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●1380号 2020年6月14日 【一面トップ】相次ぐ大型補正予算――なりふりかまわず大企業支援 【お知らせ】 【二面トップ】安倍政権の七つの大罪――そのコロナ対策を「総括・検証」する ※『海つばめ』PDF版見本 ※注文フォームはこちら 【1面トップ】 相次ぐ大型補正予算 挙国一致で無制限のバラ撒きへ コロナ対策の遅れや不手際、黒川の定年延長策動で内閣支持率が急落し、また第一次補正は不十分だとの批判が相次ぎ、安倍政権は慌てて第二次補正予算案を作り、5月27日に閣議決定した。 この二次補正案についての国会審議が開始されたが、野党(共産を除く)は総体としては大賛成だ。「事業規模」(国の直接支出に投融資などを加えたもの)で見れば、120兆円にも上り、第一次と合わせて200兆円を超える規模になったのだから、日本経済再生予算としてはまんざらではないとの判断だ。 まさに安倍政権と野党によるコロナ救国国会の成立である。 資本救済に徹した二次補正 しかし、第一次補正予算もそうだったが、第二次補正もまた労働者のためではない。この二次補正について少し具体的に見ていく。 政府が直接支出する部分は32兆円である。そのうちの36%にあたる11・6兆円が「企業の資金繰り支援」であり、その他、個人企業や中小企業に対する「家賃支援」2兆円や「持続化給付金」1・9兆円を含めると、企業への支援は直接支出分の5割を占める。 「企業の資金繰り支援」とは、その名の通り、企業への無利子融資の拡大(政府系金融機関は6億円を、民間金融機関は4千万円を無利子、無担保で融資できる)や資本注入(破綻した場合に元本返済に迫られることがない「劣後ローン」を政府系金融機関が6兆円規模で貸し出すなど)を指し、企業救済に大枚を投じる算段だ。 さらに、この第二次補正には、明確な使用目的がない、ただ不測の事態に使うという「予備費」が10兆円も設定されている。 この「予備費」は、政府の都合で使うことができ、あとは国会に事後報告すれば済むという代物であり、安倍による財政の私物化以外の何物でもない。野党は国会無視だと批判し、共産党は衆院採決でも予備費に反対の態度を示したが、補正全体には大枠で賛成なのだから説得力はない。 国家財政から直接支出しない形での企業支援も盛り沢山だ。 低金利で貸し付ける「財政投融資」は39兆円、民間金融機関や自治体などの融資は45兆円を見込む。さらに、政府は民間金融機関の経営を支えることも打出し、金融機関が破綻する状況になれば、「公的資金」を注入することを決めた。 予算とは違うが、日銀もまた株価暴落後の記者会見で表明した通りに、「日経平均」や「ETF」を大量に買い続け、株価を2万円以上に吊上げることに〝成功〟し、大企業の「資本収益」を支えている。その結果、日銀は今や「日本株の最大株主」である。 このように、安倍政権と日銀は、とりわけ大企業の経営を支えるために、なり振り構わずカネを注ぎこむつもりであるが、政府が直接支出するカネは全て国債で賄うのであり、20年度の国債発行額は総額で90兆円にも達する。 この90兆円の大半は民間金融機関を経由して日銀に買い戻されるのであるが、これら国債は日銀倉庫にブタ済みされ、債券としては「死に体」となるが、彼ら(野党も)は、その後始末については考える気力も失せ、全くの思考停止に陥っている。「後は野となれ山となれ」というわけだ。 電通などへの委託は昔から 野党にとっても第二次補正予算の大枠には賛成であり、野党が存在感を見せなければと、国会で追及しているのが「持続化給付金」問題である。 「持続化給付金」の代行業務は、「サービスデザイン推進協議会」という幽霊会社を一社かまして電通に発注され、さらに電通子会社5社を経由してパソナらの安倍のお仲間会社と契約されている。 安倍らが電通やパソナらに業務を委託し、利益のピンハネを黙認するのは、彼らとウインウインの関係を維持する上で、手っ取り早い仕事だからだ。 というのは、業務委託での見返りが、つまり政治献金が安倍や自民党に還流されるからである。 実際にこの類の業務は、かねてから政府と結びつきの強い企業との間で頻繁に行われてきたのだ。第一次補正で決まった一人10万円の「特別定額給付金」も各市町村の管理の下で作業が行われるのではなく、事前に市民に知らされるのでもなく、「テンプスタッフ」など大手の人材派遣会社に丸投げされている。 労働者には「自己責任」でやれと このように、企業に対する直接支援はふんだんに設定し、しかも、給付金業務などは安倍らのお仲間企業に丸投げし、利益をむさぼらせているが、他方、労働者への支援策はお粗末なものだ。 今回のコロナ禍で解雇や自宅待機を強いられた労働者が大量に発生している。仕事を失い、カネが底をつき、家賃が払えずアパートから追い出された労働者をなぜ直接に救済しないのか。困った労働者はNPOに救済を求めるなど必死になっているのである。 政府の補正予算にあるのは、ひとり親支援や会社が休業し所得が激減した労働者が申請できる手当を創設するとかであるが、こんな些細なもので労働者を救済できないのは明らかではないか。 労働者が解雇された場合、雇用保険に入っているなら一定支給されるが、それも年齢や加入月日で差があり、雇用保険加入が過去2年間で12ヶ月以上でないと何も支給されないのだ。こうした労働者もいることを政府は考慮していない。 しかも、明日の食扶持に事欠く労働者が溢れる傍らで、食料品、容器(食料品容器等)、農業、医療品などの部門では、人手不足が深刻になっていた。政府はその現実を見て知っていながら、こうした部門への労働の再配置(振替労働)すら考えようとしなかった。 否、資本の国家は労働者の国家ではないから、労働者は「自己責任」でやれと事実上言うのである。それならば、労働者は、資本主義を打倒し搾取を廃絶し、働く人々の共同体社会を目指すことになるが、それでもいいのか。 確かに共同体社会では、働く人々は資本に雇われた賃金労働者では全くない。皆、共同体の成員であり、資本の都合で雇用を奪われることはなく、非正規とか外国人とか女性とかでの差別も一切ない。差別する動機も必然性もない。支出した労働(時間)に応じて消費財などの生産物を受取る社会であり、生産力が高まるならば、労働時間は減り、各成員は労働時間に制約されないで生産物を受け取ることが可能になる社会である。 資本主義修正の試み しかし、コロナ後の社会について盛んに論じられてはいるが、「労働の解放」を真に訴えるのは我々だけで、グローバル資本主義や新自由主義や市場原理主義による資本主義を修正せよとの批判が大半だ。 つまり、一握りの金融資本や大金持ちが世界の富を支配し、中産階級が没落し、貧困層が拡大したのは、規制緩和や構造改革や緊縮政策による新自由主義の政策によってであり、コロナによって、格差の惨状や矛盾が露呈したというのである。 確かに、現代の資本主義は格差を拡大し続けてきたが、それは特別な資本主義だからではない。 高度成長が終わった先進資本主義国では、不況や金融危機が相次いで起こり、そこから立ち直るためにと、資本は搾取強化を図り、国家は資本の強搾取を援助するために人材派遣法や雇用契約法などを制定してきた。 その結果、世界のどこでも非正規労働者が大量に作られ、都合のいい雇用調整弁にされてきた。 コロナはこの現状を暴露したに過ぎないのだが、グローバル資本主義の批判者は、資本主義のいわゆる「自由化」を問題にするだけなのだ。 今こそ搾取の無い社会へ コロナの罹患による致死は、韓国やアメリカのデータを見るまでもなく、賃金労働と深い関係があった。コロナ経済恐慌による資本の危機は、直ちに労働者に転嫁された。 コロナ後の〝新しい生活〟も、労働者は「自己責任」で生きるしかないのだ。 しかし、コロナ後を見据えて、資本の方は利潤確保のためにと、いち早く動き出している。 例えば、日立製作所は、経済界の先陣を切り、従来の「年功序列型」の人事採用は止めて、欧米型の「ジョブ型」の人事採用にするという新方針を打ち出した。 「ジョブ型」の採用とは、企業の採用及び教育後の配置を止めて、予め職種や部門で採用し、賃金などの労働条件も職種や部門ごとに決め、それらが無くなれば自動的に解雇となる仕組みのものだ。 この「ジョブ型」雇用は、安倍政権が数年前に「同一労働同一賃金」を打ち出した時からの、経団連の腹案であった。コロナ危機をきっかけに、「同一職種労働は同一賃金」という安倍(野党や労働組合の要求でもあった)の「働き方改革法」を悪用しようとしている。 これが実施されるなら、一見、非正規と正規労働者間の賃金格差が改善されるかに見えるが、日立などの資本は、資本の生き残りのために、さらなる搾取強化を〝合理的〟に進めようとしているに過ぎない。 つまり、非正規と正規労働者間の実際の差別はそのままに、職種や部門間の賃金差別を〝合法化〟し、資本の払う総賃金をさらに削減しようとしている。その上、企業再編(リストラ)により、ある職種や部門がなくなれば、解雇も〝合法化〟されることになるのだから経営者にとって一石二鳥というわけだ。 以上の様に、コロナ禍は、ただ資本主義が労働力の売買を基礎とする搾取労働の社会であり、労働者が安心して生きていけない社会であることを満天下に晒した。 しかし安倍政権は、労働者の救済をないがしろにし、「自己責任」を強いている。このままの経済社会では、何ら希望を持てないことを労働者は、はっきり悟ったと言える。 そうだ! 今こそ、新たな時代、新たな社会(労働の解放の社会)に向かって大きく一歩を踏み出す時だ。 (W) 【お知らせ】 『海つばめ』再刊について コロナウイルス感染の広がりの影響を受けて、4月と5月を休刊しましたが、今号から毎週発行ではなく、月の第2週と第4週の日曜発行(隔週)にて再刊することに致します。休刊や発行定日変更がありましたので、料金につきましては、1号当たり送料を含めて80円とし、2000円で25号分(4000円お支払い済みの方は50号分)と致します。今後共宜しくお願い致します。 中央『資本論』学習会について 中央『資本論』学習会について、コロナ禍対応として開催を延期しておりましたが、講師の林紘義・党代表が4月に体調を崩して入院し、現在リハビリを行っていますが、学習会をいつ始められるかはっきりしない状態です。そこで、この学習会は、いったん中止といたします。この学習会に期待されていた方が多かっただけに申し訳なく思います。 【2面トップ】 安倍政権の七つの大罪 5月25日、安倍は「緊急事態宣言」を全国で解除した。記者会見で、安倍は「わずか1カ月半で今回の流行をほぼ収束させることができました。まさに日本モデルの力を示したと思います」と自慢げに述べた。しかし、安倍政権のコロナ対策は、この政府の度しがたい無能、無策、無責任を余すところなく暴露した。我々はそれを検証する。 「検証」拒否する安倍 安倍は記者会見で、「日本モデル」を吹聴したが、その中身については一言も語らなかった。そんなに素晴らしい「モデル」なら、堂々とその内容を宣伝すればいいではないか。安倍はまたもや、「こう言えば国民に受けますよ」と官邸官僚に入れ知恵されたのではないか。 6月9日、新型コロナウィルスの「収束」をどう定義するのかとの野党議員の質問書に対し、政府は「一概に定義することは困難」とする答弁書を閣議決定したが、「収束」が意味不明なら、「日本モデル」も空語でしかない。空文句や美辞麗句で国民を欺く安倍政権の〝面目躍如〟だ。 安倍はまた「総括と検証」は「事態が終息した段階」で行う、「中間検証」も「考えていない」と言い張った。 その一方で、安倍は、「先般のWHOの総会においては、公平で独立した包括的な検証を行うべきであるという決議案をEUや豪州等と協力して提出しましたが、米国や中国も賛同してコンセンサスを得ることができました」と吹聴している。 笑ってしまうではないか。他人に対しては「包括的な検証」を要求しながら、自分のこととなると、全体的な総括はもとより「中間総括」さえも拒否するのである。他人に厳しく、自分に甘い、これが安倍政権の一貫した姿勢である。だから、この政権は国民に信頼されず、その言動を常に疑いの目で見られているのだが、安倍だけがそのことに気づかないのだ。 安倍政権のコロナ対策における7つの大罪 この間のコロナ対策の「総括と検証」をすることは、第二波、第三波に備える上で必須である。さもなければ、同じような誤り、失敗を繰り返すだろう。安倍政権にできないなら、我々がやるしかない。安倍政権はコロナ対策に限っても7つの大罪を犯したと我々は宣言する。 1.安倍政権は危機意識を欠き、感染拡大に手を貸した 原因不明の肺炎患者発生を中国当局がWHO(世界保健機関)に報告したのが昨年12月31日。1月9日には新型コロナウィルスによる初の死者が中国で確認された。 日本や韓国でも死者が出て、各国が相次いで入国禁止、渡航制限などの措置をとる中で、日本も24日に湖北省への渡航中止勧告を出した。 だが、同日、「安倍は北京の日本大使館のHPに自ら登場、中国国民に向けて春節(旧正月)をお祝いし、訪日を熱烈歓迎する動画を公開した」(佐藤章氏「コロナ禍は安倍内閣の人災だ」、朝日新聞社『論座』デジタル版3月11日)。 まさに旅行会社のセールスマンである。この宣伝が功を奏して(?)、行き場を失っていた中国人は大挙して日本に流れ込んだ(1月の中国からの訪問者は前年同月比22・6%増の92万4800人)。 2月に入ると、中国からの旅行者と接触したタクシー運転手や屋形船従業員らが感染し、また札幌の雪まつりなどを見ようと北海道を訪れた中国人も多く、道内でも感染者が増えた。 2.クルーズ船対応を誤った 2月5日に横浜港に入港したクルーズ船対応でも政府は右往左往し、クルーズ船を“感染症の巣”にしてしまった。 安全区域と危険地域のゾーニング(区分け)がでたらめだったことは致命的だった。アフリカでエボラ出血熱の臨床を経験した神戸大学の医師、岩田健太郎氏は、「ゾーニングができていなかったから、検疫官、厚労省の官僚、DPAT、DMATと、感染してはいけない人が次々に感染してしまった」と証言している(同氏著『新型コロナウィルスの真実』ベスト新書)。このことを指摘した岩田氏は乗船して2時間後に追い出され、二度と呼ばれることはなかった。 3.習近平訪日、五輪開催を優先し、PCR検査を抑制した 厚労省は、「渡航歴や患者との接触などから、都道府県が必要とした場合に検査が行われる」との方針でPCR検査を抑制してきた。「37・5度以上の発熱が4日間以上続いた場合」との縛りも加え、検査対象を絞った(最近になって、加藤厚労相は「誤解だ」と開き直り、炎上した)。 山梨大学の島田真路学長兼同大学附属病院院長は言う、「保健師さんたちは『基本的に検査してはいけない』みたいな気持ち」になり、「感染を疑われる患者さんが来ても『しばらく様子を見てください』みたいに対応してしまう。最近では、そのまま亡くなった人もいる。(厚労省は)は罪深いことをやったと思います」(「PCR抑制・日本が直面している本末転倒な現実―検査山梨大学学長「不十分な検査体制は日本の恥」Frontine Press, 2020.5.10)。 島田氏は、医師が患者のコロナ感染を疑い検査の必要があると判断しても、保健所か相談センターが許可しないと検査できない実態を批判し、「PCR検査は、民間の検査会社や大学にとって比較的簡単な検査なんです。任せてもらえたら、もっとたくさん検査できたはずです。それを保健所だけにやらせようとするから、保健所がいっぱいになってしまう」と指摘している。「検査をこれだけ制限しておいて『陽性者が少ない』『コロナ対策をうまくやっている』と評価するのは、あまりに本末転倒な議論です」(同)。 島田氏は、「感染症では隔離がいちばん大事」であり、どんどん検査して、陽性者を見つけ、軽症者無発症者はホテルや公共施設に入れて医師や看護師がモニターする、病院のベッドは重症者のために空けておくのが「原則」と説く。 政府が検査を抑制した理由を島田氏は推測する、「4月に迫っていた中国国家主席の習近平来日と、7月に予定していた東京五輪。政府はこれらを優先したのでしょう。本当の原因はそこにあったと私は思います。東京五輪をやるためには、日本で感染者が増えていちゃいけないわけだから、PCR検査を抑えた。日本にはコロナウィルス拡大はないことにして・・・」。 島田氏の結論に何も付け加える必要はない。安倍は自らの権力維持を最優先して、国民の健康や生命を二の次にし、多くの犠牲者を出したのだ。これが「日本モデル」の真実である。 4.感染症対策の基本を無視した 島田氏も指摘しているように、感染症では「隔離」が原則である。岩田氏も言う、「感染経路を見つけて、遮断する」ことが「感染症対策のイロハ」であり「原理原則」である(estTimes, 2020.5.19)。 しかし、安倍政権はこの基本をおろそかにした。専門家会議やクラスター班は、クラスター(集団感染)の発見と潰しに追われて、検査拡大による全貌把握を怠った。 感染者が少数だった初期の段階では、クラスター対策重視は有効だったとしても、感染者が拡大していく中では、広く網を打って陽性者を見つけ、「隔離」することが重要になってくる。そのためには、島田氏が言うように、民間の検査会社や大学の研究者も動員して検査を拡大すべきであった(山中伸弥教授も同趣旨の発言をしている)。 政府・専門家会議が感染の実態、全体像を把握するのに失敗したことは、責任者自らが告白している。5月11日の参院予算委員会で、専門家会議副座長の尾身茂氏は、(この時点で1万5000人超の感染者が確認されているが)実際の感染者が「実は一〇倍か、一五倍か、二〇倍かというのは、今の段階では誰も分からない」と語った。 語るに落ちたとはこのことだ。感染者数、感染の拡大状況によって対策は異なってくるだろう。「敵を知り己を知れば、百戦危うからず」(孫子)と言うではないか。敵の全貌を知らずして、どう戦うというのか。正直な尾身氏は、はからずもクラスター対策に偏重した対策の破綻を認めたのである。 しかも、政府は専門家会議の議事録を作成せず、検証を不可能にした。もともと現在の専門家会議のメンバーは国立感染症研究所関係の研究者が主体で、医療従事者、危機管理の専門家などが入っていないと批判されてきた。議論の中身を公開して、広く専門家や国民が検証していけば、誤った方針を是正し、正しい方向に引き戻すことが可能だっただろうが、政府は議事録作成を拒否してきた。官邸の指示や官僚の関与など、よほど、「不都合な真実」が隠されているに違いないと誰しも思うだろう。 5.院内感染を拡大し、病院を医療崩壊の瀬戸際に追い込んだ 検査の抑制は、病院に重大な打撃を与えた。骨折や他の病気で救急外来に運び込まれた患者が実は新型コロナウィルスに感染していて、たちまち院内感染が広がったとか、行き倒れ状態で運び込まれた死者が陽性者だったなどの事例が相次いだ。 院内感染を恐れる病院が患者の受け入れを拒否し、患者が行き場を失う例もあった。 医療用マスクやフェイスガード、防護服などが不足していて、医療者の安全を図ることができないため、患者受け入れ拒否が相次いだ(政府は防護用品の生産を増やすと言いながら、いまだに不足は解消されていない)。 他方、陽性者を受け入れた病院は、一般患者の受け入れを制限し、手術を延期するなどの措置をとらざるを得ず、そのために病院経営は悪化し、経営危機に追い込まれる病院も出てきた。 医療関係者は風評被害に悩まされ、退職者も増えた。こんな状態で、第二波、第三波に持ちこたえられるはずがないと多くの医療関係者が危惧している。 6.突然の休校指示で混乱を招き、「自粛」を国民に強制した 新型コロナウィルスの感染者が全世界で急増し、パンデミックが宣言された後も、安倍の動きは鈍かった。安倍政権に対する批判が高まる中、安倍は2月27日に突如、全国すべての小中高校の休校を呼びかけ、学校現場に混乱をもたらし、子どもを抱える家族、労働者の家庭に大きな犠牲を強いた。 ようやく4月7日に安倍は「緊急事態宣言」を発したが、それは、「国民の皆様の行動変容、つまり行動を変えること」を求めるものであった。安倍は記者会見で、「人と人との接触機会を最低7割、極力8割、削減すること」を求めたが、これは、国民に「外出自粛」を強制するものであり、いわばコロナ対策を国民に〝丸投げ〟するものであった。 PCR検査の拡充や陽性者の「隔離」・症状に応じた対応、疲弊する医療・介護現場への徹底した支援など政府が緊急にやるべきことは山ほどあるにもかかわらず、「最も重要なこと」は「国民の行動変容」だ、つまりうまくいくかどうかは、「国民の行動」次第だ(うまくいかなければ国民のせいだ)というのだから、まさに政府の責任逃れ、無責任極まりない主張だ。安倍政権の本質を暴露したというべきか。 7.「経済対策」の名の下に財政崩壊を必至にした 安倍は二次にわたる計57・6兆円の補正予算を野党の賛成を得て成立させた。しかし、その中身は医療支援は二の次で、業界への利権配分だけは抜け目なく盛り込んだ超ばらまき予算である。安倍政権こそは、日本の財政、経済を崩壊させる張本人であり(その点では、野党も同罪だ)、〝国賊〟に値する。 労働者・働く者は、安倍政権打倒の隊列を強化し、闘いを発展させなければならない。(鈴木) |
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