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巻頭言



【2024.5.30】
「バターより大砲を」の時代の再来?
 ─―軍備増強の波が襲う欧州

【2024.5.16】
裏金問題を不問に付す検察
 ─―自民党の不誠実な言い抜けを許すな

【2024.4.18】
新たな軍事的・経済的「包囲網」
 ─―対中国、日米比連携強化が意味するものは何か?

【2024.4.4】
相次ぐ自衛隊員の靖国集団参拝
 ──4月からは新宮司に元海将の就任も

【2024.3.28】
プーチンの権力誇示目論んだロシア大統領選
 ──反対勢力抑圧で得た砂上の楼閣


 過去のメッセージへ

「バターより大砲を」の時代の再来?
一層の反動化に大衆的反撃を
2024年5月30日


        
 欧州では、これまで福祉を重視してきた国々が一斉に軍備増強に走っている(以下、各国の事情は、「『福祉より国防』欧州の転換」-日経記事-より)。
        
 オランダの右派・自由党の党首ウィルダースは5月16日、連立内閣の政策として、「国内総生産(GDP)比2%を軍事費に充てる北大西洋条約機構(NATO)の目標に法的拘束力を持たせる」という政策で連立内閣は合意したと発表した。NATOの軍事費目標達成を優先するために、失業手当など約140ユーロ(約2兆3000憶円)を削減するという。
        
 ベルギーでも、首相のデクローは、NATOの軍事費増強のために、社会保障関係を削減するのは「理に適っている」とテレビ番組で述べた。
        
 デンマークでは昨年、祝日を一日削減する法律が成立した。勤務時間増加で税収を伸ばし、軍事費増額にあてるのだという。
        
 また欧州連合外交安全保障上級代表ボレルも、「我々は再び現実の戦争に突入した。歴史的に重大な局面にいる」(22年2月)と訴えた。
        
 こうした軍事費増強の大合唱の背景にはロシアのウクライナへの軍事侵攻がある。ロシアのウクライナ侵攻を契機に、EU各国は軍事費増強に向かっている。軍事費2パーセント目標を達成したデンマークのフレデリクセン首相は2月、「私たちはあまりにもナイーブで、西側は豊かになることに集中しすぎた」、さらなる軍事費充実のために福祉への支出や減税を抑制すべきだと語った。
        
 NATO各国が軍備充実を軽視してきたことが、ロシアの野蛮なウクライナ侵攻をもたらしたのであり、今後は福祉を削ってでもしっかり軍事的な備えを行っていかなくてはならないというのだ。この発言はNATO各国政府の現在の意識を代表している。
        
 こうしたなかで、軍事費増強のために社会保障など生活関連予算削減が正当化されるだけでなく、軍事費は生活を圧迫するのではなく、産業振興や雇用創出につながるという軍事費弁護論も登場、気候変動対策と産業政策を組み合わせた「EUグリーンディール」を推進した欧州委員長フォンデアライン委員長も軍事費は「良い雇用」を生み出すとこれに同調している。
        
 しかし、軍事費は破壊と殺し合いのための浪費であり、労働者に犠牲、負担を押し付けるものであって生活改善のためでないことは明らかである。
        
 NATO諸国は平和のためには軍備を増強する必要があるかに言っている。だがそれはヨーロッパに平和をもたらすどころか、ロシアとの軍事対立を激化させるばかりである。プーチンがウクライナ侵攻の理由の一つとして、ウクライナのNATO加盟はロシアの安全を危うくする阻止するためと述べているように、米・英・仏を中心とする帝国主義とロシアの帝国主義の対立がもたらしたものだからである。
        
 1930年代、「バターより大砲を」といって軍備拡大に走ったのはドイツのナチス・ヒトラーであった。軍備拡大によって、戦勝国の圧迫をはねのけ敗戦国ドイツの失地回復を図ろうとしたのである。欧州ではロシアのウクライナ軍事侵攻を契機に欧州には再び「バターより大砲」の時代が到来したかである。
        
 軍備増強の波が襲っているのは欧州ばかりではない。日本も同じである。
        
 日本は中国の南シナ海、インド・太平洋地域への膨張を抑制するという名目で、軍事費倍増(NATOと同じGDP比2%)を決めただけではなく、先の日米会談では、日本は米国の地域的パートナーからグローバルパートナーとなることを宣言、〝有事〟の際には米軍との「統合指令部」の下で軍事行動を一体化し、日本は攻撃の役割も果たすなど日米軍事同盟の一層の強化を決めた。これは「専守防衛」を謳ってきたこれまでの原則を放棄し、自衛隊が帝国主義国家の攻撃的軍隊となることを意味する。
        
 そして日本の自衛隊の「一大転換」とも言えるような重大なことが、国会で議論されることなく、たんなる日米首脳会談で決まり、既成事実化されようとしている。にもかかわらず、野党の立民や共産党、労働組合もこうした状況を放置している。ブルジョア国家の一層の反動化に対して大衆的反撃を呼び掛けようともしない現在の野党、労働組合の指導者は徹底的に腐っている。現在の野党に頼っていては反動化する資本、国家と闘うことは出来ない。
        
 一切の帝国主義に反対し、労働者の国際的連帯に立った階級的闘いと意識的な政党が必要である。(T)

裏金問題を不問に付す検察
自民党の不誠実な言い抜けを許すな
2024年5月16日


        
 裏金事件で政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で起訴された安倍派の松本事務局長の初公判が10日、東京地裁であった。検察が問題にしたのは虚偽記載で、裏金の還流は問うていない。この日、自民党・公明党は政治資金規正法改正案をようやくまとめたが、裏金事件の真相は全く明らかになっていない。政権は検察に符合するように、裏金問題の幕引きを図ろうとしている。
        
◇裏金事件のこの間の経緯
        
 先の4月28日の衆院3補選での自民党全敗は、裏金事件に対する労働者大衆の怒りの高まりを明らかにした。自民党は裏金事件を受けた政治資金規正法の改正に、全く後ろ向きだ。
        
 岸田首相は当初、裏金事件に対する反省がなく「厳格な責任体制の確立」などという、実効性に乏しい対策で今国会を乗り切ろうとしていた。補選の選挙情勢が厳しいとみられる中で、岸田はようやく23日に自民党案を出した。しかしそれは、改革に値しないようなもので、かえって労働者大衆の怒りに油を注ぎ、結局、補選惨敗となった。
        
 選挙後自民・公明との協議で、ようやく出た与党改正案も、政治資金パーティーの開示金基準の金額は未定、政策活動費の使途公開範囲は未定、企業・団体献金の言及なし、政治家の責任強化策も「連座制」ではなく「確認書」義務づけのみ、などだ。岸田は「実効性のある案をまとめてもらった」(5月10日)と言うが、野党のみならず自民党内からも批判が出ている。
        
 参院政倫審で安倍派等の議員は、弁明の機会が与えられるにも関わらず出席を拒んでいる(13日)。自民は労働者大衆の高まる怒りにもかかわらず、裏金問題の幕引きを図ろうとしている。
        
◇裏金は法律違反ではない?
        
 10日の安倍派裏金事件の検察側の冒頭陳述では、検察は安倍派政治資金パーティーの裏金の「還流」や「中抜き」の事実を認め、事務局長の罪はそれを収支報告書に記載しない「虚偽記載」だとした。「還流自体は違法ではなく、虚偽記載したことが問題」(5月11日朝日)と検察幹部は説明する。
        
 しかし、裏金事件のきっかけとなったパーティー券不記載の告発をした上脇教授によると「派閥は資金管理団体と異なり『その他の政治団体』なので、公職の候補者である議員個人には寄附はできません」(2023年 12 月7日週刊文春)となる。
        
 政治資金規正法第21条では、「公職の 候補者等」への寄附は「政党・政治資金団体」は「制限なし」だが、「政党・政治資金団体以外の政治団体」は、「金銭等によるものは選挙運動にかんするもの以外は禁止されます」ということであり、安倍派等の派閥はこれに該当する。派閥から候補者への寄附はできないのだ。
        
 だからこそ安倍派は、虚偽記載をして「還流」などを隠したのだ。それが裏金として「選挙資金」などに不正に使用されたからこそ問題なのであり、裏金の使途などとともに実態解明が必要だ。池田衆院議員、大野参院議員、谷川元衆院議員は、秘書や会計責任者とともに虚偽記載で起訴されたのに、萩生田や世耕など安倍派幹部らが起訴されなかったのも問題だ。
        
 二階や岸田を除いた裏金問題での自民党の処分も問題だ。岸田が済ませたという森元首相への〝聴取〟が、いい加減であったことも暴露されている。今回の検察の立件対象外になった2017年以前の裏金についても、自民党は明らかにしなければならない。検察が立件しなかったからといって「シロ」だ「問題ない」とする、自民党の不誠実な言い抜けは許されるものではない。
        
◇金権腐敗を隠蔽する岸田政権の一掃を
        
 政党から幹事長ら党幹部に渡される政策活動費や官房機密費の使途など、この間の裏金問題以外でも、自民の「カネ」の問題は際限が無い。
        
 このように金権腐敗にどっぷり浸かった岸田政権は、その金権腐敗に対する政治改革を例によって、「改革を進める」などの言葉だけで済ませようとしている。こんな岸田政権は、労働者大衆の階級的な団結した力で一掃しなければならない。 (佐)

新たな軍事的・経済的「包囲網」
対中国、日米比連携強化が意味するものは何か?
2024年4月18日


        
 1)日米比は去る11日、ワシントンで初の首脳会談を開き、3カ国の軍事協力の強化で合意し、3国間で新たな「枠組み」を成立させた。
        
 新たな「枠組み」とは、自衛隊とフィリピン軍との相互訪問を円滑化する協定(RAA)を締結していくことであり、日比間で軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を進めることである。もちろん、フィリピンへの武器輸出や将来の武器供与も当然入っている。
        
 米国も、台湾有事の際に、台湾とフィリピンとの間にあるバジー海峡の空域情報が欲しいのであり、そのためにも、フィリピンとのGSOMIA締結を急いでいる。さらに、日米比は3カ国海軍による共同訓練や海上保安機関の合同訓練の実施を決めた。
        
 フィリピンが中国依存の経済から脱却することも会談の主要なテーマであった。フィリピンとの間で半導体や重要鉱物資源の供給網構築(フィリピンは鉱物資源国でもある)やインフラ整備への支援なども打ち出した。
        
 これらは、対中国の「包囲網」を築くための一環として位置付けられ、日米韓の軍事的連携、日米豪印のQUAD(クアッド)、米英豪のAUKUS(オーカス)と同様な軍事的・経済的な「枠組み」=同盟である。
        
 岸田政権が積極的に今回の「枠組み」作りを進めてきたのは、中国「包囲網」のみならず、世界資本主義の秩序安定のために、先頭になって取り組み、米国と並ぶ世界のリーダーとして、つまり帝国主義のリーダー(岸田が言う「グローバルパートナー」だ)として振る舞うということである。
        
 2)中国は海洋進出を強化し、これに対抗するフィリピンとの間で、度々衝突や小競り合いが繰り返されてきた。フィリピンの漁船や保安艇に対して、中国海警局軍艇から放水やレーザー照射があり、レーザー照射を受けたフィリピン兵が一時失明する事件も発生した。
        
 中国の海洋進出は安倍政権時代から始まっている。習近平政権は南シナ海や東シナ海の岩礁を埋め立て、資源開発基地をはじめ、滑走路や港などの軍事施設を次々に増設し、海域全体の〝実効支配〟を強めている。中国はこれらの海域を自国の領域であると言い張り、この海域の分割統治を企む帝国主義的な野望を剥き出している――中国はフィリピンだけでなく、ベトナム沖でも紛争を起こしており、今後、日本政府は、フィリピンに続いてベトナムも抱き込む方向で検討していると言われる。
        
 中国が進める海洋進出や台湾統一(支配)を阻止することは、日本にとって、アジアの資本権益を今後も守り、また制することができるかの〝橋頭保〟である――と岸田や大企業は考えている。
        
 ところが、軍事費増額や沖縄へのミサイル配備や武器輸出解禁について、「米国の言いなりだ」、「米国の犬だ」、「日本は半植民地だ」と「れいわ」や共産党らは主張する。彼らの主張は民族主義(日本は対米従属であると理解する)や平和主義(憲法を絶対化する)からの観念的な批判である。それゆえに、日本や中国の資本主義の現段階を、さらに日本と中国は帝国主義国家であることを正しく分析できないのだ。中国について、堕落したが社会主義国家であるかに未だに評価する学者や新左翼諸派も同様である。
        
 台湾有事は日本のブルジョアたちにとって、米国より直接的な利害関係にある。だから岸田政権は、米国よりも前に出て闘う決意を秘め、実行に移しているのである。
        
 軍事強国化を図り、米国をはじめ韓国やフィリピンとも軍事的連携を図り、新たな対中国軍事同盟作りに猛進する岸田政権は、自らの帝国主義的野望のために、その先頭に立とうとするものであり、政治的・軍事的緊張を一層強めるものとして、断固批判していかなければならない。 (W)

相次ぐ自衛隊員の靖国集団参拝
4月からは新宮司に元海将の就任も
2024年4月4日


        
 現役自衛隊員の靖国集団参拝が相次いでいる。今年1月には陸上自衛隊幕僚副長ら現役自衛隊員 22 人が、昨年5月には海自練習艦隊司令官が幹部候補生学校の卒業生を対象として研修を行い、研修生165人を引き連れて靖国神社集団参拝を行った。自衛隊は研修の休憩時間に希望者を募り、参拝を行ったという。しかし、これは嘘で公式参拝ことが明らかになった。
        
 靖国神社の歴史は、戊辰戦争で命を落とした官軍側の兵士を弔うために、1869年、明治天皇の命で「東京招魂社」が創建されたことに始まる。1879年、「靖国神社」と改称された。日清、日露、第一次大戦を経て〝慰霊〟のためから〝顕彰〟のための神社へとなり、軍国主義体制のもとで、戦死者は天皇のために〝忠死〟した〝神〟として祀ることとなり、246万6千人余りの兵士、軍属が祀られている。
        
 その9割はアジア・太平洋戦争に関連しているが、戦争指導者である「A級戦犯」14 人も、1978年に合祀されている。かつては陸、海軍が管理し、合祀する対象者も軍が天皇の名を借りて決定した。靖国神社は、戦前には国家主義、愛国主義で国民を戦争に動員するための精神的な支柱であった。
        
 しかし、第二次大戦後には、「平和憲法」の下での「政教分離」によって、国家と靖国との関係は切り離され、政府や自衛隊員の公式参拝は禁止されたことになっている。
        
 靖国神社側も戦前のような戦争を扇動するような宗教団体ではなく、平和を尊び、戦争で亡くなった兵士の魂を「祀る」としている。だが、敷地内にある兵士の遺品や遺影、各戦争の歴史、特攻艇=回天などを展示した戦争博物館=「遊就館」を見ると、日本の中国、アジアなどへの帝国主義的侵略戦争を「(欧米の)植民地からの解放のための戦争」、米国との帝国主義戦争も「日本防衛のための戦争」と正当化し、命を失った兵士たちを日本のために闘った「英霊」として讃えるための施設であることは明らかである。
        
 靖国神社の集団参拝は、部隊の参拝を禁じた事務次官通達に違反であるが、海上自衛隊では、1967年から始められた遠洋航海(今回で 67 回目)の出航前には、正式参拝を行ってきたことも明らかになった。
        
 法を無視した集団公式参拝ばかりではなく、自衛隊と靖国神社との関係は強まりつつある。今年の4月からはトップの役職である宮司として自衛隊司令部幕僚長などを歴任した元海上自衛隊海将・大塚海夫が就任する。戦後宮司には元皇族や旧華族、神社関係者がなってきたが、自衛隊元幹部が宮司となるのは初めてである。10 人いる崇敬者総代にも、自衛隊の元幕僚長が就任してきた。
        
 昨年8月、麻生副総理は台湾で開かれた国際フォーラムで、「今ほど日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国々に非常に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はないのではないか。闘う覚悟だ。いざとなったら台湾防衛のために防衛力を使うという意思を相手に伝える事が抑止力になる」と語った。
        
 麻生の「闘う覚悟」発言に見られるように、台湾周辺海域をめぐって国家資本主義中国と日米ら〝自由主義〟諸国との対立、緊張は高まっている。日本は今後5年間に軍事予算を倍増し、中国を念頭に沖縄本島をはじめ島嶼では戦争に備えてシェルターの整備が行われる一方、新たな自衛隊の駐屯基地の開設、長距離ミサイル配備など軍備強化が進んでいる。
        
 まさに「新しい戦前」という言葉が社会に広まるような反動的な状況にある。靖国神社と自衛隊との結びつきの強化は、戦前と同じように国民、自衛隊員を国家主義、愛国主義で染め上げ、帝国主義戦争に備えて準備していこうとする日本の支配階級・大資本の意図が秘められている。
        
 労働者は自衛隊の靖国公式参拝に断固反対し、糾弾する。 (T)

プーチンの権力誇示目論んだロシア大統領選
反対勢力抑圧で得た砂上の楼閣
2024年3月28日


        
 ロシア大統領選は、21日の確定結果では投票率77・49%、プーチンは得票率87・28%で5選を果たした。今回プーチンは、「強いロシア」を掲げて愛国主義的な政策を進めてきた政権に対する信認、特に、ウクライナへの軍事侵攻の信認を圧勝で得ようと、投票率70%、得票率80%を目標にした。選挙結果はそれを達成したかであるが、それはプーチン政権の露骨な反対勢力への抑圧によってかろうじて得られた砂上の楼閣である。
        
◇選挙経緯
 
 プーチンは「選挙への参加は愛国心を示すことになる」と投票を呼びかけ、投票日を15日から17日の3日間とする、電子投票を一部可能にして投票するとポイントや遊園地の入場券が当たる、投票所の投票でも旅行などの景品が当たるなど投票率向上を図った。公務員や国営企業、大企業の社員を投票所にいくように圧力をかける、投票箱が透明であり誰に投票したかが分かるなど、公平な選挙とは言えるものではない。
 
 また今回の選挙では、占領地の南部ザポロジエ、ヘルソン、東部ドネツク、ルガンスクとクリミアでも投票を行い、ロシアの実効支配を印象づけようと企んだ。投票は選管スタッフらの戸別訪問でも実施され、ウクライナは「銃口を突きつけられた投票」と非難した。
 
 侵攻後プーチンは、侵攻を批判した場合、軍に対する「虚偽情報の発信」、「信用失墜行為」として罪に問う法律を導入し、「国家反逆罪」の刑も重くした。欧米からの金銭支援を受ける個人、団体を「スパイ」扱いし、「外国の代理人」制度を導入した。これらによって、プーチンは一貫して反政府の動きを封じ込めてきており、特に軍事侵攻以降は、反戦デモや人権団体などを徹底的に排除している。
 
 その中で、侵攻反対を訴えて立候補をめざした元下院議員のナジェージュジンは、若者を中心に支持が広がったが、2月8日中央選挙管理委員会は、立候補を認めない決定を下した。政権は「反侵攻」の広がりを恐れたのだ。
 
 すでに、「過激派組織の創設」などの罪で服役していたナワリヌイを北極圏の刑務所に移し過酷な刑務所暮らしで「自然死」させた。ナワリヌイは獄中からも「プーチンがいないロシア」を訴え、プーチン以外の候補者に投票する運動を開始していたのだ。
 
 プーチンは「反侵攻」の候補者と選挙で闘うことを恐れ、彼らを大統領選から排除し、プーチンに投票する選択肢しかない状況を作り出した。
 
 プーチンは自分を国民全体の大統領として演出するため、与党・統一ロシアの代表としてではなく、無所属で立候補し、12月には軍事侵攻に参加した兵士に栄誉勲章を授与した会合の後、参加者や戦死した兵士の母親らの要請に応えるという形で立候補の表明を行うという手の込んだことをやっている。
 
 そして、大規模博覧会「ロシア」や世界青少年フェスティバルなどの官製イベントで、若い世代を参加させ、ロシアの最新の科学技術や各地の魅力を紹介し、ロシアは「安定した国、社会」、「すばらしい国」、それを指導しているプーチンは「経験豊富で決断力も思いやりもある政治家」だと、「選挙キャンペーン」を行った。
 
 また、アメリカの元司会者のインタビューを受けたり、IAEAのグロッシ事務局長と会談したり、親ロシアの首脳と「未来ゲーム」イベント開幕式に出席するなどの外交を展開し、「ロシアは孤立しておらず、今も国際的に主導的な立場にある」とアピールに余念がなかった(朝日デジタル3・15)。
        
◇選挙結果
 
 しかしこのような大統領選は、ロシア人民の反発を引き起こし、各地で緑の液体が投票箱に入れられたり、放火されたりする抗議行動が相次いだ。
 
 ナワリヌイの妻ユリアは、17日正午に投票所に行き、プーチン以外の候補者に投票するように呼びかけた。政権側はこの呼びかけが無許可の行事開催にあたるとして「参加すれば処罰の対象となる」と脅したが、モスクワなど国内主要都市、在外投票所のあるパリ、ベルリンなどの国外各地で抗議の意志が示された。
 
 選挙は、無所属のプーチンのほか、「新しい人々」、自由民主党、ロシア共産党の3党からの4人で競われた。この3党は、侵攻を支持し、政権に近い体制内野党だ。選挙結果はプーチンの圧勝で終わった。
 
 しかしロシアの民間選挙監視団体「ロゴス」は、選挙データの分析から、プーチンの獲得した7628万票のうち、約2200万票が不正に上乗せられたと指摘し、「史上最大の選挙不正」と批判する。
 
 144の国と地域で行われた在外投票ではプーチンの得票率は72・3%であったが、主要都市でみると、ロンドンでは21・1%、東京では44・1%、ローマでは61・7%とより低くなっている。
 
 日本に住むロシア人が行った出口調査では、東京の調査では600人以上を対象に行い、回答した人のうち「新しい人々」のダワンコフが45・8%、プーチン16・2%、無効票14・6%などとなっている(NHK3・19)。
        
◇プーチンとの闘い

 プーチンは自らの政権の正当性、ウクライナ侵攻の信認を得たとするが、政権の選挙プロパガンダ、反政府勢力の排除、政権側に有利になるような選挙方法などによって、労働者人民の支持を形ばかりに得たに過ぎない。
 
 ソ連国家資本主義の行き詰まりから出てきた経済自由化は、1991年のソ連邦の解体に帰着した。ロシア国家が脆弱化し混乱する中で、2000年にプーチンは権力を手中に収めた。国営企業と巨大企業を国家の下に置き、国家主導の経済路線を推進し、政治的には『大国復興』という幻想で労働者大衆を操り、専制的抑圧によって労働者を支配し、中央集権的な国家資本主義の再編を進めた。そのプーチンの国家資本主義は、覇権を拡大する帝国主義化し、ウクライナを侵略している。
 
 今回の選挙に見られるように、かつての共産党は体制内野党化しており、資本主義を維持するプーチン政権を支える側になっている。共産党は「社会主義」とは無縁であり、労働者人民を抑圧するプーチン政権に加担している。
 
 プーチン政権の下で、ウクライナ侵攻に反対する「ロシア義勇軍」が形成され、夫や子どもを戦場に連れ出されている婦人たちは、プーチンに抗議の意志を表明した。今回の選挙でもプーチン政権に対立し戦争反対を訴える勢力が顕在化しつつある。
 
 2023年の実質GDPが前年比で3・6%の経済成長と言われるが、石油や天然ガスなどの資源頼みのロシア経済は近年低迷しているのが現状で、戦争にのめり込み経済は行き詰まり、労働者大衆の戦争反対の闘いは強まっていくであろう。ロシアとウクライナの労働者は連帯して、ロシアの帝国主義的侵略を止めさせなければならない。 (佐)