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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1506号 2025年9月14日
【一面トップ】 政権たらい回しの自民党糾弾!
        ――総裁のすげ替えで、延命策す
【一面サブ】  中国侵略を「自衛戦争」と
        ――歴史を改ざんする参政党の行方
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 軍事力誇示し米国に対峙
        ――抗日戦勝利80周年の中国習近平
【二面サブ】  帝国主義化に邁進する軍事予算
        ――財政破綻で労働者は塗炭の苦しみに!
       ※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

政権たらい回しの自民党糾弾!

総裁のすげ替えで、延命策す

 7日、石破は、記者会見で総裁辞任を表明した。2年の任期を残しての辞任表明である。参院選大敗の責任をめぐって、旧安倍派や中堅・若手グループから石破総裁の辞任を求める声があがり、これに反対していた石破は抵抗むなしく受け入れざるを得なかった形だ。だが、選挙の敗北をもたらした有権者大衆の批判は、石破政権のみならず自民党全体に対して向けられたものであり、その責任は石破のみならず自民党全体が負うべきであり、総裁の首のすげ替えで政権維持を図ろうとする自民党の姑息な延命策である。

◇権力にしがみついた石破の辞任

 7月の歴史的ともいえる自民党の参院選大敗は、生活を圧迫する物価高、一向に改善しない低賃金、大企業経営者や金持ちなど富める者と労働者ら貧しい者との貧富の格差の拡大、自民党の「裏金づくり」に象徴される自民党の金権・腐敗など、石破自民党政権に対する有権者大衆の不信、怒りの現れである。有権者大衆は石破政権に対して「ノー」を突き付けたのであり、石破は責任を取って即刻辞任すべきであった。

 実際、自民党の敗北の主要な原因となった「政治とカネ」の問題でも、石破は企業・団体献金を廃止することは企業や個人の政治的な自由を規制することになるとして反対、政治資金報告書を誰でも見やすいようにデジタル化する=「透明化」とか第三者による違法か否かの判定、などを持ち出し企業・団体献金を継続することで押し通してきた。また、安倍派の「裏金づくり」の問題についても、偽証すれば罰せられる「証人喚問」を拒否し、罰せられない国会での事情「説明」でごまかしてきた。

 石破は、9月2日、選挙結果を総括する自民党両院議員総会において、「石破であれば変えてくれるという期待を裏切った」と〝お詫び〟の言葉を述べ、「(総裁の)地位に恋々としがみつくつもりは全くない。しかるべき時にちゃんと決断する」とした。だがその一方では、日米関税交渉や物価対策など「早急に対応しなければならない課題に責任を持つ」と言い、現時点での総裁=首相降板の積りはないことを強調した。石破の〝お詫び〟は、批判をかわすための口先だけのものでしかなく、本心は総裁続投にあった。実際、表立っては口に出さなかったが、もし「臨時総裁選ともなれば,(総裁選に)撃って出る」と言ったり、裏では首相権限による「解散・総選挙」の可能性をちらつかせ、党内の「石破降ろし」を叫ぶ議員を威嚇した。また、新たな経済対策の作成を命じたりもした。

 石破は、党内の旧安倍派などからの石破おろしの声が強まる中で、メディアの世論調査で「辞める必要がない」との意見が「辞めろ」の意見と接近したり、内閣支持率が若干上向いたことを見て、自信を持ったかもしれない。だがそれは、旧安倍派らの右翼反動派と比べるなら石破の方が少しは〝増し〟との思いを反映するものでしかなく、石破政権を支持、その続投を願っている意見ではなかったことは明白である。

◇無責任な自民党の選挙総括

 自民党の無責任さを暴露しているのが両院議員総会に発表された参院選総括(以下「総括」)だ。

 「総括」は、参院選大敗の原因について、世論が重視した物価高対策として、現金給付を公約してきたが、「国民に刺さらず、争点設定も不発」に終わったとか、「政治とカネ」にをめぐる不祥事は「国民の信頼を損なった」などを挙げたにすぎない。「総括」は言う。

 「参院選の敗因は、一言でいえば『国民に寄り添い、くらしの安心を確実に届けることが出来なかったことだ』。国民から突き付けられた『現状からの脱却』という至上命題を真摯に受け止め、解党的出直しに取り組み、国民に信頼される真の国民政党に生まれ変わることを誓う」と。

 「現状からの脱却」を目指して「解党的出直しに取り組む」と言いながら、「総括」が「改革の具体策」として挙げているのは、自民党が目指す国家ビジョンづくりのための若手・ベテラン合同勉強会の組織化とか、国民の関心や意識の変化を把握し、発信するためのインターネット活用の強化などにすぎない。

 「政治とカネ」についても「信頼を損なった」というだけで済まし、また「暮らしの安心」を届けると言いながら、何らそのための具体的な計画や展望を示しえないで、何が「解党的出直し」か。まったく有権者大衆を愚弄している。

◇自民党打倒に向けて労働者の闘いを組織し、発展させよう

 今回の「総括」を受け、石破が頼みとする森山幹事長はじめ、小野寺政調会長ら党4役が辞任を表明した。さらに次々と閣僚や副大臣、政務次官から職を辞さずに倒閣に走る者が現れ、辞任を要求する議員が過半に達する勢いになるに及んで、石破の悪あがきも潰えて辞任に追い込まれた。

 だが、石破おろしが成功したからと言って、リコール派の正当性を証明するものではない。リコール派の先頭に立った旧安倍派は、大企業の利益確保のための「アベノミクス」によるバラ撒き政策で、国家財政を借金漬けにするなど経済低迷に落ち込ませる一方、労働者の生活苦、労働苦をよそに、「裏金づくり」や旧統一教会との癒着など犯罪に手を染めてきた。

 また中堅・若手と言われる連中も、「総括」と同じように「現状から脱却する」ための具体的な「改革」策を持っているわけではない。

 石破ではだめというなら、それに対する「改革」策を明らかにすべきである。しかし、このことについて誰一人として示すことなく、石破降ろしを声高に叫んできたにすぎないのである。

 彼らは、総裁の首をすげかえる事によって、自民党が一新され、国民にとって将来が見通せるような展望が開けるかのような幻想を振りまいている。だが、誰が新たな総裁になろうと、労働者の労働の搾取を原理とし、私的利益を目的とする資本のための政党である自民党である限り、労働者・働く者に明るい未来はない。

 自民党の総裁の座をめぐる争いは、有権者大衆そっちのけの権力のための争いでしかない。自民党政治を打破し、資本の支配克服に向けて労働者の階級的闘いを発展させていくことが追求されなくてはならない。 (T)


【1面サブ】

中国侵略を「自衛戦争」と

歴史を改ざんする参政党の行方

 参政党は歴史認識において、自分勝手に講釈を垂れる。参院選に向けた演説でも、中国に侵略していった帝国主義的蛮行を否定し、旧日本軍の行動は「自衛戦争」であったと擁護していた。

◇真実を消す神谷

 参政党神谷代表は6月23日、那覇市での街頭演説で、日中戦争について、旧軍部の言い草を肩代わりして次の様に述べた。

 「(日本は)中国大陸の土地なんか求めてないわけですよ。日本軍が中国大陸に侵略していったのはうそです。違います。中国側がテロ工作をしてくるから、自衛戦争としてどんどんどんどん行くわけですよ」。

 神谷が言う「中国側のテロ工作」とは、日本軍の侵略に対する中国側の抵抗や反撃のことである。これが次第に組織され強まるのは、「満州国」から第二の「満州国」建国に向けた頃である。

 少し歴史を振り返える。

 そもそも、日本が本格的に軍事侵攻を開始するのは、第一次大戦後の過剰生産恐慌で不況が深まり、27年の昭和恐慌、29年の世界恐慌で追い打ちをかけられ、弱小資本の淘汰と独占資本の形成が進み、独占資本による中国大陸進出という強い欲求があったからである。

 日本の独占資本と軍部は、不況による国内市場の縮小や破綻を補い挽回するために、広大な中国市場で独占的な事業拡大を求めて、「在華紡」と呼ばれた紡績資本や資源開発資本による資本輸出を進めた。「在華紡」の投資額は1902年から30年までに「満州を除いた中国全域で1億8332万円に達した」という(Wikipedia)。現在の金額に換算すれば概算で5百億円にもなろう。

 さらに、日本は日露戦争でロシアの満州支配を弱めたが、ロシアの南下政策を防ぐためにも、満州地方を領有して防衛線を築き、かつ資源などの権益の排他的独占を渇望するようになる。

 満州侵攻を画策していた軍部=関東軍は、奉天郊外の柳条湖で満州鉄道の線路を爆破(31年9月)。これを機に戦争状態に突入し、瞬く間に満州全土を占領した(32年)――神谷は「日本は土地なんか求めていない」と叫ぶが歴史の真実は消せない。

◇旧軍部を擁護

 当初、軍部は満州を日本の直轄領にしようとしたが、国際的な非難を逸らすために構想を転換。清朝最後の皇帝溥儀を迎えて表向きは独立国家とし、実際は日本の傀儡国家=満州国にする。

 この頃、国内にはこれ以上の戦線拡大に反対する声もあったが(犬養毅ら)、陸軍中央は関東軍と手を結び、35年から36年にかけて満州に隣接するチャハル省や河北省へ侵攻を続ける。この2省を含む中国北部の5省を中国から切り離し、第二の「満州国」にしようと、いわゆる「華北分離工作」を強行したのである。

 この度重なる日本軍の華北への侵略は、中国側から激しい抵抗を引き起こした。中国共産党軍の反撃がはじまり、北京の学生による抗日デモ(12・9運動)も起こり、学生の運動はたちまち中国全体に広がった。日本軍部による中国大陸への侵略と植民地支配が強まると共に、抗議行動が中国全土で強まっていくが、神谷は中国側の民族自決を求める当然の反撃を「テロ工作」と誤魔化し、「テロ」に対する闘いは「自衛」の闘いであったと言いくるめる。

 だが、これは中国侵略を「聖戦」と美化し正当化した旧軍部とそっくりである。このように、平然と歴史を歪曲する姿勢は、単に歴史修正主義に留まらず、「大東亜新秩序」といった虚妄のスローガンを作り上げ、全面的な帝国主義戦争へと国民を扇動・動員した戦前の〝ファシズム〟に接近するものである。 (W)


    

【飛耳長目】

★長さ50㎞、幅5~8㎞の狭く細長いパレスチナ自治区ガザ。23年10月の戦闘開始から25年8月5日までの死者は6万1千人を超え、うち子どもが1万6千人以上だ★8月25日の南部ハンユニスの病院への記者や救護隊を含む20人が死亡した二度の攻撃を、イスラエル側は監視カメラを狙ったとするが、同じ場所の時間差攻撃は、明らかに救護隊を標的したもの。パレスチナ人を無差別で殺害する意図しか見えない★食料や住居を奪われ、人道危機はすでに極限状態だ。飢餓や栄養失調での死者は330人以上に上る。国連は4百カ所の食料配給所で援助してきたが、5月末からは米主導のガザ人道財団=GHFのみが行うとされた★配給所や量は極端に制限され、わずか4カ所の配給所は有刺鉄線で囲われた通路の先だ。イスラエル軍と元米兵らの契約警備員が銃で威嚇し、死亡する事件も後を絶たない★食料配給所での戦争犯罪を目撃した元米特殊部隊員の証言や、イスラエル兵の銃撃が住民に当たったことに歓声を上げる動画がSNSに投稿された★第2次大戦ではユダヤ人はナチスのホロコーストに遭ったが、ガザではイスラエルがそれと同じことをやっている。歴史の教訓を歪める民族主義的敵愾心の克服は、国際主義に基づく相互の信頼関係と接近によるしかないだろう。 (Y)


【2面トップ】

軍事力誇示し米国に対峙

抗日戦勝利80周年の中国習近平

 9月3日、北京で「抗日戦勝利80周年」の軍事パレードが行われた。ロシア・プーチンと北朝鮮・金正恩、経済制裁の対象でウクライナへの侵略者とその同盟軍である。世界の〝嫌われ者〟の独裁者である二人の間で、彼らを従える独裁者習近平。習近平のメッセージは、中国が米国に対抗する軍事力と、米国に対抗する軸になったことを世界にアピールするためである。

◇「台湾武力統一最終章」世界一流の軍隊建設

 軍事パレードでは、すでに実戦配備されている新兵器が相次いで公開された。最新鋭の大陸間弾道ミサイル「東風(DF)61」や潜水艦発射ミサイル「巨浪(JL)3」、ロボット兵器や各種ドローン、無人機、レーザー兵器、AI化、情報化など最新鋭兵器を世界に見せつけた。

 トランプは直ちに反応し、「米国への陰謀を企てる中、ウラジーミル・プーチンと金正恩によろしく伝えてほしい」と習近平にSNSで呼び掛けた。軍事パレードは、外国とりわけ中国と対峙する諸国に最新の強力な軍事力を誇示する事であり、国内的には国威発揚と愛国心を高揚させるプロパガンダに他ならない。

 そして米国に対抗する中心が、経済的、軍事的にも中国であることを、世界に向けて発信したのである。中国の2024年の軍事費は、3千136億ドル(米国は9千973億ドル)で2位。米国の3割弱であるが、実額はもっと多いと言われている。2000年から2024年までに14倍に拡大し、2010年以降は米国に次ぐ2位の座を占めている。

 習近平は3日の演説で、「世界一流の軍隊建設を加速し、国家の主権と統一、領土の一体性を断固として守る」と表明した。「領土の一体性」とは台湾の統一である。習近平はこれまでも一度として台湾との〝武力による統一〟を否定したことはない。習近平は今、軍事力による台湾統一に自信を深めつつある。トランプ第二期政権の誕生がその動きに拍車をかけたことは確実である。

◇関税での米国不信の隙をついた中国

 米国第一主義で世界を混乱させたトランプ1・0に学んだ中国は、トランプ2・0の関税攻撃に世界が衝撃をうけ米国への不信を高めている隙をついてASEAN諸国やブラジル、南米やアフリカなどの国々と連携を深め、トランプに対抗する関係を構築してきた。

 習近平は、「自由貿易を守れ」「高関税は弱い者いじめだ」と、中国が理不尽な弱い者いじめを行うトランプに対抗する勢力であることを訴えてきた。

 アフリカとの関係では2000年から中国・アフリカ協力サミット(FOCAC)を開催し、中国とアフリカは「運命共同体」と表現するなど関係を深めてきた。24年の貿易総額は2956億ドルと過去最高を更新した。

 6月11日に開催したFOCAC会議では、アフリカ53か国に対して中国への輸入関税をゼロにすると表明した。6月17日には、「中央アジア+中国」首脳会議を開催し「グリーン鉱物」(レアメタル)やサプライチェーン確立などに投資する「恒久善隣友好条約」などを採択した。

 天津で8月31日から9月1日まで開催した上海協力機構(SCO)首脳会議では、「世界やSCO地域の安全と安定に脅威と挑戦をもたらし、世界経済、特に国際貿易と金融市場は深刻な打撃を受けている」とトランプを批判し、「主権・独立・領土保全の相互尊重、平等・互恵、内政不干渉、武力による威嚇を行わない原則が国際関係の基礎だ」とトランプに当てつける文言を並べた。

 ロシア産原油を輸入しているインドに50%の関税を掛けるトランプに対してモディ首相は、SCO首脳会議に参加し、プーチンや習近平と挨拶を交わした。これは米・日・豪・印の対中国安全保障体制=クワッドに亀裂が入ったことを示す。

 ブラジルに対する関税50%は、〝ブラジルのトランプ〟を自称した前大統領ボルソナロに対する裁判へのトランプの個人的憤激に基づくものである。制裁関税にも拘らず、ブラジルの8月の貿易黒字は前年比35・8%と増加した。ブラジルはBRICS加盟国(BRICSのGDPはG7を21年に上回っている)で、中国が最大の貿易相手国で米国の比重は急減している。

 トランプは関税で中国封じ込めをもくろむが、思い付きのトランプの関税はトランプに対する不信を各国に植え付け、中国封じ込めは逆にトランプ封じ込めをもたらした。

◇プーチンの命運を握る習近平

 ロシア北極圏にあるLNG輸出設備「アークテック2」でLNGを積んだタンカー「アークテック・ムーラン」が、8月28日に中国の北海輸入ターミナルに入港しLNGを降ろした。ロシア産LNGは制裁対象でロシアはもちろん輸入した中国にも「二次制裁」が掛けられる。タンカーは全部で5隻がLNGを積んで中国の港に入港する予定だ。

 中国はウクライナ戦争を続けるロシアを、経済的、軍事的に(軍事転用可能な民生品輸出で)支えている。23年貿易では、ロシア輸出の30%、輸入の39・1%が中国。中国から輸入品目の47・2%が機械類、24年1~9月も50・6%を占めている(ジェトロレポート2月19日)。今月7日未明にかけてキーウを攻撃したドローン810機、ミサイル13発に必要な電子部品の出どころである。ロシア軍から発射される砲弾の4割が北朝鮮製と言われ武器弾薬と北朝鮮兵によってロシアの侵略を支えている。

ロシアの国家財政は戦時経済の〝持続困難〟をさらけ出しつつある。25年予算歳入は40兆3千億R(ルーブル)、歳出は41兆5千億Rの赤字財政、歳出の3割強は軍事費。赤字補填の財源、国民福祉基金が減少し繰り入れ額が大幅に削減し国債発行が必要になる。すでに政策金利は20%と高いことからも明らかなようにインフレが進んでいる。海外で起債できない国債の引き受けは、ロシア中銀か国有企業しかない。いずれも、中央銀行直接引き受けであり、インフレの爆発の引き金を引くことになる。

 中国との原油、LNG取引は、プーチン体制の存続に必須であり、プーチン体制はNATOの軍事的脅威の防波堤として中国にも必要。同様に金王朝も防波堤として崩壊を望まず存続に手を貸す。

 習近平が抗日戦勝利80周年の一連のイベントで国内的にめざしたのは、国威の発揚であり、愛国心を高揚させて、〝中華民族〟の一体感を作り上げる壮大な仕掛けである。

 そうした「精神主義」を必要とするほど、中国経済は低迷を脱せずにいる。7月の消費者物価指数は前年比0・4%上昇しながら、生産者物価指数は前年比マイナス3・6%下落と23年からマイナスを続けている。住宅価格も主要70都市で(2020=100として)94と依然として低迷した。投資額は不動産開発ではマイナス17%で、製造業もマイナス、インフラ分野はマイナス5・2%を記録。8月の製造業PMIは49・4(50以下は景気が縮小と判断)と5か月連続で50を下回った。

 今年1~6月の貿易収支は5860億ドルの黒字になっているが、若者の7月失業率は17・8%と高い。中国は6、7月に大学卒業で今年は1222万人が卒業するが、就職率は50%以下で昨年は45%。特に製造業分野は米国輸出が減少したことでリストラ、人件費カットなどが横行している。

 若者や労働者からの中国共産党に対する批判は抑圧されているが、軍事パレードの数日前に高層ビルの壁に「共産党がなくなってこそ、新しい中国がある」などの文字を映し出したニュースが報じられた。徹底的な監視社会である中国において組織的な闘いを開始することは困難であるが、中国の労働者は必ずそれをやり遂げるだろう。 (古)


【2面サブ】

帝国主義化に邁進する軍事予算

財政破綻で労働者は塗炭の苦しみに!

 財務省は3日、2026年度予算に向けた各省庁からの概算要求総額が122兆円になったと発表した。要求総額は過去最大で、軍事費も過去最大の8兆8千億となった。物価高で労働者大衆の生活苦が深刻化する中、軍事力強大化が進められようとしている。

◇2026年度予算に向けた過大な軍事費概算要求

 22年末に岸田政権は、米国との軍事同盟の拡大、「防衛力の抜本的強化」を掲げて、日本の帝国主義化の方向性を深化させた「安保3文書」を閣議決定した。23年度から27年度の5年間で軍事費の総額を43兆円として、23年度には22年度の5・4兆円から26%増の6・8兆円へと激増させた。

 それ以後も24年度7・9兆円、25年8・7兆円と拡大(当初予算、米軍再編経費等含む)。来年度は8・8兆円と過去最大を更新する。年末の予算編成時に米軍再編成経費などが加われば、9兆円だ。そのほか、支払いが翌年以降になる軍事ローン「後年度負担」がある。26年度予算「後年度負担」は、前年度から約5千億円増え16兆円超にも上り、今後さらに軍事費を増大させる。

 労働者大衆が、物価高の中で実質賃金が下がり生活苦に陥る中で、財源もないままに国債を増大させ、それを当てに不生産的な軍事費を膨張させるのだ。

 「安保3文書」の「防衛力整備計画」では、後述する「スタンド・オフ防衛能力」、「総合ミサイル防衛能力」、「無人アセット防衛能力」などを重点的に整備する方針が定められており、今回の概算要求で、これらについて重点的に予算要求が行なわれた。

 敵の射程圏外から敵基地攻撃ができ、「敵基地攻撃能力」として活用する「スタンド・オフ防衛能力」の強化には、地上から主に敵の艦艇を狙う射程1千キロ程度の12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)、変則軌道で地上の目標に命中させる島嶼(とうしょ)防衛用の高速滑空弾(能力向上型)、音速の5倍(マッハ5)以上で飛ぶ極超音速誘導弾や地上装置などが挙げられた。

 それとともに重点を置いている「無人アセット防衛能力」では、空と海上、海中で各種無人防衛装備品(アセット)を組み合わせ、日本の沿岸部に近づく敵の艦艇を監視、防御、攻撃する多層的沿岸防衛体制「SHIELD(シールド)」の構築が挙げられた。

 軍事費概算要求にはそのほか、日本が英伊両国と共同開発する次期戦闘機の開発、次期戦闘機と連携して飛ぶAIを活用した無人機の研究開発、26年度から航空自衛隊を「航空宇宙自衛隊」に改編して専門部隊「宇宙作戦集団」を新たに編成して、衛星通信網を整備する宇宙領域の能力強化、サイバー領域の防衛強化、那覇市に拠点を置く陸上自衛隊の第15旅団を拡充し「師団」に格上げしての南西防衛強化、中国の空母が活動を活発化させる太平洋の防衛体制を検討する「太平洋防衛構想室」の新設などが挙げられた。

 しかし〝抑止力〟の柱と位置づけられている「スタンド・オフ防衛能力」の強化は、敵基地攻撃も可能なミサイルの開発・配備である。「防衛強化」のために膨張する「防衛費」は、日本の軍事態勢拡大のためであり、中国、ロシア、北朝鮮などの周辺諸国との軍事的・政治的な対立を激化させる。

◇労働者をますます生活苦に追いやる資本主義社会

 予算にメリハリをつけるための要求基準は、今回「賃金や物価の上昇を踏まえる」を入れ、概算要求金額は、過去最大。

 その中で、国債費は25年度と比べて4・1兆円多い32・3兆円に膨張。税収による財源で政策に充てる経費を賄う基礎的財政収支黒字化の「財政健全化目標」を石破政権は前政権から引き継いだが、6月に決定した「骨太の方針」では、達成時期を「25年度から26年度」と先送り。借金である国債の減額はおろか、基礎的財政収支黒字化にも手が届かない。

 野放図な放漫財政による国債などの借金のツケは、インフレか、厳しい増税及び必要な社会福祉の削減か、あるいはその両方か、資本主義が続く限りそのツケは労働者大衆へ転嫁され将来世代にも犠牲が強いられるのだ。

◇戦争に進む世界の危険な帝国主義的軍拡競争!

 中国が3日に行った抗日戦勝利80周年記念式典での軍事パレードでは、「核の3本柱」と称する最新大陸間弾道ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイル、空中発射長距離ミサイルが公開され、最新鋭ステルス戦闘機がその上空を飛行、習近平はこれらを世界中に見せつけ中国の軍事強大化を誇った。

 それは、米国、EU諸国、日本と中国、ロシアなどの帝国主義国家間の軍事的競争を強める。その中で、世界の労働者大衆の生活困難は増す。

 帝国主義体制を一掃しなければ、労働者大衆の生活の改善を図ることはできない。我々日本の労働者は、石破政権に代わる新政権に対しても一切の幻想を抱くことなく、資本主義生産の根本的変革をめざして世界の労働者と連帯し、労働の解放を勝ち取る階級的闘いを発展させる。 (佐)


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