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●1523号 2026年5月24日 【一面トップ】 攻める習と黙するトランプ ――覇権争いの一断面、5・13米中会談 【一面サブ】 国債金利が急騰 ――3年後に国債費が社会保障費を上回る 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 「9条守れ」では、反動派と闘えない ――共産党の無力な「平和憲法」擁護論 【二面サブ】 全人代・権力強化で矛盾を糊塗 ――中国労働者の解放は習政権打倒の闘いの中に! ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】攻める習と黙するトランプ覇権争いの一断面、5・13米中会談米中首脳会談が行われ、習から台湾問題で厳しい警告が出された。新たに米中の「建設的戦略的安定関係」が唱えられ、習が「中華民族の偉大な復興」と「MAGA」は矛盾しないと言えば、トランプは「米中関係は世界で最も重要な2国間関係」と応じた。米中は対決と相互依存の中で覇権を争っている。 ◇武器輸出で警告する習と取引で応じる(?)トランプ米中会談が行われた。中国はトランプを最上級の国賓待遇で処遇し、到着時に迎えた中国政府の担当も前回のトランプ訪中よりも格上の役職者と報じた。歓迎式典の場でトランプは、自らの願望を冒頭で発言した。 「我々の代表団には、世界一の面々がそろっている。……貿易、ビジネスをすることを楽しみにしている」と、経済関係の強化・拡大を強調した。だがトランプは、中国との大規模な取引と引き換えに、イランとの膠着した状況の打開に習が協力してくれるだろうと密かな願望を持っていたのではないだろうか。 しかし取引は、ボーイング200機購入(事前には500機を想定)、米国産農産物も米国産原油やLNGの輸入も事前の想定以下で、11月の中間選挙を意識した大規模な取引は全く話題に上らず、トランプの目論見はことごとく外れた。 米中会談では、習は台湾問題に、次のような厳しい警告を出した。「適切に処理できなければ両国は対立し、さらには衝突し、中米関係全体を極めて危険な境地に追い込むことになる」、「『台湾独立』と台湾海峡の平和は、水と火のように相いれない……台湾海峡の平和と安定を守ることは、米中両国の最も広く共有できる利益だ。アメリカ側は台湾問題を扱うにあたり、格別に慎重でなければならない」。 前回のトランプ訪中(17年)時には習は「台湾は中国の核心的利益であり、いかなる形の台湾独立も容認しない」と発言した。今回は公然と、台湾問題の対応いかんでは米中は対立し衝突すると述べた。「台湾海峡の平和と安定を守ることは」「米中の利益だ」と、強い発言を行い、トランプに「米国は台湾を防衛するのか」、「台湾への武器売却を続けるのか」と迫ったという。 習は「米中は〝トゥキディデスの罠〟に陥る必要はない。互いに尊重し、誤判断を避ければ、衝突は回避できる」と述べ、新興の大国と既存の覇権国が対立することなく共存できるかの幻想を振りまいた。それは〝適切に処理できなければ〟衝突するという脅しであり、自らの覇権主義を開き直った物言いである。覇権争いの根源である資本の支配こそ克服されなければならないのである。 会談後の台湾問題についての質問に、トランプが無言を貫いたことが、〝事の重大さ〟を意味している。習は、米国の台湾に関する公式見解、「一つの中国」、「台湾関係法」「六つの保証」(これらは主に、台湾への武器供与を法律で義務付け、武器売却で中国と事前協議をしない等)を見直せと言っているのだ。 武器売却についてトランプは、「するかもしれないし、しないかもしれない」と曖昧な発言を行い、習との取引に武器売却を利用しようとしている。トランプは「現実問題として、中国は非常に強力で巨大な国だ。台湾は非常に小さな国だ」と、習と売却で交渉することに問題がないかの発言をしている。しかし、まだ米国議会では未承認であり、売却への強い警告を発した習との全面的な対立も覚悟しなければ、武器売却の決断は難しいだろう。売却決定は習ではなく、トランプ自身を窮地に追い込むことになる。 ◇「建設的戦略的安定関係」で牽制する習習は、「世界は岐路に立っている。グローバルな課題に取り組み、安定をもたらせるのか、我々大国の指導者が答えを出さなければならない」と述べた。トランプに対して、新しい概念「建設的戦略的安定関係」を提起し、それを目指すことで一致したと伝えられた。「建設的戦略的安定関係」を習は「協力を主とする積極的な安定」と説明。すなわち、相互関税のような一方的な関税や法規制、制度変更やWTOなど国際ルール無視などの、自国第一主義の勝手な行動を米中の間ではするなということである。それは単に米中間の問題ではなく、中国が世界で覇権を確立するうえで、中国主導のもとに、安定した国際関係を確立することが必要だからである。 しかし米国は認めることはできないだろう。トランプの登場で、米国に対する不信と不満は〝同盟国〟も含めて世界中を覆っている。習体制の中国は、軍事力の行使で他国に屈服を強いることは控えつつ、自由貿易・経済協力などを通じて存在感、影響力を高めている。 発展途上国にとって中国との経済関係強化は、貿易では対中赤字の拡大、中国企業の進出で国内産業は衰退。鉱物資源の簒奪による環境破壊をもたらし、中国に対する反発を高めている。中国経済の停滞や軍部人事の相次ぐ粛清など、習体制も大きな困難を抱えるなかの米中会談であった。 ◇似た者同士のトランプと習近平トランプは、〝偉大なアメリカの復活〟を掲げて昨年1月に第二期トランプ政権を発足させた。4月には、トランプ政治を象徴する相互関税で中国に対して最高145%の関税を課した。習も中国を狙い撃ちした関税に報復関税で応え、貿易戦争が勃発したが、習のレアアース禁輸でトランプは矛を収めた。相互関税は最高裁によって違憲判決が下された。各国は関税引き下げを条件に対米資本投資を約束させられ、ルールや約束を反故にする自国第一主義のポピュリズム政治に世界は右往左往させられた。 1月にベネズエラ侵攻を行い3月30日にはネタニヤフと共にイランに対する軍事攻撃を開始したが、イランのホルムズ海峡封鎖を招き事態は混とんとしている――怖気づくと止めるトランプへの揶揄は「TACO」から「NACHO」(ホルムズ海峡が開く見込みはゼロ)に変わった――訪中から帰国後トランプは、〝イランの橋と発電所は2日で破壊できる〟とイランに対する脅迫と軍事攻撃の再開を叫び始めた。 トランプの支持率はイラン攻撃を受けさらに低迷し、ガソリン価格上昇はそれに追い打ちをかけている。トランプのイラン攻撃は、NATO加盟国の決定的な不信を生み出し、「自由主義陣営」のリーダーとしての〝矜恃〟を感じ取ることはできない。一方で、米国を上回ると〝豪語〟された中国経済は停滞から脱していない。 20年に米国の73・9%までに拡大した中国のGDPは25年には64・1%に後退。成長率も10年の10・6%が25年には5・0%(?)と停滞を認めざるを得ない。 今回の米中会談で中国が取り上げた、〝米、外資の事業環境の改善〟については「外資系への政策の改善、整備に努め安心して将来を計画できるように」すると発表。米中対立や先富論、共同富裕論の混乱などで停滞する中国から撤退した外資は、24年1722億ドルと過去最高であり、米企業の対中投資意欲も24年80%が25年には48%に急落し、上海株式市場からの外国人の資金流出は650億ドルを記録した。アップル、エヌビディアの部品供給網は、中国からASEANにシフトしている。 米中は台湾問題では厳しく対立するが、中国は経済的には関係を断ち切ることはできない。これは米国も同様である。 会談の〝意義〟は、双方が不安定な国内基盤を対外的な強硬姿勢で覆い隠し、自国の労働者を瞞着することにあった。 (古) 【1面サブ】国債金利が急騰3年後に国債費が社会保障費を上回る国債金利が急騰している。まるで、国債の本性が暴露され国債への不信が高まっているかだ。そこで、まず、最近の国債金利上昇の動きを追い、次に、国債は資本ではなく国家の「債務証書」に過ぎないことを見ていく。最後に、国家財政への深刻な影響についても簡単に触れる。 ◇国債金利が急騰22年以降、国債の金利は上昇の一途だ。 最近発行された10年物国債の「表面利率」を見ても、25年10~12月期が年1・7%、今年1~3月期が2・1%、4~6月期が年2・4%だ。しかも、政府から売り出されたばかりの10年物が5月の国債市場で一時2・7%の利回りを付けた。実に97年5月以来、29年ぶりの高水準になった。 このように、新規国債の「表面利率」が市場の実勢に合せて激しく上昇している。高市政権が国債残高を名目GDPで割った比率で表し、必至に、政府の国債残高は少ないと誤魔化しても、沈静化しない。 一連の国債金利の上昇を見ると、投資家が国家財政に対する不安や物価上昇率にも満たない金利に嫌気がさし、国債売りを浴びせているかである。だが、その背後で国債の本質が暴露されている。 ◇純粋な架空資本国債市場で売買される国債は、国家の債務証書であり、貨幣資本ではない。国債を買った人には、利子が付くので貨幣を増殖する資本だと見られるが、それは外観だけだ。 国債で集めたカネが国家の財政支出を受け、民間で生産的投資に使われ、利益が上がったとしても、国家の収益が直接増えるわけではなく、国家にとっては国債は返済すべき借金のままである。 そのカネは直ぐに消失してしまうが、他方、国債の償還期限は5年から30年以上と長く続き、その間、国債購入者へ利子払いが継続する。その意味で、毎年発行される国債は〝過去の政府支出〟に対する債務証書であり続ける。 結局、国債元金と利子はいずれ税金で穴埋めされるのであり、労働者にとって国債は〝地獄の資本〟になる。なぜなら、税金は労働者の労働が源泉であり、この税金によって国債発行が保証され、その後、今度は国債の償還(満期日に払い戻す)と利子払いのために、税負担が労働者の肩に重くのし掛かるからだ――企業法人税も労働者が生みだした剰余価値から分割されているに過ぎない。 国債は、これを購入した投資家が国債の利子を税金から手にする限りで、また、第3者に売却して利ざやを稼ぐ限りで、資本の外観を有している。だが、国債金利上昇や発行額増加が増税に転換され始めるや、また、国家財政への信用が喪失するや、この債務証書は本来の資本ではなく、「マイナス資本」であることが一気に暴露される。 国債=債務証書が利子を生む資本の外観を持って運動することは、明らかに限界があり、国家の財政(日銀財務を含めた)悪化に敏感に反応し、いつでも手放されるのである。 ◇予算は危機的に26年度政府予算を見ると、「国債費」は31・3兆円であり、歳出予算の26%である。だが、今のように長期国債の金利上昇が続き、10年債の想定金利が今後3年間で3・6%まで上昇した場合、29年度の「国債費」は現在より10兆円多い41・3兆円となり、予算の3割に達する。しかも、「社会保障費」(41兆円)を上回る異常事態になる。 高市政権は、帝国主義的野心のためにGDP比2%の軍事費を越えて、さらに引上げるつもりだ。そのために国債発行や増税に突き進もうとしている。こんな反動的な政権は、一刻も早く打倒しなければならない。 (W) 【飛耳長目】 ★2019年、中国武漢の市場で最初のコロナウイルス感染が確認され、それは瞬く間に地球を覆った。コロナウイルスは、コウモリに由来するが、武漢では中間宿主の小動物(タヌキ、ネズミ等)を通してヒトへと感染した。当初、中国政府はそれをひた隠しにして、初期対応を誤った。日本では、横浜港に到着したクルーズ船の感染死から始まった★結局、世界の感染者は3億2千万人以上に及び、死者は552万人(日本は14万人)という、今世紀最大のパンデミックとなった。そして今、新たなウイルス、ハンタウイルスが注目される★このウイルスは、ネズミ等のげっ歯類がもち、噛まれたり、排泄物に触れたり、それを含んだホコリを吸引すると、肺疾患や腎臓出血等をもたらす。基本ヒトからヒトへの感染はないとされるが、アルゼンチン由来の「アンデス株」は唯一感染する。致死率は30~40%と高い。去る8年前には、一人の感染者が誕生日パーティーや葬儀に参加し、34名が感染、うち11名が死亡した★そのアルゼンチンから出港したクルーズ船内で3人が死亡、5名が治療を受ける(5・12現在)。この船には28ヶ国150人が乗り、野生動物の生息地を巡った。資本主義が作り出した世界市場をウイルスもまた素早い速さで巡るのだ。 (義) 【2面トップ】「9条守れ」では、反動派と闘えない共産党の無力な「平和憲法」擁護論共産党は4月11日、志位議長を講師とした民青同盟主催の学習会、「Q&A 戦争への道をどう止め、平和をどうつくるか」を開き、闘いを訴えている(「赤旗」4・19、20)。しかし、それは労働者の闘いを資本との闘いから切り離し、「平和」憲法擁護に切り縮め、闘いを歪めるものである。 ◇憲法は「国家権力を縛るルール」かまず志位は憲法とは、「国民の権利や自由を守るために、国家権力を縛るルール」であり、ルールを守る義務があるのは首相、大臣はじめ国家の役人らであって「国民は入っていない」、だから、政府が国民の多数が賛成していない9条改憲を言い出すのはおかしいと、高市を批判している。 この志位の憲法観は、プチブル平和主義の法律学者や政治学者と全く同じであり、非科学的である。 憲法は歴史的、経済的、社会的なものであり、その時々の経済的、社会的状況を反映したものであって、国民の自由や権利を守るために「国家権力を縛るルール」ではない。 「国家権力を縛るルール」と言えるのは、1215年、イングランドの強権的ジョン王と貴族、教会との間に結ばれた大憲章(マグナ・カルタ)──王による課税の制限、教会の自由な活動、商人の貿易の自由を謳った──であって、「法による支配」である資本主義における憲法とは異なる。 資本主義における憲法は資本主義の社会秩序の原則を表しており、すべての法律は憲法に基づいている。マルクスは資本主義における「天賦の人権」=「自由、平等、所有」について言う。 「ここで(労働力の売買過程のこと)支配しているのは、ただ自由、平等、そしてベンサム(功利主義――筆者)である。自由! なぜならば彼らは、自由な、法的に対等な人として契約する。契約は、彼らの意思がそれにおいて一つの共通な法的な表現を与えられる最終的結果である。平等! なぜならば彼らはただ商品所有者として互いに関係しあい、等価物と等価物とを交換するのだから。所有! なぜならどちらもただ自分のものを処分するだけだから。ベンサム! なぜならば、両者のどちらにとっても、かかわるところはただ自分のことだけだから。彼らを一緒にして一つの関係に置くただ一つの力は、彼らは自利の、彼らの個別的利益の、彼らの私的利害の力だけである。そしてこのように各人がただ自分のことだけを考え、だれも他人のことを考えないからこそ、みなが事物の予定調和の結果として、またはまったく抜け目のない摂理のおかげで、ただ彼らの相互の利益の、公益の、全体の利益の、事業を成し遂げるのである。(『資本論』第1巻、第2編、第4章、原189~90頁)。 現実には、労働力の使用を商品として切り売りし生活している労働者と、労働者を搾取する資本家とは平等ではない。また自由といっても、生産手段を持たない労働者にとって、自分の労働力を売らなくては生きていけないのであり、それは野垂れ死ぬ自由でもある。 しかし、資本主義における憲法は、搾取する者も搾取される者も、共に抽象的に自由で平等な「国民」とみなしているのである。憲法は国民が「権力を縛るルール」などいう志位の議論がいかに馬鹿げているかは、国民に納税の義務を課し、従わない場合は罰するとしていること見ても明らかである。 ◇9条の「世界的意義」についてのたわ言志位は憲法9条の戦争放棄及び一切の戦力保持、交戦権の禁止を挙げて、これは国連憲章にもないものであり、それは「戦争を二度と引き起こさせてはならないとの決意が込められている」と、憲法9条の「世界的意義」を強調する。 9条には、当時の軍国主義者が引き起こした戦争に対する大衆の反発が反映されたことは事実であろう。しかしそれ以上に、日本が軍国主義国家として復活し、米国らに二度と歯向かうことができないようにするという戦勝帝国主義国の意図による影響が強かった。 日本の支配階級=資本にとって、敗戦当時の課題は軍隊の再建よりも、経済の建設であった。1952年、日本が被占領から脱し独立した後も、憲法9条の改定は切実な問題とならなかった。米ソ東西冷戦の下で、日本を「反共の砦」としようとする米国の転換の下で、日本の支配階級は「専守防衛」のためと称し自衛隊をつくったが、軍事的強化よりも経済復興、発展を重視し、「平和国家」を看板に世界中に商品、資本輸出を拡大するなど経済大国にのし上がった。 ◇資本の支配と闘う労働者の闘いを志位は9条の果たした役割について、自衛隊は1954年設立以降「今日まで一人の外国人も殺していないし、一人の戦死者も出していない」、ベトナム戦争の時には自衛隊は派遣されなかったのは9条のおかげと、憲法擁護のための闘いの意義を強調する。 9条が自衛隊の海外派兵の「制約」となってきたのは事実である。しかし、9条は日本が最新の兵器で武装された世界有数の軍事強国となることを妨げなかったというべきだ。2000年代になると、14年には集団自衛権行使容認、15年には自衛隊の海外派遣、同盟国の後方支援、共同行動などを決めた「安保法制」、続いて22年には安保3文書での「基地攻撃」の容認、軍事予算はGDPの2%とする等々、これまで「平和国家」の証とされてきたものが次々に撤廃された。そして高市政権の下での、更なる軍備増強、9条改憲政策、スパイ防止法制定策動である。これは戦後日本の根本的転換である。 「平和国家」から「軍事強国」、強権政治への転換は、帝国主義国家への進化の反映である。海外に進出した企業は2万を超え、数百万の海外労働者を直接搾取し、多くの権益を持つ帝国主義国家となった。大資本及び自民党にとって、憲法も現状に合わせて変えられなくてはならないのだ。 この事実は、「平和憲法を守れ」という共産党やブルジョア的、小ブルジョア的平和主義の無力さ、破綻を明らかにした。 労働の搾取を土台とし、私的利益を追求する資本の支配とその退廃こそが、高市のような右翼反動政治を生み出した。反動的な9条改憲策動と闘うためには、資本の支配そのものに反対し、搾取や差別のない労働者の協働社会を目指す、労働者の国際主義に立った階級的闘いとその発展が求められている。 (T) 【2面サブ】全人代・権力強化で矛盾を糊塗中国労働者の解放は習政権打倒の闘いの中に!3月5日から12日に開催された中国全国人民代表大会(全人代)は、2026年の政府活動を決定し、26年から30年の経済・社会の政策方針である「第15次5カ年計画」が採択された。これらについて、開幕初日の李強首相による政府活動報告を中心に見てみよう。 ◇全人代活動報告今年の経済目標は、GDPの伸び率を4・5~5%と、これまでの目標を引き下げている。一方、今後5年間の主要目標を、2035年までに1人当たりGDPを20年比で倍増するとした。不動産不況で賃金未払いや倒産で生活難に陥っている労働者大衆に、その根本的な改善ではなく、1人当たりGDPの上昇で、何か生活向上がもたらされるかの幻想を与えるものだ。 経済政策としては、消費拡大のために内需主導を堅持、大規模市場の優位性発揮、文化、スポーツなどのサービス消費の質を向上、潜在需要を引き出し、ハイレベルの科学技術の自主開発を加速。産業イノベーション力全面的向上などである。 その中で民政は最重要項目と強調、少子高齢化や就職難の対策に注力するとアピール。中国の出生数は2025年に792万人、前年から17%の大幅減となっており、少子化に対する政権の危機感は強い。子育てや結婚をめぐり、「ポジティブな結婚観・成育観を提唱」、「産休・育休制度を充実」などとしているが、労働者大衆の生活困窮化を改善する具体策はないのだ。 高齢化は深刻な状況だ。ようやく始まりつつある介護保険制度を推し進め、要介護度の高い人向けには補助金を支給、高齢者向けの介護・福祉用品への支援、高齢者関連産業の育成を図るとした。「質の高い完全雇用を促す」、人工知能・AIを、「技術の発展に対応した就業・起業促進措置を充実させる」としたが、都市部16~24歳の若者の失業率は23年で22%、26年3月では17%の数字が物語るように依然深刻で、それを覆い隠すのだ。 1978年改革開放以降の外資導入による輸出主導の経済発展は、社会主義と偽る国家資本主義の下での労働者の強搾取によるものだ。米・EUからは国内製造業を弱体化させたと批判され、政権は内需主導を提起した。 「農民工の雇用安定に対する援助を強める」などと言うが、厳しく搾取する農民工への差別撤廃、戸籍制度の撤廃など、労働者としての根本的な要求を放置している。 国防では、中央軍事委員会主席責任制を全面的に深く貫徹するとした。定員7人の共産党中央軍事委員会の内、5人がすでに規律違反などで失脚している。主席責任制は、習が権力を集中させようとするものである。 香港・台湾に関しては「一国二制度」などの方針を貫徹し、「愛国者による香港統治」の原則を徹底し、「台湾独立」の分裂勢力に断固として打撃を与えるとした。しかし香港では「一国二制度」は有名無実。中国本土と香港の民主派の政治的自由を求める活動は、徹底的に弾圧が強化されている。台湾統合という習の執念は、香港統合や中国国内の少数民族抑圧と同様に、台湾との国家主義的統合を図ろうとするものだ。 外交では、覇権主義・強権政治に断固として反対し、国際的な公平・正義を守る、とする。これは、中国の南シナ海への帝国主義的進出や中国の利益、権益を守るための「一帯一路」など、中国自身の覇権主義・強権政治を誤魔化すものだ。 ◇不動産不況の実態と労働者の闘い不動産バブルの崩壊は中国社会に深刻な影響を及ぼしており、報告でも「不動産市場の安定に力を入れる」としている。 実質経済成長は、GDP前年比で、10年11%からコロナ禍発生の19年の6%まで徐々に下がり、23年から25年までは5%程度に下がった。不動産不況の影響だ。 不動産大手の中国恒大が21年、碧桂園が23年にデフォルトに陥り、万科企業も資金繰り難になるなど経営破綻が相次ぎ、中小零細企業の倒産が進行。資金繰りに窮して大規模な建設工事が中断し廃墟となる現場が増え、住宅在庫が積み上がり、建設工事や家具など幅広い関連産業に影響を及ぼし経済は不況に陥った。 中国では土地は基本的に国有であるが、地方政府はその使用権を業者に売ることで、大きな収入を得た。地方政府の歳入の3割はこの土地使用権代だ。地方政府は土地使用権を不動産大手に販売し、次々と住宅が建った。また投資会社「融資平台」を作り、銀行からの融資、債券発行などで資金を集め、インフラの開発を無秩序に進めた。 現在これらの融資が不良債権化、地方政府は財政難に陥っている。中国の政府、家計、非金融部門の全債務残高は、8900兆円(対GDP比302%)に及ぶ(25年9月末時点)。建設会社や地方政府で、解雇や賃金未払いが頻発、住宅購入者にはローンの返済が残る。労働者大衆の抗議が頻発している。 習政権は住宅在庫の買い取りなどを進めるが、「不動産市場は依然として調整局面にある」と認めるように、根本的具体策はなく行き詰まっている。大衆からの抗議の動きに対しては、携帯電話やSNSへの徹底的な監視による抑圧を強めている。中国労働者の解放への道は、国家資本主義体制の維持を図ろうと強権支配を強める習政権打倒の闘いの中にある。 (佐) | |||||||||||