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●1497号 2025年4月27日 【一面トップ】戦争する国家に向かう日本 ――9条幻想を捨て新たな闘いの道を! 【一面サブ】 第8回労働者党大会開かれる ――SNS、インターネットの活用も 【一面サブ2】 労働者を裏切る連合芳野会長 ――石破首相との政労会見 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 労働者に背を向け ――自民と連携策す国民民主党 【二面サブ】 柄谷行人の戯れごと ――労働を無視し「交換」を物神化する ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】戦争する国家に向かう日本=9条幻想を捨て新たな闘いの道を!=「国難」を叫び、「国益」を叫ぶ石破。「9条2項削除」「国防軍」創設の改憲を掲げ、更なる大軍拡、「東・南シナ海や朝鮮半島、一体の戦域」構想など、戦場拡大で暴走する石破の帝国主義政治を許すな! ◇国益とは誰にとって国益なのか石破はトランプ関税を「国難」と騒ぎ立て、与野党一体で立ち向かわなければならないと叫び、国益を守るためには安易な妥協はしない。「日本国が大きく行き詰まった時」は自分の出番とばかりに、支持率回復の下心を隠さず振舞っている。 国難や国益が声高に叫ばれることに警戒しなければならない。国難の裏には一切の批判を許さない挙国一致の国家主義的な統制が控えている。国益が連呼されるが、日本は階級社会である。したがって国益とは支配階級にとっての利益である。 支配階級は、大企業を頂点とする企業集団や資本家・経営者であり、彼らの目的は労働者を搾取し利潤を取得する事である。その体制を支えている政府機関と、自国の権益を外国から守り侵略するための軍隊がある。 ◇9条で思考停止する日本の〝左翼〟自衛隊の存在をめぐって「違憲」「合憲」の言葉遊びが繰り返され、その間に軍事費は増大し強大な軍事力を否定することは誰一人出来ない。しかし、9条の平和主義ののどかな幻想の世界から逃れられない〝護憲派〟を自認する日本共産党や労働組合、市民団体、リベラルを自認するマスコミ、知識人などは、現実世界からはるか後方に置いて行かれた。彼らの認識は、米国の主導による「戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認」(憲法第2章)をした第9条を含む日本国憲法を施行した昭和22年5月3日で〝止まって〟いる。 彼らは、安倍・岸田、石破のもとで進む軍事力増強、戦争する国家に向かう政治に対して無力である。彼らは、軍事力を増強する自国の帝国主義的背景を理解していない。 日本資本主義は1990年からの〝失われた30年〟に国内の過剰信用や過剰生産力を整理し、利潤を求めて海外に進出、それ以降も工場を建設し、大規模な商業施設、現地企業を買収するM&Aや鉱物資源、石油天然ガスの権益取得などで、海外直接投資残高は288兆円を超えた(23年度末)。 海外労働者を搾取し年間29兆円もの利潤を稼ぎ出す帝国主義国家が日本の姿である。これが軍事力増強の帝国主義的背景である。したがって闘いは、資本の支配の打倒を目指す闘いでなければならない。 そして、中国は急激な経済的発展を遂げる中で〝台湾の武力統一〟を否定することなく軍事力を増強し、帝国主義的権益を守るために南シナ海に軍事基地を建設しフィリピンなどへの軍事的挑発を繰り返し、東シナ海での軍艦や軍用機の往来を活発化し日米に対抗している。東・南シナ海における日・米、中の対立は帝国主義国家同士の覇権争いであり、労働者はどちらにも与しない。 安倍が掲げ、定着した「自由で開かれたインド・太平洋」は、南シナ海を〝内堀〟化しようとする中国を牽制する日本帝国主義の意志表明であり、米国の帝国主義的権益を脅かす存在になった中国封じ込めを行う米国の利益とも一致したのである。それに対抗する労働者の立場は、各国労働者との連帯であり、それは自国政府に対する闘いを通して現実的なものになる。 ◇石破政権が進める戦争する日本石破は、25年度予算案国会審議で前年比9・5%増、8兆7千億と突出した軍事費に対し、軍拡とは思わないととぼけた。 そればかりか、43兆円の軍拡計画が終了する27年度以降更なる軍拡を、2月の日米首脳会談共同声明で「27年度より後も抜本的に防衛力を強化していく」と発表した。石破はGDP2%越えについても否定していない。 ストックホルム国際平和研究所は報告書で「日本は第2次世界大戦の終戦以来、最大の軍事強化計画を打ち出した」と記述した。 世界を混乱の中に引き込むトランプは親プーチンで、EUが離反し自立した再軍備計画に踏み出したように、米国に対する不信を〝同盟国〟の間に生み出している。たとえば、自国の安全保障を〝核保有〟で維持しようとする動きが北朝鮮と対峙する韓国で活発になっているのもそうだ。 22年12月に閣議決定した「安保三文書」で大軍拡に踏み込んだ自公政権は、各種ミサイルの開発量産を開始し、空母改修や新型護衛艦の建造を進め、軍事物資の「海上輸送群」を新設するなど南西諸島の軍事要塞化に邁進している。3月には先島諸島から12万人を山口県に避難させる〝疎開〟計画を公表し、日本を戦争する国家に向かわせている。9条幻想を捨て新たな闘いの道に労働者党と共に踏み出そう!(古) 【1面サブ】第8回労働者党大会開かれるSNS、インターネットの活用も労働者党は、4月19日~20日、東京で第8回大会を開催。 大会では、前回大会から持ち越しだった社会主義における分配についての討議を行い、社会主義での分配の問題は、資本主義の再生産の流通を論じたマルクスの再生産表式から論じられるものではなく、意識的・計画的な生産という社会主義の生産に基づいて行われることを確認しました。 次いで国際、国内情勢についての報告を受け、討議が行われました。 国際情勢では、トランプの登場やEU諸国に見られるように反動的な右翼的ポピュリズムが台頭し、米国とEU、米国と中国との対立に示されるように、帝国主義国家同士の軋轢と分裂が深まるなど、分裂と対立、抗争と混乱の時代を迎えていること、こうした中で国際的な連帯に基づいた、労働者の帝国主義と資本に反対する闘いの意義が確認されました。 日本でもポピュリズムが広まり、「目先の利益」に終始し、バラマキを競い、自民に接近し、連合を策す国民民主や関税攻勢を「国難」とする政府に協力を申し出る立憲、そして、日本が自立した帝国主義国家であることから目をそらし、「反米」闘争、「民主的改革」を叫ぶ共産など、野党が堕落し、腐敗していること、労働者の革命的政党(労働者党)の重要性が確認されました。(国際、国内情勢、全員一致で可決) この他、日常的に「資本論」学習会中心の活動、適宜のビラ宣伝、セミナーも行うこと、ホームページを改善すること、SNS、インターネットの活用も積極的に行うことを確認しました。最後に代表委員を選出(これまでと同じメンバー)。 読者の皆様の熱いご支援、ご協力を訴えます。 【1面サブ】労働者を裏切る連合芳野会長石破首相との政労会見石破首相と連合芳野は4月14日、首相官邸で「政労会見」を行なった。大手企業の回答が終わり、中小企業の賃上げ闘争が本格化する中で、芳野は政府に賃上げの後押しを要請したが、労働者の団結した闘いで賃上げを勝ち取ろうとしない芳野の「政労会見」は、労働者の闘いを発展させることはできない。 ◇労働者をあざむく石破と芳野今回の政労会見は、連合側が政府に要請をし、実現した。会見は冒頭のみ公開で、内容は非公開だが、冒頭挨拶の芳野は「トランプ関税により世界経済が混乱し労働者は不安を感じており、賃上げの機運に水を差さないかと懸念している」と石破に「最大限の善処をお願いたい」と要請した。 芳野は、今年の春闘で大企業の賃上げが去年に引き続き5%であることに満足して、これから本格化する中小の賃上げを心配するのだが、労働者の実質賃金は下がる一方であることには全く触れない。「賃上げの機運に水を差さないかと懸念している」と言うが、連合が主導する「賃金交渉」では、実質賃金が低下するような賃上げしか獲得できないのだ。労働者は、資本に対する断固たる階級的闘いでこそ、大幅な賃上げを獲得できる。 労働者はもちろん「トランプ関税により世界経済が混乱する」影響を心配するが、労働者の生活不安には、資本の支配の下での「非正規労働」や「差別労働」による低賃金・過重労働などが根底にある。それを徹底的に一掃する労働者の闘いがないことが問題なのだ。 石破は、「賃上げこそが成長戦略の要」、「物価上昇に負けない賃上げを早急に実現、定着させていきたい」と応えているが、資本の利益を至上命題とする石破は、賃上げすれば企業の利益が減り、企業活動が停滞することは百も承知だ。石破は経団連などに対して「賃上げ」を要請し、経団連は応える振りをするだけだ。連合芳野は労働者の闘いを解体し、政府と資本と一緒になって労働者をあざむいている。 ◇混迷を深める野党勢力少数与党に転落した石破自公連立政権は、政権安定のために国民民主との「部分連合」を求め、特別国会での首相指名選挙では、維新と国民民主の協力で石破政権を成立させ、その後の臨時国会では、「総合経済対策」の裏付けとなる補正予算を維新と国民民主の協力で成立させた。 しかし国民民主は、所得税の課税ラインを年収103万円から178万円に引き上げる主張が取り入れられていないとして、2025年度当初予算に賛成しなかった。これを助けたのが維新だ。高校授業料無償化と社会保険料引き下げの維新の要求を自公が飲み、予算案は一旦衆院で可決した。 その後、高額療養費制度の見直しについて、制度見直しをいったん全面的に凍結する再修正で予算案は参院を通過し、3月31日ようやく年度内成立を果たした。 企業・団体献金の禁止の政治資金規正法改正、ガソリンの旧暫定税率廃止、年金制度改革などの法案、現金給付のための本年度補正予算案などで、与党、野党の各党は今年の参院選を控えて、それ ぞれの党利党略で離合集散が続いている。 ◇自民党追い詰める階級的闘いを!そんな中で、連合の仲介により立憲・国民民主は4月17日、基本政策の共同文書をまとめた。芳野は「参院選で一緒に戦える形の第一歩」と悦に入っている。しかし、立憲と国民民主は、憲法擁護か改憲か、原発廃止か原発推進か、など基本政策に大きな違いがあり、合意文書にはそれらに関しては抽象的な文言で飾られているだけで、これで一緒に闘えるというものではない。 そもそも何に向かっての闘いか? 立憲、国民民主のみならず、維新も共産も、資本の支配の変革は問題にもしない。彼らに頼っては、自民党を追い詰め労働者の未来を切り開く、労働者の階級的闘いの「一歩」にもならない。(佐) 【飛耳長目】 ★「日本でアメリカ車は1台もみなかった。日本車はアメリカ中を走っている。どういうことなんだ!」とトランプは嘯(うそぶ)いた。しかし、これは一面では真実ではある。外車保有台数は全国で全体の17%、都市部では30%、関税0%の恩恵か、最近はよく見かける★ベスト3はベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、いずれもドイツ車である。アメリカ車にはGM、フォード、クライスラー等があるが、ほとんど見かけない。何故アメリカ車売れないのか?★一言で言えば、日本市場に適する車を開発してこなかったことに尽きる。日本の安全基準、道路事情、燃費性能、車検制度、車庫証明等に適する比較的小型の車こそが売れる。重量ある大型車は日本では適さない。アメリカ製造業はかって世界市場を席巻したことに胡座をかき、技術や生産革新を怠ってきた。トランプの見方は表面的で、製造業衰退の真の原因を見ない★ところで、現在の車使用ほど非効率的なものはない。5人乗りに一人が乗り、家族で数台を保有し、企業の駐車場には何百台もの車が駐まる。都心では公共交通機関の発達で、基本、通勤に車はいらない★将来、全国で都心並みの交通機関が組織され、勤務地へは無料の乗り合いバスで向かい、車は適した数で効率的に運用されるであろう。 (義) 【2面トップ】労働者に背を向け自民と連携策す国民民主党昨年衆院選では、「103万円の壁」突破、「手取り収入を増す」との政策を掲げ、議員を4倍にも増加させた国民民主だが、6月の参院選を控えて少数与党の石破政権へのすり寄り姿勢を強めている。 ◇企業献金容認への転換自民との連携を示しているのは、「政治改革」=企業献金問題である。 自民は立憲をはじめ共産など野党4党派・1会派による「企業献金禁止」に対して、自民・公明は政治資金収支報告書をオンラインで提出する方式とする「公開性強化」案を提案、自民案も野党案もどちらも可決できない状況の中で、公明は献金した企業名を公表する基準を1000万円超から5万円超に引き下げる提案を行った。 しかし、これは「裏金づくり」の温床となっている企業献金を前提としたもので、小手先の手直しでごまかそうとするものでしかなかった。 国民民主は以前には企業献金に反対していたのであり、野党案に賛成すれば、野党案が成立するはずであった。 しかし、国民民主は自公案に同調した。というのは、「103万円の壁」問題をめぐって、自民と交渉を続けており、自民に反対して交渉打ち切りとなるのを恐れたからである。 国民民主の言う「103万円の壁」問題解決には、年7~8兆円が必要である。しかし、その財源も曖昧なまま、「手取りを増やす」という目先の利益のために、企業献金温存に手を貸したのである。 ◇玉木らのさまざまな暴言国民民主の反動性は、この間の玉木らの様々な暴言にも示されている。 高額の医療費がかかった患者の自己負担に月ごとの限度を設ける「高額医療費制度」の見直しが問題とされているが、この問題をめぐって玉木は、現行制度では外国人でも「『3カ月程度の滞在で、数万円払ったら1億6千万円の治療が受けられるのは、日本の納税者や社会保険料を払っている人の感覚とするとどうなんだろう』というところも踏み込んだ見直しが必要」(日本テレビ系「ウェークアップ」2・15)と述べている。 実際には国民健康保険の加入は、就労や留学などで3カ月を越える中長期の在留者や特別永住者を対象に、保険料を支払うことで加入できることになっている。 しかし、「医療費全体に占める割合はきわめて小さく、外国人向けの医療費を削減すれば現役世代の負担の軽減ができるということでは全くない」(朝日・3・8一橋大、高久玲音教授)という。特殊な例を出して、日本で働いている外国人に問題があるように印象づけようとする玉木の発言は排外主義的である。 また今国会で問題になっている選択的夫婦別姓制度導入について、4月9日、国民民主の古川元久代表代理は「幅広い合意を求めていく問題。無理やりやると対立構造になってしまう」(朝日、4・10)と発言している。 選択的夫婦別姓問題については既に30年もの前から問題にされ、自民党の安倍派など右派の連中の反対によって今日まで引き伸ばされてきた問題である。彼らは、夫婦同姓は日本の伝統だとか、夫婦別姓だと家族の一体性が壊れるなどと難癖をつけ導入に猛反対している。 しかし、庶民にあっては名字はたかだか明治以降につけられたものであって、それ以前にはなかった。また別姓制度は外国では普通である。親の姓が違うからといって家族が崩壊することなどない。古川は根拠のないことを右翼や自民党右派などの反動派と一緒になって叫んでいるにすぎない。 外国人が利用した健康保険の高額医療費のことを持ち出して排外主義的な発言をしたり、自民党右派と一緒になって選択的な夫婦別姓制度導入にブレーキをかけるような発言をしていることにも国民民主の反動的な性格が暴露されている。 ◇自民との連合政権も視野に昨年の衆院選挙以降、国民民主の勢いは衰えていない。4月14日のNHKの政党支持率調査によれば、与党の自民29・7%、国民民主は7・9%、野党では立憲をも追い抜いて第一の支持率を得ている。 その支持者の年齢別内訳をみると、18~39歳では自民の16・4%を追い抜いて22・1%と断トツの1位であり、40歳代でも10・4%と自民の24・6%の半分近い支持を得ている。 国民民主は青年や壮年層、つまり働き盛りの層に支持が多いといえる。このことが彼らを勢いづかせている。国民民主と立憲が支持母体とする連合は、自公の過半数割れを目指して参院選・一人区での国民民主と立憲との選挙協力を要請しているが、国民民主は冷淡だ。 既に福井、滋賀、奈良では候補者が競合する見通しだ。 「対決より、手取りを増やす」という政策で支持率を高めてきた国民民主は勢いを駆って、勢力を伸ばそう目論んでいる。もし、参院選で国民民主が大きく伸び、自民が大敗するようなことがあるなら、自民、国民民主の連立など政界の再編もあり得るかもしれない。 具体的にどうなるかは今のところはっきりしないとしても、国民民主の伸長が資本の支配を補完するものであることは確実である。労働者の闘いの前進は、国民民主を徹底的に批判、暴露し、かれらへの期待や信頼を失墜させることなしにはあり得ない。 (T) 【2面サブ】柄谷行人の戯れごと労働を無視し「交換」を物神化する「朝日」が柄谷行人の連載を組んでいる。額に汗して働く労働者に生きる活力や未来を指し示すのではなく、本質をはぐらかし言葉遊びに興じる柄谷の思想について、「朝日」の記事や柄谷の著作を参考に、彼の思想について検討することにしよう。 ◇ソ連や中国を「社会主義」と錯覚柄谷は「朝日」の「柄谷行人回想録」(25・4・16)で、「マルクス主義は、資本主義を抑えるために、国家権力を使った。それが失敗に終わったことは明らかです」と述べている。ここで言う「マルクス主義」者とはロシアではレーニンやスターリンのこと、中国では毛沢東らのことである。 この文脈を読む限り、柄谷はロシア革命や中国革命について、未だに「社会主義革命」であったと観念し、この革命政権が資本主義化を抑えるために国家権力を行使して労働者・農民を抑圧してきたと評価している。 また、著書の『力と交換様式を読む』でも、「レーニン主義」は革命によって権力を握り「国家を揚棄」すると言ったが、「国家の揚棄どころか、かつてない強い国家をつくりだしてしまった」(75~76頁)と憤慨し、著書の『帝国の構造』では「国家社会主義(スターリン主義)に行き着いた」(12頁)と断じている。 その様な結果になったのは、「社会主義革命」を達成したレーニンが経済的土台の変革によって国家は死滅に向かうという「一方的な経済的決定論になってしまった」からだ、その根底にマルクスの史的唯物論があると述べる(『力と交換様式を読む』77~78頁)。 だが、残念なことに柄谷の主張はピンボケである。なぜなら、レーニンは来るべきロシア革命が「社会主義革命」ではなく「ブルジョア革命」であることを明言し、その限界の中で活動していたからである。ロシア革命後に「国家を揚棄する」と言うはずがなかった。 革命前のロシアや中国は農民(農奴)が大多数を占めた封建制社会であった。この社会が桎梏になり、農民と労働者が革命に立ち上がったとしても、資本主義を飛び越えて一気に「社会主義」に進むことは不可能であった。 レーニンはトロツキーやスターリンと違って、このことを良く理解していた。だが柄谷は、ロシアの歴史もレーニンの思想(歴史の弁証法的理解)も知らずに批判している。 革命後、ソ連や中国の共産党は農民を強収奪しながら国家財源をつくり、重化学工業などの勃興を図りながら急速に「国家資本」を蓄積していった。結局、両国共に「国家資本」が労働者から剰余価値を吸い取る「国家資本主義」として発展していく。 しかも柄谷はレーニンとスターリンを一緒くたにして「マルクス主義者」として断罪するが、スターリンはソ連の「国家資本」の人格化=最高権力者として登場したのだ。柄谷のレーニンに対する批判は右翼的俗流学者が繰り出す姑息な手段と同じ類いだ! ◇労働を軽視する柄谷「社会主義」をめざしたロシアは「スターリン主義国家」に変質したと勝手に解釈した柄谷は、「マルクス主義」(史的唯物論や弁証法)を否定し「カントの観念論」に接近していく。その行き着いた先が労働過程を捨象(無視)し、何事も流通や交換に還元することであった。 つまり、各種の生産様式(生産と分配の歴史的形態)を「交換様式」に改変することが柄谷の目的になった。 例えば、封建制土地領主が農民(農奴)から米などを封建地代として収奪することを「農民保護」との「交換」に解消する。 また、生産手段を社会的に共有した共同労働社会では、各人が自覚して共同労働(分業や協業)に参加し、支出した労働時間に応じて社会から自由に生活手段を受け取るという関係が築かれるが、柄谷はこれらを知るよしもなく、ただ「共同体」を「贈り物と返礼」という曖昧な「交換」に置き換える。 資本主義においても、柄谷は労働過程で剰余価値が生産されることを否定し、流通過程で「価値差額」が発生すると次のように見なす。 労働者が労働過程で労働する時と、賃金で生活手段を「買い戻す」時との間には「時間差」がある。この「時間差」を契機にして「価値差額」が生まれる。「価値差額」は技術革新によって「相対的に労働力の価値を下げる」ことによって生じる。その結果、産業資本は「商人資本と同様に」流通における「交換」から「差額(剰余価値)」を獲得すると断じる(『帝国の構造』22~23頁)。 だが、マルクスは柄谷のような「時間差」を取り入れていない。労働過程での労働と労働者が賃金で生活手段を「買い戻す」ことは、同時並行して進む概念で論じている。 こうして、柄谷は『資本論』に書かれている内容を歪曲し、とんでもない方向に読者を導いていく。このような作為を通じて、柄谷は「流通」が、つまり「交換様式」が歴史貫通的であると言い出すのである。 ◇「交換」を物神化柄谷は「交換が社会に作用する力」(物神の力)があると考え、「交換の原理に基づく運動」(NAM)を行ってきたが、その「運動」はわずか2年半で解体したと「朝日」で白状している(23日)。 この「NAM原理」について、柄谷は次のように説明する。一つは「消費者運動」である。もう一つは「資本主義と国家の外の空間をつくり出す」こと、具体的には協同組合運動や地域通貨発行のことである。「特に後者が重要である」と言う。 世界中に協同組合が作られているが、これらの協同組合によって、資本主義や国家に関わらない独自の経済圏が作られたという話を誰も聞かない。 大規模を誇る「生活協同組合」が販売している商品を見ても、他のスーパーのものと何ら変わらず、むしろ相対的に高価格であり魅力がない。かつ、生協で働く労働者は賃金労働者であり、大半が極小賃金のパートで働いている。 現代の協同組合は利潤を求める資本の一形態であり、資本主義の枠内で活動する商業資本に過ぎない。柄谷の運動がわずか2年余りで挫折したのは当然であろう。地域通貨も子供だましの類いだ。 結局、「交換」を「物神化」する柄谷の理屈は、プチブル仲間の間では通用するかも知れないが、健全な人には見向きもされないだろう。 (W) | |||||||||||
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