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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1398号 2021年3月14日
【一面トップ】菅自公政権は頭から腐る――高級官僚の高額接待問題は氷山の一角
【1面サブ】政府揺るがす金利上昇―― 一時的な投機現象か一つの傾向か
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】 深まる中国の体制的矛盾――全人代のかけ声の背後で
【二面サブ】米・中のインド・太平洋地域での強まる軍事的対立――覇権をめぐる帝国主義的抗争

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

菅自公政権は頭から腐る
高級官僚の高額接待問題は氷山の一角

 国会では官僚の業者との癒着、高額接待問題で激しい議論がなされ、公務員倫理規程に引っかかった官僚が処分された。安倍腐敗政治を継承した菅首相の息子が一役買った事件として週刊誌によってスキャンダルとしてスクープされ、国会では野党による「真相究明」の論戦が闘われている。ブルジョア国家における政治腐敗の一面が暴露されたが、政治の私物化を強めた安倍政権の下で官房長官として支えてきた菅が首相となり、さらに腐敗が進もうとしている。

◇官僚の腐敗は安倍政治で深まっていた

 周知のように発端は2月初め、放送関連会社「東北新社」で役職を務める菅首相の息子・正剛らが総務省幹部らを高額接待していたことが「週刊文春」でスクープされたことに始まる。

 放送事業の許認可権限をもつ総務省に対して、「東北新社」が利益追求のために接待攻勢したことが明るみに出たのだ。色めき立った野党による追及がなされ、接待された官僚が参考人として予算委員会に招致され、総務審議官や情報流通局長ら11人の幹部職員が「公務員倫理法違反」を問われ処分を受けた。同じ頃、農林水産省の幹部6人が鶏卵生産会社「アキタフーズ」からの接待で処分されている。その後、総務省官僚へのNTTからの高額接待も露見した。

 官僚のモラルハザードが広がったのは、安倍政権における政治の私物化(「モリカケサクラ」は典型的だ)やヤクザ政治家の跋扈、ウソの横行(安倍の虚偽答弁は118回にのぼるという)によって、権力の腐敗を見せつけられたり押し付けられたりした官僚が、それを手本に「権力ある地位を私的に利用したって大丈夫」と、綱紀粛正など無用の長物にしたことがあるだろう。「官邸主導」の政治を官房長官として実行したのは菅であり、官僚腐敗の責任を負っている共犯者である(主犯は安倍だとしても)。

 官僚の堕落も酷いが、コロナ禍への対応(後手後手にまわったとか、GOTOキャンペーンを優先したとか、国民に自粛を押し付けながら、自分たちは夜の会食をしていたなど)や接待を受けた官僚の処分がいいかげん(報道官はもう辞職したから責任は追及しないなど)ということに見られるように、自公政権の愚策こそ、「政治主導」でこの国を腐らせている。

◇自浄能力なくモラルハザードを露呈

 安倍政治継承の菅は、官房長官時代に内閣人事局の設立を主導したことに見られるように、人事による官僚支配を〝得意〟とし、従順でない者は容赦なく切り捨て、忖度できる者を重用してきたから、批判的な意見は出なくなり、自浄能力を失くして組織の腐敗を深めた。

 菅の著書『政治家の覚悟』には、官僚を動かしてきた自慢話が盛られ、同書のオビには「国民の『当たり前』を私が実現する」とあるが、「国民のため」でなく菅のため、菅にとって『当たり前』に、官僚を動かしてきたことが、官僚を腐らせたのである。

 東北新社からの高額接待で辞職に追い込まれた山田内閣広報官は、菅にNHKの番組で学術会議任命問題を持ち出した司会者を、電話で「総理が怒っている」とNHKの政治部長にクレームを入れ、圧力をかけるような人物であったが、接待問題で追及されてもいいかげんな答弁で逃げ、菅政権は守ろうとしたのだ。

 NTTからの高額接待で更迭された総務省の総務事務次官候補と言われていた谷脇は、官房長官だった菅が「(携帯料金を)4割程度引き下げる余地がある」と発言した直後の18年9月に2度NTTの接待を受け、翌10月にNTT子会社のドコモが携帯電話料金引き下げを発表している。谷脇は8日の参院予算委員会で、接待において「携帯電話料金は話題に出たと思う」と認め、「接待」の政治利用を自ら暴露した。そんな谷脇は天下りするというから、菅政権の「反省」のいいかげんさは明白である。 

 谷脇が「国民のために働く内閣」を標榜する菅の「携帯料金値下げ」の推進役だったことで、今後の通信政策に遅れが出ることが懸念されているが、通信行政が困難になるのは菅の責任である。菅流「官僚の動かし方」の〝弊害〟の実例である。

◇腐敗政治一掃のため闘い抜こう

 高額接待や業者との癒着が明るみに出たが、私益に汚いブルジョア体制が、政治の私物化、専制主義的な政治が腐敗を生みだしていることが明らかになっており、「真相解明」で済まされない、菅自公政権打倒の闘いを強め、前進させることが求められている。 (岩)

   

【1面サブ】

政府揺るがす金利上昇

一時的な投機現象か一つの傾向か

 2月末、米国でも日本でも長期金利が急上昇した。米国の長期金利は昨年(20年)2月に暴落し1%を割っていたが、今年2月26日の米債券市場で10年物国債金利(市場金利)が一時1・61%と1年ぶりの水準に急上昇した。日本でも米国の金利上昇を受けて、長期金利が0・18%につけた。実に日銀が「マイナス金利政策」の導入を決めた16年以来、初めてのことである。この日本での金利上昇は単に米国の影響を受けた結果であったのか、また一時的なものなのか、それとも一つの傾向を示しているのかなどを探ってみたい。

◇国債金利上昇と入札不成立

 米国の長期国債の金利が急上昇したのは、コロナ禍でトランプ政権による国債の大量発行が行われ、わずかな利回りを求めて大量買いした投資家が売却し始めたからだとされる。

 その理由は、バイデン新政権によって1・9兆ドルもの追加経済対策が発表され、さらなる国債発行が行われることになり、国債売買価格が低下する圧力が生まれたからである。また、今後の景気回復による物価上昇(金利上昇の契機になる)を嫌った投資家が国債の手持ちを減らす方向に動いたとも言われている。

 日本での金利上昇は、米国の高金利を狙った投資のために日本国債(株も)が売られたからだが、それよりも、第3次の補正予算まで組んで国債を垂れ流し、米国以上に国債市場がダブついたことが国債金利の上昇を生み出していたのだ。

 その結果、長期・超長期国債にまず売り圧力が生まれ、新発物の売買成立にも不安が広がり、7年物や2年物でさえ市場参加者から「いらない」と買いが付かない状況が発生したのである。

 実際に、去る2月26日、政府は2年物国債(発行予定額は約3兆円)の入札を実施したが、一時取引が成立しないという「異常事態」が発生したのである。その後取引が再開されたが、政府にとっては〝冷汗もので〟あった。

 しかしそれは当然であろう。国債価格が下がって行くならば、購入した国債は直ぐに評価損が発生するからであり、だから新発物に対してさえ投資家は購入を躊躇したのだ。

◇短期国債が増える理由とは

 新発物長期国債の売れ行きが芳しくない代わりに、市中で売れているのは満期が1年以下の短期国債である。補正予算を含めた20年度の新発国債発行額は112兆円、過去の借金の借換分(借換債発行)などを含めた国債発行総額は263兆円である。そのうち、満期が1年以内の短期国債は総額の31%を占め、実に82兆円にもなっている。

 その理由は、国債金利が上がり国債価格が下落していく局面では、長期国債の保持や新規購入は敬遠されるのであり、また短期国債は直ぐに現金化できるという旨味があり、それ故に短期国債が投資家に重宝されたのだ。

 他方、政府にとって短期国債が増えることは好ましくない。なぜなら、短期国債の発行は翌年には「借換」しなければならない上に、金利上昇の動きがある局面での「借換」は避けたいからだ。ところが、来年度当初予算で組む借換債の発行額は、過去最大の147兆円に達するというから、国債全体の市中消化がスムースに進む(日銀介入も無く)と誰が予想しえようか。

◇政府と日銀のMMT利用を許すな

 3月5日、日銀黒田は国会で長期金利の急上昇について、「変動の幅を大きく拡大することが必要とも適当とも思っていない」と発言し、日銀が長期金利の上昇を抑えると受け止めた投機家によって長期国債は買われ、市場価格は一時上昇した。

 しかし、黒田発言がどうであろうと、これほどに大量な国債が発行され、今年度のみならず来年度もまた多額の国債が発行されるなら、金利が上昇しようとするのは一つの必然である。だから日銀黒田は、政府が国債発行を継続できるように、常に金利上昇と闘うハメになるのである。もし黒田がこの金利上昇を抑えることができなければ、日銀の資産である国債の「含み損」は甚大になり、政府の「国債利払費」(現在9兆円)も増えることになる。

 しかし、政府の「財政ファイナンス」のために「ゼロ金利政策」を続けようとして、日銀が〝剛腕〟で国債を高く買い戻し続けるのであれば、日銀収支の悪化がさらに進み、将来「債務超過」が現実に転化し、日銀信用と円の信認に打撃を与えることになるのは必然である。

 さらに、政府と日銀の「ゼロ金利政策」によって、米国をはじめ世界との金利差が大きくなるなら、日本の投資家は金利の高い海外の資産購入に走るのも明らかである。 

 そうなれば、他の要因(貿易収支など)に変動がなければ円安がさらに進むことになる。次いでに言えば、円安によって輸入商品の価格は上昇し、消費者物価にも波及する。それは短期国債の金利上昇や日銀当座預金の「付利」上昇の圧力にもなるのである。 

 このように政府と日銀の借金拡大策=MMTの利用は、矛盾を解決できず次第に傷口を広げていき、結局は、労働者階級と子孫に多大な犠牲を転嫁することになるのだ。   (W)


       

【飛耳長目】

★世界経済フォーラムが日本の男女格差指数を過去最低の121位と発表したのは2019年。朝日社説は「女性管理職は世界水準をはるかに下回る。日本の『変わらなさ』は突出、特に政治分野がひどい」と、管理職や政党候補者の「クオータ制」を推奨した★「女性活躍」を掲げた安倍政権の「20年までに社会の指導的地位にある女性の割合を30%に」は目標倒れに終わった。菅内閣がこの目標の10年先送りを決めた2ヵ月後、森喜朗の「女性差別発言」が国際的批判を浴びる。菅らは五輪中止回避を策動して、組織委員会会長に橋本聖子が就いた★男性優位の現状からの半歩前進だが、「女性枠」が男女平等に結びつくはずもない。差別の根底には資本(私有財産)の支配があり、「男女の固定的役割分担意識や偏見」もここを住み処にしているのだ★内閣公報官に女性が初登用され、接待問題で辞任するとまた女性が就いた。だが二人ともキャリア官僚であっての人選で、「クオータ制」で指導的地位に就く女性も、資本と権力の支配に迎合、奉仕して〝出世〟した女性だ★男女格差の拡大は資本の分断支配の結果であり、女性登用はそれを温存し隠蔽する〝お為ごかし〟の茶番劇だ。資本の支配からの解放なくして、男女平等を実現することはできない。 (Y)

   

【2面トップ】

深まる中国の体制的矛盾
   全人代のかけ声の背後で

 中国では、3月5日から全国人民代表大会(全人代)が開かれ、李克強首相は「世界で経済のプラス成長を実現した唯一の主要経済国となった」と自画自賛し、香港・台湾に対する強硬路線を宣言した。だが、中国の体制的矛盾はかつてなく深まっている。我々は中国の真実を探らなければならない。

◇長期目標を示さず

 李克強は、コロナ禍でも昨年のGDPは2・3%増で、21年は「6%以上」の成長を目指すと宣言した。また、「『脱貧困』の全面的な勝利を収め、(ややゆとりある)『小康社会』の完成に向け決定的な成果を上げた」と吹聴した。

 しかし、2025年までの第14次5カ年計画については、「発展の質・効率の向上に力を入れ、経済を持続的で健全な発展を保つ」等、抽象的な謳い文句を掲げるだけで、具体的な数値目標は示されなかった。中国が改革・開放路線に転換した後、5ヵ年計画の目標数値が示されなかったのは今回が初めてだ。

 その理由については、中国を取り巻く内外の環境が米中対立の激化もあって不透明であり、成長目標を公表した場合、それが達成されなければ習近平政権の責任が問われることになるので、それを回避したからだと見られている(3月10日付日経紙電子版「激震・習政権ウォッチ」)。

◇米中対立激化の余波

 米中対立の激化は、中国経済にとって深刻な打撃となっている。それを象徴するのが5G(第5世代移動通信システム)で最先端を行く世界最大の通信機器メーカー、ファーウェイに対する米国の徹底した規制である。

 トランプ政権は2018年8月13日、国防権限法を成立させ、ファーウェイ、ZTE(通信機器世界4位)、ハイテラ(世界最大の無線メーカー)、ハイクビジョン(世界最大の防犯カメラメーカー)、ダーファ(同2位)の5社をアメリカの公的機関の調達から排除すると宣言した。2年後にはこれら「中国の指定5社」と取引がある企業もアメリカの公的機関から排除される。

 追い打ちをかけるように、米国は2019年5月15日にファーウェイをアメリカ商務省の「エンティティ・リスト」(制裁企業リスト)に加えた。米国は中国との間に「鉄のカーテン」ならぬ「ハイテクのカーテン」を引いたのである。

 その結果、ファーウェイは、米国企業から部品を調達することができなくなり、さらにグーグル検索やGメール、グーグルマップ、ユーチューブなどをスマホに搭載できなくなった。

 米国はさらに、ファーウェイの最先端技術を支えていた台湾のTSMCとの取引を規制し、半導体調達をできないようにする措置を取った。ファーウェイはやむなく、中国内の半導体メーカー、SMICに切り替えることにしたが、その技術はTSMCには遠く及ばず、かくしてファーウェイは後退を余儀なくされている。「産業のコメ」と言われる半導体チップを自前で調達できない弱点を米国に突かれたのである。

 中国が今躍起となって「製造大国」「科学技術の強化」を叫ぶのは、こうした産業・技術基盤の立ち後れが中国産業の発展の障害になっているからである。

◇強大化する国有企業

 改革・開放路線に転換してしばらくは民営企業の設立・支援を重視してきた中国ではあるが、今ではすっかり「国進民退」に転じている。

 習近平政権は、国家安全保障や国際競争力の強化といった名目で国有企業の統合を推し進めてきた。2011年に113社あった中央国有企業は2017年には98社に減少している。宝山製鉄と武漢製鉄が合併して宝武製鉄となり(粗鋼生産で世界2位)、鉄道車両製造の中国北車と中国南車が合併してできた中国中車は経営規模が世界一となった。

 2020年には国有化学大手2社の中国中化集団(シノケム)と中国化工集団(ケムチャイム)が経営統合に向けて協議に入った。また国有IT大手、中国電子科技集団(中国電化)は今年2月、同業の国有大手、中国普天信息産業集団(中国普天)の吸収統合に乗り出した。中国電化は軍系大手の一つで、米国の制裁対象になっており、規模拡大で制裁への抵抗力を強める狙いと見られている。

 習近平政権はまた、国有企業が民営企業を傘下に収める動きを加速させてきた。「中国メディアによると、20年に国有企業や政府系ファンドから出資を受けて経営権を譲渡した中国の上場企業は48社にのぼる」(3月6日付日経紙電子版)。

 コロナ禍で経営が悪化した民営企業救済という一面もあるが、民営企業の持つ先端技術や製品を国有企業に取り込む狙いもある。

 しかし、国有企業の肥大化や統合による独占の強化は、競争を排除し、生産効率の向上を阻み、ひいては国際競争力の低下につながるだろう。

 また、中国経済の躍進を支えてきた民営企業の衰退は、経済発展の足を引っ張ることになる。

 「中国経済で民営企業の存在感は高まってきた。中国の税収に占める民営企業の比率は15年の5割から(20年には)6割に上昇した。中華全国工商聯合会によると、民営企業は雇用の8割以上、国内総生産の6割以上を占める。国家統計局が一定規模以上の工業企業を対象に実施した調査でも民営企業の利潤総額は2兆元(約33兆円)で、国有企業の1兆4000億元を上回った。民営企業が萎縮すれば技術革新にも影響しかねない」(同)。

 「社会主義市場経済」、即ち国家資本主義に内在する矛盾である。

◇習近平政権の権力基盤

 習近平が権力を握って以来、一貫して進められてきた国有企業の強大化は、この政権の権力基盤が国有企業にあることを示している。

 よく知られているように、中国ではすべての企業、社会組織に共産党の組織が配置され、党と企業は一体化しているが、国有大企業ほどその傾向は強い。国有企業経営者は党幹部でもあり、高い給与を得て特権的な生活を享受している。民営企業との取引ではその有利な立場を利用して不正収入を得ることが常態化している。

 つまり、国有企業は不正の温床でもある。

 かつて権力をほしいままにした周永康(元政治局常務委員)とその一族が巨額の資産を蓄積することができたのも、周が石油産業を支配し巨大な利権を得ることができたからである。「党が国家を支配し、国家が企業を自由に動かすことができ、しかもその企業が独占的、寡占的利潤を享受できるなら、経営にあたる党幹部がその企業を元手に蓄財するのは容易である」(天児編著『習近平が変えた中国』小学館、158頁)。

 メディアも党が支配しているから情報は統制され、不正は隠蔽され、蔓延する。「審計署(会計検査院)の大手国有企業20社に対する調査では、なんと18社で不正会計が見つかったという」(同)。

 習近平の片腕として腐敗摘発に辣腕を振るった王岐山とその一族も腐敗まみれだったという告発ほど、共産党権力の頽廃を象徴するものはないだろう(詳しくは、楊逸著『わが敵・習近平』飛鳥新社を参照)。

 一方で、習近平の意に沿わない民営企業経営者は、追い落とされ、排除される。通販大手アリババの創業者、馬雲(ジャック・マー)が中国にはシステムなどないと口を滑らしたばかりに、習近平の不興を買い、傘下の金融会社アント・グループの新規株式公開が差し止められ、馬はそれ以後公開の場に姿を見せていないのはその一例だ。

◇鬱積する民衆の不満

 中国では今、特権階級の増加と貧富の格差の拡大、コロナ禍での失業と生活苦の増大、コロナ対策への不満と当局不信、人権抑圧等々に対する労働者大衆の不満が鬱積し、くすぶっている。年間10万件から20万件と伝えられる農村部の民衆の暴動は収まる気配がない。2018年には退役軍人数千人のデモも発生した。

 絶望した民衆の一部は、宗教の世界に逃げ込み、キリスト教徒は今や1億人に達すると言われている。いかがわしい新興宗教も横行している。絶望のあまり市民に暴力を振るう「報復社会」(社会に報復する)行動も後を絶たない。

 習近平政権の強権的支配と対外強硬姿勢は、民衆の不満を外にそらすためでもある。我々は、中国の内実、その矛盾を凝視し、中国の労働者大衆との連帯の道を探っていかなければならない。 (鈴木)


【2面サブ】

米・中のインド・太平洋地域での強まる軍事的対立
覇権をめぐる帝国主義的抗争

 インド・太平洋地域をめぐって米中の対立が強まっている。

 米バイデン政権は、インド・太平洋地域で中国の進出に対抗して、2022年度会計年度(21年10月~22年9月)から6年間で273億ドル(約2・9兆円)の予算を投じて軍備を強化する。この内容は、沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線に沿って米国の対中ミサイル網の構築である。そして台湾や南シナ海での中国との軍事的衝突を想定しており、日本などとの同盟国との軍事、経済面での関係強化を謳っている。

 すでに南シナ海においては中国の軍事的進出に対抗して、米国は「自由航行作戦」と称して複数の原子力空母を常駐させる計画を明らかにしているが、これに呼応して英・仏は空母や攻撃型原潜派遣を決定した。海外領土を持たない独もフリゲート艦派遣を決めた。

 中国に対抗する米・EU3国の軍事協力が進む中で、米国からの日本への自衛艦の派遣、ミサイル基地の増設、戦艦の寄港、軍事協力の要請も一層強まるだろう。菅政権は、尖閣諸島海域への中国艦艇侵入などを挙げて、米国の軍備増強を歓迎し、日米の軍事協力強化を謳っている。

 しかし、中国と米国との対立は、ブルジョア大国による勢力圏をめぐる争いである。中国は経済援助を梃子に影響力を強め、自己の勢力圏に囲い込んだり、南シナ海の諸島に基地を建設し、領土化するなど帝国主義的膨張を行ってきた。

 一方、米国を中心とした〝自由主義〟国の行動も大資本や自国の利権維持のためである。バイデン政権がまとめた「国家安全保障戦略の暫定指針」では中国を「国際秩序に絶えず挑戦する唯一の競争相手」と述べた上で、「私たちの利益を促進し、価値を反映する新しい国際規範や合意を形づくるのは中国ではなく米国」として、同盟国との連携強化などを通じて中国と対抗し、米国を中心とした国際秩序、米国の覇権の保持をうたっている。

 またEUから離脱したイギリスは、経済成長著しいアジア諸国との経済的な関係を強めようとしている。太平洋とインド洋地域に、独立運動が起こっているニューカレドニアなど海外領土と広大な排他的経済水域をもち、数千の軍隊を駐留させているフランスは中国の進出に神経をとがらせている。イギリスやフランスの米国との協調はそれぞれの国の国家的な利害がかかわっているのである。

 インド・太平洋地域での米・中の軍拡が進み、緊張が高まる中で、共産党は双方の軍拡を諫め、「国際法に基づく行動」、話し合いによる平和的解決を呼びかけている。しかし、帝国主義に対して、話し合いによる平和的解決を呼び掛けるだけでは徹底的に無力である。また彼らは尖閣諸島海域への中国艦艇の進出に対して、「日本固有の領土」への侵犯と非難しているが、こうした民族主義的な主張が反動派をどんなに助けているかを省みようともしない。

 労働者は中国の帝国主義的膨張政策に対して糾弾するとともに、米国の中国に対する軍事的包囲にも反対である。米中は軍備を増強してインド・太平洋地域の緊張を強めているが、その犠牲を受けるのは労働者である。帝国主義国が存在する限り、戦争はなくならない。帝国主義の支配の下で資本に搾取され、抑圧されている同じ立場にある労働者は、分断され、お互いに対立し、反目させられている。労働者の課題は、搾取と抑圧の一掃であり、そのために国境を越えて団結し闘い、共同の敵、帝国主義を打倒することである。  (T)

   

   
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