WPLLトップページ E-メール
 

 

 
 
労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

◆毎週日曜日発行/A3版2ページ
一部50円(税込み54円)

定期購読料(送料込み)25号分
  開封 2000円
  密封 2500円

ご希望の方には、見本紙を1ヶ月間無料送付いたします。

◆電子版(テキストファイル)
メールに添付して送付します

定期購読料1年分
 電子版のみ 300円

A3版とのセット購読
  開封 2200円
  密封 2700円

●お申し込みは、全国社研社または各支部・会員まで。
E-メールでのお申し込みもできます。
 
 


 


郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音

 
 


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望

 
 

本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
●お申し込みは、全国社研社
または各支部・会員まで。
E-メールでのお申し込みもできます。
「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
●お申し込みは、全国社研社
または各支部・会員まで。
E-メールでのお申し込みもできます。
「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

 

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判

 

 
 
 

 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
  お申し込みは、全国社研社
  または各支部・会員まで。
  メールでの申し込みも可能です。

まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

 
●1387号 2020年9月27日
【一面トップ】将来への展望もなく――菅「安倍政治継承」内閣が発足
【1面サブ】
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】米国第一を競う大統領選挙――元祖のトランプと米国再建うたうバイデン
【二面サブ】スタートした〝新野党〟
【二面囲み】育鵬社版歴史教科書を不採択に

※『海つばめ』PDF版見本  
※注文フォームはこちら

【1面トップ】

将来への展望もなく
菅「安倍政治継承」内閣が発足

 「安倍政治の継承」を謳う菅新政権が発足した。閣僚人事でも、政府を支える自民役員人事でもほとんどが、第2次安倍政権を担ってきた閣僚、派閥の領袖たちが名を連ねている。8年7カ月の長期にわたった安倍政治は、社会、経済、外交のいずれの分野においても行き詰まり、安倍は退陣した。ところが新たに発足した菅新政権はその自覚もなく、将来に向けての自らの構想を示すこともできず、「安倍政治の継承」を謳う無責任、破廉恥な政権であることを暴露している。

◆閣僚も党役員も「安倍体制」を継承 

 閣僚としては、新たに設けられた万博担当を含め20人のうち、麻生・財務をはじめ、茂木・外務、萩生田・文科、梶山・経済産業など8人が安倍内閣からの再任であり、河野が防衛から行革に移ったなど担当が変わったのは3人、小此木・国家公安は第2次、第3次安倍政権の閣僚を務めたなど4人は再入閣で、計15人が安倍政権の閣僚経験者である。初入閣の野上・農水は第2次安倍政権で安倍の側近として官房副長官を務め、防衛担当に新たに任命された岸は、安倍の実弟であり、復興の平沢はかつて安倍の家庭教師であった経験を持つなど、ほとんどが安倍と近い関係にあった者である。

 新総裁に選ばれた菅は、人事の基本方針として「思い切って私の政策に合う人を登用する。改革意欲があって仕事のできる人をしっかり結集して、国民のために働く内閣を作っていく」と公言していた。

 しかし、新政権の主な顔ぶれは、〝政権の要〟と言われる官房長官には加藤が抜擢された。加藤と言えば安倍首相の側近の一人で、菅官房長官の下で副官房長官を2年10カ月務めたほか働き方改革担当大臣や厚労大臣を務めた。彼が一億総活躍担当大臣の時には、裁量労働制について法案に都合のいいような恣意的データーに基づいたものであることが発覚し、法案から削除することなった。

 また厚労大臣の時には自らの責任で策定した新型コロナウイルスの検査基準にしたがって多くの死者がでたことについて、「相談する側の目安で4日以上、平熱以上が続く場合は必ず相談するようにと申し上げたが、相談や診療を受ける側の基準のように思われてきた。我々から見れば誤解だ」と責任を医療関係者に押し付けた人物である。

 そのほか破綻した「アベノミクス」を推し進めてきた麻生が副大臣・財務相に再任されたなど閣僚構成からしてもまさに「安倍政治継承」内閣である。

 一方、自民党の役員の顔ぶれをみると菅を事実上の次期首相に決める自民党総裁選に担ぎあげた各派閥に対する「論功行賞」人事である。

 新内閣を支える党主要役員は、幹事長に二階(再選)、総務会長は佐藤(麻生派)、政調会長は下村(細田派)、選対委員長は山口(竹下派)、国対委員長は森山(石原派、再選)と菅を総裁候補として担ぎ出した5派閥にもれなく配慮した結果(閣僚も、細田5、麻生3、二階、岸田、竹下各2、石破、石原各1、無派閥3、公明1)となった。

 これは国会での首相決定にさきだって行われた自民党の3役など主要役員決定においてすでに予想されたことだ。

 まず二階派が無派閥の菅を候補として推すことを決めると、後の4派閥もそれに遅れまいと次々とまだ候補としての自分の政策も明らかにしていない菅支持を決めたのである。総裁選は安倍に批判的だった石破を排除するために、党友・党員の投票を省き、両院議員・都道府県代表による選挙とする「簡略方式」で行われた。この時点で菅の圧勝は確定、総裁選は茶番だった。

 コロナ感染に便乗した「GoToトラベル」推進など利権まみれの二階をはじめ派閥に配慮した党役員決定は、国民の窮状などそっちのけで、役職や利権に走るこれまでの自民党の悪しき政治に従っているのであり、菅の言う「既得権益、悪しき前例主義を打ち破っていくのが私の仕事」は口先だけの空文句でしかない。

◆弱肉強食の自助=自己責任論   

 菅は12日の記者会見で、めざす社会について、「自助、共助、公助」をスローガンとしてかかげ、「まずは、自分でやってみる。そして地域や家族が、お互いに助け合う。そのうえで、政府がセーフティネットを守る」と述べた。

 現在の社会は労働者の労働によってなりたっているのであって、それぞれの労働者は社会的労働の一端を相互に担うことによって自分の生活と社会を支えている。このことはまじめに働いている労働者なら自明のことである。しかし、問題はまじめに働いても、賃金が低かったり、働き先の企業の業績悪化で首を切られたりして、日常の生活にさえ困難な労働者が多くいるということである。また、高齢化社会と言われるように、介護の必要な肉親を抱え介護のために働くことができず、生活に困っている労働者家族も数多くいる。

 その一方では、資産家や企業の大企業の経営者とその家族のように生まれながらにして裕福で、贅沢な暮らしをしている。

 労働者と資産家、大企業経営者との違いは、個人的な努力の差ではなく、労働の搾取を原理として利潤獲得を追求する資本主義的生産によるものである。

 戦後の〝経済の高度成長〟と言われた時代には、生産の拡大・発展にともなって、労働者の生活も一定の向上があった。しかし、〝経済の高度成長〟の時代が終わり、1990年代の初めにバブルがはじけ、低迷の時代に入ると、まじめに働けば生活はよくなるという幻想は吹き飛んだ。富める者はますます富み、貧しいものはますます貧しくなるという貧富の格差は拡大した。

 7年8カ月続いた安倍政権は、「成長戦略」として「1億総活躍の社会」などを謳い、毎年3%の賃上げ、女性の活躍、介護離職者ゼロ、幼児保育・高等教育の無料化、働き方改革など次々とスローガンを掲げたが、そのほとんどは空約束に終わった。

 13年に始まった政府・労組・経済界による「官製春闘」は、19年までに7回続いたが、全期間を通してでは実質賃金はマイナスとなっている。政府は400万の雇用増を実現したと自慢しているが、その65%は不安定で低賃金の非正規労働者である。介護離職者ゼロや保育園待機児童ゼロは目標に遠く及ばない。

 しかも、人気取りの財政バラマキによって国家財政をさらに悪化させた。

一方、政府は企業に対しては国内の投資を活発化させるという名目のもとに大幅な減税をおこなったり、「異次元の金融緩和」でマイナスの超低金利を実施、また日銀が国債や株を買い取ったりして、株価支持政策で、大企業や資産家は大きな利益を得ている。

 労働者と資本家・資産家の所得格差の広がりは、個人の努力の問題ではなく社会制度の問題であり、「自助」が肝心という菅の主張は、生活の困難を労働者個人に責任=自己責任に帰し、労働者を搾取している資本の支配から目を背け、弱肉強食の自由競争を賛美する思想である。自助が大切というなら、自ら労働せず、労働者の労働に依存し、贅沢な生活をしている資本家や資産家に言うべきことである。

◆目先の利益を訴えるポピュリズム  

 「社会のために働く」というのが菅新内閣のスローガンである。「安倍政治の継承」とは別に菅がこれまで語った政府の政策としては、「行政のデジタル化」による縦割り行政の改革、「行政改革」による効率的行政、携帯料金引き下げ、少子化対策としての「不妊治療の健保適用」、地方振興などがその具体的な内容である。

 商業マスコミは「実行力が期待できる」内閣などと菅政権を持ち上げているが、菅の政治は目先の利益で大衆の期待を煽り、政治的影響力を拡大しようとするポピュリズムである。

 行政の非効率なことは今に始まったことではないが、コロナの対応をめぐって改めて行政の非効率ぶりは暴露された。菅は来年度にも「デジタル庁」を発足させ、「行政のデジタル化」を推し進めるという。非効率の行政が「効率化」されることに異を唱える者はいないだろろう。

 また、主要国でもとびぬけて高い日本の携帯料金の引き下げは特に若い世代から好感をもたれている。「不妊治療の健保適用」にも反対する者はないだろう。

 しかし、菅は行政の「効率化」は訴えても、森友・加計・桜を見る会に象徴される一連の政治私物化、公文書隠匿・書き換え問題は「解決済み」として省みないし、官邸が幹部官僚の人事権を一手に握り、行政機構を専制的に動かしてきたことを当然とみなしている。

 また携帯料金引き下げで利用者の負担軽減を訴えるが、コロナ感染などで派遣やアルバイトなど非正規労働者をはじめ多くの労働者が首を切られたりして生活苦に陥っていることに対してはまず「自助=自己責任」だと言う。

 そして少子化対策を「不妊治療の健保適用」に矮小化し、子どもを産み・育てたくても非正規のために経済的な余裕がないとか、働くために子どもを預けたいが保育園が足りない、など若い世代が経済的、社会的に子どもを産み、育てるには困難な状況にあるという根本的な問題に対しては口をつぐんでいる。

 地方振興についても、安倍政権の下、菅の発案で実施した「ふるさと納税」策は、名産品の多い自治体を利しただけで、振興にならなかったことからしても、口先だけのものに終わるであろう。

 そして菅は、破綻した「アベノミクス」をはじめ反動的な軍国主義路線についてなんの総括もなく肯定し、「継承」していくとしているのである。

自民党内では、世論調査での菅新政権の支持率が上昇したのを見て、解散・総選挙の絶好の機会と浮足立っている。だが、人気上昇が一時的でしかないことはすぐに暴露されるだろう。 (T)


   

【飛耳長目】

★江戸に店を構える幕府(資本)御用達の『安倍屋』の主人が病のため隠棲し、代わって八年余り主人とともに店を切り盛りしてきた番頭の菅が主人となった。菅は出羽の農家から江戸に出て小財を成し、『安倍屋』の手代から番頭に引き立てられ、とうとう主人に収まった★『安倍屋』は、衰退する幕府救済のため「三本の矢」なるものを放ち、金座の御用達商人・黒田某に命じて悪貨鋳造や手形の無制限引き受けをさせ、また救済の名の下に度重なる小判のばらまきを行ったが、どれも空しく的外れで、ただ壱億万両にも及ぶ膨大な借金の山だけが残った★また『安倍屋』は幕府の役人組織の人事権を握って、従順な役人のみを出世を餌に取り込んだ。それへの睨みを効かせたのが番頭の菅である。なので、国書偽造や田沼時代に劣らぬ賄賂政治や元主人への忖度がはびこった★今でも店の手代である数名が伝馬町の牢屋敷に繋がれ、裁きを待っている。本当の悪党は元主人や菅、株仲間の『麻生屋』や『二階屋』の老主人たちだが、奉行所を抱き込んでいるので処罰されることはない★管の目玉の「規制改革」とやらは、狂歌にも謳われて庶民の反感を買った元主人の尻拭いのために臭い物に蓋をして、庶民の目先を変えさせるための方策にすぎない。(是)

   

【2面トップ】

米国第一を競う大統領選挙
   元祖のトランプと米国再建うたうバイデン

 11月3日のアメリカ大統領選挙の投票日まで、あと1ヶ月余りとなった。期日前投票が既に9月18日から始まり、いよいよ大統領選挙は最終盤を迎えている。大統領選挙には二大政党以外からも出馬できるが、自由に参加はできない。35歳以上で、市民権を持ち14年以上の在留期間があることに加え、約80万人分の署名が必要だからだ。それでも今回、「アメリカ緑の党」や「リバタリアン党」が参戦しようとしているが、具体的な運動は日本ではほとんど分からない。本稿においては、トランプとバイデンの一騎打ちとなっている大統領選挙において、この2人はいかに大票田の労働者票を掠め取ろうとしているのか、労働者は如何に考えているのかを出来るだけ探ってみたい。

◆中国敵視を扇動するトランプ、妥協しないとバイデン  

 トランプは、大統領選挙で勝つ必勝法は愛国主義や貿易保護主義を振り撒くことだと心得ている。4年前の選挙でも「米国第一」「保護貿易(TPPやNAFTAからの離脱、対中国関税)」「労働者の雇用増大」を喧伝し大方の予想を裏切って逆転勝ちしたのだから、さらに勝利の方程式で攻めるのが最大の勝ちパターンだと考えるのである。

 コロナ対応が遅れたことに対してトランプは、米国内で既に700万人が感染し、20万人が死んだ現実を失敗とは認めない。トランプは年内にはワクチンを供給できるとハッタリをかます一方、コロナウイルスを世界や米国に持ち込み広めた犯人は中国だ、米国は中国の被害者だと責任回避にやっきである。

 一時期中国とは経済問題で妥協し、平穏な動きを見せていた米中関係であるが、中国の東沙や南沙諸島海域における軍事的勢力圏を構築する動きが強まるにつれて、日本や東南アジア諸国の警戒感の高まりもあって、急速に対中強硬姿勢に転じている。これと並行する形で、今年になって、台湾との協力関係や支援の動きも活発化させている(8月のアザン厚生長官訪台や9月のクラック国務次官訪台など)。

 さらに、若者に人気の高い中国企業のビデオアプリ「TikTok」と対話アプリ「ウィーチャート」を個人情報が中国に流出し国家安全保障上の脅威になるとして、米国内の販売制限を課す動きも強めている。

 「米国第一」をうたうトランプは鉄鋼だけでなく電子機器や情報通信分野でも躍進著しい中国を、米国の経済と雇用を奪う最大の敵だと叫び、その中国と覇権を争うことを誓うなど、選挙本番が近づくにつれてますます排外主義を煽っている。

 他方のバイデンも負けてはいない。コロナに関しては、トランプは対策に失敗したが、自分ならコロナを制御できると言い(大統領候補受諾演説で)、トランプが脱退したWHOに復帰するが中国の初期対応を検証すると言い、また中国の軍事的経済的脅威についても民主党予備選挙を通じて、トランプに負けじと、対中強硬姿勢を取ることを約束している。

◆建国精神の再構築を策すトランプ

 トランプは、黒人差別反対運動に対しても、明確に否定的な態度を打出し始めた。

 黒人差別反対運動をトランプは、「左翼の扇動」だと非難し、大規模なデモや抗議活動を牽制し、「法と秩序」が第一だと盛んに強調し、さらに、各地で奴隷制度や黒人差別に加担したとされる歴史上の人物の銅像や記念碑が破壊される(特に奴隷制度廃止に抵抗していた南部連合の〝英雄像〟)ことに対しては、米国の建国の精神=愛国精神が侵されていると非難を強めている。

 この建国の精神を復活させるためにと、トランプは、9月17日の憲法記念日には、「米国史に関する会議」を開催し、米国の歴史と米国の伝統的な価値観に基づいた「教育プログラム」を推進する「1776委員会」の創設を発表し、大統領令に署名した。

 そして「人種、肌色、信仰の異なる全ての人々のために、我々の歴史と国を取り戻す」とトランプは、米国の建国精神を自分が一番体現しているかに振る舞い、その言辞の中に白人至上主義者の素性を隠そうとしている。

 トランプの言動は、米国労働者や黒人にとって呆れ返るものだが、かつて第一次安倍政権にて、安倍が日本の戦後教育の現状を嘆き、「日本を取り戻す」と叫び、その手始めにと、愛国教育基本法の成立(基本法改定)を策動したのとウリ二つである。

 安倍が戦前の天皇制軍国主義とその教育を美化する運動を推進したのと同様に、トランプもまた、米国愛国教育の「プログラム」の創設を考え付いたのである。

 つまり米国の建国はイギリスの植民地から独立し、黒人も白人も平等で豊かな生活を享受できるようにするためだった、それが米国の出発点だった、黒人差別反対運動は左翼に染まっている、米国の教育は、建国精神にのっとった新たな教育で再出発しなくてならないと言うためである。何と似た者同士か。

 他方のバイデンは、黒人差別反対運動に賛意を示し、トランプ流の差別と分断に反対を表明しているものの、警察改革については具体的な案を示さず、トランプの「教育プログラム」改革に対しても反撃の烽火を挙げていない。

◆雇用対策に「海外生産税」の上乗せ計るバイデン

 バイデンは、9月9日、選挙戦の激戦州の1つで、製造業が集積する「ラストベルト」の一角、中西部ミシガン州を訪れ、そこで、バイデンはトランプが進めてきた法人税引き下げや自動車保護関税などに対抗しようと、新たな政策として「メード・イン・アメリカ税制」をブチ上げた。

 このバイデンの演説について、NHK(デジタル版)は次のように報道している。

 「新たな政策では、法人税について海外での生産などで国内で得た利益については、税を上乗せし、税率を30・8%にするとしています。その一方で、国内の工場の再開や海外からの生産拠点の移転など、国内での雇用の創出に向けた取り組みを行う企業については法人税を一部、控除するとしています。

 演説でバイデン氏は『アメリカの企業を罰することが目的ではない。アメリカで生産し、我々の地域社会、労働者に投資しようということだ』などと述べて、支持を訴えました。民主党は、前回の大統領選挙ではラストベルトの労働者層の支持を失ったことが敗因の1つとされていて、バイデン陣営としては企業の国内回帰に向けた大胆な政策を打ち出すことで、選挙戦の行方を左右する激戦州の労働者層に支持を訴えるねらいがあるとみられます」。

 このように、バイデンは、国内で増設する企業や海外から国内に生産拠点を戻す企業の法人税を下げ、そうすることで、雇用を増やすと労働者に媚びを売るのであるが、これでは、労働者の信頼は得られないだろう。バイデンは、予備選の時には法人税引上げや金持ち課税強化をうたい、そのカネを低所得者に回すと言っていたことをもう反故にするからである。

◆労働者の反応

 今回の大統領選挙では、労働者を代表する政党が参加しているわけではなく、共和党か民主党の候補のどちらかを選択する選挙となるであろう。既に大統領選挙について、二候補の主張を簡単に紹介してきたが、それでは米国労働者はいかに反応しているのだろうか。これを紹介するのは簡単ではなく困難ではあるが、いくつかの報道・調査から紐解いてみる。

 どちらが「ラストベルト」の州を制するかが注目の的になっているが、まず、「ラストベルト」とは、かつての鉄鋼業が栄えた米国北東部一帯を指す呼称となっていて、日本における報道では、「錆び付いた工業地帯」というイメージで言われることが多いが、実態はそうではないとのことだ。

 ビッツバーグやクリーブランドをはじめ、多くの都市では、鉄鋼業に替わる産業が定着しているようだ。鉄鋼業に代わって、現在ではハイテク産業をはじめ、巨大な医療産業集積地になっており、さらにバイオサイエンスなどの先進的企業も進出してきている(早稲田大学ファイナンス総合研究所の研究調査より)。

 トランプがこの地域で日本や欧州や中国に雇用を奪われたと言うのは、過去には当てはまるとしても、今に当てはまることではなく、トランプ流の排外主義と愛国主義を煽る言辞に過ぎない。そうした扇動に左右されるのは何も米国の労働者だけではないが。

 こうした地域のうちのペンシルベニア州北部にあるエリー郡(大手の鉄道車両工場がある労働者の街)に住む労働者を取材したNHK(デジタル版)の記者は、地元の労働者に誰に投票するかを聞いたところ、バイデンに投票すると回答した人は4人、トランプには3人だったと言う。

 バイデンに投票すると回答した労働者は、バイデンの政策や主張に共鳴するのではなく、トランプよりましだからと言ったとのことだ。他方のトランプを支持すると回答した労働者は、トランプの雇用重視の姿勢や銃所有を堅持する姿勢を挙げたとのことだ。

 結局は、トランプもバイデンも、中国や日本などの海外資本に対する圧力(輸入制限や関税強化など)をかけつつ、法人税減税などで米国資本の利益を生み出すことが第一であり、労働者の雇用は米国資本の利益次第と言うことなのである。だが、それらの政治は労働者階級とは無縁なものだ。(W)


【二面サブ】

スタートした〝新野党〟

 塊りの大きさこそ変わったが、内実は何も変わらないような野党再編のゴタゴタであったが、〝新〟立・民が国会議員150(衆院107、参院43)、〝新〟国・民が15(衆7、参8)でスタートした。国・民に所属していた連合民間労組出身9名の内5名は、神津会長から国・民に行ったら支援しないと脅されて無所属でいる。

 立・民では、元社会党の赤松を中心とするグループ(サンクチュアリ)を筆頭に、元総理の菅や元副総理の岡田、元総理の野田、元民主党代表の小沢などがそれぞれグループを作り、「派閥」活動が活発と言われ、国・民でも代表の玉木は野党の選挙協力に前向きだが、自民や維新に近い前原などの動きもあり、新党はかつての民主党の呉越同舟を踏襲している。つまり、また「裏切者」がいつ出てくるか分からない(自民党に逃げ込んだ桜井や鷲尾や細野らを見よ)ということである。

 東大社研教授で政治思想史や政治哲学専攻の宇野重則は、今月16日の毎日新聞で「自公に対抗するには共産党との協力が欠かせず、『非共産』を掲げない野党第1党が誕生した歴史的意義は大きい」と天まで持ち上げながら、「中道保守でありながら現政権に批判的な層にどうアプローチするかという課題は残っている」と釘を刺している。

 宇野の評価が正しいかどうかは歴史的に検証されるだろうが、立・民を「『非共産』を掲げない政党」と意味ありげに規定する軽薄さは、さすが東大の先生でいらっしゃるが、共産党の現状・真実をご存じないのではないでしょうか。

 共産党はソ連崩壊や中国の帝国主義化という現実を前に科学的・理性的な判断を停止してしまい、社会主義実現より資本主義の枠の中での改革を直面する課題とし、社会主義・共産主義実現は未来に追いやっている。野党連合政権にのぞむ共産党の基本的立場においては、自衛隊は合憲、安保条約は「維持・継続」、天皇制も憲法の天皇条項順守という体たらくが正体だ。

 共産志位は立・民枝野と「新自由主義からの転換」で一致していると大喜びしているが、彼らは「歪んだ資本主義」として「新自由主義」を否定するだけで、労働者の資本の鎖からの解放など課題にしていないのだ。 (岩)


    【二面囲み】    

育鵬社版歴史教科書を不採択に

 8月21日、私の住む新居浜市の教育委員会(以下教育委)は、2021年4月から中学校で使用する歴史教科書として東京書籍版を採択した。教育委は15年、19年と過去2回続けて育鵬社版を採択してきた。15年の採択委員会ではまともな議事録が作成されておらず、情報公開請求や再審査請求をしてきた。その却下をうけて教育委を被告として行政裁判を行っている原告の1人として、今回育鵬社版採択を断念させたことをまずは喜びたい。 育鵬社版が採択されなかったとはいえ、「採択権限は教育委員会にある」という安倍政権の遺産は有効であり、採択では現場教員等の意見はほとんど言及されることはなく、5人の委員の多数決で決定された。

 安倍政権の反動教育を継承すると宣言する菅政権のもと、反動的な教科書採択が今後もなされない保障はなく、今後も監視・暴露を強めていく必要がある。(F・Y)

   

   
ページTOP