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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
  お申し込みは、全国社研社
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1407号 2021年7月25日
【一面トップ】 途方もない愚行――非常事態宣言下、五輪を強行
【1面サブ】 政綱無しの衆院選野党共闘――都議選勝利に酔いしれてバーター取引へ
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】 リニアは既に神風特攻隊――JRと政府の見果てぬ夢
【お知らせ】 

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

途方もない愚行
非常事態宣言下、五輪を強行

 新型コロナ非常事態宣言下の東京はじめ首都圏、北海道では無観客での五輪が始まった。非事態宣言下でさらなる感染拡大が予想され、無観客を余儀なくされても強行される五輪とは一体なにか、そして誰のためか。東京五輪は、日本政府、IOC(オリンピック委員会)による「愚行」として五輪史上に記録されるだろう。

◇無為無策に終始

 新型コロナによる開催延期が決まり、政府は「復興五輪」の看板を「人類がコロナに打ち勝った証」(安倍首相)と付け替えてから1年4カ月。東京五輪は、4度目の緊急事態宣言下の開催で、目指した「証」は「幻」となった。

 この間、政府は「人類が困難に直面する中、世界が力を合わせてこの難局を乗り越えていくことを発信する機会」(菅首相)と言いながら、コロナに真剣に立ち向かおうとしなかった。欧米で猛威を振るっていたコロナ感染がまだ日本をはじめアジアでは本格的でなかった時、「アジア人はかかりにくいのでは」(麻生財務相)という根拠のない楽観論を振りまき対応を怠ってきたのである。そして、いざ感染が波及してきても、「三密を避けよ」ともっぱら国民の〝自助〟=自粛を唱えるばかりで、徹底したPCR検査・医療体制の整備に取り組んでこなかった。

 その一方では、昨年10月には、2・7兆円もの税金をつぎ込んだ地域経済振興と称する「GoTo」キャンペーンを前倒しで実施し、感染拡大を促進したのである。

 政府の無為無策、場当たり的対応への批判に対して菅政権は、「国民の安心と安全」という決まり文句を繰り返すのみで、何ら具体的な措置を取ろうとしてこなかった。そのツケが4度目の緊急事態宣言である。

 世界に比べてワクチン接種が遅れてきた中、最近菅はワクチン接種が進めば、感染者はずっと少なくなるといって、「1日100万回」を掲げ、接種は世界で最速とそのスピードぶりをアピールしている。だが、5月からワクチン接種を始めた米国は既に人口の5割以上が少なくとも1回の接種を終え、昨年末接種を始めた英国も6割以上が1回の接種を終えている。これに対して日本は3割程度にすぎず、G7の中では最下位に沈んでいる。今更になって菅は「1日100万回」の号令を発したが、接種の具体的準備は整わず空回りするばかりである。

◇新たな感染の危険

 こうした政府の無為、無策こそが、事実上第5波感染への突入という事態を招いたのである。現在では、デルタ株というより感染力の高いコロナが発生し、拡大の危険性は高まっている。五輪開催は新たなより強力なコロナ株が発生し、東京株といったコロナ株が全世界にまき散らされ、深刻な影響をもたらしかねない。専門医からは「(五輪開催は)普通なら考えられない」(感染症対策分科会尾身会長)との意見が出された。にもかかわらず、それを無視して菅とIOCは五輪開催を強行したのである。

 菅にとって五輪開催が第1でコロナによる働く人々の苦しみ、困難はどうでもいいのだ。教育現場では、遠足や学芸会など学校行事が中止となり、クラブ活動が停止され、まともな学習もできない異常な状況が続いている。働く現場では、コロナによって7月8日の段階で8万余が解雇や雇用止めになった(厚労省統計)。特に大きな影響を被っているのは非正規労働者で、昨年11月時点の総務省調査によれば、前年同月比で62万人(内女性は37万人)も減少している。病院では、ベッドも人手もたりず、医者や看護師は休む間もない治療・看護を強いられている。

 こうした状況をまず改善すること、職もなく、生活に苦しんでいる労働者を支援すること、コロナ収束のための体制を整えることこそが、緊急に政府のやるべきことではないのか。

 だが菅政権にはワクチン接種が進めば何とかなるという確たる根拠もない(英国などではワクチン接種者が感染している)ことを言いながら、五輪開催を強行したのである。

彼らは、最後の最後まで観客ありの開催にこだわった。しかし、感染が止まず、緊急事態宣言(や蔓延防止措置)を出さざるを得なくなって、一部「無観客」方式にすることになった。「無観客」といっても、海外からの約10万人の大会関係者は別である。東京五輪が世界中に新たな株のコロナのパンデミックをもたらさないという保証はない。実際に開会を前にしてすでに少なからずの、選手はじめ大会関係者に感染者・濃厚接触者が表れている。

◇国家、資本のための五輪

 政府、IOCにとって、五輪開催は前提である。ヒトラー・ナチスがファシズム体制強化に五輪を利用した例を見るまでもなく、「世界の平和と友好の祭典」というのは看板に過ぎない。五輪は国家にとっては、国民に愛国主義、民族主義を煽り、支配を強化する手段であり、資本や五輪貴族=IOCにとってはカネ儲けのための世界的な一大「スポーツ・イベント」なのである。

 政府は五輪開催による経済波及効果は32兆円、194万人の雇用が生まれると期待を煽った。五輪には建設、交通、観光などの資本、そして五輪を世界に発信するTVなどマスメディア関連資本が群がった。

 当初の約7300億の経費はたちまち4倍の3兆余にも膨れ上がり(その負担は労働者の血と膏の結晶である税金)、「世界一コンパクト」で「カネのかからない」五輪との謳い文句は、五輪招致のための空約束であることが暴露された。菅政権、IOC、資本にとってコロナ収束よりも五輪開催は優先されるべきものなのである。

 菅は、「(政府に対しての)不満があっても五輪が始まれば雰囲気は変わる」とうそぶいている。全く国民をナメ切った言いぐさであり、労働者・働く者の苦しみや心情を少しも意に介さない(理解できない)傲慢ぶりである。

 多くの犠牲を顧みず、五輪開催を強行した菅政権を断固糾弾し、打倒に向けて労働者の闘いを発展させていこう。 (T)

   

【1面サブ】

政綱無しの衆院選野党共闘

都議選勝利に酔いしれてバーター取引へ

 去る7月4日投開票の都議選で、立・民と共産は1、2人区の22選挙区で候補を一本化し、立・民は13選挙区で勝利し、前回の8議席から15議席に増やした。共産も前回の18議席から1議席増やすことに成功。この効果に酔いしれたのか、立・民と共産は次期衆院選でも密かにバーター取引を策動している。

◇連合と国・民は共産との共闘を拒否

 立・民と共産の都議選での選挙協力に反発したのは、連合と国・民である。

 前回の17年衆院選では、立・民と国・民が競合した選挙区があり、連合傘下の組合は両方を支援する股裂き状態になった。それを避けたいと連合は、次期選挙では一本化するために3者合意の政策協定を呼び掛けていた。

 だが、去る15日に行われた3者による政策協定は、共産との選挙協力に強く反対する連合、国・民と共産の協力を得たい立・民との間で折り合いが付かず、流産した。しかし、それで決裂とするわけにもいかず、連合の中央執行委員会に枝野と玉木が出席して、連合と立・民、連合と国・民が別々に政策協定に署名し、連合を接着剤にして両党は「連携・協力し、一丸になって取り組む」ことになった。

 この2本の政策協定の中身は同じだ。出来上がった文書には「左右の全体主義を排し、健全な民主主義の再興を推進する」という一文が入った。これを玉木は記者会見で「左右の全体主義とは共産主義・共産党」のことだとして反共産色をより鮮明にしたが、枝野は「(左右の全体主義は)どこか具体的に特定しているという理解はしていない」とお茶を濁した。

 昨年(20年)、玉木は国・民を分党し、一部の党員が立・民に行くことを認めたが、玉木は立・民と合流せずに国・民に残る道を選び、さらに衆参の統一会派から離脱したように、立・民とは一線を画している。それは、玉木らが原発容認であり、反「共産主義」であり、半自民であるからだ(立・民も原発に曖昧であり、反共であり、保守を自認しているが)。

 ところが、立・民が先の参院長野選挙区補選に加えて、今回の都議選でも共産と共闘したことで、双方にさらに大きな亀裂が入り、今回の分裂政策協定になったのである。

◇バーター取引狙う志位や小池

 この秋に予定されている総選挙は、既に前哨戦さながらの様相となっている。立・民は約210選挙区で候補者を擁立するが、70弱で共産と競合する。そのため、都議選にあやかって、接戦区では共産に降りてもらい、立・民の1本化を図りたい考えだ。だが、その見返りを共産に求められているが、連合と国・民との間で結んだ政策協定がある手前、表立った取引をすることができない。共産が自主的に候補者を降ろしてくれるなら立・民としてはこの上なく、そうでないなら、闇取引して波立てずにやるしかない。

 他方、共産の小池は12日、突然に、衆院東京2区から立候補予定の新人・細野真理を比例代表東京ブロックに転出させると発表したのだ。その結果、同2区から出る予定の立・民現職の松尾明弘(選挙区で落選したが立・民議員の辞職により繰り上げ当選)は共産との競合を回避できることになった。だが、それは立・民の松尾が地元の文京区で共産候補を応援し、共産の都議候補がトップ当選したことの見返りであり、バーター取引であった。

 要するに、共産の「野党共闘」は政綱に基づく自公政権打倒の共闘でも、労働者のためでもなく、姑息な取引により浮利を得ようとするものである。

 だから、共産は自党の候補者を降ろして共闘したつもりでも、かつて桜井充を応援して当選させたが後に自民に鞍替えされたように、裏切られる破目になる。共産は再び三度同じ過ちを犯そうとしている。  (W)


       

【飛耳長目】

★静岡県熱海の土石流は甚大な被害をもたらした。130棟の家屋を押し流し、18人が死亡、11人が依然として行方不明だ。凄まじい土石流の状況をTVで観た人も多いことだろう。そして徐々にその原因が明らかに★今回、土石流の起きた伊豆山は熱海駅から2㎞行った海に面した温泉地として多くの民家や別荘が並び立つ風光明媚な所だ。市街地を見下ろす山の中腹に横幅200m、全高50m、10段の〝排水溝のない〟盛土が造られていた。本来そこは降雨が集まる谷であり、許可を出した市にも責任がある★まず盛土に溜まった降雨や地下水が噴き出し下部から崩壊、支えを失った上部も一気に崩落。流出量は5・5万立方m(盛土の97%)で、明らかに人災だ★盛土した不動産会社(小田原)はごろつき業者で、市の再三の勧告を無視し、産廃(プラごみ、建築廃材等)を含む残土を谷に積み上げ、最後は高額(10億?)で転売し、その後廃業。「許可はとってある。責任はない」とは呆れるが、買い取った別業者の「盛土の説明なく、知らなかった」も全くの嘘と判明★産廃残土の不法投棄や暴利な土地転がしの典型である。全ては金儲けのためで、後は野となれ山となれとは資本主義に固有の有り様だ。徹底して糾弾、処罰されねばならない。 (是)

   

【2面トップ】

リニアは既に神風特攻隊
   JRと政府の見果てぬ夢

 箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川。その大井川の水資源をめぐってJR東海と静岡県が激しく対立し、リニア中央新幹線(以後リニア)の南アルプストンネル工事が頓挫している。反対の中心的存在が川勝知事と大井川流域8市2町の首長、市民団体等だ。6月20日に行われた県知事選では、立憲・国民・共産、連合の推薦を受けた現職川勝が、国交副大臣を辞して立候補した自民の岩井を大差で破り4選を果たした(95万対62万票、投票率53%、前回より6・5%増)。保守王国静岡で、県民の7割がトンネル工事への不安を訴える(県環境局アンケート)中で、川勝はこの問題を前面に押し出して勝利した。川勝のJR東海への歯に衣着せぬ言動も支持された要因のひとつであろう。まず川勝らが言う水と生態系の破壊の問題を検討してみよう。

◇大井川の水資源、生態系問題とは何か

 JR東海が2027年の開通を目指す〝品川―名古屋〟間のリニアは、静岡県の最北端の3千mの南アルプス赤石山脈の真ん中を突っ切って走る予定である。そこに地表からの最大深さ千四百m(東京スカイツリーの高さの2倍強)地点に、長さ25㎞のトンネルを貫通させる。しかしそこは大井川の源泉地であり、トンネル工事や貫通により、大量の地下湧水が溢れ出し、地下水の大幅減少、強いては大井川水量の減少、長期的には枯渇を招くと川勝らは訴える。それは十分にあり得る事ではある。また、トンネル工事に伴う残土5千7百万立方m(東京ドーム50杯分)は産業廃棄物として、発生元で処分することが義務づけられているが、新幹線建設時のように線路の盛土に再利用することはできない。何故ならリニアは品川―名古屋間285㎞のうち85%250㎞がトンネルであり、大部分は南アルプスの谷や沢筋に埋め立てるしかない。となれば、日本最後の秘境とも言われ、貴重な動植物の分布する南アルプス一帯は、ヤード建設、トンネル工事、残土、溢れ出す湧水、リニアの開通により大きく環境が破壊されることは言うまでも無いことであろう。盛土が自然の保水力を破壊し、いかに大規模な土石流を発生させるかは熱海の例を見れば十分であろう。

◇豊かな大井川の水資源とJR東海の言い分

 静岡県には大小の河川が駿河湾へと幾つも注いでいる。富士川、大井川、天竜川が三大河川と言われるが、その水源地のほとんどは南アルプスや富士山麓に起因する。大井川は静岡県の中部に位置し、その水は流域を潤し、農工業の発展や流域住民60万人の飲料水として古くから利用されてきた。

 特に大井川水系は伏流水が豊富で、どこからでも掘削すれば水が溢れ出し、住民に安価で(全国的に見ても水道料金は安い)美味い飲み水を提供してきた。水道をひねれば夏でも冷たい水が出る。この水を求めて、流域には工場が進出し、サッポロビールや日清食品、ネッスル、明治製菓などの食品、薬品のツムラやアステラス、中外、持田薬品、自動車のスズキをはじめ自動車部品や化学関連の工場が進出している。静岡茶や駿河湾の桜エビやシラスなどの特産品もその恩恵の内だ。

 我々はかってトンネル工事により水が枯渇した身近な例を知っている。旧国鉄時代、東海道本線を観光地・熱海へ直通させるために全長8㎞の丹那トンネル(当時最長)を掘った。この工事により湧水が溢れ出し、6億立法m(芦ノ湖3杯分)の地下水が失われ、酪農王国として栄えていた丹那盆地は水が涸れ果てた。国鉄は幾らかの補償で償ったが、失われた水は二度と戻ってくることはなかった。大井川流域がそうならないという保証はどこにもない。

 川勝らは、工事による大量の湧水を全て大井川に戻すよう要求している。湧水の多くが山梨県側に流出することが予想される中、JR東海はそれを確約せず(確約できない)、ポンプで6割程度は戻すと曖昧なままだ。社長の金子と川勝との直接会談も物別れに終わった。加えるに、国交省が主催する御用学者らの対策会議議事録をめぐり、座長発言が国交省により二度にわたり改ざんされるという不祥事も発生し(改ざんは彼等の得意だ)、対立はさらに深まっている。JR東海と国は、何としても、例え大井川の水が涸れようとも、貴重な動植物が失われようとも、一刻も早く工事を開始し開通にこぎ着けたいの一心である。

◇リニアの意味するところは何か

①高度経済成長、バブルの落し子

 東京オリンピックを2年後に控えた1962(昭37)年、高度経済成長のまっただ中、旧国鉄により研究がスターとした。その10年後には同鉄道技術研究所が浮上走行に成功、1979(昭54)年には無人走行で時速517㎞の世界最速を記録、翌年には走行試験を開始、こうしてリニアは生まれたのである。まさにオリンピツク景気に沸き、永遠に続くかに見えた経済成長やバブルの落し子である。それは鉄道資本と国が一体となった国威掲揚と技術の世界進出を目論んだものでもあった。現オリンピック同様に、立ち止まる勇気をもたず、一度決めたものは何が何でも、例え採算性がなくリスクを伴おうと押し通すという強い意志が垣間見える。それは投資した資本を回収し増殖させるまでは立ち止まることができない資本の本性だ。

 しかし、例えばヨーロッパと北米を結んだ超音速旅客機コンコルド(マッハ2、リニアの時速5倍)は20機程造られ、1975(昭50)年に就航したが、採算が取れず経営悪化、墜落事故もあり安全性も問われて廃止となった。リニアも同じ運命を辿るのであろうか。

②〝弾丸ライナー〟リニア建設の目的

 リニアは東京から大阪までを時速500㎞、67分で走り抜く。東海道新幹線のぞみより70分速く、16両編成で定員は千人、開業予定は2037年。さしずめ名古屋までを2027年までに完成させ、のぞみより50分速く40分で走行。途中駅は相模原(神奈川)、甲府(山梨)、飯田(長野)、中津(岐阜)の4駅で、1時間に一本が予定されている。まさに超高速弾丸ライナーである。建設総費用は約9兆円(第一期5兆円強、国からの借り入れ3兆円)で、全てJR東海の負担となっている。

 建設目的について、JR東海は思いつくままに実に多くを羅列しているが、最近では次の二点を強調している。一つは東海地震時の新幹線の代替え路線、二つ目は新幹線の老朽化に伴う長期改装工事のためである。まずこの子供騙しのような二つを検討してみよう。

 東海地震により静岡県をはじめ太平洋岸は壊滅的な被害が想定されている。海沿いを走る東海道新幹線や輸送の大動脈である東名高速道路は破壊され、ライフラインも遮断、津波がそれに追い打ちをかけるだろう。しかし、リニアとて無害であろうはずがない。静岡県の中央には糸魚川・富士構造線が走り、リニアルート上には多くの活断層が走っている。予定される南アルプストンネル内にさえも幾つかの活断層が見いだされる。これらが全く影響を受けないとは考えられず、しかもほとんどがトンネルである。先に記した丹那トンネル工事中に地震が起きて、2mも岩盤がずれるということもあった。

 リニアは中央制御室で制御されるので、運転手はおらず、3、4名の車掌がいるだけである。地震で無くとも何らかの故障や事故が起きた場合、トンネル内で停車する確率が高い。避難口は設置されるだろうが深さ1㎞の地底から1、2列になって歩いて地表に到達するには相当の時間を有し、千人もの乗客を山岳地帯の地表からどのように安全な場所に輸送するのか、線路を歩いて最寄りの駅へというわけにはいかないのである。また、災害時に必要なのは救援物資の輸送だが、リニアは全くの役立たずである。二つ目の新幹線の改装工事については、2014年から深夜を中心に本格的な工事が始っていると言っておけば十分であろう。

 JR東海の稼ぎ手は東海道新幹線である。JR東日本などと違い、それ以外の鉄道収益は小さい。言わば〝一本足打法〟だ。新幹線のこだまからのぞみにまで至る開発は限度を迎えている。社運をかけた(9兆円を見よ)新たな投資、新たな資本の増殖先、〝一本足〟からの脱却、それがリニアである。

③採算性はあるか? 将来は国民に大きなつけが

 JR東海の赤字が累積して、将来傾くことがあろうが我々の知ったことではない。しかし、それが料金の値上げや国税(我々の税)によって埋め合わせさせられることだけはご免だ。確かにリニアは走行時間を短縮させるがひとつ問題がある。それは治安のために航空機並みの事前時間を有することだ。少なくとも乗車の30、40分前には駅に着き、手荷物検査や身体検査を受ける。混雑時にはさらに時間を要するだろう。さらにリニアは既存の鉄道とは違うので、羽田空港や成田空港のような他線の乗り入れが出来ない。リニア駅に行くまで、またリニア名古屋駅から既存鉄道駅までの時間もまた要するのだ。こんなに面倒なら、のぞみの方が良いと考える乗客も出るだろう。

 JR東海による乗客需要は、27年に5%増、37年に15%増、リニアと新幹線とで最終26%増を見込んでいる。今日コロナ禍でリモートワーク(在宅勤務)が進み、新たな働き方が推奨され、出張数も減る中で果たしてこの予想は正しいのか。

 コロナ禍前のJR東海の経常利益は約6千億円弱である。リニア乗車料金は新幹線とさほど変わらないので(名古屋まで700円増)、結局は現新幹線の乗客をリニアと東海道新幹線とに振り分けるというに過ぎない。多少飛行機利用者がリニアに回るとしても大幅な乗客増や売上げ増は望めないのだ。これでは9兆円の資金の回収さえおぼつかない。

④リニア技術の海外輸出はあるか

 2013(平25)年、安倍はNY証券取引所でのスピーチで声高らかに宣言した。「(リニアは)『夢の技術』です。日本では東京名古屋間でリニアの開発に向けた準備を進めています。その前にまずリニアでボルチモアとワシントンを繋いでしまいましょう。私から既にオバマ大統領に提案しています。」しかし、この売り込みは頓挫した。航空と車社会のアメリカには受け入れられなかった。

 ドイツでもリニアの開発(トランスラビット計画)が進められたことがあった。しかし、利便性やコスト高、既存鉄道とのアクセスの悪さ等が問題化し、実験中の事故などもあり議会の反対にあって建設は中止された。今のところ、海外輸出の見通しはない。

 自動車資本に見られるように、脱炭素化の世界的な風潮の中で、スピード(時速300㎞の車等)より安全性や環境保全に舵取りをしていることに象徴されるように、これ以上の大幅なスピード化は必要ないと世界の鉄道資本は考えているようだ。リニアは新幹線の4倍以上の電気をくうが、むしろ多発する事故の中で、航空、鉄道、自動車資本は高速化より安全性を重視しているとも言えよう。

⑤鉄道の私的所有から社会的共有へ

 『夢の技術』リニアを含む科学技術の発展を我々は否定するものではない。しかし、JR東海に見られるように、己の利益や高速技術の独占が優先であり、安全性や環境対策を後回しにし、充分な事前調査をせず、満足な説明も無く、国の諮問機関をも利用して、何が何でも27年の開業をごり押しすることに我々は反対する。建設こそ全てであり、後は野となれ山となれという資本の本性に我々は反対するのである。

 鉄道の楽しみはなんと言っても友人や家族、乗り合わせた客との会話や車窓からの景色である。しかし、リニアはこういったものとは全くの無縁である。車窓の外は暗黒の世界、すなわちトンネルの壁面、まさに暗闇の超高速ライナーである。ただ人を箱物に詰めて、ベルトコンベア上を超特急で運ぶ機械のごとくである。故石田徹也氏(焼津市出身)の描く絵画そのものである。

 鉄道資本は全国の採算の合わぬ鉄道を切り捨て、廃線にし、目先の利益のみを追求してきた。鉄道格差もそこから生まれた。本来交通は公共機関であり、社会的なものである。しかし、資本主義では鉄道は私的所有に任され、航空や自動車と競合し合いながら高売上げ、高利潤を追求し、利便性や安全性は切り捨ててきた。交通の社会的共有のみがこうした矛盾を解決するだろう。そのためにも我々は奮闘する。JR東海よ、アルプスを突き抜け、そんなに急いでどこへ行く?  (静岡・K)


【お知らせ】

 労働者党は、国政選挙(衆院選及び参院選)を闘える力がつくまで立候補しないことにしています。労働者党ブログを参照してください。

   

   
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