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巻頭言



【2024.8.1】
加速する日米の軍事一体化
 ─―深化する日米軍事同盟

【2024.7.18】
フェイクを拡散し女性蔑視を平然と語る
 ─―石丸伸二の正体

【2024.7.4】
パレスチナ殲滅進めるイスラエル
 ─―加担するアメリカ帝国主義

【2024.6.27】
「岸田降ろし」狂騒曲
 ─―所詮は自民党延命策

【2024.6.13】
トヨタ本体で発覚した不正検査!
 ─―開き直る豊田章男

【2024.5.30】
「バターより大砲を」の時代の再来?
 ─―軍備増強の波が襲う欧州

【2024.5.16】
裏金問題を不問に付す検察
 ─―自民党の不誠実な言い抜けを許すな

【2024.4.18】
新たな軍事的・経済的「包囲網」
 ─―対中国、日米比連携強化が意味するものは何か?

【2024.4.4】
相次ぐ自衛隊員の靖国集団参拝
 ──4月からは新宮司に元海将の就任も

【2024.3.28】
プーチンの権力誇示目論んだロシア大統領選
 ──反対勢力抑圧で得た砂上の楼閣


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加速する日米の軍事一体化
深化する日米軍事同盟
2024年8月1日


        
 7月28日、日米の外務・防衛担当閣僚会議(2+2)が開かれた。会議では在日米軍が「統合司令部」を新設、武器の共同生産を行うことを決めたほか、「拡大抑止力」をめぐって討議が行われるなど、日米の軍事同盟は深化、増強に突き進みつつある。
    
        
◇統合司令部の新設

        
 会議の最重要課題として挙げられたのは、米軍、自衛隊の司令部の強化である。自衛隊は来春までに陸・海・空3軍の部隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を新設するのに応じて、米軍は在日米軍を再編し、「統合軍司令部」を設けることが明らかにされた。「統合軍司令部」には、現在ハワイのインド太平洋軍司令部の持っている軍作戦指揮権の一部が与えられる。
        
 これは、4月の日米首脳会談で合意した自衛隊と米軍の「指揮・統制」の向上の具体化である。これによって、自衛隊と米軍の戦術、装備などが共通のものとなるなど、自衛隊と米軍の一体化がすすむことになる。
        
 それだけではない。地対空ミサイルの輸出に加え、誘導パトリオット(PAC3)のなどの迎撃ミサイル生産能力の拡大のための共同生産、サイバーセキュリティに関する協力強化も確認された。
        
◇米の核に依存した「拡大抑止」

        
 2+2 の同じ閣僚会議では、「核の傘」を含む米国の戦力で日本へ攻撃を思いとどまらせる「拡大抑止」をめぐる初の会議が開かれた。
        
 木原防衛相は「拡大抑止に焦点を置いた議論の実施で日米同盟の抑止力に焦点を置いた議論実施で日米同盟の抑止力強化に向けたさらなる相乗効果が期待できる」と述べた。
        
 かつて日本政府は、世界唯一の「被爆国」として核兵器について、「持たず、作らず、持ち込ませず」の「非核3原則」を謳った。今でも公式的にはこの看板を下ろしてはいない。しかし、実際には、米国の「核の傘」に入ってきたのであり、そしてさらに米国の核が世界的な「平和のための力」になるこというのである。
        
 今回の2+2会議に見られるようにますます日米軍事同盟に前のめりになり、それへの依存を強めている。この背景となっているのは、ロシアが核の使用をちらつかせながらウクライナに軍事侵攻を続け、中国は帝国主義的な軍事的膨張のために核戦力を急速に増強し、北朝鮮はロシアの協力のもとに核ミサイル開発を加速しているなどである。
        
 これに対して、日本は米国との軍事同盟の一層の強化で対抗しようとしている。
        
◇平和は帝国主義の一掃こそ世界平和実現の道

        
 共産党は、自衛隊と米軍の「統合司令部の新設」について、「自衛隊を米の属軍にする」と批判している(「赤旗」主張 7・30)。日本が米軍の戦力に頼ろうとする限り、地位的に優劣の関係は避けることは出来ない。しかし、「統合」は米国ばかりではなく、日本の望みでもある
        
 2009年オバマ米大統領が「核削減」を訴えた時、日本の駐米公使・秋葉男剛は「戦略核弾頭の一方的な削減は日本の安全保障に悪影響をもたらす」と米国に伝えたという(「朝日」7・25)。
        
 米軍の核の存在は、日本の大資本にとって必要なのだ。岸田は「核なき世界」を看板にしている。しかし、岸田は「核兵器禁止条約」不参加というこれまでの政策を踏襲している。
        
 2+2会議は中国の外交は「他者を犠牲にし、自らの利益のために国際秩序をつくり変えようとしている。力や威圧による一方的な現状な変更の試みが強まっている」と批判した。これに対して中国は「強烈な不満と断固反対」と激しく反発している。
        
 しかし、日米と中国との対立は、自国の国家利益、資本の利権のための帝国主義国家同士の争いである。日米の軍事同盟強化は、中国の軍事力強化を、アジアの軍事的緊張をさらに激化させるだろう。 (T)

フェイクを拡散し女性蔑視を平然と語る
石丸伸二の正体
2024年7月18日


        
 都知事選に立候補し、蓮舫を上回る得票を得た元広島県安芸高田市長・石丸伸二の正体が次第に明らかになっている。
        
 都知事選の前には、維新の幹部と会い支援を要請したこと、ドトールコーヒー創業者等から選挙資金を貰っていたこと、自民党や旧統一教会関係の野腐れ達からも支援を受けていたことが明らかになっている。
    
        
◇自己中の市政をネットに流す劇場型政治屋

        
 石丸は市長時代に市の財政赤字を解消させたと自慢したが、実体は政府からのコロナ対策補助金や職員の退職金引当が過剰であったことを訂正したに過ぎなかった。これを自分の手柄だと誇大に宣伝しネットに流した。
        
 さらに石丸は給食費無償化も断行し自分の手柄だと言い出した。しかし、この無償化は市の貯金を取り崩して予算計上したものであった。『現代ビジネス』は次の様に報道している。
        
 「石丸市政最後の予算編成である2024年度予算では、給食費無償化が実行されることに伴い、市の貯金にあたる財政調整基金が億円単位で取り崩されている。筆者が見る限り、給食費無償化費用は過重であり、持続可能性が極めて疑わしいバラマキ政策となっている」(24・7・11)。
        
 その結果、市の財政はコロナ補助金が無くなった 23 年度に元の赤字に転落し、加えて、24 年度では市の貯金は大崩れした。見栄っ張りで自己中の石丸市政は早晩、破綻するのは必然だった。『現代ビジネス』は次のように報じた。
        
 「安芸高田市では小さな政治劇場の幕が下りた。石丸伸二前市長の退任に伴う市長選挙で、石丸市政の『継続と改善』を訴えた熊高昌三氏が、『石丸市政の在り方』の見直しを主張した藤本悦志氏に敗れたのだ。小さな市を舞台にした切り抜き動画による炎上政治は、住民の手によって否定された」(同上)。
        
◇平然と女性蔑視を口にする石丸

        
 あと二つ、ファシストまがいの利己的・劇場型政治を紹介する。
        
① かつて、石丸が 20 年9月、居眠り市議を攻撃したユーチュ-ブが話題を集めた。石丸によって罵倒された市議は軽い脳梗塞があり、居眠りではないと説明し、診断書を市長に提出したが、石丸は診断書をシュレッダーに掛けて捨てさり、相手にしなかった。いつものように、石丸はネットに流した。その後、この市議の元に「頻繁に着払いで商品が無断注文されたり、殺害予告が相次ぐようになり、酒も飲めなくなり顔色も悪くなるなど体調も悪化した後、2024 年 1 月に 68 歳で死去している」(ウキペディア)。
        
② 石丸は都知事選後、兵庫県明石市の前市長・泉房穂とのテレビ対談で(7月 14 日、読売テレビ)、人口減少対策として「一夫多妻制を導入するか遺伝子的に子供を生みだす」と、女性蔑視も甚だしい、ファシストそのもの、そしてブルジョアであることを自覚した傲慢な発言を平然と行っている。
        
◇労働者の強固な団結を作ろう

        
 市政から抜け出し都知事選へ転進を図ったのは、行き詰っていた石丸の逃避であった。だが、政治や経済の閉塞状況は、石丸のようなネットで扇動する人物が支持を得るようになっている。労働者はこんな輩の跋扈を許すべきでない。利己的で資本の儲けのために政治を動かす自民党や維新や石丸らの跋扈を阻止できるのは、労働者の強固な団結から生まれる闘いによってである。共に闘おう。 (W)

パレスチナ殲滅進めるイスラエル
加担するアメリカ帝国主義
2024年7月4日


        
 バイデン大統領が5月31日に公表した、イスラエルがハマスに提示したものとされるガザの新停戦案は、実現に向けての交渉は一向に進まない。その中でイスラエルのガザ攻撃はやむことはなく、イスラエルはパレスチナ殲滅を進めている。
        
ガザ停戦案

        
 新提案は、つぎのようなものである。
        
 第1段階は6週間停戦し、パレスチナ自治区ガザ地区の人口密集地からイスラエル軍が撤退する。イスラエルから連れ去られた女性と高齢者、負傷している人質を解放させ、イスラエルが拘束している数百人のパレスチナ人と交換する。戦闘で避難していたパレスチナ人をガザ北部などに帰還させる。ガザで分配する人道支援物資は1日あたり600台分に増やす。
        
 第2段階では、男性兵士も含めたすべての人質を解放し、イスラエル軍がガザから撤退する。第3段階ではガザの大規模な復興計画を始め、殺害された人質の遺骨が家族に返還される。
        
 第1段階の間に、イスラエルとハマスが第2段階について詳細を詰める。交渉が続く限りは停戦も続ける。バイデンは「イスラエルの提案の言葉を借りれば、ハマスが約束を守る限りは『敵対行為の恒久的な停止』になる」と述べた(朝日6月1日)、とある。
        
 新提案はイスラエルが承認した上で、ハマス側には30日に伝達されたと言われる。しかしイスラエルの承認は眉唾物である。イスラエルのネタニヤフ政権内には新提案に反対する極右勢力がいる。そしてネタニヤフ首相は、「人質全員の帰還やハマスの軍事・統治能力の排除などすべての目標が達成されるまで戦争は終わらない」と付け加えているのだ。
        
 6月9日にも「ハマスの壊滅なくして戦争は終結できないとして、『完全勝利する』」とネタニヤフは述べている(朝日6月11日)。「停戦」と「ハマスの壊滅」は相容れない。虚言を呈し韜晦(とうかい)を演じるネタニヤフをアメリアは擁護している。アメリカがイスラエルの共犯者と指弾されるのは当然である。
        
ガザの惨状

        
 バイデンが新提案で「戦闘休止持ち込む勝負に出た」(朝日6月2日)以降も、アメリカ国内でも国際的にも、イスラエルとアメリカへの抗議と停戦を求める声が高まる中で、6月6日には避難所となっていた国連学校をイスラエル軍は空爆し40人以上が死亡し、9日には中部ヌセイラトの人口密集地で人質救出作戦による空爆や銃撃によって274人が死亡した。
        
 13日にはイスラエルが「人道地区」としたラファの地中海沿いのマワシ地区にイスラエル軍は進軍し、同地区に逃れてきた避難民は多くが別の場所に退避を余儀なくされた。18日、イスラエル軍はヌセイラトとブレイジの難民キャンプを空爆し、17人以上が死亡。
        
 19日にはガザ地区南部を空爆し12人死亡、ラファ西方を戦車が砲撃し8人死亡。21日、ガザ全域の軍事攻撃で45人以上死亡。22日、ガザ市を攻撃し42人死亡。23日、人道支援物資配送センターを空爆し8人死亡。ガザ市シュジャイヤの襲撃と砲撃で7人以上死亡。連日の殺人が止まない。
        
 イスラエル軍の昨年10月7日以降のガザ侵攻によって、3万7396人以上が虐殺された(6月20日時点)。その半数以上が女性と子どもである。しかし、23日ネタニヤフは、「激しい戦闘は終わろうとしている」と白々しく言うが、ガザでの掃討戦自体は継続する考えを強調した。ネタニヤフは「ハマス壊滅」を楯とも口実にして、パレスナ人民への殺戮を続けるのだ。
        
 ガザ地区は1967年以来、西岸とともに50年以上にわたってイスラエルの占領下にあり、2007年以降は、イスラエルに完全封鎖されている。物資も人間も、イスラエルが許可する物しか搬入・搬出、入域・出域できない。燃料や食料、医薬品などのライフライン、原材料などが最低限にしか入ってこない。ガザで生産した物もガザの外に出荷できない。
        
 ガザの経済基盤は破壊され、住民の多くが極度の貧困状態に置かれている。農業も漁業も、ガザの基幹産業の一つだったが、こうした産業基盤が、占領と封鎖によって、徹底的に破壊されている(岡真理『ガザとは何か』、大和書房、29頁)。
        
 下水処理施設が稼働しないために、230万人の生活排水、トイレの水から何から何までが、そのまま川に排水され地中海へ。川の流域の地下水も汚染され、飲み水の98%が飲料に適さない(同上、139頁)ひどい生活環境の悪化が続いている。
        
 今回の戦闘以降支援物資が届かず、ガザの人口の半分にあたる100万人以上が「死もしくは飢餓に直面する」と言われている(国連食糧農業機関(FAO)、6月17日)。ラファ検問所は閉鎖されたままであり、ケレム・シャローム検問所経由の搬入は限られている。
        
 イスラエルによる空爆によって、人口密集地に重金属や揮発性化学物質を含む兵器が大量にばら撒かれ、土壌、水、大気への汚染が深刻化している(国連環境計画(UNEP)、18日)。非人間的行為がまかり通っているのだ。
        
 この間、パレスチナではガザばかりでなく、ヨルダン川西岸でもイスラエル軍や入植者による暴力行為が多発し、パレスナ人が500人を超えて殺害されている(朝日6月17日)。
        
 ハマスによるイスラエルへの急襲がきっかけとはいえ、パレスチナの自治、パレスチナ人の民族自決をないがしろにした、パレスチナ人を奴隷以下に扱う乱暴が止まらない。
        
 世界の目がガザに向いているのを利用して、ヨルダン川西岸でも、武装した入植者とイスラエル軍による、パレスチナ人に対する襲撃がエスカレートしている(同上、159頁)。即刻襲撃を止めよ!
        
イスラエルに加担するアメリカ帝国主義

        
 国連安保理は6月10日、停戦案を支持する決議を採択し、イスラエルとハマスに「即刻、無条件」の履行を促した。ハマスは「交渉に入る用意がある」とするが、イスラエルは「ハマスの壊滅なくして戦争終結はない」と主張する。イスラエルは停戦の交渉には乗らず、パレスナ人民への攻撃を繰り返している。
        
 中東訪問中のブリンケン米国務長官は11日、「ネタニヤフと会談した。彼は提案へのコミットメントを再確認した」、停戦案を支持するとの確約を得たと発言した。しかし停戦案決議後にもイスラエルによる攻撃は執拗に行われ、イスラエルは停戦交渉のテーブルに着く気配はない。米国の欺瞞的姿勢は明らかである。
        
 6月27日のバイデンとトランプのテレビ討論会で、「国連安保理からイスラエルまで私の停戦案を支持」とバイデンは脳天気な事を言うが、この間にも止まることなくイスラエルのパレスナチナ人民殺戮が行われている。バイデンもトランプも彼らの言葉には、一片の誠実さもない。
        
 「米国はイスラエルの最大の支持者」と言うアメリカは、イスラエルに加担しているのである。パレスチナ人民殺戮を繰り返すイスラエルの政策は、アメリカ帝国主義そのものと非難されなければならない。
        
パレスチナ人民の民族自決・パレスチナ国家樹立を踏みにじるイスラエル

        
 バイデン政権は、イスラエルと独立したパレスチナ国家が共存する「2国家解決」を主張する(朝日5月28日など)とされる。しかし5月10日のパレスチナ自治区ガザ地区の危機に関する国連総会緊急特別会合で、パレスチナの国連加盟を支持する決議案が、加盟193カ国中143カ国の賛成で採択された時、アメリカは反対した。このとき日本は賛成したが、カナダ、ドイツ、イタリア、英国は棄権した。
        
 パレスチナ国家の承認なくして、どうして「2国家解決」が可能か。アメリカは、パレスチナ国家を認めず「2国家解決」を拒否するイスラエルと同じではないか。口先だけの「2国家解決」が実際的な「2国家解決」を先送りし、解決を困難にしていることが分らないのか。アメリカは愚かさを恥じないのか。
        
 アメリカをはじめ決議案を棄権したこれらのG7国家は、パレスチナ人民の民族自決を踏みにじって、イスラエルによるパレスチナでの殺略に対して平然としていられるのであり、非人道的行為を許容して恥じないのだ。
        
 世界の労働者は、パレスチナ国家を認めないアメリカ、イスラエルを糾弾する。我々はパレスチナ人民の民族自決の闘いを支援する。民族自決によるパレスチナ国家樹立は、労働者にとって闘いの出発点である。パレスチナ国家形成によって、労働の解放を課題とする労働者階級の闘いが進展するのである。  (佐)

「岸田降ろし」狂騒曲
所詮は自民党延命策
2024年6月27日


        
 国会は閉会したが、岸田政権を追い詰めることのできない野党しか存在しないことをいいことに、自民党の政権維持策動がはびこっている。政権支持率は低迷し、9月に総裁選を控え党内からさえ首相交代を望む声が強まっている中で、岸田は点数を稼ぐのに躍起になっている。
        
 憲法改正推進を強調したり、武力攻撃から一時的に避難するシェルター整備の関係省庁による連絡会議設置指示の意向を示したり、経団連からの要望を蹴ってでも夫婦別称に抵抗するなど、反動的な支持層固めの動きは安倍を見習ってのことであろう。
        
 一方で岸田は21日の記者会見で、「酷暑乗り切り緊急支援」として、いったん5月で打ち切りなった電気やガス料金への補助を8月から3か月間追加実施するほか、現在行っているガソリン価格抑制の補助金も年内継続と、経済的困窮の根源は放置したまま、バラ撒き方針を表明。しかし、支援するにしても低所得者を対象にするべきであるし、ガソリン価格への補助金は政府の環境対策である脱炭素方針に逆行している。
        
 岸田は秋以降の新たな経済対策として、物価高対策で年金生活者や低所得者世帯を対象に給付を検討するとか、「重点支援地方交付金」の拡充を通じ、学校給食費など保護者負担軽減、中小企業や農林水産業、学校施設など幅広く支援していくといった考えを示したが、生活困窮者対策として不十分であるし、自治体への交付金が物価高対策とは無縁の事業に使われかねない問題など考慮しないのだ。
        
 秋以降の施策に言及することで岸田は総裁選への意気込みを見せたのであろうが、「総裁選で新しい総裁になってもらわねば(選挙に勝てない)」という党内の動きを抑えきれるものではないだろう。
        
 沖縄県議選では自民の「腐敗隠し」で勝利できたにしても、現在闘われている東京都知事選での現職小池の陰に隠れるしかない自民党政治への信頼回復など、容易いものではないことを自民党政治家自身が分っているであろう(本気で強がっていられるのは希少であろう)。
        
 そうした状況の中で、総裁選に向けた〝キーマン〟ともてはやされている菅前首相が〝岸田降ろし〟の口火を切ったと、マスコミは「待ってました」とばかりに報道している。「まずこの人が一番だ、『ポスト岸田』という、皆目一致する候補というのは今いません。その中で、菅前首相が総裁選に出馬するといった、前面に出るわけではないのですが、候補の『後ろ盾』になったり、間を繋いだりと、ポスト岸田レースの『画を描く』存在として注目を集めている」(日テレNEWS6・24)と言うのだ。菅は「自民党を刷新するんだ」と号令を発したと伝わっている。
        
 「菅が総裁選のカギを握っている」と見ている議員が多いと言うのだが、「ある自民党幹部からは、これまでにも党内議論など発言するチャンスはあったのに『今、言うのはおかしい』と冷ややかな見方もある」(日テレNEWS同前)と言うのだ。つまり菅は自分の存在感を示すチャンス到来という動きでしかないということだ。菅は自分が無派閥だったことで、「派閥の裏金問題に無縁」を装うのであろうが、派閥政治に乗っかって首相になれたことを都合よく忘れるのだ。
        
 菅が新総裁候補として名前を挙げた一人の河野デジタル相は「26日夜、自民党の麻生太郎副総裁と東京都内で約2時間にわたり会食した。9月に予定される党総裁選への対応などを協議したとみられる」(毎日)との報道もある。沈みゆく泥船にしがみつくことしかしえないほどに、かつての政界再編が遺したものが空虚だったということである。
        
 労働者の選択は、階級的な団結を固めて、ブルジョアジーとその権力を一掃する道を進んでいくことである。 (岩)

トヨタ本体で発覚した不正検査!
開き直る豊田章男
2024年6月13日


        
 3日に発表された型式指定をめぐる認証不正によって、トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤ マハの5社に国交省が道路運送車両法に基づく立ち入り検査が入り、トヨタ3車種、マツダ2車 種の生産が中止されている。このうちトヨタはまだ社内検査の途中で新たな不正検査が発覚する可能性が高いと思われる。
        
 トヨタが今回発表した検査不正は7車種で170万台にのぼるが、すでに4車種は生産が終了した車種であり、すべての車両の検査が正しく行われていたか疑わない方がおかしい。
        
 トヨタは莫大な宣伝広告費、19年度は4708億円もの巨費を投入し、広告料に依存するマ スコミに‶提灯記事〟を書かせてきたが、自社の HP に‶トヨタイムズ〟というコーナーを開設 し民放から人気のキャスターを引き抜くなど自前の発信力を高め、マスコミの買収費という批判 をかわす為に、20年度からは宣伝広告費は非開示になった。
        
 トヨタ批判を極力避けてきた大手マスコミもトヨタの不正を大きく取り上げ始めた。これまでトヨタは、‶世界一の品質管理〟や内部通報制度も「オールトヨタスピークアップ窓口」も設置 している、ダイハツや日野、豊田自動織機の不正検査が相次いで発覚した時も「トヨタのシステムは不正が起こり得ない仕組み」があると発表し、「ダイハツは行燈(あんどん)の紐をひく仕組み(異常発生を表示装置に点灯させる仕組み)がなかった、今後は小型車開発部門や海外展開はトヨタが担当し、認証業務や検査業務はトヨタが責任を持って今後取り組む」と大見得を切っていた。
        
 ところがトヨタの不正が明らかになり国交省の検査が入った3日に豊田章男会長は、検査不正の謝罪はしつつも、問題は国の認証制度にもあると言い出した。
        
 自動車関連産業の労働者数は554万人、輸出額の17・6%、17兆2700億円で自動車の貿易黒字は15兆6713億円(いずれも22年)と日本経済の屋台骨を支えていると自負する豊田章男は、トヨタが24年3月決算で4兆9449億円もの空前の利益をたたき出し、社長在任中にトヨタを最強の自動車メーカーにしたことで傲慢な態度が目立つようになってきた。
        
 トヨタの役員の数を削減し豊田章男に意見する役員を排除し、周りをイエスマンで固め、社長を自ら降り、依然として絶大な権力を握っているが、内情を暴露する情報(文春2月29日号など) が漏れ出てきている。
        
 3日の会見では、「認証のプロセスが非常に曖昧で属人的」、「不正の撲滅は無理だと思う。良かれと思ってやってしまつた」、「ブルータスお前もかという感じだ。トヨタは完璧な会社ではない」と、他人事のように発言し、認証制度に対して「認証プロセスと手順にギャップがある」、「今回の事をきっかけに、国と自動車会社とで……制度自体をどうするかという議論になればいい」と、トヨタの不正行為を棚に上げて、トヨタの検査基準は国の検査基準よりも厳しい、と説明して来た。
        
 24年春闘(トヨタは春季労使交渉)で、労働組合から「開発日程優先でモノを出すことになる現状は異常ではないか」という追及がなされたように、トヨタにおいては開発日程優先で利潤を増やそうと検査基準を緩くしたのであり、データ改ざんや法規を軽視する事を正当化するために‶トヨタ基準〟を都合よく利用していたのである。
        
 国交省は豊田章男の‶挑発〟に対して3日、「もし試験方法を守るという規定を知らなかったならコンプライアンス(法令順守)研修が不足している。もし知っていたならば故意性があり悪質だ」(国交省幹部)と発言し、11日にトヨタの不正検査6種類は国内、国連(自動車検査の「国連基準」が存在し、これを充たせばこの基準を採用する62ヵ国で新たに認証を取る必要はない) のいずれの基準にも反した方法で検査を行っていると国交省が発表。その場合は欧州などでの量産が出来なくなる可能性が高いと報道されている。
        
 トヨタの不正は、企業として成功し資本として大きく発展してきたトヨタの傲慢で歪んだ自信がもたらした不正である。トヨタは自らの行いを‶不正〟とは認識していない程に鈍感になっている。トヨタにとっては、‶トヨタ基準〟が守るべき基準である。かつて「憲法は工場の門前で立ちすくむ」と工場における労働者の無権利な状態を暴露する言葉があったが、国や国連の基準はトヨタの門前で立ちすくんだようである。それは、トヨタ資本の目的が利潤の獲得であり、労働者を搾取する資本主義的生産にこそ根本的な原因があることを教えている。
        
 労働者は日々の労働や生活にかまけて資本との闘いを忘れてはならない。資本は利潤獲得のために生産し、安全性は二の次だ。つまり資本の利潤のための〝安全〟しか考慮しない。労働者の労働や生活は資本と対立するのである。資本の支配に反対し、労働の解放を目指す労働者の闘いを労働者党と共に開始しよう!世界中の労働者と連帯し闘おう! (古)

「バターより大砲を」の時代の再来?
一層の反動化に大衆的反撃を
2024年5月30日


        
 欧州では、これまで福祉を重視してきた国々が一斉に軍備増強に走っている(以下、各国の事情は、「『福祉より国防』欧州の転換」-日経記事-より)。
        
 オランダの右派・自由党の党首ウィルダースは5月16日、連立内閣の政策として、「国内総生産(GDP)比2%を軍事費に充てる北大西洋条約機構(NATO)の目標に法的拘束力を持たせる」という政策で連立内閣は合意したと発表した。NATOの軍事費目標達成を優先するために、失業手当など約140ユーロ(約2兆3000憶円)を削減するという。
        
 ベルギーでも、首相のデクローは、NATOの軍事費増強のために、社会保障関係を削減するのは「理に適っている」とテレビ番組で述べた。
        
 デンマークでは昨年、祝日を一日削減する法律が成立した。勤務時間増加で税収を伸ばし、軍事費増額にあてるのだという。
        
 また欧州連合外交安全保障上級代表ボレルも、「我々は再び現実の戦争に突入した。歴史的に重大な局面にいる」(22年2月)と訴えた。
        
 こうした軍事費増強の大合唱の背景にはロシアのウクライナへの軍事侵攻がある。ロシアのウクライナ侵攻を契機に、EU各国は軍事費増強に向かっている。軍事費2パーセント目標を達成したデンマークのフレデリクセン首相は2月、「私たちはあまりにもナイーブで、西側は豊かになることに集中しすぎた」、さらなる軍事費充実のために福祉への支出や減税を抑制すべきだと語った。
        
 NATO各国が軍備充実を軽視してきたことが、ロシアの野蛮なウクライナ侵攻をもたらしたのであり、今後は福祉を削ってでもしっかり軍事的な備えを行っていかなくてはならないというのだ。この発言はNATO各国政府の現在の意識を代表している。
        
 こうしたなかで、軍事費増強のために社会保障など生活関連予算削減が正当化されるだけでなく、軍事費は生活を圧迫するのではなく、産業振興や雇用創出につながるという軍事費弁護論も登場、気候変動対策と産業政策を組み合わせた「EUグリーンディール」を推進した欧州委員長フォンデアライン委員長も軍事費は「良い雇用」を生み出すとこれに同調している。
        
 しかし、軍事費は破壊と殺し合いのための浪費であり、労働者に犠牲、負担を押し付けるものであって生活改善のためでないことは明らかである。
        
 NATO諸国は平和のためには軍備を増強する必要があるかに言っている。だがそれはヨーロッパに平和をもたらすどころか、ロシアとの軍事対立を激化させるばかりである。プーチンがウクライナ侵攻の理由の一つとして、ウクライナのNATO加盟はロシアの安全を危うくする阻止するためと述べているように、米・英・仏を中心とする帝国主義とロシアの帝国主義の対立がもたらしたものだからである。
        
 1930年代、「バターより大砲を」といって軍備拡大に走ったのはドイツのナチス・ヒトラーであった。軍備拡大によって、戦勝国の圧迫をはねのけ敗戦国ドイツの失地回復を図ろうとしたのである。欧州ではロシアのウクライナ軍事侵攻を契機に欧州には再び「バターより大砲」の時代が到来したかである。
        
 軍備増強の波が襲っているのは欧州ばかりではない。日本も同じである。
        
 日本は中国の南シナ海、インド・太平洋地域への膨張を抑制するという名目で、軍事費倍増(NATOと同じGDP比2%)を決めただけではなく、先の日米会談では、日本は米国の地域的パートナーからグローバルパートナーとなることを宣言、〝有事〟の際には米軍との「統合指令部」の下で軍事行動を一体化し、日本は攻撃の役割も果たすなど日米軍事同盟の一層の強化を決めた。これは「専守防衛」を謳ってきたこれまでの原則を放棄し、自衛隊が帝国主義国家の攻撃的軍隊となることを意味する。
        
 そして日本の自衛隊の「一大転換」とも言えるような重大なことが、国会で議論されることなく、たんなる日米首脳会談で決まり、既成事実化されようとしている。にもかかわらず、野党の立民や共産党、労働組合もこうした状況を放置している。ブルジョア国家の一層の反動化に対して大衆的反撃を呼び掛けようともしない現在の野党、労働組合の指導者は徹底的に腐っている。現在の野党に頼っていては反動化する資本、国家と闘うことは出来ない。
        
 一切の帝国主義に反対し、労働者の国際的連帯に立った階級的闘いと意識的な政党が必要である。(T)

裏金問題を不問に付す検察
自民党の不誠実な言い抜けを許すな
2024年5月16日


        
 裏金事件で政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で起訴された安倍派の松本事務局長の初公判が10日、東京地裁であった。検察が問題にしたのは虚偽記載で、裏金の還流は問うていない。この日、自民党・公明党は政治資金規正法改正案をようやくまとめたが、裏金事件の真相は全く明らかになっていない。政権は検察に符合するように、裏金問題の幕引きを図ろうとしている。
        
◇裏金事件のこの間の経緯
        
 先の4月28日の衆院3補選での自民党全敗は、裏金事件に対する労働者大衆の怒りの高まりを明らかにした。自民党は裏金事件を受けた政治資金規正法の改正に、全く後ろ向きだ。
        
 岸田首相は当初、裏金事件に対する反省がなく「厳格な責任体制の確立」などという、実効性に乏しい対策で今国会を乗り切ろうとしていた。補選の選挙情勢が厳しいとみられる中で、岸田はようやく23日に自民党案を出した。しかしそれは、改革に値しないようなもので、かえって労働者大衆の怒りに油を注ぎ、結局、補選惨敗となった。
        
 選挙後自民・公明との協議で、ようやく出た与党改正案も、政治資金パーティーの開示金基準の金額は未定、政策活動費の使途公開範囲は未定、企業・団体献金の言及なし、政治家の責任強化策も「連座制」ではなく「確認書」義務づけのみ、などだ。岸田は「実効性のある案をまとめてもらった」(5月10日)と言うが、野党のみならず自民党内からも批判が出ている。
        
 参院政倫審で安倍派等の議員は、弁明の機会が与えられるにも関わらず出席を拒んでいる(13日)。自民は労働者大衆の高まる怒りにもかかわらず、裏金問題の幕引きを図ろうとしている。
        
◇裏金は法律違反ではない?
        
 10日の安倍派裏金事件の検察側の冒頭陳述では、検察は安倍派政治資金パーティーの裏金の「還流」や「中抜き」の事実を認め、事務局長の罪はそれを収支報告書に記載しない「虚偽記載」だとした。「還流自体は違法ではなく、虚偽記載したことが問題」(5月11日朝日)と検察幹部は説明する。
        
 しかし、裏金事件のきっかけとなったパーティー券不記載の告発をした上脇教授によると「派閥は資金管理団体と異なり『その他の政治団体』なので、公職の候補者である議員個人には寄附はできません」(2023年 12 月7日週刊文春)となる。
        
 政治資金規正法第21条では、「公職の 候補者等」への寄附は「政党・政治資金団体」は「制限なし」だが、「政党・政治資金団体以外の政治団体」は、「金銭等によるものは選挙運動にかんするもの以外は禁止されます」ということであり、安倍派等の派閥はこれに該当する。派閥から候補者への寄附はできないのだ。
        
 だからこそ安倍派は、虚偽記載をして「還流」などを隠したのだ。それが裏金として「選挙資金」などに不正に使用されたからこそ問題なのであり、裏金の使途などとともに実態解明が必要だ。池田衆院議員、大野参院議員、谷川元衆院議員は、秘書や会計責任者とともに虚偽記載で起訴されたのに、萩生田や世耕など安倍派幹部らが起訴されなかったのも問題だ。
        
 二階や岸田を除いた裏金問題での自民党の処分も問題だ。岸田が済ませたという森元首相への〝聴取〟が、いい加減であったことも暴露されている。今回の検察の立件対象外になった2017年以前の裏金についても、自民党は明らかにしなければならない。検察が立件しなかったからといって「シロ」だ「問題ない」とする、自民党の不誠実な言い抜けは許されるものではない。
        
◇金権腐敗を隠蔽する岸田政権の一掃を
        
 政党から幹事長ら党幹部に渡される政策活動費や官房機密費の使途など、この間の裏金問題以外でも、自民の「カネ」の問題は際限が無い。
        
 このように金権腐敗にどっぷり浸かった岸田政権は、その金権腐敗に対する政治改革を例によって、「改革を進める」などの言葉だけで済ませようとしている。こんな岸田政権は、労働者大衆の階級的な団結した力で一掃しなければならない。 (佐)

新たな軍事的・経済的「包囲網」
対中国、日米比連携強化が意味するものは何か?
2024年4月18日


        
 1)日米比は去る11日、ワシントンで初の首脳会談を開き、3カ国の軍事協力の強化で合意し、3国間で新たな「枠組み」を成立させた。
        
 新たな「枠組み」とは、自衛隊とフィリピン軍との相互訪問を円滑化する協定(RAA)を締結していくことであり、日比間で軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を進めることである。もちろん、フィリピンへの武器輸出や将来の武器供与も当然入っている。
        
 米国も、台湾有事の際に、台湾とフィリピンとの間にあるバジー海峡の空域情報が欲しいのであり、そのためにも、フィリピンとのGSOMIA締結を急いでいる。さらに、日米比は3カ国海軍による共同訓練や海上保安機関の合同訓練の実施を決めた。
        
 フィリピンが中国依存の経済から脱却することも会談の主要なテーマであった。フィリピンとの間で半導体や重要鉱物資源の供給網構築(フィリピンは鉱物資源国でもある)やインフラ整備への支援なども打ち出した。
        
 これらは、対中国の「包囲網」を築くための一環として位置付けられ、日米韓の軍事的連携、日米豪印のQUAD(クアッド)、米英豪のAUKUS(オーカス)と同様な軍事的・経済的な「枠組み」=同盟である。
        
 岸田政権が積極的に今回の「枠組み」作りを進めてきたのは、中国「包囲網」のみならず、世界資本主義の秩序安定のために、先頭になって取り組み、米国と並ぶ世界のリーダーとして、つまり帝国主義のリーダー(岸田が言う「グローバルパートナー」だ)として振る舞うということである。
        
 2)中国は海洋進出を強化し、これに対抗するフィリピンとの間で、度々衝突や小競り合いが繰り返されてきた。フィリピンの漁船や保安艇に対して、中国海警局軍艇から放水やレーザー照射があり、レーザー照射を受けたフィリピン兵が一時失明する事件も発生した。
        
 中国の海洋進出は安倍政権時代から始まっている。習近平政権は南シナ海や東シナ海の岩礁を埋め立て、資源開発基地をはじめ、滑走路や港などの軍事施設を次々に増設し、海域全体の〝実効支配〟を強めている。中国はこれらの海域を自国の領域であると言い張り、この海域の分割統治を企む帝国主義的な野望を剥き出している――中国はフィリピンだけでなく、ベトナム沖でも紛争を起こしており、今後、日本政府は、フィリピンに続いてベトナムも抱き込む方向で検討していると言われる。
        
 中国が進める海洋進出や台湾統一(支配)を阻止することは、日本にとって、アジアの資本権益を今後も守り、また制することができるかの〝橋頭保〟である――と岸田や大企業は考えている。
        
 ところが、軍事費増額や沖縄へのミサイル配備や武器輸出解禁について、「米国の言いなりだ」、「米国の犬だ」、「日本は半植民地だ」と「れいわ」や共産党らは主張する。彼らの主張は民族主義(日本は対米従属であると理解する)や平和主義(憲法を絶対化する)からの観念的な批判である。それゆえに、日本や中国の資本主義の現段階を、さらに日本と中国は帝国主義国家であることを正しく分析できないのだ。中国について、堕落したが社会主義国家であるかに未だに評価する学者や新左翼諸派も同様である。
        
 台湾有事は日本のブルジョアたちにとって、米国より直接的な利害関係にある。だから岸田政権は、米国よりも前に出て闘う決意を秘め、実行に移しているのである。
        
 軍事強国化を図り、米国をはじめ韓国やフィリピンとも軍事的連携を図り、新たな対中国軍事同盟作りに猛進する岸田政権は、自らの帝国主義的野望のために、その先頭に立とうとするものであり、政治的・軍事的緊張を一層強めるものとして、断固批判していかなければならない。 (W)

相次ぐ自衛隊員の靖国集団参拝
4月からは新宮司に元海将の就任も
2024年4月4日


        
 現役自衛隊員の靖国集団参拝が相次いでいる。今年1月には陸上自衛隊幕僚副長ら現役自衛隊員 22 人が、昨年5月には海自練習艦隊司令官が幹部候補生学校の卒業生を対象として研修を行い、研修生165人を引き連れて靖国神社集団参拝を行った。自衛隊は研修の休憩時間に希望者を募り、参拝を行ったという。しかし、これは嘘で公式参拝ことが明らかになった。
        
 靖国神社の歴史は、戊辰戦争で命を落とした官軍側の兵士を弔うために、1869年、明治天皇の命で「東京招魂社」が創建されたことに始まる。1879年、「靖国神社」と改称された。日清、日露、第一次大戦を経て〝慰霊〟のためから〝顕彰〟のための神社へとなり、軍国主義体制のもとで、戦死者は天皇のために〝忠死〟した〝神〟として祀ることとなり、246万6千人余りの兵士、軍属が祀られている。
        
 その9割はアジア・太平洋戦争に関連しているが、戦争指導者である「A級戦犯」14 人も、1978年に合祀されている。かつては陸、海軍が管理し、合祀する対象者も軍が天皇の名を借りて決定した。靖国神社は、戦前には国家主義、愛国主義で国民を戦争に動員するための精神的な支柱であった。
        
 しかし、第二次大戦後には、「平和憲法」の下での「政教分離」によって、国家と靖国との関係は切り離され、政府や自衛隊員の公式参拝は禁止されたことになっている。
        
 靖国神社側も戦前のような戦争を扇動するような宗教団体ではなく、平和を尊び、戦争で亡くなった兵士の魂を「祀る」としている。だが、敷地内にある兵士の遺品や遺影、各戦争の歴史、特攻艇=回天などを展示した戦争博物館=「遊就館」を見ると、日本の中国、アジアなどへの帝国主義的侵略戦争を「(欧米の)植民地からの解放のための戦争」、米国との帝国主義戦争も「日本防衛のための戦争」と正当化し、命を失った兵士たちを日本のために闘った「英霊」として讃えるための施設であることは明らかである。
        
 靖国神社の集団参拝は、部隊の参拝を禁じた事務次官通達に違反であるが、海上自衛隊では、1967年から始められた遠洋航海(今回で 67 回目)の出航前には、正式参拝を行ってきたことも明らかになった。
        
 法を無視した集団公式参拝ばかりではなく、自衛隊と靖国神社との関係は強まりつつある。今年の4月からはトップの役職である宮司として自衛隊司令部幕僚長などを歴任した元海上自衛隊海将・大塚海夫が就任する。戦後宮司には元皇族や旧華族、神社関係者がなってきたが、自衛隊元幹部が宮司となるのは初めてである。10 人いる崇敬者総代にも、自衛隊の元幕僚長が就任してきた。
        
 昨年8月、麻生副総理は台湾で開かれた国際フォーラムで、「今ほど日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国々に非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はないのではないか。闘う覚悟だ。いざとなったら台湾防衛のために防衛力を使うという意思を相手に伝える事が抑止力になる」と語った。
        
 麻生の「闘う覚悟」発言に見られるように、台湾周辺海域をめぐって国家資本主義中国と日米ら〝自由主義〟諸国との対立、緊張は高まっている。日本は今後5年間に軍事予算を倍増し、中国を念頭に沖縄本島をはじめ島嶼では戦争に備えてシェルターの整備が行われる一方、新たな自衛隊の駐屯基地の開設、長距離ミサイル配備など軍備強化が進んでいる。
        
 まさに「新しい戦前」という言葉が社会に広まるような反動的な状況にある。靖国神社と自衛隊との結びつきの強化は、戦前と同じように国民、自衛隊員を国家主義、愛国主義で染め上げ、帝国主義戦争に備えて準備していこうとする日本の支配階級・大資本の意図が秘められている。
        
 労働者は自衛隊の靖国公式参拝に断固反対し、糾弾する。 (T)

プーチンの権力誇示目論んだロシア大統領選
反対勢力抑圧で得た砂上の楼閣
2024年3月28日


        
 ロシア大統領選は、21日の確定結果では投票率77・49%、プーチンは得票率87・28%で5選を果たした。今回プーチンは、「強いロシア」を掲げて愛国主義的な政策を進めてきた政権に対する信認、特に、ウクライナへの軍事侵攻の信認を圧勝で得ようと、投票率70%、得票率80%を目標にした。選挙結果はそれを達成したかであるが、それはプーチン政権の露骨な反対勢力への抑圧によってかろうじて得られた砂上の楼閣である。
        
◇選挙経緯
 
 プーチンは「選挙への参加は愛国心を示すことになる」と投票を呼びかけ、投票日を15日から17日の3日間とする、電子投票を一部可能にして投票するとポイントや遊園地の入場券が当たる、投票所の投票でも旅行などの景品が当たるなど投票率向上を図った。公務員や国営企業、大企業の社員を投票所にいくように圧力をかける、投票箱が透明であり誰に投票したかが分かるなど、公平な選挙とは言えるものではない。
 
 また今回の選挙では、占領地の南部ザポロジエ、ヘルソン、東部ドネツク、ルガンスクとクリミアでも投票を行い、ロシアの実効支配を印象づけようと企んだ。投票は選管スタッフらの戸別訪問でも実施され、ウクライナは「銃口を突きつけられた投票」と非難した。
 
 侵攻後プーチンは、侵攻を批判した場合、軍に対する「虚偽情報の発信」、「信用失墜行為」として罪に問う法律を導入し、「国家反逆罪」の刑も重くした。欧米からの金銭支援を受ける個人、団体を「スパイ」扱いし、「外国の代理人」制度を導入した。これらによって、プーチンは一貫して反政府の動きを封じ込めてきており、特に軍事侵攻以降は、反戦デモや人権団体などを徹底的に排除している。
 
 その中で、侵攻反対を訴えて立候補をめざした元下院議員のナジェージュジンは、若者を中心に支持が広がったが、2月8日中央選挙管理委員会は、立候補を認めない決定を下した。政権は「反侵攻」の広がりを恐れたのだ。
 
 すでに、「過激派組織の創設」などの罪で服役していたナワリヌイを北極圏の刑務所に移し過酷な刑務所暮らしで「自然死」させた。ナワリヌイは獄中からも「プーチンがいないロシア」を訴え、プーチン以外の候補者に投票する運動を開始していたのだ。
 
 プーチンは「反侵攻」の候補者と選挙で闘うことを恐れ、彼らを大統領選から排除し、プーチンに投票する選択肢しかない状況を作り出した。
 
 プーチンは自分を国民全体の大統領として演出するため、与党・統一ロシアの代表としてではなく、無所属で立候補し、12月には軍事侵攻に参加した兵士に栄誉勲章を授与した会合の後、参加者や戦死した兵士の母親らの要請に応えるという形で立候補の表明を行うという手の込んだことをやっている。
 
 そして、大規模博覧会「ロシア」や世界青少年フェスティバルなどの官製イベントで、若い世代を参加させ、ロシアの最新の科学技術や各地の魅力を紹介し、ロシアは「安定した国、社会」、「すばらしい国」、それを指導しているプーチンは「経験豊富で決断力も思いやりもある政治家」だと、「選挙キャンペーン」を行った。
 
 また、アメリカの元司会者のインタビューを受けたり、IAEAのグロッシ事務局長と会談したり、親ロシアの首脳と「未来ゲーム」イベント開幕式に出席するなどの外交を展開し、「ロシアは孤立しておらず、今も国際的に主導的な立場にある」とアピールに余念がなかった(朝日デジタル3・15)。
        
◇選挙結果
 
 しかしこのような大統領選は、ロシア人民の反発を引き起こし、各地で緑の液体が投票箱に入れられたり、放火されたりする抗議行動が相次いだ。
 
 ナワリヌイの妻ユリアは、17日正午に投票所に行き、プーチン以外の候補者に投票するように呼びかけた。政権側はこの呼びかけが無許可の行事開催にあたるとして「参加すれば処罰の対象となる」と脅したが、モスクワなど国内主要都市、在外投票所のあるパリ、ベルリンなどの国外各地で抗議の意志が示された。
 
 選挙は、無所属のプーチンのほか、「新しい人々」、自由民主党、ロシア共産党の3党からの4人で競われた。この3党は、侵攻を支持し、政権に近い体制内野党だ。選挙結果はプーチンの圧勝で終わった。
 
 しかしロシアの民間選挙監視団体「ロゴス」は、選挙データの分析から、プーチンの獲得した7628万票のうち、約2200万票が不正に上乗せられたと指摘し、「史上最大の選挙不正」と批判する。
 
 144の国と地域で行われた在外投票ではプーチンの得票率は72・3%であったが、主要都市でみると、ロンドンでは21・1%、東京では44・1%、ローマでは61・7%とより低くなっている。
 
 日本に住むロシア人が行った出口調査では、東京の調査では600人以上を対象に行い、回答した人のうち「新しい人々」のダワンコフが45・8%、プーチン16・2%、無効票14・6%などとなっている(NHK3・19)。
        
◇プーチンとの闘い

 プーチンは自らの政権の正当性、ウクライナ侵攻の信認を得たとするが、政権の選挙プロパガンダ、反政府勢力の排除、政権側に有利になるような選挙方法などによって、労働者人民の支持を形ばかりに得たに過ぎない。
 
 ソ連国家資本主義の行き詰まりから出てきた経済自由化は、1991年のソ連邦の解体に帰着した。ロシア国家が脆弱化し混乱する中で、2000年にプーチンは権力を手中に収めた。国営企業と巨大企業を国家の下に置き、国家主導の経済路線を推進し、政治的には『大国復興』という幻想で労働者大衆を操り、専制的抑圧によって労働者を支配し、中央集権的な国家資本主義の再編を進めた。そのプーチンの国家資本主義は、覇権を拡大する帝国主義化し、ウクライナを侵略している。
 
 今回の選挙に見られるように、かつての共産党は体制内野党化しており、資本主義を維持するプーチン政権を支える側になっている。共産党は「社会主義」とは無縁であり、労働者人民を抑圧するプーチン政権に加担している。
 
 プーチン政権の下で、ウクライナ侵攻に反対する「ロシア義勇軍」が形成され、夫や子どもを戦場に連れ出されている婦人たちは、プーチンに抗議の意志を表明した。今回の選挙でもプーチン政権に対立し戦争反対を訴える勢力が顕在化しつつある。
 
 2023年の実質GDPが前年比で3・6%の経済成長と言われるが、石油や天然ガスなどの資源頼みのロシア経済は近年低迷しているのが現状で、戦争にのめり込み経済は行き詰まり、労働者大衆の戦争反対の闘いは強まっていくであろう。ロシアとウクライナの労働者は連帯して、ロシアの帝国主義的侵略を止めさせなければならない。 (佐)