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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1408号 2021年8月8日
【一面トップ】 単なる数字合わせに終始――エネルギー基本計画素案の危うさ
【1面サブ】 医療崩壊ごまかす政策転換――形骸化した緊急事態宣言や自宅療養
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】 法人課税で国際的新ルール――130ヵ国・地域、23年導入をめざす
【二面サブ】 税収過去最高のアダ花――実態隠す見かけの数字

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

単なる数字合わせに終始
エネルギー基本計画素案の危うさ

 資本主義的生産の登場と共に、工場から汚染水・汚染ガスが垂れ流され続け、その結果、自然から厳しいしっぺ返しを受けている。世界で豪雨や洪水などが毎年発生し、米国、カナダでは50℃の熱波に襲われ多くの死者が出る程だ。我々は既に、工場から排出される一切は「社会的再生産」の一環として完全に制御すること、つまり、今日の人間と自然との物質代謝を提案している(『海つばめ』1402号参照)。そこで、本号では菅政権が7月21日に公表したエネルギー基本計画の改定素案を検討し、先行するEUの動きも合わせて紹介する。

◇計画素案の中途半端さ

 50年の温室効果ガス排出「実質ゼロ」実現のために、30年の削減目標を13年の温室効果ガス排出量(14憶トン・CO2換算)を基準にして、46%削減すると謳う。

 46%削減目標は、従来の目標である23%から倍増したが、内閣が4月の段階で臭わせていた数字と同じある。

 ソニーやソフトバンクなど290団体以上の企業などのネットワーク「気候変動イニシアチィブ」(JCI)が「45%を超えて、50%削減を目指すことを求める」という書簡を菅らに送り(『朝日新聞』4月23日)、菅は「50%削減にチャレンジする」(JCI)と言っていたようだが、ファウルチップのような政府回答(素案)になった。

 しかも、政府素案には、脱炭素のための具体的な工程も産業資本との取り決めも無い。内外から取り組みの弱さを批判され、数字を上乗せしただけの、単なる数字合わせの作文である。

 なぜ、このような中途半端な代物になったのか。その理由の1つは、かつて90年代には世界トップであった日本の製造業の「炭素生産性」(CO2排出量当たりのGDP)は、火力が中心である米国の後塵を拝するまでになったことと関係する。

 つまり産業資本の効率化の一つである電力消費量の削減が進まず、また脱炭素設備の導入が大幅に遅れ、これから挽回するためには劇的な変革が必要になること、それを実行する力が政府や産業資本には無いからである。

 理由の2つ目は、かつて京都議定書に参画し、脱炭素の大幅削減を約束していたが、民主党政権時代の2010年の締約国会議(COP16)で、議定書に基づく「第二約束期間」(12年から)の「削減制約」には一切「参加しない」と公言し、事実上、自国で発効した京都議定書を拒否して崩壊させたことによる。

 つまり、民主党政権は世界の脱炭素の取り組みから事実上撤退し、その後の国内の取組みを大幅に遅延させたのである。この時、現在の立・民党首の枝野は民主党の中心的人物であったのであり、枝野の重大な裏切りは今もって消えない。

◇太陽光発電の無政府的設置

 今後の大幅な脱炭素を実現するためには、何よりも、CO2総排出量の4割を占める発電部門の改革が必至である(鉄鋼の生産方式の改革や自動車も)。

 そこで、素案は電源構成の変更を示してくれている。19年度実績では、石油、石炭、天然ガスによる火力発電の電源構成割合は76%であり、これを30年には41%に削減するとある。

 この削減分を補うのが再生可能エネルギー(風力、太陽光、地熱、潮力、バイオマスなど、有限で枯渇の危険性を有する石油・石炭などの化石燃料や原子力と対比して、自然環境の中で繰り返し起こる現象から取り出すエネルギーの総称。以下、再可エネとする)と原子力である。

 再可エネによる発電構成の割合を19年度の実績18%から36~38%に引き上げると言う。しかし、再可エネを増やすのは簡単ではない。

 政府が一番力を入れている太陽光発電パネルを敷き詰めるためには、山地の森林を伐採し、斜面を整地し盛土もしなければならず、そのため熱海市の盛土崩壊のような危険が付きまとう。

 実は、こうした山地の崩壊は全国で多発していたのである。18年7月の西日本豪雨の直後、「神戸市須磨区の山陽新幹線のトンネル出口付近で、線路沿いの斜面の上の太陽光パネルが崩落し」、また「姫路市北部の林田町では、太陽光パネル約千三百枚が山の中腹から崩れ落ちてしまった」等々(『東洋経済オンライン』)。

 EUでは、欧州委員会が再可エネの電源割合を30年までに65%にする方針を新たに打ち出したが、早くから開発を進めてきた風力発電の割合が多くなっている。それは森林を無秩序に伐採するのでは脱炭素の主旨に合わないとして、海に接する諸国は洋上風力を強力に進めてきたからだ。

 日本で洋上風力がまだ進んでいないのは、国内の大手電力資本に風力に大胆にカネを注ぎこむ資本力も技術力も無いからであるが、海外の有力な風力発電資本に依存するのを政府が躊躇している面もある。国内のベンチャー企業が従来の風車式ではなく、設置面積が小さい円筒形の高効率の風力発電機を発明したが、それも広がる気配がない。

◇原発を維持、新型炉も開発

 また政府は、新電源構成における原発の割合を現在の実績6%から20~22%に増やそうとしている。

 原発推進派である自民党の安倍らが乗り出し、休止している原発の再稼働の他に、原発の増設を迫ったが、素案には入らなかった。しかし、老朽化している原発が将来廃棄されるなら原発はゼロになる。これを恐れて、政府は「必要な規模を持続的に活用する」と記載し「小型モジュール炉」という新型原発を研究開発する計画を書き加えた。

 EUでは、加盟する27カ国のうち、原発を持たない国は全ての原発を廃止したイタリアを含め、アイルランド、デンマーク、マルタ、バルト3国など合計14カ国である(世界原子力協会20年2月調査)。ドイツは10年以内に脱原発国となる予定だ。

 現在原発を稼働している13カ国のうち、フィンランドは廃止を決めたが期限の定めが無く、今後も維持しようとしている国はスウエーデンや東欧7カ国であり、ポーランドは将来の新規稼働を決めた。

 しかも最近(今年2月)、EUの主要13の産別労働組合が「持続可能な投資対象の基準」に原発を含めるよう要求するという大事件が起きた。これらの労組の中には、将来の原発廃止を決めているベルギーやフィンランドの労組も含まれ、EUの産別労組幹部がいかに電力資本の片棒を担ぎ、経営権原者ぶって〝振る舞い〟していたかが暴露されたのである。

 この事件は、EUの産別労組の組織力を褒め、労組の「経営参加」によって資本の「物象の力」を削ぐことが可能になると長年にわたって主張し、日本の労組も学べと指導してきたマル経学者ら(佐々木隆治や後藤道夫ら)の見事な破産を見せてくれたのである。 (W)

   

【1面サブ】

医療崩壊ごまかす政策転換

形骸化した緊急事態宣言や自宅療養

 菅政権の悪政はコロナ対策においてますます酷くなっている。緊急事態宣言は形骸化している、オリンピックなどやっている時ではないという声などどこ吹く風で、金メダル選手に祝賀ツィートして人気取りに励む一方、供給不足のくせに「ワクチンがゲームチェンジャー」と検査・医療体制の未整備を開き直っていた。

 緊急事態宣言の対象を広げてほしいという首都圏知事からの卑屈な要望――というのは、オリンピック中止を断固求めない臆病だから――さえオリンピックへの影響を考慮して抑えていたが、感染者が東京で急増したり、全国で1万人を超えてきたり、病床ひっ迫の危機的状況やデルタ株の感染力を甘く見ていたことがバレてしまったりで、先月末になって緊急事態宣言を6都府県に広げ8月末まで延長、5道府県の40市町村は「まん防」適用とした。

 菅首相が「今回の宣言が最後となる覚悟で、政府を挙げて全力で対策を講じていく」と強調し、人流抑制で感染拡大を抑えると言ったところで、空しくはないか。「全力で対策」するならオリンピック中止が当然だろうが、口先だけの安倍譲りの、その場しのぎの方便でしかないことは、これまでの無様なコロナ対策が証明している。

 全国知事会は緊急事態宣言の対象地域が2日から広がるのを前にオンライン会議で、都道府県境をまたぐ夏休みの旅行や移動の「原則中止・延期」とともに、「国民に危機感を伝え行動変容を促す強いメッセージを発出すること」を国に求め、そして新型コロナ対応の特別措置法の改正も含めた改善、ロックダウン(都市封鎖)のような手法の検討を求めるといった緊急提言をまとめた。

 全国一律での緊急事態に反対する知事(主な理由は経済的利害だ)がいるとはいえ、全国に感染が拡大している中で「一律での緊急事態宣言」を求めない知事会は、そうした自分たちの利害を隠すために、強権的なロックダウンを持ち出していて、どこまで本気なのか。欧米などの経験でもロックダウンは一時的効果しかない結果になっている。コロナ禍を連携して危機を克服する方向でなく、分断を助長し、自律でなく自分本位をはびこらせることを恐れないのか。

 菅首相は「ロックダウンは日本になじまない」とあいまいに否定したが、場当たりなワクチン供給が自治体から不信を買う中で、自治体の要望を受け入れた対応をしようと考えたのであろうか、2日には、中等症や軽症の患者は、リスクが低い場合は原則、自宅療養とする基本方針を打ち出した。「感染しても重症しか入院させません、行動変容して自粛しなさい」とでもいうような〝脅し〟が、「強いメッセージ」とは、菅らしい発想でないか。

 これまでも軽症と診断され自宅療養中に死亡した事例もあるように、感染者の無症状から重症の判別にはきちんとした観察・保護が重要であるし、患者の急変対応も大変なのである。自宅療養者急増に対する〝新方針〟は、与党さえ撤回を求める事態になったが、医療崩壊は、医療体制を整備できなかった政府(そして自治体も)の怠慢がもたらしたものであり、労働者は〝新方針〟の責任を断固追及し、菅政権打倒を勝ち取ろう。  (岩)


       

【飛耳長目】

★コロナ下の五輪(前半)が終わった。菅が「中止の選択肢はない」と断言したのは、選手は国や企業の支援あっての参加、その成績は国の序列と威信を反映して、企業イメージを上げてくれる、その利益が人命よりも勝るからだ★五輪憲章は「国家間の競争ではない」と謳う。しかし表彰式での国旗掲揚と国歌演奏は、それが建て前であることを象徴し、ベラルーシ陸上選手の亡命は、勝者には報奨金や勲章が、敗者には懲罰が待つというスポーツの「国家の支配」を象徴している★東京大会の基本コンセプト「多様性と調和」も同じだ。難民選手団や抗議パフォーマンス容認でそれらしく装うが、大国の利害とカネまみれの五輪貴族、JOC関係者の醜態を隠蔽する限りで許されるに過ぎない★日本選手が口を揃えて関係者に感謝の弁を語るが、国費投入で養成され、マラソン新記録に報奨金1億円が出るような、個人の努力ではできない恩恵を受けてきたからだ。スポンサーあってのスポーツ、五輪なのだ★パラリンピック前の終戦記念日、沖縄、長崎・広島にとどまらない戦争の惨劇が示すブルジョア国家の分裂と抗争の歴史に学ぶべきだ。階級支配と国家的分裂を克服した暁にこそ、世界のすべての人々は「スポーツの祭典」を祝うことができる。 (Y)

   

【2面トップ】

法人課税で国際的新ルール
   130ヵ国・地域、23年導入をめざす

 イタリアで開かれていた主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央総裁会議は、7月10日、国際課税の新たなルールで大枠合意した。その内容は、最低税率を「少なくとも15%」とする。巨大IT(情報技術)企業を想定したデジタル課税は「売上高200億ユーロ(約2・6兆円)、利益率10%」を基準とするというものである。

◇合意の内容

 企業課税の統一基準設定で合意したのは、大きく分けて二つである。

 その一つは、最低税率の導入である。現在では各国ばらばらである税率に最低税率を設ける。各国の法律上の税率ではなく実際に納入する実効税率として、「最低15%以上」とすることで合意した。

 例えば、ある外国にある日本企業の子会社が15%より少ない金額しかその国で税を納めていない場合、日本の政府はその親会社に対して15%との差額を課税できるようにするということである。対象は売上高(総収入)が7・5億ユーロ(約1千億円)を超える多国籍企業である。15%として約1500億ドル(約16兆円)以上の増収と予想されている。

 二つ目は、「デジタル課税」といわれ、データなど〝無形資産〟で利益を得ている多国籍企業を対象とした課税である。対象となる企業は具体的にはフェスブックやマイクロソフトなどIT関連の大企業だけでなく、世界での売上高が200億ユーロ(約2・6兆円)を超し、利益率が10%を超す多国籍企業で約100社程度が想定されている。(但し、銀行、保険は対象外)。

 GAFAなどデジタル企業は、拠点である工場を持つことなしに、顧客データ、特許、商標権などで大きな利益を得てきた。その利益は本社(あるいはその子会社)に集中され、サービス市場となった国の政府には工場などの拠点を持たないため課税権はない。

 こうしたデジタル経済に対応して、多国籍企業が市場とする国が新たに課税の権利を持つようにするというのが「デジタル課税」新設の目的である。

 課税の方法は、まず多国籍企業の全世界での売上高から費用などを除いた税引前利益を算出する。その内売上高の10%を通常利益として差引き、残りを「残余利益」とする。この「残余利益」は「超過利潤」に当たるもの、つまり〝無形資産〟からの利益と見做して「残余利益」のうちの20~30%をサービス市場となった各国に売上高に比例して配分しようとするものである。日経新聞によれば、日本も含めた多国籍企業81社の「超過利益」は、約4100億ドル(約43兆円)に上ると推定されている。

◇企業への国際課税設定の背景

 企業への世界で共通課税が問題になった背景は何か。

 一つは、新型コロナへの対応で、各国の財政が膨張し、巨額の財政赤字を抱えるようになったことである。

 米国のイエレン財務長官は4月、演説で「全世界的な法人税の引き下げ競争に終止符を打つべきだ」と発言、最低法人税率設定に国際協調を呼びかけた。イエレンは「各国は企業を誘致するため、法人税率引き下げ競争を行ってきた、結果として各国の財政基盤が縮小し、大規模な財政支出の余力がなくなっていると主張した。

 バイデン政権は、3月、コロナ禍への緊急対策として「アメリカ救済計画」、「アメリカ雇用計画」と称する長期的な経済強化策を発表した。それは今後8年間にわたり、総額2・3兆ドル(約240兆円)の財政支出を行おうというもので、数百万の雇用を生み出し、インフラを整備し、アメリカを強固な国家にするのが目的とされている。

 しかし、こうした巨額の計画を実施するには財政的な裏付けが必要である。

 アメリカの財政赤字は3月末で3・3兆ドル(GDP比1・26倍)と戦後最高である。今後計画が実行されれば、赤字がますます膨れるのは必至である。バイデン政権は、経済強化のための財源として法人税を現行の21%から28%の引き上げを計画しているが、イエレン発言は、こうした状況受けて、財源確保のために法人税引き下げ競争を廃止し、最低課税の設定を呼びかけたのである。

 国家財政を膨張させているのはアメリカばかりではない。新型コロナによって、世界中の国家は財政膨張に転じた。新型コロナの世界的な感染拡大は、これまでの新自由主義に基づく「小さな政府」から、国家財政による経済振興、失業、生活困窮者対策、医療体制の整備などケインズ主義による「大きな政府」への回帰の契機となった。

 第二は、IT技術の発展によるデジタル企業の拡大である。GAFAなどデジタル企業は、顧客データ販売、動画、音楽、ゲームなどの〝無形資産〟で巨額利益を得てきた。しかし、製造業のように拠点である工場を持たず、税金の安い国(地域)に子会社をつくるなどして税負担を逃れてきた。

 こうした中で、IT産業を持たない発展途上国やEUでは自国の市場で大きな利潤をえながら、税負担をしないのは不公平との不満を募らせてきた。

 第三は、二の理由と関連しているが、大企業(及び大富豪)による税負担逃れである。税負担を軽減するために、大企業はより安い税金を求めて、タックスヘイブン(租税回避地)と言われる、国・地域に企業の本拠地を移してきた。

 バイデンは「雇用計画」の中で18年に91社が法人税を支払っていない」と述べたが、アメリカのNPO調査報道専門ニュースサイト「プロパプリカ」によれば、平均世帯は年間所得の14%を連邦税として負担しているのに対して、資産額上位25人は、2018年~19年に資産が4010億ドル(43・7兆円)増えたが、納めた連邦税はその僅か3・4%に当たる136億ドル(1・48兆円)にすぎないという。すべて、タックスヘイブンによるという訳ではなく、政府の優遇措置も含まれているが、様々な方法で大企業(及び大富豪)は税逃れを行っているのである。

◇新課税は資本の体制維持のため

 これまで、課税は「各国の主権」あり、課税対象は「独立企業」、工場など「恒久施設」を持ったものであることが共通のルールとなってきた。世界を市場とする多国籍企業や巨大デジタル企業は法の盲点をついて、税を回避してき巨額の利益を得てきた。

 最低法人税、デジタル課税の設定について、ブルジョアマスコミは「低税率競争」や「巨大企業の税逃れに歯止め」をかける「歴史的成果」(「朝日」6・1社説、など)と評価、共産党も「グローバル課税の根本的な解決に向けた」「画期的な変化」(「課税新時代」2・25)と歓迎する学者の記事を掲載するなどしてきたが、「法人税引き下げ競争の終結」、「公正な税への改革」と評価している。だが、手放しで賞賛するようなものか。

 最低税率について米国は当初21%を提案する予定であったが、低税率のアイルランドから強い反対が出て15%になった。15%はタックスヘイブンの一つとなっているアイルランドの税率を僅か2・5%を上回る程度である。また、国家によって自国の企業の競争力強化、経済発展などを理由に新技術研究・開発のための特別措置など様々な支援が行われている。

 資本に対する新たな課税といっても、企業が支払う税は労働者が生み出した剰余労働の一部である。資本主義がまだ自由主義の段階であった当時、応能負担が原則であった。すなわち、直接税は土地・家屋の所有者や金持ちが課税の対象であり、金持ちほど多くの税を負担する比例課税であった。

 しかし、独占資本主義の段階になると資本及びその国家に対する労働者の不満、不信をそらせ、国家の支配のもとに包摂するために〝福祉国家〟が唱えられ、それと同時に医療や年金、失業保険など〝社会保障〟などが行われ、課税対象は次第に範囲を広げ、国民のほとんどが税を支払うようになった。

 大企業への課税強化といっても、資本の支配の維持、安定のためのブルジョア的対応策であり、資本主義の下での労働者の不安定で困難な生活を抜本的に解決していくものではないし、これに幻想を持つことは出来ない。  (T)


【二面サブ】

税収過去最高のアダ花
実態隠す見かけの数字

 コロナ不況と言われながらも、20年度の国の税収が60・8兆円と過去最高になった。法人税は11・2兆円と増え、消費税も20・9兆円と増えた。所得税については想定を0・7兆円上回ったとの報道だが、前年度(19年度)並みの19・2兆円であった。法人税収が増えたのは、電機、通信、ゲームなどの部門が「巣ごもり」増益となり、前期比でプラスになったことが大きく影響したとあり、消費税が増えたのは、「巣ごもり」の影響もあったが、税率10%が年度の通年で適用されたからだと報道されている。

◇法人税増収は「巣ごもり」だけではない

 法人税収が上がった理由は、単に「巣ごもり」によるのではない。

 法人企業統計を見れば分かるように、設備投資が前期比でマイナスとなり支出が抑えられたことの反映でもある。要するに、「巣ごもり」景気などの報道とは違って、総資本の拡大再生産という観点から見れば、明らかに停滞していることが分かる。

さらに、黒田日銀による大手企業への金融支援があった。

 予想されていたことであるが、日銀は20年度3月時点で国内株式の最大保有者になった。日銀の持つ上場投資信託(ETF)の時価総額は実に51・5兆円となり、年金積立金を管理運営する行政法人(GPIF)を逆転し4兆円以上も上回ったのである。

 この両者だけで、日本株を約100兆円(時価総額)持つ。19年度ではこの両者が持つ株総額は約65兆円であったから、いかに株価暴落を防ぎ、維持し、押し上げたかが分かる。

日銀は大量の株を持ったはいいが、株価が暴落した場合には、大損をくらい、日銀収支が悪化することになるが、一向に気にしていない素振りだ。

 ともかくも、日銀は日本企業を高株価で支え、企業の保有株の低落による財務悪化を防ぎ、また、企業が金融機関からの借入を少なくし、株式増資による新たな運転資金を手にできるようにと汗をかいているようだが、企業全般の開発投資は弱く、米国や中国の動きから遅れる一方に見える。

◇経営参加論をぶつマル経学者たち

 こうした行き詰まった状況を見て、労働者は欧米に見られるように、企業の経営に参加し、企業体質を変えるべきだとか、ジョブ型雇用を広げ資本と労働者の有効な関係を作るべきだとか、学者たちは色々おしゃべりしている。

 しかし、EUの労働組合のように、賃上げなどの交渉とは別に、経営権者の一員として経営に参加し企業方針に影響力を行使していることを学べと言うのは、一見労働者の闘いのように見えるが実はそうならない。

 経営者の会議は企業運営の具体的な戦略を論じていく場であり、従って、いかに生産と販売を効率的に循環させ利潤を拡大して行くかの方針を決定する場である。

 つまり、経営者の会議に参加していくならば、労働組合の幹部が経営者然として振る舞うようになるのは必然であるし、実際そうなっている。

 例えば、EUで進めている脱炭素について、域内の有力な労働組合の幹部たちは経営的な立場で原発の維持や延長を主張し、また、それを欧州委員会委員長あてに書簡を出すほどに堕落している。

 「経営参加」や同じことだが「労使協調」がろくなことにならないのは、EUを見るまでもない。「祖国防衛」という名目で帝国主義戦争に協力した古い例は別にしても、アメリカの自動車労組がトランプの貿易保護主義の支持に走った例や日本の右翼的労組の長年の労使協調ぶりを見れば明らかなことである。

 労働者はこうした資本への「経営参加」によってではなく、労働者の立場にたち、労働者の要求を労働組合にまず集約していくべきである。

 さらに、労働者は自らの政党(労働者党)を組織し、ブルジョア・半ブルジョア政党の資本主義擁護・修正の政策を暴露し、労働者全体の諸政策を掲げて闘っていく時である。焦眉の課題である脱炭素問題も、資本主義的生産による排ガス、排水、産廃の垂れ流しに抗議しつつ、断固として労働者の立場を突き出していくのである。 (宜)

   

   
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