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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1416号 2021年12月12日
【一面トップ】 岸田首相の臨時国会所信表明演説を論ず
          バラまきの弁解――事実上、MMT導入を表明
【1面サブ】 国債と日銀当座の金利差で国債を買うのか?
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】 共産党の無力な野党共闘路線――労働者独自の闘いの発展を
【二面サブ】 反動派に支えられ改憲も軍備増強も――安倍継承の岸田
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

岸田首相の臨時国会所信表明演説を論ず
バラまきの弁解――事実上、MMT導入を表明

 臨時国会が召集された6日(12月)、岸田の10月に続く2回目の所信表明演説があった。岸田が力説したいのは経済対策であり、そのための賃上げ促進、個人・事業主向け給付、GoToなどによる個人消費喚起であり、さらに「新自由主義」批判と「新しい資本主義」による成長と分配である。そして、「新しい資本主義」を保障するのが「大胆な投資」(国家投資)だと大騒ぎしている。

◇補正予算を正当化

 今回の岸田の所信表明は10月のものと変わりはないが、全体の7割ほどを経済対策に割いた。

 その理由は、先月の19日に過去最大となる56兆円の補正事業を閣議決定し、次いで26日には36兆円の新規歳出となる補正予算案を閣議決定したが、18才以下の子供への10万円給付そのものや多額の給付事務費が発生することに対して、「バラまきだ」との批判が殺到し、その弁解が必要であったからだ。

 岸田はバラまき批判に対して、生活困窮者、子育て世帯、学生に対する即効性のある個人給付が必要だと述べるのみで、なぜ裕福な世帯にまで給付するのかの説明は全くなかった。

 また、36兆円の新規歳出予算についても、岸田からはコロナ対策や個人・事業主への給付やGoToキャンペーンを再開し、観光事業を救済することなどを上げているが、それ以上の具体的な説明は無く、ただ、「危機に対する財政支出は躊躇なく行い、万全を期す。経済あっての財政である」と、現在が危機の経済状況でありその為の歳出だと言うのがやっとだった。

◇岸田の「新自由主義」批判

 岸田は「新自由主義」を批判しながら次のように述べた。

 「人類が生み出した資本主義は、効率性や企業家精神、活力を生み、長きにわたり世界経済の繁栄をもたらしてきました。

しかし、1980年代以降、世界の主流となった、市場や競争に任せれば、全てがうまくいく、という新自由主義的な考えは、世界経済の原動力となった半面、多くの弊害も生みました。

 市場に依存し過ぎたことで、格差や貧困が拡大し、また、自然に負担をかけ過ぎたことで、気候変動問題が深刻化しました。・・・我が国としても、成長も、分配も実現する『新しい資本主義』を具体化します。世界、そして時代が直面する挑戦を先導していきます」と。

 岸田の演説を聞いた人は、資本主義特有の「市場原理」を批判しているかに感じるだろう。岸田は80年代以降、格差や貧困が拡大したと述べ、あたかも小泉改革以降の労働市場の流動化策により、派遣や契約労働者が急増し、非正規労働者が労働者全体の4割を占めるようになり、その結果、格差や貧困が拡大したかに言う。

 しかし、岸田は中世の身分差別まがいの非正規労働を無くし、女性が非正規の7割を占める女性差別を解消するとの一言も無い。介護や医療などの福祉関連労働者の賃金を引き上げると言ったが、これは、女性の賃金差別を解消するという殊勝な心掛けなどではない。

 自民党の総裁選にて岸田は、「新自由主義」批判と結びつけて、金融所得課税による一定の格差是正をやるかに見られたが、財界や安倍らに批判されるやたちまち撤回し、また、アベノミクスの異次元の量的緩和に対する批判も含まれるかに理解されるや、アベノミクスを継承すると宣言し、分配が強調されたかに批判されるや「成長があっての分配」だと次々に訂正したのである。

◇「新自由主義」批判の真意は?

 それでは、岸田の「新自由主義」批判は立憲や共産らの野党が言うように、単なるポーズ、くち三味線に過ぎないのか。これを探る手掛かりは、安倍と高市らが1日(12月)に立ち上げた「財政政策検討本部」にある。

 この新組織は、安倍政権時代から続いていた「財政再建推進本部」を改組したものである。この本部長席には、明治憲法復活を主張する右翼であり、MMTを信奉する西田昌司政調会長代理(安倍派)が座った。西田をバックアップするのは、最高顧問についた安倍であり、顧問の高市政調会長らである。

 西田はアベノミクスをMMTとして復活させたいと策動している人物で、アベノミクスは量的緩和策が主であり、財政膨張策を従にしていたが、その主従を反対に変更すべきだと主張する。

 いくら量的緩和を行い、国債を日銀が買い集めて日銀当座預金にカネを積んでも、不況の中では、銀行からカネを借りる民間企業は少ない、むしろ、減税(消費税とか)で大衆の購買力を高め、国民全員への「旅行クーポン」を支給して、瀕死状態の観光業界を速攻で救済し、長期的には、「毎年20~30兆円」の投資予算を用意し、インフラ整備に注ぎこみ10年間続ければ、慢性的な景気低迷、長期不況を脱出し、「新しい日本資本主義」を築くことができる、と言うのである。

 西田はMMTの理屈を掲げ、主権通貨を発行する国家は借金をいくら増やしても何の問題も無い、むしろ国家の財政支出によって民間は利益を得ることができる、つまり国家の負債(借金)は民間の資産(黒字)だと言うのであるが、これは、ちょうど1年前に発行した『プロメテウス』59号にて、「MMT経済学批判」を特集した際に登場願ったL・ランダル・レイや「薔薇マーク運動」を主宰する市民派の松尾匡らの論調と全く同じである。

 昨年度には、3回の補正予算を組み、単年度の国債が100兆円を超え、今回の補正予算36兆円のうち、6割に当たる22兆円が新規に発行する国債となり、21年度末の国債残高は1000兆円を突破する。要するに、西田はまた安倍も、国家の無制限な財政支出を恐れることは無い、年20~30兆円規模の「長期インフラ投資」を毎年続けなければ、今の不況が続くのであり、仮にインフレが起きたとしても不況よりインフレの方がいいのだ、インフレなどは簡単に調整できると放言する。

 また、民間銀行は国家が発行する国債は無限に買い続け、それを日銀が買い戻せば国家は無制限に国債を発行し続けることが可能なのだと宣う。

 何ともはや、ご立派なご託宣であることか。西田や安倍や高市らは国家主義者であるからこそ、MMT派を標榜することができ、経済を民間に任せるのではなく、国家主導により経済を作ると言うことができるのである。

ここまで説明するなら、岸田政権がなぜ「新自由主義」批判をするのかの理由がお分かりであろう。西田は安倍と高市の了解を取り付け、さらに岸田が総裁選に出る頃には、岸田もまたMMTによる経済再建、MMTに内在する「新自由主義」批判を受け入れていたのである。

 要するに、岸田が掲げる「新自由主義」批判は、「市場に依存し過ぎたことで、格差や貧困が拡大した」、これからは、国家へ経済依存を強め、国家による「投資」を計画し、経済成長を促し、その結果、「成長の果実をしっかりと分配し、消費を喚起することで、次の成長につなげ(る)」という意味なのである。

 従って、岸田は非正規労働や格差や賃金差別を根本的に解決するとか、大幅に改善するとかと言うつもりはさらさらないのである。

 さらにまた、経団連や大企業経営者らは、かつての半導体産業のように、日本の先端産業が再び世界のトップクラスに浮上できることを夢見ているが、岸田政権は経済界が進めている労働者の流動化(JOB型雇用移行に伴う解雇自由化など)を規制したり制限したりする気も全く無いのである。

 だから、岸田政権は今後の労働力の流動化によって引き起こされる矛盾を国家の給付金による「再分配」や非正規労働者に対する「就職支援」や「学び直し」を謳うに過ぎないのである。

◇大胆な投資と経済安全保障

 岸田は「新しい資本主義」の下での経済成長を描いている。それは既に述べたように、国家主導による「成長のための大胆な投資」によってである。その投資先は「科学技術によるイノベーション」であり、「デジタル田園都市国家構想」であり、「気候変動問題」であり、「経済安全保障」だと。よくもまあ、何百兆円あっても足りないような構想を国会の冒頭で並べ立てているが、これらもまた、西田や安倍らの「長期投資計画」に沿ったものなのである。

 しかし、看板を掲げれば持続的な成長が、つまり拡大再生産が可能になるわけではない。安倍政権においても、ITや先端医療などへの投資はさんざん行われてきたのであるが、結果は惨憺たるものであった。今回の岸田の「大胆な投資」もまた、何か目新しさを誇っているが、それが産業に根付くかは別問題なのである。

 西田や安倍は、そして岸田政権は、無制限の国債発行が可能かに、神のご託宣のように信じ込んでいるようだが、銀行は無限に国債を購入し、日銀も無限に銀行から国債を買い戻す(高く買う)ことができないこと、日銀信用や国家信用も絶対的ではないことを知らないハレンチどもなのである。 (W)

   

【1面サブ】

国債と日銀当座の金利差で国債を買うのか?

 西田は国債と日銀当座預金の金利を比較し、国債の方が有利だから銀行は国債を買うという。しかし銀行は政府の国債を買い、資産として保有するが、日銀が国債を高く買上げてくれるなら、国債を売り差額を儲けることができ、その限りで大量な国債を買い、他方の日銀は、購入した国債の代金を決済用の当座預金に振り込む。そういう仕組みなのである。西田が言うように、銀行は国債と当座預金の金利差を比較し、国債を持った方が有利だから購入するわけではないのだ。 (W)


       

【飛耳長目】

★「隠れ増税」の週刊ポストの記事を読んだ。年金270万円だと13年は所得税も住民税も非課税だったが、老年者控除など各種の所得控除が廃止され現在は両方で8万課税される。加えて国保と介護保険料が03年の9万が29万に増え、合計約28万の負担増。これが「隠れ増税」だと★紛れもない増税と言えば消費税だ。13年の税率は5%、2百万の消費で税額は10万が現在は10%で20万に。この8年間は12~20年の第2次安倍政権と重なり、安倍政権の苛斂誅求を示す数字である★政府統計の平均年金額は175万、国民年金満額約79万からすると270万は裕福な階層だ。年金世代に限らない労働者の生活苦は推して知るべしだ★消費増税は「社会保障のため」と民主党がレールを敷いたが、安倍は増税の度に法人税と所得税を減税し、法人税は19兆が8兆に、所得税は最大27兆あったのが19兆弱に減った。消費増税は所得税・法人税減税の穴埋めに使われた★バブル崩壊後、企業の内部留保は倍増して450兆。個人金融資産は3倍増で2千兆になる一方、賃金は先進国平均でこの30年間で33%増えたのに、日本はわずか7%。企業と富裕層が潤う政策が続いたのだ★労働者は生活防衛の闘いとともに、資本の支配一掃のために団結する必要がある。 (Y)


【2面トップ】

共産党の無力な野党共闘路線
   労働者独自の闘いの発展を

 今度の衆院選で野党、その中でも共産党は、政権交代を打ち出して選挙戦を闘い惨敗したが、共産党が提起した野党共闘が、資本主義を根本的に変革する労働者の闘いを発展させるものだったのかが問われるであろう。

◇野党共通政策と立・民、共産との政権協力合意

 この間9月8日に市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の共通政策を立・民、共産、れいわ、社民の4党が受け入れ野党協力の体制を作ったのである。その共通政策は、憲法に基づく政治の回復、コロナウイルス対策、格差と貧困の是正、地球環境を守る、ジェンダーに基づく自由で公平な社会、権力の私物化を許さないなどであり、安保法制などの違憲部分の廃止や辺野古新基地の建設中止以外は、自公政権の政策と大した違いのないものである。

 そして、安保法制などの違憲部分の廃止といっても、「自衛隊は違憲」であるという共産の綱領的立場は堅持するというのであるから、矛盾も甚だしい。格差と貧困の是正では、岸田が言うのと変わらない「再配分の強化」などであり、資本による厳しい労働の搾取の廃絶をめざすものではなく、労働者・働く者の地位向上にはならないのである。こんな共通政策は、決して労働者・働く者が支持するものとはならない。

 そして9月30日には、共通政策を推進するためとして、立・民と共産は総選挙において自公政権を倒し新しい政治を実現する政権協力を結んだ。共産は政策を実現する範囲での限定的な閣外からの協力とするとした。

 共産は、「党の99年の歴史で政権協力の合意をえて、初めて総選挙をたたかう。政権交代で野党連合政権」などと、高揚感に満ちた。しかし一方の立・民は、支持を受ける連合から「共産党との閣外協力はありえない」と言われ、立・民が共産と連立政権を組むかのような表現を敬遠し、「政権交代」ではなく、「新しい政治を実現」という文言で折り合った(朝日9・9)。立・民にとっては小選挙区で共産が並び立って票が減らないようにしたいというのが本音であった。

◇野党共闘派の惨敗と野党共闘路線に固執する共産

 共産党は、比例で「850万票、15%以上」の得票目標を掲げたが、比例区で11議席から9議席に後退し(得票数は、440万票から416万票、得票率は7・90%から7・25%)、立・民は、小選挙区では公示前の47議席から57議席に伸ばしたが、比例区では公示前の62議席から39議席へと大きく減らし、結果として公示前より13議席減の96議席、れいわは2議席増の3議席、社民は1議席を保った。総選挙で政権交代は実現せず野党共闘派は惨敗した。立・民枝野は敗北を認め代表を辞任した。

 しかし共産党は、「一部メディアは、自民勝利、維新躍進、共闘惨敗という見方を流布しているが、これは事実と異なる。共闘勢力は、比例得票数も議席も増やしている。わが党が減らしたことは残念ですが、全体でみれば増やしている」、「4年前の総選挙で、共闘した共産、立・民、社民の合計と、今回共闘した共産、立・民、れいわ、社民の合計では、比例得票で246万票増、議席で42議席増」(赤旗11・11)と言い出した。

 公示前の政党の議席数との比較ではなく、前回総選挙の比較を持ち出したのである。前回総選挙では、立・民の前身の民進党が希望の党に合流したが、共産党の計算では希望の党を共闘勢力に入れていないのである。その後希望の党が分裂し、多くの議員が立・民に合流したので、立・民は公示前には前回総選挙の55議席から109議席にすでに増えていたのである。

 今回の選挙で増えたのではなく、その前に増えていたのだから、共産党の計算は牽強付会そのものである。その民進と共闘を組もうとしていたのは他ならぬ共産である。共産は野党共闘から離れる勢力と共闘を組もうとしていたのである。この経緯は、野党共闘路線のいい加減さと、野党共闘は相手に依存して闘いが弱体化することを示している。

 また、共産党は、「共闘勢力で一本化した207小選挙区の約7割の144選挙区で候補者得票が共闘勢力4党の比例合計得票以上になった」、「無党派層・他党支持者からの支持が広がるなど、共闘効果が示された」(赤旗11・28)とした。

 しかしこれは、比例区の得票数が伸びなかったことであり、将に立・民は比例区での当選者が減り獲得議席数減となり敗北したことを不問にするのである。野党共闘は、各党の政策が共通政策に切り縮められ、特に共産の場合は党の政策・綱領が共通政策と矛盾したものになり、選挙において党として支持を集めることができなかったのである。

 野党共闘が勝ったかにいう共産党の理屈は、むしろ、野党共闘、さらには統一戦線術の闘いの弱さを示すであろう。「野党共闘は自民党を追い込んだ」(赤旗12・4)と、共産党は野党共闘を継続するとしているが、立・民は枝野に代わった泉が、共産との合意は「衆院選に向けてかわしたもの」といい、野党共闘はすでに心もとない状況になっている。

 志位委員長は「国民の中で、安保条約の廃棄の多数の世論をつくっていく。この努力は絶対に断固としてやります」(赤旗10・27)と言っているが、「安保条約の廃棄」など綱領で謡っている政策が正しいと信じるなら、野党共闘ではなく、断固として自らの政策・綱領を訴え、多数の支持を勝ち取らなければならないのである。

◇労働者は野党共闘による政権交代をめざすか

 共産党は、共通政策で対決軸が鮮明になり、野党共闘で政府与党対野党という二者択一の構図ができた、政権交代で野党連立政権を目指す(赤旗9・9)といったのであるが、共通政策は与党とも共通部分が多く対決軸とはなりえないし、これによる二者択一といっても政権交代で現れるのは他方のブルジョア的政党である。行き詰まり労働者に犠牲を強いる資本を乗り越える闘いを、資本の維持を図るブルジョア的政治に期待することはできない。

 労働者は自公とともに維新をはねのけ、政権交代をめざす野党共闘に頼ることなく、資本主義を乗り越える労働者独自の闘いを構築していくであろう。 (大阪・佐々木)


【二面サブ】

反動派に支えられ改憲も軍備増強も
安倍継承の岸田

 憲法改正について、6日の岸田の所信表明での発言は、「与野党の枠を超え、国会において、積極的な議論が行われることを心から期待」、「国民理解のさらなる深化が大事」、「現行憲法が今の時代にふさわしいものであり続けているかどうか、われわれ国会議員が、広く国民の議論を喚起していこう」といった、漠然としているが、改憲に向けての強い意志であり、自民党総裁選においても「国会の議論を進め、国民投票に持ち込む。実現すべく最善の努力をしたい」と意思表示している。

◇反動派の支持で獲得した総理のイス

 岸田は昨年の総裁選で安倍が後継者に指名してくれるものと期待したが、安倍は菅支持に回り、敗れた。今年の総裁選では〝改革派〟の河野に対抗するため、党内反動派の支持を得るため改憲の取り組み重視を掲げた。岸田派はかつて「ハト派」といわれた宏池会の後継だが、総裁選に勝利するには、帝国主義化した「時代に合わせ」、〝タカ派〟の軍拡路線を進もうとしている。

 岸田はマスコミに、改憲について、「一部が国会の議論で進むなら、4項目同時にこだわるものではない」、スケジュール感は「行政府のトップの立場で言うべきではない。議論を少しでも前に進める努力をしていく」と話し(11月19日毎日)、「4項目とも極めて現代的で、現代社会で必要な改正だ」と強調した。

 外相当時の2015年に「当面、憲法9条の改正を考えない」と語ったこととの整合性については、「(自衛隊明記は)違憲論争に終止符を打つ意味で重要だ。矛盾することではない」と、開き直っている。かつての〝護憲ポーズ〟を投げ捨て、安倍の口まねをして恥じないのだ。

 岸田の物言いは、9条改定以外の項目について何を押し出そうということかはっきりしないかであるが、しかし、私権制限強化の緊急事態条項や参院選合区解消や教育の充実などで、安倍派に追随するしかない。

 岸田は、改憲やミサイル防衛体制強化など、反動派が喜ぶ政策に注力しており、岸田が「保守カラー」の強い政策に積極的に取り組む背景に、菅前首相の「政権運営から得た教訓がある」という、菅が「憲法本体や敵基地攻撃能力の保有に強い関心を示さなかった」から「保守層からの支持を十分に得られなかった」(11月23日毎日)というのだから、自民党政治がいかに腐りきっているかを教えている。

 菅がそうであったように、岸田もコロナ禍対応や経済対策を最重要課題と触れ回りながら、反動的な改憲策動や軍備増強を推し進めている。補正予算で経済対策として軍事費7738億円を計上したことを見よ。当初予算と合わせると6兆円を超す軍事費が支出されるのだ。軍事費は補正予算に計上する性質のものではないにもかかわらず、おかまいなしでの大盤振る舞いであり、その調子で防衛費のGDP2%も、岸田は肯定しているのである。

◇「敵基地攻撃能力」は軍備増強の一環

 所信表明では、「『新しい資本主義』の前提」として、外交、安全保障について論じ、「日米同盟の抑止力・対処力」を「国際社会の平和と繁栄の基盤」だとしている。軍事同盟を平和と繁栄の基盤だと誇らしげに持ち出す岸田には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」という「憲法」の精神など無縁であって、ブルジョア的安定を軍事力で勝ち取ろうというのである。

 世界が利害対立するブルジョア国家に分裂し、国家対立に軍事力が必要だというブルジョアの立場から、岸田は軍事力増強を正当化している。

 岸田が、「自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序の維持・強化について、国際的な人権問題への対処を含め、しっかりと取り組む」と言ったところで、日本の難民対策、入国管理の非道さを改めず、外国人労働者対応での留学生問題すら放置されている。岸田は「人権問題」を政治的に利用して、中国への対抗として持ち出す破廉恥漢である。

 辺野古への基地移設についても、「丁寧な説明、対話による信頼」を臆面もなく述べ、強権での工事強行、見通し無い埋め立て続行をしておきながら、「強い沖縄経済を作るための取り組み」をしているかにごまかしている。

 そして、岸田は「いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、スピード感をもって防衛力を抜本的に強化」し、「このために、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画を、おおむね1年をかけて、策定」すると言っているが、「選択肢」として「排除しない」という「敵基地攻撃能力」とは、「攻撃は最大の防御なり」という戦前の軍部と発想が同じものである。

 昨年6月のイージス・アシュア配備停止を受けて、「敵基地攻撃能力」の議論がかまびすしくなった経緯は、配備計画の杜撰さであり、ミサイル防衛自体の必要性(最新ミサイルには無能なシステム)という問題があった。まして、相手のミサイルが発射されようとしている前に敵基地への先制攻撃ができるなどと言うことは、観念論を持ち出すことであり、そんな軍事力増強で安全を守れると考えるのは、憲法に触れる攻撃的兵器も製造し、装備したい反動派や軍部の意向を反映しているのである。

 岸田は所信表明の終わりで、「次の世代への責任を果たし、世界に誇れる日本の未来を切り拓いていこう」と呼びかけた。資本主義が腐るしかなくなっていることに無自覚の暗愚な政治を行なっていて、どんな責任が果たせるのか。労働者は岸田に引導を渡し、ブルジョア政治と対決して未来を切り拓いていこう。 (岩)

   

   
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