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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1513号 2025年12月28日
【一面トップ】利上げでも円安進行
        ――当分物価高騰は静まらず
【一面サブ】 自・国、年収の壁178万円で合意
        ――自民、国民民主との連立策す
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 ポピュリズム・柄谷理論批判を特集
        ――『プロメテウス』64号発行
【二面サブ】  不都合な高市発言
        ――「呉越同舟」の米中
       ※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

利上げでも円安進行

当分物価高騰は静まらず

 今月18、19日に日銀は金融政策決定会合を開き、政策金利を0・5%から0・75%に引き上げた。高市は総裁選で「今、利上げするのはアホだ」と日銀を激しく牽制したが、円安と物価高騰を座視できずに利上げを容認した。だが、日銀の利上げでも円安は沈静化していない。

◇物価高騰が労働者を苦しめる

 実際、3年にもわたって物価高騰が進み、しかも一向に治まる気配がない。

 東京都の「10大費目指数速報値(11月分)」(数値は対前年比)を見ても、穀類15・2%、菓子類9・1%、調理食品4・9%、乳卵類7・4%等々と、食料品の値上がり幅は異常である。加えて、電気代4・5%、通信費6・6%と大幅に上がり、労働者、とりわけ非正規労働者の生活困窮度は半端ではない。

 現在の物価高騰の主要因は、生産性が上がらず国内製造品の価格が高止まりしている点を除けば、円安進行によってである。この円安で輸入品価格が軒並み上昇している。

 現在、輸入に頼るのは、原油や天然ガスや鉄鉱石などの原料のみならず、化学や繊維や農産物の材料、完成品の組み立てに必要な中間製品や部品(半導体や電子部品など)、また、子供用品、衣料品、電気製品等々、多方面にわたっている。

 それゆえ、円安が進めば国内のあらゆる製品価格は容易に上がり、生活必需品全てに波及していかざるを得ない。

◇金利引き上げでも円高にならず

 日銀の金利引き上げ前に、労働者党HPの《巻頭言》で提示したように、今回の利上げで円安が円高に進むことはなく、輸入品価格は下がらず、物価が下落しそうにない。というのは、日銀の政策金利(短期金利)の引き上げは、わずか0・25%に過ぎず、また、米国の利下げも僅かであり、内外金利差は依然として大きく、円高に進みにくい。

 さらに注意すべきは、政策金利が0・75%に上昇しても、物価上昇率を加味した国債の実質金利は、10年物国債でもまだマイナス利率だということだ。従って、市場利回りの上昇は避けられない。

 内外金利差も実質で見れば、まだ大きな開きがあり、金利差狙いで海外債権を買う動きはこれからも続くだろう。

 こうした現実を前提にして、資本(資本家や投機筋)による利潤追求が行われるからこそ、日銀と高市が政策金利を引き上げた後でも国債の市場利回りは上昇し(10年物国債は26年ぶりに2%を超えた)、為替も円高に動かなかったのである。

◇労働者は資本主義に翻弄される

 為替相場は内外の通貨が外国為替市場で交換される割合によって決まり、海外に進出した資本が得る利潤、貿易収支、サービス収支などの動向によって、また投機や譲渡などの両替によっても変動する。

 バブル崩壊以降、国内の過剰生産を見越した資本は、生き残りをかけて海外進出を強め、日本は海外の労働者からも利潤(剰余価値)を搾取する「資本輸出大国」になった。その結果、日本への利潤の還流は急増したが、近年は、現地で再投資する動きが強まり、還流が大幅に減った。そのため、円高になりにくい。他方、貿易収支は赤字続きであり、外貨から円への交換が極端に減っている。

 現在の円が安い相場になっているのは、こうした理由による。

 以上のように、貨幣の国境を越える移動は為替相場を形成するが、円安とか円高という相場の変動によって、労働者が支出した労働が、低くも高くも評価されるという不合理が常に発生する。

 もともと、為替は、歴史的には商品交換の広がりと共に生まれ、遠方の地域間で取引を可能にする支払い手段になった。

 資本主義になって以降、外国為替も世界中に広がり、固定相場制から変動制に移行した現在では、円安と共に輸入品価格が高騰し、その度に、労働者は翻弄され多大な犠牲を被るようになった。

 共同体社会なら、労働生産物は商品や資本という形態をとらず、もちろん、通貨も為替市場も必要ない。共同体では、共同体の成員が共同して、自分たちの必要とする生活手段やインフラを計画し、必要な労働時間を計算して生産手段を製造し、かつ共同して運営し、完成した生活手段は、支出した人々の労働時間によって分配される。

 だが、利潤を推進動機とする資本主義の下では、労働者は生産手段と生産から切り離され、労働力を売って生きるという資本に従属した関係が築かれる。これに加えて、資本の無政府的生産によって不況に見舞われ、また、需要供給や金利や為替の動きでも物価変動が発生し、そのたびに、労働者は翻弄される。

◇「利上げ」は政府と日銀を痛打!

 翻弄される労働者を尻目に、資本の頭目である高市政権は現在の物価高騰の原因を究明せず、断固とした対策をとらず、ただ、中間層向けの2年限定・所得税減税やお米券配布などの「対症療法」で誤魔化し、政権の〝人気取り〟に励むのだ!

 しかも、先日成立した補正予算18・3兆円のうち、11兆円超が国債だ。借金をしてまでカネをバラ撒いても有効性は乏しく、積もりに積もった借金のツケは、将来の労働者の肩にのしかかってくる。どのようにしてか?

 国債発行の増大や日銀の利上げは、政府の歳出予算である「国債費」(満期になった国債元金返却と利子支払い)が増える。毎年、こんなことを繰り返すなら、予算計上は困難になり、各種の増税や社会保障の削減、医療費の窓口負担増大となって跳ね返る。

 そして、さらなる危機は、政府の財政膨張によって円がバラ撒かれ、〝円価値〟が低下し、暴落が起こることである。そうなれば、第一次世界大戦後、金兌換制から離脱したドイツ政府が「国家紙幣」をバラ撒き、超インフレを招いたと同様な事件の再現になる。超インフレは激しい物価高騰を招き労働者・働く者の生活を破綻させる。

 加えて、日銀保有の国債評価損(時価)がこの9月現在で32・8兆円へと急速に膨らみ、今度の利上げでさらに拡大する。これは日銀財務悪化の原因にもなり、円通貨の信用を失わせ、円暴落への一里塚になり得る。  こうして高市政権らによる財政バラ撒きのツケは労働者・働く者に転嫁される!高市政権は打倒されるべきである! (W)


【1面サブ】

自・国、年収の壁178万円で
合意

自民、国民民主との連立策す

 高市首相と国民民主の玉木代表は18日、会談で「年収の壁」について、現在の160万円(2月、自民、公明で合意)から178万円とすることで合意した。難航していた「年収の壁」が国民民主の要求通りに決着したのは、国民民主や労働組合連合を政権に取り込み、政治の〝安定〟を図ろうとする自民の意図が透けて見える。

◇自民、国民民主の要求を丸呑み

 「年収の壁」とは、個人に所得税がかかり始める水準のことで、すべての納税者を対象とする「基礎控除」と、給与所得者を対象とする「給与所得控除」の2つがある。自営業の人は「基礎控除」のみで、労働者は「基礎控除」と服装など必要経費を合算した「給与控除」の最低限を合計した金額となる。現在は物価上昇を勘案して特別に年収850万円を上限に4段階で上乗せされており、最大160万円である。

 今度の「合意」によると、現行で基礎控除(58万円)と給与所得控除(65万円)を消費者物価指数に連動する形で各々4万円引き上げ、基礎控除を62万円、給与控除を69万円とする。さらに給与所得控除については、「178万円実現」に向けた特例措置として5万円が上乗せされ74万円とする。併せて27年までの時限措置として年収665万円までの人を対象に基礎控除の上乗せ分42万円を足す、という内容になっている。これによって、大和総研・是枝俊吾研究員による試算では、26年の減税額は25年比で200万円台で1万円、同300万円台で0・8万円、同500万円台で2・8万円、同600万円台で3・7万円、800万円~一千万円の人は0・8万円となる。これらの減税による税収減は年間6500億円になる。

◇減税の見返りは来年度予算の成立

 国民民主の玉木代表は、「合意」について、「国民の皆さんから託されたミッション・コンプリート(使命完了)ということで一つの区切りを迎えることができた」と自賛、〝成果〟を誇った。だが、その見返りは「合意書」にも記されているように「26年度予算の年度内早期成立」である。まだ、どんな内容になるかも決まってもいない予算案に対して、僅かな減税と引き換えに──しかも6500億円の財源については明記もされていない──承認の確約をするとは無責任も甚だしい。労働者、働く者のことなど真剣に考えていない国民民主の政治のいい加減さを暴露している。

 国民民主の提案の〝丸呑み〟と言っても、自民幹部の「玉木氏が当初予算にまでコミットしたのは大きい。国会対策で楽になる」との発言にもみられるように、利を得たのは自民である。自民は維新との連立(閣外協力)、無所属議員の取り込みでかろうじて衆院で過半数を回復したものの、参院では依然として少数与党である。だが国民民主の予算案賛成の約束を得ることで、予算成立が確実となった。

 そればかりではない。玉木は「合意をきっかけに新しい政治の在り方を切り開いていきたい。当然、信頼関係はより醸成された」と自民との連立の可能性をほのめかした。

 国民民主との連立を望んでいたのは高市である。総裁選では178万円への引き上げに「大賛成」と国民民主に秋波を送っていた。18日の合意についても「所得を増やして、消費マインドを改善し、事業収入が上がる。そういう好循環を実現する」とその意義を強調した。

 国民民主も7月の参院選公約では「積極財政と金融緩和により、賃金デフレから脱却する」とかスパイ防止法の制定など高市と同様な政策を掲げた。そのほか、同党の政策パンフでは防衛産業の育成・強化、能動的サイバーの法制化、原子力発電の建て替え、新増設を謳っている。これらは反動的な高市自民の政策とほとんど同じである。

 労働者、働く者の生活苦・労働苦をよそに、反動高市政権に手を貸す玉木国民民主を労働者は断固糾弾する。 (T)


    

【飛耳長目】

★今年の漢字は「熊」、僅差で「米」「高」と続いた。「米」は勿論、米価の高騰のことだ。子供らの買い物ごっこでもあるまいに、その対策が「お米券」で、一人当たり3千円相当分(政府目安)を〝今の高値で買え〟というわけだ。いったいどこが米価対策か★それを奨励する農相の鈴木は、今年の漢字はと問われて、「苗」と答える程のピンボケ感覚で、旧態依然たるの農業保護に異常に肩入れする典型的な農水族だ★その予算は物価対策費2兆円の内の4千億円を占めるが、それらはJA全農や米流通業者の懐を潤すだけのことだ★もう一つの「高」は、止まらぬ物価高への労働者の怒りの声だ。かつて江戸期に、米を初めとする物価高対策に幕府は小判の悪貨(改鋳)で財政を膨らませ、かえって物価の高騰と社会の混乱をもたらせた★高市の「積極財政」なる補正予算18・3兆円内、国債費は何と6割にも及ぶ。借金で財政補填をし、さらにカネを市中にばら撒こうというわけだ。円の価値は益々下落し、物価はさらに上昇を続け、労働者の生活を苦しめるだろう★累々と積み上がった日本の借金は今や1317兆円(対GDP236%、2024年度)にも及ぶ。高市の「積極財政」もまた、借金には「見て見ないふり、臭い物には蓋をしろ」ということだ。 (義)


【2面トップ】

ポピュリズム・柄谷理論批判を
特集

『プロメテウス』64号発行

『プロメテウス』64号が発行された。64号は二つの特集で構成されている。第一特集は、「跋扈するポピュリズムに反撃を!」であり、第二特集は朝日新聞の連載で蘇った(?)かの柄谷理論批判である。

◇「トランプ専制体制」にメス

 第一特集の第一論文、「トランプ専制体制に帰着した米国」(古川論文)は、トランプ再選をもたらしたアメリカ社会の亀裂と分断の深さ、その根底にあるアメリカ資本主義の衰退と腐朽を分析している。

アメリカ資本主義は特に80年代以降、新自由主義の名の下に金融術策にふけり、産業資本の衰退を招き、「中産階級」=労働者階級は貧困化し、零落してきた。民主党主流派のリベラリズムは陳腐なお題目と化して、底辺の労働者の反発と怒りを買うに至っていたのである。

 労働者大衆の期待に応えるかの幻想を振りまき勝利したトランプの露骨な差別と排除の政策、高関税によるアメリカ経済の弱体化、高物価による大衆の困窮化が詳細に暴露され、ニューヨーク市長に「民主社会主義者」マムダニを押し上げた意味とさらなる前進の必要性が解き明かされている。

◇ 日本のポピュリズム批判

 第一特集の第二論文、「日本におけるポピュリズムの台頭」(田口論文)は、今年7月の参院選におけるポピュリズム政党の〝躍進〟に焦点を当て、国民民主、維新、れいわなどのポピュリズムのタイプ・支持基盤・政治的役割を明らかにしている。

 論文が特に力を入れているのは、「日本人ファースト」を掲げて、比例区で743万票(得票率12・5%)を獲得した参政党の分析である。田口氏は、参政党が選挙中にまき散らした言説の数々――出稼ぎ外国人労働者の安い賃金が日本の労働者の低賃金の原因だ、外国人の流入が犯罪を増加させた、外国人は生活保護や医療など社会保険を悪用している等々――を、政府統計や実態調査を元に一つ一つ丁寧に検討し、それらが「いずれも根拠のないデマである」ことを論証している。

 「誰が参政党を支持したか」の分析も興味深い。参政党を支持するに至った階層、職業分析、不満と鬱積の根底が明らかにされている。

 論文はさらに、参政党の「国民主権を否定し、天皇制国家を謳う憲法草案」に現れた反動的本質を暴露し、批判派を「非国民」呼ばわりし、「スパイ防止法」制定を目論む参政党が「ファシズムの萌芽」であり、今後の情勢次第では「ファシズム運動になる可能性をもっている」ことを指摘している。

◇第二特集 「柄谷理論―その虚構性を暴く」

 渡辺論文「労働の搾取を否定する柄谷行人――『生産関係』を『交換様式』に置き換えて」は、2025年4月から10回にわたる「回想録」を朝日新聞に連載した柄谷行人への挑戦状であり、その「虚妄性」を徹底的に暴露した力作である。

 柄谷は、2000年を前にマルクス批判家として名を上げ、「流通過程」重視の消費者運動を立ち上げたが、2年半ももたずに内部対立で空中分解した〝実績〟がある。

 その時期の柄谷の〝理論と実践〟――『世界共和国』の提起を含む――を、労働者党はいち早く取り上げ、「海つばめ」で批判してきた。当時の記事が渡辺論文の後に掲載され、労働者党の批判の一貫性を示し渡辺論文を補う形となっている。

 渡辺論文は、生産関係より交換過程の方が根底にあるとの謬論に基づき資本主義の本質――資本による労働者の搾取――を否定する柄谷理論が、流通過程重視の宇野理論に文化人類学の範疇を接ぎ木した空虚で無内容な俗論であることを徹底的に暴露している。

 その前段として、柄谷がロシア革命を社会主義革命と思い込み、スターリン主義国家=国家資本主義の官僚的専制国家への転化をもってマルクス主義の破産を〝確信〟し、俗論家の道を突き進んだとの指摘は、柄谷理論の〝誕生の秘密〟を明らかにしている。

◇書評と斎藤幸平〝理論〟批判論文

 本誌には書評と斎藤幸平の理論を批判した投稿論文も掲載されている。

 是永氏の書評は、佐賀旭著『虚ろな革命家たち――連合赤軍 森恒夫の足跡をたどって』(集英社)を批判的に紹介しつつ、著者が解明できなかった凄惨な同志殺しに至る過程の根底を、観念的で独りよがりな小ブルジョア急進主義、一揆主義の帰結として解き明かしている。

 本誌の掉尾を飾るのは、宮本氏の論文、「マルクスはアジアを蔑視する『オリエンタリスト』だったのか」である。宮本氏は以前から斎藤幸平の理論に疑問を抱いていたが、本誌63号の特集「斎藤幸平〝理論〟を撃つ」に触発され、本論を寄稿された。

 宮本氏は、斎藤幸平が「マルクスを前期と後期とに『切断』」し、後期には生産力主義、単線的な共産主義への転化論を放棄して「脱成長コミュニズム」を推奨するに至ったとする妄言を詳細に批判している。宮本氏の批判は根底的であり、斎藤幸平〝理論〟にとどめを刺すものである。

 いずれの論文も労働者が直面する実践的理論的課題に真正面から取り組み、解決の方向を指し示している。本誌が広く研究会などで検討され、労働者の党的結集の軸となることを願ってやまない。 (S)
【全国社研社刊 本体千円】


【2面サブ】

不都合な高市発言

「呉越同舟」の米中

 高市は11月7日の国会答弁、「台湾有事は日本の有事」という〝一線を超える〟発言の取り消しを拒否し、習近平の反発を招いている。日本ツアー中止、中国直行便の削減、水産物輸入禁止、文化交流、イベント中止等々の〝ソフト〟な反撃から、中国軍戦闘機による自衛隊戦闘機に対するレーダー照射とエスカレートし、日中ともに各国に向けた情報戦を繰り広げている。

◇太平洋から地球そして「G2」

 2014年11月、習近平はオバマに対し、「太平洋は十分に大きく、米中両国は共存できる」と語りかけたが、オバマに拒否された。10年後の2024年4月、習近平は、訪中したバイデン政権のブリンケン国務長官に対して「地球は十分に大きく、米中両国は共に発展し、それぞれ繁栄できる」と、米中は太平洋を超えて地球全体で共存できると発言した。

 トランプは、10月30日の釜山G20サミットで、米中関係を「G2」と表現し、米中が世界をリードする、米中による世界秩序を構想する習近平の〝長年の想い〟に応えた。

 米中両国による世界の〝分割支配〟は、呉越同舟の両者が思い描く世界観である。

 G20サミットでは、高市・習近平会談が行われ「日中の戦略的互恵関係」が謳われ、これまで同様の曖昧な公式見解が確認された。しかし高市は、サミット前の訪日でトランプに褒められたことで調子に乗って、7日に一線を超える対中強硬姿勢の発言が飛び出した。

 習近平が高市発言を認めることが出来ないのは当然であるが、トランプも高市発言の支持を表明していない。トランプは中国との対立を顕在化したくないのだ。19日にはルビオ国務長官が、「台湾有事をめぐる高市早苗首相の答弁に強く反発する中国の強硬な姿勢を非難するかと問われ、『中国と友好的にやってきた』と述べ、中国への批判的言及を避けた」。さらに踏み込んで、日中の緊張はもともと存在していた。「地域の中で均衡が図られる課題だ」と記者会見で応えた(12月20日朝日デジタル版)。米国はどちらにも与しないということである。首相官邸幹部の「核兵器保有」発言に対する米国の「日本は核不拡散のリーダー」発言も、高市に対する不信の表れである。

◇習近平と友好を演じるトランプ

 5日に発表されたトランプ政権の「国家安全保障戦略」(NSS)は、台湾問題について「一方的な変更も支持しない」としながら、「米軍が単独で侵略を阻止する軍隊の構築を担うべきではなく」、「米国の外交的努力は、同盟国に対して港湾などの施設への米軍のアクセスを拡大し、侵略抑止能力への投資を促すことで台湾占領を阻止する、米軍と同盟国の能力が強化される」と述べ、バイデンは「中国が台湾を武力で侵攻した場合、米国は台湾を防衛する」と何度か発言したが、トランプは米軍の台湾防衛について直接的な言及は用心深く避けている。

 19日に発表された台湾への111億540万ドルの武器売却もNSSに沿った決定である。すなわち、「侵略抑止能力への投資」に応えた武器輸出である。習近平にとって「核心的利益」である台湾問題で、軽薄に軍事力行使を発言し中国との緊張を高める高市に、トランプが偉そうに〝忠告〟した可能性は高い。

 トランプには、自ら打ち出したMAGA政策がブーメランとして襲い掛かっている。米国から奪い取った富を取り戻すと発動した相互関税は、輸入品価格の上昇を招き物価高騰が収まらず、米国の労働者大衆の生活を苦しめている。それに対する反発は、NY市長にマムダニを選び、3つの知事選で民主党候補を勝利させた。3日に行われた赤いテネシー州(共和党の地盤)の下院補選では、共和党候補が当選したが民主党候補に9ポイント差まで追いつめられた(24年は21ポイント差)。トランプ支持率はMAGA派内部でも下落(4月78%が12月70%、NBC)している。

 相互関税を憲法違反と訴えていた最高裁の判決が近々出ると言われている。最高裁は9名の判事のうち6名はトランプが任命した保守派であるが、違憲判決の可能性も高く(大統領に相互関税を決定する権限はない)、その場合は徴収した税金を返還する必要があり(日本企業では、住友化学など9社がトランプ政権を提訴)政治的、経済的、外交的に大きな影響が出ることが想像できる。

 予断を許さない国内情勢の中で、中国との関係をこじらせることは出来ない。NSSは、「我々は米国と中国の経済関係を再調整し、相互主義と公平性を優先して米国の経済的自立を回復させる。中国との貿易は均衡を保ち、非敏感分野に焦点を当てるべきである」としている。高市発言は〝台湾有事〟という「敏感分野」に焦点を当てたために、トランプの〝怒り〟を買ったのである。

◇抑制的な高市批判その背景は何か?

 14年の民主党野田政権による尖閣諸島の〝国有化〟に対して習近平は、反日デモ、日本製品ボイコット、日系企業に対する焼き討ち、レアメタルの輸出禁止などの〝激しい〟対応を行った。それと比較し今回は、中国国民を煽りたてた抗議行動は行われていない。この10年間で、日中の経済力は大きく差が開き、日本製品のボイコットを呼びかけるほどの存在感が中国国内ではなくなった。

 中国共産党が主導する、強権的な国家資本主義体制のもとで中国経済の低迷が続き、帝国主義的な「戦狼外交」などの影響もあり、海外からの投資は減少し海外企業は中国から生産拠点を撤退しつつある。習近平にとっては、経済的停滞が続き生活苦にあえぐ数億の人民の怒りが共産党支配に向かうことを何よりも恐れている。習近平は高市発言後も、中国国内にある日系企業に対して〝良好な関係〟を維持するメッセージを出し、レアメタルの対日輸出禁止の動きもまだ見られない。

 日本を経済力、軍事力で圧倒し米国と「G2」による〝世界分割〟を妄想する中国の対応を、アセアン諸国や世界中が注視している。トランプは中国の台湾に対する「核心的利益」を認め、中国はトランプの西半球・南米への覇権に対して黙認している。対中強硬で一線を超えた高市発言は、米中帝国主義国家の呉越同舟を浮き彫りにした。

 台湾有事を巡る日中対立は、権益を守ろとする日本と覇権を広げる中国の帝国主義同士の対立であり労働者はいずれにも与しない。日中労働者階級は国際主義を掲げ自国反動政権と闘おう。 (古)

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