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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1471号 2024年3月24日
【一面トップ】 闘い無き「満額回答」の後に来るもの
        ――資本の搾取強化に反撃しよう!
【一面サブ】  自民党の腐敗隠蔽を策する党則改正
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 バイデンもトランプと同じ自国本位
        ――バイデンの一般教書演説
【二面サブ】  中国若年層の高い失業率
        ――全人代では深刻さ認めず
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

闘い無き「満額回答」
の後に来るもの

資本の搾取強化に反撃しよう!

 15日連合は、春闘初回集中回答が平均5・25%になったことを明らかにした。33年ぶりの5%を超えたと発表したが、初回回答は「満額回答」「最高水準回答」が紙面に踊った大企業が中心であり、中小労組への回答はまだ先になるし、組合に組織されていない83・7%の労働者の賃上げは社長の〝腹積もり〟次第である。

◇満額回答を貫く資本の狙い

 自動車、電機、重工業、商業など多くの労組が、満額回答を受けて闘うことなく春闘の幕を引いた。資本が満額回答したのは、賃上げと物価の好循環などという政府、経団連の〝お題目〟に付き合ってではない。日本の企業が国内外で資本主義的競争に生き残っていくために、人材を確保し繋ぎ止め、労働者に資本と一体となって苛烈な競争を戦いぬく〝覚悟〟を求めた満額回答である。

 満足に闘う事もなく満額回答したという事は、要求が〝雇い主〟の顔色をうかがう臆病で恐ろしく控えめな要求でしかなかった事を明らかにした。

 しかし資本の狙いは、横並び回答を拒否した日本製鉄が明らかにしている。日本製鉄は労組の要求額3万を大幅に上回る3万5千円の回答を行い、「将来のさらなる生産性向上や課題対応のため人に投資した。従業員にもそれに応える覚悟を求めていきたい」(13日人事労政部長)と、74年の2万3千円を上回る最高額を回答したのである。資本の狙いは明確である。カネは出す、そのかわり会社のために、利益を増やすため〝覚悟〟を持って働けということである。

 日鉄が進めるUSスチール買収では「USスチールのみならず、労働組合、米国鉄鋼業界、さらには米国の安全保障に明確な利益をもたらす」(3・15日経)と強調したように、日鉄は世界的規模で再編を行い競争に勝ち抜こうとしている。3万5千円の回答は、日鉄資本の競争を闘う決意の表れでもある。

◇資本のプロパガンダと共闘した連合の〝労資春闘〟

 「新たな経済社会へのステージ転換の第一歩になった。この結果が今後、消費につながることを期待したい」(連合芳野会長)。資本に追随する芳野は、〝労資共闘〟で満額回答を受け取ったことにさぞかし満足しただろう。組合員は闘う方法も団結も理論も学ぶ事なく〝武装解除〟されたまま春闘が終わった。

 電機大手の労組幹部は「『失われた30年』から抜け出すラストチャンス。高い要求で交渉に臨み、高水準の回答を勝ち取れるのは今しかない」。思惑通り満額回答を資本から受け取り連合幹部は、組合員に誇らしげに報告していることだろう。

 資本家が考えていたことは、「春闘には『闘』の文字が入っているが、闘う相手はデフレであり、価格転嫁が進まない社会の風習を改める闘いだ」(経団連十倉会長)。政府・資本家の目的は、春闘を利用した価格転嫁(物価上昇)の受け入れを〝醸成〟するための〝プロパガンダ〟であった。

 名目賃金が上がっても物価が上昇すれば、何も変わらない。昨年の賃上げ分(3・58%)を上回る物価上昇によって、12月に連続21ヵ月実質賃金はマイナスになった。去年を上回る賃上げになったとしても消費者物価上昇が続くと、実質賃金がプラスになるのは25年後半という予測も出ている(野村総合研究所)。賃上げと物価の好循環などどこにも存在しない。

◇賃金を無尽蔵に上げられない、生産性向上が必要

 「(賃金だけを)無尽蔵に上げるわけにはいかず、生産性を上げていかなければならないが、デフレの際はそれができなかった。(現状は)転換点に来ている」(3・12経済同友会新浪)。「持続的に実質賃金上昇率を高めるためには、一時的に企業の賃上げを促すのではなく、労働生産性の向上が必要となる」、「労働者は、リスキリング(学び直し)などを通じて技能を磨き、労働生産性向上に努めることが重要である」(野村総合研究所)

 資本の狙いを端的に表現するのは、「労働生産性向上」である。それは休憩時間を使って行われる様なQC運動や提案運動といったレベルとは違う産業構造の再編に結果するものとなるだろう。個別企業のレベルでも、労働生産性向の取り組みは行われているが今後、製造部門、管理、事務、営業、保守等々あらゆる分野を網羅し、より速度アップして進められるだろう。

◇満額回答で応えた資本の要求は搾取の強化

 「日本生産性本部」によれば、日本の労働生産性(付加価値÷投入した労働量、付加価値は人件費 + 金融費用 + 賃借料 + 租税公課 + 経常利益 + 減価償却費)は、22年にOECD加盟国(38ヵ国)で、労働者1時間当たり30位。製造業は34ヵ国で18位(2000年には1位)と低迷し、生産性向上が喫緊の課題と取り組まれて来たが成果を出すことなく推移してきた。

 労働生産性向上は労働者1時間当たりの、生産量・付加価値をどれだけ効率的に生み出すかを追求する。それは「投入労働量」を削減(人員削減)し、労働強度を高め、リスキリングを労働者に強要する。日鉄は最長3年間のリスキリング休職(無給)、トヨタ自動車は25年までに約9000人、デンソーは部品技術者1000人を25年までに転身、ホンダ、日産等々でも選別・再教育が生き残りをかけ全社的に開始されている(ドイツのボッシュは世界40万人を対象)。経産省が推進する〝競争の優位性確保〟を目的とするDX(デジタル・トランスフォーメーション)は、省力化、リストラを前提にしている。労働生産性を高め搾取を強化し利潤を増大させることが、「満額回答」で応えた資本からの「要求」である。

 労働者は闘わなければ一層苛酷な搾取労働に縛り付けられる、それを打ち破るのは労働者の団結した闘いである。資本の支配を打倒し労働の解放を勝ち取ろう!労働者党と共に闘おう! (古)


【1面サブ】

自民党の腐敗隠蔽を策する
党則改正

 自民党は17日党大会を開き、党務報告、党運動方針、党則改正などを決めた。裏金事件に対して湧き上がる、自民党に対する労働者大衆の大きな怒りをそらせ、政権支配を維持しようとするのである。その一つの党則改正にも、彼らの腐敗した隠蔽策動が現れている。

◇金権腐敗を隠蔽する大会

 岸田は大会挨拶の冒頭で「現在、一部の派閥の政治資金に関わる問題によって、国民から多くの疑念を招き、深刻な政治不信を引き起こす結果となっております。党総裁として国民の皆様に心からお詫び申し上げます」と述べた。そして、「自民党としてすぐに取り掛かれるものは、速やかに実行する」とし、12日の党総務会で党規律規約改正とガバナンスコード改訂を了承し、当大会で党則改正が了承されたと報告した。

 しかしまず労働者の前に明らかになければならないのは、なぜ自民党の安倍派などが裏金を作ったのか、その使途は何か、裏金の額は幾らなどかなどの裏金事件の真相である。しかしそれは、自民党の金権腐敗にまみれた犯罪を自ら明らかにすることに等しく、岸田・自民党は決してそれを明らかにすることはできない。 彼らは隠蔽するしかないのだ。岸田は「一部の派閥の政治資金」と人ごとのように言うが、岸田も裏金問題の渦中の一人だ。彼らが隠し立てする醜い姿は、この間の政治倫理審査会でも、大衆の前にはっきりと現れ、労働者の怒りをかき立てている。「すぐに取り掛かれるものは、速やかに実行する」と岸田が自慢する党則改正などは、彼らの真実を語ることができない姿を覆い隠すものだ。

◇誤魔化しの党則改正

党則の一部改正では、「政策集団を含めて、党政治倫理審査会の勧告があった場合に、幹事長が説明責任を求める規定を新設」したと説明している。

 今回の「ガバナンスコード改訂」の中で、「旧来の派閥」を「資金力と人事への影響力を背景に議員を集め、数の力によって影響力を増そうとする組織」とし、その存続や新設を禁じ、「派閥」に代わる「政策集団」は、「党を補完し人材育成や若手議員の教育機能を担う自主的組織」と記している。

 金権腐敗と密接に結びついた裏金事件の前に、岸田は「派閥解消」を打ち出さざるを得なかった。自民党はすでに1988年のリクルート事件を受けて翌年「政治改革大綱」を策定し、「派閥解消」を謳ったが、それは、政治とカネが結びついた政治腐敗の問題を、派閥や選挙制度の問題に矮小化したものだった。

 今回の党則改正で加えられた「説明責任の明確化」なども、岸田の何時もの言い逃れと同様と見なされ、誰からも信用されないであろう。

 党則改正のもう一つの柱が、「党規律規約」の一部改正で、政治資金規正法違反事件が起きた際に、議員本人に対する処分を明文化したことだ。一つは、政治団体の会計責任者が逮捕・起訴された場合は、議員本人を離党勧告や党員資格停止などの処分にできること、もう一つは、会計責任者の有罪が確定すれば議員本人を最も重い離党の勧告又は除名の処分とするとしたことだ。

 前者については「できる」とするだけである。後者については「当該議員につき当該判決に係る事犯に関与する等政治不信を招く政治的道義的責任があると認められるとき」と但し書きがある。ともに逃げ道が用意されている。党則改正は、自民党の金権腐敗政治を覆い隠すものだ。政治改革を掲げ小選挙区制、政党助成金を導入した1994年の政治改革四法のなれの果てが、この裏金事件である。

 腐敗した岸田政権は打倒しなければならない。労働者を搾取する資本の支配を支える自民党に、労働者から搾り取った税金がつぎ込まれる政党助成金は、直ちに廃止しなければならない。労働者は、労働者政党を排除する供託金制度の廃止、労働者の代表が選出される全国単一の比例選挙制を要求する。(佐)


   

【飛耳長目】

★「春闘」による賃上げが各紙を賑わしている。しかし、その源泉は資本による労働者からの強搾取、膨大な剰余価値のほんの〝お裾分け〟に過ぎない。それは労働者の首尾一貫した闘いによって得たものではなく、資本に跪いてのものだ。よって翌年に資本が賃上げゼロと言えば、またそれに従うのだ★それは労働者たちが資本に屈服し、日本の労働者の闘いがいかに衰退しているかを現す。数千万の生活苦に喘ぐ非正規労働者や外国人労働者・女性労働者への差別や年金生活者は置き去りにされる★よって若きインテリたちは、〝労働の解放〟へではなく、地球規模の環境破壊からの「人類の救出」やら「物質代謝の亀裂」などへ関心を寄せる。その典型が斎藤幸平である★マルクスの『資本論』を恣意的に解釈し、お気に入りの章句のみを切り取り、馴染まない章句は切り捨て、マルクスに自己の姿を投影し、自己の似姿を〝発見した〟と言うのである★晩年のマルクスは、自然科学と共同体の研究に心血を注ぎ、『資本論』の「生産力至上主義」を捨てて、「脱コミュニズム」、「エコ社会主義」者となった、資本主義の克服は「使用価値経済への転換、労働時間の短縮、画一分業の廃止、生産過程の民主化」(「コモンと潤沢さ」)で実現すると言うのである。これもまた資本への屈服でなくてなんであろうか。(義)


【2面トップ】

バイデンもトランプと同じ
自国本位

バイデンの一般教書演説

 米バイデン大統領は3月7日、連邦議会の上下合同会議で内政・外交方針を示す一般教書演説を行った。それは、11月の大統領選挙で対決がほぼ確実となったトランプへの批判をするが、自国本位では同じ立場である。

◇欺瞞的な「民主主義擁護」

 演説の冒頭、バイデンは、ナチス・ヒトラーが台頭し欧州で戦争が荒れ狂っていた時のルーズベルトの「米国は前例のない危機、自由と民主主義が攻撃を受けている」との演説になぞらえて、「いま米国の歴史で前例のない時に直面しているのは私たちだ」と訴えた。

 その念頭にあるのはロシアのウクライナへの軍事侵攻とそれに対する共和党=トランプの態度である。

 バイデンはロシアについて、「プーチンが台頭し、ウクライナを侵略し、欧州全土とそれ以上に混乱を広げている」と批判、「我々がウクライナを支持し、自衛のために必要な武器を提供すれば、ウクライナはプーチンを止めることができる」と強調した。

 その一方で、ウクライナへの武器支援の追加予算に反対し、「プーチンに『なんでも好きなようにしたらいい』と言った」トランプは危険であり、「米国が世界でのリーダーシップを投げ出すことを望む者」と激しく非難した。

 バイデンはプーチンによるウクライナ侵攻を「自由と民主主義」に対する攻撃と非難し、それに反対することが国際社会における米国の任務と訴えている。

 しかし、他方では中東のガザについては、「イスラエルはハマスに対して行動をとる権利がある。ハマスが人質を解放し武器を捨て、イスラエル奇襲の責任者を降伏させれば、紛争を今日終わらせることができる」とし、イスラエルによるパレスチナ人に対するジェノサイド攻撃について、イスラエルには攻撃の権利があると述べ、「自衛権」のための闘いとして正当化してきた。

 イスラエルのジェノサイド作戦によって、既に3万人以上もの死者(その7割は女性と子どもとされている)を出しているが、これらはバイデンの眼中にないようだ。バイデン政権は国連では幾回も停戦決議が出されるたびに反対を繰り返し、葬り去ってきたのだ。

 バイデン政権(共和党も同じ)がイスラエルを支持してきたのは国内のユダヤ人勢力に配慮してきたためであり、またイスラエルは中東における米国の覇権を支える国家だからである。米国はイスラエルに対して毎年38億ドル(約5700億円)もの軍事援助を行い、ハマスとの闘いにも143億ドル(2・1兆円)の支援を行っている。

 最近でこそバイデンはイスラエルに対して停戦を口にするようになったが、それは国内外のイスラエルのパレスチナ人に対するジェノサイド攻撃に非難が高まったからである。国内では若者やアラブ、イスラム系国民のイスラエル及びこれを擁護してきたバイデン政権に反発する声が広がり、大統領選にマイナスになるとして停戦を言い出したのであって、イスラエルのガザ侵攻を「自衛権」ための闘いとする立場を反省したわけではない。

 バイデンは中国に対してもウイグル弾圧、人民抑圧などを指摘し、「自由と民主主義」を否定する独裁国家と非難し、国際社会が「自由と民主主義」のために団結するよう訴えてきた。その一方では、イスラエルのほかにも王族が独裁権力を持つイスラム国家サウジアラビアなどと同盟関係を結んでいる。このダブルスタンダード、偽善こそバイデンにとっての「自由と民主主義」の本質であり、米国にとって利益か否かが基準となっているのである。

◇米国第一主義はトランプと一緒

 11月の大統領選でトランプとバイデンの対決になるのは、4年前の構図と同じ。トランプは先の大統領選では不正選挙で民主党が勝利を「簒奪した」とデマを飛ばし、トランプ派の群衆は議事堂に乱入、占拠するなどを行ったが、現在なおこのデマはトランプ支持者に浸透している。

 トランプ支持派の中核となっているのは、「非大卒の白人・男性」である。彼らは、ウクライナへの援助は国民のために使われる税金の浪費だと批判したり、移民の増加などで職を失うなど優越的な地位が揺らいでいると危機意識を募らせている。これに加えて、政治・経済を支配し、高額の報酬を得ているエリート層に反発する低所得者層である。

 彼らは「米国を再び偉大に」、「米国第一主義」のスローガンの下、保護主義的な貿易政策、移民排撃、外交は「ディール」と言って高飛車な外交を訴えるトランプに引き付けられている。

 これに対してバイデンは、富裕層には25%の最低所得税を設ける、トランプが35%から21%に引き下げた連邦法人税を28%まで戻すなど富裕層、企業への課税を強化する一方、物価高に苦しむ世帯の住宅費や学生ローンの軽減、子育て支援など国民生活の負担軽減を打ち出し(予算教書)、低所得者層の味方だと訴えている。しかし、富裕者、企業への課税強化は前回の大統領選での公約がこれまで果たされずになっていることの繰り返しでしかない。

 またバイデンは「(米国製品の使用を優遇する)バイ・アメリカ」政策は1930年代以来の法律で、トランプ政権の政策は失敗したと批判しつつも、国外に工場を移転させず自国で生産する企業を支援したり、半導体など先端技術の中国への輸出を禁止する一方、自国生産に巨額の支援を行うなどトランプの保護主義を引き継いできた。

 さらに移民に関しても、「米国は移民犯罪に蹂躙されつつある」と移民を犯罪者扱いし、排外主義、差別主義を煽るトランプにたいして、バイデンは中間選挙を意識してアリゾナ州ユマに「壁」を建設したり、「入国管理や国境警備の人員拡充が不法移民の流入を防ぐことになる」と応じるなど両者に大きな違いはない。

 結局バイデンも自国優先のトランプと同じ立場に立っているのである。旧ソ連邦解体後、米国は経済的にも、軍事的にも圧倒的な力を背景に世界に君臨してきた。しかし、オバマが「米国は世界の警察官ではない」と述べたように中国、インドなどの台頭によって経済的にも軍事的にも相対的地位を低下させている。自国第一主義が広まってきたのは「超大国」米国の後退の反映である。

◇深まる社会の矛盾

 大統領選に向けた最近3月の全米有権者調査(ロイター)では、バイデン37%に対しトランプは40%とわずかながらトランプが優勢とされている。

 国家主義、人種差別主義、排外主義を掲げるトランプのような反動家が共和党の大統領候補者として再び登場してくることは、米国の社会の矛盾の深まりを象徴している。米国では上位10%の世帯が国の富の72%を保有し、下位50%の世帯は国全体の富の2%しか保有していない(2022年、連邦議会局レポート)。この格差こそ機会主義者トランプが再び政治の前面に踊りで出てきた主な背景である。

 しかし、トランプの優勢は盤石なものではない。若い世代(10代から20代前半)を中心にトランプに対して、「人工中絶禁止」への反発が高い。トランプは最高裁判事に3名の保守主義者を指名し、リベラル派と保守派の比率は3対6に逆転、22年には1973年以来最高裁が人工中絶を行う憲法上の権利を認めた判決を覆した。「人工中絶禁止」が目的としたのは中絶禁止よりも、女性は家庭にという古い家族観であり、若い世代の反発は広がっている。

 一方、イスラエルのパレスチナ人虐殺を認めるバイデン政権への若者たちの反発も強まっている。

 これら若者の未来を切り開く道は、労働者に基礎を置く資本の支配に反対する運動の発展にかかっている。(T)


【2面サブ】

中国若年層の高い失業率

全人代では深刻さ認めず

 中国の全人代(日本の国会に相当、閉会中は全人代常務委が立法権を代行)が今月5日に開かれ11日閉会した。政府活動報告で、15%近い若者が失業していると報告されたが「都市部で1200万人の雇用を増やし、失業率を5・5%前後にする」とか、若者への就業や起業指導のサービスを充実させると、実効性の乏しい施策を示した。中国経済の行き詰まりによる若年層の失業問題も国家資本主義である中国における矛盾の現れである。

◇高学歴でも就職困難

 中国国家統計局の発表では、若年失業率は2023年6月に21・3%と過去最高の水準に達していた。国家統計局は23年8月に、測定方法を見直す必要があるとして、いったん若年失業率の公表を停止し、今回の15%という数字は、大学生を除き、以前の統計の条件を変えており、実際の雇用環境はさらに悪化している。研究者によっては40%を超えているとも言われる。

 一方で、大卒者の数も年々増加しており、23年の大卒者は約1158万人に達する見込みで、若年層の失業率上昇に拍車をかけている。大学や高等教育機関から卒業する学生の数が増え、数百万人規模で続く農村からの人口移動もあり、就職のための競争は激化、教育は受験地獄で歪んでいる。 習政権の「人材強国」のスローガンの下で、大学の新設や定員増加を進めた結果、大卒者が増加。22年の大卒者は1076万人と10年前の1・5倍、大学院の在籍者数は124万人おり、大学進学率は8割になっており、学卒者の失業が深刻化しているのである。

 こうした状況の中で、中国の若者たちの間で、過酷な競争社会を生き抜くことを諦め、最低限の生活を送る「寝そべり主義」が流行しているという。格差が拡大し、厳しい受験戦争に打ち勝ったとしても、就職や都会での生活に苦戦し、将来に対して希望が持てない人が少なくないのだ。無事に大学に入って就職しても、朝9時~夜9時まで週6日間働く「996」と言われる過酷な勤務や午前0時~深夜0時まで週7日働く「007」もある。

 それでも、都会では家を持つことは難しい。かくして夢と気力を失い、労働を忌避する「寝そべり族」が生まれる。「寝そべり族」は、「家を買わない」「結婚しない」「子どもを作らない」「車を買わない」「消費しない」「頑張らない」の6つをモットーとしており、一種のニヒリズムであり、中国の体制への消極的な抵抗でしかなく、懸命に闘う労働者の立場ではない。

 23年5月に発表された、中国の人材募集会社大手の智聯招聘が行った「大学生就業力調研報告」で、卒業後の進路が、会社員や公務員になる「単位就業」の割合が57・6%で、以下、「具体的な計画がない」(18・9%)、「フリーランス」(13・2%)、「国内での就学延長」(4・9%)などとなっている。「国内での就学延長」は大学院への進学で、就職できなかったために、そうした決断をする学生が多いという。「フリーランス」は、宅配ドライバーなどのギグワーカーが多い。「単位就業」、「起業」、「海外留学」以外は、就職先が決まらず、不本意ながらそうせざるを得なかったという側面があるため、4割超の大学生が「卒業=失業」という状況にあると言えるだろう(日経ヴェリタス24年2月4日号)。中国は高学歴を活かせない矛盾に陥っている。

◇人手不足でも高い失業率

 就職先として、23年は3・7万人の国家公務員の募集に対し、約150万人が受験。「大学生就業力調研報告」をみても、国有企業や公務員などの公的部門への就職を希望する学生が71・5%と、民営企業や外資企業などの民間部門を希望する学生の27・2%を大幅に上回る。大学生が希望する職種と労働市場で求人の多い職種が一致しないことも、若年失業率が上昇する要因。格差拡大の中で、給与水準の高い一部の業界に集中しているためという、「労働市場内のミスマッチ」が喧伝されている。中国の求人倍率は1・5倍前後で推移しているが、製造業を中心に過酷な労働環境で人手不足は常態化している。

 「大学生就業力調研報告」によれば、大学生の25・0%がIT・インターネットなどのサービス業での就業を希望しているのに対し、製造業を希望するのは8・5%。中国では、製造業や建設業などの現場で作業に従事する労働者(ブルーカラー)は4億人と、就業人口の5割を占めるものの、その5割が40歳を超えている。このペースで高齢化が進めば、中国を「世界の工場」に押し上げた製造業の地盤沈下は避けられないと見られている。

 全人代で、去年と同じ「5%前後」の高い経済成長率を目標と掲げたものの、不動産不況の解決もおぼつかないばかりでなく、若者の失業問題は、労働者にとって中国社会は変革すべき社会であることをますます切実なものとするであろうし、「反スパイ法」などの弾圧があろうと、労働者の階級的な闘いと団結の広がりは必然である。(岩)

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