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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
  お申し込みは、全国社研社
  または各支部・会員まで。
  メールでの申し込みも可能です。

まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1411号 2021年9月26日
【一面トップ】 変わるのは〝顔〟だけ――反省なき自民党総裁選
【1面サブ】 『プロメテウス』第60号の予告
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】 差別と格差を前提する再分配論――野党は労働の確保も賃金差別撤廃も謳わず
【二面サブ】 バイデンの同盟戦略――AUKUS(オーカス)(米英豪軍事同盟)で軍拡競争

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

変わるのは〝顔〟だけ
反省なき自民党総裁選

 菅政権への不満、怒りが広まる中で、菅は事実上の首相候補選びとなる総裁選への出馬断念に追い込まれた。現在、自民党では菅の後釜を目指して4人の候補者による29日投票の総裁選向けての論戦が行われている。しかし、いずれの候補も次期政権の政策として聞き心地のよいスローガンを掲げるだけで、これまでの政治を省みようとはしていない。これでは、顔は変われども、中身は同じだ。

◇きれいごとのスローガン

 今、問われているのは、たんに新型コロナに対する自民党政権の無為、無策だけではなく、9年にわたる安倍・菅政権による貧困、格差を増加させた政治、大衆の声を無視した強権主義政治、中国や北朝鮮の軍事的脅威を叫び軍備増強を推し進めてきた政治である。

 総裁選には河野行政改革担当相、岸田前政調会長、高市前総務会長、野田幹事長代行の4人が立候補している。彼らは選挙戦にあたって「国民に共感していただける政治、人と人が寄り添う、ぬくもりのある社会をつくる」(河野)、「国民の声を聴き、丁寧で謙虚な政治、多様な意見に寛容な政治」(岸田)、「小さき者や弱き者、主役にならない人々へ向けた政策」(野田)などと自らの抱負、目標を訴えた。

 しかし、彼らは安倍・菅政権において、閣僚あるいは自民党の要職にあって政権を支えてきた自らの責任を省みることなく、「国民に共感される政治」とか「謙虚な政治」、「弱き者のための政治」などといったとしても、言葉だけのきれいごとでしかない。

◇破綻した「アベノミクス」の継承

 経済・社会政策では、岸田はこれまでの〝新自由主義〟を転換し、「所得倍増」よって「中間層の拡大」を目指した「新しい日本型資本主義」をつくるという。「所得倍増」のためには持続的な経済成長が必要になるが、岸田は「アベノミクスによって企業収益は上がり、経済は間違いなく成長した」と言って、アベノミクスの継承を謳っているのである。

 しかし、大規模な金融緩和、巨額の財政支出、成長戦略を3本柱とするアベノミクスは、経済成長は1%そこそこと低迷、実質賃金も上がらなかった。一方借金依存による巨額の財政支出によって国の借金は国内総生産の2倍にもなるといったように、成功どころか経済はさらなる困難に陥っているのである。

 企業収益は上がったと言っても、国家の財政支出と日銀の株式買い取りによる株価買い支えによるものでしかなく、大量の借金を抱えた国家財政の矛盾がインフレとして爆発するなら一挙に吹き飛んでしまうようなものである。巨額の財政出動、株価維持策に助けられて大資本や資産家階級はより裕福になる一方、労働によって社会を支えている労働者の賃金や待遇は改善されず、生活はより困難を強いられている。

 破綻したアベノミクス政策を頼りに企業成長の成果の「手厚い分配」によって「所得倍増」とか「中間層拡大」と言っても全く絵空事でしかない。

 河野は、アベノミクスは「賃金まで波及してこなかった部分がある」、「社会保障は最大のテーマ」だとして、労働分配率を一定水準以上にした企業に対しては法人税の負担を軽減するとか、無年金者や年金だけで生活できない人に対して、消費税を財源に「最低限保障年金」を設けるという。

 しかし、賃上げをした企業の税金を軽減するというなら「労働分配率」の変更ではなく、国家が企業の肩代わりするのと同じであり、その負担は増税として労働者にも跳ね返ってくる。

 消費税を財源とした「最低限保障年金」も同様である。年金の財源は保険料が原則であるが、それだけでは足らずに現在でも基礎年金の2分の1は国の支出金(税金)によって補っている。「最低限保障年金」は、結局消費増税に帰着する。現在の年金制度は、最低限の生活保障としての国民全員が加入を義務づけられている基礎年金に加えて、給与に応じて支払われる厚生年金が加わる2階建て方式になっている。基礎年金は満額でもとても生活を維持できない僅か月6・5万円。一方、現役時代に高額の給与を得ていたものは、月百万以上の年金を受け取っている者もいる。こうした年金格差の問題をそのままにして、年金で生活できない者のために税金を注ぎこみ「最低保障年金」にするというのは無責任極まりない。

 「アベノミクス」を下敷きにし、それを上回る財政出動を内容とする「サナエノミクス」と唱える安倍の傀儡候補者である高市も含めて各候補者は「格差」是正とか社会保障の重視といっているが結局はいずれも「アベノミクス」頼みでしかない。国債発行による子どもへの投資を「最強の成長戦略」とする野田は、借金漬けの国家財政に無自覚である。

 その他、原発については、「エネルギーの安定供給、価格、経済性を考えても既存の原発の再稼働を進めることが大事」(岸田)、「核燃料サイクル政策の継続」「地下への小型炉の立地や核融合炉の開発推進」「(高市)と原発を認めている。福島第一原発事故後「原発ゼロの会」を立ち上げ「脱原発」を訴えてきた河野も党内の反発にあって、「安全が確認された原発を当面は再稼働していくことが現実的」と維持政策に転換した。

◇揃って改憲と軍備増強

 憲法、安全保障問題については、最も強行的な立場に立っているのは高市である。

 まず、憲法について高市は「日本人の手による新しい憲法を制定」しなくてはならないとして、現在の「民主・平和」憲法を否定し、「天皇の元首化」、戦争の合法化などを定めた自民党の憲法草案実現を訴えている。

 岸田は、戦争や大規模な災害など「緊急事態」が生じた場合には、政府が国会の審議を得ずに憲法に定めた国民の権利を制限し、政府の命令に従わせることが出来る「緊急事態条項」や自衛隊を憲法に明記するなど4項目の「憲法改定」を自分の任期内に行うと積極姿勢を強調している。

 安全保障に関しては、高市は「戦争に備え、ミサイル攻撃など受ける前に敵基地を無力化する能力を持つ必要がある」、そのために自衛隊法を改定すると言い、岸田は領海侵犯が多発しているが「海保の体制強化、自衛隊との連携が大変重要だ、必要なら法改定も検討」という。

 高市も岸田も軍備強化では同じであり、高市が軍事費は国内総生産の2%にすべきというのに対し岸田も「1%など数字に縛られてはならない」という。これに対して河野は「敵地攻撃能力云々ではなく、抑止力の議論を」と言いつつも、軍事費については「総額としては増やさざるを得ない」と軍備拡大、軍事費増加に積極的である。

◇安倍・菅の強権政治や政治私物化は不問に

 安倍・菅の政治を特徴づけるのは、憲法違反の安保関連法、秘密保護法強行、政府の意に沿わない6人の学術会議会員の不承認など、政治反動を推し進めた強権政治であり、森友・加計学園問題、「桜を見る会」に象徴される政治の私物化である。

 安倍政権の下で、政治主導という名目で内閣人事局がつくられ、官僚人事権を政府が一手に握り、政府の意向に無条件に従う官僚の「忖度」が広まった。一方、小選挙区制の下で候補者公認権と選挙費用支給権は党幹事長が握っている党中央の党支配が進んだ。こうして、安倍・菅政権の下で強権政治が行われてきたのである。森友・加計学園政治の私物化、「公文書」改竄はその表れである。この問題に対していかなる態度をとるのかは、候補者の政治姿勢を計る一つのリトマス紙である。

 公文書改竄について「多くの国民は納得していない」と述べ、再調査すべきとしたのは野田のみであり、河野や岸田は「再調査の必要はない」(河野)、「検察が捜査した」(岸田)と答え、高市は「桜を見る会」の虚偽の国会答弁に関して、「本人が虚偽と思って説明されていたわけではないし、答弁を作らないといけないので安倍事務所やいろんな問い合わせをして、法に照らしてきっちりした答弁をしたつもり」と擁護している。

 野田を除く3候補は、安倍の首相の座を利用した財政の私物化やそれに伴う公文書改竄の権力犯罪をすでに解決済みとして葬ろうとしている。「再調査」と言う野田にしても、総務大臣、幹事長代行など閣僚、党組織の要職を歴任、政府を支えてきたのである。4候補とも共犯者である。

◇自民党政権に反対し、労働者の階級的闘いを

 安倍・菅政権を通じて、日米軍事同盟の深化、軍備増強、強権化と一層反動化は強まり、そして政治の私物化、汚職と政治的腐敗も深まった。これは日本の帝国主義国家としての寄生化、腐敗を深めてきたことの反映だ。

 4候補のいずれが自民党の総裁になろうとも政治は変わらない。彼らは国会の絶対多数を占め、政治を壟断してきた自民党政権を維持するために誰がふさわしいか競っているのである。

 彼らが目指すものは、大資本の利益であり、そのための政治的な安定である。資本の利益の確保、追求という立場に立つ限り、労働者・働く者の生活破壊は必至である。

 大資本の利益を代弁する自民党の政府への労働者・働く者の怒りを結集し、闘いを前進させていこう。 (T)

   

【1面サブ】

『プロメテウス』第60号の予告

 10月に労働者党の理論誌『プロメテウス』第60号が発行されます。

 今回は、気候変動の理論問題や各国政府の取り組みを特集しました。発行前に『海つばめ』に本誌の紹介を載せることにしています。

 ご注目ください。


       

【飛耳長目】

★「コロナで日本や世界が変わった。自民党も変わらねばならない。誰が党風一新できるか答えは明らかだ」と小泉は言い、「新しい日本のリーダーだ」として河野への支持を表明した★コロナで何がどう変わったのか、小泉に聞いてみたいところだが、河野や小泉も属した菅内閣が幾度も宣言を出す以外に何もなしえず、1・7万人の死者と165万人もの感染者を出し続けた無能な内閣(彼等もその一員)として後々記録されるだろう★「党風一心」(自民党改革)などと大それた事を言うが、せいぜいそれは派閥政治、政治への派閥支配を薄めようと言う、今まで繰り返し言い古されたことにすぎない★ワクチン担当大臣だという事をすっかり忘れ、ほっぽり出して権力争いに明け暮れる河野のどこにリーダー性があると言うのか。ずさんなワクチン計画で各自治体を惑わし、接種を遅滞させ、若い世代の感染急増は彼こそその責任を負うべきだ★この世襲議員のお坊ちゃん達が持ち上げられるのは、菅では衆院選が闘えず、我が身が危ないという自民党の危機感だ。河野・小泉コンビで、あたかも新しい自民党政治が始まるかの妖術なのだが、術が解ければ河野だろうが岸田だろうが、腐った木には腐った実しか付かないことが明らかになる。朽木は根元から切り倒せ。 (是)


【2面トップ】

差別と格差を前提する再分配論
   野党は労働の確保も賃金差別撤廃も謳わず

 去る9月8日、共産、立憲、社民、れいわの野党4党と市民連合が次の衆院選で共闘するための「野党共通政策」に合意したと発表。この政綱を掲げて衆院選で勝利し、政権交代を狙うと言う。この「野党共通政策」は果たして労働者にとって目から鱗の革新的な政策なのか、労働者の闘いのスローガンになる意義ある政綱になっているのか、それが問題だ。ゆえに本稿では野党共闘派の経済政策について検証する。

◇野党共闘派の経済政策

 野党共闘派の経済政策は、「格差と貧困を是正する」と「地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行」である。

 「格差と貧困の是正」については、大きく分けて3項目からなる。①最低賃金の引上げや非正規雇用・フリーランスの処遇改善により、ワーキングプアを無くす、②住宅、教育、医療、保育、介護について公的支援を拡充し、子育て世代や若者への社会的投資の充実を図る、③所得、法人、資産税制、社会保険料を見直し、消費税減税、富裕層の負担を強化するなどによって公平な税制と低所得者や中間層への再分配を強化する、というものである。

 「地球環境……」については、再生エネルギーの拡充によるイノベーションと地域分散型経済への移行を掲げ、また食糧安保保障を謳う。

 野党共闘派は「格差と貧困の是正」のための経済政策を色々並べているが、社会の支柱である生産的労働の意義を確認し、その上で抜本的な労働条件の改善を図り、労働者の雇用と生活を保障するのではなく、所得と公的サービスの「再分配」を策するに過ぎない。これでは、自民党総裁選に参加している候補者たちの「所得引上げによる労働分配率向上」、「生活困窮者への定額給付」、「医療・介護対策拡充」、「子供への投資」や国民民主の「日本型ベーシックインカム」などと根本的な違いは見られない。政権を手に入れるためには保守層にも気に入ってもらうという配慮もあるのだろうが、これでは労働者の闘いが前進し、自公政権を圧倒する力にはならない。

◇格差と貧困の根源を不問

 野党共闘派は、現在の格差と貧困の根源を明かさず、従って、その解決を何ら示めそうとしない。格差と貧困が拡大再生産されるのは、言わずと知れた資本の利潤拡大運動によってである。このことを明確に示してこそ、労働者に対して自らの雇用と生活を守る闘いを呼びかけることが可能であるが、野党らは一言も発しようとしない。

 最低賃金引上げや非正規雇用などの待遇改善によって貧困を無くすと言うのみで、具体的な案は示されていない。最低賃金について、共産党は独自に「時給1500円」に引き上げるべきだと主張しているが、仮にフルタイム(1日8時間、週5日)で働いた場合の月賃金は24万円であり、社会保険料や所得税などを差引かれるなら、手取り月約20万円、年約240万円にしかならない。これでは母子(父子)家庭や介護する親を抱える家庭では、とても生きてはいけないし、一人世帯でも苦しい生活を強いられる。

 もちろん、労働者は非正規労働(そのうち、7割が女性であり、資本は女性を劣った労働力と見なしている)という封建時代の身分制もどきの雇用形態と低賃金を自ら望んではいない。労働者は少なくとも、雇用形態や性別や職種・職務の違いによる賃金差別が無いことを望む。そのための要求は、「同一労働同一賃金」ではなく、「同一労働時間同一賃金」でなければならない。

 「同一労働同一賃金」は、かつて、安倍政権が非正規労働者の支持を掻き集めるために掲げ、野党や労組も支持したスローガンである。一見すると、正規と非正規、男子と女子、そして年齢による賃金差別を解消できるかであった。

 だが、このスローガンは、経営者や管理者が普通の労働者に対してとる経営的、管理的違いや正規労働者が非正規労働者に対してとる指導や仕事の領域などの違いを容認するものであった。このスローガンは職種・職務内容が同じであれば、あるいは具体的な仕事内容が同じであれば、同一の賃金を支払うことが原則だというもの、それらの違いが認められるなら賃金差別は合法というものであった。

 結局のところ、安倍と同様に、野党は異なる職種・職務の賃金は違っていいのだと認め、また、労組幹部らは職種・職務の違いは複雑労働と単純労働による賃金差であると納得し、高級労働者の立場にたち、安倍政権に追随し屈服して行ったのである。

 しかし、労働者は「同一労働同一賃金」の限界を乗り越えて進み、「労働時間に基づく分配」にまで高めていかなければならない。これは資本主義では不可能ではあるが、労働者の先進的な要求として掲げられるべきものである。こうした観点は野党共闘派の共通政策には無い、もちろんどの野党にも無い。

 そして、「労働時間に基づく分配」が行われるなら、一切の賃金差別は無くなる。同時に、保育・教育・技術訓練・医療の全面的社会化と介護の共同体原理の導入などが進めば、労働者の家族構成の違いや労働者の教育・訓練程度の違いによって生じる生活レベルの差も解消することができる。一連の労働者の経済的要求を貫徹できるならば、野党共闘派が掲げる所得と公的サービスの「再分配」(結局、国家の借金や金持ちに財源を依存し続ける)は不要となり無用の長物になる。

 「再分配」なる政策は、格差と貧困を拡大再生産する資本主義の矛盾によって生まれたものであり、一時的に糊塗するものに過ぎないのだ。

◇脱炭素に向けて階級協調を呼びかける共産党

 次に、共闘派の「地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行」について見てみよう。しかし具体的な内容が示されていないので、共産党の『赤旗』に掲載された「気候危機を打開する日本共産党の2030戦略」(21年9月1日)を見てみたが、地域経済への移行を語る環境学者らの意見をなぞっているだけである。共産党らしさが出ているのは以下である。

 共産党は気候温暖化が産業革命以降の資本主義によってもたらされたとは言わず、「目先の利潤を追う」「新自由主義」によってであるかに捻じ曲げている。歴史の事実さえ把握できないとは、資本主義の民主的再建を目指す共産党の身から出た錆びであろう。

 また共産党は、脱炭素に向けて資本間の闘いが熾烈になること、その影響を多くの労働者が受けることを一切語らない。むしろ反対に、脱炭素社会が何の矛盾もなく「民主的で公正な社会」に移行できるかに諭すのである。その理屈がどこに行きつくかは明らかだ。脱炭素社会の実現に向けて「思想・信条の違いをこえて力をあわせる」ことを呼び掛けること、これである。まさに階級協調主義者に相応しい。

◇資本主義の衰退を労働者に転嫁する資本ども

 野党共闘派は、ジョブ(職種)型雇用への切り替えを急ぐ経済界が職種別賃金の導入を図り、労働力の流動化を策動していることを取り上げず、新浪剛史(サントリーホールディングス社長)の「45歳定年制」という発言に対しても何一つ反応していない。以下では共闘派の経済政策とは無関係ではないので、少し展開させていただく。

 資本とその手代である評論家・御用学者共は、日本のITや半導体をはじめ、多くの産業が衰退していると嘆き、今のままでは日本は共倒れになる、だから、新しい知識や技術を学んだ若者の賃金を上げて猛烈に働いてもらうと言う。そのために、「45歳定年制」などの荒療治が必要なのだと平然と言ってのける。労働者は舐められたものよ。

しかし、経済界や自民党政府が目先の利益に囚われ、日本の半導体やITは欧米や韓国、台湾などから遅れたのではないのか、生産的労働が社会の支柱であり、この労働が科学や技術と結びついて社会は進歩することを知らないだけではないのか。 近年、かつての技術立国・貿易立国の面影はすっかり消え去り、GDPを増やすのが目的と化し、政府は観光立国や消費大国を目指す動きを強めてきた。つまり、外国人を国内観光や買い物に誘い、コロナ禍でも消費拡大と国威発揚を優先して五輪・パラを強行してきた。こうした自民党の政治によってサービス労働が増え、飲食などの消費部門で大量の非正規の低賃金労働者が生まれた。

 その一方で官僚・警察・軍隊が維持され、政府と日銀による量的緩和策や株買い支えなどによって、投資で利ざやを稼ぐ「クソジョブ」の不労所得者を増やしてきた。

 こうした生産的労働による社会的総生産の意義を理解せず、消費大国に転向することによって、日本資本主義の衰退は加速してきたのだ。その衰退を止めるためと規制緩和を行い、労働者派遣法や雇用契約法を作り、非正規を全労働者の4割にも増やし続けてきた。なぜなら、労働者の賃金を大幅に縮小すれば、利潤はそれだけ増大するからだ。その甲斐があって、大企業経営者の所得や「クソジョブ」の金持ちが増えてきたに過ぎない。何と矛盾した世の中か。

 もし日本資本主義の衰退を嘆くなら、経済界はまず自己批判し、次いで自民党政府を攻撃すべきであろう。矛先を労働者に向けるとは不届き千万だ。同時に野党は過少消費が不況を深めたと嘆き、国家依存の需要拡大を策するケインズやMMT経済学へ傾斜してきた。その責任は極めて大きい。  (W)


【二面サブ】

バイデンの同盟戦略
AUKUS(オーカス)(米英豪軍事同盟)で軍拡競争

 泥沼化したアフガンからの性急で無責任な撤退は、米帝国主義の犯罪性をバイデン大統領自ら世界中に暴露したのであった(現地スタッフを置き去りにした日本も酷い)。バイデンは権威挽回とばかりに中国対抗戦略を展開し、AUKUS=オーカス(オーストラリアと英国と米国の軍事同盟)の創設を打ち出した。

 バイデンは「われわれ3カ国と世界の未来は、数十年先まで繁栄する自由で開かれたインド太平洋に懸かっている」と強調し、「21世紀の脅威に対応するため、(米英豪が)共有する能力を刷新、強化する」、その第一歩として、米英両国が豪州に原潜関連技術を供与し、原潜建造を支援する(時事ドットコム9月16日)。 このオーカスをめぐり英国が独自外交で成果を誇っている。半年前からひそかに計画を進めて米豪の橋渡しをするなど、AUKUS立ち上げに大きな役割を果たした」(朝日9月20日)。EU離脱を主導したジョンソン英首相は16日、「『グローバル・ブリテンのインド太平洋への傾斜』がどんな意味を持ち、英国にどんな貢献ができるかという疑問があるとすれば、今回の豪州と米国との協力関係が答えだ」と誇った。「グローバル・ブリテン」はEU離脱後の英国が外交基本方針に据えた考え方。インド太平洋地域を中心に英国が世界との結びつきを強める戦略で、「EUを離脱しても英国だけでも外交成果を上げられると示す好機になった」というわけである。原潜建造には英国ロールスロイス社などが参加する見通しで、軍需産業による経済効果が期待されるというのだから、英資本の腐朽を示しており、反動的政治家がはびこる背景になっているのである。

 オーカスは、アセアン諸国の頭越しで発表され、関係国に困惑が広がっている。インドネシア外務省は、「域内で続く軍拡競争と戦力展開を深く懸念する」との声明を発表、マレーシアの首相がモリソン豪首相に、「オーカスが南シナ海において、他国による攻撃的な行動を挑発することになるのではないか」と懸念を示したなど、そして、シンガポールにある国際戦略研究所の東南アジア政治アナリスト、アーロン・コネリー氏は「ASEANは、自分たちを含めない外部の枠組みが、域内で新しい影響力を持つことを熟知し、恐れている」と指摘している(毎日9月20日)。米政権高官が、長期間の潜航が可能で隠密性の高い原潜を保有すれば「インド太平洋全域で抑止力の維持、強化が可能になる」と説明したところで、中国の覇権主義だけでなく、米帝国主義の身勝手な行動への反発も強いのだ。

 オーカスにより潜水艦製造契約を横取りされたフランスは、約7・2兆円の契約を見込んでいたので大打撃となる。猛反発したフランスは歴史上初めて、米豪駐在の自国大使を召還した。米国への反発はEUによるバイデンへの不信に広がる気配を見せ、「中国包囲網」を巡るブルジョア的利害対立を露呈した。  (岩)

   

   
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