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●1526号 2026年7月12日 【一面トップ】 皇位継承を巡るバカバカしい議論 ――労働者は象徴天皇制の廃止を要求する! 【一面サブ】 高市強権政治を糾弾する ――数を頼みの反動法案が目白押し 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 高度成長幻想を振りまく ――矛盾だらけの「骨太方針」 【二面サブ】 労働者抑圧強化の「民族団結法」 ――中華民族への帰属を打ち出し権力強化 ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】皇位継承を巡るバカバカしい議論労働者は象徴天皇制の廃止を要求する!高市政権は「安定的な皇位継承」のために、皇室典範の改正は「先送りできない喫緊の課題だ」として、改正案を6月30日に閣議決定した。高市は衆院における数の力で、なにがなんでも今国会において改正を実現しようとしている。 ◇衆参議長がまとめた皇室典範改正案衆参議長が「国会の総意」としてまとめたという案は二つあり、その一は①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ案であり、その二は②旧皇族の男系男子を養子として皇族に迎える、という案である。ともに皇族数の確保についての案であり、皇位継承の仕方については、今後国会で議論されるとしてここでは触れられていない、ということになっている。しかし高市自民党や維新は、最初から伝統とされる男系男子(父方に天皇の血を引く)のみの継承をめざしているのであり、森衆院議長の「(養子のもとに)男の子が生まれれば皇位継承権を持つ」という発言や中曽根弘文の発言(のちに二人とも釈明したが)に現れている。 朝日の世論調査によれば、「女性天皇容認」は、高市内閣支持層の70%(女性75%、男性69%)もあり、世論を向こうに回してまで男系男子にこだわる高市の超反動ぶりがうかがえる。 そもそも女性天皇や女系天皇(母方だけが天皇の血を引く)は、2005年に小泉内閣の有識者会議で散々議論した挙句容認し、内閣として皇室典範の改正案の提出を決定していたのである(秋篠宮妃の懐妊でオジャン)。②の養子案は、小泉内閣で否定されたものであり、今の跡継ぎ問題で急浮上してきたものである。高市は、一度は自民党自身が認めた法案を覆してまで男系男子をゴリ押しするのである。 ◇「安定的な皇位継承」の前提は戦前と同じ天皇制存続「安定的な皇位継承」と言うが、そもそも皇位(天皇制)そのものの存在が前提となっているのだ。国民の7、8割が皇室の存在を肯定していると言われるが、しかし1~2割の国民は、天皇制に対し懐疑的であったり、反対しているのであり、あたかも国民全体が天皇制に賛成しているかに見なしている。 戦後80年」と言っても、その家族や親族に戦争の犠牲になったり、悲惨な目にあったりした国民はいまだに多く、天皇を恨んでいる国民も少なくない。「長い伝統」と言うが、かりに皇室がなくなっても、戦中の鬼畜米英が、一夜にして親米英に転換した我が国民性は、意外にケロッとしているのではないか。 先日テレビで、3人の学者を呼んで皇位継承を論じている番組(BS―TBS「報道1930」)を見た。3人の学者とは、金子(国体学者)、河西(名大、歴史学)、河野(法政、政治思想史)である。案の定、彼らの議論も「安定的な皇位継承」を既定路線として、天皇制そのものの議論は避けている。いったいこれらの学者は、今から2600年以上前に神武天皇という男が即位(紀元前660年は縄文時代だ!)し、以来今の天皇(126代)まで男系の天皇が続いてきた(万世一系)などということを信じているのであろうか? だいいち、神武から8代の天皇は、存在自体が怪しいのであり(実在したらこの8人はみな百歳を超える長寿になる)、何人もの女性天皇がおり、また継体天皇から別王朝が始まったという見解も有力である(大和朝廷そのものが征服王朝とする説もある)。 こうした歴史的事実や見解があるにもかかわらず、天皇や皇室が話題になると学者たちは口を閉ざすのだ。いったい彼らは何のために学問をしているのか! こういうときにこそ歴史の真実を語る学問の力を発揮せねばならないのに! まったく戦前と同じである。日中戦争、太平洋戦争において学者連中は、この戦争そのものを問題にせず、この戦争に勝つか負けるか、その戦術の有効性についてしか発言しなかった。彼らは、目の前にある現実に服従するだけであった。この現実追随主義こそブルジョア学者・インテリの本質である。とはいえ、これら3人の学者先生も戦後の〝民主〟憲法の下にあるので、〝学者〟として何とか〝民主〟的権利と、皇位継承とを調和させなければならないのだ。 そこで彼らは次のようなくだらない議論を展開する。たとえば、旧宮家(民間人)から未婚の男系男子を養子にした場合、その養子は皇室に入るのか入らないのか、入らないとした場合、妻が皇族で夫が民間人となって家族の一体感が失われることにならないか、さらに彼が政治活動(選挙に立候補するなど)したいと言ったら許されるのか、等々延々と議論が続くのである。 ◇天皇は「国民統合」の道具近代の天皇制は日本古来の伝統であると言っても、明治維新によって、それまで全く人民の視野になかった天皇を引っぱり出して、分裂していた諸藩を統合し国民国家として出発するために作り上げられたものにすぎない。そして日本が帝国主義国家として成り上がっていくにつれ、軍部やファシストたちに利用され、国民を帝国主義戦争に駆り立てる道具となったのだ。 戦後の象徴天皇制は、戦前の絶対天皇制と違うというのか?否、その本質は同じである。象徴天皇制とは何か?絶対天皇制と比べてその暴力性は失ったが、天皇が「国民統合」の道具である点では同じである。 この現実の資本主義社会を見よ。この社会は、財産のある者とない者、資本家と労働者、男と女、正規と非正規、等々さまざまな階級や階層、性差が存在している。〝人間みな平等〟とは恐ろしくかけ離れている現実だ。その軋轢と階級闘争は不可避である。その必然性を無視して、国民を統合しよう、仲良くやらせようというのがブルジョアや天皇制の本質である。 つまり象徴天皇制とは、資本主義社会に必然である階級対立、階級闘争を隠蔽し、資本家階級の支配を永遠化させるための道具である。学者やインテリが、この古代の遺物を、なんとかブルジョア的人権と調和させようと四苦八苦している様は、まさに滑稽そのものだ。彼らは矛盾するものを一致させようとしているのだ。 封建時代ではあるまいし、個人の意志など全く無視して婚姻が家同士で決められる、ここには天皇や皇族の意志や意見などはどこにもない。個人の人権も男女の平等も完全に無視されているのだ。何という非人間的な世界!〝民主主義〟国家が、こんな不幸な人間の存在を許していいのか? 国家の犠牲になれというのか?あるいはまた、〝象徴〟天皇は、権力を持たず非政治的であるから安心だ、というのか? それは違う。 天皇制の存在自体が、政治的なのであり、労働者にとって〝悪〟なのである。学者先生のバカバカしい議論を一掃するには、象徴天皇制を廃止すればいいだけである。ことは簡単なのだ。 (K) 【1面サブ】高市強権政治を糾弾する数を頼みの反動法案が目白押し衆院国会の会期末は17日に迫る。しかし、衆院ではまともな議論も行われず、国旗損壊法案が先月末本会議を通過したほか、衆院比例議員の定員削減、男子天皇継続のための皇室典範の改定など反動法案が次々と通過待ちといった状態である。多くの反対の声を無視して、数を頼みに反動政治を強行する高市政権の強権政治の本性が暴露されている。 ◇表現の「自由」を弾圧する国旗損壊法既に衆院本会議を通過した国旗損壊処罰法案は、野党5党が衆院比例定数削減の審議強行の国会運営に抗議して会議欠席中に自民と維新の与党だけで強行された。 同法案は「国旗を大切に思う一般的国民の感情を保護する」ためとして、国旗を損壊した行為に刑事罰(2年以下の拘禁または20万円罰金)を科すものである。 だが国家権力の象徴である国旗に対して、国への批判や抗議を国旗への行為を通じて表す人もいる。また日の丸国旗はかつてはアジア諸国に侵略し、米帝国主義と覇権を争った帝国主義国家日本の象徴であり、この戦争で様々な苦難を被った人々の中には嫌悪の感情を持つ人々も少なくない。国旗を「大切に思う」ことは国民の「一般的感情」などとは言えないのであり、「国旗損壊」を理由として処罰することは、表現・思想の自由を否定する暴挙である。 さらにどういう行為をもって罪と見なすのか。法案では他者を「著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法で公然と損壊、除去、汚損する」場合としているが、それを判断するのは捜査機関や裁判所ら権力の判断次第ということである。「国旗損壊」法案について、高市首相は「日本の名誉を守る上での大切な法案」だと言うが、実際では国民の国家への批判を抑圧し、愛国主義、国家主義を押し付ける弾圧法案である。 ◇「副首都構想」法、衆院比例議員削減次に政府・与党が狙っているのは「副首都」構想法案と衆院比例議員の定員削減法案(今国会では見送り)である。この2法案は維新の看板法案で、高市首相が維新との連立のために受け入れたのである。 維新こだわりの「副首都構想」法案は首都東京のコピーでしかなく、既に2度も大阪市民に否定された「都構想」の蒸し返しだ。連立政権維持のために維新以外に関心もない「副首都構想」法案を持ち出すこと自体、党利のために政治を私物化する高市自民党の腐敗を暴露している。 比例区定数の削減(45議席)はなぜか。比例区定員削減は中小政党に不利で、大政党に有利だからである。選挙制度の改革を問題とするなら、2月の衆院選で自民党が3分の1程度の得票で3分の2もの議席を得たような多くの死票を出す不平等極まりない小選挙区制度をやめ、全国一律の完全比例制にすべきである。そして立候補のための高額の供託金制度や、国民の税金から議員数に応じて政党交付金を配布する制度や企業からの献金なども即刻廃止・禁止すべきである。こうした改革をさしおいて比例区議員の削減を「身を切る改革」として強行しようとするのは、国民を愚弄することである。 ◇皇室典範改定法案皇室典範改定は、自民党の今国会の「最優先」の課題である。衆参両院の与野党の代表者を集めた会議では、皇位継承の在り方には踏み込まず「皇族数の確保する方策」だけを決めるはずだった。しかし政府提案の法案には、会議で話し合われた「総意」にはなかった皇位継承の問題として養子の子が男性なら皇位継承資格を有するなど男系男子に傾斜した規定が盛り込まれた。 将来の女性・女系天皇を排除する内容であり、与野党代表者会議での女天皇賛成の意見を無視して、男系天皇を主張する自民党の意見を「総意」であるかに偽り、法案化したのである。自民党にとって「男系男子」による天皇継承は初めから結論ありきであった。 2月の奇襲解散、そして皇室典範改定法案作りの「だまし討ち」的国会運営は、高市の強権政治の表れである。 ◇強権高市政権を打倒しよう高市は国会で野党の質問に答えをはぐらかし、まともに答えようともせず、首相としての義務さえ果たそうとしていない。 また高市陣営による総裁選や衆院選での他候補の中傷動画の作成、配布について、言を左右して「知らない」と言っておきながら、事実である証拠を突きつけられても秘書の責任だ、秘書の陳述書を出すことで答弁としてもらいたいと言い逃れする。高市の後援会が行った暗号資産「サナエトークン」の違法販売問題についても同様だ。まさにトランプ並みの恥知らずで、独善ぶりである。 高市は衆院選で自民が圧勝したことをもって、数を頼みに反動立法をごり押ししようとしている。高市自民党が選挙で「圧勝」したといっても、不正な小選挙区制によって手に入れた「圧勝」にすぎず、有権者は高市のやることすべてを認めたわけではない。反動、強権政治の高市自民党政権打倒を目指して立ち上がろう。 (T) 【飛耳長目】 ★サッカーW杯の試合前のピッチに広がる巨大な日の丸と君が代斉唱の演出に、居心地の悪さから消音ボタンを押した★先の大戦の敗戦国イタリアは、王制廃止して王家の紋章が入った旗を、ドイツはナチスの鍵十字の旗を、それぞれシンプルな三色旗に変えた★日本人サポーターは、顔に日の丸を描いたり、日の丸を掲げる者もいたが、国際色豊かな会場の雰囲気に囲まれまだ許せるが、天皇の軍隊の軍旗である旭日旗を掲げる若者には、無知を全世界に曝け出すもので、案の定、韓国から非難の声が届いた★皇室典範が復古の息吹で蘇るのと歩調を合わせ、「国旗損壊処罰法案」が衆議院を通過した。処罰対象は取って付けたような「社会通念上国旗の用に供している」ものを「人を著しく不快にさせたり、嫌悪の感情を抱かせたりするような方法で公然と損壊、除去、汚損する行為」とする★「表現の自由」「思想・良心の自由」の権利侵害の恐れや、「不快な」方法、嫌悪の「感情」は客観的に規定できず、恣意的な運用の余地が大きい。維新・参政党は「成立を契機に愛国心も醸成される」と息巻くが、日本に住む30人に1人が外国人だ★少子高齢化も続き、外国籍の働く仲間が増える時代にあって、偏狭な愛国心、民族主義は時代錯誤で、博物館行きは必至だ。 (Y) 【2面トップ】高度成長幻想を振りまく矛盾だらけの「骨太方針」政府は6月30日、26年版「骨太方針」案(経済財政運営と改革の基本方針)を発表した。40年までの「中長期経済財政計画」を掲げ、「強い経済」を実現させると意気込む。その結果、40年度には実質成長率は1・8%、名目で3・5%を達成できると、算盤をはじく。 ◇370兆円を投資「骨太方針」原案(総33頁)が発表され、40年までの「財政・経済の試算」(総9頁)も出された。
高市は「骨太方針」の中で、安倍政権の超金融緩和策を好評価しつつも、賃金上昇と景気の好循環が生まれなかったのは、何よりも「成長戦略」に基づく官民一体となった大胆な投資が足りなかったからだと、暗に批判する。その上で、低迷する成長率を引上げるためには、「未来への投資不足の流れを断ち切る必要がある」と言い、官民が一体となって、「供給力強化に向けて、危機管理投資・成長投資を中核とする『成長戦略』を強力に推進」すると、トーンを上げる。 高市の「成長戦略」の柱は、AIや半導体や軍事など17の戦略分野、62の製品・技術である。 これらに対して、40年度までに官民あわせて370兆円超をつぎ込み、最終年度には1・8%の実質成長率と3・5%の名目成長率を実現するとふれ込む。さらに、「2040年度には、国内民間設備投資額は年間230兆円、GDPは1100兆円に迫る経済成長が実現できる」と、資本家が小躍りする文言までちりばめている。 そして、高市は最終的に高い技術力と供給力を持った日本資本主義を再興し、「新技術立国」の実現を図ると高らかに謳う。 ◇背水の陣を敷くバブル崩壊以降続く日本の経済力の低迷に危機感を丸出しにしているのが、高市である。何が何でも、国内投資を増やし、経済成長の好循環を築きたいと考えている。だから、他の政権と一緒に安倍をも「投資不足」だったと批判するのである。 しかし、高市が「投資不足」を批判するのは、これからやろうとしている高市の大胆な「成長戦略」が唯一の正しい方法であり、莫大なカネをバラ撒いても、何ら財政上の不安はないと宣伝したいからである。そうした高市の認識は歪んでおり、ハッタリに過ぎない。 高市の認識とは違って、資本主義は利潤獲得(労働の搾取)を推進動機にして進む社会であり、経済の拡大期には後先のことなど目に入らずに、せっせと生産に励む。70年代の生産の拡張期が過ぎ、80年代半ばになると、再び世界に輸出を広げ、生産が急拡大し、90年に過剰生産が顕在化した。 資本家陣営は国内投資どころか工場を縮小し、労働者を解雇し、海外生産委託を余儀なくされ、海外進出に力を入れて失地回復を図っていった。いわば「対外直接投資」を増やし、「資本輸出立国」になって行く。 その結果、「帝国主義」としての経済的基礎を築いた大企業は、国内での投資にそれ程魅力を感じなくなった。国内での売上高は90年まで急拡大したが、それ以降停滞し、10年代20年代に入っても芳しくなかったからだ(『プロメテウス』第61号18頁のグラフを参照)。 そんな過去のことや理屈はどうでもよく、何としても経済力・国力を高め、「新技術立国」を作りたいと考える高市は、多少長期金利が上がろうが、国債費(国家の毎年の借金払い額)が30兆円を越そうが、躊躇していられないと背水の陣を敷いている。 わざわざ、「物価安定の目標の下、金融緩和を推進」を謳った政府と日銀の「共同声明」(13年1月発表)を「骨太方針」に載せたことも、その現れである。なぜなら、金融緩和政策を続けることで輸出増進を望むのであり、同時に、巨額な投資を行うためには低金利の環境が必要だと考えるからである。それらが揃って、好循環のレールに日本経済を乗せられると算段している――だが、高市は円安で輸出が減り、貿易赤字に陥っている理由を知らない(本紙前号2面トップ記事参照)。 ◇つなぎ国債を発行ところが、高市の戦略は矛盾だらけだ。 40年までに必要とする「投資枠」(370兆円超)のカネが集まるという保証はどこにもなく、27年度予算に政府が計上すべき10兆円のカネもないからだ。 それゆえ、「投資枠」について高市は、一般会計から切り離して特別会計で管理し、「つなぎ国債」を発行して当面賄うと言う。しかし、「つなぎ」とは、将来、投資によって経済が成長し、税収が増えたら返すという意味であり、無責任極まりない。しかも、この「国債」を「債務残高対GDP比」等の計算対象から除外すると「骨太方針」に明記したのだ。 高市の「成長戦略」の中には、非生産的な軍事部門が大きな割合を占めており、経済が実質的に拡大成長する根拠に欠けている。結局、高市の「戦略」は上手く行かず、借金が今より貯まる恐れが高く、労働者や若者の肩により一層のしかかって来る! (W) 【2面サブ】労働者抑圧強化の「民族団結法」中華民族への帰属を打ち出し権力強化3月の中国全人代で成立し、7月から施行された「民族団結進歩促進法」は、中国国内のウイグル、チベット、モンゴルなどの少数民族の統制を強化するものだ。それは労働者人民を抑圧し「国家安全保障」を強める、習政権の支配体制強化の一環だ。 ◇民族団結進歩促進法とは民族団結進歩促進法は、国内の56ある民族について、「一律に平等で、いかなる差別、抑圧も禁止する」とするが、それは前置きにすぎない。制定の目的は「中華民族の偉大な復興」のため「中華民族の共同体意識」を強固にすることなのだ。そして民族の団結に反する言動を処罰できるとし、さらに海外の組織や個人に対しても「民族の団結を破壊し、分裂させようとする者は責任を追及する」としている。 海外にまで適用範囲を広げるのは2020年施行の「香港国家安全維持法」と同じである。中国・香港政府は、この法律を根拠に、香港の民主化運動を徹底的に弾圧し逼塞(ひっそく)させた。最近でもこの法律により、日本から香港に戻った留学生が日本でのネット投稿を問題視され、見せしめのように逮捕された。香港警察は英米などに逃れた元民主派議員の亡命後の言動も摘発の対象だとしている。 民族団結進歩促進法は、少数民族の言語を尊重するとしながらも、標準的な中国語を全面的に普及させ、小学校入学前から教育の中で使い、習得させるとしている。そして中華民族にふさわしい地名の命名を推奨し、標識や看板などは少数民族の文字でなく漢字を目立たせるなどとしている。 また宗教団体は、「宗教の中国化」を推し進めること、すなわち、宗教においても中華民族の共同体意識を宣伝しなければならないとしている。宗教活動を中国共産党の支配機構のなかに組み込み、チベットやウイグルなどの分離独立運動を抑えこもうとするのである。 中国が統一を図ろうとする台湾についても「台湾同胞の帰属意識を高め、ともに中国人であるという認識を強めるよう推進する」と言及している。 少数民族の分離独立の機運の高まりに対し、中国政府は厳しく取り締まり、2008年にチベットで、2009年に新疆ウイグルで大規模な労働者大衆の抗議活動が起きたが、政府は〝テロとの闘い〟として武装警察などを使って弾圧した。 この法律は、台湾や少数民族の分離独立の指向を抑え、中華民族として統合しようとするのだ。 ◇労働者人民への抑圧を強化する習政権5月の米中首脳会談では、両国は衝突を避け、適度な競争のもとで協力し、相違点を監理して安定を保つ「建設的な戦略的安定という新たな関係」をつくることに合意した。 これは中国が米国へのレアアース輸出制限を武器に、米中間の関税による貿易制限を一旦元に戻させ、米国は中国への半導体の輸出制限を緩和するなど、米中はお互いに自分の利益のために緊張を一時的に緩和したものだ。ただし台湾問題に関して、「処理を誤れば両国は衝突しうる」と習はトランプを威嚇した。 第1期トランプ時代に始まる米中覇権争いを契機に、習政権は2020年、第14次5カ年計画の説明で「科学技術自立自強」を強調し、中国製品の輸出重視の政策を「双循環戦略」に転換した。「国内循環」において「製造強国」を掲げ、核心技術の内製化を追求し、「戦略的新興産業」育成を目指すとともに、「国際循環」においては、サプライチェーンの強靱性強化と「一帯一路」の質の高い発展を目指す「双循環」である。 そして「総体国家安全観」が強調された(大西康男ほか編『「自立自強」の中国』ⅲ、4頁参照)。これは現行国家体制維持を最優先とするもので、「国家安全」は中国に対する対外的脅威のみならず、中国共産党一党支配体制に対する国内的脅威が排除されている状態を包含する。「国家安全委員会」が習政権の集権的意思決定の中核組織(同右48頁)になった。 この「総体国家安全観」を確保する手段としての関連法が、反スパイ法(14年)、国家安全法(15年)、「香港国家安全維持法」(20年)などであり、今回の「民族団結進歩促進法」である。 中国は、不動産バブルの崩壊などで経済が停滞し、都市部16~24歳の若者の失業率は23年で22%、26年3月では17%の数字が物語るように労働者の状況は深刻だ。多くの労働者は、非正規労働や不安定なギグワーカーに追いやられ、厳しい労働を強いられ、生活難に陥っている。習政権は、これらの問題に対して根本的な対策をとることはできず、「中華民族の共同体意識」を強固にすると言って、労働者人民への抑圧を強化するのだ。 習政権は、6月の全国党建設工作座談会で「習近平党建設思想」を打ち出し、党組織に思想学習を求めている。党員を「思想」で統合を図り、習の権威を高め、労働者の生活苦をもたらす国家資本主義による労働者搾取体制を維持・強化しようとするのだ。 しかし習体制に対しては、2022年には「独裁で国賊の習近平を排除せよ!」などと習体制批判の横断幕が掲げられ、「無言の抵抗」として白紙運動の大規模な抗議活動が行なわれた。労働者の反乱は避けられない。 中国の労働者の課題は、労働者の抑圧を強める習政権を打倒することであり、労働の解放に向けて階級的闘いを担う党を強固にして革命運動を発展させることである。 (佐) | |||||||||||