新たな軍事的・経済的「包囲網」
対中国、日米比連携強化が意味するものは何か?
2024年4月18日
1)日米比は去る11日、ワシントンで初の首脳会談を開き、3カ国の軍事協力の強化で合意し、3国間で新たな「枠組み」を成立させた。
新たな「枠組み」とは、自衛隊とフィリピン軍との相互訪問を円滑化する協定(RAA)を締結していくことであり、日比間で軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を進めることである。もちろん、フィリピンへの武器輸出や将来の武器供与も当然入っている。
米国も、台湾有事の際に、台湾とフィリピンとの間にあるバジー海峡の空域情報が欲しいのであり、そのためにも、フィリピンとのGSOMIA締結を急いでいる。さらに、日米比は3カ国海軍による共同訓練や海上保安機関の合同訓練の実施を決めた。
フィリピンが中国依存の経済から脱却することも会談の主要なテーマであった。フィリピンとの間で半導体や重要鉱物資源の供給網構築(フィリピンは鉱物資源国でもある)やインフラ整備への支援なども打ち出した。
これらは、対中国の「包囲網」を築くための一環として位置付けられ、日米韓の軍事的連携、日米豪印のQUAD(クアッド)、米英豪のAUKUS(オーカス)と同様な軍事的・経済的な「枠組み」=同盟である。
岸田政権が積極的に今回の「枠組み」作りを進めてきたのは、中国「包囲網」のみならず、世界資本主義の秩序安定のために、先頭になって取り組み、米国と並ぶ世界のリーダーとして、つまり帝国主義のリーダー(岸田が言う「グローバルパートナー」だ)として振る舞うということである。
2)中国は海洋進出を強化し、これに対抗するフィリピンとの間で、度々衝突や小競り合いが繰り返されてきた。フィリピンの漁船や保安艇に対して、中国海警局軍艇から放水やレーザー照射があり、レーザー照射を受けたフィリピン兵が一時失明する事件も発生した。
中国の海洋進出は安倍政権時代から始まっている。習近平政権は南シナ海や東シナ海の岩礁を埋め立て、資源開発基地をはじめ、滑走路や港などの軍事施設を次々に増設し、海域全体の〝実効支配〟を強めている。中国はこれらの海域を自国の領域であると言い張り、この海域の分割統治を企む帝国主義的な野望を剥き出している――中国はフィリピンだけでなく、ベトナム沖でも紛争を起こしており、今後、日本政府は、フィリピンに続いてベトナムも抱き込む方向で検討していると言われる。
中国が進める海洋進出や台湾統一(支配)を阻止することは、日本にとって、アジアの資本権益を今後も守り、また制することができるかの〝橋頭保〟である――と岸田や大企業は考えている。
ところが、軍事費増額や沖縄へのミサイル配備や武器輸出解禁について、「米国の言いなりだ」、「米国の犬だ」、「日本は半植民地だ」と「れいわ」や共産党らは主張する。彼らの主張は民族主義(日本は対米従属であると理解する)や平和主義(憲法を絶対化する)からの観念的な批判である。それゆえに、日本や中国の資本主義の現段階を、さらに日本と中国は帝国主義国家であることを正しく分析できないのだ。中国について、堕落したが社会主義国家であるかに未だに評価する学者や新左翼諸派も同様である。
台湾有事は日本のブルジョアたちにとって、米国より直接的な利害関係にある。だから岸田政権は、米国よりも前に出て闘う決意を秘め、実行に移しているのである。
軍事強国化を図り、米国をはじめ韓国やフィリピンとも軍事的連携を図り、新たな対中国軍事同盟作りに猛進する岸田政権は、自らの帝国主義的野望のために、その先頭に立とうとするものであり、政治的・軍事的緊張を一層強めるものとして、断固批判していかなければならない。 (W)
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