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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
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  (全国社研社刊、定価2千円+税)
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1384号 2020年8月9日
【一面トップ】激化する米中対立――米「新たな自由主義の同盟」を提唱
【1面サブ】ミサイル防衛の「新しい方向性」!?――イージス・アシュア断念を奇貨として
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】揺れる「れいわ新選組」――大西つねきの「命の選別」発言とその顛末
【二面書評】コロナ禍の中国の内実を暴露 『コロナ大戦でついに自滅する習近平』福島香織著(徳間書店)

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【1面トップ】

激化する米中対立
米「新たな自由主義の同盟」を提唱

 米ポンペオ国務長官は7月23日、「共産主義の中国と自由世界の将来」と題する演説を行い、中国の覇権主義を激しく非難、〝自由主義〟諸国による中国に対する「新たな同盟」を提唱した。世界の2大大国米国と中国の関係は経済的対立から政治的対立へと一段とエスカレートした。その背景と意味することは何か。

◆衰退する米帝国主義の焦り

 ポンペオは中国が「米国国民とその繁栄を脅かしている」と非難している。ポンペオ演説はこれらの総括として、米政府の対中国政策としては、「中国に断固とした方法で、変化を起こさせる」ことを基本とすることを宣言している。

 ポンペオは、米国は、もう中国を他国と同じような国として扱うことは出来ない、なぜなら中国との貿易は不公平、不均等であり、中国からの留学生や作業員は中国共産党のために知的財産を盗んでいるからだという。トランプ政権は、21日、テキサス州ヒューストンにある中国総領事館を「スパイ行為と知的財産窃盗の拠点だった」との理由で閉鎖した。また、13日、南シナ海のほぼ全域について自国の権益が及ぶとの中国側の主張を全面的に否定、空母2隻を派遣「航行の自由作戦」を実施した。これに対して中国は西沙諸島に戦闘機を配備するなど南シナ海を舞台にした軍事的な緊張が高まっている。

 ポンペオの批判は、貿易不均衡や知的財産盗用問題、南シナ海の領有問題に留まらず、国家体制にまで及んでいる。

 ポンペオは、歴代の政府が取り続けてきた「関与政策」は「失敗だった。我々は続けるべきではない」と訴えた。「関与政策」とは、「社会主義」中国を国際社会の一員として迎え入れる中で、経済的に繁栄すれば、中国は自由主義の国家に変わるだろうという考えで、1972年、ニクソン政権のもとで始められた。しかし、中国は変わらないばかりか、強大な国家として登場し、自由主義国家を脅かす存在になっている、今こそ「志を同じくする国々の新たなグループ、民主主義諸国の新たな同盟」を構築し、中国に対抗しようとポンペオは呼びかけた。

 ポンペオは、中国を共産主義政党の支配する国家と呼び、共産主義の浸透を阻止し、自由主義・民主主義国家を守れと叫んでいる。しかし、中国は共産主義者の支配する国家ではなく、特殊な資本主義(国家資本主義)であって、特権的な共産党の独裁的権力の下で、彼らが支配する国家企業と私的資本が結びついて、労働者・人民を搾取、抑圧している社会である。中国は、欧米や日本からの資本、先進技術導入によって、急速に発展し、今や、国内総生産では米国に次ぐ世界第二の経済大国となり、また強力な軍事力を保有する軍事大国に成長し、米国と国際社会の覇権を争う帝国主義大国として登場している。

 米国は、電気機器製品をはじめ日用品など中国製品があふれ、鉄鋼、自動車、造船などは衰退し、産業の空洞化が進み、さらには米国が優位を誇ってきた先端産業であるIT関連分野でも、中国企業の挑戦を受けている。トランプ政権が、先端部門の知的財産を中国が盗んでいると非難し、その拠点となっているとして中国総領事館の閉鎖を行うとともに、華為技術(ファーウェイなど5社)と取引した企業を政府との契約から排除する政策(デカップリング)をとったことは、米国が中国の追撃に脅威を感じていることの表れである。

 ポンペオは「関与政策」は誤りだったという。だが、ニクソン政権以来、歴代の政府が「関与政策」をとってきたのは、中国が米国にとって資本、商品輸出の巨大な市場であり、安価な労働力は米国大資本に巨額の利益をもたらすものであったからであって、「誤り」ではなく必然であった。資本主義の下での不均等発展によって、中国は国家資本主義大国として米国の地位を脅かすまでに成長してきたのである。

◆米国の覇権のための「自由主義国の同盟」

 ポンペオ演説は、中国を〝自由主義〟国家とことなり、その体制を覆すことを目的とした「全体主義」国家と非難し、対決を訴えている。これは「新冷戦」の到来を意味するのか。しかし、第二次大戦後の米国を盟主とする〝自由主義〟諸国とソ連を盟主とする「社会主義」諸国との「冷戦」とは異なっている。

 世界を二分した米・ソ冷戦(東西冷戦)の時代には、東西両陣営間に経済的な交流はなく、軍事的に対峙していた。しかし、現在米中両国は経済的に深い相互依存関係にあり、両国にとっては重要な貿易相手国である。ちなみに米国の2018年の中国への輸出額は1201億ドル(全体の7・2%)、輸入額は5397億ドル(同21・2%)であった。一方、中国の2017年の米国への輸出額は4298億ドル(同19%)、輸入額は1539億ドル(同8・4%)であり、輸出相手国では第1位、輸入相手国では第4位である。米、中両国にとって相手国を社会体制を根本的に異にし、否定すべき存在として敵対し合っていたかつての東西冷戦の時代とは根本的に違って、資本主義市場経済という同じ土俵の中で利権、市場をめぐって覇権を争っているのである。

 ポンペオは香港や新彊ウイグル自治区での人民弾圧、南シナ海での領土拡張などを挙げ、強権的に影響力を強める中国に対して「(共産主義の)中国を変えなければ、彼らは我々を変える」、「自由主義の世界は独裁体制に勝利しなければならない」として、「自由主義国の新たな同盟」を呼び掛けた。

 習近平の中国は〝自由主義〟諸国は相いれないと中国をかつてのソ連と同じように敵視するポンペオ演説は、11月の大統領選挙に向けてナショナリズムを煽り立て劣勢にあるトランプ候補の巻き返しを意識していることは否めない。しかし、ポンペイ演説に対してバイデンの民主党側からは反対の声は上がっていない。民主党は自由貿易に反対し、保護貿易を唱えており、対中国政策ではトランプとさほど違わない。ポンペオの「自由主義国の新たな同盟」の呼びかけは、中国の追撃にあって危機感を募らしている米国の立場の反映であって、他の資本主義諸国が呼びかけに進んで応じるという状況にはない。

 現在、米国に同情しているのは英国のジョンソン政権ぐらいである。英国は高速通信規格「5G」から華為技術排除を決定したのに続いて香港「海外市民」に英国移住や市民権獲得に道を開く特別ビザを発行するなど、中国との対立を深めている。これは、EUから離脱し、米国との経済的関係を深めようとする英国の立場の反映である。一方、ポンペオが期待する南シナ海地域での領有権をめぐり争っているアジア諸国の立場は複雑である。フィリピンは「米中いずれとも対峙するつもりはない」(ドゥテルテ大統領)と等距離の姿勢をとっている。領有権問題では米国軍隊の行動に一定の理解を示す一方、経済では中国との関係を深めている。同じ領土問題を抱えているマレーシア、ベトナム、インドなどアジア諸国も同様であり、他のアジア諸国は経済発展のために中国の経済〝援助〟への依存を深めている。

 米国が頼みとする独、仏を中心とするEUは、世界の一つの極として独自性を強め、〝国家連合〟として自己の利益を追求している。とりわけ独、仏にとって中国は、競争相手国であるとしても、投資、商品市場として重要な国家だからであり、米国の覇権を維持するための対中「同盟」に与する必要を認めないだろう。

◆動揺する米国中心の世界資本主義体制

 米国と「同盟」関係にある日本にとって米国が中国に対して対決姿勢を強めることは、困難な立場に立たされることである。中国は南シナ海の囲い込みと同時に、日本が領土権を主張する尖閣諸島周辺への頻繁な艦艇巡回など軍事的圧力を強めるとともに、「一帯一路」政策を通じて日本が市場としてきた東南アジア諸国への経済進出も活発化している。一方、日本にとって今や中国は米国を抜いて日本最大の貿易相手国である(1919年、中国33・1兆円、米国23・9兆円)。中国の軍事的圧力や東南アジア諸国への進出に対抗するために、日本は米国への軍事的依存に頼る一方、中国との経済的な結びつきも維持したい。米中二大大国の挟間にある日本の立場は、米国との軍事協力を強化しつつ他方では、習近平の訪日要請という安倍政権の政策に表れている。今のところ、安倍政権のポンペオの対中「同盟」に対する反応は明らかではない。今後日本が具体的にどのように動くのかは、米中の覇権争いがどのように進展するかにかかっている。それがいかなるものであれ、そのしわ寄せは労働者への圧迫、犠牲の増大となって跳ね返ってくることは確かである。 (T)

   

【1面サブ】

ミサイル防衛の「新しい方向性」!?

イージス・アシュア断念を奇貨として

 政府は6月中旬、イージス・アシュアの計画停止を発表、6月18日には安倍首相から、「わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している。……朝鮮半島では今、緊迫の度が高まっている。弾道ミサイルの脅威から国民の命と平和な暮らしを守り抜いていく」、「抑止力、対処力を強化するために何をすべきか。……安全保障戦略のありようについて、この夏、国家安全保障会議で徹底的に議論し、新しい方向性をしっかりと打ち出し、速やかに実行に移していきたい」と、安保戦略の「新しい方向性」の実行ということが打ち出された。安倍は自民党にミサイル防衛に関する検討を指示し、今月4日に検討チームから「国民を守るための抑止力向上に関する提言」を受け取った。

 コロナ禍への対応の酷さなどで安倍政権の支持率が低迷している中で、アシュア計画の失敗を逆手にとって、安保論議で巻き返そうという魂胆である。アシュア断念に対して、導入を推し進めてきた責任を回避する安倍のやり方は、北朝鮮の弾道ミサイルへの恐怖を煽り軍備増強してきた〝実績〟だけでなく、尖閣での中国との緊張も利用して、軍事的緊張をさらに強めることで、政権の延命を図ろうとするものである。

 提言は、「憲法の範囲内で、専守防衛の考え方のもと」と言いながら、「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力」保有の必要性を強調し、「飛来するミサイルの迎撃だけを行っていては、防御しきれない恐れがある」と述べ、日米同盟での「日本は防御(盾)、米国は打撃(矛)」という役割分担は維持するとしつつ、「日米の対応オプション(選択肢)が重層的なものとなるよう、わが国がより主体的な取り組みを行う」ように提言している。

 これまでは「敵基地攻撃能力の保有」を提言していたが今回は、与党内の慎重派に〝配慮〟したのか、移動式ミサイルを想定したのか知らないが、「相手領域内」で「阻止する能力」という言葉を使っている。自民党は、ミサイル発射台が移動するものになったとか、超音速になったとか、ミサイル弾道が特定しがたいものになったなど、ミサイル技術の進化を挙げ、相手側のミサイル発射基地を攻撃することなしには自国を防衛することは出来なくなったと言って、相手国の基地攻撃も「専守防衛」の枠を逸脱するものではないと、「新方針」を正当化する。

 こうした言い分を認めれば、結局は際限のない軍拡競争になるのは必至である。安倍政権は、中国やロシア、北朝鮮の日本に対する軍事的圧迫を批判し、「防衛」のための自衛隊の軍備強化を正当化する。しかし、日本も帝国主義国家として米国と軍事同盟を結び、中国やロシア、北朝鮮と対峙し、軍事的緊張を高めているのだ。

 帝国主義国家、軍国主義的国家が存在する以上、軍事的な対立、軍拡は必然であり、戦争をなくすことは出来ない。

 共産党は各国に「自衛権」があることは、国際的に承認されているとしてブルジョア国家のための軍隊=自衛隊の存在を肯定している。こうした立場では、安倍の〝攻撃的自衛〟と闘えない。労働者は全世界の労働者と連帯し、帝国主義、軍国主義に反対し、一掃するために闘っていかなくてはならない。 (岩)


   

【飛耳長目】

★中国の領土拡張の挑発が続いている。領土問題が深刻な紛争となるのは、ブルジョア国家にとって排他的権益と、国家間の秩序を画定し国家の威信を内外に示すからだ★東南アジア各国と争う南沙諸島では圧倒的な国力差に物を言わせ、環礁を埋め立て軍事施設を建設・占拠し、既成事実化を企てている。これに国際秩序の盟主たるアメリカは、海軍艇による「航行の自由作戦」で応戦している★山岳地帯のカシミールは、印度とパキスタンの英国からの分離独立以来三国で争うが、まさに国民国家誕生を契機にした、権益よりも国家の威信をかけている★日本とは尖閣諸島と沖ノ鳥島を巡って軍事的衝突の可能性さえ出ている。4月から中国公船が航行する尖閣では、連動してミサイル艇と本土ミサイル部隊が展開し、今月中旬には民間漁船の大量動員を予告している★沖ノ鳥島は大海原に突き出た岩礁で、護岸工事とチタン製ネットを被せて島に仕立てたが、南沙で同じことをした中国は異を唱え、調査船を派遣して神経戦を展開している★国際法では無主地を他国に先立って先占すれば領土とされるが、力ずくか偶然の産物に過ぎず、世界に向かって誇れる類いのモノではない。排他的で帝国主義的な権益を労働者が擁護できないことは明白だ。 (Y)

   

【2面トップ】

揺れる「れいわ新選組」
   大西つねきの「命の選別」発言とその顛末

 大西つねきの「命の選別」発言をめぐって「れいわ」が揺れている。

 7月3日に大西が自身のYOUTUBE動画で2025年問題など医療・介護の問題に関連して「命の選別をするのが政治の役割だ。順番として高齢の方から逝ってもらうしかない」などと発言したのが発端だ。

 7日には山本代表の知るところとなり、大西は一旦は謝罪してこの動画を削除し、その後当事者たち(障害者や難病者たち?)によるレクチャー(話を聞く会)が開かれた。しかし、大西が十分な聞く耳を持たなかったということで、16日には「れいわ」の総会がもたれ山本代表提出の除籍処分が決定されたのである。

 大西はその後謝罪を撤回し動画も再掲載するとともに、総会翌日の17日には改めて自説を繰り返し独自に活動を継続する旨の会見を開いた。

 総会後の山本の会見によれば、除籍理由は「決意(綱領)」(「あなたが明日の生活を心配せず、人間の尊厳を失わず、胸を張って人生を歩めるよう全力を尽くす」等々)と政策(「保育、介護、障害者介助、事故原発作業員など公務員化」による人員増)に背反している、一言でいって「すべての人は生きているだけで価値がある」、「積極財政によって底上げをしていく」という「れいわ」の基本思想に背反しているというものだ。

 大西も別の所では「医療・介護労働者の待遇を改善して従事者を増やす」ということも言い、積極財政については政府紙幣の発行によって財源を生み出すという「れいわ」以上に〝過激な〟ことを言っているのだからどうしてこのような「命の選別」発言が出たのか疑問に思う向きもあるかもしれない。

 大西はこの問題を特に考えるようになったのはコロナ禍の現実に接するようになってからだとも言っている。3月11日付けの動画を見ると自粛による経済活動の減退を恐れ「長期化すれば国力にも影響し、国家の存続にも関わる。……我々はどこかの時点で、このウィルスを受け入れて、救える命、救えない命の見切りをつけるしかない。」などと言っていて(まるでトランプやブラジルのボルソナロ大統領のようだ!)、自身の政治活動なども結構活発にやっていたようだから「れいわ」との齟齬もこの頃から始まっていたようだ。

 大西が2011年に立ち上げたフェア党はその理念として「フェア」であることの他に個人の「自由と自立」を最初に掲げていて彼もそれを中心的信条としているようだが、そこには個人主義的な「自由と自立」を第一に掲げ他を返り見ない「驕り」があるように感じられる。山本の会見に同席した木村・船後両議員もそれは感じたようで、それのみならず彼らは「恐怖」を感じたと必死で訴えている。

 欧米のポピュリストの中で大西に似た主張を掲げているものとしてはオランダ自由党のウィルデスがいる。EUの制約内で活動している彼らと大西とでは財政論なども異なるが、ウィルデスらはイスラムや移民の排斥を合理化するために自由や民主主義といった〝西欧的価値観〟を絶対化して持ち出しているのだが、大西は若者の「自由や自立」「時間や労力」を盾に高齢者や社会的弱者を選別しようというのだ。

 一見リベラルを装い、物事を合理的に考えているように見えても、大西の立場は新手のファシズムといったものに限りなく近いのだから誰しも「恐怖」や「戦慄」を覚えざるを得ないのだ。

 大西の除籍処分には、さらにその後の顛末も付け加わった。この処分に総会で反対票を投じた二人のうちの一人、沖縄出身で東京選挙区の予定候補となっている野原よしまさ(沖縄創価学会の現役学会員)が7月25日に離党届を出したのだ。

 理由は、「党規約を含め党運営のあり方」が山本中心で独裁的になっていて容認できないというものだ。この届はまだ受理されておらず党事務局側は「話し合い」を持ちかけているようだが、「れいわ」の動揺は隠しようもない。

 山本はフェア党というれっきとした政党を立ち上げている大西や現役創価学会員の野原をそのまま「れいわ」のメンバーとしているなど党運営・組織運営はルーズそのものであり、強固な階級的団結など思いもよらないのである。

 山本の立場は、その扇動的な言辞とバラマキの規模を別とすれば他の野党とそう大きく異なるものではない。今後もこのポピュリスト的立場を徹底していくのか、それとも他の野党との協調路線に転換していくのか先のことはわからない。しかし、いずれの場合であっても労働者・働く者にとっては現下の政治的危機、つまり、ますます退廃し無能をさらけ出すとともに反動化・右傾化を深める安倍自民党と、これとまともに闘えない野党、等といった政治構造はそのままである。

 労働者・働く者はこうした一見華々しい「れいわ」の動きに惑わされることなく自らの闘いを進めていく必要がある。

  (長野、Y・S)

〔一部省略: 全文は労働者党ブログをご覧ください。〕


【二面書評】

コロナ禍の中国の内実を暴露
『コロナ大戦でついに自滅する習近平』福島香織著(徳間書店)

 福島香織さんは、産経新聞記者時代に上海復旦大学に語学留学後、香港支局長、中国総局(北京)駐在記者、政治部記者などを経て2009年に退社。以降はフリージャーナリストとして活躍している。当代きっての中国通、チャイナウォッチャーと言って良いだろう。

 彼女の強みは、堪能な中国語を活かして、中国政府の公式発表や新聞報道はもとより、中国最大のSNS、微博(ウェイボー)に日々刻々流れる膨大な情報(消えてはすぐまた出てくる噂も含む)を収集し、中国の内情を克明に伝えることができる点にある。国際的なメディアの報道や研究も紹介され、中国・香港内外の友人たちから寄せられた情報が分析を補強しており、中国の真実に迫っている。

 本書は彼女の新著で2020年5月31日刊)、コロナ禍の中国の内情を生々しく伝えている。

 第1章では、武漢で原因不明の肺炎患者が最初に報告された2019年12月8日以来の展開を克明に追い、「中国政府の情報隠蔽で新型コロナ肺炎はパンデミックへ」発展したことを暴露している。

 「初期の現場の医師や衛生官僚の動きは比較的的確だったが、習近平個人独裁に慣れ切った政治システムの方が機能不全に陥っていた」、李文亮ら医師がSNSで告発したことが「デマ拡散」だとして逮捕されたことで医師らの警告は封じ込められた(30頁)。上海の医療チームが新型コロナウィルスであることを特定したのに、1月3日、国家衛生健康委員会弁公庁は、武漢の9人の患者のウィルスサンプルを破棄するよう通知した。「SARSに似た未知のウィルスを早々と特定していたのに、中央が政治的理由で、この情報の拡散を抑え込んだのだ」(33頁)。

 興味深いのは、政府の徹底した情報統制にもかかわらず、ネット上では様々な情報が飛び交い、政府が削除しても次から次へと――まさに雲霞のごとく――湧き出て、真相が徐々に伝わっていくことである。まさに、「隠すより露わるるはなし」。である。

 第2章では、ウィルスの起源が――自然発生的なのか、「生物兵器」なのか等々が詳しく検討されている。著者ははっきり結論を下していないが、中国はウイルスの〝宝庫〟であり、いつ未知のウィルスが拡散してもおかしくないこと、武漢封鎖は、「むしろ、政権のアキレス腱を暴露した」と指摘する。

 「官僚たちは習近平の機嫌をそこねる行動をすれば、失脚させられると恐れているので、自発的な判断、行動を極力避け、サボタージュが起きる。遅れて、習近平が真実を知り、切れて過剰な強権を発動する」。「だが、それは問題解決にはつながらず、大衆の不満や不信を引き起こし、近隣周辺国の不信や警戒を呼び覚ます。本当に恐ろしいのは、ウィルスではなく、お互いが信頼できないという不信の構造であり、その根本的な原因は、中国の政治体制そのものだ」(109頁)というのが彼女の見解である。

 第3章では中国が新型コロナウィルスとの戦いに勝利したと喧伝しつつ、世界制覇に乗り出していること、しかし、「一帯一路」路線は、コロナ禍以前から中央アジアやアフリカで現地政府や住民との対立を招いており、継続が困難になっていること、習近平政権は国内の批判をかわすために、香港、台湾などへの圧力を強化し、南シナ海や東シナ海で挑発行為を繰り返していることが暴露されている。

 第4章ではメディアの報道のあり方を論じ、「共産党独裁にとって人民は最大の敵。そして人民側も共産党政権を信頼していない」(173頁)と指摘する。「普通選挙のない強権体制」では、平和的な政権交代はあり得ないのだから、人民は「革命」を求めるしかない、「だから、為政者にとって人民は潜在的に敵なのだ」、「だから政府は人民を信用せず、・・情報は隠蔽し、嘘の情報を発表する」、「だから人民は・・公式発表や・・公式メディアを信用せず、むしろ口コミの方を信じやすい」、だからパニックが発生しやすいと論じる。つい最近まで、中国は「社会主義国」だと言ってはばからなかったどこかの国の「前衛党」に聞かせたいものだ。

 第5章「中国残酷物語――人民の不満と苦しみ」は、筆者が最も興味深く読んだ章だが、その内容は、本紙1282号の拙論で紹介した通りである。我々は、中国の人民がもはや決して「沈黙の民」ではなく、発言し、抗議し、デモに立ち上がる、闘う民衆だということを知る。必要なのは、こうした個別の自然発生的な戦いを組織的な一貫した闘いへと発展させていく全国的な政治組織であり、それが必要であり、必然である以上、必ずや生まれてくるだろう。

 第6章では、「末期症状を示す習近平による共産党独裁体制」に対する国内の批判や政権内部からの抵抗、クーデターの動きなどを紹介しつつ、中国の今後を展望している。彼女は、中国共産党内部から開明的な一派が現れ、民主化していくことを――西側のような自由と民主主義の体制に移行していくことを――期待しているようだが、我々とはその点で見解が異なる。

 とはいえ、中国の真実を知るためには不可欠の書であろう。
 (鈴木)


   
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