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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1507号 2025年9月28日
【一面トップ】 有権者そっちのけの権力争い
        ――自民党の総裁選始まる
【一面サブ】  ガザ抹殺急ぐネタニヤフ許すな
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 『資本論』を学べと共産党
        ――だが、学ぶほど共産党の路線と衝突する
【二面サブ】  保護主義か、自由貿易か?
        ――トランプ関税をめぐって
       ※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

有権者そっちのけの権力争い

自民党の総裁選始まる

 自民党の新総裁を決める選挙戦が始まった。9月22日告示、10月4日開票である。名乗りを挙げたのは小泉進次郎、高市早苗、林芳正、茂木敏充、小林鷹之の5人で、いずれも昨年の総裁選に出馬したメンバーである。衆院に続き参院でも少数与党に転落して、「解党的出直し」を誓ったはずの自民党だが、5名の立候補者の出馬表明からは、自民党政権にノーを突き付けた、有権者からの厳しい批判への反省は全く感じられない。

◇何も変わらない「政治とカネ」問題

 参院選での自民党大敗の原因となったのは「政治とカネ」問題。自民党自身が「総括」で、「政治とカネ」は自民党が「信頼を失った」原因だと述べた。しかし、出馬会見でこの問題に触れたのは、茂木と小泉だけである。

 茂木は「禁止より公開」で透明性を高めることが重要、政党助成金と個人献金、企業・団体献金のバランスをとることが望ましい、としている。しかし、これは石破内閣が国会で述べてきたことと基本的に同じだ。石破は企業献金を禁止することは憲法が謳っている「自由」に反するとして反対し、誰でも政治資金収支報告書を容易に見ることが出来るように「透明性」を高めるということでごまかしてきた。茂木は、さらに政党助成金、個人献金との「バランス」を付け加えたが、それを具体的にどうするのかということは述べず、「バランスをとることが望ましい」という曖昧な言葉で済ましている。結局は、石破答弁と同じで、企業献金継続の立場である。

 小泉も、「政治資金の透明化の徹底で『政治とカネ』の問題が起きない土壌を整える」と、これまでの石破の説明を繰り返すにとどまっている。小泉は党の「改革派」を看板にしてきたが、右派の票を得るために右派の議員連盟・「創世会」所属の加藤勝信を選対本部長に据えたり、持論である「選択的夫婦別姓」を封印するなどしている体たらくぶりである。

 その他、高市は「党の規律や財務体質を根本から改める」などと抽象的な言葉で済ませ、有権者の批判をかわすために「政治とカネ」に触れようともしない。まったく有権者を馬鹿にしている。

◇経済発展の空約束

 経済政策では、積極財政派と財政慎重派の二つの傾向に分かれている。

 積極財政を代表するのは旧安倍派の高市と「若手」を売りとしている小林である。

 高市は「世界の潮流は行き過ぎた緊縮財政ではなく社会の課題解決に向けて官民が連帯して投資を拡大する、責任ある積極財政へと移行している」が、日本も「『ワイズスペンディング』で暮らしの安全安心を確保し、雇用と所得を増やし、消費マインドを改善し、税収が自然増に向かう強い経済を実現する」と訴えている。「責任ある積極財政」とか「ワイズ(賢い)スペンディング」などの空文句を除けば、金融緩和や借金財政で投資を活発化させ、経済発展を実現するという「アベノミクス」と同じである。

 高市は積極財政は「世界の潮流」だと言うが、これは主としてポヒュリストの言い分であり、また、「アベノミクス」が僅か7年間で国の借金を250兆円も積み上げ(対GDP比189%から207%へ)、経済発展どころか今日の経済の低迷、そして労働者に生活困難をもたらしたことを少しも省みることなく、あらぬ幻想を振りまいているのである。

 一方、積極財政に慎重である林は、岸田、石破二つの政権の路線を継承するという。その路線の一つは、「賃上げと経済の好循環」論のことである。賃上げを行う企業に対して、政府が補助金を支給し、賃金を引き上げ、消費が増大し、投資が拡大、それによって経済が発展するという理屈である。しかし、もともと賃上げは物価上昇の後追いでしかなく、この〝理論〟はとっくに破綻している。

 積極財政派であれ慎重派であれ、唱えている「経済発展」は空約束でしかない。

◇軍備増強では一致

 軍備増強、日米安保深化では各候補とも足並みをそろえている。

 最も強硬姿勢なのは高市である。高市は、「防衛力の裏付けのない外交は弱い」ことを実感した、と帝国主義外交を正当化し、さらに中国、ロシア、北朝鮮の3核保有国に囲まれている日本は、「安心、安全」を確保するために日米安保軍事同盟の強化、防衛産業育成の必要性を訴えている。

 高市に次ぐのは小林である。小林は「防衛費の予算措置はGDP2%では到底足らない。国家安全保障戦略を早期に改正し、必要な額を積む」と軍備増強を訴え、そしてさらにAIや宇宙などへの大胆な投資」を行って「世界をリードする日本をつくる」と述べている。 その他、安倍が唱えた「自由で開かれた世界を守る外交の徹底」(林)といったこれまでの日米軍事同盟維持、強化では各候補は一致している。

◇維新や国民民主と連携をさぐる

 自民党が少数与党となっている限り、自民党にとって野党との連携、あるいは連合は避けることが出来ない問題であり、各候補ともこの問題に触れている。

 その相手となっているのが維新と国民民主である。

 茂木は、「国民民主、維新となら連立できる」と言い、林は「憲法や皇位継承、安全保障、エネルギーなどで一致が条件」と述べている。小泉は、「政策や理念の一致を見極めながら、政権の枠組のあり方について議論を深める」と言い、小林は野党との協議よりも、自民党が国会議員、地方議員も含めて「一つにまとまることが先決」だとして、積極的な発言はない。

 高市は、連合については「基本的路線で一致できる党」としたうえで、これまで野党が要求してきたガソリン暫定税率の早期廃止(野党7党)、年収の壁の引き上げ(国民民主)、給付付き税額控除の制度設計着手、スパイ防止法(維新、国民民主は賛成)の制定着手などを公約に盛り込んだ。

 維新は18日、提言「21世紀の国防構想と憲法改正」を発表した。憲法9条は今の日本を取り巻く安全保障環境と乖離しているとして、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とする憲法9条第2項を削除し、軍隊を持つことを憲法で正式に謳うことや専守防衛をやめて「積極防衛」に転換すること、「集団自衛権」の容認、スパイ防止法の制定などを謳う。

 維新のこの提言は、自民党との連携を見据えたものであり、自民党の補完勢力としての維新の反動性を暴露している。

 自民党の各候補者は「解党的出直し」を口にするが、口先だけであり、労働者、有権者のことなどそっちのけで、反動政治強化の権力闘争にふけっているのである。 (T)


【1面サブ】

ガザ抹殺急ぐネタニヤフ許すな

◇ガザ抹殺最終章

 16日イスラエル軍によるガザ市に対する地上軍の本格的侵攻で、ガザ抹殺、パレスチナ人根絶の最終章は幕を開けた。

 カッツ国防相は16日、Xへの投稿で「ガザは燃えている。兵士らは人質を解放しハマスを壊滅するため勇敢に戦っている」と述べた。「パリは燃えているか」、パリが連合軍によって〝解放された日〟に、ヒトラーが叫んだ言葉である。カッツがヒトラーの言葉を知らないわけはない。イスラエル軍のガザ抹殺最終作戦にあえて、ヒトラーを意識した表現を発したのである。ヒトラーとネタニヤフらを同列に扱うのに何の遠慮もいらない。

 ネタニヤフは、「強化された作戦を始めた。決定的な戦いだ」と、戦車を先頭にハマス戦闘員の殺害を口実に無差別攻撃を仕掛けている。ガザ保健当局は、23年10月以降の死者が6万5208人、餓死者が442人になったと発表した(9・20)。

 ガザ市制圧作戦は数か月間継続する見通しで、食糧支援物資の空中投下も中止され、飢饉は進行し状況は一層深刻になる。飢饉や爆撃で死ぬ乳幼児は、将来の〝ハマス戦闘員〟とネタニヤフらは考えガザ住民根絶を進める。

 パレスチナ人がこの後、運よく生き延びたとしても自立した国家として建設するには乗り越えるべき課題は多くあるだろうが、パレスチナ人民は世界の労働者階級と連帯して必ずそれを成し遂げるだろう。

  

 我々はパレスチナ人民に満腔の同情と連帯の挨拶を送る。

◇イスラエル労働者も国際主義で共に闘おう

 ネタニヤフらは、イスラエルを批判するのは「反ユダヤ主義だ」と断じ、「ハマスのテロを容認」などと各国をけん制。

 ネタニヤフの狂気じみたガザ虐殺に対しては、仏・英、豪・加などがパレスチナ国家承認でネタニヤフに抗議の意思を表明したが、カッツは5月に「欧州の国が紙の上で国家を承認するなら、我々は現地にユダヤ人国家を建設する」と述べ。それを受けネタニヤフは11日に、3千戸以上の大規模入植地(E1)式典で、「パレスチナ国家は今後も存在しない。この場所は我々のものだ」とパレスチナ国家の首都を想定する東エルサレム地区を二分する要衝に入植地の建設を開始した。

 パレスチナ国家承認は150ヶ国を超えているが、イスラエルの傲慢な帝国主義的行動はそんなことなど全く無視。イスラエルが制約を受けることなく軍事行動が可能なのは、米国のイスラエル擁護があるからだ。

 トランプ政権の岩盤支持層キリスト教福音派は強固なイスラエル支持であり、米国のイスラエル支持は揺るがない。トランプのガザを中東のリビエラにするというリゾート構想に応えて、宗教シオニスト党の財務相スモトリッチは〝パレスチナ人の血に染まったガザ〟は「不動産の宝庫」で、イスラエルにも「土地の分配が必要」と分け前をトランプに要求している。

 イスラエルの労働者は、軍隊が支配階級の暴力装置であると理解し、兵役を拒否しネタニヤフ打倒に立ち上がろう。「祖国防衛第一主義」の〝紐帯″〟から自由にならなければ、労働者の階級的闘いの前進はなく、ネタニヤフのパレスチナ人ジェノサイドとも一貫して正しい立場で闘う事は困難になる。

 岩屋外相は19日、パレスチナ国家承認に追随せず〝独自〟の立場で、「二国家解決を追求する」と表明。イスラエル外相は「日本の責任ある決定に感謝する」と述べた。日本は米国に追随し共犯者に堕した。労働者は、犯罪的自公政権を弾劾し、イスラエル労働者のネタニヤフ政権打倒の闘いを励まし連帯する。 (古)


    

【飛耳長目】

★台風15号に伴う国内最大級の竜巻が牧之原市(静岡県)を襲い、見るも無惨な状況だ。電柱は軒並みなぎ倒され、家屋の屋根はめくれ上がり、瓦は飛び散り、外壁や窓は吹き飛んだ。負傷者は83人(重傷3人)、建物被害は1110棟、停電は1万戸に及んだ。大型トレーラーを横倒しにした風速は75mと推定された。線状降水帯により静岡空港駐車場はため池のようになり、300台の車が水没。帰国した人々はその光景に唖然とした★6月から続く猛暑は静岡市で41・4度を記録した。体温を上回る酷暑と湿気で体調を崩す人が続出。駿河湾名産の桜エビやシラスは黒潮の大蛇行で全く捕れず、知人の漁師は無収入を嘆く。屋外で従事する労働者や建設労働者は、まるで熱したフライパンの上や蒸し風呂の中で仕事をするようだと言う★目に見える姿で地球温暖化は進んでいる。地球を覆う温室効果ガス――化石燃料の無制限な使用、開発という名の森林破壊、大渋滞を起こす程の自動車の生産(22年16億台)、何れも世界中で資本の大規模な開発や無政府的で過剰な商品生産がもたらしたものだ。「地球の危機だ」と叫びながら、資本主義では解決どころか減らすこともできぬ。それどころか、ガザやウクライナでは人間の生命や国土の破壊が帝国主義者によって、さも平然と大規模に進んでいる。 (義)


【2面トップ】

『資本論』を学べと共産党

だが、学ぶほど共産党の路線と衝突する

 7月の参院選で大敗した共産党は選挙総括を発表し、その中で、理論的学習を重視することを訴えている。『資本論』の学習に「挑戦」し、少なくとも第一部を学習せよと言い、志位和夫議長の『Q&A いま「資本論」がおもしろい』(新日本出版社刊)がそのきっかけになると持ち上げている。

◇『資本論』を読め?

 共産党常任幹部会は、参院選挙大敗を受けて急遽声明を出したが(7月21日)、資本主義の民主的改良路線の弁護に終始している。

 「参議院選挙で、日本共産党が行った政策的な訴えは、責任ある財源提案とセットで消費税減税を進める、政治の責任で賃上げを推進する、医療と介護の崩壊を止め社会保障予算を拡充する、大軍拡に反対し、外交の力で東アジアの平和をつくるなど、どれもが国民の願いにかなった先駆的なものだったと考えます。

 日本共産党が選挙戦をつうじて訴えてきたように、『財界・大企業中心』『アメリカいいなり』という自民党政治の『二つのゆがみ』をただす改革を進めることにこそ、暮らしや平和の危機を打開し、政治の閉塞状況を打開する展望があります」等々。

 ところが、常任幹部会の声明を受けて開催された中央委員会幹部会では(8月3日)、資本主義の民主的改良路線の確認と共に、『資本論』の学習に「挑戦」することを党員に呼びかけた。

 そもそも、マルクスの『資本論』は、資本主義は商品を基礎として発展したこと、貨幣蓄蔵や機械制大工業の出現(同時に労働者階級の誕生)を契機にして労働力商品を買い、剰余労働を搾取する資本家が登場したこと、従って、「資本と賃労働」の対立的・敵対的な関係が資本主義の根底にあることを明らかにする。と共に、資本主義の内的矛盾は大きくなり、労働者たちによって社会の生産関係が変革されることを示した革命的な著作である。

 この『資本論』と共産党の思想は根底から異なっている。共産党は「民主主義革命」の継続発展を主張し「市場経済を通じて社会主義に進む」(共産党綱領の五)という立場をとっている。しかし、「市場経済」と「社会主義」は形容矛盾である。なぜなら、「市場経済」は私的労働を基礎にする商品及び資本の運動であり、本質的に資本主義そのものを指すからだ。

 それにも拘わらず、共産党幹部会は『資本論』を学べと言い、そのきっかけに志位の本を読めと発破をかける。さて、志位は共産党の立場と衝突しないように、『資本論』をどう説明するのか。

◇中途半端な「自由」

 志位の本は、今年の春に民青同盟と共催したゼミナールでの報告に加筆したものである。

 志位は『資本論』について、まず、「未来社会が、最も成熟した形で、豊かに語られた書」と紹介する。その上で、人間は科学者や芸術家やアスリートになる可能性をもっているが、資本主義のもとではその可能性を生かせる人は一握りに限られている、従って、全ての人間が「完全で自由な発展」を勝ち得るカギは労働時間を抜本的に短くすることだと言う。

 もちろん、労働時間の抜本的短縮は人間の発展の必要な条件である。だが、人間の自由な発展はそれだけでは生まれない。資本主義を「否定」し労働者が生産手段を「共同占有」し、生産と生活を全面的に把握しつつ社会的労働に参加し、全成員の生活手段が労働時間によって分配されるようになり、同時に、一つの労働に縛られ固定されることなく、共同して生き生きと働くことによってこそ、人間の成熟や豊かさに繋がる。

 さらに、現在の教育は、労働力商品の育成の場に切り縮められ、受験競争のための詰め込み教育と化している、この退廃したブルジョア教育が抜本的に改革されずして、人間の発展は成しえないだろう。真に人間の発展と人間性の豊かさを獲得しようとするなら、教育の場でも、一定の年齢に達した子供たちが生産的労働の一部分に参加し、共同労働の楽しさや意義を知ることが必要な条件に加わる。

◇価値理論の質的側面には触れず

 次いで、志位は『資本論』の最初に登場する「商品と貨幣」について、ゼミナールの参加者にとっては「難しい」と言って、商品に対象化されている価値量について説明するのみである。結局、価値理論の「質的な側面」については一言も触れずに飛ばしてしまう。

 価値理論の「質的側面」とは次のようなことである。

 x量の商品A=y量の商品Bというように、なぜ商品は物と物との交換関係でしか表現されないのか、なぜ商品の価値をその商品自身が示さないで、その商品に等置された他の商品の体で表現されるのかを課題にし、人間労働の社会的性格(私的性格)が物の形をとって表われることを究明することである。この価値の「質的」解明によって、商品の謎的性格は私的労働に基づく商品生産に深く関わっていることが明らかになる。

 資本主義の基礎である「商品と貨幣」を避けることは『資本論』を正しく理解することに繋がらないが、志位は敢えてそうしたようだ。さらに進んで、資本の剰余価値の生産(労働の搾取)へと論を進めたが、中途半端で中身の薄れた解説になったのは当然であった。

◇思惑と裏腹の『資本論』学習

 『資本論』ゼミの最後で志位は、共産党綱領と関連させて、ソ連や中国の「覇権主義国家」を「社会主義」からの逸脱だと非難し、自由と民主主義を強調したが、ソ連や中国は労働者と農民を搾取する国家資本主義として成立したことを未だに理解できないでいる。しかも、ソ連や中国がどんな社会かも規定できずに動揺している。

 それもそのはずである。共産党の「社会主義」は商品生産と流通を基礎にした「市場経済社会主義」であり、ソ連や中国とそっくり同じだからである。

 志位ゼミに参加した民青の若者が今後さらに『資本論』を真剣に学ぶなら、志位や共産党の思惑とは裏腹に、共産党の政治や綱領そのものに疑問を抱くようになるだろう。それは避けられない。 (W)


【2面サブ】

保護主義か、自由貿易か?

トランプ関税をめぐって

 朝日新聞は、トランプ関税による報復の連鎖を心配して、「世界は保護主義の時代に突入したのか、……世界は国際経済の秩序を取り戻せるのだろうか」(7月29日、オピニオン&フォーラム)と危機感を露わにしています。国中がトランプ関税に反対し、自由貿易を守れ、と叫んでいます。日本の労働者は、この問題をいかに考えたらいいでしょうか?

◇ドイツの関税同盟とイギリスの穀物法

 関税とは、「外国から輸入する貨物に対して賦課する租税」(広辞苑)です。歴史的に有名なのは、1834年のドイツ関税同盟(プロイセンが主導したドイツ諸邦の経済同盟。内国関税の廃止と対外関税を共同で規制した。ドイツ帝国創設の基礎となった)と1815~28年に成立したイギリスの穀物法(大土地所有者保護のために穀物の輸入を制限した)とがあります。

 両者は対照的なので、まずドイツ関税同盟について述べます。この関税同盟は、イギリスやフランスの資本主義の発展からとり残されたドイツの産業を保護育成するために設立されたものです。こうした関税は、後発国や途上国によく見られるもので、やがて産業が発展し世界貿易の仲間に入るとともに撤廃されるのが普通です。自由な競争こそ資本の本性であり、資本が求めるものであるからです。

 この場合の関税は、国内産業の発展を促進するという点で進歩的な意味を持つものですが、しかし、発展した資本主義のイギリスのような国家における関税(穀物法)は、このような進歩的な意味はありません。

 それはただ国内の農業資本家やそれから高い地代をとっている地主の利益のためにのみ作られた制度だからです。高い穀物を食わせられている労働者や、そのために高い賃金を払わねばならない産業資本家にとって、穀物法の廃止は焦眉の課題であり、そのために反穀物法の大運動が起こったのは当然でした(1846年に廃止)。イギリス資本主義の発展にとって穀物法は、障害以外の何物でもなく、大土地所有者を保護する反動的な役割を果たしたのです。

◇トランプ関税の性格

 この二つの例からトランプ関税を見たらどうでしょう?

 第1に、アメリカは19世紀のイギリスのように、世界で最も成功した最強の資本主義国です。こうした国での関税は、ドイツの関税同盟のような、資本主義の発展という進歩的な意味は全くありません。アメリカはトランプ関税を設けることによって、外国からの安い物資の輸入は途絶え、労働者は生活費の高騰に苦しむことになります。

 いっぽう資本家は外国からの安い生産手段の調達網を断ち切られ国内の高い生産手段の購入に苦しむことになります。

 外国との競争を免れることによって、安んじて労働者を搾取することができますが、他方で、国内の資本家どうしの争いはますます激しくなり、資本家どうしは競争に勝ち抜くために、一層労働者に対する搾取を強めざるを得なくなります。

 また資本家は、国際競争から保護されることによって生産設備等の改革が遅れ、ますます国際競争力を失います(鉄鋼、自動車、造船を見てください)。やがて内外の圧力によって自由貿易(資本主義は保護貿易にいつまで固執することはできません)に復帰せざるを得なくなった時には、生産力はボロボロになりその商品は、外国の安い商品に、到底太刀打ちできなくなってしまうでしょう。

 かくてアメリカの没落は決定的になるのです。

 経済音痴のトランプは、関税が衰退した産業を保護育成し、労働者の雇用を維持拡大し、再びアメリカを偉大な国にする、などと幻想を振りまいていますが、すべては逆の結果をもたらすのです。

◇労働者は自由貿易を支持すべきか

 では、トランプの不当な関税に反対する日本の労働者は、自由貿易を支持すべきでしょうか?

 ここで考えなければならないことは、自由貿易の「自由」とは何を意味するのか?ということです。

 この「自由」は、資本にとっての自由、資本の自由な経済活動という意味での自由なのです。資本主義は、資本の自由な活動においてのみ、その進歩的な側面(生産力の発展、労働者の組織的な闘いの発展)と抑圧的な側面(労働者に対する搾取の拡大、階級闘争の発展に対する抑圧)を発展させます。

 関税政策や保護貿易主義は、資本主義の進歩的な側面を阻害し、その抑圧的な側面のみを増加するのです。したがって、労働者階級は、資本の自由な活動による生産力の増大によって、労働者の生活物資が安くなり、また資本主義の経済法則とその矛盾を大規模に発展させ、労働者階級による社会革命を準備する、という意味で自由貿易や自由競争を支持するのです。

 とはいえ、自由といい保護といっても、みな資本に対しての保護であり自由でしかありません。労働者は資本に雇用され賃金を得ることなしには生活できない、経済的に不自由な存在です。

 労働者は資本にとって、機械と同じにように単なる生産手段、道具でしかありません。資本家は機械の生産費を払って機械を買うように、労働者には労働力の生産費(つまり賃金)を払って労働力を買うのであり、それ以上(剰余労働)は払う必要がないのです。労働者による剰余労働は資本家の儲けであり、資本にとって「自由」な搾取が行われるのです。

 社会のすべての生産物、すべての価値を作り出している労働者が、そのほんの一部しか貰えないとは、なんと理不尽な社会でしょうか! しかし、資本主義が続く限り労働者は、労働力を再生産するための生活ができるだけの賃金しか得ることができないのです。これが資本主義の法則です!

 労働者にとっては、保護貿易も自由貿易もどちらも同じことです。どちらにおいても労働者を賃金奴隷に貶め、過酷な搾取が続くことに変わりはありません。労働者階級のめざす目的は、この資本の搾取の廃絶であり、労働の解放です。

 同じような歴史的な使命を持つ各国の労働者と連帯し、自国のブルジョア権力を打倒する闘いをつくり上げましょう。 (K)

(神奈川で学習会を行っている「横浜労働者くらぶ」発行「労働者くらぶ55号」の記事に加筆修正)


《前号の訂正》

  1面トップ記事
   下から3段目の中見出しから6行目
  「政務次官」→「大臣政務官」

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