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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
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第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1510号 2025年11月9日
【一面トップ】 高市反動政権始動!
        ――強い経済も目的は国益を守る軍事力
【一面サブ】  立憲・安保法制容認
        ――労働者に敵対する「現実路線」
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 高市の「積極財政」論
        ――破綻した「リフレ理論」を拾い上げ
【二面サブ】  党利党略の議員削減策動
        ――維新と自民が「政策協定」で合意
【二面サブ2】 【追悼 熊谷正樹同志】
       ※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

高市反動政権始動!

強い経済も目的は国益を守る軍事力

 10月21日、高市自維政権が発足。24日施政方針演説、28日にトランプと首脳会談、その後横須賀の米空母でトランプと米軍向けに演説を行った。この間に明らかになった高市反動政権を暴露する。

◇高市政権3項目の共通指示と軍事力強化

 高市が18人の閣僚に出した「全閣僚共通指示」に共通した3項目で、
(1)「強い経済の実現」――その為に日本の置かれている東アジア情勢、中国との緊張関係に対応する「『危機管理投資』を肝として、日本経済の強さを取り戻すための成長戦略を始動させ、軌道に乗せる」と、「責任ある積極財政」を謳った。
(2)「地方を伸ばし、暮らしを守る」――ここでは移民対策の「外国人問題に関する司令塔機能を強化し、総合的な対策を推進する」と謳った。
(3)外交力と防衛力の強化――安倍が好んで使用した「日本の国益を守るため、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」とか、「総合的な国力の強化」で「我が国の主体的判断において、防衛力の抜本的強化を図る」などと謳っている。

 高市政権による軍事力強化は、米国の圧力やトランプの言いなりではなく、日本の主体的な独自の判断であることを確認しよう。共産党が言うような米国の言いなりの〝卑屈〟な立場ではなく、高市ら国家主義者と日本のブルジョアジーが自国の帝国主義的利益を〝主体的〟に貫く立場が自己陶酔的に表明されている。

◇高市政権に集う反動閣僚たち

 18人の閣僚の中で特に高市の右翼的国家主義的立場を共有し、「成長戦略」=「積極財政」の立場に立つ政治家がそれにふさわしいポストを与えられた。
・城内実経済財政相、城内は自民党内の「積極財政派」と言われ、高市が新たに設ける「日本成長戦略会議」の中心メンバーである。「日本成長戦略会議」は岸田政権が設置した「新しい資本主義実現会議」を廃止して設置された。城内は予算編成など高市政権の経済財政運営の策定を担い、石破政権がトランプと合意した「日米関税合意」の進捗管理など総合調整は赤沢経済産業相ではなく城内が担う。
・片山さつき財務大臣、片山は元大蔵省主計官の経験を活かし「責任ある積極財政」を財務省に納得させる役割を担う。金融担当大臣として、岸田政権の「資産運用立国」政策を引き継ついだ。23日には、「新内閣は、世界の投資家とともに強靭な経済を築くことに全力を注ぐ。『貯蓄から投資へ』のシフトを推進し、個人が未来に投資できるよう力を与え、‥‥新たな機会を作り出していく」と発言。銀行預金とタンスに眠る個人の金融資産を投資に引き込む広告塔の役割を担おうとしている。

 高市は、成長戦略には金融の力が必要だと主張。青天井の軍事費、政権維持のために増大する財政支出。カネはいくらあっても足りないのが高市の政治である。

 維新と合意した租税特別措置・補助金見直しの労働者への負担の肩代わりを警戒せよ。維新の改革・見直しは、労働者の犠牲と一体である。
・小野田紀美経済安全保障相は国家安全保障の推進のために高市の外国人管理政策である「外国人との秩序ある共生社会推進」担当も担う。「『経済安全保障』(重要物資の安定供給、基幹インフラの安全な提供、先端技術の開発支援、特許出願の非公開)、『食糧安全保障』、『エネルギー安全保障』等々」の推進体制の強化を担当する。
・木原官房長官には、25年に検討を開始するスパイ防止法と密接に関係する政府の情報収集・分析活動を統括する「国家情報局」設置に向けた検討が指示された。この組織は22年に設立された「国家安全保障局」に準じる機関である。

 安倍政治の後継を自認する高市の下で自民党内の「部会長」に2人、副大臣・政務官でも7名の裏金関与議員を登用した。真黒な裏金議員・萩生田は幹事長代行である。閣僚人事や裏金議員登用は、解き放たれた反動・高市政権を自ら誇示している。

◇安倍後継を掲げトランプをかわす

 28日に行われたトランプとの首脳会談では、高市は安倍の後継であることを強調し、防衛費のGDP比2%を2年前倒しで今年度中に達成すると表明した。「日米同盟の新たな黄金時代をトランプ大統領とともに作り上げていきたい」と呼びかけ、トランプは「日本は最も重要な同盟国だ」と応えた。

 会談では、①日米同盟の抑止力、対処力の強化、同志国連携の推進②「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現③日本が主体的に防衛力の抜本的強化と防衛費増額に取り組む決意を伝達④台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて確認⑤重要鉱物、AI、造船などで経済安全保障の協力⑥日米関税合意の5千5百億ドルの投資先21候補が公表されたが、まだ企業の「関心表明」の段階で、正式に決まるのはこれからでる。

◇偉大な日米同盟を叫び飛び廻る高市

 横須賀の米空母では高市は米兵に演説で、「世界で最も偉大な同盟になった日米同盟を、さらなる高みに引き上げていく」と表明。6年前安倍がトランプの前で「日米同盟はこれまでになく強固になった。『かが』の艦上に我々が並んで立っていることが証しだ」と述べた。高市は「再び日米の最高指揮官が並び立ち、私はその決意を引き継ぎ、インド太平洋を自由で開かれた、地域の平和と繁栄の礎とする決意をした」と上機嫌で述べたが、日米同盟のさらなる高みは、日米両軍が戦争する軍隊として連携を一層深めることに他ならない。

 日本は自国の軍事的能力(軍需産業、科学技術力を含め)を制限してきた〝桎梏〟を解き放そうとしており、高市自維政権はそれを促進する。

 自国の帝国主義的利益の追求は軍事力強化と密接に結びついている。兵器生産は〝儲かる〟産業になり軍需産業に参入する企業が増加している。

 共産党は「日本の大軍拡は米国の対中国軍事戦略に全面的に加担することであり、『日本の防衛』とは直接関係ありません」(10月30日赤旗主張)と、〝脳内お花畑〟で高市を〝批判〟し、反労働者的だ。

 帝国主義国家として海外に権益を持つ「日本の防衛」は、現実の国際情勢や権益をめぐる軍事的緊張関係と無関係に存在しない。日本の大軍拡は、中国の脅威に対抗することが日米の帝国主義共通の課題だからである。高市反動政権と根底的に、真剣に闘う労働者、若者の隊列を創ろう! (古)


【1面サブ】

立憲・安保法制容認

労働者に敵対する「現実路線」

 高市自民・維新連立政権成立の過程で、立憲野田はこれに対抗する野党連立政権を目論み、協議の中で国民民主に安保法制容認を迫られた。現在はそれを容認、国民民主や公明と連携する中道路線にシフトし、政権を目指すという。これで高市政権と闘えるのか。

◇政権交代論のあだ花

 2015年自公政権は、集団的自衛権を認める安保法を制定、22年には敵基地攻撃や防衛関係費の「倍増」を決めた安保3文書を制定。先月24日の所信表明演説で高市は、27年度に軍事費とその関連経費を合わせ国内総生産(GDP)の2%に増額する現行目標を前倒しし、今年度中に実現し、さらなる軍事費増のため安保3文書を来年中に改定するとした。

 高市政権の軍事強化を進める表明は、日本、米国、中国、ロシア、EUなどの帝国主義国家間の対立を煽り、物価高、実質賃金低下などで生活困難を増す労働者大衆に、軍事費増大の犠牲を強いる。

 先月、立憲野田は、公明が自民との連立解消を決めると、野党がまとまれば政権交代が現実味を帯びてきたと、首相指名の野党候補一本化に向けて動き出し、維新、国民民主と協議を始めた。

 この協議で、国民民主は立憲に、「原発ゼロ」や「安保法制の違憲部分廃止」の政策撤回を求め、「連携したいのなら立憲がこちらの主張に歩み寄るべき」(14日)とした。これに対し野田は15日の3野党党首会談で、「原発再稼働は一定の条件で認める」、安保法制の違憲部分はこれまで見つかっていない、「安保法制を直ちに廃止しなければいけないということではない」と述べ、これまでの立憲の見解を修正。安保法制容認は高市の軍事強大化を助けるものだ。

 しかしこの会談の直後、維新は自民との連立協議を開始し自維連立に進んだ。野田は、「政権交代こそが最大の政治改革」が信条だが、野党共闘による政権交代の目論見は、国民民主との協議も整わず一頓挫した。自民党政権と変わらない、退廃した資本の支配の維持を図る野党共闘政権では、労働者大衆の未来を切り開くことはできない。

◇安保法反対の破綻と労働者の闘い

 立憲の最高顧問枝野は25日、安保法制を巡り「集団的自衛権の行使を一部容認すると言ったのが憲法違反だ」、しかし法制定後の法運用は「自衛権」の枠内にとどまっている、「成立後の10年間、違憲の部分はない。だから変えなくていい」と主張し、枝野も野田の安保法制容認に同調した。

 枝野が安保法制に「違憲の部分はない」と言うのは、この10年間「集団的自衛権の行使」がないからだという屁理屈だ。行使していないことと、安保法制に「違憲の部分はない」とは明らかに違うことだ。そして野田や枝野は、立憲の基本政策の「安保法制の違憲部分を廃止」の明記をそのままにしている。彼らは全くご都合主義だ。そもそも「戦力」である自衛隊は、「戦力を保持しない」ことを明記した憲法9条に違反している。しかし、立憲は自衛隊や日米安保体制は合憲だと認めるのだ。

 一方立憲は、集団的自衛権を認める15年の安保法制定以降、集団的自衛権を認める安保法制は憲法違反だと言ってきた。安保体制そのものが集団的自衛権であるのに、安保体制は合憲であり、安保法制は違憲だと言う。

 立憲は安保法制容認の「現実路線」にかじを切り、国民民主や公明との連携で、「野党共闘による政権交代」を進めようしている。このようなご都合主義の立憲は全く信用できない。

 労働者・働く者は、労働者大衆の生活困難の元凶である資本の支配、それを支える高市政権を一掃する労働者の階級的闘いを断固進める。 (佐)


    

【飛耳長目】

★高市政権誕生後、日経平均株価は初めて5万円突破。先月30日には、24年度の法人の申告所得総額が前年度比4・1%増の102兆円となり、過去最高を更新した。企業の内部留保も24年度637兆円、13年連続で過去最高を更新。なんとも景気の良い話だ★かつてのアベノミクスを支えたトリクルダウン理論は、「大企業や富裕層を優遇することで経済活動を活性化させ、その利益が中小企業や低所得層にまで波及する」というものだった。だが現実は、企業収益と株価の上昇で、資本と富裕層のフトコロを肥やしただけ、勤労大衆は置いてけぼり。自慢の雇用増も、増えたのは低賃金の非正規雇用だった★加えてデフレ脱却に向けた異次元金融緩和と財政出動による公的債務の累積、円安誘導が埋もれていた地雷のようにインフレ要因となって起動し、輸入品価格は20年比で1・42倍にも高騰した★労働者の実質賃金は物価上昇に追いつかず、1円でも安くとスーパー巡りの日々が続く。高市は総理就任前、真っ先に物価高対策に取り組むと言ったが、ガソリン・軽油減税に留まっている。消費税撤廃を掲げる野党もいるが、歳入減に対して国債増発(借金)や増税で穴埋めすることになれば、労働者の負担を軽減することにはならない。 (Y)


【2面トップ】

高市の「積極財政」論

破綻した「リフレ理論」を拾い上げ

 首相の座を射止めた高市は「経済あっての財政」だと言う。つまり、経済の好循環を図り、それを実現させることで税収増と財政の持続的改善が可能だと謳う。そのために「戦略的な財政出動」を行うと強調。

 アベノミクスと何が違うのか?

◇物価上昇を抑えず対症療法のみ

 夏の参院選で焦点になった物価対策について、高市政権(自維政権)は物価高騰そのものを押えようとしていない。もともと、政府も日銀も「年2%の物価上昇」が景気好循環の指標だと見なしている。現在の物価は目標よりオーバーしていると感じていても、下げる気はさらさらない。

 元来、技術革新によって労働の生産性が高まり、物価が下落することは正常な経済法則である。なぜなら、同じ商品を生産するのに必要な社会的労働量が減り、商品価値が小さくなり、労働者にとっても社会全体にとってもプラスになるからだ。

 だが、高市や経済ブレーンらは、商品価値や価格が下がることを「デフレ」だと理解し、逆に上がることを「インフレ」だと思い込んでいる。広範に物価が上がれば、名目GDPが上がり、あたかも景気が上昇しているように見えるからである。

 従って高市政権は、物価高騰を解消するのではなく〝対症療法〟を繰り出すのみだ。つまり、ガソリンや軽油の暫定税率を撤廃し、また年収の壁引上げや高校授業料無償化なども実施し、これが物価対策であるかに誤魔化し、人々を欺こうとしている――しかし、ガソリンや軽油の暫定税率廃止で助かる人は限られ、車を持たない低所得労働者にとっては、何の救いにもならない。年収の壁引上げも、専業主婦を温存し、女性が社会に出て働くことを阻害する〝壁〟を残す。

◇円安なのに金利引上げにも反対

 物価高騰に苦しむ労働者などは〝糞食らえ〟とでも思っているのか、高市は金利の引上げに反対する。総裁選で高市は、「金利をあげるのはアホだ」と日銀を激しく牽制した。高市がそう言ったのは、まず、金利が上がれば物価が下がり「デフレ」に陥ると勝手に思い込んでいるからだ。

 だが、高市の懸念はそれだけではない。

 物価が上がり国債金利も上昇傾向にある折、「積極財政派」の高市が総裁に決まるや、信用不安が生まれて国債価格が下落、新発国債の金利や市場利回りが上昇した。日銀が物価高騰を抑えようと政策金利を僅かでも上げるなら、国債の金利水準はさらに上昇する。

 それゆえ、「国債費」(国債の元金払いと利払い費)は、27年度予算で25兆円ほどであるが、もっと膨らむことになり、予算編成に大きな支障が出る。高市はこれを恐れるのであり、金利を以前のようにゼロ近辺にしたいのが本音なのである。

 しかも、低金利政策が継続され、外国と一定の金利差がある限り、金利差狙いの外国債券購入などが進み円安圧力になる。

 輸出が大幅に増え、為替が円高に是正されない限り円安は改善されない。

 このように、円安が進行し、物価高騰しても高市は金利引き上げに反対する。それはなぜか? 安倍譲りの「積極財政」で「強い経済」を作るなら、長期的な成長につながり、物価は上がっても賃金は増え、輸出も増えて円安が解消されるかに、安倍の失敗を忘れて脳天気に考えているからだ。

以下、それを検討する。

◇高市財政は無間地獄への道か?

 「積極財政」の具体的な中身は定かではないが、既に、防衛費の2年前倒しが宣言され、「強い経済」を作るためにAIやDXや半導体などの先端技術を持つ企業にカネを注ぎ込もうとしている。この中に、小型原子炉も入ってくるだろう。

 岸田政権時代、「新しい資本主義」を掲げて長期の政府投資が開始された。半導体会社のTSMCやラピダスなどに多額のカネが注ぎ込まれた。高市はこれに輪をかけて推進しようとしている。

 なぜそうするのか。

 後述するが、「金融緩和策でカネが市場に出まわれば物価が上がりだし、これに人々は反応し先買い需要が生まれる」という理屈を基礎にしている。

 加えて、大胆な財政出動で物価対策などを行い、「需要が多い状態を維持する。すると、モノをつくったら売れて人手不足が起こる。そこへ最新技術を活用して生産性を高める機械化投資を行えば、日本全体の生産性が上がる。その結果、長期的な成長につながる」(25・10・24毎日新聞)。

 これは、高市の経済ブレーンになった本田悦朗(安倍政権で内閣官房参与)というリフレ派学者の発言である。

 アベノミクスを先導したリフレ派学者は、「金融緩和は経済成長につながる」というインチキ理論を実行したが、10年たっても、目標に掲げた「年2%の物価上昇」を実現できずに挫折した。ところが、同調していた高市が彼らを拾い上げた。

 本田悦朗や高橋洋一らは、金融緩和策で金利を下げればカネが出回り、カネよりモノが少ない状態になり、モノの希少性価値は上がる。よって物価が上がり「インフレ期待」が高まり経済成長につながるという「リフレ理論」を掲げて登場した。

 しかし、商品の価値は社会的・平均的な労働量で規定されるのであり、カネよりモノが少ないから価値が上がるのではない。

 実際、異次元の金融緩和が行われても、物価は停滞した。それは当然であろう。金利が下がれば設備投資が促され商品の供給が増え、需給関係から物価は下がろうとした。

 また、カネを市場に出すために、安倍は大量の国債を発行し、日銀はその国債を市場経由で買い、その分のカネを印刷したが、カネは、超低金利でも多くは市場に出ず、日銀当座預金に積まれたままだった。資本の過剰が解消しておらず、都合よく拡大再生産が進まなかったからだ。

 こうして「リフレ理論」は見事に失敗した。

 ところが、またリフレ派の本田らは、年10兆円程の財政余力があるから金融緩和を続けながら積極的な財政投資を行うべきだと言って高市を煽っている。既に物価は高騰し、人手不足は深刻になっているのに、高市も破綻済みの「リフレ理論」を受け入れようとしている。

 高市の「積極財政」路線は、さらに物価高騰や信用不安に火を付け、労働者の生活を脅かし、かつ、若者の肩に国家の借金を背負わせるのである。

 労働者よ、若者よ、高市政権と「リフレ理論」を粉砕しよう。 (W)


【2面サブ】

党利党略の議員削減策動

維新と自民が「政策協定」で合意

 自民と維新は連立のために「1割を目標に衆院議員定数の削減」で合意、臨時国会に議員立法で法案を提出、成立を目指すとしている。維新は「身を切る改革」などといっているが、維新、自民に有利で、少数党を政治の舞台から締め出そうという党利党略である。

◇自民・維新の優位獲得が狙い

 衆院議員定数削減は、維新が自民と連立(閣外協力)するための条件として持ち出したものである。議員定数削減について、維新は結党以来の「改革」政策の基本である「身を切る政策」の一つであるとして喧伝している。

 しかし、これは本当か。

 衆院定数の1割が削減された場合どうなるのか。「毎日新聞」の、24年衆院選の結果を基にした試算によると次の通りである。

 「比例代表の試算では自民が58議席から42議席へ16議席減少するほか、維新も15議席から3分の2となる10議席になるなど、比例で議席を得た全政党が減らした。減少幅が最大なのは日本保守党で2議席いずれも失う。参政党も3議席から1議席となる。他の政党は2~3割の議席減だった。

 一方、289議席の小選挙区の結果を合わせると、小選挙区で137議席を獲得した自民党の減少率は8・2%まで圧縮され、計195議席から179議席となった。定数全体に対する議席占有率は41・9%から43・1%へ微増する。

 大阪の19選挙区で全勝した維新は、13・2%減の計33議席に踏みとどまる。自民、維新を合わせれば試算上の過半数(208)ラインを超える計212議席を獲得することになった。立憲民主党も小選挙区で自民に次ぐ104議席を獲得したため、減少幅は全政党で最小の6・1%だった。 一方、小選挙区で少数政党には影響が大きい。参政、保守はそれぞれ66・7%と大きく落ち込んだ。自民との連立を離脱した公明党も26・1%減、共産は25・0%減で、比例での議席減が党全体の議席占有率の減少に直結している。……国民民主党も、16・1%減となった」。

 「毎日新聞」の試算は、24年衆院選の結果を機械的に当てはめて行った試算結果であり、状況が変われば、少々変わった結果になると言えるかもしれない。しかし、大政党に有利で、小政党を政治、選挙から締め出すというその本質は変わらない。「身を切る改革」と言いながら、維新と自民で議席の過半数を超える議席を獲得する、これこそ衆院議員定数削減の狙いである。

 議員定数削減は、大阪の地域政党であった維新の政策であった。大阪府議会で、2011年に109であった議員定数は88に、さらに23年に79に減らされた。現在では53の選挙区のうち一人区の選挙区が7割近くになり、中小政党は議席を得られず、大阪では大政党である維新が大阪で大勝し、政治を牛耳ってきたのである。

◇不平等制度「改革」は無視

 選挙に関する制度「改革」を問題にするのならば、緊急性を要することが他にある。それは自民のような大政党に有利な差別的な選挙制度である。例えば、一人区の小選挙区で、A、B、Cの3人の候補者が立候補し、Aの得票が5万、Bの得票は4・5万、Cが3万であれば、Aが当選するが、後のBとCに投じられた計7・5万の有権者の意思は死票として無視される。

 第41回(1996年)から第48回衆議院選挙の全小選挙区で、当選者の得票数よりも死票のほうが多かった選挙区の割合について見てみると、第41回から第46回までが300、第47回が295、第48回(2017年)が289となっている(「選挙ドットコム」、データアナリスト、渡邊秀成、「中選挙区制と小選挙区制の死票を数える」21年6月)。現在の小選挙区制(比例併用)は1996年に採用され、以来自民は3~4割の得票率で7~8割の議席を獲得、長年、政権を維持してきた。不平等で不当な小選挙区制は即刻廃止し、得票に応じて議員数を決める全国単一比例代表制度が採用されるべきだ。

 その他、高額の供託金制度、候補者数に応じた宣伝ビラ、宣伝車の規制など大政党に有利で小政党を選挙から締め出す不平等な制度は多々あるが、こうした制度こそ廃止されるべきである。しかし、こうしたことを無視して、維新は衆院議員の定数削減を「政治改革のセンターピン」(吉村党代表)だと叫んでいるのである。

 維新・自民の自己保身でしかない党利党略の「議員定数削減」策動を断固粉砕しよう。 (T)


【2面サブ2】

【追悼 熊谷正樹同志】

 【神奈川で活動していた党員の熊谷正樹同志が亡くなりました。所属していた神奈川支部から10月に送られて来た報告を紹介します。】

 先月、熊谷さんのお見舞いにAさんを含めて古い友人たち4人と病院に伺ったのですが、今朝、その後の病状を伺うためにお姉さん宅に電話したところ、4日に病院で亡くなり、すでに葬儀も家族葬で済ましたということでした。

 マル労同時代に入党して以来、堅実な党活動によって神奈川の組織を支えてくれた古い党員を失いました。

 以前からの肺気腫の病に加えて、4月に十二指腸がんが見つかり(がんは手術のできない状態)、胃腸の連結手術や血管に細菌が入ったために高熱を出したりして悪戦苦闘した末でした。お姉さんによると、苦しまないで穏やかな死だったということです。享年75。

 昨年からは、支部の「労働者くらぶ」へも寄稿するようになり、今後も大いに期待していたところでした。私たちは、縁の下の力持ちになって神奈川の党活動を支えてくれた、彼の誠実な人柄、堅実な仕事ぶりに多くの信頼を寄せていました。

 残された私たちは,彼の遺志に報いるためにも、支部の活動を活発化させ、労働の解放に向けて頑張っていく決意です。 (菊池)


《前号の訂正》

 2面トップ記事1段目
 第2パラの7行目 1890年代→1980年代

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