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●1410号 2021年9月12日 【一面トップ】 〝顔〟替えて政権維持策す――醜態晒す自民党総裁選 【1面サブ】 習近平の「共同富裕」論のまやかし 【コラム】飛耳長目 【二面トップ】 依然困難が続くアフガン――帝国主義こそ災厄の根源 【二面サブ】 読者からの質問に答える――二酸化炭素温暖化説について <前号の校正> ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】 〝顔〟替えて政権維持策す 菅の自民党総裁選不出馬表明に永田町は大騒ぎとなった。総裁選に向けた菅のあさはかな戦略が失敗し、事実上の辞任に追い詰められたのだ。菅は記者会見で「コロナ対策に専念したい」と、これまでのコロナ対策の無為無策を開き直り、厚かましく「総理を任期一杯続ける」と言ったのだが、コロナ対策推進を考えるなら、怠慢を詫びて潔く辞任すればいいのだ。 ◇選挙に勝つための〝顔〟選びの総裁選 衆院議員任期が迫る中、自民党は総裁任期満了に伴う総裁選を今月17日告示、29日投開票の日程で行うことにしている。自民党大会は今年3月21日に行われ、総裁選は後回しにしていたが、すでに3月時点でもコロナ禍の酷い対応が不興を買っていた。そうしたことを承知しながら、菅の「五輪強行路線」を承認し、自民党全体として五輪成功で政権浮揚という菅を支持していたのである。 しかし、緊急事態宣言などでの人流抑制では効果を挙げられず、コロナ禍は鎮まらない。期待したワクチン接種はずさんな計画で、接種の急ブレーキで混乱を招いたし、五輪の強行はメダル数最高でも政権浮揚にはならず、菅のお膝元横浜の市長選では腹心の小此木が惨敗と、菅政権にとって自業自得の失点が続いた。 まったく反省のない菅政権への信頼の低下(毎日新聞は支持率調査結果を先月28日26%と伝えた)が歴然とする中で、自民党内から「菅では選挙に勝てない」と若手議員を中心にした危機感から、「選挙に勝つための〝顔〟」選びの声が強まった。 その場しのぎのコロナ対策で急増する「自宅療養者」(放置だ!)の困窮、重症者の増加、捨て置かれた自宅での死亡者も増え、保健・医療体制の立て直し(これまでの強化より根本的な整備)が急がれているにもかかわらず、野党からの臨時国会開催要求を拒み、自民党は総裁選びの党内政争に明け暮れることで醜態を晒していることなど、気に留めないのである。 ◇安倍政治継承の菅政権の破綻 1年前の総裁選では、安倍が岸田を推薦すると思わせておきながら菅を支持し、岸田派と石破派以外の5派閥が菅を支持、「アベノミクスをしっかり責任をもって引き継ぎ、さらに進めたい」と宣言した菅が総裁に選出された。「戦後最長の経済回復」という作り話のアベノミクスの破綻が現出していた時期でありながら、菅は安倍政治を継承すれば、つまりうそとごまかしの政治を続けることで権力を維持できると安請け合いしたのだ。経済政策とコロナ対策だけでもそのでたらめさは明らかである。 「アベノミクス」は安倍の看板政策で、大規模な金融緩和、積極的な財政出動、成長戦略の「3本の矢」で経済の「好循環」を実現するというものであった(『海つばめ』1386号20年9月13日)。しかし、「日本経済は発展するどころか、反対に弱体化した」(同前)。 菅の経済政策は携帯電話料金引き下げの人気取りでスタートしたが、経済界からの要請に応え、歳出総額を180兆円に膨らませ、安倍・菅政権によって、昨年度の国債発行額は112兆円。今年度は予算の4割を超える44兆円。たった2年間で156兆円もの国債を発行し、「財投債」も加えれば208兆円の借金増である。21年3月末の国債残高は1074兆円で過去最大を更新した。 一方コロナ対策では、中国当局がWHO(世界保健機関)に原因不明の肺炎を報告した一昨年12月31日以降、日本や韓国でも死者が出る中、安倍はインバウンド(訪日外国人観光客)を熱烈歓迎して、水際対策を疎かにし、コロナウイルス蔓延に手を貸した。 感染症対策をしっかりやらなければならないにもかかわらず、習近平訪日、五輪開催を優先し、PCR検査を抑制したり、感染症対策の基本を無視、さらに突然の小中高校休校指示で混乱を招き、「自粛」を国民に強制したのだった(『海つばめ』1380号 2020年6月14日)。初動対応の誤りがその後のコロナ対策に重大な影響を与えたのであり、安倍の「大罪」(同前)であった。 菅もGoToキャンペーンに見られたように、経済や五輪優先であり、コロナ軽視で感染を拡大させたことを認めなかった。後手後手の対応に終始し、ワクチン接種が始まるや「ワクチン一本」で手抜きしてごまかしたのだ。 ◇自民の党利党略、派利派略、そして個利個略 自民党は初めは野党との駆け引きで、〝党利党略〟で総裁選を衆院選前にやろうとした。派閥の探り合いがあり、派閥領袖の岸田が候補に名乗りを上げ、「党役員は連続3年まで」の公約を掲げた。それは5年にわたり幹事長を務める二階の再任拒否であり、二階と対抗する安倍や麻生の支持を得ようという〝派利派略〟であった。 岸田の〝挑戦〟に対して、菅は二階を幹事長から外すことで話をつけ、党刷新こそ意味があると斬って返し、岸田の〝二階降ろし〟は空回りになった。菅は〝個利個略〟で主導権をもって総裁選に臨もうと、総裁選前の解散総選挙を考えているとマスコミを賑わした。 しかし、党内の強い反発(「心中選挙だ」など)で、菅は「解散どころではない」と2日に表明せざるをえなくなり週明けに党役員人事の刷新と合わせて内閣改造する、と会見し出馬への意欲を見せた。にもかかわらず、3日になって総裁選不出馬を表明したのである。 菅は専制主義的な人事も安倍にならって、「人事で政治を動か」してきたが、〝得意〟な人事で行き詰まった。人望がなかったというより、菅の推し進めてきた政治では選挙に勝てないということで態勢立て直しができなかったのだ。 総裁選を巡る動きは権力維持のためのゴタゴタに終始している。岸田にしろ他の候補者にしろ、自民党政治に責任のある連中であり、今さらの改革案提出は、どれだけ本気か、これまで何をしてきたか、当然問われるし、注目される。 岸田が森友問題を巡る文書改ざんについて「再調査は考えていない」と、これまでの「説明が必要」という考えを撤回したり、河野が「脱原発」を「再稼働容認」に軌道修正したことは、〝改革〟が口先だけであり、菅と同類でしかないことを示した。 総裁選にうつつを抜かしている自公政権の腐敗に対する労働者の怒りを階級的な闘いに結集していこう。 (岩) 【1面サブ】 習近平の「共同富裕」論のまやかし 今、中国で〝異変〟が起きている。IT企業など民営企業に対する統制強化、芸能界締め付け、若者のゲーム時間の制限(週末・祝日に1時間だけ)、営利的教育事業(塾、家庭教師など)の禁止、小中高への習近平思想学習の導入等々――気の早い日本のマスコミは文化大革命の再来かと大騒ぎしている。きっかけは、習近平が8月17日開催の中国共産党中央財経員会議で打ち出した「共同富裕」論だ。習近平は「共同富裕は社会主義の本質的要求であり、中国式現代化の重要な特徴である」とし、「高すぎる収入は合理的に調整し、高収入層と企業はさらに多くの社会に報いることを奨励する」と寄付・慈善事業を通じた富の分配を推進する方針を打ち出した。 その翌日、IT大手のテンセント(時価総額中国トップの大企業)は農村振興や低所得者の支援に500億元(約8500億円)を寄付すると発表。同社は今年4月にもSDGs支援として500億元の寄付を発表しており、4カ月間で1000億元(約1兆7000億円)を差し出したことになる。 遅れてはならじとばかり、アリババ集団がギグワーカー支援などに25年までに計1000億元投資、個人ではスマートフォン大手、小米(シャミオ)創業者の雷軍会長が144億元の自社株を貧困撲滅を目的とする基金に無償譲渡、動画投稿アプリ「TikTok」を運営するバイトダンスの創業者・張一鳴が教育基金に5億元を寄付、ネット通販大手ピンドゥオドゥオの創業者・黄氏が浙江大学に1億ドル(約110億円)寄付などの動きが相次いだ。お上に根こそぎ召し上げられる前に、〝自発的に〟寄付した方が打撃は少ないとの計算だろう。まさに「上に政策あれば下に対策あり」だ。 高額を稼ぐ芸能人への数十億元もの懲罰的課税や罰金などと合わせ、これらの富裕層に対する締め付け強化の狙いは何か。 第一に挙げられるのは、ますます広がる貧富の格差に対する民衆の不満と怒りを逸らす狙いであろう。中国の上位20%の富裕層の可処分所得の平均は、最下層の可処分所得の10倍以上、「格差を示すジニ指数は近年0・46~0・47で社会争乱多発の警戒ライン0・4を大きく超えている」(福島香織氏、JBpress8月26日)。 クレディ・スイスの調査では中国の上位1%の富裕層が持つ富の割合は全体の約3割を占める(日本経済新聞デジタル版9月2日)。 一方で、李克強首相が20年5月に述べたように、「小康社会」の実現を誇る習近平に反逆するかのように「月収1000元(約1万7000円)の人がまだ6億人いる」。 「都市部の中間層も住宅価格や教育費の高騰に苦しんでおり、格差拡大の不満をそらす意味でも超富裕層や大企業に負担を求める方針は国民の支持を得やすいとの計算も働く」(同)。 習近平のこうした人気取り政策の狙いが長期権力の維持にあることは容易に推察できるだろう。民衆の支持を得て、来年秋の党大会で国家主席の続投を勝ち取ろうというのだ。 だが、その思惑どおりに進む保証はない。 富豪や大企業からかき集めた金は、その配分の過程で一部が共産党幹部の懐に入り、彼らを富ますだけに終わる――共産党による私有財産の没収だ――可能性がある。 さらに、民営企業は中国経済発展の牽引者であったが、成長し発展した挙げ句が国家による締め付け、利潤没収となれば、企業の投資意欲は衰え、資本の海外逃避をもたらし、国力の衰退につながるだろう。 これは国家資本主義に内在する矛盾であり、習近平は決してこの体制的矛盾から逃れることはできないのである。 (鈴木) 【飛耳長目】 ★日本の夏は確かに熱くなった。エアコンなしの生活は考えられず、気温上昇に限らない異常気象を身に染みて感じる★昨年6月、北極圏に位置するシベリアで38℃を記録し、永久凍土融解で温室効果ガス放出。米西部の山火事やオーストラリアの森林火災、熱波に豪雨、氷山・氷河の消失、世界各地の事例に事欠かない★長崎原爆忌の8月9日、国連の「気候変動に関する政府間パネル」は、人間が地球を温暖化させてきたことはもはや「疑う余地がない」、仮にCO2排出を急激に減らしても、今後数十年間は世界の平均気温は上昇すると報告した★これは、気温上昇が加速して後戻りできない臨界状態にあるという警告だ。世界の排出量の28%を出す排出大国の中国・習近平は、30年までは増加させるが、60年には実質ゼロにすると、惚けたことを言い放つ★排出量15%で2位の米・バイデンは、30年までに05年比50~52%減と、パリ協定離脱のトランプよりまともだが、中国への圧力強化を策しつつ、環境分野への大型投資によるコロナ後の経済戦略である。人口比では中国の3倍近く排出し、化石燃料を長年浪費してきた責任より、国益優先なのだ★対立と競争する資本とその国家に、人類の命運を委ねることほど危険なことはない! (Y) 【2面トップ】 依然困難が続くアフガン アフガンでは長年居座っていた米国を中心とする駐留軍がついに撤退、後ろ盾を失ったガニ政権は崩壊、「イスラム原理主義」のタリバンが政権に復帰した。アフガン民衆は米帝国主義の頸木から脱出したが、宗教勢力タリバンの支配という新たな困難に直面している。 ◇米軍介入による荒廃の20年 米国が同時多発テロの首謀者を匿っているという理由で、アフガンに軍隊を派遣して、タリバン政権を打倒したのは2001年であった。当時のブッシュ大統領は、同時多発テロを「自由・民主主義」への挑戦と非難、「自由・民主主義」のための「正義の戦争」とよんでアフガンへの軍事介入を行ったのである。 それから約2年後、今度はイラクのフセイン政権が「大量破壊兵器」(核兵器・生物化学兵器等)を隠し持っているということを口実に(これは後で偽りであることが暴露された)NATO諸国をはじめ日本などによる〝多国籍軍〟をつくり、イラクに軍事進攻しフセイン政権を打倒した。アフガンに次ぐ中東イラクへの米国の軍事介入の本当の目的は、「国際テロ根絶」ではなく米国の世界覇権であり、中東の石油資源の確保であった。 当時、米国と共に世界を二分していたソ連が解体、米国は世界で唯一の超大国となった。アフガン、イラク等への武力介入は米国は強大な軍事力によって中東の「反米」を唱えるイスラム国家を〝自由主義〟国家に改造するという当時のネオコン(新保守主義)の戦略を反映していた。 だが、米帝国主義の軍事力によって自分の思い通りに他国を変えるという思いあがった戦略は破綻した。イラクのフセイン独裁政権は米国の軍事力によって打倒されたが、それは「反帝国主義」を掲げたイスラム急進主義の台頭をもたらし、米国は先の見通しのない泥沼の戦争に首まではまり込むことになった。 アフガンではタリバン政権に代わって「共和制」政権が誕生した。しかし、新政権は「民主的」どころか、腐敗した政権であった。大衆の貧困、苦しみをよそに、政府は利権をめぐって内部抗争に明け暮れ、国際援助物資の横流し、賄賂が横行してきたのである。 アフガンは、人口の8割が農民であり、しかも農地は乾燥しており、地味も薄く、狭いといった状態であり、他の産業としては建設業、鉱業、採石、都市のサービス業があるぐらいの貧しい国である。実際、国民総生産は193億ドル、一人当たり530ドル(2019年)、小学校就学率29%、成人の識字率32%(2019年)、支援を必要とする人口は1840万人(2021年、国連調査)といった世界の最貧国家である。 タリバン政権に代わる「共和制」国家の下での20年間、貧しい民衆の生活はほとんど変わらなかった。米国の軍事介入は、戦争による多くの犠牲者と国土の荒廃をもたらしただけで民衆の生活も一向に改善されず、国家財政の6割は赤字で、国連をはじめとする外国からの援助に頼ってきた。 タリバンが20年間、近代兵器で武装された米軍・政府軍に対して、武装闘争を続けることができたのは、米国とそれを後ろ盾とする腐敗した政府への大衆の反発と怒りであった。 ◇タリバン新政権に未来なし 米国は泥沼化した戦争の負担に耐えきれずにアフガンから撤退した。米ブラウン大学の推計では、アフガン、イラクの二つの戦争における米国の戦費は6兆ドル(約660兆円)、兵員の死者は約7千人(民間人は20数万人)──なおシリア、パキスタンなどを含めた「対テロ戦争」全体の死傷者は92万人、戦費は帰還兵対策費などを含め約8兆ドルに上る──、とされている。 この間、米国の力は中国の台頭などによって著しく後退、戦争を続けることが出来なくなり撤退に追い込まれたのである。 20年前のタリバン政権はすべての女性が家庭外で働くことを禁止した。首都カブールの市職員の4分の1、小学校職員のすべて、医療関係者のほとんどが女性であったにもかかわらずにである。 女子学生が就学している女子校、カレッジが閉鎖された。そして男性を惑わすとして、女性は化粧すること、着飾って出歩くこと、肌を曝すことを禁じられて、頭からつま先までベールで覆うようにする服(ニカブ)の着用が強制された。こうして、女性は家事育児をすることが本分とされ、家庭内で男性に尽くすことを義務付けられた。 一方、男性に対しては、あご髭を生やすことが義務付けられた。 また、音楽や偶像崇拝、肖像写真や肖像画が禁止された。そして定時における一斉礼拝が全ての者に義務付けられ、礼拝時には一斉に仕事や商店の活動を停止しなくてはならないとされた。 そして規則が守られているかを監視するための宗教警察が絶えず巡回し、違反者はコーランの教えに反するとして、直ちに逮捕され、罰せられたのである。 かつてのタリバン政権下のアフガンは、こうした野蛮な暗黒の社会であった。それから20年、タリバンは、再び野蛮な政治の復活を目指すのだろうか。 タリバン報道官は初の記者会見(8月17日)で、「内にも外にも敵を欲しない」と政府関係者への報復を否定、女性に関しても「イスラム法の下で女性の権利は尊重される」と主張とした。しかし、発表された暫定政権では、主要閣僚はタリバンが独占、女性や反対勢力は排除され、宗教警察(勧善懲悪省)も復活した。 しかし、かつてのタリバン政権下のような徹底した女性差別・抑圧策で経済・社会を維持していくことは出来ない。やせ細った農地で農業を営む農民がほとんどで、他に工業もなく、輸出もドライフルーツ、果物、野菜、薬草といった農産品が主で(約7割)、食品、石油、機械類を輸入し、多くを外国からの援助に依存しているような現状でかつてのタリバン政権のような政策を復活させることは不可能である。 タリバンは学校や病院など医療機関に女性の職場復帰を認めるとも言う。しかし、イスラム法によって、女性を対象とする学校や医療機関という制限付きである。彼らの言う「イスラム原理主義」を原則とする以上、女性の全面的な社会参加は認めることが出来ない。ここにタリバンのジレンマがある。 彼らの政権がブルジョア国際社会から認められ、援助を得るためには以前のような野蛮な政治を行うことは出来ず、一定の修正を迫られている。しかし、それは彼らの立場を弱めることになるからだ。国内にはタリバンと対立し、撤退する米軍に自爆攻撃を仕掛けたより急進的な「イスラム国」(IS)も活動を活発化させている。 ◇米軍撤退の間隙をついて、中国、ロシアはタリバンに接近 中国はタリバンとの会談で「経済の再建にできる限り支援していきたい」と述べた。「一帯一路戦略」の要衝の地である地域の主導権を握ろうといるのである。中国が狙っているのは、アフガンに眠る石油やリチウムなど豊富な資源の獲得である。だが、中国はタリバンの女性差別などのことは「内政問題」として不問とするが、「イスラム原理主義」を輸出することには「断固反対」だと釘を刺している。 アフガンは中国新彊ウイグル自治区と隣接しているが、中国国外に拠点を持つウイグル独立派組織「東トルキスタン・イスラム運動」(ETIM)が国内に浸透することを恐れているからである。 一方ロシアもまた、米軍の撤退を歓迎しつつも、ウズベキスタン、キルギスなど中央アジア5カ国(旧ソ連邦)にイスラム急進派の影響が及ぶことを恐れている。 ◇タリバンにも帝国主義にも反対 米軍はアフガンから撤退したが、民衆は貧困と恐怖にさらされており、アフガンは依然として不安定で混沌状態である。 バイデンは演説でアフガンとの戦争は、自国を「国際テロから防衛する」ためであったと述べた。だが、本当の目的は米国の覇権のためであり、そのために多くの軍隊と巨額の戦費が投入され、百万人近くもの民間人の生命が奪われた。20年間も続けられたアフガン侵略戦争は帝国主義の野蛮さと横暴を暴露している。 米国の軍事介入によってイスラム急進主義による「国際テロ」はなくならないばかりか、反対にバイデンも認めているように、シリア、アラビア半島をはじめアフリカ、西欧諸国にまで拡まっている。 米国をはじめとする帝国主義の搾取、収奪がイスラム急進主義のような「国際テロ」を生み出してきたのである。タリバンは歴史の進歩に反対し、イスラム教の掟を規範とする社会を作ろうとしている。彼らに未来はない。 労働者・働く者は帝国主義にもイスラム急進主義にも反対である。労働者の未来を切り開くのは労働者の国際的な連帯であり、階級的な闘いである。 (T) 【二面サブ】 読者からの質問に答える 『海つばめ』前号(1409号)の記事「『資本新世』の告発と闘いを」に関連して、読者から労働者党は二酸化炭素温暖化説についてどのように考えるのかという質問があった。この読者は、広瀬隆や池田清彦氏の著書(いわゆる二酸化炭素温暖化説に対する「懐疑論」「否定論」の立場からする議論)を読んでそれに共鳴し、二酸化炭素温暖化説には疑問を持っているという観点からの質問である。9月発行予定の『プロメテウス』(60号)で温暖化問題を特集しており、二酸化炭素温暖化「懐疑論」「否定論」に関してもそれを主なテーマとした論文を掲載する予定なので詳しくはそちらを参照していただきたい。読者の疑問に簡単に答えておきたい。 まず、産業革命以後(特に19世紀後半以後)の地球平均気温の上昇やこのまま二酸化炭素の排出が続けば将来の気温がどうなるか、そしてその結果としての異常気象や氷河・海氷の融解、海面上昇、等々についてのIPCCの見解については、我々は基本的に科学的な諸研究を総括した正しい見解であると考えている。 いわゆる二酸化炭素温暖化「懐疑論」「否定論」者が取り上げる、ホッケースティック・グラフ(IPCCの主要な執筆者でもある米気候学者マイケル・マンらが1998年と1999年に発表した最近1000年間の地球気温のグラフ)とクライメート・ゲート事件(英国気象庁が設けた気象研究ユニットCRUのコンピュータがハッキングされメールを含む文書が流出し、データの捏造が行われていたとして「懐疑論」「否定論」者が攻撃した事件)である。前者については特段歪曲が行われているわけではなく基本的には正しく、最近のより詳細な研究によってもグラフの誤差範囲内に収まっているといわれている。また、後者では特にこのグラフの作成に関するメールが問題視され「トリック」が行われたかのように喧伝されているが、英下院や王立協会、イースト・アングリア大学等々の調査で「不正」はなかったことがすでに立証されている事件である。広瀬隆もこの両出来事を取り上げて「中世温暖期」が意図的に塗りつぶされているなどと騒ぎ立てているが、とうの昔に決着がついている出来事だ。 読者氏の「世界的にはまともな学者は二酸化炭素温暖化説はIPCCによるインチキであるとわかっていて、米国では3万人の学者が京都議定書への署名に反対した」という質問。署名者には同姓同名の人が含まれているとか、姓がなく名前だけとか偽名らしい名前が含まれている、等々の他に、この署名の主導者フレデリック・ザイツという人物は大手たばこ会社から献金を受けて「間接喫煙の健康被害はない」と主張し続け、またエクソンモービル社との関係が強いなど、とても「まともな学者」とは言えない人物のようだ。 『地球温暖化懐疑論批判』はネット上から無料でダウンロードできるので是非読んでみていただきたい。(長野 YS) (全文は党ブログ参照) <前号(1409号)の校正> 1面トップ記事: リード2行目 1991年→2001年 1面サブ記事: 本文4段11行目 1・5℃以内、できれば2℃以内→2℃以内、できれば1・5℃以内 |
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