WPLLトップページ E-メール
購読申し込みはこちらから


労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

◆第2第4日曜日発行/A3版2ページ
一部50円(税込み54円)

定期購読料(送料込み)25号分
  開封 2000円
  密封 2500円

ご希望の方には、見本紙を1ヶ月間無料送付いたします。

◆電子版(テキストファイル)
メールに添付して送付します

定期購読料1年分
 電子版のみ 300円

A3版とのセット購読
  開封 2200円
  密封 2700円

●お申し込みは、全国社研社または各支部・党員まで。
E-メールでのお申し込みもできます。

アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1505号 2025年8月24日
【一面トップ】 矛盾深める物価高対策
        ――追随する不甲斐ない野党
【一面サブ】  「日本人ファースト」とは
        ――日本人優先の排外思想、「国家エゴ」に繋がる
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 =ウクライナを巡る米、ロ首脳会談=
          米・ロ両大国の横暴糾弾
          ――ロシアへの東部2州併合で合意
【二面サブ】  独裁強めるトランプ大統領
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

矛盾深める物価高対策

追随する不甲斐ない野党

 自公政権は7月20日の参院選で大敗し、参院でも少数与党に転落した。参院選の争点の一つとなった物価高対策について、与党の「給付金」と野党の「減税」が対立し、現在その政策実現が議論されている。物価高に対する経済政策と、参院選の論点では俎上に上がらなかった日銀の金融政策について考える。

◇参院選の争点であった物価高対策

 6月の消費者物価指数(生鮮食料品除く、総合)は前年同月比3・3%で、3%超えは7カ月連続となり高止まりしたままだ。生鮮食品を除く食料は8・2%上昇。特に米類は100・2%上昇で、1年前の2倍の水準。物価の影響を考慮した実質賃金は、前年同月より1・3%減り、6カ月連続のマイナス。物価高に賃上げが追いついていない。労働者大衆は生活苦にあえいでいる。参院選では、物価高対策が争点となり、与党の「給付金」と野党の「減税」が対立した。

 与党の「給付金」は、子どもや住民税非課税所帯の大人に4万円、その他の人に2万円を給付することを軸としたものだ。

 しかし自公政権が6月13日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)では、「減税よりも賃上げ」を掲げた。自公は、「減税」を財源の見通しもないまま主張する野党に対し「財政に責任を持つ与党」をアッピールした。

 しかし賃上げは労使交渉が基本で、政権が主体的に実現する物価対策としては、訴える力に弱いと思ったのか、石破は参院選直前に「2万円給付」を公約に盛り込んだ。あまりにも露骨な選挙目当てであり、返って世論の反発を招いた。

 野党各党が掲げる「減税」はそれぞれ異なるが、基本は消費税減税、課税対象・社会保険料負担対象額の引き上げ、社会保険料負担額の引き下げ、ガソリン税軽減などによる負担軽減が掲げられた。 財源については、自民が税収の上振れ分や税外収入などをあげ、立憲が基金の取り崩し、国民民主は「政権が考えるべき」と無責任なもの。共産は大企業や富裕層への課税強化だが、労働者の闘いが必要だ。れいわは赤字公債の発行だが、それですむ「打出の小槌」はない。それは将来インフレとなり、労働者大衆の負担となるのだ。隠し財源があれば財政赤字の補填に使うべきだ。結局財源は赤字国債に頼ることになるのは、与野党同じでともに「バラ撒き」政策だ。

 8月1日の臨時国会では、野党7党はガソリン税の暫定税率廃止法案を衆議院に共同提出し、暫定税率廃止に向けた与野党6党による実務者協議が始まった。

◇忘れ去られた日銀の金融政策

 しかし、物価高対策で、忘れ去られているのが日銀の金融政策だ。

 12年末に成立した第二次安倍政権は、〝デフレ脱去〟を掲げ経済成長政策を進め、それを支えたのが日銀で、13年に就任した黒田総裁は「これから実施する大規模な金融緩和によって2%の物価目標を2年間で達成する」と〝異次元緩和〟、「量的・質的金融緩和」を開始。しかし10年近く経っても2%の物価目標は達成できず、日銀は金融緩和によって大量の国債を事実上〝引き受け〟、今では日銀保有の長期国債残高は、24年9月時点で583兆円に膨らんでる。

 23年6月に黒田に代わった植田も、「2%達成」という「物価の安定の達成というミッションの実現」を目指すと、金融緩和を継続。24年3月には、「2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、10年以上に及んだ大規模な金融緩和の枠組みを見直し」(6月3日)マイナス金利を解除、24年7月と今年1月に0・25%追加利上げし、政策金利を0・5%にした。

 欧米ではコロナ危機対策による金融緩和で、22年から〝インフレ〟が進行。欧米の中央銀行は、対策として政策金利を引き上げた。米国では22年2月では0・25%だった金利は、その後徐々に引き上げられ23年7月には5・50%になった。24年9月からは引き下げに転じ、現在4・50%となっている。これと比べると日銀だけが、マイナス金利を導入した16年1月以降24年3月まで0・10%の低金利の金融緩和のままだった。

 この間の円ドル相場で見ると、22年1月には1ドル=115円程度だったものが、その後徐々に円安傾向が進行し、23年8月以降は144円から157円付近を推移し、25年7月は1ドル=147円程度である。

 円安は、欧米との金利差の拡大が一つの要因となっており、円安は輸入品の価格を高騰させ、物価高をもたらしていると考えられる。

 物価高の要因には、円安のほか、ウクライナ戦争による石油価格の高騰、小農保護の生産調整で高騰した米、酷暑による野菜の不作など、様々な要因が絡んでいるが、「2%の物価安定の目標」のための金融緩和は、物価高の要因を形成しているといえる。与党も野党も物価高対策を色々掲げているが、物価高の要因として日銀の金融緩和政策が忘れ去られ、物価高対策として、日銀の金融緩和の低金利が放置されている。

 日銀は、低金利を続けると物価高は進行し、金利を引き上げると、日銀当座預金(536兆円、24年9月)に対する付利が上がり、そのコストで日銀は債務超過に陥る。しかし、債務超過の悪化を避けようと十分な利上げを行なわなければ、物価高が進行する状態が放置される。

 それとともに、利上げは政府の財政運営においては、債務償還費と利払費等からなる国債費を増大させ、社会保障費などの他の歳出を削減せざるを得ない状況に陥るリスクが高まる事態が予想される。日銀は簡単に利上げもできないのだ。

◇労働者の闘いの発展を

 資本主義は行き詰まり矛盾を拡大している。自民党や日銀の金融政策は、根本的な打開策を打ち出せない。彼らが目指す「賃金と物価の好循環」は、賃金が労使の協調で上がり、物価の上昇に結びつき、それが景気回復に繋がるという主張だが、労働者が賃上げ闘争を行なうのは、景気回復のためではなく、労働者の生活防衛のためだ。「賃金と物価の好循環」論は、労働者の階級的な賃上げ闘争を解体するものだ。

 ブルジョアジーは行き詰まった資本主義社会を、労働者の犠牲によって延命させようとしている(低賃金で過酷な労働の非正規労働者の増大を見よ!)。資本主義を変革する労働者の闘いを強めよう。 (佐)


【1面サブ】

「日本人ファースト」とは

日本人優先の排外思想、「国家エゴ」に繋がる

◇口先では外国人を差別しないと

 8月9日、長崎で開催された被爆80年平和記念式典に出席した参政党・神谷代表は、その後、福岡市内で街頭演説を行った。

 「選挙期間中は外国人をめぐって、候補者の事実に基づかない言説も一部で飛び出し、〝外国人排斥を煽る〟という指摘が付いて回りました」。しかし、「人を差別したり、レイシズムを推奨したり、戦争を進めたり、一切そういうことはしないとずっと言い続けています」。

 この神谷の演説は真実を隠している。参政党は参院選挙の中で、「外国人の社会保障について『国益につながる人物のみへ実施』するとし、生活保護の停止や医療保険制度利用の制限などを明記した。公約では、『国民の負担が不当に増えることを防ぐ』としている」(東京新聞電子版、25・7・18)。

 参政党の主張を探ると、「社会保障に限らず社会参加や生活自体の制約も見られる。公的セクターや公務員の外国人採用の制限、外国文化や価値観の強要禁止、外国人の土地購入の原則禁止、国籍取得した人は3世代を経ないと公務に就けないといった内容だ」(同)。

 神谷は外国人を差別しないと言いながら、先の選挙では、外国人が優遇されていると虚偽誇大し、外国人への社会保障停止や制限を謳い、さらに公務員などへの制限も打ち出し、国籍を取得した人は3世代を経ないと公務に就けないとまで主張した。まるで、外国人優先や優遇によって、社会保障制度が綻びているかに醸し出す。

 しかし、憲法を始め福祉などの諸制度は、ブルジョア制度であり、その限界ゆえに綻びが出始めているに過ぎない。決して、外国人が優遇されているから問題が発生しているわけではない。例えば、82年まで外国人は国民年金に加入できなかったし、また労働者は「研修制度」によって自由な職業選択が制限され、職場では差別されてきた。

 参政党はこうした現実を知りながら、外国人が優遇されているとデマを飛ばす。

 参政党は、「外国人は出て行け」といった露骨な言動を控えているが、日本人と日本に住み働く外国人を対等に扱うことに反対するばかりか、「日本国籍を取得した元外国籍の人は〝純粋な日本人〟ではない」と断じ、〝日本民族優先〟思想を振りまくのだ。

◇参政党に限らず自民も国民民主も

 今度の参院選挙では、参政党の「日本人ファースト」に煽られ、また、これに乗じて各党も同様な主張を繰り広げた。

 自公政府は急きょ「外国人との秩序ある共生社会推進室」を設置し、その上、自民党は「違法外国人ゼロ」を謳い、「税金、保険、児童手当など日本人が真面目に納めている制度を悪用させない」と何の根拠も挙げずに外国人の「制度悪用」をあげつらった。

 国民民主も「日本人が払った税金は日本人のために使う」と、税金が外国人に多大に使われているかに吹聴した。自民も国民民主も、外国人が制度の悪用をしているかに、また特別に優遇されているかに印象操作を行った。参政党と五十歩百歩だ!このように、選挙闘争の場でも公然と外国人差別を煽る輩が増えた。

 利潤(私的利益)を追求する資本主義は個人主義や利己主義を生みだし、経済財政の閉塞状況が生まれると右翼的政治家によって民族的・国家的エゴが煽られる。しかし、世界の労働者は互いに階級的に団結するのであり、労働者に国境はない。 (W)


    

【飛耳長目】

★8・15がやってきた。80年前のこの日も11機の特攻機が出撃し、18名が犠牲となった。命じたのは宇垣纏(まとめ)航空司令官で、〝敗戦を知りながら〟敢行させた。既に特攻による戦死者は6300人を超え、敵艦への突撃率は1%にも満たなかったはずだ★例えば、降伏文書調印が行われた戦艦ミズリー(現真珠湾在)には〝奇跡的に〟1機の特攻機が艦艇右舷に激突、機体の一部と搭乗員のちぎれた上半身だけが甲板に乗り上げた。搭乗員は石野節雄2等飛行兵(19歳)で、遺体は艦長らにより手厚く水葬された。今でも、右舷に小さな傷が残り、甲板には彼の写真が掲げられている★特攻作戦を提唱したのは大西瀧次郎中将(神風特攻隊)と言われるが、認可した昭和天皇及び最高軍部こそ罪を問われるべきである★全機特攻方針を決めた会議で、末席にいた美濃部正少佐がただ一人「戦場も知らぬ狂人参謀の殺人戦法」だとして反対。彼の芙蓉部隊だけが特攻を拒否し、夜間戦闘部隊として沖縄戦に出撃。この部隊の基礎となった藤枝基地は筆者の近くにあり、現在は航空自衛隊の訓練基地である★この戦争は、「お国のため」と宣伝し、その実、天皇制国家と資本の権益を守り拡大するための帝国主義戦争であり、そのために何百万人の命を犠牲にさせたのである。 (義)


【2面トップ】

ウクライナを巡る米、ロ首脳会談
米・ロ両大国の横暴糾弾

ロシアへの東部2州併合で合意

 8月16日、米国アラスカでウクライナ停戦をめぐって、トランプとプーチン、米・ロ両国首脳による会談が行われた。その後の発表ではウクライナ東部2州をロシア領とするなどの「和平」で米・ロ両国は合意した。

◇プーチン提案丸呑み

 報道によると、プーチンの「和平案」と言われるのは、ウクライナ東部2州(ドネツクとルハンスク)でウクライナ軍は撤退しロシアへの併合、それと引き換えに南部のへルソン州、ザボリージャ州で現状の前線の凍結、その他2014年に併合したクリミア半島の国際的承認と言われている。

 これらはロシアが占領し自国の領土だと言っている現状をそのまま追認するもの。だが、トランプは会談後、記者インタビューで「会談は10点満点で10だった」、「残酷な戦争を終わらせる最も良い方法は単純な停戦合意でなく和平協力に進むこと」と自画自賛。そしてトランプは合意を受け入れるかどうかは「ゼレンスキー次第」と述べた。

 ロシアの軍事侵攻と闘っている当事国のウクライナが決めるのは当然である。しかし、トランプは、ゼレンスキーに対して「合意しなければならない。ロシアは非常に大きな国家だ」と受け入れを迫っている。トランプにとって「合意」はウクライナが受け入れるべきことなのであり、「合意」の結果が悪くなった場合に、その責任を押し付けるために「ゼレンスキー次第」と言ったにすぎない。これは事実上、ウクライナの運命を大国である米国とロシアで決めることと同じである。

ウクライナはこれまで米国にウクライナへの安全保障を求めてきたが、「和平」のために米国がウクライナの領土をロシアに渡すことまで委ねたわけではない。

ウクライナと支援する欧州側は米国の「安全の保証」を求めてきたが、領土の割譲は認められないとしてきた。終戦への道筋についても、まずは即時停戦を実現し、その後に領土や軍隊の撤退という重要な課題を交渉したいということであった。

ところが、トランプは、「単なる戦争を終わらせる停戦合意ではなく、ただちに和平合意に向かうことが、ロシアとウクライナの酷い戦争を終わらせる最善の道だ」とSNSに投稿。これは従来求めていた即時停戦ではなく、領土などを含む包括的な和平合意を一気に目指すというロシア側の意向に沿うものであった。

トランプは、会談の合意事項としてロシアがウクライナへの「安全保障」を受け入れることに同意したと述べた。この「安全保障」とは、加盟国が軍事攻撃を受けた場合、加盟国全体への攻撃と見做して武力攻撃を含む必要な措置を取るというNATOの集団防衛義務=NATO条約第5条に類似したものであり、米国もこれに参加すると述べている。

◇確たる将来の「平和」の保証なし

 しかし、こうした約束がウクライナの「安全保障」として信用できると言えるのか。ロシアが同意したと言うだけで、ウクライナの安全保障のための確たる組織もないし、米国が実際にロシアの攻撃から守るというということもはっきりしない。トランプは民主党バイデンがウクライナ支援のために多額の軍事援助を行い、米国国民の大きな負担になっていると非難してきた。大統領になってからウクライナへの軍事支援を止めるなど、ウクライナのことは欧州の問題として米国の関与を弱めてきた。こうしたトランプの態度はプーチンの帝国主義的、大国主義的横暴を助長してきたのである。トランプが本当に「平和」を望むというならば、プーチンのウクライナへの軍事侵攻に反対すべきである。にもかかわらず、ウクライナの頭ごなしのロシアとの談合で押し付ける「和平」など信用できない。

一方、プーチンのロシアはどうか。会議では、プーチンは「解決を長期的なものとするためにはすべての根本的原因が取り除かなければならない。ロシアの懸念が考慮される必要がある」と改めて主張したと言われている。

「すべての根本的原因」とは、プーチンによれば、ロシアとウクライナは一体であるべきで、ウクライナが一方的にロシアから独立し、EU加盟やNATO加盟を言いだす等ロシアの安全を脅かすようになったこと、ゼレンスキー政権は反ロシアのファシスト政権で、従ってロシアとウクライナの平和のためには反ロシアの現政権は打倒されなくてはならないというのがプーチンの主張だ。

 ロシアが東部ドネツク、ルハンスクの2州を獲得、南部へルソン、ザボリージャの占領地域を保有することになったとしても、将来の「平和」が確保されるわけではない。プーチンのウクライナへの軍事侵攻の目的はロシアと一体であるべきウクライナ全土の併合だからである。ウクライナがロシアと利害を異にする独立国家として存在する限り、ロシアからの軍事侵攻の危機はなくならないであろう。

 プーチンにとっては、「和平」合意は、戦争の終わりではなく戦争継続のための準備を意味するだろう。3年半も続いた戦争の打撃は軍事的にも経済的にも大きい。ロシアは停戦の間、軍事的、経済的な回復に力を注ぐであろう。

 トランプとプーチン会談後、18日、トランプとゼレンスキー、欧州首脳との会議では、ウクライナの領土、安全保障の問題の結論は、後日行われるゼレンスキー、プーチン、トランプの3者会談及びこれに欧州首脳を加えた4者会談に委ねられたと言うが、どうなるかは今のところ不明である。

◇帝国主義に反対する世界の労働者の連帯した闘いの発展を

 ウクライナの頭越しのトランプ、プーチンによるウクライナ「和平」合意は、帝国主義大国の横暴を明らかにしている。今、世界はロシアのウクライナへの軍事侵攻、トランプ米国によるイラン核施設への攻撃やパナマなど小国への軍事的圧迫、イスラエルによるパレスチナのジェノサイド、中国による東アジア海域への軍事進出等々、再び力による世界の分割、国家的な対立が激化する時代を迎えつつある。

 こうした中で、戦争と抑圧を一掃し国際的な平和を実現していくためには、帝国主義・反動国家に反対し、それらを一掃していく世界の労働者の連帯した闘いと、その発展が追求されなくてはならない。 (T)


【2面サブ】

独裁強めるトランプ大統領

◇「数字低い」と、局長を解雇するトランプ

 トランプは今月1日、雇用統計の数字を「政治的操作」で下方修正したと、労働統計局長の解雇を一方的に指示した。5、6、7月の就業者数が当時発表した数字よりも計25万8千人すくなかったことに憤慨してである。

 修正の理由は、移民規制、関税政策の影響によって、数字の改定が必要になったからである。DOGE(政府効率省)の進めた政府職員の解雇(7月14日時点で5万1千人、年内30万人削減)等の影響で、労働省の人手不足も関係している。トランプは、労働局長が〝大統領選前に雇用統計を改ざんしハリスを当選させようとした〟と根拠なくSNSに投稿し、「政治的操作」と〝改ざん〟があるかのデマゴギーと個人的憤慨で、後任に「ヘリテージ財団」(MAGA派でトランプ政権の政策「プロジェクト2025」を作成)から労働統計局長を選出した。

 トランプがむき出しの権力を行使したのは、「非農業部門の新規就業者数」が「米経済の強さを測る最重要指標の一つ」で、政権の経済政策の判断や政権支持率をも左右するからだ。指標は株や為替相場、政策金利に影響を与える。就業者数が多ければ、景気は拡大していると判断され、ドルは買われ、株も上がり、自分の経済政策が成功していると評価されるだろう、少なければ景気は悪化しつつあると判断され、ドルも株も売られ、支持率が下がるのではないかと考えたのだろう。政策金利は下げたいが、自分の手柄としたいのである。

 トランプは「トランプ関税」を発動しても〝景気は拡大し物価は安定している〟と言い張る。それを揺るがすような、新規就業者数のマイナス25万8千人の修正では、トランプ関税に対する不安を掻き立てる。すでに15日のジェトロ短信では、関税政策に対する不支持は61%(共和党支持者は68%支持、民主党支持者は89%が反対)に高まっている状況がある。

 トランプがFRBのパウエルに対して、FRB本部を訪問し利下げと議長交代を要求するのは、利下げが資金需要を拡大し株価も上がり、消費を刺激し景気が拡大し、支持率が上がると算段するからであり、利下げが遅れ景気後退するのを恐れ、その責任を「『手遅れ』のジェローム(パウエル氏)」に押し付けても、トランプも無傷では済まないと考えるからである。

◇MAGAに染まるワシントン

 トランプ2・0と1・0の大きな違いとして挙げられるのは、裁判所の決定・判決や法律に従わず、議会に諮ることなく大統領令を連発し議会を軽視することである。トランプを頂点に側近「5人衆」によるトランプ独裁が、アメリカ政府の中枢=ホワイトハウスを貫いていると言えるだろう。

 ハーバード大学など有名な私大に対する助成金の削減、留学生受け入れ禁止、反ユダヤ主義を理由にした規制。移民強制送還、教育省の廃止、多様性の否定、博物館の展示内容の見直し、「信仰局」の設置、ワシントンへの800名の州兵配置等々に貫かれているものと同じである。

 それは、トランプ政権を誕生させたMAGA運動の核として存在する、中西部やラストベルトの〝忘れ去られた高卒の白人労働者〟(彼らの多くは、トランプ支持のキリスト教福音派の信者でもある)は、リベラルな大卒エリートを「WOKE」(意識高い系)と揶揄し強い反感を持っている。

 多様性否定、キリスト教的道徳に基づく家父長的な白人中心の「価値観」を取り戻すための、エリート大学・リベラルなエスタブリッシュメント(支配階級)の「価値観」に対する「文化戦争」が米国内で勃発している。

 ハーバードに対する3千億円の補助金取り消し攻撃は、大学側が「『解決金』として国の職業訓練プログラム向けに5億ドル(約730億円)を寄付する」ことで和解する方向と13日報じられた。

 トランプは、岩盤支持層に対して職業訓練の金をエリートに出させたとアッピールすることが出来る。「職業訓練プログラム」が対象とするのは、失業している人々である。24年の失業率は、全体が4・03%で若年(25歳未満)失業率は7・95%である。彼らの多くが高卒の手に職のない労働者であることは想像出来る。

 16年の大統領選でトランプは、「低学歴の有権者を愛してる」と演説し、トランプ2・0では「教育省」を廃止。「教育省」は低所得者、障碍者、人種、性的マイノリティなどが平等な教育が受けれるように、連邦政府の「教育省」が資金を提供する。それが打ち切られると、低所得家庭の子供が受ける教育は劣化し教育格差は拡大し所得格差も再生産される。トランプが愛してやまない〝低学歴の有権者〟を生み出す政治が開始された。

 トランプは14日首都ワシントンにあるスミソニアン博物館に、「分裂的または党派的な物語を排除し、文化への信頼を回復するという大統領の指示との整合性を確保する」(朝日)という書簡を送り、展示物などの調査を開始した。同様にワシントンにある「米国歴史博物館、アフリカ系米国人歴史文化博物館、航空宇宙博物館、アメリカ・インディアン博物館、国立肖像画美術館、他」8か所にも調査を行うと圧力を掛けている。多様性を掲げる私大に対する攻撃と同じ手法だ。すでに肖像画美術館館長を〝非常に党派的〟だと5月30日に解雇を発表した。首都ワシントンから多様性、公平性、包括性を叫ぶリベラル派を一掃し、MAGAの思想で米国を染め上げようとしている。

 トランプは、ワシントンに投入した800人の州兵に追加して、南部ウエストバージニアからも400人の州兵派兵を命令。近日中に武装して配置につくという。ワシントンで影響力を持つ民主党に対し、あからさまな挑発と暴力装置を自在に操れる力を誇示している。

◇思いあがるトランプ

 思いあがるトランプは、ホワイトハウス敷地内に2億ドルをかけて650人が収容できる「舞踏室」を建設する。各国要人やトランプの〝臣下〟の謁見を受け、権勢を振るう舞台にしたいのだ。臣下の共和党議員は、首都の地下鉄を「トランプトレイン」に改称、100ドル札の肖像画をトランプに、誕生日を祝日に、歴代4人の肖像を刻んでいる岩山にトランプを追加などの法案が提出されている。極めつけはイスラエル、カンボジアなどからの、ノーベル平和賞推薦である。汲めど尽きない話題を提供するトランプであるが、着実に米国においてトランプ独裁は強まっている。 (古)


ページTOP