。ロシアのウクライナ侵攻や中国や北朝鮮の動きを目の当たりにして、日本国家の危機を感じて小ブルジョア民族主義はブルジョア民族主義に転化したのである。つまり、共産党にとって、労働者の国際主義などはどうでもよく、ブルジョア反動派との共闘を追い求め、日本の国家防衛戦争に寄って立つことを宣言したのである。  (W)
        

沖縄から一切の基地の撤去を
沖縄と本土の労働者による岸田政権一掃の闘いとともに
2022年5月20日



 15 日、アメリカ軍統治下にあった沖縄が日本に復帰してから 50 年の「沖縄復帰 50 周年記念式典」が行われた。沖縄の会場には岸田が出席し、「戦争によって失われた領土を外交交渉で回 復したことは史上まれで、日米両国の友好と信頼によって可能になったもの」と振り返った。岸田は沖縄復帰を日本の手柄のように言うが、まず沖縄がアメリカに占領される原因となったアメリカとの帝国主義戦争の反省から始めるべきだ。

 岸田は、「先の大戦で地上戦の舞台となった沖縄」というが、沖縄住民の4人に1人が亡くなった沖縄戦の惨状の言及はなかった。日本 の支配階級が十五年にもわたる「アジア・太平洋戦争」を開始せず、敗戦が明らかになったにもかかわらず戦争を継続させなければ、沖縄戦は避けられた。原爆投下にしても、主要都市への無差 別爆弾による空襲にしても、日本の支配階級の責任が問われなければならない。

 岸田が「50年たつ今もなお 大きな基地負担を担っていただいている 基地負担軽減に全力で取り組む」というが、全く口先だけの誤魔化しである。普天間基地の移設は、移設先の辺野古基地の工事が難航して、目途がたたない。橋本首相とモンデール駐日大使が「普天間の 5 7 年以内の全面返還」で合意したのは1996年、すでに 26 年が経っているが、海底の軟弱地盤を改良する政府の設計変更を沖縄県側が承認しない対立が続いている。

 4月27日には敵基地攻撃能力保有 や対国内総生産比 2 %を念頭に置いた5年以内の防衛費増額など、自民党安全保障調査会の党提言を受けて、岸田は議論を進めたいとしており、岸田は防衛のために軍備増強を図ろうとしている。

 先に岸田は、プーチンの核の使用も辞さないという発言や、それを利用した安倍一派や維新の「核共有」の議論の必要性の提言を受けて、「核兵器による威嚇も、ましてや使用も、万が一にも許されるものではない」、「非核三原則を堅持する」と平和勢力のように装い「核廃絶」まで口にしたが、岸田はアメリカの「核の傘」によって日本の安全保障が守られている、アメリカの核兵器は日本の安全保障に必要だとしている。

 岸田は歴代自民党政権と同様に、日本の防衛と軍備増強をアメリカに依存し、アメリカの力を借りて貫こうとし、基地の提供や思いやり予算等の措置をとってきた。日本の米軍基地は、基本的にはアメリカの世界戦略、世界的な覇権のためであるが、日本の支配層は日本の利益や防衛を前面に出して日本の防衛の要とし、日米は共同で米軍基地の固定化を図ってきた。

 さらに米軍との共同使用を進め、自衛隊の基地を増強している。岸田は今また、アメリカと同調して、中国やロシアの脅威を煽り立て、アメリカの核や軍備が日本のために必要であるとし、日本はそのアメリカの恩恵を受けているとする。そんな岸田には歴代自民党政権と同様に、アメリカに毅然と基地の国外撤去を要求する見識も信念も外交力もない。

 沖縄の米軍基地の国外退去を進めず、自衛隊基地の軍備増強の帝国主義的政策を強める岸田政権は、沖縄と本土の労働者による闘いで一掃しなければならない。 (佐)
        

さらに 自衛隊の戦力、より攻撃的に
自民党、「反撃能力」保有を首相に提言
2022年4月28日


        
 政府の新たな「国家安全保障戦略」、外交・安全保障長期指針などの策定に向けて、自民党は、相手国のミサイル発射拠点をたたく「敵基地攻撃能力」について、名前を「反撃能力」と変え保有する提言を岸田首相に提出した。
        
 これまで政府は「専守防衛」の下、政府は相手領域内への攻撃は問題にしてこなかったが、「攻撃的能力」を持つ理由について、提言は、中国、ロシア、北朝鮮を挙げて「我が国を取りまく安全保障環境は加速的に厳しさを増している」とし、特に中国について次のように言う。「地上発射型中距離ミサイル約900発を保有」し、極超音速滑空兵器など新型ミサイルを開発している「重大な脅威」と指摘、「迎撃のみではわが国を防衛しきれない恐れがある」ため、「弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に対する反撃能力を保有」する。
        
 「敵基地攻撃能力」論の議論は古い。すでに東西〝冷戦〟の時代、1956 年には、相手が日本を攻撃するためにミサイル発射することが明らかなのに、専守防衛の原則にしがみつき、手をこまねいていても良いのかとの意見が出されたのに対して、当時の鳩山一郎首相は、衆院内閣委員会で「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思う。そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきだ」と述べた。しかし、その後も、政府は「敵基地攻撃能力を保有することは法理的には可能だが、その能力を持たない」という曖昧な立場を維持してきた。
        
 それから約50年、安倍首相は「敵地攻撃能力」保有を言い出したが、2018年の国会の答弁では専守防衛について「防衛戦略として大変厳しい。ミサイル攻撃の第1弾は甘受しなければならないが、この考え方は憲法の精神にのっとったものだ」と述べている。
        
 今回の「反撃能力」は、「第1弾の甘受」など想定していない。提言を作成した自民党安全保障調査会会長小野寺は記者団に「相手側の攻撃が、明確に意図があって、既に着手している状況にあれば、 攻撃の判断を政府が行う」と述べている。相手が攻撃に着手したと政府が判断すれば、 相手の基地を攻撃することが可能というのだ。
        
 反撃の対象はミサイルを発射した相手国の基地ばかりではない。「指揮統制等含む」と小野寺は言う。「指揮統制機能等」とは攻撃を計画した軍司令部、政府も含まれる。これまでは、ミサイルの発射等攻撃を行う「基地」への「攻撃能力」の保有を問題にしていたが、たんに攻撃は 「基地」だけではなく、攻撃を指揮する軍司令部、さらには政府も「反撃」の対象となるというのである。しかも実際の攻撃がなくても、「攻撃に着手した」と政府が判断するならば、その企てをくじくために攻撃ができるという。
        
 「敵基地攻撃能力」保有から「反撃能力」保有への「名称」の変更は、敵の攻撃から防衛するという「専守防衛」の立場を逸脱して「攻撃的な」印象を与えるからよくないとして「名称」を変えたという問題ではない。政府が日本に対して「攻撃」を与える〝脅威〟となっている国に対して、「反撃能力」を保有するという立場への転換である。
        
 これまで、「相手国領域内への打撃について、米国に依存してきた」が、「迎撃のみではわが国を防衛しきれない恐れがある」として、日本も「反撃能力」を保有するということである。「専守防衛」から攻撃的な姿勢へ の転換である。
        
 提言は同時に「NATO諸国の国防費予算の対GDP比(2%以上)も念頭に…5年以内に防衛力を抜本的に強化するために必要な予算水準の達成を目指す」としている。
        
 提言は、「深刻化する国際情勢下での防衛力の抜本的強化」を謳っている。ロシアのウクライナ軍事侵攻を契機に、世界的な 軍備拡張の波に便乗して、危機意識を煽り、帝国主義国家として一層軍備を増強し、自衛隊を攻撃的な軍隊にしていこうとする自民党・反動勢力の意図を示している。