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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1512号 2025年12月14日
【一面トップ】「強い経済」で幻想煽る
        ――拡大再生産とは程遠い小細工
【一面サブ】  湧き上がるNYマムダニ旋風
        ――労働者大衆の心を捉えたマムダニ
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 一線を超える高市政権
        ――歓喜する軍事産業
【二面サブ】  「アメリカファースト」謳う
        ――トランプ政権の「国家安全保障戦略」
       ※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

「強い経済」で幻想煽る

拡大再生産とは程遠い小細工

 高市政権は11月28日、「経済対策」の財源を含む補正予算案(総額18・3兆円)を閣議で決定。この施策で「強い経済」が生まれ、経済成長が進んで資本の利潤が増大し、税収も増え財政基盤も改善するかに幻想を広げている。

◇総合経済対策21・3兆円との違い

 11月21日の臨時閣議で、「総合経済対策」に投じるカネは21・3兆円と発表されていた。だが、今回の補正予算案では、一般会計から歳出(支出)される「経済対策」費は17・7兆円であり、「総合経済対策」よりも3・6兆円も少ない。

「総合経済対策」には、既存予算から回した分や地方自治体の支出が含まれ、また、「GDP押し上げ効果」などが見込めるとして、この効果が〝見なし〟の支出として換算されている――消費者物価指数やGDPの計算において、「持ち家」などを〝みなし〟の支出や所得として都合よく使うやり方と同じだ。

 このように、高市は「総合経済対策」を大きく見せて21・3兆円を計上し、巨額な経済対策を講じるから経済効果が生まれるかにハッタリをかましている。

 では、今回出された補正予算案を簡単に見ていこう。「経済対策」の目玉は、「物価対策」(8・9兆円)であり、「肝」だと喧伝されている「危機管理投資・成長投資」(6・4兆円)である。さらに軍事力と外交力の強化投資(1・6兆円)が盛り込まれた。

◇物価対策は人気集めと需要起こし

 高市の「物価対策」は『海つばめ』紙上で論じてきたように、物価高騰の原因を探り解決を図るのではなく、対症療法に堕している。

 例えば、高市はガソリン・軽油の暫定税率廃止を打ち出したが、ロシアのウクライナ侵攻で高騰した原油価格は現在、18年当時の「65(USドル/1バレル)水準」にまで下落している。国内でガソリン価格等が高騰している直接の原因は円安による。

 原油などの原材料をはじめ、生活用品・工業製品の輸入価格が円安によって上昇し、国内で製造・販売する製品価格に転嫁されている。だから、食料・生活用品が1年で1割も2割も値上げされ、値上げ品目は年に2万点超になっているのだ。

 高市は総裁選で「今、金利を上げるのはアホだ」と政策金利引上げを匂わす日銀を口汚く牽制したが、貿易黒字がほとんどない現在、円安要因は海外との金利差によって、また円に対する不信から発生している。これらを解決できずに物価高騰を許すなら、対症療法で誤魔化しても、いずれ高市批判として跳ね返える。

 コメも、昨年より増産されたにもかかわらず、価格は昨年の1・5倍程になっている。

 米価の高止まりは、流通業者の高値買い占めと政府の高価格容認にあり、かつ、他国に比べて生産性が低い(小所有小生産の長時間労働で行われ、しかも農民は高齢化している)ことに起因している。革新的なコメ作りが一部で開始され、労働の負荷が軽減されようとしているが進み具合は低い。高市らは、こうした行き詰まったコメ生産の現状を打破する気概を持っていない。高市は、米価高騰への批判をそらすために、「お米券」の配布を決めたが、ただの〝人気取り策〟に過ぎない。

 加えて、これらの「物価対策」を行うことによって、需要拡大に繋げるという思惑もあるようだが(リフレ派学者の理屈)、一時的な現象に終るだろう。しかも需要拡大は物価の上昇を招くのだから、物価対策とは整合しない。何を考えているのやら?

◇政府投資で一点突破狙う

 次は「危機管理投資・成長投資」について。

 これは、日本経済を強くすると称して、AIなどの先端産業に対し、また造船業の再生・強化に対し、さらには、半導体など戦略物資に対して政府投資を行うものである。

 一番問題なのは、世界が資本主義体制であり、利潤獲得競争に明け暮れ、相手を打ち負かそうとやっきになっている社会であることだ。たとえ、AIや半導体などに政府が支援したとしても、それによって日本企業が世界トップにならなければ、資本の覇権を握ることができず、現状のように後塵を拝し続ける。

 例えば、各種半導体のうち、CPU/MPUの設計製造では米国企業が強く、既にシリコンウエハに光回路を集積する技術や量子理論による技術を開発しつつある。製造受託では、台湾や韓国企業が圧倒的な世界シェアを握っている。これらに追いつき打破できるのか?

 仮に、「重点的」(一点突破的)な政府投資が功を奏しても、それで、経済成長が進むかは別問題だ。国内の自動車生産・販売台数は年々に下がり、企業は海外拠点を中心に生産と世界販売を行っている。国内の空洞化は続き、過剰生産と慢性的な低成長が恒常的である。

 この日本において、拡大再生産の〝条件〟を構築できるかが問題なのである。ただ、戦略的・重点的に政府投資を行えば上手くいくと考えているなら、夢物語になろう――結局は資本主義的生産様式がガンなのだ。

◇「軍事投資は経済対策」と誤魔化す

 高市は軍需産業の育成や関連技術の研究開発投資による「経済効果」を叫びだした。安倍や岸田らも似たような発言をしたが、高市は軍需産業の拡大で、製鉄や造船や電子機器などの企業が潤い、従ってGDPが上昇すると強調している。

 税金(労働からの収奪だ)を使って軍需産業が拡大しても、労働者にとって何の得にもならない。軍需品は殺人兵器として機能するだけで、労働者の生活物資の生産に寄与せず、注ぎ込んだ労働は全てドブに捨てられるのと同じだ。

 しかも、日中間で「帝国主義戦争」が起これば、沖縄諸島の人々をはじめ日中の労働者が犠牲になり、経済危機を招いて労働者全体が甚大な被害をこうむる。軍需産業が儲けて名目的GDPが上がり、これを見て喜ぶのは、高市ら軍国主義者・帝国主義者だけである。

 高市の補正予算案=「経済政策」は、欺瞞だらけであり、「強い経済」は幻想である。その上、政府の借金は増え、労働者には所得税や社会保障税の増税が確実に科せられる! (W)


【1面サブ】

湧き上がるNYマムダニ旋風

労働者大衆の心を捉えたマムダニ

 11月4日投開票の米ニュヨーク(NY)市長選で、ゾーラン・マムダニが当選した。マムダニは全国的にはほぼ無名の民主党NY州議会議員政治家だったが、選挙で訴えた「社会主義的政策」が、NY労働者大衆の心を捉え勝利した。

◇マムダニの政策

 マムダニは、家賃上昇の凍結、保育料の無償化、公営バスの無料化、安価な食材を販売する市営スーパーの創設、最低賃金の引き上げなどの「社会主義的政策」を掲げ、財源として「99%の市民のために最も豊かな1%に課税する」と、大企業の法人税の引き上げ、富裕層の所得税引き上げなどを示した。

 市内のアパート1室の家賃は月平均2千5百ドル(約38万円)で、低所得者は住めず遠くからバスで通うことになる。2013年から23年の10年間で市内の家庭用食料品の価格は65・8%上昇、乳幼児の保育施設で年2万ドル(約3百万円)かかるなど、生活費が高騰している。最低賃金は、25年1月に16ドル50セントに引き上げられたが、これでは月2千6百ドル程度で、物価上昇に生活費上昇が追いつかない。

 今年2月発表の調査によると、23年のNYの貧困率は25%に達し、4人に1人が貧困ライン以下の生活をしていることになる(テレ朝NEWS11月8日)。NYの公立学校に通う児童・生徒の15%、約15万人がホームレスになっている。

 物価高騰で労働者大衆が生活困難に陥るNYで、マムダニは「生活できるNY」のための公約を掲げ、労働者大衆の共感を広げた。また、ガザでのイスラエルによる虐殺をジェノサイドだと批判しパレスチナへの連帯を表明、若者らの支持を拡大した。

◇労働者に広がるトランプへの反発

 マムダニがNY市長選に立候補したのは去年10月23日。その時彼は、「民主社会主義者」として、市役所を覆う腐敗も重要な問題だが、「本当の危機は生活費」だ、家賃や保育、公共交通」など「生活を送るために必要なすべてが保証されるようにする」と語り本格的に選挙の準備を始めた。

 今年投票日前10月26日の集会で、労働者が「家賃も食料品も保育料もバス代も高すぎる。二つも三つも仕事を掛け持ちしても、まだ足りない」と訴えた。マムダニは「トランプは問題だらけだが、労働者の財布にもっとカネをいれ、生活費を安くする計画を約束した。それは嘘だった。トランプが置き去りにした労働者たちのため、その仕事を果たすことは私たちにかかっていた」とトランプに対する闘いを語った。

 マムダニの「民主社会主義」は、富の公正な再配分を言い、公約は「生活費が高騰し苦しい生活を送る」多くの労働者大衆の心をつかんだ。「(民主)社会主義」についての世論調査では、30歳未満の62%の人は、「(民主)社会主義」を「好ましい」と答え、出口調査ではマムダニに投票した人は、30歳未満では78%にのぼる(NHK11月12日)。

 トランプはマムダニを「共産主義者」と呼んで攻撃したが、生活できない資本主義に対決する「(民主)社会主義」を好ましいと考える若者は多く、トランプはむしろ彼らに加勢したことになる。トランプは11月21日のホワイトハウスでマムダニと会談し、マムダニを「応援する」と友好的に述べ、懐柔を始めている。

 「社会主義とは、尊厳を持って国民が生活できるよう、国家が必要なものを提供することだ」というマムダニの〝社会主義〟の政策は、資本主義の枠内の改良にとどまる。

 真の解決のためには、生活苦の根源である資本主義、その基礎の商品生産を止揚し、全ての労働可能な社会の成員が働く共同体社会・社会主義社会をめざし、労働者の階級的闘いを発展させなければならない。世界の労働者は連帯し闘いを発展させていこう。 (佐)


    

【飛耳長目】

★冬本番を迎えた12月もクマ出没と人的被害が続き、死亡者数13人は過去最多となった。クマは本来、臆病な性格で人を恐れる生き物。それがこんなに人里に現れるのは異常だと★夏の猛暑と少雨の影響で、どんぐりの実などクマのエサになるものがほとんど実っていない。これまで、不作の年には強いオスが少ない食べ物を独占し、山を下りて来るのは弱い個体や親子連れだった。それが今年は、大きなクマまでが現れているのだ★政府は「クマ被害対策パッケージ」を発表、個体数調査、春季の捕獲、人材確保に注力して、個体数を減らして「人とクマのすみ分け」を目指すという。当面、警察のライフル銃による駆除、自衛隊や警察OBへの協力要請、狩猟免許を持つ自治体職員の育成で、民間組織の猟友会依存からの脱却も目指している★こうした状況の背景には地球温暖化だけでなく、戦後の野生動物の保護政策と薪から石油・ガスへの転換で里山林が放棄され、野生動物から見れば今、山は豊かになっている★シカが増え次にイノシシ、そしてこの十数年はクマで、市街地にまで押し出されている。「すみ分け」を掲げても過疎化する中山間地に、増え過ぎたクマに対応する力はない。都市と農村の対立と矛盾の解決の困難を象徴する事態が進行しているのだ。 (Y)


【2面トップ】

一線を超える高市政権

歓喜する軍事産業

 高市は、台湾有事発言で中国を挑発し激しい反発を浴びているが、支持率は依然として高い。高市の挑発発言は、中国と対峙する日本の帝国主義的立場の包み隠すことのない表明である。この発言は、台湾有事の最前線に日本が立つということだ。有事というきな臭い匂いが漂う中で軍事産業は、〝熱波〟の真っただ中にいる。

◇安保三文書改悪し抜本的軍事力強化

 岸田政権は、23年に安保三文書(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)を閣議決定し、23年~27年の5年間で43兆円の巨額な軍事費を投入しGDP2%超を27年までに達成すると明記した。

 石破退陣の後に、自民・維新の連立で10月に発足した高市政権は、GDP2%を前倒しで本年度中達成するために、補正予算に軍事費1・1兆円を計上し、当初予算の8・47兆円、海上保安庁予算等関連費などを含めてGDP2%は達成できると明言した。

 さらに「安保三文書」の26年中の改正を所信表明で示し、すでに「国家安全保障会議」で議論は開始され、非核三原則の〝撤廃〟や原潜保有など防衛力の抜本的強化に向けた具体的な方針が議論されている。独りよがりな国家主義者・高市が、〝万能な軍事力〟を妄信し突き進む危険性は、中国挑発発言や不用意な国会での答弁にも現れている。政権内の公明党という重しから自由になり、高市に勝るとも劣らぬ反動の維新に背中を押される高市は、積極財政や強いリーダーを装い、将来に絶望する若者や差別される女性をとらえている。しかし、高市の〝打算なき〟反動は〝一途〟であるがゆえに危険である。

◇一気に花形産業に金儲けの熱波に踊る軍事産業

 12月1日、スウエーデンのストックホルム国際平和研究所は、2024年の軍需産業の収益上位100社を公表。日本からは三菱重工(32位)50億3千万ドル、川崎重工(55位)26億5千万ドル、富士通(64位)21億9千万ドル、三菱電機(76位)18億5千万ドル、NEC(83位)15億4千万ドル。合計収益は133億ドルと前年比40%増で国別では最大の増加率になった。特に三菱重工の収益率はミサイル、戦闘機の売上増加で前年比37%増。上記5社の各社の全体売上に占める軍需部門の割合は三菱重が15%、川重19%、富士通9・3%、三菱電5・1%、NEC6・8%となっている。

 軍需産業を取り巻く〝熱波〟はこれら企業の株価高騰に現れ。重工3社の、三菱重は1月6日の株価2243円が12月5日には4083円、川重は7061円が12月5日には10695円、IHIは1257円が12月5日に3019円といずれも大きく値上がりしている。

 重工3社以外にもNECや富士通などのIT関連企業が伸びているのは、「多次元統合防衛力」(宇宙・サイバー・電磁波の新たな領域にも対応)など、AI、情報通信システム、防空指揮管制システム、偵察衛星のデータ処理など、システム領域の比重が高まってきたからである。

 戦闘機、潜水艦、イージス艦、戦車、ミサイルまでを生産する三菱重の、防衛省との契約金額が23年度前年比4・6倍に急増し、軍需品生産企業の23年度から25年度にかけての伸びを紹介すると、自衛隊の小銃を生産する豊和工業は+90%、機雷の石川製作所は+173%、防護具の興研は+60%などと、これまで〝日陰〟だった企業も売り上げを伸ばしている。三菱重は22年度5千億弱の防衛事業売上が26年度までに1兆円規模になり、川重は30年度に5~7千億(22年度2400億)、IHIも30年度に2500億円(同1千億)になると見通しを立てている。

 三菱電機は、「3月12日に防衛省から24年度の受注額が22年度比で4・3倍になる」と説明、「30年度の売上は6千億円以上、足元で7%の営業利益率が10%に上昇する見通し」(東洋経済11/18)。受注額4・3倍も驚くが、説明会で防衛省から受注額と営業利益率までも伝えられるという関係に驚くしかない。

◇「来たれベンチャー」復活する「国営工廠」

 GDP2%突破に歓喜するのは、これまでの軍需産業だけではなく、すでに事業を立ち上げていたスタートアップ企業も同様だ。防衛省はスタートアップ企業などに軍需産業への参入を呼び掛ける「防衛産業参入促進展」を23年10月名古屋、12月東京、今年も12月に東京で開催する。ウクライナ戦争で、ドローンが急速に能力を高め、現代の戦争において戦況を動かす重要な兵器になっている。

 自衛隊もドローン導入を本格化し、名古屋大学発のベンチャーが開発した段ボール製固定翼ドローンは、30万円の低価格で、滞空時間2時間半だ。洋上監視、偵察などの用途が認められ防衛省が注目。京大発ベンチャーが開発した、万博の「空飛ぶ車」の離着陸支援に使われた装置は小さくて軍用レーダーでは発見できないドローン探知装置として、防衛省の検証事業を受注。

 9月19日「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」報告書を当時の中谷防衛大臣に提出。この中で「国営工廠」(軍事工場)の建設を提言。「国営工廠」とは国営の軍事工場であり、主に消耗品の砲弾や航空機や装備品の部品などの生産を考えていると、報告書のとりまとめに参加した防衛省経験者が語ったと言われる。広島呉の日鉄跡地を一大軍事拠点にする構想の中に、「国営工廠」に類するものが含まれている可能性がある。

◇「5類型」撤廃で武器輸出解禁へ

 今年8月に、豪政府は三菱重の開発した「もがみ型」護衛艦をベースにした「もがみ型」改良護衛艦(事実上の新型で大型化し武装も強化)を導入する事を発表。日本はドイツとの一騎打ちに勝ち、34年までに豪海軍は110億豪ドル(約1兆円)で11隻を導入する。それ以前の潜水艦輸出は失敗したが、軍艦輸出を可能にしたのは、14年に決定された「防衛装備移転三原則の運用指針」に抵触しないと判断したからで、護衛艦輸出は官・民・軍を挙げての〝セールス〟の成果だ。高市政権は「もがみ型」護衛艦の輸出拡大やミサイル、さらに英・伊・日で開発中の第6世代戦闘機の輸出も想定し、そのため輸出できる防衛装備品を「救難・輸送・警戒・監視・掃海」に限定する「5類型」撤廃を来年の国会で成立しようと策動している。高市の成長戦略は軍拡と一体である。

◇野放図な軍拡の行き着く先

 軍事費の野放図な拡大は、軍事産業と軍、政府の融合癒着をもたらし、軍備のための軍備増強を生み出す。それは労働者の生み出した〝血と汗との結晶〟の浪費であり、利潤を目的とする資本主義の敵対的な性格を教えている。軍拡との闘いにおいて〝熱波〟に浮かれる資本を打倒する闘いを忘れてはならない。 (古)


【2面サブ】

「アメリカファースト」謳う

トランプ政権の「国家安全保障戦略」

 12月5日、第2次トランプ政権初めての外交、安全保障の基本となる「安全保障戦略」(NSS)を公表。NSSは、「力こそが最良の抑止力」として、他の国が「米国の利益を脅かす支配的立場」を得ることを許さない、場合によっては軍事力の行使も辞さないとし、軍事力の更なる増強を謳う一方、EU、日、韓など同盟諸国には軍事的、経済的負担を求めるなど「アメリカファースト」の立場を鮮明にしている。

◇西半球は米国の勢力圏に

 歴代の政府は安全保障戦略において米国の「国家的利益」を拡大し、ほぼすべての問題をその範囲内に広げてきたが、結局は何にも焦点を当てられなかったとし、NSSは、「核心的な安全保障上の利益こそが焦点とされるべき」だとしている。

 安全保障上の「核心的利益」として真っ先に挙げているのは、中南米などの西半球を米国の勢力圏として維持、確保することだ。NSSは言う。

 「米国への大規模な移民防止・抑制するのに十分な安定性と良き統治を維持することを確保したい。麻薬テロリスト、カルテル、その他の越境犯罪組織に対して我々と協力する政府を有する西半球を望む。敵対的な外国の侵入や重要な資産の所有から自由であり、重要なサプライチェーンを支える半球を望む。そして、われわれの重要な戦略的拠点への継続的なアクセスを確保したい。言い換えればモンロー主義に『トランプの補則』(外国の紛争などに関与しないようにするのではなく、自国の利益に関係するならば積極的に関与し、必要なら武力行使も辞さないこと─引用者)を付加し、これを主張・実施する」と。

 これは西半球を米国の勢力圏として囲い込むという宣言である。トランプは国内優先としながら、実際には外国の西半球地域への進出を阻んできた。中国企業に運河管理を許可したパナマに軍事的圧力を掛け、また移民や麻薬輸送の疑いを口実に、カリブ海に原子力空母を派遣、ベネズエラの輸送船を空爆し、トランプ政権に反発するマドロウ政権を脅迫し、屈服させ、米国に協調主義的な政権の樹立を狙っている。NSS自ら言うように「モンロー主義」どころか米国の利益ならば、どんな軍事的手段も辞さないのである。

◇日、韓、EUなど同盟国に軍事費増加を迫る

 その他「核心的利益」としているのは、アジア太平洋地域、ヨーロッパ地域に関してである。

 アジア太平洋地域については、中国を念頭に、台湾について「米国は台湾海峡の現状に対するいかなる一方的な変更も支持しない」。中国が「防衛ライン」とする「(沖縄など日本の西南諸島と台湾、フィリピンを結ぶ)第1列島線全域における侵略を阻止できる軍隊を構築する」。しかしそれは米国だけではなく、同盟国・パートナ―国の共同によって行われるべきであると述べている。

 台湾や南シナ海については、シーレーンを守るためには紛争を抑止することが「最優事項」だとしている。

 そして、同盟国の日本、韓国、オーストラリアなどに対して米国の軍事力に依存する「ただ乗りを許している余裕はない」として、軍軍費の増額を迫っている。 一方、ヨーロッパ地域にも、軍事費の大幅引き上げ(3・5%から5%へ)を要求している。

 さらにウクライナ問題にも触れ、ウクライナとロシアの「戦争終結」に向けた交渉は、米国の「核心的利益」とし、今後も関与を進めるとの方針を示している。「和平」が実現すれば、欧州経済の安定とロシアとの戦略的安定を再構築できる、というのがその理由だ。

 だが、トランプの「和平案」は、ロシアが占領した地域のロシアへの編入などロシア寄りの内容で、ロシアの軍事侵略を事実上認める代物でしかない。

 戦争終結後には米国企業によるウクライナの復興、資源開発への投資やロシアとの共同の開発事業の計画が予定されており、そのためにロシアとウクライナの「和平」を唱えているのである。

 こうしたなりふり構わない自国利益優先の米国の態度は、12月1日の欧州首脳とゼレンスキーとの共同電話会議で、フランスのマクロン大統領が「米国が安全の保証を明確にしないまま、領土問題についてウクライナを裏切る可能性がある」と発言したように、ウクライナや欧州は米国に対して反発、不信を深めている。

◇深まる国際社会の対立

 NSSは、ロシアに対して宥和的姿勢をとっていると同じように、中国に対しても同盟国との抑止網の強化を謳ってはいるが、それ以上ではない。民主党バイデン政権が、「非民主主義的な独裁国家」、「国際秩序を塗り替える唯一の競争力を持った国」として、封じ込め政策をとったのと対照的だ。

 そして、歴代の政府は、全世界的な規模で関与を続けてきたがその結果、「米国の経済的・軍事的優位性の基礎である中産階級と産業基盤そのものが空洞化した。同盟国やパートナー国が防衛コストを米国国民に転嫁することを許し、時には彼らの利益の中核でありながらわれわれにとって周辺的あるいは無関係な紛争や論争にわれわれを巻き込んだ」、「(巨人)アトラスのように米国がすべての世界秩序を支える時代は終わった」、「他国のことに関心を払うのは米国の利益に関与する場合のみだ」、「全ての国家が自国の利益を優先するとき、世界は最も円滑に機能する」と言う。

 これこそが米国の言うトランプ版「モンロー主義」の意味である。「アメリカファースト」を謳い、弱小国に対して軍事攻撃をしかけたりする一方、「同盟国」に対して米国から不当に利益を吸い取っているとして無差別に関税引き上げを行い、軍事費の増額を迫ったり、ウクライナに軍事侵攻するロシアに宥和的態度をとったりすることが正当化されるのである。

 「自国利益優先主義」がまかり通るようになれば、国際社会はますます混迷と対立を深めるだろう。 (T)

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