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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1386号 2020年9月13日
【一面トップ】「安倍政治」の継承を糾弾する――すでに破綻した「アベノミクス」
【1面サブ】野党〝新党〟の虚しさ――旧民主党のゾンビが蠢く
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】トヨタ新「成果主義賃金」へ!――攻める資本に、服従する労組
【二面サブ】急膨張する中国の対外融資――帝国主義への転化を裏付け
【校正】

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【1面トップ】

「安倍政治」の継承を糾弾する
すでに破綻した「アベノミクス」

 安倍首相の辞任表明を受けて、自民党は次期総裁を決めるための選挙戦を行っている。14日には新総裁が誕生、16日には国会で首相が決まる予定である。総裁選には、菅、岸田、石破の3人が立候補しているが、5派閥の支持を得て、「安倍政治の継承」を謳う菅が新総裁となり、次期首相になることは確実という情勢となっている。以下、ここでは安倍政治の中心であった「アベノミクス」を検討する。

◆破綻した「アベノミクス」
 菅は経済政策について「(安倍政権は)経済政策を最優先で取り組んできた。アベノミクスをしっかり責任をもって引き継ぎ、さら進めたい」、大規模な金融緩和についても「日銀との関係は安倍首相と同じように進めたい」と述べている。
 「アベノミクス」とは、2012年に政権に復帰した安倍の最大の看板であり、大規模な金融緩和、積極的な財政出動、成長戦略の「3本の矢」で、経済の「好循環」を実現するというものであった。
 13年2月には黒田を日銀総裁に任命し、「異次元の金融緩和」を行わせた。黒田日銀は「デフレ脱却」、投資の活発化のための「2%の物価上昇」を目指し、超低金利=「マイナス金利」を導入した。一方、政府は、大企業に対して投資を喚起するための研究・開発や賃金引上げ促進などを対象として大企業に対して大幅な減税を行った。国と地方を合わせた法人税の実効税率は、安倍政権発足前の37%から18年度には29・74%にまで引き下げられた。
 また、日銀は民間投資家の投資を後押しする目的としてETF(上場投資信託)の積極的な購入を行ってきた。
 しかし、安倍が約束した「好循環」は実現されていない。02年の安倍第二次政権発足前に9千円台であった株価は15年4月には15年ぶりに2万円台になり、製造業などを中心に業績は好転した。しかし、それは「アベノミクス」のおかげというより世界的な景気回復に助けられた結果であった。
 アベノミクスによる株価上昇で利益を得たのは大企業や資産家たちである。大企業は利益を増加させたが、投資を拡大させるのではなく内部留保として積み立てているのである。それは488兆円と国内総生産に匹敵するほどになっている。 安倍は400万人の雇用を増やしたといったが、その65%はパートや派遣などの非正規の労働者である。労働者に占める非正規労働者の割合も35・7%から37・9%に高まった。
 13年、安倍政権は「日本再興戦略」をまとめ、国内総生産を10年間の平均で名目3%、実質2%とすると約束した。しかし、実際には景気回復期の実質経済成長率は平均年1・1%程度、実質賃金はむしろマイナス0・5%低下した。景気回復期間も「戦後最長」と政府は言いはやしたが、すでに18年10月に終わっていることが明らかになり、「戦後最長の経済回復」は作り話でしかなかった。
 そして、新型コロナ感染の拡大は、不況に追い打ちをかけた。コロナ感染拡大によって生産は縮小し、多くの労働者、とりわけ真っ先に非正規の労働者は首を切られるなど、一層層困難な生活に陥っている。
 「アベノミクス」によって日本経済は発展するどころが、反対に弱体化した。
 安倍は株価が上がったのは「アベノミクス」のおかげあると言ってきた。しかし、それは、日銀が株を買い支えしてきたからである。日銀による株価の下支えは10年から始まったが、「異次元の金融緩和」が始まった13年には年6兆円に増額、その後も増え、16年からは年6兆円に、コロナの影響で株価下落が予想された20年3月からは当面年12兆円に増額された。
 株価下支え策で利益を得たのは企業や金持ち連中である。だが、それは日銀の信用を脅かすまでに至っている。現在日銀が保有するETFは約32兆円にもなっている。このままいけば今年度中に公的年金を運用する年金積立金管理運用独立法人(GPIF)を抜いて最大の保有額になる見通しである。
 主要国で中央銀行が民間の株式の保有を認めているのは日本だけである。外国が中央銀行の株式の保有を禁じているのは、企業の業績が不振に陥れば株価が低落し、中央銀行が損害を被り、通貨の信用を傷つけるからである。実際、19年の日銀決算では評価益は株価の下落で前年度比92%減った。
 また、日銀の買い入れ額が増えれば増えるほど、それに依存した企業は新技術の導入などに消極的になり、競争で陶冶されるべき遅れた生産力のもつ赤字企業が温存される。事実、安倍政権の下で、AIなどの革新的技術の導入は遅れてきた。
 株価が高価格を維持してきたことを安倍は「アベノミクス」の功績と宣伝してきた。しかし、生産は停滞しているにもかかわらず株価は低下しない、株価と実体経済の乖離は政府の株価下支え策によるものであって、決して長続きすることではなく、いずれそれは株価の崩落によって解決されざるを得ない。日本経済はかつて日本経済の発展を支えた鉄鋼、自動車、電気機器、機械など生産的部門ではなく、株式など金融部門に利益を依存するようになってきたのであり、これは日本資本主義の退廃を示している。
 また政府は景気振興策として大量の国債を発行して(借金をして)きたが、それを支えてきたのは日銀の国債購入である。法律は日銀の国債引き受けを禁じているが、国債買い取りは次第に増え、今年の4月からは買い取りの上限が撤廃されたことに見られるように、現実は日銀の直接国債引き受けと同様になっている。日銀の総資産(19年9月)は「アベノミクス」の前の3・4倍の553兆円、国内総生産を上回る規模に膨らんだ。うち国債が断トツの約85%を占めている。日銀の剰余金は約9200億円、総資産は4・1兆円だから、金利が上がれば、あっという間に評価損で日銀は債務超過に陥る危険をはらんでいる。日銀が債務超過になれば、円の信用も危うくなるだろう。
 「積極的な財政出動、大規模な財政出動(膨張)」という「アベノミクス」によって、日本経済はますます泥沼の深みに落ち込んでいるのである。

◆空約束の「成長戦略」
 16年には、「新3本の矢」として、「一億総活躍社会」が目標に掲げられ、20年代までに国内総生産600兆円の実現のほかに、子育て支援として「希望出生率1・8人」、障碍者支援として「介護離職ゼロ」を謳った。
 しかし、昨年の出生者数は86・5万人と統計史上最低に落ち込み、女性が生涯産むと見込まれる特殊出生率も1・36と低下した。女性が安心して子供を産み、育てられ、社会で活躍できるようにと謳った保育園の待機児童の解消も進まず、今年4月段階でも1・2万人(特定の保育園を希望しているとして除外されたのを入れれば7・4万人)となっている。一方「介護職離職ゼロ」についても、介護職員の離職者は17年9月までの1年間で9・9万人に上り、「離職者ゼロ」は絵にかいた餅に終わった。「一億総活躍社会の実現」などといっても、結局は人気取りのスローガンでしかなかったのである。
 「アベノミクス」によって経済は一層疲弊し、寄生性を深めたのであり、「アベノミクス」の継承政治など労働者にとって打倒の対象でしかない。(T)
   

【1面サブ】

野党〝新党〟の虚しさ

旧民主党のゾンビが蠢く

 安倍が辞任表明して、自民の総裁選が注目を集め、野党再編への関心が薄れ、立憲福山幹事長は「合流新党にも注目していただきたい」と哀訴したが、もともと期待されていないし、「反安倍」の求心力すら失くしたゾンビ(すでに死んでいるくせに歩き回る連中)が〝新党〟結成で騒いでいるといった状況である。 枝野新党にしろ玉木新党にしろ、〝新党〟と呼べるようなものではない。枝野新党の綱領は「働くものの党」を消して「新しく」なったが、古臭い「国民主義」が自慢になるか、玉木新党は綱領もそのままだ。枝野側が「大きなかたまりを作ることができた」と誇ったところで、その内実はブルジョア政治に追随するしか能のない連中ばかりで、二〝大愚〟政党を忘れていない労働者に、「大きなかたまり」への幻想などないことも分からないのだ。
 立・民の代表選で枝野も泉もコロナ対策や消費減税を押し出したが、コロナ対策の遅れの追及や原因究明でどれほど安倍政権と闘ったのか、おしゃべりしていて無為に時間を浪費したのではないか、税制の議論も「消費不況」対策でしかなく、自民党のバラまき批判こそ重点を置くべきだが、自公政権のブルジョア政治による壟断を糾弾するよりも、「給付金」のバラまきを競うばかりだ。
 こんな不甲斐ない新党なのに一生懸命合流を勧めているのが連合の神津会長である。国・民に対して、「分党に関する説明がわかりにくい。地方議員も含め、わかりやすく説明してもらいたい」と優しく言っていたが、立・民と国・民とに分裂したままでは連合の支持政党として具合が悪いと、「股裂き」解消にやっきになり、立・民に合流しない国・民の民間労組出身議員に対して、「玉木新党なるものに組織内議員が引き寄せられるようなことが仮にあれば、その政党を支援する考え方には到底行きつかない。私の許容範囲を大幅に超える」と、国・民には支援しないと恫喝して合流させようとした。
 しかし、ブルジョア政治の虜になってきた神津が彼らを批判するのはおこがましい、新党における連合の立場を優位にしたい思惑、組合主義者に特有の狭い了見のいやらしさゆえである。立・民に合流しない議員のほうが一貫していると言えるけれども、それは連合議員が「労使一体」のブルジョア組合主義にとことん染まって、原発政策に見られるように、企業利益優先で労働者をたぶらかす役目に忠実なだけで汚らしい本性を暴露しているだけだ。 (岩)
   

【飛耳長目】

★世界的な異常気象が人類の活動と無縁でないことは疑いない。オーストラリア、アメリカの森林火災、アフリカからインド・中国にかけてのバッタ食害、永久凍土の溶解、日本を襲う台風や熱波など小さく思える。エボラ・SARS・コロナの感染症も、ヒトとの接触が希薄であった動物に由来することを考えると、病魔もそうだ★46億年の地球史で、エンゲルスはサルの人間への移行にとっての決定的な契機が2足歩行と述べたが、700万年前のこと。100万年前の初期人類アウストラロピテクスは、ようやく道具を使い、20万年前のホモ・サピエンスこそ現代の人類=ヒトの直接の先祖である★ホモ・サピエンスは隕石落下や火山の大噴火による地球規模の気候変動を生き延び、およそ1万年前には狩猟生活から農耕生活へと移行するが、その過程で革命的に進化した。労働は手を創造し、手は労働の器官となり、動物と区別された人間社会としての文明を誕生させたのは〝つい最近〟のおよそ6千年前のこと★ホモ・サピエンスは「賢い人間」を意味する。トランプは記者会見で、地球温暖化を警告する報告書について質問され、「信じない」と答えた。「賢くない」人物が大統領であることは、人類にとって悲劇でしかない。(Y)
   

【2面トップ】

トヨタ新「成果主義賃金」へ!
   攻める資本に、服従する労組

 トヨタ自動車は2021年1月から新賃金制度に移行しようとしている。9月30日に行われるトヨタ労組の大会で新賃金制度導入が決定されると、トヨタ自動車において「成果賃金制度」が本格的に導入されることになる。トヨタにおいて「成果賃金制度」が導入されるとその影響は大きい、今後多くの会社がトヨタに倣って「成果賃金制度」を導入するだろう。会社側は「成果賃金制度」を根拠に、賃下げや労働条件全般の引き下げを行い利潤を搾り取るだろうし、労働者に分断をもたらし、資本による労働者支配は制度化され、組合は組合員に会社への忠誠と会社が期待する仕事の取組みの旗を振るだろう。

◆新賃金制度(成果賃金制度)の具体的内容と目的
 新賃金制度の内容についてトヨタ労組の発行する「評議会ニュース」(8月5日発行)によれば「第15回労使専門委員会」で、事務技術職(事技職)では、賃金水準の見直しを行い、これまで「上限」を設けていたのをやめて、「頑張り続ければ上限なく昇給し続ける」に変更されたと報じられている。
 トヨタの基本給は2種類の基本給で構成されている。一つは「職能基準給」と評価によって決まる「職能個人給」で今後は「職能個人給」に一本化したうえで、定期昇給を従来の事技職(主任職)の評価がA~Dまでの4段階であった考課を6段階に細分化する。
 A~C評価は全体の90%(資格期待通りかそれ以上)D1、D2評価は10%(資格期待を下回る、FBしても改善せず)D2評価はゼロ昇給、以上までで5段階。6段階目のE評価(周囲に悪影響を及ぼしているorFB(フィードバック=教育)しても改善の努力が見られない)はゼロ昇給に止まらない配置転換や解雇を会社側が考えていることを予想させる(明示されてはいない)。
 工場で働く労働者(技能職)の考課は4段階でA~C評価は全体の90%(A期待を大きく上回る10%、B一部上回る30%、C期待通り60%)D評価(資格の期待を下回りチームワークやルールを遵守に問題あり。FBしても改善が見られない)としてゼロ昇給。
 新賃金制度が何を目論んでいるのかは明確である。会社に盲目的に従い会社の期待通りかそれ以上の成果を生み出す者には、青天井の昇給を行う。チームワークやルールを遵守しない者(QC活動や労務管理、会社や組合の方針に異議を唱える労働者)は根こそぎ刈り取り、「トヨタマン」として疑うことなく会社に忠実に従う労働者を作り出そうとすることにある。
 驚くべきことに新賃金制度(成果賃金制度)を正式に申し入れたのは会社側からではなく、組合側からの申し入れという事である。組合は新賃金制度を提案し、春闘恒例の会社側回答日直前の大集会(19年は5100名参加)を取りやめ、組合員の団結を鼓舞し資本に要求を突きつけるガンバローを唱和(たとえ形だけとはいえ)することさえ中止して(コロナ対策が表向き)、資本の軍門に下った。

◆新賃金制度導入の背景
 2018年、豊田章男社長は自動車業界が「100年に一度の大変革期」にあり、「生きるか死ぬかの瀬戸際にある」と危機感を強調し、トヨタは自動車会社からモビリティカンパニーにチェンジすると宣言し、19年には東富士工場を閉鎖した跡地に水素エネルギーや自動運転、コネクティツド技術を実証する2000人が住み生活する「コネクティツド・シティ」を2021年末から建設すると発表し、CASE(コネクティツド、自動運転、シェアリング、電動化)関連の新会社を相次いで立ち上げ、新たな競合相手=GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)との戦いに乗り出している。
 コロナ禍の中でも21年度の第1四半期に1588億円の黒字を生み出した。世界中の自動車会社が赤字を強いられる中で、売り上げを前年比マイナス41%まで落とす中でも1588億円もの利益を上げる事が出来た理由の一つが、労使一体化や運命共同体のトヨタイムズの徹底的な浸透(洗脳)を組合や社員に行ってきたことにある。
 新賃金制度導入の背景は、「百年に一度の変革期」の危機とそれに対するトヨタイズムのトヨタ資本の回答である。

◆〝家族としての助け合い〟や〝産業報国会〟を持ち出す資本に、恭順の体で従うトヨタ労組
 今回の新賃金制度を導入するに先駆けて19年には豊田社長は「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と記者会見で発表。トヨタの春闘(トヨタ春交渉と彼らは呼ぶ)でも18年以降賃上げ額が非公表になり、19年はベア要求額も非公表、冬のボーナス回答が秋季交渉まで保留された、19年3月13日の労使交渉では「皆さんが『仕事のやり方を変える』事が出来なければ、トヨタは終焉を迎えることになると思う。『生きるか死ぬかの闘い』というものは、そういうことである」(豊田社長)
 トヨタ資本が100年に一度の変革期で生きるか死ぬかの瀬戸際にあると危機感を強調し、「モビリティカンパニーにチェンジする必要がある。家族として助け合い結束しなければならない。」という会社側の要求に対して、「組合も自分たちの認識が甘かった。よそを向いている組合員も同じ方向を向くようにする。と約束した。」(トヨタ春交渉2019より)その結果19年6月にQC運動(「カイゼン」「創意くふう」)に参加した社員の参加率が60%だったのが9月には90%まで上昇したと報じられた。
 今年の春闘では19年に会社の「『頑張った人がより報われる』『お天道様が見ている』会社を目指す」という要求にこたえて、新賃金制度で基本給を職能個人給に一本化することを組合側から要求し、資本の期待に応えた割合で賃金を決定するという分断と差別、恭順の姿勢を明らかにした。
 会社との運命共同体、労使一体を中心軸に据えるトヨタ労組にとっては、それに反発する社員や会社の利益に貢献しない社員は、組合にとっても排除すべき社員とみなしている。
 トヨタでは最近、トヨタ自動車創業者の豊田佐吉が提唱した「豊田綱領」(1935年)や1962年に締結した「労使宣言3つの誓い」を取り上げ豊田社長による社員に向けた発信が繰り返されている。
 「労使宣言3つの誓い」では第3項の「生産性の向上を通じて企業の繁栄と、労働条件の維持改善を図る」の中にある「共通の基盤」に立つ意味は「会社は従業員の幸せを願い、従業員は会社の発展を願う。そのためにも、従業員の雇用を何よりも大切に考え、労使で守り抜いていく」と労資交渉の中でも繰り返した。
 雇用を大切に考えることに異論はない、しかし労資で守り抜いていくことではない。労働者は自らの雇用を会社と一体化することによってではなく、労働者の団結した力で守り抜く、ストライキや実力行使によって資本に要求し貫徹するのだ。
 社長の豊田はリーマンショックとリコールを乗り越えトヨタを強靭な競争力を持つ資本に作り替えたことで、絶対的権力者として、戦前の「大産業報国会」を思い起こすような発言を繰り返している。豊田綱領の最後には「神仏を尊崇し、報恩感謝の生活をなすべし」、トヨタ労組の西野委員長は答える「・・・労働組合としても、この豊田綱領をベースに原点に立ち返って取り組んでまいりたい」。(愛知 古川)
(一部省略、労働者党ブログに全文は掲載)
【二面サブ】

急膨張する中国の対外融資
帝国主義への転化を裏付け

◆中国の対外融資の急膨張
 少し前の日本経済新聞に興味深い記事が出ていた。中国の対外融資が急増し、途上国への支配を強めているというのだ。
 「(中国による)債務の重い発展途上国六八カ国向けの貸し付けは二〇一八年末までの四年間で倍増し、世界最大の開発援助機関である世界銀行に肩を並べた。融資が政策や外交、インフラ運営を縛る『債務のワナ』が途上国を覆い、国際秩序も揺るがしている」(八月六日付日経新聞電子版、引用は同紙から)。
 中国は、このほど世銀を通じての途上国六八カ国向け融資状況を初めて明らかにしたが、それによると、一八年末の残高は一〇一七億ドル(約一〇・七兆円)であり、四年間で一・九倍に急増、世銀(一〇三七億ドル)に迫った(この間、世銀は四割増、IMF=国際通貨基金は一割増)。
 中国の融資は期間が短く、金利が高い(平均三・五%、IMFは〇・六%、世銀は一%)にもかかわらず、伸びているのは何故か。途上国は専制国家が多く、公的機関は融資条件として財政規律や透明性を求めるので、毛嫌いし、そういう〝小うるさい〟ことを言わない中国に頼るという。
 かくして、「68カ国のうち14カ国が国内総生産(GDP)の一割を超える額を中国から借り入れ、アフリカ東部のジブチでは三九%に達した。五%以上に達した26カ国をみると過半数の14カ国が国連人権理事会で中国支持に回った(注)」。 (注)六月末の国連人権理事会は、中国が施行した香港国家安全維持法」を批判する声明を審議したが、賛成は27カ国(ほとんどが先進国)で、53カ国が中国を支持した。そのうち、14カ国は中国の大口融資国だった。
 つまり、中国は金(カネ)の力で国連票を買う金満国家に成り上がったのである。
 「米欧は中国が膨大な融資で途上国への影響力や支配を強めるのを『債務のワナ』と呼んで警戒してきた。中国は広域経済圏構想『一帯一路』を掲げて鉄道や港湾の建設資金を融資し、中国国有企業の受注など自国の経済や外交、安全保障上の利益も得る。返済に行き詰まったスリランカは一七年、主要港湾を中国国有企業に九九年間もリースする事態に陥った」。

◆資本輸出も急増
 「一帯一路」戦略や中国の対外直接投資についての詳細は、別の機会に譲るが、対外直接投資について言えば、中国は二〇一五年に対外直接投資が対内直接投資を上回る資本の純輸出国に転化している。二〇一六年には対外直接投資額は世界第2位の規模となり、世界の対外直接投資に占める割合も一二・七%に達するに至った。
 その後は、米欧諸国の警戒が強まり、先進国向け投資は低迷しているが、途上国、中でもアジア向けの直接投資は増加を続けている。特に多いのは、インドネシア、カンボジア、フィリピン、インド、トルコ、パキスタンなどで、とりわけ緊密な関係にあるのはカンボジアである。
 中国はまた、マレーシアのリンギット、シンガポールドル、タイのバーツなど周辺九カ国及び「一帯一路」参加国の通貨と人民元が直接取引できるようにすることに成功し、人民元を「基軸通貨」とする経済圏を確立しようとしている。
 中国はまさに、「世界の工場」から資本輸出大国にのし上がっているのである。レーニンは、「商品輸出と区別される資本輸出がとくに重要な意義を獲得すること」を帝国主義の重要なメルクマールとしたが(『帝国主義論』)、この基準に照らしても、中国の帝国主義への転化は明白である。
 資本主義の発展は――国家資本主義の場合もまた――自ずと帝国主義への転化をもたらすことを我々は中国の現実から確認することができる。中国と米欧の対立、アジアやアフリカ諸国との軋轢、近隣海空域への軍事支配の拡大、国内では新疆ウイグル自治区住民への暴力的支配等々の根底には中国の帝国主義国家への転化があることは明らかである。
 そして、中国の帝国主義への転化は、「中国の植民地化」に対する労働者人民の強い反発と怒りを巻き起こし、闘いを誘発している。サンビアでは、中国系繊維企業で中国人幹部三人が従業員に惨殺されたが、同様の抵抗運動はナイジェリア、レソト、アンゴラ、南スーダン、マラウイなどでも起きている。資本の輸出は、中国政府と資本に反対する運動を世界的に拡大する契機ともなっているのだ。 (鈴木)
        【校正】

前号1385号 2面トップ記事

4段4行目 陥っていう→陥っていると言う


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