浮上する「予備費の軍事費活用」案
財政規律を無視した反動的悪知恵
2023年4月13日
岸田政権は昨年末、軍事費をNATO並みにGDPの2%並みに引き上げることとし、向こう5年間の軍事費総額を 43 兆円程度とする方針を示した。軍事費の増額分のうち 27 年度以降に必要とする財源4兆円のうち歳出改革や剰余金の活用で3兆円を捻出し、残り 1 兆円を法人税、所得税、たばこ税の3つの税を増税する案を公表した。
しかし、自民党の税制改正の議論では、安倍派議員から増税に反対する意見が続出、今年1月、軍事費財源確保を検討する党の特命委員会(萩生田委員長)を設けて増税圧縮のために議論を進めてきたが、税以外の財源が見つからず難航してきたという。
そこで、新たに浮上してきたのが予備費の活用案(日経、4・7)である。
22 年度の予備費は一般予備費の他に新型コロナウイルス、物価高対策予備費を当初と補正予算で計9・8兆円を計上し、現在では2・7785兆円が残る。さらに第二次補正予算で新設した「ウクライナ情勢経済緊急予備費」1 兆円も使用しないまま残っている。これら残っている予備費を軍事費の財源に充て、増税を軽減しようというのだ。
年度内に使い残した予備費の残額は、「不用額」として「剰余金」の一部とみなされることになっている。「剰余金」については、財政法によってその2分の1は国の借入金の返済に、残り2分の 1は補正予算の財源として充てられることになっている。
この制度を利用して予備費の残額(2・7785兆円+1 兆円)の半分約2兆円を軍事費に充てようというのだ。特命委の幹部は「剰余金がこれだけあれば、国債償還ルールの議論に踏み込まなくても財源が確保できる」と言ったという。
増税に反対してきた安倍派議員は、増税の代わりに国債の償還期間を延長して浮いた借金返済金を軍事費の財源にせよと主張してきた。しかし、償還期間延長で返済するカネが少なくなり、財源が出来たといっても、そのカネを軍事費に充てるならば借金したのと同じである。というのは返済する時期が後に伸びただけであり、いずれ返済しなければならないからだ。
彼らは、国民の反発をさけるために増税での軍事費増額に反対し、こんな汚いごまかし発言をしているのであり、予備費の活用案も同じ動機からである。
そもそも予備費とは災害など不測の事態が生じたときのためのカネであって、国会の議決なしに政府の判断で支出できることになっている。新型コロナウイルスを機に例年は5000億円程度だった予備費は、一気に5兆円規模に膨らんだ。当初は緊急の使途が多かったが 22 年からは本来災害など予測困難な事態ではない物価高対策などのカネも予備費に加わり、23 年度も年度予算にも5兆円もの予備費が組まれている。
予備費の使用については既に支出されたカネとしての国会での審議も甘くなり、予備費は政府にとって「使い勝手」のよいものになっている。こうしたことが続くならば、意図的に予備費を膨らませ(しかも借金で)、多くの余剰金をつくり、それを軍事費増額に充てることも可能である。特命委員会で議論されている軍事費財源確保のための「予備費活用案」はその先駆けともなりかねない。 (T)
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世界の帝国主義を一掃して平和を
悲惨な戦争をどのように解決すべきか
2023年3月16日
(2023年3月30日改訂)
去年 2 月 24 日のロシアのウクライナ侵攻以来、すでに 1 年が経過した。ウクライナ人民の犠牲は増え続け、NHKの報道(2 月 20 日)によると、少なくともこれまで8000人が死亡し、民家やインフラが破壊され、800万人を超える人民が国外へ逃れている。兵士・戦闘員は、ウクライナでは 1 万人~1 万3000人、ロシアでは 4 万人~6 万人が死亡している。このような悲惨な結果をもたらしている戦争を、われわれ労働者はどのように解決すべきであろうか。
ウクライナ人民の闘いを支持する
ウクライナの自決権を踏みにじるロシア・プーチンのウクライナ侵攻に対して、ウクライナ人民は勇敢に闘っている。労働の解放をめざして闘うわれわれ労働者は、ウクライナ人民の闘いを強く支持する。
核兵器使用も辞さない圧倒的な兵力を有するロシア帝国主義との闘いは、ウクライナ労働者にとって非常に困難な闘いである。しかしウクライナ労働者は勇気をもって闘い抜いている。
ウクライナの労働者にとってゼレンスキー政権やこれを支援している欧米・NATO諸国を信頼することは出来ない。ゼレンスキー政権はブルジョア政権であり、NATO加盟によって、ブルジョア支配の維持、安定を目指している。
ウクライナのNATO加盟は、欧米の帝国主義とロシア帝国主義との緊張・対立を激化させることである。資本からの解放をめざすウクライナの労働者は欧米帝国主義に与すことは出来ないし、反対である。労働者がロシアの侵略・併合に反対して闘うのは、ウクライナの独立が資本からの解放をめざす労働者の闘いにとって前進だからである。
世界的な影響を及ぼしつつある戦争
ウクライナ戦争は、その戦闘はウクライナ国内であるが、単に局地的な戦争にとどまらず、その影響は汎世界的なものとして現れている。
侵攻開始より、すぐに欧米日諸国はウクライナ支援とロシア制裁に動き出した。しかしロシアは世界経済の中に十分繰り込まれており、ロシアへの経済制裁は経済制裁を下す欧米日諸国にも負の作用を及ぼす。
資本主義的な経済発展の中で、世界経済は複雑に依存関係が絡み合っており、例えば、ロシアからの天然ガスのヨーロッパや日本への供給関係は、経済制裁ですぐ断ち切ることができないのである。
アメリカと覇権争いをしている中国、そして軍事的・経済的支援をロシアから受け関係を深めている「グローバルサウス」と呼ばれる南米やアフリカ諸国は、ロシア制裁には一方的に動かず、欧米との関係を維持しつつ、ロシアとの関係を強める方向に向かっている。世界全体が、資本主義国として、それぞれの利害をどのように維持・発展させるかを、力が拮抗するなかでせめぎ合っている。
その中で、ウクライナ戦争による小麦などの食料危機やエネルギー価格の高騰によって引き起こされている物価高、欧米などの主要先進国が物価高対策として進めている利上げが新興国の債務問題を引き起こすなど、世界的に資本主義経済の攪乱・不安定化がうまれている。
またウクライナ危機とともに、欧米日諸国そして当事者のロシアのみならず中国においても軍事増強の競争が激化し、ますます、帝国主義国家間の軋轢を深める結果となっている。
帝国主義国家の戦争の危険性に労働者はどう立ち向かうか
労働者は、現在みられる欧米日と中ロとの帝国主義国家間の軋轢の増大は、資本主義社会がもたらしている特有の現象であること、その根底には労働の搾取によって利潤を得る資本主義的生産があり、企業や国家の利益を第一とする競争があることを忘れることはできない。
「戦争を始めたのは西側」というプーチンのロシアの正当化に対して、バイデンは「虚構だ」と批判し、プーチンを「専制君主」と位置付け、「世界の民主主義は強固だ」と対抗した。しかしバイデンは、バイデンの言う民主主義が、資本の支配の維持を図るブルジョア民主主義であり、ロシア・中国と同じ資本の体制であることに口を噤んでいる。
NATOとロシアとの軍事的政治的経済的拡張競争が、ロシアのウクライナ侵攻を生み、軍拡競争となり、世界戦争に発展しかねない危険性をはらんでいる。
国連による平和の維持が幻想であることは、今回のウクライナ戦争でも明らかになった。ブルジョア国家による資本の支配体制を維持する国連の平和の構築に、労働者は幻想を持つことはできない。また、共産党のように、平和を階級闘争とは別に「憲法九条を守る」ことで「戦争のない平和」がもたらされる、と主張することは全く間違っている。
プーチンのウクライナ侵攻に対して、ウクライナ労働者人民は断固として反撃しなければならないが、真の平和を実現するためには、ブルジョア政府を打倒する労働者の階級的闘いを発展させなければならない。
労働者は、世界の労働者階級と連帯し、労働者が主体となる真の共同体である世界社会主義を実現し、真の平和を獲得するであろう。(佐)
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23年度予算案衆院通過
岸田政権を一刻も早く打倒しよう
2023年3月2日
一般会計歳出総額で当初予算として過去最大の114兆3812億円に上る23年度予算案が2月末日に衆院を通過し、法的には3月中の成立が確定したと報道されています。立・民や維新、国・民、共産などは採択では反対しましたが、前年度比1兆4214億円増の6兆8219億円、5年間で43兆円もの大軍拡を阻止しようという動きは、決定的に弱いと言わなければなりません。
野党の防衛政策批判は無力だったばかりか、岸田首相による「異次元の少子化対策」への批判は根底を突かずに、政府案に注文をつけることに終始し、安全無視で無責任な原発の再稼働も止められず、まんまと予算案の衆院通過を許したのです。
2月27日に立・民の安住と自民の高木両国対委員長が会談して、23年度予算案を28日の衆院予算委員会で採決することで合意していました。数で劣る野党が採決を認めるということがどういうことか、勝負の仕方を知らない政治音痴なのでしょうか。
採決合意は手詰まりだった野党の〝闘い〟を象徴しており、与党化している国・民のように、予算案に賛成したかったが、選挙に向けて〝闘い〟のポーズを取りたかっただけなのです。維新も軍拡案には賛成ながら、「身を削る改革」が足らないと注文して、維新の選挙戦での宣伝のためだけの反対でした。立・民にしても、「防衛費に比べ子供関連予算が少ない」という腐った改良主義丸出しでした。「戦後最悪の予算案だ」と非難しながら、岸田政権打倒に真剣に取り組まなかったことでは共産も同様でした。
物価高に対する責任追及も徹底的になされるべきでしたが、コロナ禍やロシアのウクライナ侵略などの外的な要因だけでない経済・金融政策の失政、アベノミクスの破綻を確認させることすらできていません。一時的な給付金をバラ撒くごまかしを許しただけです。
大軍拡にしても少子化問題にしても、経済的な困窮も資本の支配がもたらしているものです。国際政治の帝国主義的対立の激化も根底には資本主義国家の利害が衝突し争っているのです。人間としての社会的な関係を私的な自分本位にしか位置付けられず、人間的行為である生産的労働は搾取の対象とするだけの資本家的な関係を克服しなければなりません。
労働者が社会の本当の主人公になるために、階級的な団結を強固にして、労働の解放を勝ち取りましょう。岸田政権を打倒する闘いの前進によって階級的な団結を押し広げて、状況を切り開いて行こう。岸田政権が続くほど労働者・働く者の生活は苦しめられるだけです。共に闘おう。(岩)
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自信喪失の経済界、学界
令和臨調で「アベノミクス」を批判するが迷走
2023年2月2日
経済界や学界の有志からなる「令和国民会議(令和臨調)」が提言をまとめた。13年に始まった「アベノミクス」に賛同してきた面々は、10年にも及ぶ超金融緩和策と財政バラ撒き策に対して疑問を出したとマスコミは伝えている。
「アベノミクス」対する根本的批判はゼロ
令和臨調(100人規模)のうち、財政・社会保障を担う分会(座長:平野信行・三菱UFJ銀行特別顧問)が議論を集約して「提言」としてまとめ、去る30日に記者会見を行った。
この中で平野は「財政の歳出拡大は、日本銀行の国債購入に事実上支えられてきた。財政政策と金融政策が負の相互作用を及ぼしてきた」、「今や経済人の中でも、このままでいいのかという意識が非常に強くなっている」と危機感を露わにした。
この「提言」では、「長期的に財政は持続可能なのか、異次元緩和の副作用はどれほどなのか。不都合な情報が明らかにされていない」と書かれ、日銀と政府に「アベノミクス」に対する再評価を迫る内容になっている。
実際、10年間に及ぶ「アベノミクス」によって、「2%物価上昇によるデフレ脱却」を成し得ず、低金利政策により、企業の設備投資を促したが、これもうまく行かなかった。あせった日銀は株価上昇が景気回復に繋がると見なし、株価引上げ策に転じた。以降、大企業の営業利益は増えないが、営業外利益は膨らんだ。
しかし、低金利政策によって、金融業界の経営は悪化し、債券市場は混乱し(長短債券価格が逆転するなど)、国家の借金は膨張し、日銀も国債発行残高の半分以上をブタ積みすることになった。
今後、金利が上昇していく局面になれば、新発国債の表面利率は上がり、政府の国債利払い費は上昇し、かつ、日銀が持つ国債の利率も時価で評価されるなら、日銀財務は急速に悪化しかねない。
こうした様々な懸念が令和臨調で噴出したということであろうが、経済界や学界から著名人が集まっているにも拘わらず、明確な評価を下せていない。
デフレの原因を物価の下落と解釈
13年当時、安倍らリフレ派(黒田日銀総裁、高橋洋一、岩田規久男、浜田宏一ら)は、デフレの原因を「物価の持続的な下落」と考え、それを反転させるためには、物価を「持続的な上昇」させること、つまり「インフレ」策を採用することで解決できると考えた。
それが日銀による量的・質的緩和策であり、国債を市場から買い上げ(そのカネは日銀当座預金に積まれる)、当座預金の一部にマイナスの付利を強制さえして、金融機関に民間企業への貸出を促した。それでも貸出が進まない(企業の拡大再生産が無い)のは、日本資本主義の革新が進まず、腐朽化が進んでいたからであるが、そこに気づくことは無かった。
リフレ派は「物価の持続的上昇」を年2%とし、政府と日銀による「インフレ期待」が表明されれば、きっと市場は応えるとも述べたが、そんな精神論で物価が上昇するはずも無かった。要するに、「デフレ」も「インフレ」の概念も無い、間違ったデタラメな理屈が通用するはずもなかったのだ。
円安で経済成長への期待も
安倍らは、「アベノミクス」によって、円安が進み、企業の利益が増えると述べていた。
異次元の低金利政策が行われていたのだから、円安が続くと思われたがそうではなかった。
安倍政権前の継続的な円高は貿易収支も経常収支も大幅な黒字を反映していたし、安倍政権誕生後の円安は11年の東北大震災の影響で輸出が減少するなど(11年と12年の貿易収支はそれ以前の大幅黒字からゼロまたは赤字に転落)の影響があったからである。
安倍の説明は、100円の輸出商品が円安によって為替相場が150円になれば、まるまる50円儲かるというものであった。しかし、それは間違った観念であった。
1ドル=100円の時に100円の商品を輸出し、その後、円安が進み1ドル=150円の為替になったとする。
円安進行前に100円の商品を売ったわけであり、米国に売った100円の商品は円安進行後には、100円の商品=0.7ドルの商品として米国市場に現れ、売られる。
売った代金である0.7ドルの為替手形が後日に日本に入ってくると、100円と交換される。なぜなら、一定の期間が過ぎた指定日に、売った相手は為替手形を日本に送ってくるからである。その決済時に上記の円安になっていれば、100円=0.7ドルで為替手形が切られることになる。
円安になる時は、対象化されている商品の価値は変わらないのに、ドル市場では3割少ない価格で表示される。つまり、100円の商品に対象化されている労働が「安売り」されることになる。その結果、日本の輸出商品は国際競争力が上がり、よりたくさん売られることになる。
安倍政権のころ、よく海外から「為替ダンピング」という批判が巻き起こったが、それは、労働の安売りが起きたことをあたかも「ダンピングしている」と海外の人の目には写ったからである。
こうして、国際競争力の上がった商品の製造元は、たくさん売れるので日本の輸出企業は利益を増やすことになる(しかし、労働の安売りは輸入品における労働の高買いとして相殺されていく)。
このように、商品輸出の為替変動による儲け(輸出競争力が強くなり多く売れる)は、貨幣資本が行う儲け(直接に為替の交換レートの差額で儲ける)とは違うのである。
安倍の円安説明と、円安による企業の利潤増大、さらには円安を経済成長のテコにするという理屈は、リフレ派経済学、つまりケインズ経済学の無概念で非科学的な代物であったということになろう。
日銀新体制に期待できない
4月に黒田日銀体制から新体制に移行する。この新体制人事をどうするのかで、政府や自民党の中で、駆け引きが行われているようだ。
黒田と同様な人物に日銀の椅子を差し出すのか、それとも、令和臨調が「提言」を出したように、「アベノミクス」を評価し直し、金融政策を修正するのかの鞘当てである。
安倍政権がそうであったように、政府や総資本は、常に「インフレ」を歓迎する。物価が上がれば先行投資が増えるとか、成長を加速するとかの幻想を抱いているからである。
しかし、「インフレ」を現在の欧米政府を見ても分かるように、コントロールできるものではない。激しい痛みを伴うのであり、何よりも労働者にその犠牲が転化されるのが常である。まして、労働者の金融政策なるものはない。資本主義ゆえに金融政策が必要になるし、ならざるを得ないことを理解するなら答えはおのずと出るであろう。 (W)
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帝国主義強国化に乗り出す岸田政権
岸田バイデン会談の意味するもの
2023年1月19日
岸田は1月13日、バイデンと会談し、12月に閣議決定した「安保3文書」に示された「反撃能力を含む防衛力の抜本的な強化」と23年度以降の5年間でこれまでの1.5倍となる防衛費の増額を決めたことを説明し、バイデンは全面的に支持した。
すでに11日に日米の外務・防衛担当閣僚による「日米安全保障協議委員会(2プラス2)」で、「日本は防衛予算の相当な増額を通じて、反撃能力を含めた防衛力を抜本的に強化する」等の日本の防衛政策の転換が表明されており、日米首脳はそれを確認した。
この会談に先立って岸田は、9日~12日にG7のフランス、イタリア、イギリス、カナダの各首脳と会談し、日本は次期戦闘機の共同開発(英、伊)、共同軍事訓練(英)、東シナ海や南シナ海で海洋進出を強める中国に対する連携(仏、英、加)などの軍事的な連携を強めるとした。
日米豪印4カ国の「クアッド」、米英豪の安全保障協力「AUKUS」の連携があり、それらとの協力が岸田政権の視野に入っている。いずれも、G7、そして豪がアメリカと協力して、経済的・軍事的に進出著しい中国と対抗しようとする、帝国主義国家間の枠組みである。
日米共同声明では、ロシアのウクライナ侵攻とともに、危惧される中国の台湾への軍事進攻を念頭に、「力または威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対する」とし、アメリカを中心に″民主主主義陣営″の結束を図り、ロシア・中国の強権的専制主義的政治に対決しようとしている。それを強く押し出したのが、中国の経済的進出を輸入品への関税強化や先端技術の保護で抑制しようとしたトランプであったが、バイデンはその路線を引き継いで中国包囲網を築こうとしている。
岸田は、これまでの防衛政策を「転換」させ、日本が攻撃力を積極的に担うことで、日米同盟をより強固なものにし、武力行使につながる軍事力を備える、帝国主義強国化・軍国主義路線に乗り出した。
しかし岸田の軍事増強は、財政基盤がなく国会審議を経たものではないのだから、子供だましのようなものである。岸田はこれで米軍の肩代わりの一部をするというが、借金にしろ、増税にしろ、その負担は労働者働く者の肩に掛かってくるのは必定であり、しかも中国との戦争の危険性は増すのである。
岸田の「反撃能力」は、特に台湾有事における中国に対する攻撃が想定されている極めて敵対的なものである。9日、米戦略国際問題研究所(CSIS)が中国の台湾進攻を想定したシミュレーション報告書を公開した。ここで日本の米軍基地からの米軍の出撃が要とされ、台湾有事の際のアメリカの関与に日本の役割が期待されている。
このように中国との軍事的対立が特に問題とされているが、日、米、欧州にしても、これらの国家間の繋がりとともに中国との経済的結びつきは、ますます強まっている。ロシア一国でも、ウクライナ侵攻に伴う経済制裁等の影響は、燃料の供給にとどまらず色々な形で世界経済に影響を与えているが、中国との軍事的対立が戦争によって経済的対立に転化すれば、その世界経済に及ぼす影響の大きさは予想できるであろう。
「アメリカいいなり」という岸田政権への非難は、岸田政権が進めようとする、帝国主義的本質を見失い、闘いを間違った方向に導く。「平和を守る」闘いだけでは、現在の生産を支配する資本の労働者の搾取から目を逸らすことになる。分業と私的所有が生み出す商品生産を根底とする資本主義こそが、企業の利益、ひいては国家の利益を追及し、戦争も排除しないのである。
労働者の団結した階級的闘いで、資本主義が克服されなければならないが、まず我々は岸田政権打倒を掲げて闘いを広げていかなければならない。(佐)
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軍事強国を目指す岸田政権を打倒しよう
軍拡賛成の野党では闘えない、労働者の階級的闘いを
2023年1月5日
欧米帝国主義と中国、ロシア帝国主義の角逐
ロシアのウクライナ侵攻、米・中の対立の激化に象徴されるように世界は激動の時代を迎えている。
ロシアのウクライナ侵攻は、汎ユーラシア主義を唱え、旧ソ連邦の版図回復を目指すプーチン・ロシアの大国主義の表れであり、米・中対立の激化は、軍事的・経済的に急速な発展を遂げた国家資本主義中国とブルジョア自由主義米国との帝国主義的対立である。中国は米国に次ぐ世界の帝国主義大国として、米国の世界覇権を揺るがしている。
1991年ソ連邦の崩壊によって、第二次大戦後、米国、ソ連を中心に世界を二分し、対立した〝東西冷戦〟の時代は終わり、米国を盟主とする〝自由主義〟的帝国主義の支配する国際的な秩序が生まれたが、米国の政治的・経済的後退、中国の帝国主義大国としての成長、プーチン・ロシアの大国主義によって、世界は激しく揺れ動いている。
プーチンのウクライナへの軍事侵攻は、ウクライナの民族自決権を否定し、ロシアへの併合を目指す帝国主義的侵略戦争であり、ロシアがこの戦争に勝利するならば、旧ソ連地域に対する軍事侵攻が広がる可能性は大きくなるだろう。これに対して、米国をはじめ英、仏、独などNATO諸国は、プーチンのウクライナ侵攻は「民主主義」への挑戦と非難し、ウクライナへの支援を行っているが、その目的はロシアに対抗してNATOの影響力を広げるためである。
一方、中国は「一帯一路」構想に示されるように、アジア、アフリカ、南米の発展途上国を中心に資本輸出、経済〝援助〟をテコに影響力を拡大し、欧米、日本等ブルジョア〝自由主義〟諸国に対抗する勢力圏形成を目指している。とりわけアジアにおいては、インド・太平洋地域、台湾をめぐり、米国との対立を深めている。
大軍備増強への転換目指す岸田政権
世界の軍事的な緊張が高まる中で、日本は大規模な軍備増強に乗り出した。岸田政権が閣議決定した「国家安全保障戦略」の3文書はこれを示している。
「国家安全保障戦略」は、中国、ロシア、北朝鮮について日本および国際社会にとって安全保障上、「重大な脅威」となっていると批判し、軍事費をGDP1%からNATO並みに2%に引き上げること、自国「防衛」のために「反撃能力」として敵基地(含む指揮系統機能)への攻撃能力を保持すること明記した。
これまで戦後歴代の日本政府は、近隣諸国に対して軍事大国にならないこと、「専守防衛」、自衛のための「最小限の軍備」を唱えてきた。軍事費GDP1%はそのための証であった。だが、今や、これまでの〝公約〟をかなぐり捨て、「防衛」という名で相手基地への先制攻撃までも含めた攻撃能力を保有する大規模な軍備拡大に乗り出すというのである。まさに戦後日本の「安全保障政策の大きな転換」(戦略文書)である。
岸田政権は、軍事費を今後5年間に43兆円増額するという。来年度当初予算案では、総額114・3兆円のうち、軍事費は6・8兆円。これは22年度の5・4兆円から一気に1・4兆円もの増加である。
このほか、外国為替資金特別会計からの繰り入れや、新型コロナウイルス対策予算で余った積立金の国庫返納、国有財産の売却などで税外収入として4・6兆円を確保。このうち3・4兆円は新たにつくる「防衛力強化資金」に繰り入れ、24年度以降の「防衛力」強化財源とした。
一般歳出では、公共事業費の6・6兆円、文化・科学振興費の5・4兆円を上回り、社会保障費に次ぐ2番目の歳出額となった。 巨額の軍事費の財源として歳出改革などが予定されているが、実効性に乏しく借金に頼よることになる可能性は大きい。
当初予算案では軍事費の一部4000億円を建設国債で賄うことにしている。これまで戦前・戦中、借金による軍事費の拡大が悲惨な結果を招いたことから、軍事費のための国債発行は「禁じ手」となってきたが、岸田政権は、これを破り、再び借金による軍拡に乗り出そうとしている。
それだけではなく、今後所得税を支払っているすべての国民に課せられた税である東日本大災害からの復興に充てられるべき復興特別所得税の半分を軍拡の財源に利用することが予定されている。大軍拡のツケは借金の膨張、税負担等々として、労働者、大衆に押し付けられようとしているのである。まさに戦後財政の大転換でもある。
岸田政権は、米軍との共同軍事行動への道を開いた安倍政治を引き継ぎ、更なる軍備を増強して、帝国主義的軍事強国への道をつき進もうしている。中国、ロシア、北朝鮮の軍事的圧迫が強まり、自国の「防衛」のためには軍備を拡大し、米国など〝自由主義〟国家との軍事協力を強化することで、日本の「安全と平和」を守るというのがその理由である。
だが、軍備増強は相手国の軍備の増強を招くのであって、軍備拡張競争を促進し、緊張を激化させるだけである。
岸田政権が軍備増強に走るのは、日本の国家の利権、大資本の利益のためである。日本は海外に資本を投下し、工場を進出させ、数百万の労働者を搾取している帝国主義国家である。海外における市場、利権を維持、確保するために、そしてブルジョア〝自由主義的〟な国際秩序を維持するために日本は米国との同盟を強化、軍備増強をめざしているのである。
帝国主義に反対する労働者の階級的闘いを
なりふり構わぬ軍備の大拡張という、戦後政治の大転換に対して、野党は無力ぶりをさらけ出している。
例えば、バイデンとの会談で岸田が軍事費GDP比2%にするという発言に対して、維新は「日本の防衛費はGDP比1%という枠にとらわれている」として、「現実を踏まえた見直しをしていくべきだ」、「他国がたくさんの装備を持っていたらこちらも持たないと安全にならない。日本の比較優位を保つことが必要だ」(青柳外務・安全保障部会長)と岸田政権に同調している。
国民民主党も、「必要な防衛装備は準備する必要がある。増額もやむを得ない」(大塚代表代行)と増強を認めている。
立憲民主党も「必要な防衛装備は準備する必要がある。増額もやむを得ない」(渡辺外交・安全保障・主権調査会会長代行)と言い、れいわも「必要な防衛装備ならば増額が必要というのは分かる」としつつ、「一方でこれまで装備が適正価格で購入されてきたかというチェックは必要だ」(山本代表)と立憲と同様な立場だ。
立憲民社党はじめ野党が自民党に追随する中で共産党は、「必要となる財源について、政府はまったく答えようとしない。防衛費の『相当な増額』は、日本を軍事対軍事の危険な道に引き込むだけでなく、暮らしを押しつぶすことになりかねない」(小池書記局長)と反発している。(以上、22年5月9日、NHK日曜討論)
そして共産党は日本の軍備増強は「対米従属」のためであり、米国の引き起こす戦争に巻き込まれる危険がある、国家間の紛争は「平和的な話し合いで解決する」ことを謳った国際法を尊重すべきと言う。
しかし、この共産党の主張は、日本の軍備増の責任を米国の強制であるかに言い、帝国主義国家日本の責任を免罪にし、帝国主義的な対立による対立・紛争を「平和的な話し合い」でなくすことが可能であるかの幻想をふりまくことである。
借金・増税による軍費調達、「敵国」への先制攻撃を可能にする大軍備増強という戦後政治の「転換」を迎えて、労働者は現在の野党に依存しては闘えないことは明らかである。
帝国主義国家、反動国家が存在する限り戦争はなくならない。戦争を防ぎ、恒久平和を実現していくためには、搾取と一切の差別に反対し、国際的協同・協力を目指す労働者の階級的な闘いとその発展が必要である。 今こそ、労働者の階級的闘いが問われている。労働者は団結して岸田政権打倒のために立ち上がろう。 (T)
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