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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
  お申し込みは、全国社研社
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  メールでの申し込みも可能です。

まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1401号 2021年4月25日
【一面トップ】《メーデーアッピール》
  腐った菅ブルジョア政権打倒!――「労働の解放された」社会を実現しよう
【1面サブ】菅に「人権」を語る資格などない
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】 対中国で日米同盟強化を謳う――菅、バイデン初の首脳会談
【二面サブ】労資一体化深めるトヨタ――豊田章男の宣教師=堕落した労組幹部

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】《メーデーアッピール》

腐った菅ブルジョア政権打倒!
「労働の解放された」社会を実現しよう

 安倍政権の「大番頭」であった菅が横滑りで後釜に座った。だが、菅は安倍と同じく非科学的で、大衆扇動に長け、政治経済を平気で私物化する極反動の政治屋である。そもそも8年前、異次元の量的緩和策を引っ提げて登場した安倍(菅)政権は、非科学的な経済学ゆえに頓挫し、財政膨張策に舵を切った。その手始めが「消費増税転用」による「幼保無償化」であったが、選挙後に待機児童増大や保育園料値上げなどが起こり、若い親から「騙された」と批判が相次いだ。こうして安倍は数々の不正事件でも追及され退場を余儀なくされたが、菅新政権とは、安倍の首をすげ替えただけの大愚な政権なのだ。

◇コロナの科学的対策できず、しわ寄せを労働者に転嫁

 菅新政権にとって、コロナ対策を行うことが最大の任務である。

 だが、菅政権は第3次補正予算を追加し、20年度の国債(借金)を100兆円超にまで膨張させ、21年度当初予算も過去最大の106兆円を組みながら、資本による解雇や雇止めによって会社の寮から追い出され、失業保険もなく、生活に困窮する労働者を抜本的に救済しなかったし、今もしていない。

 そればかりか、コロナの特性や変異を正しく分析し、感染拡大を封じ込める抜本的な対策が全くできなかった。しかも、我々や感染症専門家が警告したにもかかわらず、菅は国家予算を使ってまで「GoToキャンペーン」を行い、結局コロナ第3波を招き入れた。その後の対策もいい加減なために変異株を中心とした第4波を招き、死者や重症者を増やし続けている。

 菅は「キャンペーン」に象徴されるように、非科学的な打算と景気第一という政治判断によって、現在の甚大な被害=人災を作り出している。そして、第4波が全国的に広がっているにも関わらず、国家主義高揚のため、政権支持拡大のためにオリンピックを開催しようとしている。

 労働者はこうした無責任極まる菅政権を直ちに打倒する烽火を上げなければならない。

◇非正規の解雇は 100万人、正規の削減も続く

 コロナ禍による景気後退を口実に、労働者の解雇が大手を振って行われている。実際20年1月と20年夏の「労働力調査」を比較すると、正規労働者数は変わらないが非正規の方は約100万人も減っていたことが分かっている。

 当時、政府は「コロナ失職6万人」(最近は10万人)と発表し、マスコミもこれを鵜呑みにして報道していたが、この6万人は労働局の「聞き取り」や職業安定所による「相談・報告書などを基に把握」した数字に過ぎなかったのである。

 政府はコロナによる労働者の解雇は僅かであるかに誤魔化していたが、こうした態度はこれまでの財務省や厚労省の数字隠し・資料隠しと同じであり、きわめて悪質である。

 また資本による解雇は非正規だけではない。ソニーをはじめ黒字の大企業においても、正規労働者の「希望退職」を募る動きが活発になっている。これらの大企業は、IT化や脱炭素化の国際的な先陣争いのために、本社の縮小や中堅労働者の解雇を通じて費用削減を図ろうとしている。いわゆる資本の都合による資本の利潤のための雇用調整というやつだ。

 もはや、正規だからと安閑とはしていられない時代になっていることを労働者は自覚し、資本の攻勢を迎え撃たなければならない。

◇ジョブ型雇用への転換急ぐ企業

 昨年、経団連会長を擁する日立がジョブ型雇用の採用を発表し、資生堂、富士通などの企業が続々とこれに続いている。長年続けてきた日本型雇用を変更する背後には、大企業の危機意識がある。既に欧米ではジョブ型雇用が主流であり、新卒一括採用や終身雇用の日本型制度では太刀打ちできなくなっているとして、経団連と政府の音頭取りでジョブ型雇用への転換を急いでいる。

 ジョブ型雇用とは、企業が求める特定のジョブ(職種、職務)に応じて働く制度である。企業がジョブに求めるのは、言わば「即戦力」であり、専門職務の「スキルをもつ人材」である。

 採用後に教育し適性を見て配属先を決めてきた従来の方法では、もはや国際競争に勝てない、労働生産性がOECD36カ国中21位と低迷する現状から脱却できないと、経団連や政府は嘆くのである。

 このジョブ型雇用の採用によって、企業の労働者管理は質的に変わる可能性がある。

 つまり、企業は専門職としての「人材」を求めて採用したのだから、専門性が無いと見なせば(職種が無くなれば)解雇が合法的にできるようになるからである。現在、黒字の大企業では解雇は合法とされず、それゆえに「希望退職」を募り、または強要して退職させているが、こんな面倒は不要になると歓迎するのである。

◇「労働力の価値」に基づく賃金要求の限界

 他方、ジョブ型雇用によって、職種別・産別による労働組合への再編が可能になり、賃上げ闘争が有利になり、高賃金獲得によって「資本の私的労働としての性格を緩和させる」かに幻想を煽る学者がいる。こうした学者に賛同する労組もあるようだが、こんな姿勢では、大企業や政府が繰り出してくる労働者攻撃と闘えない。

 さらにまた、ジョブ型雇用により同一職種内の賃金差別が解消されうるかに言うが、それでは別職種や別職務との賃金格差や差別を容認するのか。つまり彼らは、職種や職務の違いによる「労働力の価値」の大きさの違いはやむを得ないとするのである。

 労働者の賃金は、労働力を再生産するために必要な労働時間であり、この労働時間は労働者が生活し再び労働できるために必要な消費手段(衣食住)を生産する労働時間とされる。従って、この賃金に含まれる労働時間は、労働者が企業(資本)のもとで実際に行う総労働ではない。賃金は総労働の半分以下であり、半分以上を企業(資本)によって搾取されている。

 こうした搾取された労働の残りを賃金として分配されるから、資本主義が成り立ち、企業は莫大な利潤(営業利益)を生み出すことができる。

 ところが、ジョブ型雇用を歓迎する学者(や労組)は、「労働力の価値」規定の中に専門的な技術・学問を身に着けるための教育費や養成費を含めることを容認するし、せざるを得ない。

 なぜなら、職種や職務が違うならば、高度な技術・学問の教育費や養成費があることを認め、「労働力の価値」は違う(複雑労働力の価値は単純労働力の価値より大きい)ことを肯定するからである。

◇労働時間による分配の社会を

 つまり彼らは自覚していないかも知れないが、結果的には、高級労働者や管理職者の利益を代弁する。こうして「労働力の価値」に基づく賃金は、ずっと昔から、職種別賃金とか職務給重視の賃金理論として、また安倍や菅らの「同一労働同一賃金」にも通じるブルジョア的な理屈の基礎となってきた。

 しかしである。我々労働者は、将来の「労働の解放された」社会では、子供の養育や教育費、さらに高度な技術を習熟する労働育成費などは社会化され、個人的な負担の違いが一掃されることを知っている。

 従って、この社会では、「労働力の価値」に基づく分配の必要はなく、人々は社会的生産に参加した「労働時間」に応じて、労働生産物を自由に手にすることが出来るのであり、それゆえに、資本主義のもとでは当然とされる搾取と賃金差別は一掃されるのである。

 こうした「労働の解放された」社会を目指して闘うことが、今や全ての労働者にとって一番重要なことである。メーデーに当り、このことを強調する。   (W)

   

【1面サブ】

菅に「人権」を語る資格などない

 菅首相は先日の日米首脳会談後共同声明で、「香港や新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念」を表明したが、「人権状況への深刻な懸念」が日本国内に広がっていることには頬かむりしている。

 コロナ禍において、倒産や雇止め、整理解雇によって路傍に投げ出される労働者の中で、外国人労働者とりわけ実質的に無権利で弱い立場にある技能実習生(職場移転には条件があって自由が認められず、経営者との交渉権も団結権もない)の悲惨な実態を見よ。

 建設現場や介護での労働力不足だからと日本に連れて来ておいて、「技術の習得」どころか、無責任に、非人間的に扱い、働かせ、搾取し、苦しめ、経済困難がくれば、企業も政府も、外国人労働者を経営の〝安全弁〟として扱っているではないか。

 我々労働者党は、『海つばめ』1393号(20年12月27日刊)において、「奴隷ビジネスの横行」を指弾し、「技能実習制度を直ちに廃止せよ」と要求した。

 技能実習生を〝転売〟するような人材派遣会社やブローカーの問題を取り上げ、技能実習生を保護すべき管理団体も「裏契約」でカネ儲けしていた実態も暴露した。

 「報酬を伴う実習を行う」ということで、技能実習生を労働者扱いせず、実態は低賃金、悪条件で、ブルジョアの「人権」ばかりがまかり通っている。

 19年の「働き改革」の一環として、単純労働者を含めて、外国人労働者の受容を一応確認しながら、しかし安倍政権のやったことは、移民政策についての原則は棚上げにして、「開国」をいい加減に、場当たり的に認めたのだった。

 安倍政治を継承した菅もまた、貧しい、弱い立場にある外国人労働者を非人間的に扱い、苛酷に搾取し、企業が外国人労働者を奴隷同然に扱うのを見て見ぬふりをするといった、野蛮で、恥知らずな態度である。「人権」の仮面を剥げ!   (岩)


       

【飛耳長目】

★ミャンマー軍政権の労働者や市民・農民に対する弾圧が続いている。「殺虫剤を撒いてでも雑草を根絶せよ」という軍令一下、既に少なくとも700人以上が殺された。日本政府は口先ではそれを非難するが、大資本の権益のために見て見ぬふりをしている★それもそのはず、ミャンマーへは丸紅・三菱・住友商事やスズキ・トヨタ、NTT・KDDI、キリン・イオン・クボタ、三菱UFJなど433社の大小の資本が進出し(2005年比855%増)、今や中国やシンガポールなどと「東南アジア最後の大市場」を巡って激しく争っている★ロヒンギャ族虐殺問題等で欧米が経済制裁を進める一方、中国は「一帯一路」の帝国主義政策の重要拠点と位置づけ、『内政不干渉』(便利な言い訳だ!)と詭弁を弄しながら軍政権を後押し、ロシアは盛んに軍への武器輸出や軍事協力を進めるなど、ミャンマーの闘う労働者・市民は孤立しているかのようである★確かにスーチーらへの民政移行は、いくらかの政治的自由をもたらし、多少の経済成長も見られるが(GDP6%増)、軍幹部の特権は温存する一方、物価は6%も高騰、労働者の賃金は変わらず僅か1万円程(中国の八分の一)と生活苦は満々と充満、今回怒りの大爆発となっている。 (是)

   

【2面トップ】

対中国で日米同盟強化を謳う
   菅、バイデン初の首脳会談

 菅首相と米国のバイデン大統領は16日、初めての対面での会談を行い、「新時代におけるグローバル・パートナーシップ」と題する共同声明を発表した。共同声明は、「日米同盟の一層の強化」を目指すとし、中国が軍事的圧力を強めつつある「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と明記した。日米共同声明で台湾問題に触れたのは、1969年の佐藤首相とニクソン大統領の共同声明以来、約50年ぶりであり、日本は対中対決を謳うバイデン戦略に加担し軍備強化を約束するなど、東アジアの緊張はさらに高まろうとしている。

◇軍事、経済全領域にわたる同盟強化

 会談後の共同記者会見で、菅首相は「アメリカは日本の最良の友人であり、日米同盟はインド太平洋地域、そして世界の平和、安全と繁栄の礎としてその役割を果たしてきたが、今日の地域情勢や厳しい安全保障環境を背景に、同盟の重要性はかつてなく高まっている」と日米同盟の重要性を改めて確認し、その上に立って、「さらに地域のために取り組むことで一致した」と述べた。これは、軍事的、経済的台頭著しい中国を念頭に置いた発言である。

 共同声明は、日米同盟を一層強化するために日本及び米国はそれぞれ防衛力を一層強化するとして、日本は「自らの防衛力強化する」こと、具体的には「在日米軍の安定的及び持続的駐留確保のために在日米軍の駐留経費負担」を引き続き行うこと、空母艦載機着陸訓練施設として毛馬島施設の建設、辺野古基地建設を行うことを挙げている。

 一方米国は「核を含むあらゆる種類の能力を用いた日米条約の下での日本の防衛」を支持するとして、尖閣諸島が日米安保の適用範囲であることを確認したと明記した。

 そして軍事協力は、「サイバー及び宇宙を含むすべての領域」にまで及んでいる。

 バイデンは「技術は専制国家ではなく、米国と日本が共有しているような民主国家による規範によって管理されなくてはならない」と述べたが、「安全保障」の協力は軍事分野だけでなく、経済、保健領域までも及び生命科学およびバイオテクノロジー、人工知能(AI)、量子科学などの研究及び技術開発にまでも及んでいる。最先端技術は軍事的優位を確保する重要な分野であり、また経済、医療も国家的優位を確保するために欠かせないからだ。

 軍事、経済にわたる日米協力は、中国を抑え込み、米国の優位を維持、確保するというバイデンの対中戦略に沿うものであり、日本の米国依存を深化させることである。

◇バイデンの台湾政策に追随

 超大国として米国の世界覇権を脅かす存在に成長した中国に対して、バイデンは〝自由主義〟諸国との提携を強めて対抗し、国際社会の盟主としての地位を維持しようとしている。「アメリカ・ファースト」、「米中冷戦」を唱えたトランプの政策は、後退しつつある米国独占ブルジョアジーの危機意識の表れであったが、バイデンもこうした面ではトランプ政策を受け継いでいる。

 最近、中国は「核心的利益」として台湾周辺に艦艇を巡回させ頻繁に戦闘機を侵入させるなど軍事的圧力を強めているが、これについて米インド太平洋軍司令官は、中国は台湾に関して6年以内に武力を行使する危険性が迫っていると議会で証言した。

 共同声明は「東シナ海、南シナ海における中国による一方的な現状変更、海洋権益の主張に反対」を表明、台湾についても「台湾海峡の平和と安定の重要性」を謳った。

 日本側として当初、「自由で開かれたインド太平洋」構想実現を目指すことを強調する計画であったが、バイデンは日米同盟の強化を主張する一方、さらに強い調子で対中強硬姿勢を示したため、台湾条項が入ったとされている。(「朝日」4・18)。

 日本が日米共同声明で台湾に触れたのは、約半世紀ぶり。世界が米・ソ二大大国を中心に分裂し、対立しあっていた「東西冷戦」の時代、1969年の佐藤、ニクソン会談では、米ソの緊張が高まる中、「台湾地域の平和と安全の維持も日本の安全にとって極めて重要」との「共同声明」が出された(その後、72年の中国との国交回復で、台湾とは外交関係を絶った)。今回の「声明」は、台湾を囲い込むために武器、経済援助を活発化しているバイデン政策に与する日本の立場を明らかにした。

 中国は、「共同声明」について、「台湾は不可分の中国の領土だ。中国は一切の必要な措置をとり、国家の安全、発展の利益を守る」と強く反発している。日本はこれまで、中国政府の香港や新彊ウイグル自治区への弾圧に対して反対を表明しつつも、米国とは異なって政治的、経済的制裁を行ってこなかった。日本にとって中国が第一の貿易相手国だからである。日本がバイデン戦略に与することは、米国の包囲の戦略の最前線に立つことであり、緊張をさらに激化させるだろう。

◇「自由、民主主義、人権」の欺瞞

 「共同声明」は「自由、民主主義、人権、法の支配、国際法、多国間主義、自由で公正な経済秩序を含む普遍的価値及び共通の原則に対するコミットメントが両国を結びつけている」と日米同盟強化の正当性を訴えている。

 会談後、菅は米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)のオンラインで講演し、「民主主義、人権、法の支配などの普遍的価値について譲歩する考えはない」と述べ21世紀を「民主主義と専制主義勢力との闘い」とするバイデンの政策と歩調を合わせる日本の立場を訴えた。

 だが、バイデン、菅が香港や新彊ウイグルでの中国の人民弾圧、中国の専制政治を非難したとしても、彼らの政治が労働者、人民の「民主主義」を保障するものではない。

 バイデンは「国家安全保障戦略の暫定指針」として、中国を「経済、外交、軍事、技術力を複合させ、安定した開放的な国際秩序に絶えず挑戦する唯一の競争相手」とみなし、そのうえで、「私たちの利益を促進し、価値を反映す新しい国際秩序規範や合意をつくるのは中国ではなく米国」だと宣言しているように、バイデンが中国を激しく非難しているのは、労働者、人民抑圧の専制主義と闘うというよりも、米国の国際覇権を脅かす存在になった中国の進出を押さえ、米国が世界の盟主として、国際社会を仕切り、超大国として特権的地位を維持するためである。

 労働者、人民を抑圧しているのは中国ばかりではなく、米国もそうである。米国は専制政治のサウジアラビアを支援しているし、アフガンをはじめイラク、リビアに軍隊を派遣し、多くの人民を殺傷し、生活を破壊するなど計り知れない損害を与えてきた。バイデンは、アフガンから20年ぶりに軍隊を撤退するというが、それは軍事介入を反省したためではなく、膨大な戦費に耐えきれず、アフガン撤退で浮く戦費を、中国との対決のために、手薄になっているアジア地域での軍備充実や競争が激化している新技術の研究、開発に充てるためというのである。

 そして国会での多数議席を頼みに強権政治を進めてきた安倍政治を受け継いだ菅政権は、バイデン米国を第一の友好国とし、同盟関係を一層強め、軍備を増強しようとしているのである。

 バイデンや菅は中国に対して、力によって国際秩序を変えようとし平和を乱していると非難している。しかし、平和を乱しているのは中国ばかりでなく、中国に対抗して軍備を拡張しようとしている米国や日本も同じである。彼らは資本の利益、国家利益を確保、拡大するために争っているのだ。帝国主義国家が存在する限り平和はない。  (T)


【2面サブ】

労資一体化深めるトヨタ
豊田章男の宣教師=堕落した労組幹部

 日本の春闘相場をリードしてきたトヨタは19年以降、ベアを非公表とし春闘からこっそりと姿を隠した。

 トヨタの「春闘」の結果は賃上げ月額9200円アップ、賞与は年間6・5ヶ月と組合の要求に満額回答で会社側は応じた。2月に一回目の労使交渉が行われ組合から「トヨタの持続的成長に向けて、・・・①働きがいや能力の、最大発揮を阻害する全社的課題 ②自動車産業のさらなる発展に貢献するため、オールトヨタの力を最大化し、さらに取り組むべきこと」「厳しい環境下でも働き続けられていることへの感謝を労使で共有」。会社側は「賃金・賞与について、会社と労働組合が対立軸で闘うことが目的ではない。組合員一人ひとりの能力を最大限に活かし、オールトヨタの競争力を最大化するため、賃金・賞与に限らず本音で話し合うという特徴がある」。

 昨今のトヨタにおいては、賃上げや賞与などをめぐって労使が対立することはほとんどない。トヨタの経営陣が強調するように、賃金や賞与で対立し争わないのは、トヨタがケタ違いに儲けているからである。

 21年度もコロナ禍で未曾有の危機に見舞われたが、当初予想をはるかに上回る2・0兆円の利益が予想されている。内部留保は24兆円と豊富な資本と競争力が、賃金や賞与で組合の要求を受け入れる背景である。

 労使交渉で盛んに「家族の会話」が繰り返され、「『豊田綱領』『労使宣言』『円錐形』というトヨタの原点を確認し、現場の声に耳を傾け、労使ともに、・・今日という日にたどり着いたと思います。労使双方が、『会社は従業員の幸せを願い、組合は会社の発展を考える』この共通の基盤に立ち、・・・」(豊田章男)と「上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙(あ)ぐべし」を謳う「豊田綱領」や「生産の向上を通じて企業の繁栄と、労働条件の維持改善を図る」(「労使宣言」)を繰り返す社長の豊田章男は、「デジタル化」と「カーボンニュートラル」の「2本柱において、トヨタの労使が『自動車産業のリード役』を務める」「日本の未来」の為、労使一体となって「デジタル化」「カーボンニュートラル」に向けて、「成り行きの10年後と、戦い続けて迎える、10年後は、全く違う」と過激な「戦闘継続宣言」で春闘は幕を閉じた。

    2

 自動車産業は「100年に一度の変革期」の中で「生きるか死ぬかの戦い」に明け暮れている。

 脱炭素社会へ急激に各国が舵を切った理由は、地球温暖化=環境問題が人類が安定的に生存していく上で無視できない問題になり、そして環境問題を解決していく技術開発やエネルギー開発が資本にとって利益を阻害するのではなく逆に、技術的なブレークスルーを生み出し、競争の勝者が独占的に利益を占有することができるからである。自動車産業では電動車の勝者を決める下克上の戦いが、政府を巻き込みながら業界再編=資本提携、業務提携を繰り返しながら戦われている。

    3

 トヨタは成果賃金制度を全面的に導入しようとしている。これまでの職能基準給+職能個人給の賃金体系から全面的に職能個人給に一本化し、評価も事技職(事務、技術職)はこれまでの4段階からA・B・C・D1・D2・Eまでの6段階に細分化し、現場はA~Dまでの4段階に変わりはないが、事務職のD2や現場のD評価は昇給ゼロで配置転換やリストラ対象者扱いに等しい。会社に全面的に協力し、QCサークルをはじめとする会社行事や、カイゼン活動に自発的、積極的に取り組むことがA評価を受ける踏み絵である。

 成果賃金制度を導入したトヨタ労組は昨年の11月に、選挙での推薦候補に政権与党の自民・公明の候補者を追加する方針を発表した。賃金制度で差別と分断を持ち込み会社側に屈服した。政治では自民や公明の候補者を推薦することによって、自公政権との闘いも放棄した。

 リーマンショックや大規模リコール、東日本大震災、コロナ禍を乗り越えて世界最強の自動車メーカーに上り詰めた豊田章男は、トヨタイズムの教祖として君臨し、豊田章男に追従する労組幹部はトヨタイズムを拡散し実践する宣教師の役割を果たそうとしている。

    4

 日本から労働運動の息吹が消えかかってから長い年月が経過した。労使協調の連合が発足し、会社と馴れ合うことが組合運動であるかの状況を呈している。トヨタが賃上げや賞与で対立することなく満額回答を行うのは、好調な業績を支えるトヨタイズムに絡め取られた宣教師=労組幹部を養育するためであり、イズムや精神的結びつきによる関係は、金銭的な関係よりも強固でさえある。

 資本家が繰り返す「家族の話し合い」や「共通の立場」は、会社に滅私奉仕を強要する、都合の良い言葉でしかなく断固拒否し、搾取の廃絶=労働の解放を掲げて共に闘おう!  (愛知 古川)

   

   
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