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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
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   そして「愛国教育」で
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 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1382号 2020年7月12日
【一面トップ】習近平政権、香港「制圧」――帝国主義化する中国の本性暴露
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】日本製鉄による呉製鉄所閉鎖――スクラップ化といかに闘うか
【二面サブ】腐った〝勝利〟――都知事選 小池が再選

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【1面トップ】

習近平政権、香港「制圧」
帝国主義化する中国の本性暴露

 習近平政権は、香港の頭越しに、問答無用で「香港国家安全維持法」を成立させ、即日施行した。この蛮行は、中国の体制の本質を暴露しただけでなく、世界の制覇を狙う米中の抗争を新段階に押し上げた。我々はその意味を明らかにしなければならない。

「香港国家安全維持法」の本質

 中国全人代(全国人民代表大会)の最終日、5月28日に可決された香港国家安全維持法(以下、国家安全法と略す)は6月30日の全人代常務委員会で承認され、即日施行された。法律の全文が公開されたのは施行と同時であり、これ自体が前代未聞であるが、香港には憲法に当たる「香港基本法」が存在し、国会に相当する民会もあるにもかかわらず、それらを飛び越えて香港の〝治安維持法〟とも言うべき弾圧法を一方的に決定し施行する行為自体が習近平政権の本質を暴露している。

 しかも、中国政府は、治安維持機関として香港に「国家安全維持公署」を設置し、この機関が香港政府が設立する「国家安全維持委員会」の監督・指導にあたるとした。さらに、「香港の他の法律と矛盾する場合、国家安全法が優先される」のだ。香港は、英国の植民地から解放されたが、今度は中国の植民地になったとも言える。

 習近平政権にとっては、「一国二制度」を50年間維持するとの〝国際公約〟などどうでもいいのであり、「一国一制度」こそが望ましいのである。条約や協定で専制的権力者、帝国主義者の行動を縛ることができると考えているおめでたい人々は苦い教訓をかみしめるべきであろう。

 国家安全法は、既に報じられているように、4つの犯罪、即ち「国家分裂」、「国家政権転覆」、「テロ行為」、「外国または域外勢力との結託による国家安全危害」(の組織、計画、実施、参与、幇助、出資など)を取り締まるものであり、主犯や重大な罪については一〇年以上の懲役か刑事拘留、最高無期懲役に処せられる。

 香港だけでなく「中国その他の地域」の分離や独立について語ることも「国家分裂」罪に該当する。「政治的思想を実現するための」暴力行為全般が「テロ行為」と規定され、デモ組織者をテロリストとして拘束することが可能になる。「外国政府との結託による国家安全危害」には「香港の住民に中国や香港政府への憎悪を募らせる」言動も含まれるから、中国や香港当局の人権抑圧、弾圧を批判することも禁止される(29条)。密告者は減刑されるという密告奨励規定も抜け目なく盛り込まれている。加えて、外国人が外国で中国や香港政府への「憎悪を募らせる」言動をした場合も法律が適用される(38条)から、外国人も香港や中国に渡った途端拘束される可能性がある。施行規則には、「緊急の場合には」令状なしで捜査できるとの規定もある。戦前の日本の軍国主義政権並みの念の入れようである。

「民主化」運動の波及を恐れる習近平政権

 習近平が国家安全法制定を急いだのは、香港の「民主化」運動が中国本土に波及し、広範な中国の労働者・人民の反政府運動に火をつけることを恐れたからである。国家安全条例を香港政府に成立させることは、歴代の中国政権の〝悲願〟であったが、とりわけ、習近平政権は2018年暮れ以来国家安全条例の制定を強く求めてきた。

 しかし、林鄭月蛾行政長官が、比較的抵抗が少ないとみて先行させようとした逃亡犯条例改正もまた大規模な大衆行動によって断念させられた。さらに、昨年11月の区議選挙では民主派が圧勝し、党中央内では「習近平の失敗」として責任を問う声も出ていた。今年秋の香港の立法会選挙で再び民主派議員が過半数を占めるようなことが起きれば、習近平の地位が揺らぎかねない。コロナ禍で香港でもデモが規制され、外国人の渡航制限が続いている今こそ、チャンス到来と習近平は国家安全法制定を強行したのである。

 その意味では、中国の香港〝併合〟は、習近平政権の強さの表れではなく、この政権が陥っている危機の裏返しである。

高まる内外の批判

 今、中国内には、習近平政権に対する不満と怒りが渦巻いている。とりわけ、新型コロナウィルスでは、武漢市当局や中央の国家衛生健康委員会弁公庁が当初、感染の実態を隠蔽し、情報統制したことが感染を広げたとしてネット上で憤りと抗議の書き込みが相次いだ。特に同僚医師たちに真実を伝えた武漢中心医院の眼科医、李文亮医師が「デマを流した」との理由で当局に拘留されたことが判明すると、国民の怒りに火がついた(李医師はその後釈放されたが、新型コロナウィルスに感染して死亡)。

 中国のウイルス感染対策は、雲南省視察から北京に帰った習近平が1月20日に感染拡大防止の徹底と情報隠蔽の厳罰化を打ち出して、ようやく動き出すのだが、国民の間には政府への不信感が広がっていた。

 コロナ対策で工場が閉鎖され(今年第一4半期に約46万社が倒産)、農民工を中心に数十万人以上の労働者が失業し、困窮に陥った(4月26日に発表された中国のあるレポートでは、失業者は7000万人を超え、失業率は20・5%に上ったという)。

 食料品の高騰に耐えかねた市民のデモや抗議行動が各地で相次いだ。3月5日午後、副首相の孫春蘭が武漢市のアパート街を視察したとき、あちこちのベランダから孫春蘭に「嘘だ!」「形式主義だ!」と罵声が浴びせられた――命がけの抗議行動だ!――ことは、武漢市民の怒りの深さを教えている。

 多くの地方都市で、テナント料の減免を求める商店主のデモも発生し、警官隊・公安と衝突した。鬱屈した中国人の怒りがアフリカからの移住者に向けられ、アフリカ系住民への差別や暴力行為が頻発し、アフリカ諸国政府――中国が「一帯一路」戦略で取り込みを図ってきた国々――が厳重に中国政府に抗議する事態になった。(コロナ禍中国の内情については、福島香織著『コロナ大戦争でついに自滅する習近平』徳間書店を参照)。

 それだけではない。新型コロナウィルスの情報を隠蔽し、感染者の拡大を許した中国の責任を問う声は、米国を先頭にオーストラリア、インド、トルコ、ポーランド、アルゼンチンでも高まり、損害賠償を求めて国際法廷に訴える動きが強まっている。それに対し、中国は容赦なく相手を叩くいわゆる「戦争外交」に出て、反発を買っている。

 中国の香港「制圧」は、コロナ禍を機に高まる内外からの批判に焦慮する習近平政権が香港市民の〝暴動〟の陰に米国ありとして、反米感情や愛国主義をあおり、労働者・民衆の批判をかわす策動でもあったのだ。

帝国主義化する中国

 中国は、とりわけ習近平政権になって以来、「豊かな国から強い国へ」のスローガンの下に、軍事強国化・帝国主義大国化の道を突き進んでいる。中国が「一帯一路」戦略によってアジア・アフリカ諸国を勢力圏内に取り込み、南シナ海や東シナ海では人工島や軍事基地建設、海空軍の偵察・威圧行動を繰り広げ、最近では沖縄・尖閣諸島周辺でも挑発行動を繰り返していることはその表れであり、香港“併合”も中国の帝国主義化の一環である。

 中国は、「改革・開放」路線に転じて以降、一時期は国有企業の民営化や私営企業の育成などに力を入れたが(「国退民進」)、最近は国有企業を強化する方向へと転じている(「国進民退」)。

 中国の国有企業数は2011年で15万社弱で、中国全体の企業数500万社強の3%に過ぎないが、石油石化、電力、通信など国家の基幹産業を支配し、兵器、航空機、製造業、海運、航空、商社、金属・鉱産物、建設、鉄道、農林業軽工業(紡績、工芸など)、医薬品、科学技術などほとんどの産業で中心的役割を果たしている。

 経営幹部はもちろん共産党員であり、党と政府機関、国有企業は癒着している。そのもとで何億人もの労働者が搾取され、とりわけ総人口の2割を占める農民工(2014年で2億7000万人強)が最底辺に属し、都市戸籍を持てないため教育や医療、住宅などで劣悪な生活を強いられているのが中国の真実であり、我々が早くから国家資本主義と規定してきた所以である(最近になって、ようやく「社会主義」中国の規定を改めたどこかの〝前衛党〟とはわけが違うのだ)。

 中国の国家資本主義は、その成長を通じて近年は海外に資本を輸出し、他国の労働者を搾取する帝国主義に転化した。「一帯一路」戦略は中国資本の海外進出を促し勢力圏を拡大する政策に他ならない。

 中国の帝国主義化は、経済面でも軍事面でも米中対立を激化させ、特に香港併合に反対するトランプ政権との対立が先鋭化している。習近平政権が香港が金融センターとしての地位を失うことも承知の上で香港を制圧したことは、中国の帝国主義化が新しい段階に到達したこと、米中の新冷戦が「熱戦」に転化する可能性をはらんでいることを示している。

新たな闘いの発展の契機に

 国家安全法の施行は、民主的権利の抑圧や弾圧の強化という点で、香港が〝中国本土並み〟となったということであり、香港の若者、労働者は苦境に立たされている。だが彼らはこの厳しい条件下でも闘いをやめないだろう。事実、非合法でも闘うという若者たちが少なくない。彼らには今、本土の労働者・民衆と連帯し、団結して習近平政権と闘うという新たな課題が提起されている。本土の労働者、市民が抑圧体制下でも決して沈黙しておらず、抗議行動に立ち上がっていることは先に見た。全土の労働者との連帯と団結の条件が成熟したのである。

 日本の労働者もまた、習近平政権とその〝威光〟(?)を借りて延命を図る安倍政権に断固反対し、闘いを発展させていくことによって香港、本土の労働者、民衆との連帯を勝ち取っていかなければならない。 (鈴木)

   

   

【飛耳長目】

★都知事選で山本太郎は、19参院選の東京での「れいわ」の得票46万を66万に増やした。MMT理論に依拠した妄想の景気好循環論と「全都民に10万円」のバラまきの扇動が、社会経験の乏しい若者らに浸透しつつある危険な兆候を指摘したい★生活困窮者への思いを熱く語る一方、小池に「どんだけ国のカネ引っ張って来たんか」とまくし立てる姿には、社会的危機の深化に希望を見出せない貧困層に、既成政党の無力をエセ革新性で激しく攻撃、扇動するファシズム運動との類似性がある★このエセ革新性を見抜けず、彼を野党統一候補にと目論んだ枝野や、多くの政策で合意できたと言う志位の無定見は最悪だ。彼らが推奨する野党共闘自体、安保や自衛隊、天皇制に原発、はては私有財産制にまで及ぶ相違にフタをした代物でしかない。野党共闘で当選した桜井充は自民党に入党したが、共闘相手だった民主党からは細野や鷲尾のように反動派に寝返る連中が次々出ている。裏切りだと騒いでも、統一の美名で売り込んだ責任は免れない★知事選と同時に都議補選が4選挙区であったが、全て自民党公認候補が当選した。共闘で自民を追い詰めるはどこへ行ったのか? 残る任期1年、次狙いで一本化できなかった云々は党利党略を隠す言い訳に過ぎない。(Y)

   

【2面トップ】

日本製鉄による呉製鉄所閉鎖
   スクラップ化といかに闘うか

 広島県呉市にある旧日新製鋼呉製鉄所が、23年9月末での全面閉鎖という発表を受けて5か月が経った。(この4月より新たに日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区へと名称変更して合併・統合された。従業員約960名、下請け関連企業を含め約3300名)。かつて〝国力〟の象徴とされた鉄鋼業は、プラスチック樹脂やセラミックの台頭によって、素材産業としての比重を低下させたとはいえ、工業(製造業)の基礎として資本主義を代表する産業であり、いまなおその要である。ここでは、日新製鋼ならびにその本社工場であった呉製鉄所の特徴と、17年の日本製鉄による子会社化前後の経緯を検討することで、一見唐突で迷走したかに見える今回の呉製鉄所の全面閉鎖の意味と、労働者の闘いについて考えてみたい。

日新製鋼ならびに呉製鉄所の特徴

 呉製鉄所の銑鋼一貫工場としての特徴は、第一に圧延過程のなかに表面処理や薄板製造などの冷間処理設備を持たず、熱間処理された材料が他の事業所に運搬されて最終加工されていたことであろう。また第二には、全般に旧式で規模が小さかった(第1高炉は62年、第2高炉は66年に完成。粗鋼生産高は18年実績で273万トン)。

 旧日新製鋼(以下「日新鋼」)が、これまで国内最下位ながら一貫製鉄会社として独立し得たのは、メッキ処理建材やステンレス精密薄板における技術力と、小さな資金力を補うための徹底した分業体制で国内市場に足場を得ていたことによる。本社工場としての呉製鉄所は、薄板製造の堺製造所(大阪)、メッキ鋼板製造の東予製造所(愛媛)、ステンレス鋼板製造の周南製造所(山口)、建材製造の市川製造所(千葉)などの親工場として、各製造所や製鋼専業他社に中間材を供給する役目を担っていた。主力製品は、高耐蝕性の表面処理鋼板ならびにステンレス鋼材であったが、これらはともに呉製鉄所自身の製品ではなく、各事業所の製品であった。だからこそ日本製鉄(以下「日鉄」)は各事業所を狙い撃ちにした、「いいとこ盗り」が可能だったのである。

日新製鋼合併の背景と狙い

 日鉄(当時は新日鉄住金)による日新鋼の子会社化の狙いは、両社名で出された16年2月の「日新製鋼の子会社化等の検討開始について」で明らかである。

 そこにはこうある。「17年3月をめどに新日鉄住金が日新製鋼を子会社化する」ことを前提に、日新鋼側の要請に基づいて「鋼片(いわゆる粗鋼……筆者)を継続的に供給する」。また「鉄鋼業を取り巻く国内外の事業環境は極めて厳しく」、その要因は「アジアを中心とする過剰な生産能力と中国経済の減速に伴う鋼材需要の減退」とされている。

 19年には日本の粗鋼生産が年1億トンを割り込み世界シェアを5%にまで落とす中で、中国はいまや年11億トン、世界シェアを53%にまで伸ばし、輸出量も日本の総生産量に匹敵する年1億トンを越えるまでに強大化した。しかも中国企業は、これまでの強い国内需要に支えられて強弱混在の乱立状態にあるが、このさき合従連衡が進めば、輸出量の急増と、それに伴う粗鋼価格の価格崩落が避けられないのである。

 子会社化の狙いはこうだ。一つには、ステンレス事業においては「各々のグループはステンレス粗鋼生産規模で世界10位圏外となっており」、「海外の大規模なステンレスメーカーからの輸入品が増加するなど、国内外で競争がいっそう激化」しており、生産規模の拡大が焦眉の課題であること。二つには、12年に新日鉄と住友金属とが統合して粗鋼生産世界第3位となることで、世界的な過剰供給能力や、人口減少による国内の需要縮小に備えたが、自動車部門に次いで重要な建材部門を取り込むためには、さらに日新鋼の「きめ細かな」市場対応力が必要なこと。

 ここにあるとおり、日鉄の狙いは日新鋼がもっていた収益性の高いステンレス部門と建材部門の吸収であった。事実、日新鋼を17年4月に子会社化し、19年1月には完全子会社化した後、すぐさまステンレス鋼板部門は日鉄ステンレスに、ステンレス鋼管部門は日鉄住金鋼管に統合された。また建材部門も、日新鋼建材を日鉄日新製鋼建材に鞍替えして、材料供給を日鉄に置き替えた。日新鋼のもっていた収益性の高い部門はすっかり日鉄の子会社へと吸収されてしまったのである。

 それに対して、親工場であった呉製鉄所は、日鉄にとって魅力がないばかりか社内効率化にとっての〝お荷物〟でさえあった。たとえば粗鋼生産高でみると、同じ瀬戸内海沿いにある九州製鉄所大分地区の18年実績875万トンに比して、呉地区は高炉1基体制になればそのわずか5分の1ほどの規模にすぎず、基幹工場足りえないからだ。

日本製鉄の縮小再編の意味

 日新製は小規模ながら、いや小規模であったからこそ、素材生産部門と最終加工部門とを専業化して高品質な建材とスチール製品に特化して生き残るほかなかった。昨年19年11月に日鉄が発表した再編もまた、より大規模な形で社内分業を行なうというものである。米中貿易摩擦で先が見えない中、日鉄は呉製鉄所の全面閉鎖や全国的な生産縮小に踏み込み、実に4900億円もの減損を積み上げて、全国16拠点を6製鉄所に縮小再編することにしたのである。

 この再編計画発表のさいには、呉製鉄所は5か所ある瀬戸内製鉄所唯一の一貫製鉄所と位置づけられていた。このために、高炉1基でも呉は基幹工場として維持されるだろうと労働者をはじめ、関連会社や県や市も信じ込んでしまったのだ。そのためこの発表からわずか3か月後、一転して呉工場全面閉鎖の方針が出されると、「いや聞いてない」「急転だ」等々の非難や戸惑いの声が噴出したのである。しかし子会社化と全面閉鎖がどれほど意図的だったか、などを詮索するのは無駄であろう。なぜなら利潤獲得のための強制こそが資本家を突き動かすのである。

 大規模な縮小再編によるスクラップ&ビルドは今後の日本鉄鋼業界全体の姿でもあろう。すでに神戸製鋼の日鉄入りがささやかれているが、事態はそれにとどまらないであろう。中国の圧倒的な生産力やすでに日本を追い越したインドの急速な追い上げを考えれば、日本の鉄鋼資本は、中国を中心とする分業体制に甘んじるか、そうでなければ中国に対峙できるほどの国際的な分業体制に自分を組み込むほかないと自覚し始めたのである。(すでに19年末に、日鉄は世界最大手ミタルとインドの鉄鋼大手を共同買収している。)

工場閉鎖・大量失業といかに闘うか

 これまで〝国策〟産業として生き延びてきた鉄鋼資本は、呉製鉄所の全面閉鎖に見られるように、旧い生産設備をスクラップ化することでこの危機を乗り越えようというのだ。しかしそれは労働者とりわけ下請や関連企業の労働者にとっては、大量失業として現れる。事実、日鉄は「従業員の解雇はしない、配置転換によって雇用は守る」と言うが、下請労働者の救済などは自分の責任外で、国や自治体の施策の問題だと言わんばかりである。当初は地元商工会を中心に工場存続の署名運動が取り沙汰されたが、結局は日鉄からの報復に尻込みして見送られてしまう始末だ。現場は21年9月予定の高炉閉鎖と配置転換に向けて半ば諦めが支配している。

 われわれ労働者は、いかに闘うべきであろうか。呉工場をこれまで通りに存続させよという要求は、客観的にも主体的にも正しいものではないであろう。われわれはまず、工場閉鎖に伴う離職者の全員は、親会社である日鉄の都合で解雇されたのだから、日鉄は責任をもって失業者の就労と生活を保障せよと要求するし、閉鎖に伴う労働者全員の損害への賠償を要求する。当然であろう。下請企業の労働者は、雇用先の企業だけでなくて親会社にも搾取されており、だからこそ本工よりも安い賃金しか受け取ってこなかったし、本工も搾取されてきたのだ。これは〝法律的な〟問題ではなくて事実の問題だ。資本とその国家がいかに労働者の〝自己責任〟を説こうとも、この大量失業は労働者の自己責任などでは絶対にない。

 労働者が旧い生産設備もろともにスクラップ化され失業してしまうのは、富を生み出す生産手段が、生産階級から切り離され、他人の労働を吸収する〝資本〟として存在するからに他ならない。個々の労働者は個々の資本に雇われているとはいえ、労働者の全体は生産手段を独占する階級としての資本家に雇われている。労働者こそがその労働によって資本家を食わしてやっているとも言えるのであって、資本の都合で一方的に不利益を押し付けるのは資本側の論理でしかない。われわれ労働者には正々堂々と闘うべき根拠があるのだ。

 この闘いは、いわゆる工場内での合理化反対の闘いでもないし、また企業の社会的責任の問題に矮小化することもできない。それは一言で言って、資本の支配に対する労働者の階級闘争なのであり、だからこそ階級的な連帯と団結なしには闘い抜くことはできないのだ。階級的な団結を強めて断固闘い抜こう。

  (広島・泉安政)


【二面サブ】

腐った〝勝利〟
都知事選 小池が再選

 5日投票の東京の知事選挙は、小池が宇都宮(立民、共産、社民推薦)、山本(れいわ新選組)らを大差で破り再選を果たした。

 小池は、「東京大改革を進めてきたことが評価された」と胸を張ったが、前回の選挙での公約として掲げた多摩格差ゼロ、都道電柱ゼロ、待機児童ゼロ、介護離職ゼロなど「7つのゼロ」のうち実現したと称するのは「ペット処分ゼロ」の僅か一つのみでしかなかった。また「都民が決める。都民と進める」としながらも、実際には反対の声を無視し、コロナ対策で先頭に立つ都立、公社病院の独立法人化が強行され、「情報公開は一丁目一番地」と言いながら、カジノ誘致や築地市場の移転に関する情報開示要求については拒否を押し通してきたのであり、「東京大改革が評価された」という小池の言い分は恥知らずの大ボラである。

 小池に票が集まったのは、選挙の焦点となったコロナ対応である。3月に都内の感染が拡大すると、小池は「ロック・ダウン(都市封鎖)」とか「パンデミック(感染爆発)」と危機を煽り、政府に緊急事態宣言を出すことを迫った。一方、休業要請と協力金給付でも、早期の休業要請に否定的であった政府に先駆けて実施した。コロナ対策でのこの「手腕」に期待し、今回の選挙で小池に投票したものは少なくない。しかし、これは都が9千億円の貯金(財政調整基金)を持つ裕福な自治体であったからであり、小池の政治手腕というわけではない。実際、休業要請を撤回したときと時を同じくして、都の感染者は連日100人超え、第二次感染の危機到来が危ぶまれる現在、小池は「国の緊急事態宣言要請が出た場合には専門家会議を招集し、対策を考える」と国任せであり、都民に対しては「不要不急の他県への移動を控えるように」と「自己責任」を訴えることしかしようとしないのである。「貯金」はすでにほとんど使い果たしてしまった現在、小池はコロナ感染対策は国次第、あとは都民の自己責任といった無責任な姿勢に終始している。

 小池は今回の選挙でも、公約には「『爆速』デジタル化による経済の『新しい成長』」とか「『グレーター東京』(大東京圏)構想の推進」「デジタル化による都民サービスの向上」など、内容も定かでない言葉が躍っている。こんな訳の分からない「政策」を信じて小池に票を投じた都民はいないだろう。

 小池が選挙で勝利したのは、小池都政が積極的に支持されたのではなく、マスコミのコロナ対策報道に便乗しての大宣伝や野党の分裂、コロナ下で論争がほとんど行われなかったなどに助けられた結果である。まさに小池の勝利は〝腐った勝利〟であった。 (T)


   
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