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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1502号 2025年7月13日
【一面トップ】 労働者を愚民に誘うバラ撒き政治
        ――参院選で問われているのは何か?
【一面サブ】  軍拡に進む欧州の帝国主義国家
        ――イスラエル・米国の蛮行称賛のNATO
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 好機到来と利潤拡大策す日鉄
        ――労働者に対する合理化攻撃は必至
【二面サブ】  富裕層・企業に恩恵、格差拡大へ
        ――トランプ「歳出・減税法」が成立
《前号の訂正》
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

労働者を愚民に誘うバラ撒き政治

参院選で問われているのは何か?

 24年厚労省の国民生活基礎調査で、生活が「苦しい」と回答した世帯が6割に上り、子供がいる世帯に限れば「大変苦しい」が前年比5・4ポイント上昇の33・9%にのぼったことが5日の新聞各紙で報道された。

◇給付か減税かを競う自公政権と野党

 国民の6割が「苦しい」と回答する原因は物価高騰である。上記調査(23年)では「1年間の平均所得は1世帯あたり536万円で、22年より2・3%上がった」、にもかかわらず「大変苦しい」という回答が増えている。消費者物価は25年5月には前年比3・5%上昇し、20年を100とすれば111・8に上昇し、物価上昇を含んだ実質賃金は5月まで5か月連続でマイナスを記録している。

 主食のコメの品薄や物価高騰が続き、さらに10月までの期間で1万4409品目もの食料品が値上げされる。このような、物価高騰による生活苦にあえぐ労働者大衆の怒りや絶望感が蔓延しているのを〝感じ取った〟政党の選挙政策が、〝現金給付〟か〝減税〟かをめぐる対立である。

 石破は、国民民主玉木との国会終盤の党首討論でも野党が掲げる物価高対策は、今後高齢化と人口減少が進む中で、社会保障の持続可能性を考慮しない、代替財源を明らかにしない無責任な政策だと批判した。

 石破は「給付金は行いません」と啖呵を切ったが、その2日後には2万円を全国民にバラ撒くと発表した。参院選目当てがあまりにも明らかだったから、世論は給付金に66%も反対(6・29毎日)したのだった。

 自民の給付金2万円の根拠は、食品支出年27万円に物価上昇率7%を掛けると約2万円である。2万円ではインパクトに欠けると考えたのか、「30年までに賃金百万円増、40年までにGDP千兆円、国民所得5割増」と希望的数字を並べた。

 立憲も食品の消費税1年間ゼロ、「食卓おうえん金」1人2万円。財源は〝基金〟の取り崩しや〝外為会計〟と、かつての民主党政権の〝埋蔵金〟を思い出させる。

 国民民主は「手取りを増やす夏」と、「年収の壁」178万円への引上げを掲げ、消費税一時5%下げ、GDP千兆円を35年までに達成すると、自民と競うように並べた。

 維新は、新たに「社会保険料年間6万円下げ」と現役世代の負担削減を掲げたが、財源は医療費の4兆円削減で賄うという〝朝三暮四〟の欺瞞的政策を〝身を切る改革〟として持ち出してきた。

 共産は、消費税5%下げに必要な15兆円の財源は大企業、富裕層に応分な負担を〝お願い〟して実現するなどと、能天気な資本家階級性善説を吹いて回り、自らも労働者国民も欺いている。

 れいわは、消費税廃止、10万の現金給付、新たに季節毎に「インフレ対策給付金」の支給を掲げ、累積した1300兆円の債務を恐れることなく、国債発行で賄えばいいと声高に叫ぶ。

 参政は、国民負担率45・8%(24年)を35%に引き下げ10万の子供手当、消費税は段階的に廃止すると主張。社民は、食品消費税ゼロ、高齢者月10万円支給の年金制度を確立すると掲げた。各党、言ったもん勝ちと、バラ撒きのポピュリズム政治を競っている。

◇資本家性善説では資本は譲歩しない

 労働者階級の基本的な立場を確認しよう。消費税は、ブルジョア国家による「追加的収奪」であり「逆累進性」の不公平な税制であり反対する。

 消費減税によって不足する財源を共産や社民は、大資本や富裕層に対する課税強化=「応分の負担」で賄うと主張するが、ブルジョア支配の中でブルジョアの利益を守る税制が確立している。資本家階級は「応分の負担」を免れるために手を尽くし、合法、脱法、非合法的手段で税負担を削減しようとしている。だから我々は、大資本や富裕層に「応分な負担をお願いする」共産や社民は腰の引けた資本家階級性善説であって、それでは闘えないと警告するのである。

 資本の支配を一掃する、労働の解放を勝ち取る決意のもとに団結した労働者階級の闘いがなければ、バラ撒きを競う政治は、労働者を愚民に誘う為政者の政治である。れいわのような野放図な財政拡大策の尻ぬぐいは、労働者・働く者の犠牲によってなされて来たのが歴史の教訓である。

◇日本人ファーストは排外主義の隠れ蓑

 さて、注目されている参政党の正体を暴露し――比例区投票先で参政は8・1%で自民党に次ぐ2位である(6日共同)――労働者の取るべき立場について考えてみよう。

 参政党の基本的立場は〝日本人ファースト〟に集約される。そこから〝3つの柱と9の政策〟が導き出されている。「日本人を豊かにする」、「日本人を守り抜く」、「日本人を育む」、彼らが〝国民〟ではなく〝日本人〟を使う意味は、トランプが〝アメリカンファースト〟を掲げて白人優位の民族差別で排外主義を貫くのと同じである。

 参政党の「新日本憲法(構想案)」前文の書き出しは、「日本は、稲穂が実る豊かな国土に、八百万の神と祖先を祀り・・天皇は、いにしえより国をしらすこと悠久……」である。

 見られるように、「日本は、天皇のしらす君民一体の国家」と、天皇制国家を謳う生粋の国粋主義政党である。参政党が規定する国民の要件は、〝両親のどちらかが日本人で、日本語を母国語とし日本を大切にする心を有する〟であり、人種的優劣のナチズムの思想に限りなく接近している。

 参政党神谷は、「独ハンデルスブラット紙から『親和性が高い他国の政党』を尋ねられ、『米共和党の保守派』、『ドイツのための選択肢(AfD)』、仏『国民連合(RN)』、英『リフォームUK』を列挙した」(7・8毎日)。

 労働者は自公を少数派に追い込むと共に、〝日本人ファースト〟の裏に隠されている排外主義の危険性を理解し、参政党ら反動的な政党の躍進を許してはならない。 (古)


【1面サブ】

軍拡に進む欧州の帝国主義国家

イスラエル・米国の蛮行称賛のNATO

 6月13日に開始されたイスラエルによるイランへの突然の攻撃と22日の米国によるイランの核施設への爆撃は、自国・自陣営の利益本位の帝国主義国によるイランへの容赦ない攻撃だ。NATOはその蛮行を称賛、自らも軍備拡大を進めている。

◇イスラエル・米国によるイラン攻撃

 イスラエルによるイランの核関連施設や弾道ミサイル等の軍事施設等の爆撃、防衛隊総司令官や核開発科学者らの殺害は、イスラエル・ネタニヤフ政権がイランの核と弾道ミサイルがイスラエルの脅威だとし、それを取り除くとしたものだ。

 イランはイスラエルの都市に弾道ミサイルで反撃、軍事的な応酬に発展した。しかし制空権は完全にイスラエルに握られるなど圧倒的な軍事力の差があり、イランは大きな打撃を受けた。

 トランプは20日、攻撃停止要請は「難しい」と述べ(朝日6・22)、しかし22日、イスラエルの要請に応じ米国はイランの核施設3箇所を空爆。

 イラン側は、「国連常任理事国である米国が、国連憲章、国際法、NPT(核不拡散条約)に対する重大な違反行為を行なった」と非難したが、イランが23日、カタールの米軍基地へのミサイル攻撃で形ばかりの報復を行い停戦となった。イランはただ体制維持のため、当面の停戦には応じた。

 この間国連は23日、安保理の緊急会合が開かれ、即時停戦の決議案が提出されたが、米国の拒否権で採決されなかった。国連のグテーレス事務総長は、「米国によるイランの核施設攻撃は危険な転機だ」と言うが、米国・イスラエルを直接非難はせず、国連の平和維持の機能不全を明らかにした。またIAEAも米国とイスラエルよる核施設攻撃を公式に非難しなかった。

◇軍拡に進むNATO

 停戦後25日、NATO首脳会議では、イスラエル、米国の帝国主義的蛮行を、NATO、G7、日本は非難することなく、ルッテ事務総長は「米国が行なったことは国際法違反だという指摘には同意しない」と核施設攻撃を称賛した。

 イスラエルの核保有、イスラエル、米国のイランへの攻撃の容認は、米国と欧州と国際組織が犯した「二重基準」であり、世界の労働者の信用を失う契機となるだろう。

 首脳宣言では、加盟国は35年までに、現在のGDP比2%水準の目標を5%まで増額させる新目標を掲げた。

 NATOの軍事費大幅引き上げは、トランプの意向を反映しているが、ウクライナ危機を契機にして、NATO、そして加盟国それぞれが、ロシアの侵攻を想定して軍事力増強に進むものであり、NATOとロシアとの帝国主義的な軍拡競争に発展している。

 トランプは、NATOへの関与を弱めるという考え方を持ち、軍事費増大の要求はその一環だ。まだNATOには加盟していないウクライナへは、NATOの有力国が武器供給などの支援をしているが、NATOはトランプをNATOに引き留めて置くと共に、EUとして独自に軍事増強を図ろうとしている。

 ドイツは24日、軍事費のGDP比を29年に3・5%にする計画を発表した。24年は約2%なので大幅な引き上げになり、NATOの目標に応じて軍事力強化がはかられる。ドイツはNATOの防衛にこれまで以上に貢献する方針だ。5月からバルト三国のリトアニアに、5000人規模のドイツ軍単独部隊が駐留している。またポーランド、スエーデン、バルト三国のラトビアでは、徴兵制が復活している。

 英国は25日、核兵器の搭載が可能な米国製の最新鋭のF35Aステルス戦闘機12機を購入すると表明した。

 アジア太平洋パートナー日本は24日、NATOと防衛産業の協力を強化していくことで一致した。日本の軍事費も27年度2%の目標に進んでいるが、米国は関連経費を除く軍事費について、NATOに対してと同様の3・5%という数値目標を日本に示している。

 NATOは「ロシアによる長期的な脅威」と「テロの脅威」に対抗するため、そして日本は中国の軍拡や海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発に対するためだとしているが、軍事費増大は労働者の生活を犠牲にし、国家間の軋轢を強める。

◇労働者の階級的な闘いで帝国主義の一掃を!

 イスラエル、米国によるイラン核施設の爆撃は、身勝手な利己的な帝国主義国家の蛮行だ。

 一方EU、日本は軍備を増強し、ロシア、中国との対立を深めている。

 国家間の対立に対し、労働者は国際的に連帯して、労働者の階級的に団結した闘いで、これらの帝国主義国家を一掃しなければならない。 (佐)


    

【飛耳長目】

★「退職代行サービス」の会社が全国に100社以上もある。ネットで検索すると「退職に交渉は一切必要ありません。退職意思の通知で問題なく退職は確定します」の謳い文句が踊る★ずいぶんアッサリと退職できると請け合うが、定型的な労働で交代要員がいるのならともかく、協同して働く職場なら引き継ぎは欠かせないと思うのだが……★筆者も2回の転職経験があり、同僚に迷惑をかけないように前もって伝えてきた。しかし、就職間もなくや人間関係が合わないとか、言い出せない事情も理解できる★労働法は会社が労働者を不当に拘束することや、退職時に罰則を課すことを禁じている。退職の自由は保証されているのだ★会社側も対策を講じる。ビジネス用語の「報告・連絡・相談」の「ほうれんそう」での意思疎通には、「おひたし」での対応が必要だと。「怒らない・否定しない・助ける・指示する」の4つだ★労働者に対する上司の指示・監督とは、資本のために精一杯働くという規律に労働者を従わせる以外の何物でもない。労働者は資本の抑圧に抗して「職業選択の自由」や「退職の自由」の権利を持ってはいるが、再就職できるかどうかは資本家次第である。労働者は資本に支配され、搾取されるという意味では、本質的には賃金奴隷なのだ。    (Y)


【2面トップ】

好機到来と利潤拡大策す日鉄

労働者に対する合理化攻撃は必至

 日本製鉄(以下、日鉄)は経営不振で〝売り〟に出していたUSスチール(以下、USS)の買収計画を打ち出し、以来、バイデンやトランプ大統領の反対に直面したが、去る6月14日、トランプ政権の承認を取り付けたと発表。USSを完全子会社化して再建するという。だが実際にはそう簡単ではなく、労働者に大きな影響を与えることになろう。

◇鉄は過剰生産

 国内の粗鋼生産量は、19年から1億トンを割り、22年からは連続して9千万トンを下回っている。24年の粗鋼生産量は8千4百万トンであり、日鉄はその半分の約4千4百万トンを生産し、世界4位である。だが、国内の鉄使用量は生産量の6割ほどに過ぎず、残りの4割を輸出に回している。日本は既に過剰な生産設備を抱えている。

 他方、日鉄が買収したUSSの粗鋼生産量は、日鉄の3割ほどの約1千4百万トンしかなく、22年の世界27位から24年には29位に後退。しかも、老朽化した生産設備は長年更新されておらず、生産性が低く、品質面でも価格面でも競争力がないと言われ、営業利益が大幅に減少している。

 USSは今年1~3月期の最終損益が1億1600万ドル(約170億円)の赤字となり、2四半期連続の赤字となった。米国でも日本同様に鉄は過剰ぎみである。

 ところが、中国では住宅や自動車などの需要の高まりに乗って製鉄業は生産を拡大し続け、今や中国は世界一の鉄生産国になった。その結果、鉄は世界的な過剰生産に陥り、価格競争が激化し安値販売が起きている――中国は年に10億トンの粗鋼を生産し、世界の粗鋼生産量である19億トンの5割以上を占める。

 こうした世界的な〝鉄余り〟状況の中で、日鉄は他企業との統廃合を進め、その上で工場整理を進めてきた。19年には住友金属を統合し、必要な工場設備を生産性が高い最新鋭に換え、その他の設備を廃棄する動きを急いできた。日鉄は国内にある15基の高炉を10基に減らし、それでも同程度の生産量を確保し、利益幅を増やす体制を築いている。貪欲に利潤拡大と資本蓄積をめざす資本の運動の一断面と言える。

◇海外進出図る

 日鉄は78年、中国に進出し上海郊外に中国宝武鋼鉄集団の中核企業、宝山鋼鉄と合弁企業を作り、半世紀にわたって経営し、さらに2004年には、中国に進出した日系自動車メーカー向けの自動車用鋼板を製造してきた。だが昨年7月、日鉄はこの合弁事業から撤退を決めた。

 近年、中国の新興自動車メーカーが開発したEV自動車が急速に中国市場を席巻し始め、出遅れた日本車メーカーは窮地に陥っている。その結果、日鉄も中国から撤退を迫られていたのである。

 米中対立が深刻化し中国での製造に圧力をかけられ、加えて、中国製鉄メーカーが躍進し、中国市場ではこれ以上利益を生み出せないのである。中国撤退はUSS買収に賭けて機先を制する意味もあったであろう。

 日鉄は中国の他にインドなど世界各地への進出も図ってきた。19年には欧州アルセロール・ミタルとの合弁で、インド5位の鉄鋼大手を買収。同じインドに高炉を建設する計画も発表している。そして、今度は、USSの買収にこぎ着けたのだ。

 日鉄は製鉄の過剰生産が顕在化しても、生産の縮小ではなく拡大に野心を燃やし、中国撤退で憂き目を見たが、老舗のUSSを買収し再び世界トップの座に収まろうとしている。

◇実際は生産の統廃合と搾取強化

 日鉄の戦略は生産の拡大に見えるが、実際には、買収した企業の古い生産設備の廃棄であり、新しい技術を応用した設備への転換であり、全体では統廃合と整理であろう。

 それによって、生産性をあげ自動車用鋼板などの高品質で高価格の製品を送り出し、「1トン当りの営業利益」を最大化しながら世界トップの利潤確保を狙う。

 そのために日鉄はUSS買収費用である株式取得などに141億ドル(約2兆円)を支出。さらに日鉄はUSS再建のために、「28年までに110億ドル(約1・6兆円)。その後の分も含めると140億ドルを投じる計画だ」(朝日デジタル、25・6・14)。

 しかし、こうした莫大なカネを投資して、順調に利潤拡大を成しえるかは不明であるばかりか、統廃合と整理が進むにつれて、労働者に対する配置転換や労働強化を強いてくるであろうし、解雇さえも強いるであろう。

 なぜなら、北米に日鉄の製造拠点が既にある上に、現在のUSSの人員のまま(2万2千人)、日鉄並の生産性のある工場に作り換えるなら、生産量は現在の2倍にもなり生産の過剰がさらに顕在化するからである。そうなれば、米国内での価格競争も激化するであろう。

 他面では、既に日鉄は、世界の15カ国に製造拠点を持ち、世界の労働者から生き血(剰余価値)を吸うグロバール資本として存立している。日鉄はさらに資本蓄積を進める絶好のチャンス到来とみてUSSの買収を決めたのであり、日鉄は米国でも敢然として資本の論理を貫くことになる。

 こうした現実や資本の論理を見るなら、いずれ、日鉄(USS)による米国工場の統廃合と整理は避けられない。労働者は決して資本を侮ってはならない。

 他方、米国の労働組合はどうであろうか。

 米国の鉄鋼労働組合は、時には戦闘的であるが、ブルジョア的であり、それゆえ彼ら組合幹部は労働者の労働条件や生活条件を一貫して守ることができない。今までと同様に、彼らは日鉄にも「経営参加」を持ちかけており、EUの産別労組がそうであったように、資本の代理人として振る舞い、最後は資本を救済してきたのである――EU産別の原発再開要求を見よ。

 今後、米国に進出した日鉄の合理化がどのような形で現れるかは定かでないが、資本の本性を感じ取り、また労組幹部の動向を警戒しながら、労働者は闘う体制を構築しなければならない。労働者は古い生産手段の廃棄や整理には反対しないが、労働者への犠牲の転嫁には断固として反対し生活を守るために闘う。それは、日本の日鉄労働者も同じ立場にいるのであり、日米の労働者が連帯して、階級的に闘う条件は熟している。 (W)


【2面サブ】

富裕層・企業に恩恵、格差拡大へ

トランプ「歳出・減税法」が成立

 上院に続き、3日、下院はトランプ政権の主要政策を盛り込んだ減税・歳出法案を賛成218票、反対216票の僅差で可決した。トランプの「一つの大きな美しい法案」、「米国の黄金時代が来る」との手前味噌の自画自賛と裏腹に、今後10年間で3・4兆ドル(約490兆円)もの巨額の財政赤字が予測され、大幅減税など企業、富裕層への恩恵によってもたらされる財政的負担は、低所得層にしわ寄せされ、貧富の格差が一層拡大することは必至である。

◇企業、富裕層への優遇減税

 「歳出・減税法」の主要な内容の一つは、今年10月に期限を迎える2017年の第一次トランプ政権時の「減税・雇用法」の恒久化である。

 「減税・雇用法」(トランプ減税)では、法人最高税率を35%から一気に21%へと大幅に引き下げた。所得税については、低所得層よりも高所得層の方が減税の恩恵が大きくなっている。その他、遺産及び贈与税の基礎控除額は、549万ドルとされていたのが、2025年までの時限措置ではあるが、約2倍の1000万ドルに引き上げた(税率40%は変わらず)。これも今後継続される。

 州・地方税の支払い分を連邦税から控除される制度はなかったが、2017年の「減税・雇用法」によって、支払われた所得税、財産税、売上税の合計額に対して1万ドルの控除限度額が設けられた。これについても控除金額を拡大して延長されることとなった。

 これらはいずれも、企業、高額所得者にとって有利な制度である。

 さらに、新たな減税として、トランプが24年大統領選で公約したホテルやレストランなどの接待サービス労働者に対するチップの免税や労働者の残業代への免税が加えられるとになった。しかし、これ等は28年までの限定であり、減税額としては前者が316億ドル、後者が895億ドルであり、個人所得税減税2・1兆ドル、基礎控除の拡大維持1・4兆ドルとくらべて比較にならないほど微々たるものである。結局、チップ免税や残業代への免税といったものは、トランプにとって大企業や富裕層への大幅減税への低所得者層からの不満を逸らせ、あたかも自分が低所得者たちのことを思いやっているかのような振りをする欺瞞であった。

◇減税のツケは低所得者に押し付け

 企業、富裕者への大幅な減税を行う一方、歳出には大ナタが振るわれた。その筆頭ともいえるのがメディケイドと呼ばれる低所得者を対象とした公的医療制度の改悪である。米国では日本のような国民全体を対象とした公的医療保険制度はない。このため低所得者層では医療保険を持たない者が多く、オバマ政権の時、低所得層を対象とするメディケイドとよばれる国家が補助金を出して低負担で医療が受けられる公的医療保険が導入された。

 このメディケイドの保険受給者に就労の義務を課すというのが今回の改定の内容である。働いていない者は公的保険を適用されず、高い民間保険に頼るか、無保険者になるしかない。これによって、2034年には無保険者が1700万人増えるとみられている。

 また64歳以下の人口に占める無保険者の割合は24年の9・4%から34年には17・2%になるという試算もある(朝日新聞、7月5日)。今回の法改定では、この措置によって1兆ドルもの財政削減を見込んでいる。

 その他電気自動車(EV)への支援停止、太陽光発電への支援停止など気候変動関連の歳出削減で0・5兆ドル、〝不法〟移民の入国を阻む国境の壁の建設、〝不法〟移民強制送還など移民対策などで0・1兆ドルの削減を予定している。

 昨年の大統領選では、トランプは職を失い苦しい生活を余儀なくされている労働者の味方と言って自分を売り込んで大統領になった。しかし、実際には企業や富裕層に対して巨額の減税を行う一方、メディケイドの改悪に見られるようにそのツケを貧しい労働者に押し付けようとしているのだ。

◇深まる米国社会の矛盾

 今回の「歳出・減税」法による今後5年間の見通しについて、米議会予算局の試算によると全体として経済成長率を年0・1ポイント押し上げ、財政赤字は今後10年間に3・4兆ドル(約490兆円)増えると言う。トランプは、関税収入によって財政赤字を埋め合わせることも可能とも言う。しかし、トランプが外国に対して一方的に課した関税は輸入商品の価格に上乗せされ、最終的に負担するのは米国の国民であり、家計赤字の軽減の助けにはならない。

 トランプの「歳出・減税」法は、大企業・富裕層を中心とした大幅な減税により経済成長を実現し、それによって国民が潤うという、レーガン大統領以来のトリクルダウンの想定に依拠した新自由主義による政策である。企業や富裕層が潤えば、貧しい者も豊かになるというレーガン以来の共和党の新自由主義の政策がたわけた幻想であることは、既に経験済みであり、今後、富める者と貧しい者との貧富の格差がますます拡大し、社会的矛盾が深まることは必至である。 (T)


《前号の訂正》

1面トップ記事2段 後ろから10行~7行
(訂正後)
党首討論の翌日に党首会談を設け、党首討論・党首会談を「協力」の場にしている。

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