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巻頭言



【2023.9.14】
企業倒産数が増大
 ──このままでは労働者の失業も増加

【2023.9.1】
‶処理水〟海洋放出をめぐる日中対立の激化
 ──「科学的根拠」を振りかざすことで高まる排外主義

【2023.8.3】
軍事力の抜本的強化、反撃能力保有謳う
 ──2023年度版「防衛白書」

【2023.7.23】
共産党の偽りの党史
 ──労働者の闘いを屈曲させたのが真実


 過去のメッセージへ

企業倒産数が増大
このままでは労働者の失業も増加
2023年9月14日



 今年に入って企業倒産数が増えている。

 東京商工リサーチによれば、23年上半期(1-6月)の負債額1千万円以上の企業倒産数は4042件、負債総額は約9341億円である。

 前年同期の倒産数は3060件、負債総額は1兆7千億円であり、これと比べると倒産数は約1千件増加している(22期同期には、大型倒産があり負債額が大きかった)。また、22年度下半期(7-12月)の倒産数3368件、負債総額6226億円と比べてみても、倒産件数、負債額で拡大していることが分かる。

 企業倒産件数の増加は、22年4月から23年8月まで17カ月連続で前年同月を超え、今のところ頭打ちが見えない。しかも、今年に入ってから倒産件数の増加率が拡大し始め、8月の倒産件数は742件と、前年同月の1・5倍となりコロナ禍以降で最多になった。

 東商工リサーチは、今年上半期の倒産業種別の倒産数も調査している。それによれば、最多は「サービス他」で1351件(前年同期比36%増)、次いで歴史的な資材価格の高騰が続く「建設業」が785件(同36%増)、円安による輸入原材料価格が上昇している「製造業」が459件(同37%増)などとなっている。

 この他に、燃料価格の高止まりや人手不足が深刻な「運輸業」が188件(同25%増)、「情報通信業」が161件(同39%増)などと続き、「金融・保険業」でも24件(同140%増)が行き詰まった。こうして、今年上半期の産業別倒産件数は1998年上半期以来、25年ぶりに10産業種全てで前年同期を上回ったのだ。

 岸田政権はコロナ対策だといって補助金をバラ撒き、売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資し、円安による燃料費高騰に対して元売り企業にカネを注ぎ込んだが、永久にこんなことができるわけでなく、案の定(マスコミでも噂されていた)、事実上コロナ対策を終えた昨年後半から企業倒産が急増し始めた。

 こうした企業倒産に伴い、労働者の解雇も増大している。7月の「完全失業率」は2・7%、「完全失業者数」は183万人であり、4月~6月より率でも数でも増え、22年の平均よりも多くなっている。

 しかし「完全失業者」は、働く意欲があり、求職活動(公的に求職)を行い、直ぐに仕事に就くことが出来る状態にあった人の数であり、何らかの理由で就職活動ができなかった人などは対象外である。

 実際、全国約4万世帯を対象に調査する「労働力調査」によれば、23年7月時点で「働きたくても働けない人の割合」は「5・1%」とある。育児や介護で、また怪我や病気などの理由で、「働きたくても働けない労働者」は一杯いるのである。そうした数は失業者の数に入らないのだから、お役所の統計は事実を反映しない出来損ない、というより意図してそうしているのである。

 今後、円安がさらに続き物価高騰が続くなら、また、米国・日本と中国との帝国主義的対立が激化していくなら、資本の経済は行き詰まり、それに伴い、企業倒産や労働者の失業者数は増えるであろう。実際、EUでは低成長に転化しドイツではマイナス成長に陥っている。EUと同じことが日本でも起きないとは限らず、企業の危機は真っ先に労働者にしわ寄せされる。その理由は明らかだ。

 資本主義は資本が労働者の労働力を買い、剰余価値を搾取することで価値増殖し、資本の増大を追い求める社会である。

 それゆえに、労働者は資本の管理の下におかれ、常に支配され、低賃金と過重な労働を強いられる。また労働者は、差別的に支配され、非正規を強要され、女性差別も温存される。労働者は一人では弱い立場にあり、労働組合に団結して資本と闘うことは必要であり必然的である。

 しかし、労働組合運動は、資本の搾取と攻撃の後追いを強いられるゆえに限界がある。労働組合運動が資本の搾取そのものに反対し、「労働の解放」を勝ち取る闘いに高めることは難しい。労働者は「労働の解放」の理論――私的労働を廃止し、人々の労働が直接に社会的労働となり、労働に応じた分配(次には必要に応じた分配)を勝取ることを出発点にする共同体原理に基づく社会を作っていく等――を学び、それをしっかりと獲得しなければならないのだ。

 労働者の政党による理論的政治的活動と固く結びつく必要性と必然性がここにある。つまり、労働者の政党の「社会主義運動」と日常的な改良的闘いが中心になる労働組合運動は、理論的・政治的に固く結合されなければならないのである。それらが結合した闘いに発展しなければ搾取の廃絶と共同体(社会主義社会)の建設は不可能である。

 最近、労働組合運動がまるで「アソシエーション」(地域協同組合や仲良しクラブ)に繋がり、その発展が未来に結びつくかに言う小ブル経済学者がいる。こうした私的労働と資本の体制をそのままにして、資本の力を弱める「アソシエーション」が生まれるかの幻想を振りまいている。こうした幻想をも打ち破って行かなければならない。「アソシエーション」は「労働の解放」とは全く違うのだから。 (W)


‶処理水〟海洋放出をめぐる日中対立の激化
「科学的根拠」を振りかざすことで高まる排外主義
2023年9月1日



 (1)8月24日から東電・岸田政権は福島第一の‶処理水〟海洋放出を開始した。放出以前から中国の反発は激しく、7月からは日本の輸入水産物の検査が厳格化され、事実上輸入が停止されて来たが、海洋放出が始まるや水産物の全面輸入禁止を発表した。

 「想定外の全面禁輸」を前に岸田は、‶処理水〟はIAEAも安全と評価していると、「科学的根拠に基づかない禁輸は」撤回すべきと中国に抗議した。

 『海つばめ』1457号でも論じたように、何よりも原発の過酷事故を起こした責任は、巨大津波や電源喪失が引き起こす危険性を警告した「科学的根拠」を無視した東電や政府にある。

 ‶処理水〟のトリチウムは、単に莫大な量の海水で薄める(8/30午前9時トリチウム19㎥/h、海水14,952㎥/h)だけである。さらに堆積し強烈な放射能を発している燃料デブリの冷却水をALPS (多核種除去設備)で処理した‶処理水〟には60種類を超える放射性物質が含まれているが、それらの計測結果は、詳細に開示されてはいない。「科学的根拠」の不透明さこそ問題である。

 岸田は中国に対して「科学的根拠に基づかない禁輸は撤回せよ」と表明しているが、自分たちの持ち出している「科学的根拠」が、自分たちに都合よく解釈したものでないと、東電や岸田ははたして断言できるのか!「科学的根拠」とは客観的に検証されるべきものであり、権威によって証明されるものではない。

 第三機関(中立的な)かどうかも怪しい(単に「分担金問題」にとどまらない)国際原子力機関(IAEA)による報告書でさえ、「処理水」の海洋放出計画について「推奨するものでも、支持するものでもない」というものであった。「国際的な安全基準に合致」といっても、原発の燃料デブリに直接注水された冷却水による「汚染水」の安全な排出基準など存在しない。ALPSによって限定的に浄化された「ALPS処理水」を平常の原発からの排出基準で判定しているにすぎない。「放出ありき」の「科学的根拠」の疑念さえ晴らさず、政府は「お墨付きを得た」と開き直っているのだ。

 さらに本質的に、電力の生産から設備更新・廃棄までの一連の生産過程において、原発を安全に利用することは、今後改善されるとしても非常に困難だという問題がある。原発は正常な稼働中においてもトリチウムを排出し、万が一事故が発生した場合には福島原発事故のように多種類の放射性物質を放出する。また、原発の廃棄処理段階においても非常に困難を極める。

 要するに、安全に便利に安く電力を発電し利用するという点において、決定的な欠点を持つのであり、こうした欠点を覆い隠し、強引に利用するのは特別な理由があるからだ。原発に使用する濃縮ウラン製造技術は核兵器製造に転用可能であり、だから、原発が安全性に欠点を持つとしても、国家に分裂し相争う資本主義体制の世界にあっては、資本の国家は原発を欲する――労働者党は、また未来の人類は危険でコストのかかる原発に反対するが核エネルギーそのものに反対しない。安全で便利で労働時間をかけずに電力を作る手段ができるなら(中性子を出さず高い安全性能を担保できる核融合など)、温暖化を阻止し自然エネルギー利用の限界(地理的気候的)を補うばかりか、他の動力源として活用できるからである。

 (2)我々が警戒しなければならないのは、「科学的根拠」を振りかざして中国の禁輸を批判し、‶処理水〟放出に異議を唱える人々や団体に対して、反日や親中派のレッテルを貼って排外主義を煽る動きである。

 岸田は「中国発とされる多数の迷惑電話(中国大使館にも迷惑電話が集中していると報じられた)、日本大使館、日本人学校への投石などが行われ、これは遺憾なことであると言わざるを得ない」(日テレNEWS8/28)と中国による日本に対する嫌がらせに憤り、専門家同士の話し合いに中国側が応じていないと、非は中国側にあると主張した。

 岸田の発言が、国内の民族主義者や右派勢力を勢いづかせることは確実である。すでに「科学が風評に負けるのは国辱」「相応の禁輸措置の対抗措置は必須だ」という論調が登場している。

 共産党小池書記局長の「海洋放出を中止し、中国政府と事態の打開に向けた協議を行うべきだ」(8/28プライムオンライン)という記者会見での発言に対して、3752件ものネット住民の批判であふれかえった。

 いくつか紹介すると、【日本の国策にどうして中国や韓国に理解してもらわないといけないのか? 日本はこれまで説明を繰り返してきたが、相手が受け入れないとするならば、それはそれで仕方がない事で、外交努力を怠ったのとは違う】【日本国民でありながら日本政府だけに責任あると発言する貴方の党は自国の課題を全力挙げて科学的根拠に基づき他国を説得する事考えないのでしょうか?この考え方は日本の政治家・国会議員として、許されないものだと思います】、などである。決して反共右翼が繰り返す罵詈雑言の類ではないことに、警戒しなければならない。

 岸田は「海洋放出は安全」と言い張って、危険性を懸念する国民をだまそうとしている。それは安倍元首相が支持率アップを狙ったオリンピック誘致の際に、「福島はアンダーコントール(管理下にある)」と、福島第1原発廃炉の見通しもないままに、世界の人々をだましたのと同様である。菅前首相は、東電の海洋放出決定に対し、安倍の「アンダーコントロール」を擁護し、処理水の「放射性物質濃度は十分低い」と「科学的根拠」なしに、処理水放出を安易に容認し反発を買った。

 そして、岸田は身内の野村農水大臣の「汚染水」発言で政府の「真意」がこぼれ、政治不信を強めた。岸田は支持率低下に怯え野村をすぐに更迭せず(できず?)、うやむやにしようとしている。

 中国は‶処理水〟(中国は‶核汚染水〟と呼ぶ)海洋放出に対して、水産物全面禁輸で応じた。海洋放出をめぐる中国との対立は、国内における排外主義的世論の高まりを生み出している。

 海洋放出を自らの支配に利用しようとしているのは、中国習近平もそうである。中国は今、かつてない経済的危機に襲われている。不動産バブルは破綻し(海つばめ1457号参照)中国経済をけん引してきた輸出は停滞し、日米の最先端技術、製品の輸出規制などで経済成長は低い伸びにとどまっている。若者の失業率公表を突如中止する等、国民の習近平体制への反発を逸らすために、若者や労働者国民への情報統制を強めている。

 中国は世界第二位の経済力を背景に、海外への帝国主義的な経済進出を拡大し、軍事的な緊張関係を高め、日米などと覇権と権益をめぐって対立している。海洋放出をめぐって中国が激しく反発し、岸田を揺さぶり、「核汚染水」を太平洋に垂れ流していると報道し、国民に危機感を植え付け、日本に対する反発を煽る中国もまた、排外主義を自らの支配の手段として利用している。

 支配階級が「科学的根拠」を盾に排外主義を煽ることに断固として警戒しなければならない。「日の丸」を振り回し「軍歌」を流し罵詈雑言を振りまく右翼に代わって、与野党への政治不信の中で「科学的根拠」や「日本国民」を主張しながら、排外主義や国家主義的主張に取り込まれる人々が増えている。中国習近平体制の情報統制のもとで、中国においては日本や日本人に反発する排外主義が増大しつつある。

 福島汚染水の海への放流をめぐる日中対立は、アジア、太平洋地域の覇権をめぐる帝国主義的対立の反映であり、日中両国労働者を分断し、排外主義に取り込むのは日中の支配階級とその国家である。国家の巧妙な罠に絡めとられることなく、どこまでも排外主義に反対しそれを暴露して闘おう!(古)


軍事力の抜本的強化、反撃能力保有謳う
2023年度版「防衛白書」
2023年8月3日



 防衛省は2023年度版「防衛白書」(以下「白書」)を発表した。岸田政権は昨年 12 月、「国家安全保障戦略」など安保3文書を閣議決定したが、その後、初の「防衛白書」である。

 「白書」は、現在の国際社会について、「普遍的価値や政治・経済体制を共有しない国家が勢力を拡大しており、力による一方的な現状変更やその試みは、既存の国際秩序に対する深刻な挑戦であり、……国際社会は戦後最大の試練の時を迎え、新たな危機の時代に突入しつつある」と分析している。

 そして「白書」は、日本を取り巻く軍事動向として、まず中国について、軍事力を質・量ともに広範かつ急速に拡大し、日本周辺全体で軍事活動を活発化させるとともに台湾に対する軍事的圧力を高めていること、また南シナ海での軍事拠点化などを押し進めている、これは日本及び国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化するうえで「これまでにない最大の戦略的な挑戦」だと指摘している。

 また北朝鮮に対しては、弾道ミサイルなどの増強に集中的に取り組み、日本を攻撃する能力を既に保有していると見られ、「従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっている」と危機意識を煽っている。

 さらにロシアのウクライナ侵略に触れ、ウクライナがロシアから侵略されたのは、「ウクライナが侵略を抑止するための十分な能力を保有していなかったことにあり、また、どの国も一国では自国の安全を守ることはできず、共同して侵攻に対処する意思と能力を持つ同盟国の重要性が再認識されている」としている。

 「白書」では、ロシアのウクライナ侵略からの教訓は、他国からの侵略を抑止するための軍事力を保有することであり、さらに「力による一方的な現状変更は困難であると認識させる抑止力が必要」であり、そのためには一国だけでは不十分であり、同盟国との軍事協力が不可欠だということである。かくして、日本の軍備増強と同盟国=米国との軍事協力の一層の強化が正当化されるのである。

 岸田政権の下で、これまでGDP比 1%枠内に収められていた軍事費は今後5年間にGDP比2%と一挙に倍増されることになった。軍事費GDP比1%は、日本が軍事大国にならず、〝平和国家〟として存在していくことを国際社会へ示す〝証し〟としてきたものである。しかし、岸田政権は中国やロシアさらには北朝鮮までも引き合いに、これまでのままであればウクライナのようになる危険があると危機意識を煽り、軍事費を倍増させることを決定した。

 軍事領域を宇宙・サイバー・電磁波まで広げる一方、軍事協力も米国のみならずオーストラリア、インドをはじめ太平洋地域諸国まで広げてきた。

 なかでも「防衛上の課題」として強調されているのは、「相手にとって軍事的手段では我が国侵攻の目標を達成することができず、生じる損害というコストに見合わないと認識させうるだけの能力をもつこと」だとされ、その主要なものとしてミサイル攻撃に対する「反撃能力」の保有が挙げられている。

 「白書」は、相手のミサイル拠点をたたく反撃能力の保有について、「侵攻を抑止する鍵」だとしている。

 これまで政府は攻撃相手国の基地への攻撃は謳ってこなかった。「専守防衛」の範囲を超えるからである。しかし、攻撃相手国へのミサイル拠点(司令部を含む)への攻撃も、「専守防衛」の枠内だとして、「反撃能力」の保有を打ち出したのである。これは「専守防衛」策の根本的な転換であることは明白である。ミサイル攻撃に対してミサイル拠点への攻撃が「専守防衛」だとされる。

 ならば、ミサイル迎撃だけではなく、攻撃相手国に全面的な攻撃も「専守防衛」とされることになるだろう。かつて日本の米国との戦争が、日本に対する「圧迫」に抗する「自衛」のための戦争と呼ばれたように、帝国主義国の戦争はどの戦争も互いに「自衛」のための戦争と言われてきた。

 岸田政権は日本の戦後の軍事政策を大転換させ、軍事大国の道を邁進しようとしている。政府は、日本が軍備増強するのは中国やロシア、北朝鮮の軍事的圧迫のためだと言う。だが、日本が軍事力の強化に走っているのは、アジアを中心に広がっている日本の大資本の利益や国家の利権を守るためであり、また国際社会の米国を中心とした〝ブルジョア自由主義的〟な秩序を守るためである。

 日本が軍備を増強するならば、相手国も対抗し、さらなる軍備拡張に走るだろう。政府は日本が被害者であるかに言っているが、日本もアジアをはじめ国際的な緊張を強めているのだ。

 米国を中心とする〝自由主義的〟帝国主義勢力と中国の国家資本主義帝国主義及びロシアの帝国主義との角逐が激化している。帝国主義が存在する以上、世界の平和はありえない。  (T)


共産党の偽りの党史
労働者の闘いを屈曲させたのが真実
2023年7月27日



 我々は7月9日刊の『海つばめ』1454号で、「加速する共産党の衰退」について論じたが、共産党は『日本共産党の百年』という党史を発表(出版は10月)、志位委員長は25日、党本部で発表記者会見を行った。

 『海つばめ』1454号では、6月に開催された共産党第8回中央委員会総会での、4月に行われた統一地方選共産党大敗の総括が、「共産党が労働大衆から遊離し、信頼をますます失っている原因から目をそらした開き直りともいえる志位指導部の政策を正当化する言い訳に終わっている」と指摘した。

 今回発表された『百年』史は、単に4月の選挙での敗北に対して自己正当化するというものでなく、より徹底的に現在の堕落した共産党の立場を正当化するものである。志位は記者会見で、『百年』史の「むすび」の部分を紹介し、次のように述べた。

 「六一年綱領確定以後の激しい攻防のプロセスのなかで支配勢力による攻撃と正面から切り結び、党は鍛えられ、理論的・政治的に新しい発展をかちとり、組織的にも時代にそくした成長と発展のための努力を続けてきました。同時に、『社公合意』以来の四十年あまりにわたった『日本共産党をのぞく』壁、くりかえされる各種の反共攻撃は、党建設の前進にとっての大きな障害になりました。全国各地で奮闘が続けられてきたものの、党はなお長期にわたる党勢の後退から前進に転ずることに成功していません。ここに党の最大の弱点があり、党の現状は、いま抜本的な前進に転じなければ情勢が求める任務を果たせなくなる危機に直面しています」。

 つまり、「理論的・政治的に新しい発展をかちとり、組織的にも時代にそくした成長と発展のための努力を続けて」きたが、「各種の反共攻撃は、党建設の前進にとっての大きな障害」となり、「長期にわたる党勢の後退から前進に転ずることに成功」できず、「ここに党の最大の弱点があり」、「いま抜本的な前進に転じなければ情勢が求める任務を果たせなくなる」と危機感を表明している。志位は第8回中央委員会総会で「政治対決の弁証法」の詭弁を振り回したが、同様の理屈で現状の衰退について、党員や支持者をごまかそうというのである。

 「理論的・政治的に新しい発展」とは、共産党のブルジョア的堕落の深化のことである。志位は、『百年』史の主要な特徴として、「『百年』史では、日本共産党がこの1世紀に日本と世界の発展にとってどういう役割を果たしたかを克明に明らかにしている」、「日本共産党の百年は、大局において平和、民主主義、人権、暮らしなど、さまざまな面で国民の苦難を軽減し、日本の社会進歩に貢献し、世界史の本流に立ってそれを促進した歴史」だと言う。

 共産党が戦前に果たした無力な役割や戦後革命流産の責任などはまったく明らかにせず、民族主義の立場からの中ソ批判やソ連「社会主義」圏の崩壊について「体制選択論」攻撃などと評価しており、「科学的社会主義」を剽窃して、真に科学的な評価を避けて、自らのスターリニスト的過去を消し去ろうとしている。志位は「社会進歩」とあいまいな言い方しかせず、進歩とは資本主義から社会主義への前進のことであると明言しないのである。それは、志位共産党にとっては、資本主義の民主的改良をめざすだけだからなのである(岩)