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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1400号 2021年4月11日
【一面トップ】教育への邪悪な権力介入――国家主義による偏向教科書を高校生に強要
【1面サブ】維新による民主主義の形骸化――都構想二番煎じの大阪府市広域一元化条例
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】 東電、安全対策不備を放置――規制委、柏崎刈羽原発の再稼働差し止め
【二面サブ】茶番の参院選長野補選――政策協定を巡り野党共闘に悶着

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

教育への邪悪な権力介入
国家主義による偏向教科書を高校生に強要

 来年4月から使われる高校教科書の検定結果が先月31日に公表された。数学と理科を関連付けて身に着ける「理数」や現近代の世界史と日本史を関連付ける「歴史総合」などが新科目に加わり、同時に多くの教科書でこれまでの知識偏重から脱し、情報を正しく分析し課題解決の力を育む「探究」重視に変わったとされる。ところが、歴史科目や新科目の「公共」の検定では、「探究」重視とは真反対のことが強要されたのだ。

◇歴史の「探究」こそ重要

 敗戦後の教育を「偏向教育」だ、「自虐史観」だと批判し、愛国教育基本法にもとづく国定教科書づくりに励んできた安倍政権。この安倍を継いだ菅政権もまた、極め付きの反動政権、国粋主義丸出しの政権であることが、今回の高校教科書検定で暴露された。これまでの知識偏重の教科書から「探究」重視に変わったかに喧伝されているが、それは見かけだけであり、歴史記述に関しては、自分達の偏向した得手勝手な解釈を押付けている。

 「領土問題」で文科省が書き直し命令を出したのは、日本の「固有の領土」への他国の侵害や不法性を断固として明記せよというものであり、北方領土については、従来認めていたロシアの「実効支配」や「事実上統治」という表現を削除させ、「不法占拠」に書き換えさせたのである。

 文科省はその理由を「生徒が誤解するおそれがある」、「わが国の立場を正確に理解」(朝日、21・3・31)してもらうためだと言うが、こんな不合理な説明しかできないなら、子供たちを教育する資格など最初から無いし、ましてや検定するなどはもっての他である。

 「固有の領土」であると言うからには、北方領土は太古の昔から(あるいは数百年も前から)日本人が住み国家統治がなされていた土地と理解されるが、果たしてそれでいいのか。北方領土について論ずるなら、日本の中央政権が北方領土を最初に認識したのは、1786年に千島最大の島である択捉島の探検にやってきた最上徳内によってである。この時、わずかのロシア人の他はアイヌ人が住んでいたことが報告されている。

 それまでは、東北から北に住む北方民を「蝦夷」とか「毛人」(読みは、えみし/えびす)と呼び、東北地方を武力で制圧した以降、「蝦夷」は北海道以北を指す言葉になった。江戸幕府においても、北海道を外国と見なし、現地人=アイヌとの間で交易(不平等交易)を行う一方、土地を収奪し、キリスト教信仰を禁止し、鮭・鹿などの採取やアイヌ語使用も禁止するなど、れっきとした植民地政策を行っていたのである。

そして、明治政府になると、アイヌの土地を「北海道」と改称し、日本の統治下に置き、併合したのである。

 こうした歴史を学ぶならば、生徒は政府の言っている「固有の領土」論が何かおかしく理にかなっていないことを簡単に理解するのである。つまり、政府の主張する「固有の領土」とは、太古から日本人が住み、「わが国民が父祖伝来の地として受け継いできたもの」ではなく、アイヌの土地であった北方領土(北海道を含む)を併合し、囲い込んだ日本領土のことに過ぎなかったのである。

◇「固有の領土論」のいかさま

 さらにロシアとの間で、択捉・ウルップ間に国境を定めた下田条約(1855年)が結ばれることになったが、それは束の間のことであった。日本が欧米列強に対する新たな帝国主義国家として登場し、日清・日露戦争やアジア・太平洋戦争を闘い、その都度日ロ間の領土問題を引き起こしてきたのである。

 つまり、帝国主義戦争の勝敗によって、サンクトペテルブルグ条約(千島樺太交換条約)、ポーツマス条約(日本へ南樺太割譲)、ヤルタ協定(日本の朝鮮、台湾、北方領土の放棄など)が次々と日ロ間で結ばれていったのである。

 したがって、政府が北方領土を「固有の領土」と強調し、歴史的権利だとして譲らず、「不法占拠」という激しい記述に変えさせた理由の一つは、領土問題でロシアと係争中だと思わせないため、双方の主張の違いは何かを議論させないためであった。それゆえにロシアの「実行支配」や「事実上統治」という表記を拒否し、ロシアは日本の領土を簒奪している不法な占領者だと決めつけたのだ。

 二つには、日本政府が北海道や北方領土を併合してきた歴史的事実に触れないようにするためであり、帝国主義戦争のたびに日ロ間で領有問題が生じてきたことにも、できるなら蓋をしておきたかったのである(それができるかは別であるが)。

 さらに、戦後の日本政府はヤルタ協定に基づくサンフランシスコ条約を受諾し、千島領有を放棄したのであり、それ故にロシアから北方領土を取り戻すためには「固有の領土」論で攻めるしかなく、これを断固として弁護するために「不法占拠」されていることにしたいのである。そして一切の責任は日本政府にあるのではなく、不法で卑怯なロシア側にあると生徒の目を逸らすのである。

 こうして多くの生徒たちに「固有の領土」論を刷り込み洗脳できるなら、ロシアに対する敵愾心を煽り、国家主義的感情を醸成し、ひいては菅政権に対する支持もまた増えると算段するのである。

◇「固有の領土論」で教科書検定支持の共産党

 今回の高校教科書検定で、北方領土をロシアが「不法占拠」していると記述させたこと、尖閣諸島や竹島についても「日本固有の領土」であると明記させたことに対して、共産党はただ淡々と検定結果を紹介するだけで全く批判をしていない(例えば3月31日「赤旗」)。つまり、彼らは領土問題についての教科書検定内容を歓迎しているのだ。

 それもそのはずである。共産党は安倍とプーチンの会談(18年)で、歯舞、色丹の2島返還問題が話し合われたことに対して抗議し、「これは、歴代自民党政府の方針すら自己否定し、ロシア側の主張に全面屈服するものです。領土は安倍首相の私物ではありません。このような〝売国外交〟は絶対に許されるものではありません」(「領土・領有問題――私たちはこう考えます」19年6月)と、あの天皇制国家主義者の安倍を売国奴呼ばわりして非難していたのである。

 つまり45年のヤルタ協定には、当時のソ連の対日参戦と戦後のソ連による千島列島の領有が含まれており、米英はこれを認めたが、この協定は領土不拡大という戦後処理の一般原則に違反していたと共産党は非難するのだ。だから、彼らはこの条約について無効だと主張し、「全千島の返還を正面から求める」(同上)と叫んだのである。

 共産党はソ連と米英の秘密協定は無効だと言うが、当時の日本の帝国主義者を代弁してしゃべっていることに気が付かない、そしてまた、自分たちの民族主義者としての主張が日ロの労働者間に敵愾心を煽り、対立させていることにも気が付かないのである。

 何とまあ、民族主義者というものは労働者の国際主義による団結と無縁な存在であることか。

 共産党は尖閣諸島などで紛争が現実化すれば、かつての第二インターナショナル(世界の社会主義政党の組織)の社民主義政党と同様に、たちまち自国の資本の陣営に味方し、自国の権益拡大に賛成し、つまり領土拡大を支持し、国際的な労働者の連帯をたやすく破壊するのである。 (W)

   

【1面サブ】

維新による民主主義の形骸化

都構想二番煎じの大阪府市広域一元化条例

 維新は大阪市議会で公明党を丸め込んで多数派を形成し、「広域行政一元化」条例を3月26日議会で成立させた。この条例は、これまで市と府が連携し、大阪市が担っている大規模開発の事務を、府に委託することを制度化するものであり、大阪都構想を代替するものだ。

 昨年11月1日の住民投票で都構想が否決された維新は、「大阪市民の民意」「民意を受けて大阪市の発展に力を尽くしたい」(松井市長)、「大阪市民の判断を尊重したい。都構想は僕が挑戦することはありません」(吉村知事)などと、一見しおらしく語った。

 しかし松井は11月5日には、「広域行政の一元化」と「八つの総合区設置」の条例案を2月議会に提出する意向を表明し、吉村も「広域行政の一元化」は、都構想で市から府へ移管するとしていた約430の事務が検討対象となると表明した。「八つの総合区設置」は、都構想で掲げた4つの特別区設置に代わるものであり、都構想とほとんど変わらないことを、条例(議会の多数で決定できる)にして成立させようという策動であった。

 住民投票で示された住民の意思を尊重するというのは真っ赤な偽りで、維新の政治の「一丁目一番地」という「都構想」は、民意に反して自らの権力維持のために、住民投票結果をなきものにするものである。

 共産党は住民投票で勝利し、「これでノーサイドにして、制度いじりではなく」「ほんとに、いい大阪に変えていかないといけない」と浮かれて、維新のファシズム的本性を甘く見ていたのだ。

 維新のファシズム的手法は、トランプが大統領選挙の結果を認めずに、自分が当選したと策動したことに類似し、また、ミャンマーのスーチー政権を、「選挙で不正が行われた」と言って、クーデターで権力奪取した国軍と変わらないといえる。「広域行政一元化」条例の成立は、合法を装って住民投票によって示された民意を一夜にして裏切る、クーデターに等しい、権力犯罪として断罪されるべきものである。

 都構想がなければ大阪が発展しないなどというのはそもそもデマゴギーであり、府と市はともにバブルに踊って公共投資を拡大させ破綻させたのであって、それを維新は二重行政の弊害と偽り、都構想による成長戦略などと住民の期待感を煽った。維新は人々に「期待感を抱かせる」(橋下)だけであり、そうしてごまかすのである。

 維新は、労働者の生活困難の解決を、地方政治の改革で実現するかのように偽り、教育無償化や給食無償化などで人気を

取るとともに、労働者への抑圧を強めている。

 地下鉄民営化で組合運動を解体し、現業職員の賃金引き下げや労働強化を受け入れさせた。府独自の「国旗国歌条例」で、君が代斉唱時に職員の起立を義務付け、国家主義的な維新の教育に反対する教育労働者を職場から追い出し弾圧している。

 菅政権は、地方の制度改革が住民生活に寄与するなどといって維新政治と結びつきを強めてきた。菅政権は、維新を自民の補完勢力とし、憲法改正などの帝国主義的政治を強める策動をしている。

 維新および菅政権を一掃する労働者の闘いを発展させなければならない。  (大阪 佐々木)


       

【飛耳長目】

★共和党の牙城だった米ジョージア州で、バイデン勝利に続いて1月の上院選でも民主党が2議席を独占した。これに危機感を抱いた州議会多数派の共和党は、民主党支持層が不利になる投票規制法を成立させた★相手を不利にして勝てるルールに変える暴挙は、ミャンマーの外国籍の子供を持つスーチーを標的にした憲法の大統領資格条項や、先月の中国全人代での香港の選挙制度改悪に典型的で、国際的非難があがった★日本の小選挙区制や国政選挙での最高6百万円の高額選挙供託金も、小政党や無産の人々の進出を阻むもので、民主主義の根幹の一つである普通選挙を否定するものだ。そもそも米独仏伊などには供託金制度はなく、制度のある英加では10万円以下。韓国、アイルランドでは違憲判決も出ている★中国のウイグル族弾圧に、バイデンは「ジェノサイドで人道問題」と非難し、菅も中国の人権状況への懸念を表明した。これに中国は「内政干渉だ。中国には中国式の民主主義がある」と居直ったが、黒人とアジア人差別のアメリカと、ジェンダーギャップ120位の情けない日本の指導者が語る人道、人権は空虚に響く★民主主義の国ごとの実態は、階級的差別を前提とするブルジョア民主主義の制限性の現われ方の違いに過ぎない。  (Y)

   

【2面トップ】

東電、安全対策不備を放置
   規制委、柏崎刈羽原発の再稼働差し止め

 原子力規制委員会は、先月末、他人のIDカードを使用した中央制御室への不正入室や検知設備故障を長期期間放置してきた東電・柏崎刈羽原発に関して、原子力規制法に違反したとして、問題が解決するまで原子炉に核燃料を入れることを禁止する命令を出した。福島第一原発で空前の大事故を起こしながら、なんら真摯な反省もなく杜撰な経営を続けている東電、そしてそれを後押ししてきた政府の責任が問われている。

◇「安全対策完了」と嘘の報告

 原発電設備破壊を目的とするテロ攻撃を防ぐための措置を怠っていることを明らかにするような、他人のIDカードを使用して運転の心臓部である中央制御室への不正入室事件が起こったのは昨年9月20日であった。IDカードを紛失した東電社員が他の社員のカードを無断で持ち出し、2人の警備員が違いに気づきながらも、そのまま中央制御室への入室を許可した。しかし、このことは報告されず隠蔽された。この事実を知らされないまま、3日後には規制委員会は東電が再稼働に向けた「保安規定」に盛り込んだ安全対策をクリアーしたものと見做し「最終審査」に臨むことにした。

 規制委員会は東電に柏崎刈羽6、7号機を再稼働する「適格性」があると認める条件として、東電は、「安全性をおろそかにして経済性を優先することはしない」「社長はトップとして原子力安全の責任を担う」など7項目の約束を求め、東電はこれを受け入れた。

 しかし、これは空約束であった。昨年3月以降、監視カメラやセキュリティゲートなどの核物質防護設備15カ所が相次ぎ故障、うち10カ所は30日以上も検知できないなど、不正な侵入防備対策が不備である実態が明らかになったのだ。

 当初東電側は規制委員会に対して代替措置があり問題ないなどと説明していたが、原子力規制庁の抜き打ち検査によると、代替措置は全く不十分で、「お粗末なもの」であることが判明、安全確保の判定は4段階のレベルでも最悪となり、規制委員会は「核燃料を動かす資格がない疑いがある」と評価せざるを得なかったのである。

◇福島の経験は生かされず

 規制庁の聞き取り調査に対して現場の担当者は、代替措置が不十分だと認識していたと答えているが、それが発電所の上司には共有されていなかったし、本社にも報告がなかったことについて、本社の小早川社長は「組織間の連携の悪さなどの問題があった」といって、今後本社のメンバーを現場に常駐させて、意思の徹底を図って安全対策をつくり上げていきたいとしている。しかし、これは経営者としての自らの責任を回避し、杜撰な安全対策の責任を発電現場に押し付けることである。

 10年前の福島第一原発の大事故は、東電本社の利益第一主義で津波対策に真剣に取り組まなかったことにあった。巨大津波が押し寄せる可能性があり、それへの対策を講じる必要があることを会社内部からも指摘されながらも、当時の社長、重役たちはそれへの対策費用が大きくなり利益を圧迫するという理由で、これらの声を無視して、安全対策をとることを怠ったのである。

 その結果、津波で原子炉の冷却が不能になり、何万の被災者を出す大爆発事故となった。そして何万もの人々が疎開を余儀なくされ、今なお飛び散った放射性物質の汚染によって人々が生活できない地域が残されている。

 政府、資本は重大事故への対応、使用済み核燃料の保管・処理などの未解決の問題をそのままに「安全神話」を振りまきながら強引に原発を推進してきた。政府、資本にとって原発は利益獲得の手段なのであり、将来の核武装兵器装備のためのものである。

 原発は福島事故に見られるようにいったん事故が起こればその被害は計り知れない。だから、厳重な安全対策は決して軽んじられるべきではない。だが、利益獲得を至上目的とする資本主義の下では、安全対策は利益を圧迫するものとして軽視されている。東電は福島事故を起こしたにも関わらず、根本的反省もなく、柏崎刈羽原発の再稼働を急いできたのである。

 東電資本にとって、柏崎刈羽原発の再稼働は収益改善の柱となっている。東電は福島事故後、安全対策費として国から1・2兆円もの巨額の資本が投入され、事実上国有化されることで存続し、事故処理と福島復興に当たることになった。そのための有力な資金源が柏崎刈羽原発の再稼働であった。再稼働ができれば1基で年間約1100億円の収入改善が見込まれ、東電は収益計画のうちに再稼働は織り込み済みであった。

 東電は今年6月からの再稼働を目指し、今後は「安全をおろそかにしない。収益を優先することはしない」と約束したが、この約束もその場しのぎの空約束でしかなかった。

 利益のために津波対策(安全対策)を軽視し、未曽有の大事故を起こした経験はその後の戒めとして生かされることなく、東電は依然として変わっていないのである。事故につながる安全措置が不良のまま放置されてきたのは意思の疎通の悪さのためであると経営者は強調しているが、そうした状況を生み出し、変わることなく続けてきたのは、資本による利益第一主義のための経営の結果の反映である。実際、福島で原発罹災の被害を被った地元住民に対する対応では、先の約束には「福島の自己の賠償をやり遂げる」という項目も含まれているが、住民への損害賠償の和解案を相次いで拒否している。また廃炉となる原子炉に関しても、処理済み汚染水の取り扱いについては国任せの態度に終始している有様だ。

◇政府にも重大な責任がある

 東電が安全対策に真剣に取り組んでこなかったのは東電の経営者ばかりではなく、政府にも重大な責任がある。

 菅首相は、今回の原子力規制委員会の決定に対して、国会で「東電は高い緊張感を持って、抜本的な対策を講じる責任がある」とまるで他人事のような答弁を行っている。しかし、政府は東電に対して1兆円以上の資金(国民の税金)を投入し、東電の株の過半数以上を握り、東電は実質的には国有化企業となっているのであって、政府は東電が安全対策をきちんとするように管理・指導すべき責任がある。しかし、政府はその責任を自覚せず、安全対策の実施の責任を東電に丸投げしてしまっている。だから後は東電次第ということになってしまって、事故隠しなどいい加減な管理・運営がまかり通ってきたのである。

 福島原発大事故後、全ての原発は運転を停止したが、12年発足の第2次安倍政権は、原発回帰を打ち出し、菅政権も脱炭素を名のもとに原発の最大限活用を謳っている。政府が目指すのは柏崎刈羽の再稼働である。

 経産省幹部は、新潟県の地元県議や関係者に昨年だけでも述べ80回も面接し、柏崎刈羽6、7号機の再稼働を認めるよう説得を繰り返してきた。政府の計画では今年6月の再稼働実施は織り込み済みで、東電の事業計画にも明記されている。政府は東電のいい加減な安全対策を放置し、東電と一緒になって再稼働を推進してきたのだ。  (T)


【2面サブ】

茶番の参院選長野補選
政策協定を巡り野党共闘に悶着

 河井杏里の失職による広島と並び長野県でも羽田雄一郎の死去にともなう参議院の補欠選挙が公示された。羽田の後任は結局地元後援会(羽田孜以来の「千曲会」)の強い推薦により弟の羽田次郎(会社社長、立・民)に決まり、立・民、共産、社民と「信州市民アクション」との野党(と市民との)共闘候補ということになった。

 自民党は一昨年と同じく小松裕(医師、自民)が公明党の推薦も得ていち早く立候補していたので、他に、これも一昨年と同じくNH党(旧N国党)の神谷も立候補しているが、事実上羽田と小松の一騎打ちという構図になっている。

 羽田は上述のように、立・民、共産、社民と「信州市民アクション」の野党共闘候補ということで2月22日には五者による選挙協定が結ばれた。しかし、原発政策や日米同盟等外交政策の内容に国・民と連合がいちゃもんを付けたことで、両者による推薦をめぐって一悶着起こることになった。報道されているように、協定の「2050年までに再生可能エネルギー100%を実現し、原発ゼロ社会をめざし」云々と「日米同盟に偏った外交を改め、東アジア諸国との関係を改善」という条項が問題視されたのである。

 前者については、特に連合内の一部産別(報道では自動車労連やUAゼンセンなどが上げられているが、当該の電力総連も当然含まれているだろう)が反対し、後者については国・民が自分たちの外交方針と異なる等としていちゃもんを付けたのである。連合も国・民も、この協定が共産党の強い影響下で作られたのではないかと勘ぐっているということもあるのであろう。

 こうした動きを見て羽田と立・民県連は急きょ旧民進党系の政治団体「新政信州」(つまり立・民系だけではなく国・民系も含む)と政治合意文書を交わし連合長野とも確認書を交わすなどして上書きし、協定はそのままに推薦を確保しようとしたのである。「原発ゼロ」をめぐっては、枝野があわてて「ゴールは100年単位だ」(!?)などと表明する一幕もあり、これで決着がつくかと思われたのだが、外交政策をめぐっては国・民内で異論がくすぶり、結局、羽田は国・民ともその「政策や綱領に沿った活動をしていく」旨の書面を提出し、何とか推薦維持を取り付けたのである。五者協定のこの部分は「韓国と北朝鮮との不正常な関係を是正するために、日米同盟に偏った外交を是正し」とも書かれていて、いかにも拙速といった感もいなめない。 そもそも立・民は、綱領では「日米同盟を基軸とする」と謳っているのだから立・民本部と県連では外交方針が違うということか? 「日米同盟を基軸とする」といえばそれは自民とさして変わりないということであり、国・民や立・民の反動性を暴露しているが、協定が「日米同盟に偏らない」と謳ったとしてもこれも淡い幻想に包まれてはいても実質は前者とそう異なるものではない。いずれにしても今回の〝野党共闘〟はこのようなことでセクト的な対立としこりを残しての選挙戦となったのである。

 さて、対する小松であるが、彼は前回選挙の時もそうであったが、政治を志したのは「医学の進歩や医師個人の力だけでは命は守れない、政治の力が必要だと実感したからだ」などといい、今回は特に「コロナの終息のために医療と政治を繋ぐ」などといっている。しかし、ではなぜ自民党から立候補するのか? コロナ対策でも安倍のようにオリンピックの開催にこだわっていて慌ててトンチンカンな政策(全国一斉休校、等)を出してみたり、また菅になってもGoToキャンペーンで対策が後手に回り、感染を広げてきた犯人は自民党政権そのものではないのか?

 今回は、県内医療関係者(医師連合、歯科医師連合、看護連合)も小松応援で積極的に動いているようだが、政権政党と結びつくのは、コロナ禍を本当に改善するためというより、職業的な打算からではないのか。

 他方、羽田も「兄雄一郎がコロナで倒れたのはPCR検査を速く受けられなかったためだ。検査の充実に努める」などと、さながら弔い合戦の様相も呈している。また、「父(孜)の遺志を継ぎ政権交代できる政治勢力作りに尽力する」などと言っていて事実上政策の中身は二の次なのである。   (長野 YS)

※トップページとブログに訂正とお詫びを掲載しましたが本紙の紙版では、他に「信州義人の会」の荒井氏が立候補しているように書かれていますが、氏は告示日当日になって立候補を取りやめたので、このWeb版ではその部分を削除し訂正したものを掲載しました。
   

   
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