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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1412号 2021年10月10日
【一面トップ】 なにが「変わった」のか――安倍・菅政治を受け継ぐ岸田新政権
【1面サブ】 野党共闘派の〝数の論理〟
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】 動き出した「灰色のサイ」――中国恒大危機の行方
【二面サブ】 有害無益なアベノミクスを実践――黒田、在任期間が歴代トップに

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

なにが「変わった」のか
安倍・菅政治を受け継ぐ岸田新政権

 「安倍政治の継承」を謳った菅が僅か1年余で挫折、岸田新政権が誕生した。しかし、変わったのは〝顔〟だけで、新たな党役員・閣僚の顔ぶれを見ても政策を見てもこれまでの自民党とほとんど変わっていない。

◇政権の要職は安倍、麻生両派に

 新たな人事では、麻生が副総裁になり、政権の要となる官房長官には細田派の松野博一が、幹事長には麻生派の甘利明がなり、その他党の要職として党の最高意思決定機関の責任者としての総務会長には細田派の福田達夫、党の政策責任者である政調会長には無派閥だが安倍の支援を受けて総裁選に立候補した高市早苗が、選挙対策委員長には谷垣グループの遠藤敏明が就任することになった。

 岸田が甘利を幹事長に任命したのは、総裁選でいち早く岸田支援を打ち出し、岸田の選挙対策顧問として安倍や麻生との連絡、調整の役割を担い、勝利に貢献したという理由からである。

 しかし、甘利は、2016年、経済再生相であった時、都市再生機構(UR)と土地の交換補償交渉をしていた業者から口利きの見返りとして現金を受け取ったことが発覚、検察からあっせん利得処罰法違反として告発され、閣僚を辞任した人物である。その時は国会で説明しないまま健康問題を理由に長期入院した。不起訴とはなったが、以降説明責任を果たさないまま現在に至っている。

 幹事長といえば、総裁に次ぐナンバー2として、党の人事、選挙での公認権、党財政権を握る中枢ポストである。こうした重要な地位に汚職犯罪者である甘利を選任することは、岸田が党の腐敗になんの反省もしていないことを暴露している。

 岸田は総裁選では、党員・党友の得票は河野の169票(41%)に対して110票(26%)と劣勢であったが、国会議員の得票で勝った。石破や小泉が応援する河野に対して、岸田を応援したのは細田(安倍)、麻生2大派閥を中心とする派閥であり、岸田の人事はそれへの論功行賞であった。

 当初「自分とは隔たりがある」と言っていた高市までも安倍の強い支持を理由に政調会長に選任したのをはじめ、財務・金融相、経済再生相は麻生派、文部・科学相、経済産業相、防衛相は細田派と、重要用閣僚は安倍、麻生の反動派の強い影響のもとにある。

◇「所得倍増」は空約束

 岸田の最大の公約は経済政策である。岸田は、競争を重視するこれまでの「新自由主義的な政策」を転換し、経済成長の果実を中間層に手厚く分配する「新しい資本主義」を実現するとアピールしている。

 具体的には子育て世帯の住宅費、教育費の支援、看護師や保育士の賃上げ、さらには大企業と中小企業の労働者の賃金格差、高所得者と低所得者の格差、都市と地方の格差の是正、などをあげているが、そのためには財源はどうするのか。岸田は株式売却益や配当による金融所得への課税強化などを挙げているだけで具体的には明らかにしていない。

 所得の再配分によって「(経済)成長と分配の好循環を実現する」という岸田の主張は、不況の原因を消費不足に求める誤った俗論、〝過少消費〟説でしかない。

 長引く経済停滞の原因は、利潤の獲得・増加を目指す資本の無政府的な生産にあるのであって、個人消費の縮小は経済停滞の結果であって、原因ではない。もし、個人消費が不況の原因だとしたなら、資本はとっくに大幅賃上げを行ってきただろう。

 岸田はこれまでの「新自由主義な政策」を転換して分配重視の「新しい資本主義」を実現するというが、安倍政権の下でも、経済の活性化、成長のためと称して政・労・資(政府・労組・企業)3者協同による賃上げ(官製春闘)が行われた。しかし、経済成長は実現されず、それは政権維持と労働者に労資協調意識を促すための欺瞞であることが暴露された。

 安倍は〝異次元〟の金融緩和などで日銀を通じで大量のカネをばらまき、赤字財政を膨張させてきた。その結果、財政はますます水ぶくれし、破産に向かって進み、経済、社会の矛盾は深刻化している。

 にもかかわらず岸田は「アベノミクス」によって「企業収益は上がり、経済は間違いなく成長した」というのである。企業収益が上がったといっても、金融緩和や日銀の株式の買い取りによる株価の支持策によるバブルであって、インフレになれば一挙に吹っ飛んでしまうようなものである。

 岸田は「新しい資本主義」による「令和版所得倍増」などといってなにか新しい経済政策であるかに言っているが、実際には破綻した「アベノミクス」と一体どれほど変わるというのだろうか。

◇外交・憲法・原発でもこれまでの政策を継承 

 その他の政策でも、安倍・菅政治の継続である。

 外交政策では、「自由に開かれたインド、太平洋構想の推進と民主主義同盟のネットワーク」を促進、日米同盟を中心に日・米・豪・印4カ国の枠組みやASEANとの連携を推進していくと、これまでの中国を対象とした包囲政策を継続することを謳っている。さらに「人権問題担当官」を新設するとしているが、これも中国ウィグルの人権問題を念頭に置いたものである。

 安全保障問題については、総裁選で反動派の高市が「敵基地攻撃能力を保有すべき」と軍備増強を叫んだが、岸田はそれも「有力な選択肢」と認めると言っている。

 憲法問題については、安倍は戦後憲法は占領軍によって「押し付けられた」憲法であり「自主的憲法」を制定しなくてはならないとして、そのための突破口として、自衛隊の憲法への明記、大災害、戦争などの〝緊急事態〟が生じた場合には、国民の権利を一時停止を可能とする「緊急事態条項」を設けるなど4項目の「憲法改正」を主張してきた。これについて岸田は「改正はしっかりと実現しなくてはならない。任期中に実現の目途をつける」と述べている。

 原発問題でも「再稼働、核燃料サイクルを推し進める」という。

 岸田政権の政策も、これまでの安倍・菅政権と基本的には同じである。

 岸田は総裁選に臨み、「政治に国民の声が届かない」「我が国の民主主義が危機に陥っている」と訴えたが、それとは裏腹に森友・加計問題も公文書改竄も「解決済み」のことだとすませている。

 岸田は総裁選後、「生まれ変わった自民党をしっかり国民に示していかねばならない」と訴えた。だがこれが単なる空文句であることは、今後ますます明らかになるだろう。 (T)

   

【1面サブ】

野党共闘派の〝数の論理〟

 安倍・菅自公政権を引き継ぎ発足した岸田新政権は、4日の組閣発表と同時に14日の解散を表明し、19日公示31日投開票の日程で衆院選が行われる。

衆院選は小選挙区比例代表並立制で、議員定数465のうち小選挙区分が289あり、1選挙区で1名を選出するという大政党に有利な差別的制度である。かつて共産は「国政選挙全選挙区への候補者擁立」の方針で、小選挙区に候補者を乱立し、独りよがりな選挙戦によって与党に議席を与えた。また、2009年の衆院総では、共産が「全選挙区擁立」をしなかったこともあって、「野党共闘」がなくても民主党が第一党となり、政権交代を果たしたこともある。

こうした経験も踏まえれば決して〝数の論理〟が全てでないと分かりそうだが、与党と対峙するために野党候補の一本化がもてはやされる。並立する比例票獲得には選挙区での立候補が有利ということがあり、政党間の駆け引きがあって選挙調整が難航する。今回は「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)の呼びかけに応える形で、立憲、共産、社民、れいわの4党が共通政策に調印し、選挙協力していくことになっている。政策協定によって「野党共闘」による統一候補として押し出されることになるが、一本化調整が不透明の選挙区がないわけではない(静岡2区での立・民、共産、れいわによるゴタゴタを見よ)。

「野党が協力して選挙に勝ってください」という素朴な思いもあるだろうし、自党本位の闘い方への反発もあるにしても、資本主義社会には、階級間の利害対立が存在していること、その認識や理解の違い、利害関係の違いが政党の違いであり、政治闘争が国家権力や政党間の闘いとして必然であることは確認しておくべきであろう。

なぜなら、野党共闘でないと闘えないかの主体性喪失の(あるいはそう見せかける臆病か)政治的立場を労働者は支持しないし、労働の解放を目指すためには克服するべきと考えるからである。

共産党は今月1日の志位と枝野との会談において、総選挙で自公政権を倒した後の「新政権」において、市民連合と合意した政策を着実に推進するために、「限定的な閣外からの協力」をすることで合意した。

本紙前号で野党共闘派の経済政策について検証し、彼らの格差と貧困の根源を不問にしている再分配論のブルジョア性を明らかにし、「労働時間に基づく分配」こそ勝ち取るべき課題であることを指摘した。環境問題については、脱炭素社会の実現に向けて「思想・信条の違いをこえて力をあわせる」という立場は階級協調主義であり、脱炭素社会が何の矛盾もなく「民主的で公正な社会」に移行できるかに諭す共産党を批判した。

市民連合と合意した政策を素晴らしいものと美化している共産党が今から「閣外協力」を言うのは無責任ではないか。連合や国・民からの「共産党との連立政権に反対」という強い意見を配慮したのだろうが(共産党内に批判的意見があるという声は聞こえてこない)、選挙調整に振り回されて本末転倒、さらに〝数の論理〟で、めざすべき政治課題をあいまいにして、ブルジョア的堕落の深化と断じるしかない。 (岩)


       

【飛耳長目】

★戦争を歴史的科学的に分析したクラウゼビッツは、「戦争は政治の一手段である」と喝破し、政治が正しくなければ、戦争の残虐性と破壊性は際限がないとも警告した★9・11テロへの報復を名目にした米国のアフガン戦争は、ビンラディン殺害を経て、明確な目標のない(強いて言えば「自由と民主主義」)、米国の威信を賭けて戦われた。ドロ沼の戦闘と9百兆円に及ぶ戦費の圧力で、バイデンは8月末に撤退と戦争終結を宣言した★この戦争の死者は、アフガン兵士と市民が70万人、米兵は7千余の戦死者と3万人の自殺者を出した。さらに撤退時のIS自爆テロで70人超、報復のはずの誤爆で米系NPOのアフガン男性と子供7人を含む10人も加わった★20年前の開戦から終結まで、この戦争の目的と手段は全て誤っていた。「自由と民主主義」は、戦争目的が帝国主義世界の防衛にあることを隠す欺瞞だったのだ★アフガンに限らず、イスラム世界の多くが〝政教分離〟以前の、資本主義的発展から疎外された時代にある。イスラム教徒は階級的な存在=ブルジョア的個人としてではなく、宗教的規範に拘束されて存在している★先進国の労働者は、イスラム教徒の労働者的な部分に寄り添うことで〝世俗化〟を促し、歴史を前に進めなければならない。 (Y)


【2面トップ】

動き出した「灰色のサイ」
   中国恒大危機の行方

 中国の不動産大手、恒大集団のデフォルト(債務不履行)は、他の不動産企業にも波及し、中国経済を揺るがしているのみならず、世界の株式市場にも波及しつつある。恒大危機の行方は?その意味するものは何か――それが問題である(「灰色のサイ」とは、軽視されているが、いったん動き出すと制御できない重大なリスクの比喩)。

◇恒大集団の債務危機

 恒大集団は、2020年12月期の売上高が5072億元(約8兆5千億円)、物件販売面積は中国第2位という、中国最大級の不動産開発業者。不動産開発で巨万の富を手にした創業者の許家印(2017年の資産額で中国トップとなった)は、テーマパーク経営、ヘルスケア、電気自動車(EV)開発などにも手を広げ、サッカーチーム(広州FC)も所有するなど、〝立志伝中〟の大富豪として名をはせてきた。

 しかし、その経営は、借金に借金を重ねて事業規模を拡大する〝自転車操業〟そのものであり、成功の陰で債務が膨張していた。今年に入って各地で建設工事の停止や建築業者への工事費未払いなどが報じられ、同社の株や社債価格は下落し、デフォルトが懸念されるようになっていた。

 恒大集団が香港証券取引所に提出した財務報告書によれば、今年6月末時点での負債総額は1兆9700億元(約33兆5千億円)、そのうち有利子負債は5718億元(9兆7千億円)に上った。その負債総額は中国のGDP約2%に相当するというから驚きである。

 一方で、資産としては、進行中の建設プロジェクトだけで4568億元(7兆8千億円)の実物資産がある。恒大は128の銀行と取引があり、317万人に就業機会を提供してきた(『週刊東洋経済』10月9日号)。

 したがって、その破綻は、不動産分野だけでなく金融や雇用にも重大な影響を及ぼすことは避けられない。

◇債務危機の契機

 恒大集団がデフォルトの危機に陥った直接の契機は、不動産業界に対する融資規制である。中国当局は、不動産バブルが膨れ上がり、上昇する一方の不動産価格を抑制するために、昨年8月に「前受金を除いた負債対総資産比率が70%以下」「負債率(他人資本/自己資本)が100%以下」など3つの基準(「3本のレッドライン」)を打ち出した。恒大集団はこの基準に達せず「赤」と判断され、新規融資を受けられなくなったため、一気に経営が悪化した。

 既に利払い期限がきた恒大集団の社債は、元建て債については支払われたとの報道はあるものの、ドル建て債の利子は支払われず、支払い猶予期限が切れる10月末にはデフォルトになる可能性が大きい。ドル建て債は200億ドル(約2兆2千億円)に上るので、その利払いが停止されれば海外投資家には打撃であり、世界の金融市場にも重大な影響を及ぼすだろう。9月下旬に世界中で株価が下落した所以である。

◇中国当局は救済せず?

 恒大集団は、資産を切り売りし、債務返済に躍起となっているが、それで返済が完了し、立ち直るなど誰も信じないだろう。債務があまりにも巨額だからだ。

 一方、中国当局は、積極的に恒大集団を救済する姿勢を見せていない。習近平政権は、「共同富裕」のかけ声の下に富豪叩き、新興企業締め付けに励んでいる手前、成金富豪筆頭格の許家印率いる恒大集団を直接救済するわけにはいかないのだ。

 そもそも住宅価格上昇で大もうけしてきた、そして〝庶民〟の住宅入手を絶望的にしてきた――そのため、若い男性は住宅を購入することができず、したがってまた結婚できず、少子化が進むという副産物を生んでいる――不動産開発業者を規制するために融資制限を強化してきたのだから、ここで恒大集団を救済すれば、その朝令暮改に批判が高まるのは必至だ。

◇債務危機・経営危機の連鎖

 しかし、そうこうしている間に、不動産業界では第二、第三の恒大が出てきている。また、恒大が筆頭株主である地方銀行の盛京銀行も経営危機に陥るなど、金融業界にも波及しつつある。恒大集団は取引がある128の銀行中、121行に負債があると言われているから、金融業界への影響も大きい。もちろん、工事費の未払いは建設業者の経営を圧迫しているし、住宅建設の停滞は関連産業に波及し、中国経済を冷え込ませるだろう。

 既に恒大集団に住宅購入費を支払いながら、住宅を手にすることができない――中国各地で工事が中断している風景がメディアを賑わしている――消費者(投機目的の購入者も少なくないのだが)は、生活を圧迫され家計を引き締めざるを得なくなり、個人消費も減退するだろう。

 ここで確認しておくべきことは、中国経済における不動産および関連した金融業界の比重である。

 「中国の経済成長をけん引してきたのは不動産で、いまやGDPの約20%、関連市場も含めると約30%を占める『不動産頼み』の状況にある」(米国のヘッジファンドマネージャー、ジム・チェイノス氏、日経ビジネス9月21日号)。

 その背景には、リーマン・ブラザーズショックで世界中が金融危機に陥ったとき、中国は大規模な金融緩和に乗り出したが(それが世界経済の危機を救ったことは否めない)、それ以降も中国は金融緩和を続けてきたことがある。また、2020年初めのコロナ・ショックでは一段と金融を緩和した。

 「金融緩和の長期化で生じた『カネ余り』で、中国では余剰資金の多くが不動産市場に流入。都市部の住宅保有率は9割超と日米欧の6割強を大きく上回り、一部都市では平均年収に対する住宅価格の倍率が40倍を超え、東京の10倍強と比べても高騰している」(時事通信、9月23日)。

 大規模な金融緩和とその長期化による不動産バブルと言えば、日本のかつての土地・不動産バブルと同じである。それは、当局の融資「総量規制」ではじけ、日本は長期停滞に陥ったのであるが、中国もまた同じ道をたどるのであろうか。「資金繰りに苦しむ業者の間では、保有物件や資産を投げ売りする動きも出ているという。業界全体が苦境に陥る中、金融機関の貸し剥がしの動きが広がることも懸念材料だ」(同)。

 このところ相次ぐ大規模な停電などと合わせ、中国経済がかつてない危機に直面していることは明らかである。 (鈴木)


【二面サブ】

有害無益なアベノミクスを実践
黒田、在任期間が歴代トップに

 日銀黒田の在任期間が去る9月29日に3116日となり、歴代単独トップになった。黒田はこの2日前の記者会見で、「これまで行ってきたさまざまな緩和措置は正しかった」と強調。黒田が就任当時、マスコミはもちろん、野党や経済学者からも大歓迎された「黒田バズーカ」(異次元の金融緩和策)は、今になって彼らからも空砲だったと揶揄されている。

◇我々はアベノミクスを直ちに暴露した

 12年秋の総選挙で野田民主党政権を倒して登場した第二次安倍政権は、日銀総裁を白川から黒田に替えることを決め、物価引上げ目標を1%ではなく2%に変え、金融緩和を無制限に行い、そのことによってデフレから脱却すると言い出した。

 つまり安倍と黒田東彦、岩田規久男らリフレ派(ケインズ経済学の一派)との共闘の始まりである。

 この当時(13年1月)、我々は次の様に述べた。

 「アベノミクスがどんなに愚昧な『金融政策』であるかの一つの証拠をあげ、それがどんなに無力で空虚な政策であるかを暴露しよう。

 日銀は現在でさえ『金融緩和』に向けて、涙ぐましい、懸命の努力を続けている。例えば、101兆円もの『資産買い入れ基金』を設け――最初(10年10月)は35兆円だったが、それは急激に拡大され、101兆円にもなっている――、その限界内でカネをバラまくということだったが、実際には、この101兆円はバラまけという義務目標、日銀へのプレッシャーとなっている。

 そして安倍は、この上限をなくして〝無制限の〟金融緩和を実行する(毎月13兆円もの国債を買う)『協定』を日銀と結んだことが自分の勝利だとうぬぼれ、まるでそれが、『景気回復』や『経済成長』を確実にもたらすかに勝ち誇り、浮かれるのである。

 しかしバラまきの上限を高め、日銀はせっせとバラまいてきたが、そのカネを手にした大銀行は国債を買うか、日銀の当座預金に積み上げるだけだから、そんなカネは『景気回復』や『経済成長』のためにほとんど機能して来なかったのである。むしろ政府がそれこそ〝無制限に〟借金をして、そのカネを財政を通してバラまくことを助け――労働者はもちろん、国民のためにではなく、まさに政府や政治家の利益や延命のために――、可能にしているだけであると言って少しも言い過ぎではない」(『アベノミクスを撃つ』(216頁、林紘義著・全国社研社刊)。

 安倍の意を受けた黒田は、金融緩和を徹底させるために、日銀当座預金(各民間銀行の日銀への預金口座で、決済に利用され、残高は日銀の負債を構成)の法定無利子部分以外に付いている0・1%の利子を無くせば、金融緩和の効果が生まれ、物価も2年後には年2%の物価上昇を実現できる、従ってデフレから脱却するとハッタリをかました。

 実際に黒田は、その後長期国債もどんどん買って、長期国債の保有額が日銀券の量を超えないように定めた「銀行券ルール」も見直し、無制限に国債を買い(年80兆円も)、同時に日銀当座預金の付利をゼロやマイナスにしていったのである。

 日銀保有の国債残高を見ると、13年1月の長期国債は89兆円であったが、20年12月のそれは494兆円に膨らんだ。

◇アベノミクスの虚構

 しかし、こうした無制限の金融緩和によってカネを作り、日銀当座預金の付利を下げれば民間銀行から企業への貸出がどんどん増えるわけではない。既に資本と生産の過剰が形成され、海外との国際競争で国際価格の引き下げを強いられた。

 また、金利引き下げが円安を作り出し輸出増大を促すとも言われたが、こんなことは、米国やEUもやるのだから、一時的に振れた円安はじきに円高になったのだ。

 日本の資本にとって、新たな技術による生産創出や生産拡大の環境が生まれないならば、銀行から前貸しすることは出来ないのである。

 白川総裁の量的緩和ではダメだ、無制限に拡大すれば民間銀行の貸出が増え、景気拡大に繋がると思うのは、安倍や黒田らの妄想でしかなかったのである。

 実際、日銀の当座預金残高は13年1月の44兆円から20年12月には494兆円となった。当座預金からたいして民間貸付が働いていない証拠だ。

 今や量的緩和策は、金利上昇を防止し、政府が借金するためのゼロ金利(マイナス金利)政策に堕している。

◇多くの弊害が発生

 そして、低い貸出金利が民間銀行の業績と財務を圧迫し、業界再編が加速している。銀行もそういつまでも政府の国債を買い続けることが出来ない状況に至っている。それが今年に入って現実に起きた。つまり国債売買の不成立である(『海つばめ』1398号参照)。

 また、日銀国債残高の高止まりが顕著である。

 例えば長期国債の残高は、1年前の20年9月に494兆円、21年9月に512兆円である。これを見る限り、短期を除く長期国債はこの1年でわずか18兆円しか増えておらず、急にブレーキがかかっている。

 これは一時的なのか、それとも今後も同様な傾向になるのかは不明だが、大量の国債発行を継続してきた矛盾の現れであることは確かであろう。

 さらに日銀は、民間銀行の窮状を救うためと、日銀当座預金に0・1%の付利を復活させたが、これも黒田の破綻の現れである。

 その上、日銀は資本の応援のためにと、社債やETF(上場投資信託)などの金融資産を大量に買い支えてきたが、日銀資産は株価下落などの市場変動の影響を受けやすくなり、含み損がいつ発生してもおかしくない状態にある。

 「買い入れを増した社債は9月末(20年)で191憶円の含み損だった」(日経20年11月26日)という日銀収支に影響を与える〝衝撃〟も出始めている。

 黒田よ、さあどうする。  (W)

   

   
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