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●1396号 2021年2月14日 【一面トップ】巨大IT企業への規制とは何か――DPは共同管理こそ合理的 【1面サブ】ヘッジファンドに対する若者たちの戦役――痛快事だが、一時的エピソードに終わるだろう 【コラム】飛耳長目 【二面トップ】新海警法施行は何を意味するか――習近平への権力集中と覇権主義の強化 【二面サブ】MMT派に同情する共産党――大門きしみ参院議員の国会での議論 ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】 巨大IT企業への規制とは何か 米国の巨大IT企業4社(GAFA)や中国のファーウエイやアリババなどに対する警戒から、世界中で競争法(独占禁止法)を使った規制が敷かれつつある。巨大IT企業に対する規制の意味するものは何か、さらに労働者は「デジタルプラットフォーム(DP)」に対していかに考えたらいいのかを検討する。 ◇各国政府は自国IT企業の保護を策す 既にEUはGAFAに対して、競争法違反や個人情報不正流用を理由に制裁命令を出し(17~19年)、今後さらに巨大IT企業の進出 拡大を阻止しようと、厳格な法整備(独禁法の再整備)を行おうとしている。 日本でも「特定デジタルプラットフォーム透明化法」が最近施行された(21年2月)が、その目的は自国のIT企業やベンチャー企業の保護である(表向きは独禁法違反や個人情報の保護など)。 さらに地元の米国では、民主党議員からGAFAに対する「事業分割」が叫ばれるほどである。だが、これは民主党全体の意見ではない。 元来米国は、巨大独占企業の成立を許容し、独占が得た利潤を研究開発に回すことを是としてきたのであり、バイデン新政権もまた、GAFAらと競争する企業が圧力を受けないかの監視やネット空間の利用者の被害防止に力点を置き、それらの執行体制拡充を考えているに過ぎない(20年11月に出したバイデン政権移行チームの「提言書」による)。 ◇「デジタルプラットフォーム」とは? 昨年(20年)、衆参議院で成立し、最近施行された「特定デジタルプラットフォーム透明化法」の「デジタルプラットフォーム」(以下DP)とはそもそもどういうものであろうか。それは、ICTやデータを活用し、モノやサービスを売り買いしたい人に提供するデジタル市場(動作環境)のこととされる。グーグルやアマゾンなどはそれを運営する典型的な企業であるが、日本で言えば楽天やヤフーなどである。 DPの所有者(いわばデジタル市場の家主)は、あらゆる電子商売ができるソフトやアプリを顧客に提供している。例えば、検索サービス、SNS、通信販売、オークション、フリーマーケット、配信サービス(ニュースや動画や音楽や電子書籍など)、予約サービス、電子決済サービス、投資サービスなど、実に様々である。 さらに、この所有者は世界中の人々を相手にしているが、互いのインターネット網を利用しているので、設備投資に多額なカネをかける必要はなく、さらに規模を拡大してもデータの複製にかかる費用も非常に小さく、したがって製造業と違って不変資本は小さくても大きな利潤をせしめることができる。 他方、DPの利用者側である出店者(例えばネット書店やネット家電販売店などを出店する者、いわば店子)にとっては、電子空間を利用して売れ行きのいいものを並べ、客がかってにネット購入してくれる便利で安上がりなツールである。従ってこれらの店子が世界中にあっという間に広まった。 また、今では中小の製造企業やベンチャー企業にとっても、自前の「物理サーバー」を構築する必要がないDPの利用は安上がりであり、この利用によって、国際市場を含む多数の顧客に簡単にアクセスすることが可能になっている。 さらにまた、労働者などの単なる利用者にとっても、パソコンやスマホを使ってタダで検索エンジンを利用でき書籍なども購入できるので、DPはこの上なく便利なツールを提供しているかに見える。 ◇巨額の利潤をあげるDP企業 つまり、DP企業は、モノやサービスを売買するデジタル市場を提供し、その店子や個人利用者から所場代を年会費や従量制会費として奪取し、所場代がタダの場合でも、商品の販売価格から20%程度を抜き取る仕組みを構築した。他方で、利用者が検索エンジンを使うたびに、またモノやサービスを購入するたびに、アドレスや氏名はもちろん、住居地や趣向や行動範囲などの情報が一瞬にしてデータ化され、DPのサーバーに蓄積されていく。そしてこれらのデータは加工され新たな情報商品(例えば広告用データ)として販売される。この情報商品もまた「濡手で粟のぶったくり」なのである。 こうしてDP企業は巨額の利潤を蓄積しながら、ノウハウを取得し、新たな分野に進出(例えば産業用クラウドサービスや自動運転など)し、さらに急速に拡大している。アマゾンCEO(最高経営責任者)のベゾスは1994年に起業し、20年足らずで時価総額178兆円の世界有数の大企業を作ったが、高度情報通信技術とコンピュターの発展なくしてはあり得なかったのだ。その意味で彼らは情報革命の申し子であった。 ◇DPとネットワークは共同所有こそ合理的 DPはデジタル市場であり、その所有者であるIT企業は自前の生産手段(基本ソフトウエアーやこのソフトで動作するコンテンツの開発など)だけで運営できるわけではない。既に述べたように、世界中の端末とネットワークで接続されて初めてそれは可能になっているに過ぎず、いわばネットワークの賜物である。情報通信やインターネットはその役割から見るならば、道路や上下水道と同様な社会的な公共財なのである。 ところが彼らの利潤の源泉は、DPの所場代や利用料であり、個人データや企業データの加工と再販である。まさにヤクザか封建領主(地主)がやる特権的収奪と同じ類であり、新手の商品形態をとっていることが違うだけである。 従って、デジタル市場を独占する巨大IT企業に対する労働者の要求は、単に個人情報の保護や独占の規制ではない、また資本主義のもとでの国家所有でもない。人々による生産手段の共同所有による、人々の福祉のための、高度共同体社会をつくる労働者の事業の一環に組み入れ再編せよということである。 (W) 【1面サブ】 ヘッジファンドに対する若者たちの戦役 痛快事だが、一時的エピソードに終わるだろう アメリカで、株の空売りで大儲けしようとしたヘッジファンドを震え上がらせる事件があった。事件のあらましはこうである。 ヘッジファンドは業績不振で値下がりする米ゲームソフト小売り大手である「ゲームストップ」の株価が値下がりするのに乗じて、大掛かりな空売りをしかけた。「空売り」というのは証券会社などから期限付きで株を借り売却、約束の期間がきたらその株を現物で返すという仕組みで、借りた株の価格が将来値下がりすれば、その差額分が「空売り」した者の利益になり、株価が高騰すれば損失となる。 これに対してSNSの掲示板で、「空売りヘッジファンドを締め上げよう」との呼びかけがあり、これに共感した多くの個人投資家が「ゲームストップ」株を購入した結果、20ドルにも満たなかった株価はたちまち500ドル超に高騰、同社株の売買代金は、アップル、テスラを超えて米国株式市場でトップとなった。このため、大儲けを企んだヘッジファンドは逆に190億ドル(約2兆円)という損失を被った。 ヘッジファンドとの戦役にはせ参じたのは、「ミレニアル」(1980~90年代生まれ)の多くの若者たちと言われている。国から新型コロナ対応策として、一人1200ドル(約13万円)が給付され、失業保険も月2400ドルに増額された。これを背景に若者たちの間でも株式投資が広まっているという。 彼らが利用したのは「ロビンフッド」という株式投資のためのアプリ、取引手数料はなしという。こうした手軽なアプリを利用して、濡れ手に粟のぼろ儲けを企んだプロの株式投資組織ヘッジファンドに一矢を報いた。 新型コロナで多くの労働者が職を失ったり、賃下げを被っているのを尻目に、大資産家はハイテク株など株の騰貴で大儲けしている。資産10億ドル超の資産家たちはコロナ禍で1・1兆ドルの富を得た。ヘッジファンドの大損に「してやったり」と叫んだ若者も多かったろう。朝日新聞は「みんなが善意で団結したことが成功につながった。僕は誇らしい」との若者の声を報じている(1・31)。また「10年前の『ウォール街占拠の運動』に通じるものがある。路上に出るのではなく自ら手にした市場ツールで強者に立ち向かった点が新しい」とする声もある(同)。 痛快事であったことは確かである。しかし、それも一時的でしかない。高騰した株価はすぐに下落したし、資本は早速反撃に転じた。今回の騒動を招いた「ロビンフッド」やそれを支えた超高速取引業者(ロビンフッドから顧客注文を受け取り取引を行い利ザヤを設け、その見返りにロビンフッドにリベートを支払う。)の行動は、株式市場に混乱をもたらすもので規制すべきだとの声がでている。またSNSの掲示板での呼びかけが違法行為の「共謀」や「市場操作」に該当するとして犯罪だとみなす非難も出ている。今回の若者の反抗も一時的なエピソードに終わるだろう。 「空売り」で大儲けを企んだあるヘッジファンドが大損害を被ったとしても、ヘッジファンドがなくなるわけでもないし、労働大衆の犠牲の上に巨万の富を得ている大資本、資産家の支配が揺らぐわけでもではない。労働の搾取を基礎にしている資本の体制に反対し、搾取のない社会を目指す闘いを進めていくことこそが求められているのだ。 (T) 【飛耳長目】 ★安倍の税金私物化と我田引水はモリ・カケ・サクラだけでない。第2次政権発足後の2013年、地元山口県の公共事業費は56%も増えた★14年、隣の広島県を死者74人の豪雨災害が襲う。砂防事業が遅れる広島の公共事業費は増えて当然なのに、なぜか減り続けた18年、再び豪雨災害で114人が亡くなる★それでも山口は16年に、47億円の広島の3・5倍1620億円に膨張。被災地よりも安倍の地元優先で、救えなかった命への責任は重い★安倍の上を行くのが二階俊博。二階の中国利権は15年の3千人を率いた北京訪問団や地元和歌山の民間動物園にいる中国以外では最多のパンダ6頭が象徴している。運輸大臣時代に得た観光利権はGoTo事業に引き継がれ、菅政権も手が出ずに支持率急落に繋がった★二階の税金私物化は群を抜く。経産大臣に就いた08年和歌山の公共事業費は前年の10倍の4350億円に激増、高速道路や高規格道路などに注ぎ込まれた。それで県民の生活が良くなれば救いもあるが、下水道普及率は全国ワースト2、求人倍率も40位以下で人口流出が続く★税金私物化とムダ遣いは持続化給付金業務の民間委託で進行中だ。税金の源泉は剰余価値である。資本の厳しい搾取の下にある労働者よ、怒りを結集しよう。 (Y) 【2面トップ】 新海警法施行は何を意味するか 新型コロナウィルスの蔓延以降、中国は新たな手口で全世界に影響力を拡大し、米国をも凌駕する〝覇権国家〟として登場しようとしている。その一例として新海警法の意味を探ってみよう。 ◇海警法の狙い 中国は、全人代(全国人民代表大会)常務委員会の可決を経て、2月1日から「海警法」を施行した。その狙いは、条文を見れば明らかである。 海警法は、「中国当局の承認なしに、外国組織、個人が中国管轄の海域、島嶼に建造物や構築物、固定、浮遊の装置を設置した場合、海警がその停止命令や強制撤去権限をもつ」(20条)と定めている。 「外国軍用船、非商業目的の外国船舶が中国管轄海域で中国の法律に違反する行為を行った場合、・・・海警は矯正駆逐、強制連行などの措置をとることができる」(21条)。 「国家主権、海上における主権と管轄が外国の組織、個人による不法侵入、不法侵害などの緊迫した危機に直面した時、海警は・・・武器使用を含む一切の必要な措置をとって侵害を制止し、危険を排除することができる」(22条)。 これらの条文は日本を念頭に置き、尖閣諸島(広くは東シナ海)を中国の「管轄海域」と宣言し、「不法侵入、不法侵害」した者に対する海警の武力行使に「法的根拠」を与えたということになる。逆に言えば、日本の巡視船や米国の軍艦を牽制して、この海域を中国の「管轄海域」として確保しようという狙いがある。 実際に武器を使用するまでには至らなくても、中国海警局の1万2000トン級超大型巡視船は「体当たり戦法」を敢行することを想定して建造されているという。それに対して、自衛隊の艦船や米国の軍艦が発砲すれば、軍艦が法執行船(警察)を攻撃したとして〝国際問題〟化できると中国は踏んでいるのだ。巧妙な作戦ではある。 さらに、「非常時」には、中国海軍と連携してこの海域を制圧しようという狙いもある。 「目下、中国海軍の主要任務は近海防衛だ。もし戦時状態になれば、海警の法執行パワーはさらに強化される。きっと海軍と同調協力する。南シナ海、台湾海峡、東シナ海などの近海作戦において海上武装衝突が起きる場合、対応するのは海警であろう」(陳道銀・上海政法学院元教授、ボイスオブアメリカへのコメント)。 まさに、中国は、〝海洋覇権国家〟としての道を突き進んでいるのだ。 ◇海警法の意味 海警法は単に警察の艦船が武力行使することを可能にしたということにとどまらない意味がある。 それは中国内の権力闘争の産物であり、習近平への権力集中の一環でもある。 海警局局長には2013年に孟宏偉が就任、彼は公安省の次官を兼務し、さらには国際刑事警察機構(ICPO)総裁をも兼ねていた。しかし、彼は2017年12月に海警局局長を解任され、その後帰国中に突然行方不明となり、結局、汚職などの罪で懲役13年6カ月の刑に処せられた。 同じ頃、中国軍と武装警察(武警)トップにも、激変があった。連合参謀部参謀長の房峰輝と同政治工作部主任の帳陽が失脚(帳陽は自殺に追い込まれた)、武警のトップも追放された。 「注目したいのは、この一連の劇的なドラマが従来、2期10年までとしていた国家主席の任期制限を撤廃した憲法改正と同時に進行した経緯だ。既に再編を終えていた軍に続いて、武警と海警の完全掌握は、習の権力固めにとって極めて重要だった」(中沢克二氏、2021年2月3日、日本経済新聞電子版)。 2018年1月初めに、国務院(政府)との共同管理だった武警は習がトップに就いている中央軍事委の単独指揮下に入った。 ほぼ同時に、国務院の下にあった国家海洋局が管理してきた海警の指揮系統を変更する政府機構改革案が成立した。海上の法執行においても、習ー中央軍事委ー武警ー海警局と指揮命令系統が一本化されることとなった。2月1日施行の新海警法は、その法制化であった。 ◇「新4人組クーデター」が背景に この〝改革〟の背景には、2012年秋の共産党大会で習近平が党のトップに就くのを阻止しようとした周永康、薄熙来、徐才厚、令計画が組んで、習近平政権の誕生を阻止しようとした「新4人組クーデター」があった。 このクーデターの成否を握っていた武警は、国務院と中央軍事委による二重の指揮体制だったが、実際には党政法委員会を牛耳る周永康が支配権を握っていた。彼の引き立てにより孟宏偉は海警局トップになったのであるが、その周永康が「反腐敗」運動で失脚したため、孟宏偉もその地位を失い、投獄されたというわけだ。 ◇習への権力集中の仕上げ このように見ていくと、海警法の改正は、習への権力集中の仕上げということになる。 「一連の措置を通じて習近平がこだわってきたのはあらゆる面でのトップの権限強化だ。中心に備えたのは中央軍事委主席が持つ軍権である。武装警察、海警を含めて自らトップを務める中央軍事委が直接指揮する形に変えた」(中沢克二氏、前掲紙)。 かくして、習近平は、党、国家、軍のトップに立ち、すべての権力を握ることになった。 この権力集中の目的が共産党政権、習近平体制の維持にあることは多言を要しないだろう。 今、中国の体制は至る所できしみを生じ、腐敗をさらけ出し、広範な民衆の不満が高まっている。 ◇噴き出す習近平体制の矛盾 とりわけ、新型コロナウィルス感染症に対する政府当局の対応に対する民衆の怒りは根深く、マグマのようにいつ噴出してもおかしくないほどだ。 武漢市当局は、昨年初め、コロナウィルス感染者の発生を察知して医師仲間に注意を促した李文亮医師を拘束して訓告処分し、隠蔽工作にふけり感染拡大を招いた。習近平も初動が遅れ、危機感がなかったと批判された。権力の一極集中が進み、習が指示しない限り、動き出さないという体制の限界がさらけ出されたのである。 武漢閉鎖によってコロナウィルス感染は封じ込められた、コロナウィルスに勝利した、という対外的宣伝とは裏腹に、実際には大勢の死者が出て(武漢市内の葬儀場は24時間フル稼働で死体を焼却し、単純計算で合計4万体にもなるという)身内を失った民衆は憤慨し、怒りを爆発させた。 知識人たちは、言論の自由を求める声明を出し、隠蔽と無策の習近平政権を公然と非難した。 元国家副主席の王岐山と親しく、「華遠集団」という不動産企業を率いる富豪の任志強は、2020年2月23日、米国の華字サイト「中国デジタル時代」に、習近平の新型コロナウィルス対応を批判する文章「化けの皮がはがれても皇帝の座にしがみつく道化」を発表し、習近平の〝文革体質〟を厳しく批判した。 この時期、つまり昨年2月以降、香港、台湾政策で失敗し、米中貿易戦争の激化を招き、ウイグル族弾圧で国際的に批判され、「一帯一路」路線も挫折したとして習近平責任論が国内、党内で高まった。かくして、習近平はますます権力を独占して批判派を抑圧し、国民、党内の批判をそらすために「中華帝国復権の夢」を吹聴し、覇権主義・帝国主義を強化するのである。中国の体制的矛盾はますます深まり、近い将来、何らかの形で爆発することは不可避であろう。 (鈴木) 【2面サブ】 MMT派に同情する共産党 政府も日銀も口先ではMMT(現代貨幣理論――自国通貨建ての国債発行に弊害なしという理屈)の採用を否定しながら、国債増発での野放図な借金政治が常態化している。補正予算も来年度予算も〝国民のための予算〟だから膨張してかまわないと、まるで国債増発は当然であり、財政健全化は悪者扱いだ。こうしたデタラメな政治に対して我が共産党はいかに闘っているか、共産党の大門きしみ参院議員が2019年5月9日の参院財政金融委員会で、MMTについて、特徴的な議論をしているので紹介しよう。 当日の国会議事録によれば大門は、「このMMTの理論の中身というよりも、欧米の場合は(MMT支持派は)左派が多いわけですけれども、こういう政治家の方々の心情というのは、国民の気持ちを代弁していて大変理解できる」、「この二、三十年、日本では二十年ぐらいですかね、新自由主義的なグローバリゼーション、規制緩和、小さな政府、緊縮、財政規律、社会保障を抑制して、増税して、我慢しろ我慢しろと。こういうふうないわゆる緊縮政策に対して、もういいかげんにしろと、政府は国民のためにお金使えと、場合によっちゃ借金してでも国民の暮らしを守れということ」だとして、MMTとは、「財務省が借金大変だ大変だと言うから、違う考え方もありますよと、こうやって見ればちょっと違う絵柄が見えるでしょうということのシミュレーション」だと、MMTを使って批判している。 議事録では大門は、「(2019年の)四月の財政審(社会保障の自己負担増の制度見直しを提言)なんかも、あれもう夢も希望もない、国民にとっては。もう気持ちが暗くなるだけの、そんなものばっかり出してきているから景気も悪くなって、マインドも冷え込んで良くならないということになっている」と精神主義的経済観を披歴し、「緊縮財政にこんな(MMTに対する)過剰反応するんじゃなくて、今の財務省の緊縮政策そのものがもう歴史的に日本では問われていると、そういう認識をまず持つべきではないか」と財務官僚を攻めたが、所詮MMT派への同情から、その議論を利用して「緊縮財政」批判しようということでしかなく、共産党がMMT派のれいわ新選組山本に接近したことに見られるように、MMTが危険なイデオロギーであることに無自覚である。(ぜひ、労働者党理論誌『プロメテウス59号』のMMT派経済学批判特集を読んでいただきたい。) ◇「反緊縮」の本音は財政依存 欧州の左派として、イギリス労働党のコービンやスペイン新興左派のポデモス、アメリカのサンダースやオカシオコルテスというような人たちの名を大門は挙げているが、彼らが労働者のために役立っていると本当に思っているのか、彼らの客観的な役割は、目先の〝改良〟による腐朽した資本主義の延命であって、反緊縮派のMMT議論が資本による矛盾を解決するためのものではないことを大門は理解していない。 大門は「反緊縮」の立場からMMTの議論を利用して政府の「緊縮政策」を批判したが、〝左派〟に共感を示しているように、「場合によっちゃ借金してでも国民の暮らしを守れ」ということが彼の本音であろう。大門は日銀黒田同様に口先でMMT批判するが、財政ファイナンスを批判しながらMMTへの同情を示す大門は矛盾している。 大門は委員会に出席していた日銀の黒田に対して、MMTと日銀の政策の同一性について、「日銀がおっしゃるとしたら、日銀は、この先も絶対高インフレは起こらないとか、財政ファイナンスに発展しても大丈夫だとは思っていないということならば(MMTと)違いますよということになる」と、黒田の見解を質した。 厚顔無恥の黒田は、「MMTの理論が、財政政策はもう幾らやっても大丈夫で、しかもそれを中央銀行がファイナンスしたら大丈夫、ハイパーインフレなんてほとんどならないというのは実際間違っている」と、MMTを口先で批判してみせたが、黒田が財政ファイナンスを実行していることを隠していることを大門は厳しく批判せず(できず)、悪党黒田の財政ファイナンスを実質、許したのだった。 (岩) |
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