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●1509号 2025年10月26日 【一面トップ】 高市自民・維新反動政権発足! ――それは解き放たれた反動政権だ 【一面サブ】 立憲の野党連立策動の怪 ――結局、日本資本主義の為に汗をかく 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 非正規労働者は新しい労働者階級か? ――橋本健二の「アンダークラス」論 【二面サブ】 偽りのハマス・イスラエル停戦合意 ――イスラエルは撤退し、ガザ虐殺を止めよ! ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】高市自民・維新反動政権発足!それは解き放たれた反動政権だ21日、高市自民・維新連立政権が誕生した。維新は閣僚を送らない閣外協力であるが「国家観を同じにする」維新と自民は同類である。今後提出される法案や政策は、反動的で労働者に負担と犠牲を押し付ける容認できない施策の一覧になるだろう。総裁選で持論を〝封印〟した高市にとって維新は、自らの政策を実現する最良のパートナーである。 ◇敗北を重ねた維新、高市にすがる吉村昨年の衆院選、今年の参院選と維新は敗北を重ね、大阪を除いて政治的影響力は低迷している。維新の支持率も16日に発表された時事通信の調査では、1・8%(前月2・0)であり、参政の4・8%(同5・9)や国民3・8%(同3・4%)公明2・8%(同3・0)を下回っている。維新は、中心的な政策である「副首都構想」を実現するためにも低下する党勢を回復し、全国政党として認知される必要があった。 高市からの連立政権協議申し入れは、「維新にとっては『急にホームランボールが転がり込んできたようなもの』(大阪府議)」(朝日電子版10・15)で、16日には12項目の要求項目を提出した。 20日には高市、吉村の間で「連立政権の合意書」に署名。21日、自民・維新の連立政権が発足した。維新は閣僚を送らない閣外協力であるが、高市の首相補佐官に維新からも出すことが決定している。 維新が閣内に入らず閣外協力に〝止める〟ことについて様々に論じられているが、〝上気した顔で喜びを隠せず〟合意文書に署名する吉村を見て、高市は閣僚全てを自民が占めることが出来てほくそ笑んでいるかもしれない。 ◇12項目の要求内容「連立政権の合意書」に掲げられた12の項目は、連立を組むにあたって維新が高市に要求したものである。12項目は以下の通りである。 「1経済財政施策」「2社会保障制度改革」「3皇室・憲法改正・家族制度など」「4外交安全保障」「5インテリジェンス政策」「6エネルギー政策」「7食料安全保障・国土政策」「8経済安全保障政策」「9人口政策及び外国人政策」「10教育政策」「11統治機構改革」「12政治改革」。 この中で高市自民・維新政権の反動的性格を際立たせるいくつかの項目について触れてみる。 「連立政権の合意書」に貫かれているのは、政治的反動と戦争を恐れない軍事大国日本を志向する決意である。 ◇政治改革の欺瞞「12政治改革」では、連立合意の条件に維新が譲れない要求として最後に出したのが〝議員定数10%削減〟である。 「1割を目標に衆議院議員定数を削減するため、25年臨時国会において議員立法案を提出し、成立を目指す」と合意書に触れられている。維新は議員の削減を〝政治改革のセンターピン〟と位置づける。しかし、労働者が議会選挙に参加する上で最大の障害である選挙制度(最たるものが高額の供託金)を抜本的に変えること無く政治改革はありえない。 ブルジョア民主主義の根幹である議会選挙で選出する議員数を、議会で満足に議論することなく、しかも労働者・働く者が関与せずに削減することは、断じて許されない。維新の議員定数削減は、議員を削減(しかも比例区)し、大政党で議席を占有し既得権を守る提案である。〝身を切る改革〟を旗印に民主主義を簒奪する、ポピュリズムに他ならない。 〝企業・団体献金禁止〟は、「政党の資金調達の在り方について議論する協議体を25年臨時国会中に設置する。高市総裁の任期中に結論を得る」と、あっさり先送りされた。 ◇解き放たれた反動自・維連立政権の下では、軍事大国化が一層促進されることは確実である。「4外交安全保障」で、安保3文書は前倒しで改定する(公明党の反対で中国、ロシアの〝脅威〟の表記がなされていない等)。26通常国会で、公明党の反対で制限された武器輸出を解禁するために「防衛装備移転三原則の運用指針」の5類型(救難・輸送・警戒・監視・掃海の5種類は殺傷兵器ではなく輸出できる)は撤廃。これは自民党の要求でもある。 軍需産業(8月時点で納入金額は三菱重1兆4千億、川重6千4百億、三菱電5千億円)にとっては、海外市場に向けた武器輸出の拡大を可能とする。「長射程のミサイルを搭載し長距離・長期間の移動や潜航を可能とする次世代の動力を活用したVLS搭載潜水艦の保有についての政策を推進する」とし、原子力潜水艦(垂直発射ミサイルを搭載型)の保有も明記された。 「5インテリジェンス政策」では、スパイ防止関連法制を25年に検討開始して速やかに法案を成立させる。スパイ防止法は国民、参政、保守なども提案し法制化の障害はなくなった。合意書では日本版CIAの「対外情報庁」を「27年度末までに創設」も明記された。 「9人口政策及び外国人政策」ではルールや法律を守れない外国人に対して厳しく対応、外国人の受け入れ数値目標や基本方針を明記した「人口戦略」を26年度中に策定する。外国人に対する規制強化、移民対策も、世論の外国人や移民に対する排外的な感情の高まりを背景に法整備が急ピッチで進められようとしている。 「3皇室・憲法改正・家族制度など」、民主主義的原則と相いれない身分制度である天皇制の存続を策する皇室典範の改訂策動。26年通常国会で皇室典範の改正を目指し「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする」案を提出しようとしている。 憲法9条などの改正については、維新・自民の条文起草協議会を25年臨時国会中に設置する。緊急事態条項は26年度中に国会に提出する。 高市がこだわる「日本国国章損壊罪」の制定は26年通常国会で行うと明記した。まさしく「解き放たれた反動」である。日中のせめぎ合いの中で日本の帝国主義的利益を貫徹するために、〝普通に戦争が出来る強い日本〟を作るためには、「平和の党」公明党の離脱は、実に願ってもない〝縁切り申立て〟に他ならなかった。 自民・維新反動政権が誕生した! 彼らの反動性は真正である。逡巡することなく、労働者は高市反動政権の危険性を理解し、それに反対する闘いを広範に準備しなければならない。「解き放たれた反動」高市政権打倒のために労働者党に結集して共に闘おう! (古) 【1面サブ】立憲の野党連立策動の怪結局、日本資本主義の為に汗をかく立憲の野田は、「自民党から政権を奪うチャンスは十数年に1回しかめぐってこない、大事な局面だ」と言って国民民主と維新に猛アタックしたが、どっちからも袖にされた。だが、仮に立憲主導の連立政権が誕生しても、自民党主導の政権と一体どこが違うのか? ◇立憲の政権交代論今回の立憲の野党連立政権策動は、まず、政権構想も無い数あわせの類いであった。公明党が自民党との連立から離脱し、野党が政権を奪取するチャンスが巡ってきたから、このチャンスを逃すべきではないと言うのみであった。実際、誰も立憲の政権構想を聞くことがなかった。 しかも、国民民主の玉木に、「安保法制は違憲の疑いがあると言う立憲とは手を組めない」、どこが違憲なのかを明確にせよと迫られても回答できず、政策協議に委ねると曖昧にした。なぜ政策協議に委ねると言ったのか。それは、かつて自民党に代わった旧民主党がとったと同様な〝現実的対応〟ということである。 2009年夏の総選挙で政権交代を訴えた民主党に対して、自民党から「民主党は非現実的」だと難癖を付けられたが、「政権交代自身に意義がある」「政権を取ればおのずから解決していく」と反論した。 この反論の意味は直ぐに明らかになった。民主党は安倍が改悪した「教育基本法」に反対したが、「政権交代」をしても「改悪教育基本法」の廃棄提案も改訂もせずに、ほっかむりした。沖縄米軍基地撤去を謳って多数の議席を得て政権を手にしたが、基地撤去の選挙公約を撤回してしまった。 こうした〝現実的な対応〟は、民主党が総資本の利益を代弁するブルジョア政党であることを明らかにした。 立憲はかつての民主党と何ら変わらない。 立憲が政権に着くことは、玉木や吉村らに迫られた日米の安全保障体制を全面的に容認することに繋がる。つまり、立憲はいくらでも国家の立場に変容し(むしろ本性を露わし)、政権奪取の後に、いとも簡単に政策を変えることができる。 立憲について、野田が「穏健保守」とか「リベラル保守」の政党だと表現するのは、立憲が「連合」や市民運動と連携しているからである。だが、立憲はいつでも「リベラル」を捨て国家を優先することができる――民主党時代を見よ! 従って、立憲主導の野党連立政権が仮にできたとしても、総資本の政権として、一層の軍事力増強を進めることになる。 それは、丁度、「自衛隊廃棄」を謳っていた社会党が村山自社政権になるや日米安保も自衛隊も容認したように、今度は、立憲が「積極的な自衛力整備」を容認し邁進することになるのだ。 ◇立憲は労働者に敵対する国民民主や維新と連立を組もうとした立憲の言動は、立憲がどんな意味でも労働者の政党でないこと、ブルジョア政党の一派であることを自ら暴露した。 国民民主と維新は、搾取労働を強いられ苦しむ労働者の立場に立たず、従って、物価高騰そのものをを抑えずに社会保障をいじって対症療法で誤魔化し、また、高市という天皇制国家主義者にすり寄り、改憲やスパイ防止法制定を共に進めようとしている。つまり反動的な政党である。 立憲の野田らは、それらを承知の上で、連立政権を組もうとしたのだ。 今まで、立憲に淡い期待を抱いた労働者もいたであろうが、立憲に幻想をもつことはできない。労働者の困難の原因を解明し資本と闘う政党(労働者党)と共に進もうではないか。 (W) 【飛耳長目】 ★公明党が自公政権から離脱し、首相指名を巡る政治状況が混沌となっていた。「政治とカネ」を巡り高市自民党と対立し離脱。表向きはそうだが、この党の深刻な衰退がある。先の参議院選では比例で前回より100万票減らし、最盛期の862万票から4割も減らした。議席も改選14から過去最少の8に激減した★背景には創価学会会員の減少がある。1970年代には約500万世帯1千万人の会員がいたが、現在はその半分ほどしかいない。会員の高齢化に伴う選挙活動の不足もある。よって、このまま自民と共にいたら「存亡の危機」がくる。これが離脱の理由だ★小所有者(小商工業者、小農民等)の立場を体現する公明党は、小所有者が大資本に依存しているように、26年間も大独占の党である自民党に追随してきた。「大衆と共に」「庶民の党」「平和主義」を掲げながら、この党はアベノミクスや安保関連法、軍備拡大、金権腐敗に散々手を貸してきたのだ★また年間7兆円の巨大利権官庁である国交省大臣を独占し、道路・鉄道・災害復旧・防災・観光の利権のうまみ、全国からの陳情の受け皿とその見返り、そして学会票を補う建設・運輸等の組織票を吸い上げてきた。この党に、いまさら「政治とカネ」を言い出す資格など全くない。 (義) 【2面トップ】非正規労働者は新しい労働者階級か?橋本健二の「アンダークラス」論◇「アンダークラス」とは?社会学者の橋本健二が「日本の労働者階級の最下層にアンダークラスという階級が生まれた」と騒いでいる(朝日朝刊、9月5日「インタビュー」)。 彼によると「アンダークラスとは、パートの主婦を除いた非正規雇用の労働者たちを指します。人数は890万人、日本の就業人口の13・9%を占めます。1890年代から進んだ格差拡大に伴って新たに生まれた新しい階級であり、現代社会の最下層階級です」ということである。 彼らの平均年収は216万円(正規雇用労働者の4割強)、貧困率は37・2%(正規は7・6%)で、ともに桁違いであり、橋本は、「非正規雇用の労働者と正規雇用の労働者の間には、もはや同じ階級とはみなせないほどの経済格差があるのです」と指摘する。 しかも、貧困層の家庭の子は貧困層になる、という貧困の連鎖は、このアンダークラスには当てはまらない、なぜなら彼らは経済的な理由で結婚したくても結婚できず子を持つこともできないから世代の再生産が起きにくくなっている、といってもアンダークラスが消滅するわけではない。というのは、正規労働者階級や中間階級の子が正規労働者階級になれず、アンダークラスに絶えず流れ込んでくるからである。 橋本は、「非正規雇用の低賃金労働者を不可欠とする経済体制を続ける限り、アンダークラスは必要とされ続け、下層階級に転落する人は現れ続けます」と述べている。 ◇経済のグローバル化や政府や企業の方針がアンダークラスを生み出した?かくして、これまで日本の階級は、資本家階級と労働者階級、その間の中間階級(これは農業やサービス業等の旧中間階級と管理職や専門職等の新中間階級の2つに分かれる)の4つだったが、労働者階級が2つに分裂したことによって5つの階級構成になった、と橋本は言う。橋本は、このアンダークラスが登場した原因を次のように語る。 まず経済のグローバル化によって「人件費を下げなければ企業が収益を上げにくい構造が作られ、低賃金の非正規労働者が増えやすい環境が生み出された、……また政府の政策や企業の方針の面でも、非正規雇用の労働者の増加を促進する施策が進められました。とりわけそれが顕著だったのが日本や米国です」。これが橋本のアンダークラスとその発生の説明である。 橋本は資本主義経済というものを少しでもわかっているのだろうか? 企業はグローバル化であろうが国内であろうが、激しい競争にさらされて賃金の切り下げを常に狙っているのであり、「構造が作られた」とか「環境が生み出された」とかの問題ではない。ブルジョア政府がブルジョアジーを後押しするのも当然だ。 ◇資本主義社会には「アンダークラス」は常に存在した橋本は、アンダークラスが「1980年代から進んだ格差拡大に伴って生まれた新しい階級」だというが、日本(以外でも)には、常に都市や農村にアンダークラスが存在したのである。 資本主義経済の発展、資本の蓄積の拡大、資本の有機的構造の高度化は、膨大な数の相対的過剰人口の創出を、つまり不安定な、非正規の、最下層の労働者を必然的に生み出すのである。 マルクスは、当時のイギリス社会の分析によって、この相対的過剰人口を、流動的、潜在的、停滞的の3つの形態に分析したが、この相対的過剰人口の形態は、国によって時代によって異なる。 しかし相対的過剰人口の存在そのものは、資本主義的生産様式において必然であり、またこの存在なくしては資本主義経済は成り立たないのだ。 橋本は自身で「非正規雇用の低賃金労働者を不可欠とする経済体制を続ける限り」、アンダークラスはなくならない、と述べているが、しかしその経済体制こそ資本主義経済なのであるから、アンダークラスの消滅を願う橋本は、資本主義廃絶のために闘わなければならないのではないか? ◇「階級はあった方がいい」ともっともらしく言う橋本彼は記者の質問に答えて、「資本主義社会の構造を踏まえた『階級』という概念を使わなければ、社会の現実を正確に捉えられないと考えています」などと、もっともらしく述べている。 その一方で橋本は、「階級は社会からなくした方がいいでしょうか」という質問に対して「いえ、なくさない方がいいと思います。経営をしたいか、雇われて働きたいか、脱サラして自営業を始めたいかの選択肢はあった方がいいからです。でも格差はなくすべきです。格差は社会全体に損失を与えます。もし階級間の格差が小さくなれば、人は自分の所属階級を自由に選べるようになります。目指すべきは、そうした社会なのではないでしょうか」と答えている。 いったい、この学者先生の発言は何だろうか?自分が何を言っているのか、わかっているのだろうか? 階級とはなにか?それは生産手段の所有を基準にして社会的組織の中の地位が決まることである。 ◇〝階級は選択できる〟?古代奴隷制では奴隷所有者、封建制では領主、資本主義社会では資本家が、生産手段の所有者として支配階級を形成した。収入や財産の格差は生産手段の所有から発生するのであり、階級の存在を前提にして格差や富の分配の不公平をなくすなど不可能な相談である。 「階級を社会からなくさない方がいい」だって!? なぜなら「階級がなくなれば所属階級を自由に選べなくなるから」からだそうだ。労働者が経営者を選択する!? いったい、労働者の、どこにそんな資金があるのか! 労働者が雇われて働くのは選択の問題ではなく、雇われて働かなくては(労働力を売らなくては)生きていけないからだ。 橋本には「階級」がわかっていない。資本主義社会にドップリつかっている彼には階級のない社会は考えられない(原始共産社会は数十万年続いたというのに)のである。しかし階級の存在こそ格差の根源なのであるから、格差の解消は橋本にとっては永遠の夢だ。 「格差は社会全体に損失を与える」って!? 正規労働者と著しい格差のある非正規労働者を作ったのは企業やそれを後押しする政府だと橋本自身が述べているではないか?正規と非正規の格差を作ることによって資本家は損失を受けるどころか、莫大利益を得る。損失を受けるのは、格差によっていっそう仲間同士の競争を激しくされる労働者階級なのである。 ◇ブルジョア政府への幻想を煽る橋本!橋本は、日本の労働者階級の貧困がますます激しくなり、自分たちの世代すら再生産できない最下層のアンダークラスまで生み出した、と危機感を露わにするのだが、労働者の闘いについては一言も触れていない。 それでも労働者が生きるだけの賃金を得ることができたのは、賃金の切り下げを常に狙っている資本家と闘ってきたからである。この大量の生活困難者や非正規労働者を生み出した今日の資本主義社会に対して、労働者に闘いを呼び掛ける学者インテリは皆無だ。 橋本は、格差解消には「政府の政策にきちんと反映させる」ことが必要だなどと、ブルジョア政府への幻想を煽っている。 橋本は一見、労働者の味方を装いながら労働者の闘いには一言も触れず、労働者階級にブルジョア政治に依存することを説教して、労働者の闘いを解体するのだ。 アンダークラスという、結婚もできず自分たちの世代の再生産もできない膨大な階級が生み出され、それなしには資本主義がやっていけなくなったという事実は、資本主義が崖っぷちにきていることを証明している。 (K) 【2面サブ】偽りのハマス・イスラエル停戦合意イスラエルは撤退し、ガザ虐殺を止めよ!米トランプは先月29日、「ガザ紛争解決のための包括的計画」(以下、「ガザ計画」)を提示した。ハマスとイスラエルは10月9日これに合意し、10日正午停戦が発効した。しかしイスラエルはハマス壊滅を狙っている。 ◇合意した「ガザ計画」の内容「ガザ計画」は20項目あり、即時停戦、人質全員の解放、パレスチナ人拘束者の交換までが「第1段階」だ。 「第2段階」は、イスラエル軍の段階的な撤退、ハマスの武装解除、ガザ地区の非軍事化、統治からのハマスの排除、非政治的なパレスチナ委員会の暫定統治と国際暫定機関「平和評議会」の監督、ガザの再建と活性化のための「トランプ経済開発計画」、「国際安定化部隊」を創設しパレスチナ治安警察を訓練、「イスラエルはガザを占領または併合しない」、「ガザの再開発が進展し、パレスチナ自治政府の改革が誠実に実施されたとき、パレスチナの自決権と国家建設への道筋が整う可能性がある」、「米国は、イスラエルとパレスチナ人との平和で繁栄した共存のための政治的合意を目指す」などである。 ハマスの武装解除、統治からのハマスの排除などはハマスが到底飲めないような内容だ。しかしトランプは「3~4日程度での回答」を求め、「ハマスが応じなければ地獄を見る」と、威丈高にハマスを脅した。 「ガザ計画」は、自決権に「改革が誠実に実施されたとき」などと、もっともらしく条件を付けているが、パレスチナの人々の自決権は、無条件で認められなければならない。 これでは、米国、イスラエルの意のままの復興計画でしかない。それがどのようなものになるかは、ヨルダン川西岸自治区の状況がよく物語っている。 ここでは三地区に分かれ行政と治安維持権限を備えるA地区は、面積にして18%ほどを占める面積しかない。 イスラエルは罪なき人を理由もなく捕らえ拘束し、法に基づく裁判もなきに等しく、住宅をイスラエルの入植者に暴力的に奪われることが日常である。これがファタファ・アッバス支配の自治区の現状だ。この西岸地区にネタニヤフは8月、入植計画を推進させるとした。米、イスラエルのガザでの統治計画は明らかに偽りの産物だ。 和平交渉ではハマスは「ガザの将来などは、パレスチナ国家の枠組の中で議論されるべきだ、ハマスはその一部となり、責任を持って貢献する」と主張し、武装解除には言及を避けた。しかしハマスは3日、ガザでの戦争終結やイスラエルによる占領の否定などが含まれていることを評価して、人質全員の解放に同意すると発表した。 ◇イスラエルは停戦からハマス壊滅へイスラエルがガザの現状について「解体の段階は終えた」(9月17日)と評価するように、ハマスはほとんど戦闘する能力がなく、「戦争はもう終わりにして欲しい」という、ガザ住民の支持も失いつつある。 一方イスラエルのガザ武力制圧によるガザ住民虐殺は、世界の労働者大衆の抗議を湧き起こし、世界各国のパレスチナ国家承認を広げた。9月のカタールでのハマスへの攻撃は中東諸国の反発を強めた。イスラエルとそれを支援する米国は孤立を深め、見せかけだけの合意を進めたのだ。 合意に基づきハマスは13日、生存するイスラエルの人質20人全員を解放し、イスラエルも収監するパレスチナ人1968人を釈放した。しかし「ガザ計画」にある「イスラエルの受諾から72時間以内に、生存者も死者も、全ての人質が解放・返還される」について、死者のうち返還されたのは16日時点で9人の遺体で、死亡したとみられている19人の返還は実現していない。 イスラエル側はこれを停戦合意への違反だと反発し、イスラエルのカッツ国防相は15日、ハマスが停戦合意を履行しない場合、戦闘を再開すると警告し、軍にハマスを壊滅させる計画を準備するように命じた。 イスラエルの空爆などの攻撃で、イスラエル住民は6万7074人(10月4日時点のガザ保健当局発表)が虐殺され、さらに多くの人がガレキの下に埋まっている。イスラエルの人質がそれに巻き込まれていることは充分考えられるのであり、イスラエルが人質を殺したに等しいのだ。 イスラエルはハマスに難癖を付け、ハマス壊滅を虎視眈々と狙っているのだ。それは同時にパレスチナ住民の虐殺の遂行だ。このような帝国主義者の蛮行を世界の労働者は決して許すことはない。 ◇パレスチナ国家独立を!武器供給を始め、ネタニヤフを陰に陽に支えるトランプは全く信用できない。パレスチナ住民、労働者、農民は、自らのヘゲモニーのもと政治的自由を獲得し、民族独立を掲げて闘い、イスラエル及び世界の労働者の協力を得て、民族国家の独立を勝ち取り、経済発展の道を切り開くだろう。 さらに世界の労働者は、真の解決である労働者の世界革命によって民族国家を止揚し、搾取と貧困と戦争をなくすために闘い続ける。 (佐) | |||||||||||