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●1390号 2020年11月8日 【一面トップ】劣化する資本主義を象徴――安倍政治継承うたう菅の所信表明 【1面サブ】<都構想否決>維新のデマゴギー政治の破綻――自民も共産もれいわも反動的 【コラム】飛耳長目 【二面トップ】公的マネーで株価押し上げ――株購入で日銀、GPIFが大株主に 【二面サブ】中国の民族浄化作戦を糾弾する!――新疆ウイグル自治区の実態 ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】 劣化する資本主義を象徴 臨時国会の冒頭(10月26日)、菅政権の所信表明演説があった。矮小で間が抜けた「行政のデジタル化」や目新しさを装った「グリーン社会の実現」などを付け足してはいるが、基本的に安倍政治の継承を謳ったに過ぎなかった。さらに、日本学術会議の任命拒否の理由については、一言も触れず、ただ逃げまくるだけの誠意のなさを暴露したが、これも安倍の権力的権謀術数的な政治を踏襲したものである。菅の演説は、一筋の光明も見えない、行き詰まり劣化が進む日本資本主義のあがきを表現し、かつ象徴していたのだ。 ◇貧乏人には無縁な「キャンペーン」 まず菅は、新型コロナ対策に万全を期すと言いながら、やらずもがなの「GoToキャンペーン」の旗振りとカネのバラ撒きを継続すると宣言。 「GoToキャンペーン」の目玉である「GoToトラベル」では、旅行先宿泊料の35%と食事などの地域クーポンの15%を国が援助し、さらに地方自治体も数千円を補助している。だが、こうした〝豪華で割安な〟旅行ができるのは、カネも時間も余裕があり、かつ健康な人に限られている。 コロナ不況を理由に、企業から解雇・雇止めを喰らい、生活に難渋する労働者(苦学生も)や病弱な人や不意の労働災害にあった人たちにとっては、何の恩恵もない代物であり、貧乏な労働者とその家族らを置き去りにし、「遠くで指をくわえて見ていろ」と言わんばかりの破廉恥で極めて傲慢な政策である。 さらに、コロナ感染患者を診取り、看護している感染症病院関係の労働者にとっても、旅行騒ぎどころではないのだ。 菅政権はこの「キャンペーン」を経済再生の切り札にしたい考えだが、こんなものは、「キャンペーン」が終われば、潮が引くのは必至であり、一時的な効果しか得られないのは明らかではないのか。 菅政権が人々の遊行や享楽を勧めて個人消費を拡大し、この勢いを来年の東京五輪につなげても(第3次補正予算を組み、来夏まで延長しようとしている)、経済再生には繋がらない。なぜなら、こんな個人消費をいくら扇動しても、それで生産財部門の拡大やひいては社会的拡大再生産の循環が進行することにはならないからだ。このことを菅政権や官僚どもは、まるで分かっていない。共産党や立憲やMMT派のブルジョア経済学者らにも言えることであるが。 ◇今頃「行政のデジタル化」か 「今回の感染症では、行政サービスや民間におけるデジタルの遅れ」などが浮き彫りになったとして、「各省庁や自治体の縦割りを打破し、行政のデジタル化を進めます」と言う。これが第2の政策だそうだ。これらの実現のために、「司令塔となるデジタル庁」を設立するとしている。 この「デジタル化」は、「持続化給付金」申請者の内容確認と給付金振替という事務的処理で大混乱に陥った反省の上に出て来た。だが、問題はそれだけではない。コロナ感染者数や重症者数の集計と分析や治療体制の把握を行う上で、医療関係機関を結んだ情報通信網が全くと言っていいほど整備されておらず、事実上、手集計処理になっていた。 菅は、行政や医療の面で、「デジタル化」(ICT)が進んでいないことを今更に悟ったかに述べているが、単に行政や医療関係に止まらない。 通信や半導体や電子機器を、かつては得意分野にしていた日本の製造業は、ICT開発においては、今や、〝中進国〟になっていると言われる。米のGAFAや中国のファーウエイらの躍進を見れば明らかだ。これと同様に、製造業全体(EV自動車や鉄鋼も)が、新商品開発能力や生産性や価格競争力を後退させつつある。 そうなった理由は、政府も企業も労働者に目先の成果を競わせ(つまり利潤追求優先だ)、見通しを立てた技術開発や研究をおざなりにしてきたからである。 あるいは、「アベノミクス」に典型的に見られるように、政府によるカネのバラ撒きや観光だ、五輪だ、万博だと個人消費拡大策に狂奔し、さらには日銀による株価つり上げで、企業の金融的利益を支え、企業がそれに安住した結果でもあった。 しかし、こうした結果を招いたのは、安倍政権や菅に最大の責任があるにも関わらず、菅にはこうした自覚はないのだ。菅政権などに従っていては、もう埒が明かないぞ、ブルジョア諸君よ。 ◇「脱炭素」の陰に隠れて原発推進 菅の所信表明で、マスコミ受けしたのは、2050年までに「温室効果ガス」を実質ゼロにする目標を掲げたことだ。 菅は、そのために「次世代型太陽電池や二酸化炭素を再利用する研究開発を促進し、石炭火力発電依存から抜本的に転換する」と宣言した。世界の「脱炭素」の動きに乗り遅れることは、日本資本主義にとって致命的になると悟ったからだ。 だが、その一方で、菅は「安全最優先で原子力政策を進める」と強調しているように、「脱炭素」の流れに乗った振りをしながら、原発の再稼働や将来の新規設置を策動している。 しかし、資源エネルギー庁(経産省)の試算によれば、日本の原発「発電コスト」――1kWh(基準電力量)に必要な「発電原価」と「社会的費用」の合計で表す。「発電原価」は、設備や燃料などの生産手段費、労働者の賃金や発電維持などの運転費、廃棄費用の合計で、「社会的費用」は事故対応費などを指す――は、世界の太陽光発電や風力発電より高いとのことだ。 日本の原発の「発電コスト」は、基準電力量当り約10円と算定されている(恐らく安く見積もっている)が、それに対して、世界では、太陽光発電も風力発電も、コストは数年前に平均して10円を割り、現在では9円を割っているという。世界で一番安いのは、アラブ首長国連邦の約3円であった(2016年)。 それらに比べると、日本のメガ太陽光発電の「発電コスト」は約24円、陸上風力発電では約22円と高い――ちなみに、日本の石炭火力の場合は約13円、石油火力は約39円、水力は約11円、地熱は約17円である――。 菅は、当然こうした現実を知っているであろうが、「ベースロード電源」の名のもとに、原発を将来にわたって守ろうとしている。それは、海外から撤退した東芝、日立などの原発メーカーを庇護し、彼らの仕事を確保してやるためであり、さらに将来の核武装のためである。 菅政権の反動性は、「脱炭素」の陰に隠れて、原発メーカー及び電力資本の利益と「国策」を優先し、安全性を隠蔽し、しかも「発電コスト」が高い原発にしがみ付くことにある。 ◇菅政権を打倒しよう 菅政権は、政権発足当初の高支持率に浮かれたが、日本学術会議問題で一気に支持率を低下させた。 それは、安倍と同様に、まともに疑問に答えず、真実を隠蔽し、歪曲するという陰険で傲慢な体質を菅が持っていると、多くの労働者が感じ取ったからに他ならない。 菅は、携帯電話料金の引き下げや不妊治療の保険適用など、目先の利益をエサに人気を集め、その上で、反動的な原発や改憲などを強引にすすめようとしている。 労働者は、菅の策動を見抜き、暴露し、菅政権を打倒するまで闘うことを誓う。 (W) 【1面サブ】 <都構想否決> 維新のデマゴギー政治の破綻 自民も共産もれいわも反動的 大阪「都構想」住民投票の結果は、維新が府・市の権力を使った情報操作(法定協でまともに資料を出さないとか、事前説明会で空想的青写真で開き直ったりした)にもかかわらず否決となった。 権力を集中させて専制的な行政を企む維新政治が頓挫したことに快哉を叫んだ方もおられるであろうが、はたしてこの〝勝利〟を労働者は手放しで喜べるであろうか。 維新による「都構想」は、大阪の発展のために「府市合わせの二重行政を解消する」ものとして提案され、政令指定都市の大阪市を解体し特別区に再編、府と区との徹底した役割分担を明確にするというもの。広域的な役割は府に一元化し、基礎自治体の各区は教育や保育、福祉などの住民サービスを担うといった役割分担をすれば行政の無駄がなくなるという安易な発想の〝絵に描いた餅〟でしかなかった。 すでに維新は大阪で9年間にわたり府知事と市長を占め、「バーチャル大阪都」と言われる「広域行政の一元化」を進めてきた。行政改革を進め、18年には市営地下鉄を民営化するなど、「民間にできることは民間に」という新自由主義的政策を行い、ブルジョア的な合理化によって労働者に犠牲や負担を押しつけ、行政を効率化させてきた。しかし、大阪の経済成長は勝ち取れず、万博誘致やIR推進による〝発展〟を押し出していた。 そうした〝実績〟もある中で、前回の住民投票は「維新」対「反維新」の構図で否決されたが、維新に国政選挙で対抗されることを恐れた卑怯な公明が賛成に回り、維新とタッグを組み、賛成が優位と言われていたが、僅差(約1万7千票差)で反対が上回った。 自民は一時中央の維新協調路線によって反対の立場が怪しくなったが、既得権益を敵視する維新への反発が強く、現状維持を訴えた。共産の「都構想」批判も「大阪市を守れ」という保守的なものでしかなかった。最右翼のれいわは山本自らゲリラ街宣で「あかん!都構想」と訴え、維新政治を新自由主義だと断罪したのはいいが、維新と真逆に、「都構想」が生活困窮の原因だと一面的に決めつけ、行政改革でなく、政府からカネを取ってくればいいと主張した。 維新への徹底した批判は資本の体制を乗り越える方向でなされるべきで、社会的経済的諸問題を行政機構の問題に矮小化し、資本主義による矛盾から目を逸らせることは労働者の闘いを間違った方向にするものである。 「都構想」の虚妄に賭けた維新は自滅したが、真実を曇らせる勢力にも未来はない。 (岩) 【飛耳長目】 ★首都圏で相次いだ豚窃盗事件でベトナム人4名が逮捕された。南北統一を成し遂げたベトナム戦争から、ベトナム人民の不屈の闘志と歴史が動く瞬間に感動を覚えた私も、今は複雑な思いでいる★半年余りで700匹にもなる窃盗は擁護できないが、凶悪事件とも言えない「いじましさ」を感じるのだ。豚は10桁の識別番号で管理され簡単に売買できず、食用にしては多過ぎる奇怪な事件とされていた★10年ほど前にベトナムを旅行した妻は、店先で子豚の丸焼きをする光景を見ており、早くから「ベトナム人じゃないかしら」と話していた。1億人近くの人口の平均年齢が31歳、勤勉な国民性と教育水準の高さは経済成長の源泉だ★日本には技能実習生や留学生として、中国からの39万人に次ぐ32万人が暮らしている。実習生の多くは縫製や機械製造などの工場で働いていたが、コロナ禍で職場を追われた★仕送りで貯えもなく、最近ようやく渡航制限が緩和されたものの、この間は帰国もできず苦境にあったのだ。ベトナム人に限らず127万人の外国人労働者の多くがSOSを発信している★いくつかのNPOの支援だけでは圧倒的に足りない。資本の身勝手な切り捨てを許さず、生活と雇用を守る闘いへの労働者の支援が必要だ。 (Y) 【2面トップ】 公的マネーで株価押し上げ 日銀が株価下支えのために2010年10月に上場投資信託(ETF)の購入を決めてから、10年がたった。購入額は増え続け、13年の量的・質的金融緩和導入時に1兆円に拡大、その後拡大を続け、20年3月には新型コロナウイルスの感染拡大への対応として12兆円にも膨らみ、以降も増額された。日銀と歩調を合わせてきた年金積立金管理運営独立法人(GPIF)を含めた公的マネーの株式市場への投資で株式保有残高は67兆円(東証1部企業の株式の時価の12%)にも達している。 ◇始まりはアベノミクス 日銀のETF購入が始まったのは、リーマンショック後の10年10月であった。この時には、「異例の措置」として、購入額も年4500億円であり、金融緩和措置とは切り離し、日銀内に設けた基金のもとで行われた。 日銀が本格的に上場企業の株式の購入に乗り出したのは、第二次安倍政権の発足からである。 12年末に発足した第二次安倍政権は、経済発展のためとして、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3つを柱(「3本の矢」)とする政策(=「アベノミクス」)を唱えた。 「アベノミクス」は「3本の矢」からなっているが、その中心は「大胆な金融緩和」である。これは、金利を低くし市場にカネをばら撒けば投資が活発になり景気が良くなるという構想である。日銀による国債の大規模な購入はその一環であった。それは日銀が民間銀行等の保有する国債を大量に購入することによってカネを市場に大量に供給すれば物価が上昇し、投資が活発化するという思惑に基づいていた。 「異次元の金融緩和」によって、市場に大量のカネをばら撒けば円安となり、このため日本の株は海外の投資家にとって割安となり、日本の株を購入しやすくなる。一方、国内では大量のカネの供給によって株購入の増加が見込まれ、さらに輸出企業では円安による輸出が拡大するというのである。 「異次元の金融緩和」と並んで日銀のETF購入による株価つり上げ策も景気振興策の一環である。ETFというのは、自分が株を購入するのではなく、投資信託会社にカネを預けて上場企業の株を買ってもらい、その運用利益を受け取るというものである。運用を委ねられた投資信託会社は、日経株価等の指標に連動した形で、株価の平均近くになるように株を取り混ぜて購入するという内容である。 ◇つくられた株式価格 13年の安倍政権の「異次元の金融緩和」導入の時点では日銀の株購入額は1兆円となり、その後も増加し続けてきた。消費税増税がおこなわれた14年には一挙に3倍の3兆円に増加、16年には6兆円となり、その後も増加の勢いは止まらず、新型コロナウイルスで株価が急落した今年3月には12兆円、さらに買い入れ枠は80兆円にまで拡大されたが、4月にはその枠も撤廃され、9月末の購入残高は34・2兆円にも達している。 日銀はETFと同時にJ-REIT(不動産投資信託)という商品を購入している。これは不動産投資法人に投資し、不動産投資法人はそのカネで土地、建物を購入したり賃貸ししたり、売却したりして利益を得る。そしてその利益は投資者に分配されるという仕組みである。いわば 日銀のJ-REIT購入はETF購入の不動産版である。購入限度額は当初50億円であったが、20年3月には1800億円とETF購入と歩調を合わせて拡大され、9月の末の残高は959億円である。日銀は、株や不動産の価格を下支えしてきたのである。 一方、公務員の共済年金を除いた、労働者や個人事業主などの公的年金を管理運用する機関GPIF(19年6月末、162兆円)も株を購入してきた。14年に日銀が消費税増税の対応として景気刺激のためにETF購入を前年の3倍の3兆円に増額した。それと共に、60%を「国内債」で運用するとしていたのを35%に引き下げ、国内株式を12%から25%に、外国債券を11%から25%にそれぞれ引き上げた。 国内の債券を重点としていた運用方針を劇的に転換し、債券と株式を半々とした。GPIFの国内株式の保有額は20年6月末では40兆円(運用資金の24・3%)に及んでいる。 朝日新聞(10月23日)は、東海東京調査センターの仙石誠による12年1月から今年8月末の国内株の売買状況についての調査結果を紹介して次のように書いている。 「株を買い越した最大の『投資家』は日銀。新規株式公開分などを除く売買を投資家主体別にみると、『買い』が『売り』を上回る買い越し額は日銀が32・5兆円と最も多い。 日経平均が今年最安値となった3月10日、日銀の1日当たりのETF購入額は過去最大の2千億円となった。4月以降は株価回復に伴い、1千2百億円、1千億円と徐々に減った。日銀がEFTを1兆円買うと日経平均を260円ほど押し上げる効果があったと、仙石氏は試算。『この8年近く、日銀を中心にアベノミクスの効果が十二分に発揮された相場だった』という。」 ◇泥沼にはまった日銀 金融「商品」である株の価格は配当額を一般利子率で除した額を中心に需要と供給の関係で変動する。将来企業の業績かあがり配当が増加すると見込まれ、買い手が多くなれば株価は上昇するし、反対に業績が悪化し株価が下落すると予想されるなら、損をしないように株を手放そうとする売り手が多くなり株価は低下する。 世界的な不況に加えて新型コロナで全体的に企業の業績が悪化したにもかかわらず株価が2万以上の値を保っているのは、日銀やGPIFが株を大量に買っているからである。公的マネーによる株の大量の買い支えによって株価は高い水準を維持し、不振に陥っている実体経済と乖離したものとなっている。 官製相場によって株価が高くなったからと言って、生活が豊かになるわけではない。株価が高くなり利益を得るのは株の所有者である。(と言っても売却することによって購入価格と売却価格の差を利益として取得するのだが)。 官製相場による見せかけの景気のもとで日本経済は矛盾を深めている。 今年3月末時点で日銀、GPIFが東証1部企業2165社の8割にあたる約1830社で事実上の5%以上の株を保有する大株主となっている(朝日、10月23日)。このうち10%以上は約630社に上る。株式保有額は日銀31兆円、GPIF36兆円の合計67兆円で、東証1部企業全体の時価総額の12%を占める。 日銀やGPIFが株式を買い支えるという関係の下では、生産性が低く、競争の中で陶冶されるような停滞的な企業も温存され、将来性のある企業が育つのが妨げられる要因となる。 一方、株式の保有者である日銀やGPIFにとっては企業が業績を悪化させ株価が低落すれば大きな損害を被る。実際、GPIFは19年度決算では8兆円もの運用損失をだした。 年金給付に当てるために年金加入者から預かった資金の運用は、損失を出さないように配慮されるべきである。このため外国では大きなリスクをもつ株式への投資は禁止している。しかし、日本では景気振興のために株価を支えることが必要という理由で、株式への投資を認めているのである。 配慮が必要なのは日銀の場合も同じである。 最近コロナ不況の緊急対策として中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)は社債購入を始めた。FRBが有価証券の購入を始めたといっても社債までで、社債なら返還期限があり、満期になれば自動的に償還される。償還されない場合でも、損失の額や発生する時期は把握されている。 株式の場合は売却しない限り、保有し続けることになり、購入価格より価格が低下すれば損失となるが、それが何時かは、市場次第で分からない。 これまで日銀が購入した株は34兆円にものぼっている。購入株が増えれば増えるほど株価下落による損害が大きくなるので、それに備えて引当金を積み増しする必要が生まれて国庫の納付は減少する。日銀の財務を圧迫するだけでなく、実際に株価が暴落するような事態が起これば日銀の信用も傷がつく。 企業は公的マネーによる株価買い支え操作への依存を深めてきた。株価買い支え政策が、成長力を失った企業を延命するなど企業の活力を奪い、発展を阻害していることや日銀やGPIFへの悪影響を考慮し、今後改めていこうとしても簡単には出来なくなっている。将来を考え、公的マネーによるつっかえ棒を外せば、株価は下落し、経済的な混乱は必至であろう。今や政府、日銀は官製相場で株価を支え、経済発展という退廃的状態から抜け出す展望を見出すことが出来ず、ずるずるとETF購入を続けるという泥沼にはまり、退廃を深めているのだ。 (T) 【2面サブ】 中国の民族浄化作戦を糾弾する! 新疆ウイグル自治区における中国政府の野蛮な〝民族浄化作戦〟、政治弾圧、宗教抑圧の実態が次第に明るみに出ている。それは現代の〝ジェノサイド(民族抹殺)〟とも言えるおぞましく、えげつないものである。 欧米のメディアや調査機関が近年ようやく報じるようになった情報(その中には現地のウィグル人が命がけで欧米の知人に提供したものも含まれる)をまとめてみよう。 オーストラリアの戦略政策研究所が衛星写真を分析したところ、ウィグル人収容施設(中国は「職業訓練所」と称している)が2017年以降380カ所が建設あるいは拡大された。また、同じく17年以降、8500のモスクが破壊され、7500のモスクが損傷された。 「収容所」には100万人を超えるウィグル人が収監され、思想改造や自己批判を強要される。虐待、拷問、レイプは日常茶飯事で、死者も出ている。数少ない生還者の証言によれば、殴る蹴るの暴行、電気ショック、水責め、心理的ないじめ、中身不明の注射を打つなどの蛮行がまかり通っている。ウィグル人を肉体的精神的に追い込み、屈服させるためだ。 新疆ウィグル自治区はもともとトルコ系でイスラム教を信仰するウィグル人の居住地域である。胡錦濤政権以来、「西部大開発」の名の下に漢人が大挙送り込まれてきたが、それでもなお新疆の全体人口の50%を超える1270万人はウィグル人だ(この人口数に照らすと、人口の約一割が収容されているのだ!)。 中国政府の民族同化政策や漢人優位体制、宗教弾圧に反発してしばしば抗議行動が起こり、90年代にはソ連邦の崩壊と少数民族の独立運動に刺激されて、独立志向も高まった。2009年にはウルムチ市でウィグル族と漢族が衝突して2000人近くが死傷、13年にはウィグル人が乗ったとされる車が北京の天安門前に突っ込んだ事件、14年にはウルムチ駅爆破事件などが起きている。 これに対し、習近平は「対テロ撲滅」作戦により徹底的な弾圧を推進するとともに、15年の党会議で「宗教の中国化」方針を打ち出し、ウィグル族の信仰や習俗も過激思想の温床になっているとして宗教弾圧も強化してきた。モスク破壊や収容所送り(単に外国に親類がいる、パスポートを持っているイスラム教の宗教儀式に忠実だといった些細な理由でも収容される)は、こうした習近平政権の政策の一環である。 さらに、17年には自治区政府は「産児制限違反ゼロ」を達成せよと号令をかけ、出産適齢期の女性の80%超に不妊手術を施すか子宮内避妊具(IUD)を装着させる作戦を展開してきた。「組織的な断種キャンペーン」である。 19年と20年に公費で数十万人の女性に不妊手術が実施され、その結果、ウィグル人地域では人口増加率が84%も減少、19年には出産適齢期の既婚女性のうち出産した人は約3%にとどまった。習近平政権は、男性は収容所送り、女性は不妊手術によりウィグル族を根絶やしにしようとしているかである。 習近平政権が新疆ウイグル地域〝平定〟に躍起となっているのは、大東亜共栄圏の中国版「一帯一路」構想の実現には中国からユーラシア大陸の出入り口となるこの地域の安定が不可欠だからでもある。 中国の国家資本主義の利益を体現し、野蛮な民族浄化作戦を強行する習近平政権に断固抗議し、糾弾しよう。 (鈴木) |