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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
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・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
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反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1417号 2021年12月26日
【一面トップ】 米国の世界覇権維持が目的――バイデンの「民主主義サミット」
【1面サブ】 医療費補助金で病院黒字
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】 呻吟する中国の農民(工)――搾取材料として酷使され続け
【二面サブ】 リラ暴落は対岸の火事か――財政悪化、量的緩和の果てに
<前号(1416号)の校正とお知らせ>

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

米国の世界覇権維持が目的
バイデンの「民主主義サミット」

 バイデン大統領の呼びかけで初めての「民主主義と専制主義の闘い」と称する「民主主義サミット」が開かれ、世界110の国、地域がオンライン参加した。中国は激しく反発、米中対立は世界各国を巻き込んで激化している。

◇中国と世界覇権を争う米国

 サミット閉会にあたって、バイデンは、「我々が交わした誓いは専制主義を押し返すだけでなく、世界中に民主主義の花を咲かす豊かな土壌を提供するようになる」と強調、また中国が世界で影響力を拡大していることを念頭に、「民主的な価値観を共有するすべての人々と協力し、世界の発展を決定づけるルールを形成していく」と訴えた。

 サミットの主題は「権威主義からの防衛」「人権の尊重」「汚職への対処と闘い」とされたが、その狙いは、中国に対して、米国の同盟国や友好国との連携を強化して対抗することである。

 その背景は、米国が衰退し、中国の影響力が増大してきたことである。

中国は「一帯一路」戦略に象徴されるように経済〝援助〟を梃子にアジア、アフリカ、南米、さらにはヨーロッパの発展途上国への経済進出を拡大してきた。今や中国は、米国に次ぐ世界第二の帝国主義大国として米国と世界覇権を争うまでなっている。「民主主義サミット」は、世界覇権を脅かされている米国帝国主義の危機意識の現れである。

 米国と中国との対立が先鋭化したのは、中国の南シナ海への進出や香港、台湾問題をめぐってである。

 中国は南シナ海進出では違法とする国際仲介裁判所の判決を拒否、また台湾については将来、軍事力による統一も辞さないと声明、香港については中国本土の法律を適用し香港人の自由、民主主義を否定するなど、これに反対する米国と対立してきた。

 中国の強硬な姿勢に対して米国はもはや単独でそれを押しとどめる力はなく、同盟国や友好国の連携によって対抗しようとしている。それは豪に原子力潜水艦の供与を認めた軍事協力機構、米、英、豪3国による「AUKAS(オーカス)」の創出(21年9月)であり、「民主的な価値を共有するすべてのパートナーと協力し、我々の同盟や制度を弱体化させようとする相手側の動きに対抗する」ことを謳った新大西洋憲章の改定に現れている。

 バイデンの「民主主義サミット」は、地域的な中国への対抗を世界的規模に広げ、中国包囲網を構築することによって、米国の世界覇権を維持しようとするものである。

◇中国の反論

 中国は米国主導の「民主主義サミット」に先立つ4日、「中国の民主」という「白書」を発表。「ある国が民主的であるかどうかは、その国の人民が判断するものであり、外部が評価するものではない」と米国を非難、中国の政治制度や共産党の指導のもとで追求してきた中国独自の民主主義は、「人々の日常や生産活動に深く根付いており、社会が活気づいている」と反撃した。

 さらに強権的な政治体制を意味する「専制」についても、「民主と専制は矛盾しない。少数をたたくのは大多数を守るためであり、専制を実践することは民主主義を実現するためだ」、中国の主張する「民主主義」は共産党による一党支配を前提としていると、「中国の民主主義」を正当化し、バイデンの批判に一歩も引かぬ構えである。

 だが、中国は労働者の国家ではなく、労働者、人民は共産党国家の監視下に置かれ、自発的な発言・行動や共産党へ批判は一切封じられていること、共産党が政治的にも経済的にも特権的な地位を占め労働者、人民を支配していることを見れば中国の言う「独自の民主主義」が、共産党による「専制政治」であることは明らかである。

 国家資本主義として成長、発展した中国は、経済大国となり資本輸出や借款をテコに権益を拡大するなど帝国主義的な膨張政策をとってきた。そして米国と世界の支配をめぐって米国と非難合戦を行っているのであって、バイデンと同様に彼らに「民主主義」を言う資格などない。

◇労働者は米国にも中国にも反対だ

 「専制主義者たちが世界で影響力を増し、抑圧的な政策や慣行を正当化している」とバイデンは訴え、その証拠として米人権団体「フリーダムハウス」の調査で、2006年以降、15年間連続で民主主義が「悪化」した国の数が「改善」した国の数を上回り、20年には「悪化」73カ国に対して「改善」は28カ国で、過去最悪になったことをあげ、危機意識を煽り、中国やロシアの「専制権威主義」国との闘いのための「民主主義サミット」の意義を力説した。

 だが、「専制主義」的な国家が増加したのは、中国やロシアのためではなく、「自由主義」「民主主義」国を名乗る〝自由資本主義〟国の社会矛盾、そして帝国主義の支配のためである。米国自身、トランプ及びトランプ派による国会襲撃事件や黒人・移民差別を頻発させているように、私的利益追求を原理とする資本主義は、貧富の「格差」の拡大、貧困、失業、政治家や官僚などの汚職を生み出しており、こうした中で「専制政治」、それを標榜するポピュリズムが生まれているのである。

 また帝国主義による途上国の収奪、搾取も国家主義、専制的な国家を生み出している。

 反動的な「専制政治」を生み出す原因は、労働の搾取による利益拡大を原理とする資本の支配にこそあるのであって、外部(中国やロシア等)に求めることは真の原因から目をそらせ国家主義、軍備増強を煽り、世界の緊張を激化させることでる。

 労働者・働く者は、米国、それに追随する資本主義国家にも中国・ロシアにも反対である。彼らは資本の国家の利益、大資本の利益のために対立し争っている。帝国主義・大資本の支配こそ一切の災厄の原因である。労働者・働く者は、帝国主義、資本の支配に反対し、その打倒のために国際的に団結し、連帯し闘っていくし、闘っていかなくてはならない。  (T)

   

【1面サブ】

医療費補助金で病院黒字

 政府は後手後手のコロナ対策で感染者が急増する中で、医療機関に様々な補助金を出してきたが、コロナ患者のために新規に病床を確保した医療機関への支援として、医療機関や病室の機能に応じ、1床ごとに1日1万6千~43万6千円の支給をしてきた。「自宅療養」という〝放置政策〟への非難が強まり、高額な補助金を上積みして、コロナ患者を積極的に受け入れさせたのだ。この「空床補償」が、20年度は1兆1424億円という高額だったことが明らかになった。(12月17日朝日)

 感染拡大に政府の無能さ(オリンピック優先やGoToキャンペーンの愚策は象徴的)が大きく〝寄与〟したのは明らかだが、感染者治療に資するためという「空床補償」は、結果的に赤字経営で苦しんでいた医療機関の救済に資したのである。

 「空床補償」は、「感染対策などが必要」で、「コロナ病棟に看護師らを集めるために、一般病床を閉鎖することもある。院内感染を防ぐため、4人部屋を患者1人で使わせるなど、1床を確保するために病床を空ける場合もある。そうすると、本来は患者を入れて得られるはずの収入が減る」、「こうしたケースも念頭に、コロナ患者を受け入れる医療機関の経営を支える目的」(同前)の補助金であった。

 しかし、「厚労省が11月に公表した医療経済実態調査によると、20年度に一般病院にはコロナ関連の補助金が平均2億3700万円支払われ、平均1300万円の黒字になった。コロナの感染拡大による患者の受診控えなどの影響で、これがなければ、平均2億2400万円の赤字のはずだった」(同前)。すでに10月11日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会において、コロナ患者の病床確保向け補助金を受け取った医療機関の収支について、データ不足はありながらも集計では、平均利益率が2019年度の0・2%から20年度に6・3%に改善していることが明らかになっていた。

 首都圏のある民間病院の院長は、「コロナ患者がいない今も毎日、空床補償は発生し続けている。正直、もらいすぎていると思う」(同前)というように、政府の医療における補助金政策もブルジョア向けの場当たり政策であり、実態の調査、情報収集のもと、計画的であっても効率的かつ柔軟に対応するものにはなっていないのだ。それは、19~20年度に計上した65兆円あまりのコロナ対策費を会計検査院が調べたところ、実際に執行できたのは65%で、23兆円近くの使い残しが生じていたということにも見られる。

 また、公立病院で慢性的な赤字経営が多いのは、急性期や周産期など民間では不採算になる分野を担当するようにブルジョア医療体制に編入され、その一環となっており、民間、公立を問わず、資本の利益になるように編成されているからだ。コロナ禍対応でもそうだが、少子高齢化の問題でも、資本の支配によって医療は矛盾を深めている。ブルジョアは自分たちのための医療の充実だけでなく、搾取材料として労働者の健康も大切なはずだが、医療においても、「金持ちは自由診療、労働者は保険適用さえ厳しい」格差が拡大している。

 医療行政では診療報酬や医療用医薬品の公定価格である薬価は国(厚生労働大臣)が決定する。審議会などを通じて医療資本や製薬資本などの要求が反映され、資本の利益が優先されており、労働者はこうした構造を打破することに利益がある。

 労働者党は綱領で、「医療、介護の無償化と社会化。成員全体による、医療・介護活動の義務化と日常化、自然な社会的生活過程との融合や結合」と謳っている(労働者党「綱領」35頁)。ブルジョアにこうした要求を突きつけ闘っていこう。 (岩)


       

【飛耳長目】

★国会で自公による18歳以下への10万円給付をめぐって、与野党が5万円クーポンか現金かでもめた。立憲らがクーポン費用が900億円もかかるとあって、その無駄を問い結局全て現金で良しとなった。「政策立案型」政党を目指す立憲(泉)の面目躍如、給付に貢献し、自公を助け、2兆円にも及ぶ給付はオール与党でめでたしとなった★コロナで打撃を受けた人々を救う「未来応援給付」という公明党の公約は、コロナ禍とは全く無関係な、公明党への人気取り政策で、創価学会会員の高齢化が進む中での若年会員への勧誘手段ともなり、選挙で暗躍する会員婦人部への忖度でもある。衆院で50名以上が公明の助けを借りて当選している自民も渡りに船とこれに便乗し、共に来期参議選での議席増を目指す。まさに「〝自公応援〟給付」だ★しかし、こんな馬鹿な話があろうか。自らの党勢拡大や政権の人気取りのために2兆円をばら撒く。まさに税の私物化、バラまき、浪費の最たるものだ。小所有階級の立場を体現する公明党は自民の政治に追随しながら、こっそりと反動の手を差し出し、立憲は10万円給付を暴露して闘うのではなく、進んで自公に手を貸す。労働者党はこの給付に断固反対し、労働者の多くが我々の元に結集するよう呼びかける。 (是)


【2面トップ】

呻吟する中国の農民(工)
   搾取材料として酷使され続け

 12月11日放映のNHKスペシャル「農民工 故郷に帰る――埋まらぬ都市と農村格差」が帰農した農民の苦しい生活に肉薄して波紋を呼んでいる。農民(工)の現状に焦点を当てて中国資本主義の矛盾に迫ろう。

◇帰農の現実

 番組は、習近平が「絶対的貧困問題を解決した」と豪語する一方、「今こそ農村の振興に皆さんの力が必要です」と帰農を呼びかけるシーンから始まる。そして、2年前に内モンゴル自治区のある村に戻り、畜産業を営む張建平(45)歳とその家族の生活を追う。

 ナレーションは、張のように農村に戻り農業や商売を始めた人は中国全土で昨年1000万人に達すると伝える。張は出稼ぎで貯めた金と政府による無利子の融資合わせて350万円の資金を元手に耕作放棄地を買って牧草を育て、「牧場の規模を大きくして、村に雇用を生み出したい」と抱負を語る。

 張は80歳近い父親がシャワーが浴びられるようにと150万円で家を新築する一方、機械に腕を挟まれて肉体労働ができない息子をフフホトの大学に通わせている。

 しかし、洪水で牛の餌のトウモロコシが全滅、餌の確保や農場の整備に金がかかり、借金が500万円にまで膨らんだ。村に融資を求めるが、こんな末端の村まで国の資金は回ってこない。途方に暮れた彼は、子牛の販売業者から成牛と子牛合わせて10頭を買い、イチかバチかの規模拡大で乗り切ろうとする。しかし、この賭けが成功するかどうかは不明だ。

 番組には3年前に帰農してジャガイモを育てている張建平の親戚、張延軍(46)が50万円の借金を求めるシーンも出てくる。もちろん、張建平にはそんな余裕はない。すごすごと帰る張延軍は家で待つ妻と口論になり、「俺にはもう打つ手はない」とつぶやく。

 張建平の息子、新雨は都会で建設関係の仕事に就くことを望んでいる。里帰りした新雨は同級会に出るが、仲間たちは将来の不安を語り、女子学生の一人は「今が楽しければ、それでいい」と投げやりな口調だ。

 学費の半分だけを貰って(祖母も年金2カ月分を渡す)フフホトに戻った新雨は、恒大グループの経営危機を耳にし、暗澹たる気分になる。

◇拡大する都市と農村の格差

 ここに描かれた中国農民の厳しい現実は、習近平が吹聴する「小康社会」は実現したとの決まり文句が嘘っぱちであることを暴露している。

 統計や報道は、都市と農村の年収格差が拡大する一方であると伝える。

 「中国では人口約14億人のうち、『都市と町』の人口は約9億人、『農村』が約5億人となっている。国家統計局によると、20年時点で、都市・町の平均年収は4万3834元(1元=18円)、農村は1万7131元だった。/年収の13年比の増加率は農村は82%と、都市・町(66%)を上回るが、これは当初のベースが低かったためだ。実額の年収差を比べると、7年間でむしろ57%広がった。・・・/農村には農業以外の仕事が少ないため、住民の多くは大都市へ出て『農民工』と呼ばれる出稼ぎになる。国家統計局が4月30日に発表した農民工調査によると、20年の平均月収は約4000元で、農村よりは稼げることが分かる。/一方、企業が急激に成長している北京や上海をはじめとする大都市では月収が1万~3万元、年収で10万~30万元に達する住民も多い。農村や農民工との差は鮮明だ」(日本経済新聞デジタル版、21年6月10日)。

◇無権利と差別に苦しむ農民工

 農民工は単に賃金が安いだけではない。中国は「建国」以来、国民を都市戸籍と農民戸籍とに区分する制度を続けている。農民工は都市に出稼ぎに来ても農民戸籍のままだから、都市戸籍者が受けられる医療、住宅、年金などの社会保障から排除されている。

 教育についても同様だ。農民工の子は、都市戸籍の子と同じ学校には入れず、設備もスタッフも劣る、名ばかりの「私立学校」に通うしかない。したがって、子供たちは親と同じように社会の最底辺に追いやられて、低賃金の工場や建設現場、清掃などの3K労働に従事するしかない。貧困と無権利の再生産であり、永続化である。

 他方で、両親が都市へ出稼ぎに行っているために農村に残された子供たちも放置されたり、絶望のあまり自殺する子も絶えない。

 中国共産党機関紙の人民日報系「環球時報」でさえ、農民工の窮状について、「自国に住んでいるのに不法移民のような状態だと言われている」と紹介しているほどだ(CNN13年1月14日)。

 中国は鄧小平時代に「改革開放」に踏み切り、外資を導入して安価な製品を大量生産し、輸出して外貨を稼ぎ、急速な経済発展を成し遂げたが、この中国資本主義の発展を支えてきたものこそ、農民工たちだったのだ。 彼らは劣悪な状態で長時間の低賃金労働を強いられ、無権利と差別に苦しんできたのであり、その有様はマルクスが『資本論』で描いた資本の本源的蓄積の時代のようであり、工場法成立以前のようである。

◇反乱する農民工たち

 NHKスペシャルが報じたのは、帰農した農民であるが、彼らは農村に帰って耕す農地があり、農・畜産業を営めるだけ〝まだまし〟と言えるかもしれない。

 というのは、中国の地方政府は、土地を農民から奪い、それを不動産業や開発業者に売り払い、その売却益を財源としてきたからである。だから、都市で働く農民工の中には、農村に帰りたくても帰れない人々が多いのだ。

 彼らは、不況やコロナ禍で仕事を失えば、〝流民〟として都市を彷徨うしかない。実際、最新の統計によれば、農民工は20年に2億8560万人となり、前年比で初めて減少した(517万人減)。

 しかも、農民工の平均年齢は08年の34歳から20年には41・1歳と高齢化が進んでいる(50歳以上も26・4%に達している)。高齢化する農民工は、仕事に就けなくなり、帰る故郷もないまま〝流民〟化する可能性が高い。

 差別と分断に苦しむ若い農民工の中には、犯罪に走り、闇組織にはいり込む者もいる。

 一方、団結を固めて闘う労働者も出てきている。古くは、11年6月、広東省広州市の郊外で露天商を営む妊婦が治安員に暴行を受けたことをきっかけに十数万人もの農民工たちの暴動が発生し、警察力ではどうにもならず、人民軍が出動して鎮圧した出来事があった。

 同じ11年の秋には浙江省湖州市でも税金の取り立てをきっかけに農民工の暴動が発生、道路を封鎖し、デモを展開し、警官隊と激突した。この時も警察の手に負えず、人民解放軍が出動して抑え込んだ。

 さらに注目されるのは、18年5月に発生した深圳市「深圳佳土科技公司(JASIC)」の労働争議である。

 賃金未払いや罰金制度、保険や住宅基金の削減、トイレにまでカメラ撮影をする監視体制に反撥した約1000人の労働者が決起した。

 彼らは自主的な労働組合(工会)の設立を掲げ、工場側と対峙した。労働者代表が何者かに襲われて負傷した事件をきっかけに中国各地の学生や人権活動家が駆けつけた。その中には、中山大学卒のエリートから労働者権利擁護活動家になった沈夢雨(女性)もいた。

 彼女をリーダーとした「労働者階級の正義の闘争」はネット上に広く流れ、香港大学の有志たちも加わって運動は高揚したが、沈夢雨が当局に拘束され、軟禁状態に置かれて以降(その後は消息不明に)、労働者側の勢いが弱まり、数十人の労働者が逮捕されて闘いは収束した。

 しかし、この運動は労働者の自然発生的な闘いが活動家や左派知識人と結びついて経済闘争の枠を超えて発展する可能性があることを示した意味で重要である。

 中国の労働者たちは――農民工も含めて――この闘いから学び、いつの日か断固たる闘いを開始するだろう。

 日本の労働者も遅れを取ってはならない。 (鈴木)


【二面サブ】

リラ暴落は対岸の火事か
財政悪化、量的緩和の果てに

中東の大国トルコの通貨リラが暴落している。英や仏を上回る人口と「安くて能力の高い労働力」が豊富で、オランダなどを上回る経済規模を持つ。背景に何があったのか。

◇18年の通貨危機

 現在のトルコのリラ暴落を語るには、2年前に発生した通貨危機を避けて通れない。18年、米国人牧師がトルコ政権のクーデター未遂事件に関与したとして、トルコ警察に拘束されたことに腹を立てたトランプは、トルコからの鉄鋼とアルミの輸入関税を25%から50%に引き上げると発表。

 トランプの表明によって、米国の鉄鋼やアルミの輸入企業は相次いで契約を解除したため、トルコ経済が悪化するとの懸念からリラはたった1日で2割も下落し、その後もリラの下落が続き、この年、1ドル4リラから7リラへ下落したのである。

 また、通貨への不安はトルコ国債に対する信用不安への高まりでもあった。トルコ国債が売られたのは言うまでもなく、トルコに貸付けしてきた先進国のドル建・ユーロ建債権もまた不良化したのである。

 この一連のトルコ危機は、外貨に依存する新興国、例えばアルゼンチンにまで影響を及ぼしアルゼンチン・ペソはたちまち暴落したのである。さらに、欧米や日本などの世界の株価も急落した。トルコに端を発した通貨危機であった。

◇金融緩和と財政出動で経済成長図る

 その後トルコは、カタールから150億ドルの支援を得て一息つき、エルドアン大統領政権は、経済再建を優先し、財政出動をさらに大規模に増やし――政府総債務残高は19年の1兆リラから、20年に2兆リラ以上に急増――、同時に、リラ安による物価上昇が続いているにもかかわらず、金融緩和策を取り続けていった。

 その結果、確かにGDPは名目、実質ともに増えた。「21年第3四半期のトルコの実質GDP成長率は、民間消費と輸出の伸びに支えられ、前年同期比7・4%増となり、今年1月から9月までの成長率も同11・7%増となっている」(21・12・3yahoo)と言われたが、それはカネのバラまきによる〝麻薬の一服〟でしかなかったのである。

 「アベノミクス」を見習ったかのように、トルコ政権は、大規模な金融緩和策と財政出動よって、持続的な経済成長と雇用拡大を描いたが、上手くは行かなかったのである。

◇先進国のバラまきのカネが逆流

 18年の通貨危機後、リラは回復し1ドル=5リラ台を推移していたが、20年に入るや再び下落が激しくなり、1ドル=7リラを突破した。トルコ中銀による恒常的な為替介入の結果、トルコの外貨準備高の目減りが激しい上に、物価上昇率(当時13%台)より低い実質マイナス金利政策(12~8%)を継続していることなどがリラ安を促進していた。

 しかし、これらは現実であるが真相ではない。世界の先進国による金融緩和策と財政膨張によるツケが出始め、自国内の物価高騰を抑えるためにと、米国やEUの中銀は金融緩和策の停止を模索し始めた。昨年から最近まで、いつが適当な金利引上げの時期かが検討されて来たのである。

 こうした金融緩和策の出口を探りあう米国やEUの動きに合わせて、海外の投資家はリラを売りドルなどの安定通貨に変え始めたのである。従って、リラは暴落し物価は上昇。物価上昇を止めるために金利を上げるのではなく、反対に景気刺激のための金融緩和策を採用し、さらなるリラ急落を招いたのだ。

 「アベノミクス」もどきの金融緩和策と大胆な財政出動がコロナ禍で一層拡大し、中銀と国営銀行による国債の買支え(中銀による国債金利引き下げ策だ)が急速に高まっている。トルコ中銀は、丁度、日銀がやってきたように、政府の国債利払い費を減らそうとして、市中から国債を高く買っているが、それがまた中銀の収支悪化を招き入れている。

 きっかけはどうであれ、現在のトルコの危機は日、米、EUによる量的緩和策の副作用である。なぜなら、先進国の量的緩和によって生まれたカネは、資本と生産の過剰に喘ぐ自国内の投資に大して回らず、金利が高く、しかも外資に依存しているトルコなどへ流れた、だが、そのカネの流れは米国やEUが量的緩和の縮小を宣言し始めるや、一気に逆流し始めたからだ。

 リラの下落によって物価が激しく上昇し、トルコの労働者家族の生活を直撃し、生活防衛とトルコ政権に対する労働者の闘いもまた急速に高まっている。日本の労働者にとって対岸の火事ではない。  (W)

   

    <前号(1416号)の校正とお知らせ>

◇『海つばめ』前号校正  2面1段3行目 「立・民主義の回復」→「立憲主義の回復」
 ※なお、当ホームページ上の記事では既に校正してあります。

◇来年1月は16日と30日の発行です。

   
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