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●1527号 2026年7月26日 【一面トップ】 神道原理主義者・高市! ――なぜ男系天皇一択なのか 【一面サブ】 南シナ海の日中覇権争い ――中国「9段線、管轄権」主張 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 AIロボの量産始まる ――労働者に及ぼす影響は? 【二面サブ】 急増する自社株買い ――株価重視で広がる株主優遇 ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】神道原理主義者・高市!なぜ男系天皇一択なのか7月17日、わずか3時間ほどの審議時間で皇室典範改定法が採択された。高市は腹黒き意図が明らかになることを恐れたからである。 ◇数千万の犠牲者を生み出した天皇制1889年の「大日本国憲法」と同時に公布された旧皇室典範は第一条で皇位継承は男系男子に限定され、皇族の身分・婚姻・養子・皇位継承順位などが詳細に規定された。天皇は連綿と続く男系男子によって継承され、「万世一系」の日本国の〝家長〟と位置付けられた。こうして、天皇を頂点・中心とする国家神道・国体論の法的基盤が作られ、天皇は〝神聖不可侵〟の〝現人神〟に祭り上げられた。日本は、国家の主導の下で急速に資本主義的発展をとげたが、その発展は朝鮮半島や満州国などに対する資本投資・利権を確保するために、天皇を〝統帥権者〟とする軍部の無謀な戦争政策と一体の帝国主義的侵略であった。 国内においても、忠君愛国教育の核である教育勅語や、天皇を神格化する儀式のために権威を教育に持ち込み、奉安殿に祭られた天皇皇后の「御真影」に拝礼を義務付けた。国民には「報国奉仕」を強いて、治安維持法、特高警察で弾圧した。大政翼賛化した新聞報道は、国内隅々まで広がる〝草の根のファシズム〟(吉見義明より借用)を醸成した。 絶対的権威を持つ天皇と軍部は、お互いに依存、利用しながら、日本の労働者大衆を抑圧支配し韓国併合、傀儡国家満州国の建国、中国大陸、東南アジアへの侵略を行い数千万人の犠牲者を生み出し、日本人も民間人を含め三百万人が犠牲になった。 ◇戦犯を免れ生き延びた天皇裕仁1945年8月15日、日本はポツダム宣言を受け入れ連合国に無条件降伏した。皇居前広場で涙した国民よりも、天皇軍部の神道国家の支配から解き放たれた国民は、敗北に明るい未来を見出した。 厚木飛行場に30日、マッカーサー連合国司令官が飛行機から〝降り立ち〟占領政策が開始され、一か月後の9月27日に天皇裕仁は、米大使館を訪問し1回目の会見を行った。 46年1月1日、天皇裕仁は年頭詔書でGHQの意向に沿い「神格化」を〝否定〟する「人間宣言」を行った。詔書で、〝国民と天皇の関係は信頼と敬意の人間関係に基づくもの〟で天皇と臣民の関係ではない、と偽った。 46年11月9日から天皇の「行幸」が開始され、54年7月31日までに13回、全国を述べ90日間かけて回り、GHQの占領政策に協力した。 延べ11回におよぶマッカーサーとの会見は、かつての〝敵〟に媚びて自己保身を図り、米国の帝国主義的戦略に協力することでしかなかった。 ◇妥協なき神道原理主義者・高市早苗47年5月3日、新憲法が施行され、憲法第一条で天皇は「日本国の象徴」と謳われ、皇室制度も存続した。新憲法と同時に設定された新皇室典範も、皇位継承は男系男子に限定されたが、男系男子が枯渇し「愛子天皇」に対する期待の高まりに、126代にわたって継続してきた男系男子の皇統が絶たれる危機感を持った高市が、だまし討ち的な皇室典範改定採択を強行したのである。 女性天皇容認の世論が高まる中で高市は一貫して、天皇は「 万世一系」の男系男子で126代繋いできたと、女性天皇を歯牙にもかけてこなかった。高市らが信奉する天皇観は、国家神道そのものである。すなわち天皇を中心とする国家観に基づく、歴史・政治・道徳・教育・宗教・民族的一体性を高市らは、日本民族の優れた資質と伝統によって守られてきたと考え、その結節軸を連綿と続く男系天皇に求めている。高市は「126代続いた男系男子の皇統こそが天皇の正統性の源」「一度女性にすると戻れなくなる」と主張し、天皇の歴史を神秘化し、日本民族一体化の思想的道具として利用しようとしている。 高市政権は、前政権の岸田政権(石破政権は予算を組んでいない)と比較し皇室費を9・9%増(宮廷費は11%増)と大幅に増額させた(前政権は1%増)。天皇主権の神道国家日本においては、天皇家の皇室祭祀は国家の重要な行事であり国家神道の重要な一角を占める。高市の宮廷費大幅増額は、神道政治への傾注を明らかにしている。 ◇百年前の話をする高市の黒い腹の中今回の皇室典範改定論議は、時代が百年以上も前にタイムスリップした感覚に囚われるような、尋常ではない議論で採択された、その目的は何か。 現在の憲法で天皇は、象徴的な存在で政治的な権限は有していない。日本の帝国主義的な海外進出が拡大する中で、自衛隊も軍事的な役割を拡大し軍事的存在感を高めてきた。それを背景に、来年から国内外で自衛隊幹部階級に旧軍の階級呼称が復活する。 しかし、憲法上の制約がある自衛隊としての存在が、それらに十分な対応が出来ないと、高市は9条2項廃止の憲法改定を急ぐ。最終的には、自民党の党是である新憲法をも目論んでいるのだろう。そこには、「国防軍」(軍隊)保有、「天皇の元首」化が謳われている。軍隊の最高指揮官は、各国とも「国家元首」が担うとされる。 高市は典範改定で、養子によって男系男子の皇統継続の確実性を高めた。自民党の憲法草案前文には、日本の伝統・歴史・文化、家族、共同体を強調する。日本を一つの〝家族〟に置き換え、天皇を〝家長〟に見立てる戦前の神道国家思想が色濃く投影されている。 私的所有は、平等な人間を経済力で支配階級と被支配階級に分け、拡大再生産する。高市らは日本の伝統・文化や共同体、家族の〝原風景〟を美化し、それを天皇と結びつける。それは、現実に進む格差の拡大とその固定化がもたらす、殺伐とした社会を生み出す根源である、資本主義社会の矛盾を覆い隠すためである。 戦前の日本は、経済的困難を海外への侵略で打開しようと、国民を天皇の下に統合し戦争に動員した。現在、天皇のバカ話が登場する背景も日本の置かれている困難な状況にある。労働者の回答は、資本の支配の打倒である。 (古) 【1面サブ】南シナ海の日中覇権争い中国「9段線、管轄権」主張南シナ海・東シナ海では、海域周辺諸国と帝国主義的拡張を続ける日米中の領有権争いが頻発し、軍事的緊張が高まっている。この状態に対し、労働者はどう対応すべきかを考える。 ◇日米中覇権争いとASEAN諸国中国が南シナ海のほぼ全域に管轄権を有するとする「9段線」の主張は、これに反発するフィリピンが2013年、国際仲裁裁判所に国連海洋法条約に違反し無効であるとし提訴し、16年に仲裁裁判所は中国の主張は無効だとした。しかし、中国はこの判決を拒否した。 判決から10年となった12日、フィリピンや日米などは共同声明を出し、中国の主張には法的根拠がないと、法の支配の重要性を訴えた。 中国の「9段線」を巡って岩礁の領有権を争うのは、この海域では中国、フィリピンのほか、台湾、ベトナム、マレーシア、ブルネイである。これらの国々は、南シナ海の岩礁の領有に関しては中国と争うが、台湾は中国からの独立問題、他の国も中国とは経済関係などの利害が関わる問題があり、また、自国が領有を主張する岩礁の軍事基地化を進めている事情があり、フィリピン以外は今回の共同声明には参加していない。 フィリピンは14年に比米防衛協力強化協定(EDCA)に調印し、22年にマルコス大統領に代わると、フィリピンは米国との軍事協力関係を強めた。23年にはEDCAを改定し、米軍が利用可能な基地を5カ所から9カ所に増やす措置を取った。中国はフィリピンへの対抗措置を強め、南沙諸島での抗争が頻発するようになる。 フィリピン軍は米軍との共同訓練などで、中国との対抗を強めている。最近では、5月の多国間共同訓練で米陸軍がトマホーク対地攻撃ミサイルを発射した。日本の自衛隊がこれに参加している。6月の共同訓練でも日本は参加し、フィリピン海で潜水艦から魚雷を発射し艦船を撃沈する訓練を行なった。中国の軍事的海外進出に対して、フィリピンは米国と共に日本との、軍事的協力関係を強めている。 日本はまた、米軍との共同訓練を6月~7月に相次いで実施した。これは中国との有事を念頭に置いたもので、沖縄など南西諸島を中心に、全国の自衛隊基地・米軍基地を取り込んだ共同訓練だ。鹿児島県の自衛隊鹿屋基地には、米軍ミサイルシステム「タイフォン」と高機動ロケットシステム「ハイマース」を展開した。 中国は今月5日に核弾道が搭載可能な潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を南太平洋に向け発射。これは日米比の軍事訓練に対抗したものだ。日米中の帝国主義国家間の自国利益中心の覇権争いは軍拡競争となり、ASEAN諸国、太平洋島嶼諸国、オーストラリアなど、南シナ海・東シナ海等周辺諸国も、この抗争に加わるようになる。 ◇自国利益が正当化される資本主義と労働者の課題現代は独立した民族国家を中心になり立っているブルジョア社会だ。国際的機関による取り決めも、米中のように力のある国は自国の利益を主張しそれが通る社会である。それは、今回の国際仲裁裁定を巡る問題でも明らかになっている。 現代は私有財産制の下で私的生産が行なわれ、資本が支配し労働者を搾取し剰余価値を得ることを社会の推進力とする社会、それ故国家は自国の利益を主張し、戦争に訴えても自国の利益を得ようとする。行き詰まったブルジョア社会の姿だ。 自国の利益が正当化される資本主義社会であるかぎり戦争はなくならない。こんな国際社会に平和の幻想を託するのは、我々労働者の立場ではない。 労働者の課題は、世界の労働者が連帯し、社会主義共同体を目指し、資本との階級的闘いを構築することだ。 (佐) 【飛耳長目】 ★「赤い円は昇る太陽を、白地は清浄と平和を象徴する」と言われる「日の丸」だが、戦前は軍国主義の象徴として、アジアへの侵略と言い尽くせない程多くの血を流させた。「日の丸」と天皇は、国民を戦争へと駆り出す統合支配の象徴であった。よって、戦後GHQは、「日の丸」を掲げることを禁じ、天皇を神から国民の象徴とした★近年の「日の丸」の起源は、江戸幕府が外国船との識別のために掲げさせ、明治政府が「太政官布告」で商船に掲げさせたが、あくまで船舶に限ったもので、国旗として制定したものではなかった。それが国旗となったのは「国家国旗法」(1999年)による★しかし今、その「日の丸」と天皇を高市や維新がもちだした。国旗損壊罪と改正皇室典範だ。前者は、教室の黒板に落書きした子供を教師が叱り罰を与える体のちゃちな内容で、後者はいかに男系天皇を未来永劫存続させるかの改正だ★そのうち、国民は祝日には国旗を掲げよ、天皇を国の元首とすると言い出すかも知れず、アジアへのさらなる権益拡大のために軍艦や戦闘機が「日の丸」をなびかせて東奔西走するやも知れぬ★「日の丸」も「君が代」も天皇も支配階級にとっては国民支配の道具として必要だが、労働者階級にとってはそれらを〝全て廃止〟しても何ら困ることはない。 (義) 【2面トップ】AIロボの量産始まる労働者に及ぼす影響は?AI導入競争が過熱し始めた。企業はこぞって、AIを利用して生産性を上げ、またコストダウンを図って、利潤を上げようと夢中になっている。この競争に乗り遅れるなら、敗者になってしまうからだ。 ◇AIロボを量産三菱自動車は、二足型や四足型のAIロボットを開発・製造するベンチャー企業と提携し、人型ロボットを製造する量産ラインを立ち上げ、27年に生産を開始する計画を発表した。この量産ラインで、月1千台の人型ロボットを作るという。月1千台なら年1万2千台であり、5年継続するだけで、6万台にもなる。 三菱自の経営者は、「AIに熟練工のノウハウを学習させ、技術の継承を繋げる」と語っているが、この計画は、大量のAI人型ロボットを量産し、工場に導入するつもりだから、単に「技術の継承」では済まない。 三菱自は、ゆくゆく工場の労働者を減らし、不平不満を言わずに長時間動くロボットに代替えしようと考えている。さらに、自社製品の目玉として、このロボットを販売しようとしている。 ◇ロボット導入による労働者の解雇しかし、自動車工場の製造現場では、溶接や塗装はもちろん、車台など各部材の成型を始め、精密さが必要なエンジン部の組立も自動化されている。残っている人手作業は、車台にエンジンや電装品や車輪などを登載すること及び最終検査などである。ここに「熟練工のノウハウ」を身につけたロボットを投入するなら、資本家は労働者が余剰になったと判断する。 もちろん、ロボットへの学習指導・改善や保守・管理を行う労働者は必要になるが、その労働者数は投入ロボット数より、相当に少なくされるだろう。なぜなら、AI付であろうとロボットは生産手段であり、この導入は追加資本となるからだ。 この追加資本(ロボット導入)によってライン速度が上がり、「労働の生産力」が上がるなら、自動車一台当りの価値は下がり、生産数も増える。だが、剰余価値は増えない。「労働の生産力」が労働者の生活手段にまで波及し労働力の価値(賃金)が下がるなら、相対的剰余価値は増大する。それが難しいなら、生産拡大に移れない現在、三菱自は労働力を削減し、残った労働者に加重労働を押し付けて絶対的剰余価値を増やそうとする。 ◇利潤の源泉が減るもし、ロボット導入費を早く清算しようとして、資本家が労働者を大量に駆逐するなら、柔軟な労働力としての可変資本を失うことになる。 既に、剰余価値率が100%以上である製造業では、資本家は労働力の価値(賃金)よりも同等以上の剰余労働を手にしている。政府統計の「労働分配率」を見ると、25年平均は50%であり、7~9月期は35・5%であった。この「分配率」の計算式を変形し整理すると、剰余価値率は年平均で150%程、7~9月期では200%程になる。 1労働日(8時間)のうち、賃金に相当する労働力の価値は4時間以下であり、資本家が無償で手にする剰余労働は4時間以上である。 だから、これらの剰余価値率を見ても明かなように、ロボットを導入して労働者を駆逐するなら剰余労働を奪取する機会は無くなる。所詮ロボットは可変資本ではない。 例えば、100の価値の生産手段(不変資本)に、10の価値の労働力(可変資本)を使うことによって、労働過程で10の剰余価値を生み出していたとしよう。この120の価値の商品を市場で販売し、不変資本と可変資本を回収し、かつ、剰余価値を実現していたのに、可変資本の代わりに10の価値のロボット(不変資本)を使っても、商品価値は110であり剰余価値は含まれていない。 資本家は、これでは儲からないことに気付き、以前と同様に、120で販売しようとする。つまり、資本家は独占的商人資本のように、仕入れ価値の110より高い価格で売って利得を得ようとするなら、まして、全ての資本家がそうするなら、最終消費者である労働者が彼らの利得を全て負担することになる。 だが、大量の労働者群を生産から排除しながら利得を得ることは不可能であり過剰生産が長期に発生する。まして、政府と資本家は労働者への「ベーシックインカム」の支給も出来ない。 ◇労働の解放を!去る14日、ソフトバンクの孫正義は都内の講演で、40年に「AIエージェント」は世界で100兆個、AI人型ロボットは10億個になり、労働が根底から変わると話した。 だが、孫ら資本家階級は労働者の雇用を守りながら、高機能のロボットを大量に導入することができるのか? これらのAI機械を大量導入しても、原料や工作機械などの生産手段の価値を引下げ、かつ、生活手段の価値を下げなければ価値増殖に繋がらない。 その他の手段は、理論的には必要な労働者数を増やすか、労働者に「労働の強度」を強いることだが、資本家は、拡大再生産が継続できなければ、機械化による生産費の増大を圧縮するために、常に労働者を削減する。 しかし、AI機械の大量利用により製造業全体で労働者を駆逐していくなら剰余価値を獲得できないという矛盾に陥り、孫らは行き詰まる。 この資本主義に内在する矛盾は、共同労働社会に止揚することによってのみ解決される。 この社会の成員が生産と生産手段を占有し(社会的共有化)、私的所有に基づく私的労働と搾取労働を無くすなら、全ての労働は直接に社会的労働に変わり、かつ、社会全体の「生産と消費手段の分配法則」を活用することが可能になる。 そして、人型ロボットを炎天下の危険な作業に利用するなら、各成員にとっても社会にとっても大幅に負担が軽減される。さらには、「労働の生産力」が上がるなら、根底から労働時間は短縮される。つまり次のように総括できる。 「人々は階級社会による強制労働だけでなく、生活の必要に縛られる労働からも徐々に解放され、自己の能力をあらゆる方向に、全面的に発達させることができるようになり、社会は『能力に応じて働き、必要に応じて受け取る』という高い段階の共産主義へと接近していく」(労働の解放をめざす労働者党綱領)。 労働者よ、若者よ、労働の解放を目指して共に闘おう! (W) 【2面サブ】急増する自社株買い株価重視で広がる株主優遇近年、株式市場ではいわゆる「物言う株主」(アクティビスト)と言われる活動が活発化している。彼らは、上場株式会社の株式を5%といったまとまった株式を保有し、株主の立場から企業価値を向上させる施策を実行するように経営者に働きかけていると言う。その一つが株価つり上げのための「自社株買い」である。 ◇自社株買いとは何か自社株買いというのは、企業が発行した自社の株式を株主から買い戻すことである。資本の増加・維持を目指す企業にとって、株式数と資本を減少させるような自社株買いは本来の目的に反することであるし、また株価を自己都合で操作することは信用を失いかねない。このためかつてヨーロッパでは自社株買いは禁止され、日本もこれに倣ってきた。 一方、米国では自社株買いを規制する法律はなく、1980年代以降新自由主義的な規制緩和が進む中で、自社株買いが盛んになった。こうしたなか日本も2005年には証券市場「活性化」のためと称して自社株買いは全面的に解禁となった。 ◇自社株買いは何をもたらすのか自社株買いは、企業が自社株の保有者から株を買い戻すことになるから、株の売り手にとっては企業から分配を受けたことと同じになる。米国では株主への配当ではなく、自社株の買い取りという形で利益の分配を行っている企業があるという。日本においても外国の投資家が増加する中で、配当だけではなく自社株買いを求める要求が強くなってきた。 また自社株買いは、企業にとっては自己資産が減ることを意味する。自己資本利益率(ROE)を算出する際に分母となる自己資本が減るため、自社株買いはROEを高め、株価を上昇させる効果を持つ。この結果、企業は自社株買いによって、株価を釣り上げることが出来る。いったん増やすと減らしにくい株式配当と異なり、機動的に手元資本を減らし、株価を釣り上げ、株主に利益を与える手段として自社株買い取りが普及してきた。 こうして自社株買いによって高められた自社株は、経営者への報酬や企業買収(M&A)の際の株式交換に使う資金としても広く利用されてきた。 ◇拡大する自社株買い企業にとって都合の良い効果をもつ自株買いは、最近では急増している。2026年1~5月に設定した全上場企業の自社株取得枠は、この期間として過去最高の前年同期比34%増の16・2兆円だった。前年1年間の17・7兆円に迫る勢いである。社数ベースでは前年同期比14%減の約620社だったが、金額が大きいソニーグループ(5000億円)、日立製作所(同)らの自社株買いが自社株枠を押し上げた。 ソニーは「戦略投資を実行しながら株主還元の余力ができた」と言う。日立では大型のM&Aはなく、好調な業績を反映し、株主還元を手厚くしたと説明している。 だが企業が自社株買による株主還元策をとる理由は、投資家による圧力がある。 野村証券の北岡智哉チーフ・エクイティ・ストラテジストは言う。「企業が保有できる現金預金が積み上がっており、手元資金に対する投資家からの圧力が高まっている」(日経、6・24)。 ダイキン工業は約3500億円の自社株を買い付けた。それは「物言う株主」の米エリオット・インベストメント・マネイジメントからの要求があったためという(同)。 2010年代には安倍政権による「日本再興戦略」として企業統治の強化が謳われ、15年には、東証が「株主の意見の尊重」「株価を意識した経営」との企業ガバナンスコード(統治規範)を発表した。こうした状況のもとで「物言う株主」の勢いが強くなってきたのである。彼らの主な要求は、株価つり上げのための自社株の買い入れであり、それは業績が好調な企業のみならず、芳しくない企業にも及んでいる。 ◇資本主義の頽廃の深化を暴露自社株買いなど株価つり上げによる利益の追求は、「物言う株主」の中心的な戦略の一つとなっている。 その典型的例として、1000億円規模の資金を運用し、米国の機関投資家が9割を占める投資ファンドであるストラテージックキャピタル(SC)を率いる丸木強による老舗アパレル会社ダイドーへの介入である。2024年6月、SCはダイドーの株主総会で6名の取締役選任を求める株主提案を行い、そのうち3名の取締役が選任された。その後7月、ダイドーは、これまで1株5円としていた年間配当を3年間100円に引き上げ、50億円程度の自社株買い取りも行うと発表した。その翌日、SCは所有している株式(32・2%)すべてを売却した。SCは増配も自社株買いも要求した事実はないと否定したが、配当増、自社株買いの発表で急騰した株の売却で大儲けしたのは事実だろう。 丸木は言う。「短期間にもうかったとして何がいけないのか。投資家にちゃんとリターンを返さないといけない」(朝日、11・25)。SCにとって利益を得れば、企業がつぶれようが、そこに働く労働者がどうなっても構わないのだ。 河野龍太郎は(BNPパリバ証券チーフエコノミスト)は言う。 「皮肉を込めてCGコード(日本の上場企業に適用される「コーポレートガバナンス・コード」の略称で、企業統治の基本原則を示したルール集)の『成果』と言うと、1998~2024年で、国内企業の経常利益は5・4倍に膨らみ、株価も上がって株主配当は9倍に増えた。一方海外投資が多く、国内投資は38%、国内での売り上げは22%、人件費は12%しか増えていない。これが客観的評価だ。日本では経営者の最大の役割は株主利益の最大化と考えられ、もうかっても社員の賃金が上がらない」(朝日、25・11・28)。 自社株を買い入れる資金は、企業がため込んだ内部留保からである。内部留保は新技術の導入や設備拡大、労働者の労働条件改善などに使われるのではなく、多くのカネが非生産的、投機的な自社株買いに使われているのである。金融的な利益を追求する自社株買いの増大は資本主義の頽廃の深化を暴露している。 (T) | |||||||||||