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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1503号 2025年7月27日
【一面トップ】 衆院に続き、自公過半数割れに
        ――台頭するポピュリズム潮流
【一面サブ】  参政党が開いた憎悪の排外主義
        ――地獄への道は日本人ファーストから
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 25年版「防衛白書」軍事力を「平和の砦」と宣伝
        ――それは軍事大国化と帝国主義を誤魔化す方便
【二面サブ】  自民の「働きたい改革」糾弾!
        ――時間外労働の上限規制見直し
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

衆院に続き、自公過半数割れに

台頭するポピュリズム潮流

 20日投票の参議院選は、政権政党の自民、公明両党は大幅に後退し、昨年の衆院選に続き過半数割れとなった。しかし、それに代わって勢力を伸ばしたのは階級協調を唱える国民民主や民族主義・排外主義を唱える参政党、保守党である。自公政権に対する不信・不満は、労働者・働く者の団結と闘いの発展に向かうのではなく、ホピュリズム勢力を押しあげた。これこそ真剣に総括されなくてはならない課題である。

◇大敗した自公

 石破は、自公合わせて与党で過半数(50議席以上)獲得を目標としていた。しかし結果は、自民は全体の勝敗のカギを握る1人区(32選挙区)で前回(22年)28勝の半数の14勝で、18敗と負け越した。13ある改選数2以上の選挙区でも苦戦し、大阪で1998年に公認候補が落選して以来27年ぶりに議席を落としたのを始め、大選挙区の東京では2人の候補者のうち1人が落選、13年以来自民が2議席独占してきた千葉も1人の当選にとどまるなど後退した。比例の獲得票は1281万と前回よりも545万票も少なく、比例議席数は12にとどまった。

 自民の大敗は、「裏金づくり」に象徴される金権・腐敗政治、コメをはじめとする物価上昇、住宅高騰などによる生活困難、将来への不安など、鬱積している不信、不満の表れである。自民は、大衆の困窮をよそに企業やその団体から政治献金を受け取り、「裏金づくり」を繰り返してきた。それが露呈し、批判されても反省することなく、「献金の透明化」などといってごまかしてきた。

 公明も自民との連立政党として、自民に協力してきたのであり、改選14議席から選挙区4、比例4計8議席へと大幅後退。

◇無力をさらけ出す立憲、共産

 しかし、こうした自公政権に対する批判や怒りは、政府の予算案や補正予算案に賛成した維新や、「対決ではなく解決」を謳い文句に減税などをめぐって政府との協議を重視してきた国民民主とは異なり、政府に批判的姿勢を強調してきた立憲や共産を押し上げる方向には向かわなかった。

 立憲は、改選22に対して獲得議席は選挙区15、比例7計22と改選前と同数にとどまる。そして共産は、得票率を2%も落とし、改選7に対して選挙区1、比例2計3議席と4つもの議席を失った。

 立憲や共産は、物価高騰に対して「給付」を謳う政府に対して、「一度限りのバラ撒き策だ」と、消費減税を対置した。

 立憲は、食料品に関わる消費税ゼロとし、赤字国債は発行せず、財政剰余金や使われず余分となった積立金を取り崩し、財源とすると主張。しかし、財政剰余金や余分な基金の取り崩しを財源とした消費減税と言っても、毎年それがあるわけではなく、1年間だけである。

 これに対して共産は、緊急に消費税5%への減税、そして最終的には消費税を廃止すると謳った。財源としては儲かっている大企業と富裕層への応分の課税で賄うとした。

 だがこれは物価高騰の解決策になるだろうか。

 大企業や富裕層へ応分の負担といっても、そのもとは労働者の生み出した剰余価値である。消費税を減額(あるいは廃止)して、その分を大企業や富裕層に負担させると言っても、企業が労働者から搾取する剰余価値の分量は変わらない。

 変わるものは、労働者が生みだした剰余価値を企業や富裕層が利潤あるいは配当、利子として自分のものとする量が消費税代替分課税されて減るだけである。資本が労働者から剰余労働を搾取し、利益として得るという資本と労働者の関係は変わらない。

 しかし、大企業は自分の利益を確保するために原材料費の値上がりとか電気やガスなど燃料費の高騰など様々な理由をつけて商品価格を値上げするかもしれない。そうなれば消費税を減額(あるいは廃止)しても、物価は下落しないだろう。

 共産は「応分の負担」というが資本との闘いを避けるこうした日和見主義では労働者の生活を防衛することもできないし、労働者はこんな政策に期待することは出来ない。

 また、朝日新聞・大阪大学のネット意識調査によると、参政党に投票した人の1・1%が、4~5月段階では共産党に投票するつもりだったという(朝日、7・22)。共産は、選挙で自民党政治の「米国追随の歪みを正す」などと訴えていたが、こうした共産の民族主義的主張は、参政党の支持を広げたと言えよう。

◇資本の支配克服を目指す労働者党の発展を

 野党のこうした無力さが、ポピュリスト勢力=国民民主や「日本人ファースト」を掲げ排外主義、国粋主義を煽る参政党や保守党の反動的な政治勢力の台頭をもたらした。

 国民民主は「手取りを増やす」ことを目的に178万円までの非課税最低限の引上げを訴え、議席は4から17へと一気に4倍超に増加、非改選を含めて22議席と、単独で予算を伴う法案提出資格の政党に躍進。彼らは、「手取り増加」政策が年7~8兆円もの財源を必要とし、新たな負担を伴うことに全く無頓着であり、目先の利益を訴え勢力を拡大したのだ。

 玉木代表は、「手取り増加」策に石破は協力しなかった、石破自民との連立はないが、石破が首相を辞めれば自民との協力もありうると言う。国民民主が自民と手を組む可能性は大きい。

 一方、参政党の得票は743万、得票率12・6%で、選挙区7比例7の計14議席に躍進。参議院で予算を伴わない法案の単独提出権が可能となる11議席以上を獲得した。

 彼らは、外国人について、あたかも生活の不安や困難などの原因であるかに言い募る。彼らは労働者の生活困難や将来への不安の本当の原因である利潤目的の無政府的生産を行う資本の支配の矛盾から目を逸らせ、外国人に責任を押し付け、働く外国人労働者と日本の労働者との分断と差別を煽っている。

 「日本人ファースト」は、実際には「国家ファースト」であり、参政党や保守党のような反動的潮流が拡大すれば、国家による労働者への圧迫は強まり、生活はさらに悪化するのは必至である。

 しかし、反動的ポピュリズム勢力との闘いを共産や立憲に期待することは出来ない。自民とバラ撒きを競ったり、民族主義を振りまいたりし、労働者の階級意識を解体しているからである。

 労働者の一切の災厄の原因となっている資本の支配を克服し、搾取から解放された社会を目指して闘う労働者の政党の建設と発展のための闘いが求められている。 (T)


【1面サブ】

参政党が開いた憎悪の排外主義

地獄への道は日本人ファーストから

 参院選で参政党は、14議席(選挙区7比例区7)獲得し、公示前2議席から15議席に議席を増やした。選挙区7は立憲、国民と同じである。政党に対する全国的な支持を表す比例区の得票数は約743万票(率は12・6%)で立憲を上回り国民約760万票(12・9%)に次ぐ3位を占めた。

◇政治の中心に登場した背景は何か

 参政党は、維新を離党した参議院議員梅村が合流したことで政党要件(5議席以上か直近の参院選で2%以上の得票)を充たし、NHKなどテレビ出演の機会が増大。一気に注目を拡げた。参政党が繰り返す〝日本が日本人ファーストで何が悪い〟〝行き過ぎた外国人の受け入れで、日本人の賃金が上がらない〟〝日本中の土地が外国人に買い漁られている〟〝外国人の力や外国資本の手を借りずに日本人で日本を良くしよう〟等々。

 神谷は、グローバリズムに異議を唱える。グローバリズムの結果「貧富の差が広がった。中間層はどんどん貧しくなった」と主張し、排外主義者という批判に対して、〝国益と国民の安全の為の外国人管理〟は差別とは違う、叩かれるほど参政党は伸びる、とうそぶいた。

 神谷の理屈は、売り上げを伸ばすには消費を増やさなければならない、それには賃上げが必要。しかし自公政権はグローバリズムで外国人労働者を受け入れ、外国資本に日本市場を開放した。その結果、日本人の賃金は下がり貧富の差は拡大、中間層の貧困化をもたらした。大企業は600兆円もの内部留保をため込み、年間9兆円の消費税還付を受けている。大企業は賃上げ出来るが、中小企業はそんなことしたら倒産する、と叫び、グローバル化を推進する自民党に反対する。

 「失われた30年」で、「没落した中間層」(管理的業務に就くホワイトカラーか)や、資本のリストラ・合理化で新規採用中止になり、〝不本意な人生〟を強いられ、絶望と焦燥感に喘ぐ就職氷河期世代(93年~04年、非正規雇用で低賃金、年金加入期間が短いケースも多く年金も少ない)など40~50代が、共同通信の出口調査投票先では参政党は、40代の18%で全政党トップ、50代は15%(2番目)と発表された。その世代が参政党のいわば岩盤支持層である。

 「ポピュリズムに関するグローバル調査2024」(イプソス)では、「既存の政党や政治家は、自分のような人間を気にかけてない」に同意するという回答は6年間(16年39%が22年62%に)で1・6倍に拡大している。こども家庭庁の「23年こども若者の意識調査」で「自分の人生には方向性や意味があると感じた(1週間のうちで)」の問いに、日本の若者は「週に一度もないが26・4%」と他国(独は5・9%)と比較し非常に高い。これらは、日本の政治・社会の〝閉塞感〟に対する憤りであり、参政党の日本人ファーストのポピュリズム政治に対する共感と支持を生み出す背景である。

◇トランプを真似る

 格差の根本的原因は、資本と賃労働の敵対的な関係に基礎を置く資本主義的生産にある。グローバル化は、貿易や資本投資を通じて各国が経済的な緊密化を深め、一体化を進めることであり、資本が支配する世界においては不可避である。グローバル化が没落や貧富の差を生み出したのではなく、利潤を目的とする資本主義的生産が資本家や富裕層に富を集中させ、持たざる者との間に恐るべき格差を日々再生産しているのである。参政党はグローバリズムを〝多国籍企業が連携し国家以上の力〟をもって日本から富を奪い取ることであり、それを許さないナショナリズムが必要と日本人ファーストを前面に押し出す。

 日本においてこれまで、遠慮がちに叫ばれて来た排外主義的な主張が、堰を切ったようにあふれ出してきた。彼らが開いたパンドラの箱に反応した自民党は〝違法外国人ゼロ〟のために司令塔体制の整備を謳った。公明、国民も外国人に対する管理強化では一致している。

◇ファシストと闘う労働者の隊列を!

 ナショナリズムと排外主義は表裏の関係にある。在留外国人は24年末で376万人、総人口の3%。外国人に向けられる排外主義に断固反対し粉砕しなければなければ、日本人ファーストに反対する人々や組織を〝反日主義〟と抑圧し弾圧する体制に道を拓くことになる。

 参院選は排外主義と国家主義の台頭を露わにした。我々は、参政党など排外主義政党の主張を暴露し、排外主義を生み出す分断と格差の根源である資本の支配を打倒する闘いに、世界の労働者と連帯し、共に立ち上がることを呼び掛ける。 (古)


    

【飛耳長目】

★「50年も真面目に働いてきたのに年金はもらえなかった(男性74)。こうした65歳以上の無年金者は全国で50万人を超える。この男性が30年以上働いた塗装関係の小規模事業所は社会保険の対象外であり、その後未加入に気付いて、転職先で厚生年金保険料を定年まで7年間払ったものの、要件を満たせず、結局年金はゼロ★何億円もの不労所得でリッチな生活をする高齢者がいる一方で、彼のように働けないので社会保障が必要なのに、それすらなく、無理をしてでも働かざるを得ない。2万円の給付金も、消費税減税も砂地の水一滴にすぎぬ。むしろ、それで「所得が増える」かの幻想こそ労働者騙しだ★根本的な解決は、この資本主義の賃金奴隷制の廃止にこそあるが、どの党もそんな事には指一本触れず、何れもこの矛盾だらけの資本主義の枠内で、たわいもない矮小微細な改善策をがなり立てている★資本の支配を脱した社会主義社会では、生産手段の私的所有や賃労働は廃止され、不労所得も一掃される。労働者は労働時間が記載された証書で各自が自由に生活手段を手に入れ、働けない高齢者や病人などには、社会的に生産された生活手段が配布される。社会主義では女性も外国人労働者も障害者も全く同等だ。我々はそういう社会の実現のために奮闘する。 (義)


【2面トップ】

25年版「防衛白書」
軍事力を「平和の砦」と宣伝

それは軍事大国化と帝国主義を誤魔化す方便

 25年版「防衛白書」が去る6月に公表された。自衛隊員が集まらず定員割れしていること、減ったとはいえ自衛官の自殺者が毎年70~80名もいること、「ハラスメント事由処分者数」が350件(23年度)にも達したこと等を改善するという項目もあるが、全体としては、国際環境の激変と日本の軍事力強化の必要性を訴える大々的な宣伝文書となっている。

◇中国の脅威を煽る

 白書の刊行に寄せて中谷・防衛大臣は、ロシアや中国などを念頭に、「わが国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑なものとなっています」と述べ、「主体性・主導性をもって」日本の軍事力の抜本的強化を図ると語っている。

 確かに、ウクライナ侵略を行うロシアや西沙・南沙諸島海域を〝再分割〟し、強大な軍事力で実効支配し、島々や岩礁を埋め立てて〝基地化〟し、海洋権益を囲い込んでいる中国の行動は、決して容認されるものではない。

 だが、日本もまたロシアや中国と同様に、海外に直接投資を増やし、海外の労働者から吸い取った利潤(剰余労働)を本社に還流させる〝資本輸出立国〟であり、海外に構築した資本権益に寄生する帝国主義国家である。日本はロシアや中国のように侵略的でないと言っても片手落ちである。

 なぜなら、日本は中国とアジアで支配的な資本の国家になることを目差して競合し、軍事的にも「同志国」と連携して優位に立とうとしているからである――第一次安倍政権の時に立ち上げた「アジア・ゲートウエイ構想」と習近平の「一帯一路」は規模の面で異なるが、日中のアジアにおける資本投資競争・軍拡競争の幕開けであった。安倍は早くも軍事費のGDP比1%から2%への引上げを主張していた。

 中谷ら防衛省は、白書で、とりわけ中国の脅威を煽り、「日本の防衛力の抜本的強化」を正当化し、敵基地先制攻撃用のスタンド・オフ・ミサイル網や敵基地攻撃用戦闘機の実践配備を急ぐ。中谷らの姿勢もまた、日中の対立を煽り帝国主義戦争を準備するものである。

 日本の軍事力強化について、中核派ら新左翼急進派の一部は、「中国侵略戦争」の準備だと批判する。彼等は中国を未だに「社会主義」(資本主義化が進む社会主義?)であると思い込み、また勘違いし、情勢判断を誤り、中国労働者に対して日本の侵略から防衛するために闘えと暗に呼びかけている。

 中国は海外に膨大な権益を築く帝国主義化した国家資本主義であり、中国の労働者は国家資本主義の〝墓掘り人〟となるために団結し、また習近平の専制的支配と闘わなければならないのに、彼らはこうした現実から労働者の目を逸らしている。

 もし、日中間で戦端が開かれるなら、明らかに帝国主義戦争となる。決して日本の「侵略戦争」ではないのだ。日中の労働者は互いに連帯し、自国の政府と軍部に対して、帝国主義戦争反対の闘いに立ち上がらねばならないのだ。

 活動家の諸君、そうではないのか。

◇軍事力の「抜本的強化」

 軍事力強化について、白書では色々な角度から具体的に説明している。その中でも、白書が最も強調しているのが次の項目である。

 「スタンド・オフ防衛能力」、「総合防空ミサイル防衛能力」さらに、「無人アセット防衛能力」などの「抜本的強化」である――「スタンド・オフ防衛能力」には沖縄諸島に配備される長距離ミサイルのみならず、戦闘機から発射する長距離ミサイルも含まれる。

 これらの攻撃能力を強化するための方便として使われているのが、「反撃能力」、つまり敵基地攻撃能力の「必要性」である。白書は次の様に言う。

 「相手からミサイルによる攻撃がなされた場合、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつも、他に手段がないと認められる場合におけるやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、反撃能力により相手からのさらなる武力攻撃を防ぐこととしています」(40頁)。

 この文書は穏やかに書かれているが、文書の本意は「自衛の措置として」他に手段がないと判断すれば、攻撃は最大の防御という軍事作戦を否定しないというものである。

◇3つの「事態法」

 軍部(自衛隊)による敵基地攻撃を容認するバックボーンにしているのが、「武力攻撃事態・武力攻撃予測事態」および「存立危機事態」である。この説明が白書にあるので、それも引用しよう。まず、「武力攻撃事態・武力攻撃予測事態」について。

 「武力攻撃事態とは、わが国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態またはわが国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるにいたった事態。武力攻撃予測事態とは、武力攻撃に事態に至っていないが、事態が緊迫し、わが国に対する外部からの武力攻撃が予測されるに至った事態」(235頁)。

 これは政府と軍部によって、武力攻撃が予測されると判断されるなら、この「事態法」は内閣の閣議決定と国会承認によって行使され、先制攻撃という軍事作戦もお墨付きとなる。と同時に、労働者の帝国主義戦争反対運動を押さえつける根拠にもなる。

 次いで、「存立危機事態」については次の様に説明する。

 「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危機がある事態」。

 これは明らかに台湾有事を想定した事態法である。政府は、「安保3文書」で明らかにしているように、台湾を米国と同じ友好国に格上げし、中国と対峙している。日本の資本と政府は台湾が中国の支配下に入るなら、経済的にも地政学的にも大きな損失を被ると考え、台湾有事に備える必要性を強く考えるのである。

 以上、白書の特徴をかいつまんで紹介したが、白書は日本の帝国主義化を色濃く反映し、それゆえに中国と対峙する必要を訴えている。白書の狙いもここにある。

 日本の労働者が中国の労働者と連帯するためには、中国もまた帝国主義化した資本主義であることを把握することが不可欠だ。従って、新左翼急進派のように闘ってはならないのである。 (W)


【2面サブ】

自民の「働きたい改革」糾弾!

時間外労働の上限規制見直し

 参院選は自公政権の惨敗に終わったが、自公は今回の参院選公約で、労働時間の規制を緩める公約を掲げた。躍進したと言われる参政党も同じ様な主張で、自公とともに労働者に敵対する、労働者の搾取を強める策動だ。

◇骨抜きにされた「働き方改革」

 2016年7月参院選で安倍政権が、アベノミクスの破綻をアベノミクスを「加速させる」と主張するデマゴギーで乗り切り、その後、「成長政策」、「一億総活躍社会」、「働き方改革」といった看板を持ち出し、労働者・働く者の歓心を買い、その批判意識や闘いの牙を抜くためのエセ改革を進めた。

 安倍は18年1月の施政方針演説で、「『同一労働同一賃金』。いよいよ実現の時が来ました。雇用形態による不合理な待遇差を禁止し、『非正規』という言葉を、この国から一掃していきます」、「わが国に染みついた長時間労働の慣行を打ち破ります」などと調子よく叫び「働き方改革」を再び謳った。

 18年7月に、長時間労働の規制法案や高度プロフェッショナル制度の創設などを一括法とし「働き方改革関連法」は成立、19年4月から順次施行された。

 しかし、安倍政権のもとで非正規は増え続け、長時間労働の規制は、「罰則付きの時間外労働の限度」の上限が月100時間と決められたことに見られるように、長時間労働を温存するものであった。

 ブルジョアたちは「残業の縮小は労働生産性を高めてこそ」と言うが、機械化を進める等の「生産性の向上」ではなく、単に「労働強化」を押し付け、「そうすれば残業も自ずからなくなる」という資本の強搾取のやり方だ(『海つばめ』1319号等参照)。

◇労働者の搾取強化に進む「働きたい改革」

 資本はこれに留まらず、「働き方改革」の「同一労働同一賃金」を悪用して、「同一職種労働同一賃金」を進めている。これは非正規と正規労働間の差別をそのままにし、職種や部門間の賃金差別合法化の職能給を導入する「ジョブ型」雇用の推進だ。リストラ・企業再編により、ある職種や部門がなくなった場合の解雇が合法化される。「成長分野への労働移動の円滑化へとシフトしていく」と、都合よく労働者を雇用する労働力の流動化策である(『海つばめ』1395号等参照)。

 さらに資本は、近年の日本に現れ始めた人口減少化に国力衰退の危機感を持ち、「少子化対策」を行なっている。

 そして労働現場では、人手不足が深刻で、自民党は「労働市場改革に関する提言」(25年5月)を行った。人手不足は人口減少・「少子化」の一環で、非正規労働による若年労働者の貧困化と長時間労働による資本主義的強搾取の現実の反映である。提言はそれを放置し、労働時間規制の緩和などを提起するのだ。

 今回の参院選で自民は「働きたい改革」を公約に掲げたが、それも「人手不足を念頭に労働時間の規制を緩め」(朝日7月17日)るもので、労働強化となるものである。

 公明も「本人の希望に応じて、働きたい時にもう少し働ける社会へ」とし、野党では参政党が「時間外労働の上限規制の見直し(職種や条件による緩和措置)」など、維新は「職務・職責による給与制度への転換」、「解雇紛争の金銭解決を可能にする」など、こぞって反労働者的政策を掲げた。

 現在の労働時間の規制などは、労働者を強搾取しようとする資本にとっては、足枷となる。国民や立憲、共産、れいわ、社民などはこれらの自公政権の目論見に対して、インターバル規制の義務化(立憲、国民)、裁量労働制の見直し(国民、共産)、労働法制改悪反対(社民)などを掲げているが、おざなりだ。

 労働者は、資本に迎合する政党の反動的な政策に対して、立憲のように国会での追及だけでなく、労働者の階級的反撃を組織し、団結した力で労働者の利益を断固守り、労働時間の規制を勝ち取らなくてはならない。

◇労働者の闘いを進め賃金制度廃止へ!

 マルクスが「資本家が労働日をできるだけ延長し……購買者としての自分の権利を主張するのである。他方において……労働者が自分の労働日を一定の標準的大いさに制限しようとする場合には、彼は販売者としての自分の権利を主張するのである。つまりこの場合には、ともに等しく商品交換の法則によって確認された権利対権利という、二律背反が生じる。……かくして、資本制的生産の歴史においては、労働日の標準化は、労働日の諸限度をめぐる闘争――総資本家すなわち資本家階級と総労働者すなわち労働者階級との間の一の闘争――として現れる」(『資本論』第一部第八章第一節)と言うように、まさに労働者は資本家と闘って、労働時間と賃金など労働条件の改善が勝ち取られるのだ。

 労働者はそれにとどまらずその闘いを、資本主義社会を止揚して賃金制度を廃止する闘いに発展させ、労働を解放する労働者が主体となる新しい時代を切り開いていかなければならない。 (佐)


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