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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1395号 2021年1月24日
【一面トップ】ジョブ型雇用に転換急ぐ企業――「ジョブ型労働社会」論では闘えない
【1面サブ】コロナ感染拡大の責任を国民に転嫁――罰則でコロナは収束できない
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】国安法を盾に民主化運動弾圧強める習政権――人民から孤立した国家の威を借る臆病な狐

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

ジョブ型雇用に転換急ぐ企業
「ジョブ型労働社会」論では闘えない

 昨年、経団連会長を擁する日立製作所がジョブ型雇用に転換することを発表し(『海つばめ』1380号でも紹介)、資生堂、富士通、オリンパスなどの企業が続々とこれに続いている。既に欧米ではジョブ型の雇用が主流であり、新卒一括採用や終身雇用制の日本型制度では太刀打ちできなくなっているとして、大企業を先頭にジョブ型雇用への転換を急いでいる。

◇ジョブ型雇用を急ぐ背景

 ジョブ型雇用とは、企業が求める特定のジョブ(職務)に対して求人・採用し雇用する方法であり、その「職務の成果」に対して賃金を支払うというものである。政府も「職務などが限定された」採用と働き方という定義をしている(厚労省)。

 企業がジョブに求めるのは、言わば「即戦力」であり、新卒・既卒を問わずに専門職務の「スキル」をもつ人材に対してである。採用後に教育し適性を見て配属先を決めてきた従来の方法では、もはや国際競争に勝てない、労働生産性の国際比較でOECD36カ国中21位(2019年)に低迷する現状から脱却できないと嘆くのである。

 専門的スキルのある人材を採用するためと、企業は教育にも口を出し、専門性を高め、かつ国際社会の場で通用する学生を送り出せと注文し、政府もこれに応えて小学低学年からの英語教育やグローバルな人材教育をめざす大学改革や大学生の就業体験(インターンシップ)などを進めてきた。

 ジョブ型雇用の検討は以前からあり、その一つが安倍内閣主導で行ってきた「産業競争力会議」(2013年発足)である。この会議の目的は、「世界でトップレベルの雇用環境・働き方」を創成するという大層なもので、そこから生まれたのが「働き方改革」(時間外労働規制、同一労働同一賃金、多様な働き方など)であり、「女性活躍」や「優秀な外国人材の定着」を図るというものであった。

 しかし、経団連や大企業には、「スキルの高い人材」確保が少しも進展していないという焦りがあり、裁量労働制の対象拡大や高プロ制の制度改革を求めつつ、まず採用の面からジョブ型に舵を切ったのである。

◇ジョブ型を歓迎する労組や学者

 ジョブ型雇用で働く労働者は、ジョブ型賃金となる。ジョブ型賃金とは職種によって賃金が体系化され同一職種で働く労働者なら同一賃金を得るというものである。つまり職種ごとに異なる賃金差は当然であるというものだ。

 このジョブ型の雇用や賃金を歓迎するのは企業だけではない。個人加盟の労働組合や彼らを支援する学者もそうである。例えば、昭和女子大特任教授の木下武男は次のように言ってきた。

 「2000年代の雇用・労働の大きな変化と、新しい運動を通じて、日本型雇用システムからジョブ型労働運動社会への転換が、長い先のことではなく、労働運動がしんけんに検討すべき課題であることが明らかになったと思います。ジョブ型労働社会の実現を戦略的な方向性としてすえて、着実に近づくような運動が必要になってきたといえるでしょう」(『若者の逆襲』旬報社、92頁)。「同じ仕事をしていれば同じ賃金が支払われるべきである。これは雇用形態や企業規模、性差、年齢、民族をこえて貫かれるべき同一労働同一賃金の原則であり、世界の労働運動の公理となっています」(『なぜ富と貧困は広がるのか』都留文科大教授・後藤道夫との共著、旬報社刊、121~122頁)。

 あるいは、マル経学者で立教大学准教授の佐々木隆治も「労働組合は企業を越えて職種別・産業別に組織され、労働力販売の独占を実現するがゆえに、労働力の商品としての性格を緩和させるとともに、職種的ないし産業的規制を要求し、私的労働としての性格を緩和させることのできる力を持っている」(『私たちはなぜ働くのか』旬報社、180頁)と述べる。

 木下は、「ジョブ型労働社会」が労働運動の目指す方向だと断言し、この雇用形態によって同一(職種)労働同一賃金が実現できると言い、他方、佐々木は、職種別・産業別に組織された労働者の労働力は独占的販売を実現し、このことによって「私的労働としての性格を緩和させる」ことが出来るとまで言う。 

◇「ジョブ型労働社会」論はブルジョアと同穴

 木下も佐々木もジョブ型雇用は「同一(職種)労働同一賃金」を実現させるとして一致して歓迎する。

 佐々木はさらに職種別の労働者が企業に圧力をかけ高賃金を得るならば、もはや労働力の売買という「私的性格は緩和される」と言う。しかしそれは真実か。

 商品の独占価格での販売は、一般的には売手側の力や特権の行使であり、同時に買手側の妥協の結果に過ぎず、資本に対して労働者が労働力を売る関係は何ら変わっていない。高賃金を勝ち得れば、まるで商品生産に基礎を置く資本主義社会が変革できるかに佐々木は吹聴し、経済主義を賛美し労働者の「階級闘争」を歪めている。

 しかも、両御方はジョブ型雇用として必然である職種別の賃金格差・差別はやむを得ないかである。これでは、同一職種で正規と非正規の賃金差別が解消されると主張しても余りにも矮小ではないのか。「同一(職種)労働同一賃金」が労働者の闘いのスローガンになりうるかに言うのは、狭い了見の学者先生や労組幹部の中では通用するが、意識ある労働者には支持されることはない。これでは企業の新たな動きと闘えない。

 ジョブ(職種)や産業別による賃金要求は、労働力商品の「価値規定」から出発した資本主義内部で通用するブルジョア的なものである。なぜなら、資本主義の中では技術者などの専門的労働者は高度な教育や訓練を受けた「複雑労働」の持ち主であり、単純労働者より高給を食んで当然だと言う理屈が成立するからである。

 しかし子供などの養育費や知識、技能を習得するための教育、育成費が社会化され、個人的な負担の違いが一掃されるなら、専門的労働者だから賃金が高いという理屈はもう通らないのだ。

 職種別ではなく労働時間による賃金要求の議論もあるが、労働者が働く全労働時間のホンの一部を公平に分配要求するものでしかないことを理解すべきである。 (W)

   

【1面サブ】

コロナ感染拡大の責任を国民に転嫁

罰則でコロナは収束できない

 菅政権は、新型コロナ感染の対応策として、感染法、特別措置法に罰則を導入する改定法案を今国会に上程する。

 感染法改定では、国や都道府県知事は医療機関に新型コロナウイルス患者の受け入れを「勧告」できるようにし、勧告に応じなければ名称を公表できるようにする。また入院を拒否したり、入院中に逃げ出したりした感染者に1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科する、感染経路を調べるための保健所の疫学調査を拒否したり、虚偽の答えをしたりした者についても、50万円以下の罰金を科するという内容である。

 一方、措置法改定では、緊急事態発令前でも「蔓えん防止等重点措置」として、知事が事業者や施設に対して営業時間の変更、休業などを要請・命令できるようにする、命令に応じない場合には行政罰として、「重点措置」の場合は30万円以下、緊急事態宣言発令地域では50万円以下の過料を科すという内容である。

 これまで「要請」であったものを「命令」に変え、従わない者に対して罰則を設けた理由について菅は、「感染対策の実効性を高めるため」と述べている。だが、国家が上から命令し、従わない者に対して罰則を科することでコロナを収束することが出来るのか。

 「非常事態宣言」のもとでもコロナの勢いは止まらない。医療の現場では重症患者を扱う病床は満床で、コロナ対応に人手を取られ、他の救急患者を受け入れることができない、人工呼吸器も足りず使用するかどうかを患者本人に確認している、感染がわかっても入院先が見つからず結局は自宅待機に等々、といった医療崩壊が始まっている。誰を助けるのかという患者のトリアージ(選別)は現実となっている。

 こんな惨状をもたらしたのは、政府の無為、無策の結果である。菅は「経済も大切」と言ってコロナ対策を軽視し、3兆円余の税金を使ってG0T0キャンペーンを続け、感染拡大を招き、医療崩壊になったのである。

 政府への支持率は急落し、追い詰められた菅は、これまでの「経済もコロナ対策も」という姿勢を転換して、コロナ対策に集中するというが、罰則導入で問題が解決するかに言うのは思い違いも甚だしい。

 政府は、コロナ感染防止のためにコロナ専用の病院を設ける、臨時の専用病床を増設する、その他、医師や看護師の配置などするべきことがあったのに何もしてこなかった。また、PCR検査も決定的に不足である。感染者の早期発見と感染者への対応を徹底することこそが政府のやるべきことである。

 しかし、コロナ感染が始まって以来1年もの長い時間があり、外国の経験からも学べたにもかかわらず、政府は国民に対して「三密」回避とか、「不要不急の外出」を避ける、「5人以上の会食」をしない、など「自粛」を求めるばかりで、コロナに真剣に向き合ってこなかった。その結果が今日の状況をもたらしたのである。

 感染法改定など罰則の導入は自らの無為、無策のツケを国民の責任に転嫁するもの以外のなにものでもない。

 菅政権は「コロナ収束」の決意を訴える。しかし、菅は国家の権限の強化(罰則の導入)を訴えるばかりで、それ以外に政府が「収束」に向けて具体的になにを行うかについては依然として明らかではない。

 コロナ収束のために具体的な政策を明らかにし、その実現に向けて全力を尽くすことこそ政府の任務である。自らの無為無策を何ら根本的に反省することなく、国家の権限を強め、国民を罰則で脅かせば何とかなるという菅の姿勢こそ、菅政権の強権主義の本性を暴露している。 (T)


       

【飛耳長目】

★世界のコロナ感染増が9300万人を超え、死者は200万人を超えた。これは21世紀初頭に起きた世界資本主義の感染症として新たに記録されるだろう★感染症との記録は古い。日本では既に縄文後期に稲作とともに結核が伝播し、推定人口20万人が7・6万人に減少したと推定される(含む、食糧難等)。平安時代には天然痘が流行し、「続日本紀」には「豆のようなものが皮膚にでき、多くの死者が出た」という記述があり、天然痘は筑紫(福岡)から全国へ広まった★江戸から明治期には幾度かコレラが流行した。長崎に入港した米軍艦の乗組員が細菌を持ち込んだとされ(1858年)、江戸市中だけで25万人が死んだと記録される。ヨーロッパのペストもまた14世紀の感染症として著名だ★結核予防のBCGワクチンが開発されたのは1924(大13)年のことで、それまで〝死の病〟として多くの命を奪った。それにしてもワクチンが開発されるまでに何と長い時間がかかったことだろうか★現代の高度な医科学や医療技術があれば、新型コロナの特性を分析し迅速な対応ができたはずである。だが世界の頭目は経済が停滞することを恐れてコロナ対策を躊躇してきた。社会的免疫獲得を自然に任せ、そのツケが死者200万の数字である。 (是)

   

【2面トップ】

国安法を盾に民主化運動弾圧強める習政権
   人民から孤立した国家の威を借る臆病な狐

 香港は今、民主派市民に対する中国習政権・香港月鄭政府による弾圧の嵐が吹き荒れている。「香港国家安全維持法」(国安法)に基づく形をとった、1989年の天安門事件を想起させる武力鎮圧にも等しい強権発動である。今年に入って1月6日に香港警察は、香港立法会元議員ら民主派の53人を国安法違反の容疑で逮捕するという暴挙に出ている。これら一連の民主化運動弾圧の意味、その背景の中国社会の問題を明らかにしたい。

◇香港民主化運動への弾圧

 香港民主派は、一昨年2019年2月香港政府が逃亡犯条例改正案を公表すると、犯罪容疑者の中国本土引き渡しが可能になり民主化運動を抑える司法の独立を揺るがせるものだと抗議し、6月には学生を中心に参加者200万人(香港の人口約700万人)にのぼるデモにまで高まった抗議行動で、10月に終に月鄭長官を改正案撤回に追い込んだ。さらに11月の香港区議会選挙では、452議席のうち、民主派が385議席(85・2%)を獲得して圧勝した。

 民主派の伸長を恐れる中国・香港政府は、香港基本法23条に基づく国安法制定を香港立法会の議決によることを断念し、中国の全人代で議決するという姑息な手段を用いて昨年6月30日に成立させた。民主化運動を進めてきた政治団体は解散を表明したが、勇敢な香港大衆とともに闘いは止めていない。即日施行以来、習政権・林鄭香港政府は民主化運動への弾圧を強めている。主な闘いと弾圧を辿っておきたい。

 2019年7月1日は香港返還23年に当たり、前日は国安法が施行されたことから、民主派は国安法への抗議デモを呼びかけ、警察はデモを禁止したが1万人超の市民が集まった。その中で「香港独立」を主張するなどした10人が逮捕され、1人が起訴された。11日には、9月6日に予定されていた立法会選挙の民主派候補者を絞り込む予備選挙を民主派は行った。香港政府は予備選挙が国安法違反の政府転覆にあたると警告し民主派を威嚇。しかし市民はそれに屈せず61万人が投票。立法会選挙候補者の受付が始まると、現職議員を含む民主派の候補者12人の立候補を禁止し、さらにコロナ禍を理由に立法会選挙を1年延期。その間に民主派の排除を画した。31日、香港警察は海外在住の民主派6人を国安法違反で指名手配。国安法は香港以外での活動や外国人も対象としている。

 8月6日、香港警察は、6月4日の天安門事件追悼集会を違法集会とし、参加した罪などで24人を起訴。8月10日、香港警察は、「リンゴ日報」創業者で中国共産党を批判する論陣を展開している黎智英、民主活動家の周庭を国安法違反容疑で逮捕。23日、台湾に船で逃れようとしていた民主活動家ら12人が密航容疑で拘束された。

 9月6日、国安法や選挙延期に反対するデモが行われた。香港警察はこれを違法集会とし参加した290人を逮捕した。

 11月11日、中国の全国人民代表大会(全人代)の常務委員会は、香港独立の主張を支持する、香港に対する中国の主権行使を拒否する、海外勢力に香港への干渉を求める、国家安全に危害を加える、香港基本法を守り香港政府に忠誠を尽くすという要求に従わない、などの行為をした場合、香港政府が議員資格を剥奪することができると決定した。香港政府は即日、民主派議員4人の資格を取り消すとした。彼等は国安法の制定に反対した言動などが問題視され、当初予定されていた9月の立法会選挙への立候補を、既に禁止されていた。12日、民主派議員15人が、一斉に辞職届を提出し抗議の意思を示した。民主派は重要法案を否決できる3分の1の勢力をかろうじて保っていたが、議会はほぼ親中派一色となった。さらに林鄭長官は、立法会の親中派の多数を確かなものとするために、香港に隣接する広東省に住む香港住民が投票できるように画策している。

 23日、香港の裁判所は、2019年6月に逃亡犯条例改正案に抗議して、警察本部包囲デモを扇動したとして、その8月に逮捕され保釈中だった黄之鋒、周庭、林朗彦3被告を有罪と認定し、保釈を取り消し即日収監した。

 12月2日、香港裁判所はこの3人に実刑判決を言い渡した。周庭は外国勢力と結託し国家の安全に危害を加えた疑いがあるとして、国安法違反でも8月10日に逮捕されており、追加起訴される可能性がある。8日、香港警察は7月1日に行われた違法なデモを扇動したなどの容疑で、立法会議員ら8人を逮捕した。11日、香港司法当局は、8月に逮捕した黎智英を国安法違反罪で起訴し拘留した。16日、深?検察は、8月23日に逮捕した香港人活動家10人を違法な国外渡航を企て組織した罪で逮捕、起訴。

 このように中国・香港政府は、民主派のデモなどの抗議活動を違法とし、その主催者や参加した民主活動家、市民を国安法違反の容疑で逮捕、起訴、有罪、実刑判決にしており、それは民主派の報道機関、立法会選挙立候補者、元議員にまでも及んでいる。しかし香港民主派、そして大衆はそれに屈することなく闘いを継続している。

◇国家資本主義を社会主義と偽り労働者への支配・抑圧を強める強権的な習政権

 中国本土ではすでに2015年7月の国家安全法の他に、14年反スパイ法、17年海外NGO管理法、17年インターネット安全法などを施行し、反政府活動を「国家の安全に危害を与える」ものとして弾圧している。19年12月に人権派や改革派の弁護士、学者ら十数人が一斉に摘発され1年以上拘束され、新疆ウイグル地区では中国政府による民族浄化ともいうべき野蛮な弾圧が行われている。習は、人民に民主主義を許せば、政権への批判が高まることを恐れる、人民から孤立した国家の威を借る臆病な狐であり、習の個人崇拝を打ち立てて、法律を盾に、警察権力・時には軍事力を使い人民の政権批判、反政府派を抑圧している。中国・香港政府による香港の民主化運動の弾圧は、しばしば隠されて見えない、中国本土での反政府運動に対する強権的抑圧の執拗さそのものをまざまざと見せつけるようである。

 2017年11月の第19回共産党大会で、毛沢東の社会主義建設「站起来(立ち上がる)」、鄧小平の開放・改革による経済建設中心への転換「富起来(豊かになる)」から、習近平の社会主義現代強国化の実現「強起来(強くなる)」の時代であることを習は宣言し、「新時代」への転換を明示した。そこで唱える「社会主義現代強国化の実現」や「社会主義市場経済体制の充実化」などは、中国が社会主義体制ではないことを寧ろ隠すことなく如実に物語る。

 「強国」を目指すということは、「一帯一路」にみられる資本の輸出を拡大し他国の労働者をも搾取する帝国主義の伸長であり、いかなる意味でも社会主義ではない。

 労働生産物が商品として生産され「市場」があり、貨幣である人民元で売買されている社会は、「市場経済」の資本主義社会そのものである。習はただ「社会主義」の接頭語を「現代強国」や「市場経済」に付けて、労働者人民を搾取し・抑圧する資本主義の現実を覆い隠そうとしているのである。

 我々はすでに、1917年のロシア革命、49年の中国革命は〝労農〟革命であり、これらの革命で生まれたソ連や中国は、先進資本主義国と異なった形の国民経済的発展をもたらした国家資本主義である、と規定している(国家資本主義の本質的特徴は、資本の国家資本としての存在である。生産手段は国有化され形式的には共有化されているが、実際には資本として存在し機能している)(『スターリン体制から「自由化」へ』全国社研1972・4、『労働の解放をめざす労働者党 綱領・規約』)。「社会主義市場経済体制」とは、国家資本主義体制を偽って語る言いである。

 中国の憲法は「人が人を搾取する制度はすでに消滅し、社会主義制度はすでに確立した」「搾取階級は、階級としてはすでに消滅している」と謳っているが、トップ階層(国家と社会の管理層、企業経営幹部、私営企業家等)が経済人口の5%、中等階層(専門技術職、事務・公務員、個人商工業者等)13%、中下等・下等階層(農民、労働者等)82%と大きく三つの階層に分かれている(『21世紀の中国 政治・社会篇』毛利他12・12)。すなわち中国社会は、国有企業や私営企業の資本家と支配階層である共産党幹部や官僚からなる資本家階級とそれに従属する中等階層と、大多数の労働者・農民工・農業労働者などからなる、資本の支配の下で搾取され、社会の根底を支える生産を担う労働者階級の大きく二つの階級に分かれている資本主義階級社会である。8000万人の党員を要する中国共産党の職業構成は、労働者が9%、農牧漁業が30%、機関幹部、企業管理・技術要員・学生が35%、離退職者その他が26%であり、すでに「労働者・農民の党」から「幹部の党」になっている(2010年、同上書)。中国社会は資本家階級の政治委員会である中国共産党が支配しているのである。

◇香港の一国二制度を守る闘いから、中国本土の労働者との連帯を目指す闘いへ

 香港は、アヘン戦争で1842年に香港島が、アロー戦争で1860年に九龍半島南端がイギリスに割譲され、さらに1898年に新界が99年間租借されることになり、これらがイギリス植民地の香港の版図となっていたが、1984年の中英共同声明によって1997年7月1日に香港の全域が中国へ返還することが決まり返還された。1990年4月、全人代で採択された香港基本法では、香港は「一国二制度」の方針に基づき「社会主義制度と政策を実施せず、現行の資本主義制度と生活方式を五十年間維持する」と定められた。

 ところが習政権は、2014年6月に公表した香港白書で、「香港特別行政区の高度な自治権は固有のものではなく、その唯一の源は中央政府からの授権である。香港特別行政区が享受する高度な自治権は完全な自治ではなく、また分権でもなく、中央が授与する地方事務の管理権である」(『習近平政権第二期(前半)』遊川ほか20・3)として、「高度な自治」に箍(たが)を嵌めた。

 習政権が、今回中国本土の全人代で国安法を制定し、香港の民主化運動を逼塞させようと強権を強めているのは、香港の民主化運動の高まりを放置すれば、国家資本主義の下で抑圧されている労働者・人民の、年間10万件といわれる労働問題、都市・農村問題等に起因する集団的騒擾事件が階級的闘いへと転化し、のみならずチベットや新疆などの内陸部民族の民族主義運動を刺激し、一帯一路や台湾統合の帝国主義的政策の推進に齟齬をきたし、習の個人崇拝で独裁化をすすめる政権維持が揺ぐことを恐れるからである。習政権は、国安法を「一国二制度を改善し、香港の国家安全や憲法秩序を守るための重要な立法だ」(全人代栗戦書常務委員長)というが、「国家の安全」というのは、労働者大衆そして少数民族を抑圧する国家資本主義体制を守ることであり、そのために香港がこれまで有していたブルジョア民主主義を切り縮め、民主主義を守り発展させようとする民主化運動を弾圧するのである。中国社会は中国支配層が自ら唱えるような社会主義ではない。二制度というのは、中国の国家資本主義と香港の〝自由〟資本主義であり、ともに資本主義である。労働者は、習政権の民主化運動の弾圧を労働者の抑圧を強めるものとして糾弾するが、資本主義である「一国二制度」を守れということにはならない。

 中国の現実は、資本主義的生産関係のもとで労働者・農民工が搾取されている階級社会である。香港の大衆は、これまで享受してきた民主主義を守る闘いに止まることなく、中国本土の労働者と連帯し全国的な政治組織をつくり、国家資本主義を止揚して真の社会主義を目指す、自らを解放する闘いを進めて行くであろう。 (大阪 佐々木)


   
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