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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
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   そして「愛国教育」で
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1420号 2022年2月13日
【一面トップ】 ウクライナ紛争の行方――激化する米ロ対立
【コラム】飛耳長目
【二面トップ】 欺瞞的な衆院与野党の人権問題決議――労働を搾取する社会の変革をめざす闘いを
【二面サブ】 矛盾深めるゼロ金利・円安政策――物価高騰と円安圧力に無力

<前号(1419号)の訂正>

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

ウクライナ紛争の行方
激化する米ロ対立

 ウクライナをめぐるロシアと米欧の対立は激化の一途をたどり、今や戦争の瀬戸際にまで来ているかである。ロシアは牙をむきだした帝国主義的侵略の権化であるかに見えるが、対する米欧は〝平和勢力〟なのか、この対立の本質はどこにあるのか――それが問題である。

◇ウクライナ攻勢を強めるロシア

 今回のウクライナ危機の発端がロシアの攻勢にあることは確かである。

 ロシアは昨年年初から10万人規模の軍隊をウクライナ国境に配備し、いったん兵力を削減した後、12月には再び10万人を超える軍隊を配置して軍事演習をくり返している。さらに今年2月10日から20日までベラルーシでも軍事演習を行う予定であり、ウクライナの東西から挟み撃ちするように軍事的に威圧している。

 このロシアの行動の狙いはどこにあるのか。プーチンは、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟することは許さないと繰り返し言明している。つまり、ウクライナがNATOに加盟しようとするなら、ウクライナに侵攻してでも加盟を阻止するとの脅しである。

◇プーチンの言い分

 いかにも乱暴な言動だが、プーチンにも言い分はある。冷戦末期の90年2月、ゴルバチョフとベーカー米国務長官との間で、ソ連が東西ドイツの統一とNATO加盟を認める代わりに米国はNATOを東方に「一インチたりとも」拡大しないことで合意したにもかかわらず、NATOは東欧からバルト諸国まで次々と加盟させ、東方に拡大してきたではないか、これは明白な合意違反であり、このうえロシアに隣接するウクライナまでNATOに加盟するなら、ロシアの安全は脅かされる、そんなことは断じて許さない――これがプーチンの主張である。

 米欧の約束違反は事実だ。当時のクリントン大統領は、96年秋の大統領選でポーランド系住民(約1000万人)や東欧系住民の票を取り込もうとNATO拡大を推進した。NATOは97年にポーランドやハンガリーの加盟を決め、その後旧東欧諸国からバルト3国まで加盟するに及んで、NATO加盟国は16カ国から30カ国にまで拡大したのである。米欧はソ連邦崩壊の間隙を埋めるように勢力圏を拡大してきたのだ。

 そのことがロシアの危機意識を高め、対立を先鋭化させたことは事実であり、米欧にロシアを批判する資格はないと言うべきであろう。

◇牙をむきだしたプーチン

 プーチンは2008年に、かつてソ連邦を構成していたジョージア(旧名グルジア)とウクライナまでNATOに加盟させようとする動きが強まったとき、「本気で」NATO拡大を阻止しようと決意したという。特に、ウクライナはロシアにとって〝血を分けた〟兄弟国であり、それがNATOに加盟して軍事基地が置かれれば、ミサイルがわずか数分でモスクワまで飛んでくる、そんなことを許せるはずがないというのがプーチンの意識であろう。

 しかし、だからといってウクライナに侵攻し、支配下に置こうとするのは、自国の安全のためには隣国に侵攻しても構わないという利己的帝国主義的論理以外ではない。

 ロシアは、2014年2月のウクライナの政変――腐敗したウクライナ政府に対する市民の抗議行動が激化し、親ロシアのヤヌーコヴィチ大統領がロシアに逃亡――に乗じて、3月にクリミア半島に侵攻し、併合した。

 ロシアはまた、ウクライナ東部のロシア人が多いドンバス地域の親ロシア派武装勢力を支援し、ウクライナ軍との武力衝突を引き起こした。親ロシア派勢力はロシアへの編入を求めて5月にドネツク、ルガンスクに人民共和国を樹立し独立を宣言、ウクライナ軍と小競り合いをくり返している。

この紛争の調停を買って出たドイツ、フランスとウクライナ、ロシアの4カ国間で14年と15年に「ミンスク合意」が成立したが、これはドンバス地域の紛争の停戦や一定の自治権付与を規定している。プーチンはこの「合意」の履行をくり返しウクライナに求めているが、これは武力で勝ち取った〝成果〟を認めろという性質のものだけに、ウクライナはその履行を渋ってきたのである。

◇権力永続化の狙い

 プーチンが強硬姿勢を続けている背景には、米欧によって〝身ぐるみ剥がされた〟旧ソ連地域を少しでも取り戻し、大ロシアとして復活したいという帝国主義的野望があるだろう。とりわけ、隣接するウクライナの掌握はプーチンの悲願である。

 プーチンの問題意識は、2021年7月12日付でクレムリンのホームページに掲載された「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」という大統領署名の文書に現れている。その中で、彼はロシア人とは「大ロシア人(ロシア人)、小ロシア人(ウクライナ人)、白ロシア人(ベラルーシ人」の総称であり、「ウクライナは欧米によって危険な地政学的ゲームに引き込まれて」きたが、「私は、ウクライナの真の主権はロシアとのパートナーシップによってのみ可能であると確信している。・・結局、我々は一つの民族なのだから」。

 これは、ウクライナは「ロシアとのパートナーシップ」の中でしか存続を許されないという思い上がった大国主義であり、併合正当化の帝国主義意識そのものであろう。

 さらに、プーチンは2024年に予定されている大統領選に勝利し、その後6年、2030年までの政権掌握を狙っていることもしばしば指摘されている。

 ウクライナを掌握すれば、大統領選での勝利の見通しは固まり、これまでオリガルヒ(寡占的財閥)や新興財閥を掌握して築いてきた様々な利権も無事その子弟(ロシア版「太子党」)に引き継ぐことができるだろうという思惑である。

 さらには、バイデン政権になって米中対立が激化し、ロシアが埋没している状況を打破し、世界の覇権争いに関与して 〝存在感〟を高めて行かなければならないとプーチンは焦るのだ。

 こうした様々な思惑や帝国主義的野望がロシアの行動の背景にあることを確認しなければならない。

◇バイデンの強硬姿勢の裏側

 しかし、ウクライナ問題を検討するとき、プーチンの強硬姿勢だけを槍玉に挙げるのは不公平というものである。

 既にみてきたように米欧諸国がソ連邦崩壊、ロシアの弱体化につけ込んで勢力を東に拡大してきたことは事実である。

 昨年来のロシアのウクライナ攻勢に対し、バイデン大統領は、度々、プーチンに警告を発し、昨年12月の米ロ首脳会談では、NATOのさらなる拡大をしないとのロシアの要求を拒否、ロシア軍部隊の撤退を求めたのに加え、ウクライナにロシアが侵攻すれば厳しい経済制裁を実施すると警告した。

 2月に入ると、米国は米軍をポーランドなど周辺諸国に派遣し、8500人の部隊を米国内に待機させていると公言している。

 ブリンケン国務務長官のみならずバイデン大統領までが金切り声をあげてロシアを批判し、今にも戦争が始まるかのように危機意識を煽っているのは、もちろん、米国を頂点とする「国際秩序」の根幹が揺らぐことへの懸念があるからである。

 米国の覇権は、近年、中国の急速な経済的軍事的台頭によって脅かされてきたが、今度はロシアの攻勢によって欧州における既成の秩序が揺らぎつつあるのだ。

 しかも、バイデン政権は、昨年のアフガニスタンからの撤退によりタリバンの権力掌握を許し、同国人民を野蛮な支配に委ねたとして国内外から厳しい批判を浴びた。最近の世論調査ではバイデン大統領の支持率は40%にまで低下し、このままでは今年の中間選挙での勝利も覚束ない。ここは強硬姿勢を誇示して批判をかわさなければならないとの計算が働いていることは見やすい道理だ。

◇米欧内のきしみ

 米国がロシアに負けず劣らず威丈高に振る舞おうとも、米欧の内情は複雑である。欧州諸国はロシアとの経済的結びつきが強く、エネルギー供給ではロシアへの依存度が高い(天然ガス供給の40%はロシアからだ)。とりわけ、ドイツはロシアからの新たな天然ガスパイプライン、ノルドストリーム2の開設を控え、ロシア制裁には及び腰だ。

 大統領選を控えるフランスのマクロンは、外交で成果を上げようとメッセンジャーボーイよろしくロシア、ウクライナを飛び回っているが、破局に向かえば、これまでの努力が水泡に帰すので、米国への追随をためらっている。

 さらに、米国が公言している「SWIFT」(国際銀行間通信協会)を通じた国際送金や決済に必要な金融情報を安全且つ迅速に送るシステムからのロシアの排除は、ロシアを国際的取引から排除することになるので、ロシアにとっては確かに大きな痛手だが、ロシアとの貿易や金融取引の断絶は、欧州諸国にとっても打撃が大きい。

 かくして、米欧の内部対立もあるだけに、バイデンはより強硬な姿勢を誇示しなければならないのだ。  

◇迎え撃つ民衆

 ウクライナは兵力ではロシアに劣っても、人口は4100万人を超え、重工業も盛んだ。労働者、民衆は――東部の親ロシア勢力は別として――ロシア軍が侵攻すれば断固闘う決意を固め、訓練に励んでいる。とりわけクリミア半島から追放された先住民族のタタール人たちは「ロシアが侵攻してきたら最も活躍するのはタタール人だ」と意気軒昂だ。

 我々は、ウクライナの労働者・民衆の意思を無視したロシア米欧の対立は、あらゆる不合理と矛盾に満ちた不毛な帝国主義的対立であると宣言し、直ちに一切の軍事的策動を停止するよう要求する。  (鈴木)

   

       

【飛耳長目】

★「一票の格差」が最大2・08倍の21年衆院選を「違憲状態」とする高裁判決が3件出た。最高裁も09年以降3回の衆院選を「違憲状態」としたが、17年衆院選は2倍をわずかに下回り、16年の「アダムズ方式」による格差是正関連法成立を「忖度」して合憲とした★小選挙区制は、昨年の衆院選で自民党が得票率48%で65%の議席を占めたように、過半数の民意を切り捨てる不合理で不公正な制度である。「アダムズ方式」は10年毎の国勢調査を基に区割りを見直すことで格差最小限を実現するかだが、289にも細分した選挙区から相対多数で一人だけを選出する制度が、民主主義に反することは明白だ★この方式による「10増10減」の区割り案が6月に勧告予定だが、自民党内では減区の地方だけでなく、増区の都市部からも頻繁な区割り変更が選挙制度を不安定にすると反対が出ている。健全な労働者は、「投票価値の平等」には賛成しても、不合理な小選挙区制には反対すべきだ★小選挙区制と高額な選挙供託金制度は、小政党や無産の人々の国政進出を阻むもので、腐敗政党の跋扈と政治不信の一因もここにある。労働者党綱領は「徹底的な民主主義的改革の実行」に向けて、「小選挙区制の廃止と全国単一比例代表制の実施」を掲げている。 (Y)


【2面トップ】

欺瞞的な衆院与野党の人権問題決議
労働を搾取する社会の変革をめざす闘いを

 今月1日に衆院本会議で「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」が採択された。この決議は、自民、立憲民主、日本維新の会、公明、国民民主各党の5会派が共同提出した案に基づくものであり、共産党も「反対する理由がなかったから」と賛成し、れいわ新選組は「自国や同盟国に対しても人権侵害の是正」を「同じ厳しさで臨まなければならない」と反対した(1議席持つ社民は、コロナ感染で欠席)。

◇人権問題とは

 自公政権は、アメリカなどが中国の人権侵害を問題とし、北京冬季オリンピックに政府関係者を派遣しない「外交ボイコット」に同調して政府関係を派遣しないとし、4日のオリンピック開催前に人権問題決議をし、人権問題を重視する姿勢を示そうとしたのである。

 しかし人権はフランス革命の「人権宣言」に象徴されるように、自然権として本来人間が保有すると主張されたブルジョア的な権利である。ブルジョア的支配の変革をめざす我々労働者が、この人権問題にどのように取り組まなければならないかを考えたい。

 決議で取り上げられている「新疆ウイグル、チベット、南モンゴル、香港等」における人権問題は、中国の民族抑圧・民族独立問題と関わっている。

 新疆ウイグル、チベット、南モンゴル地域では、ウイグル族、チベット族、モンゴル族の支配地域を清国が自らの版図とした。1949年の中華人民共和国成立時には、これらの地域で独立運動が起きたが、中国政府は弾圧し自治区として支配してきたのである。これらの地域での抑圧的な中国同化政策が、これらの民族の抵抗や独立化運動を引き起こし、2009年ウイグル騒乱や1950~1976年チベット動乱等が起きたのであるが、中国政府によって武力鎮圧された。

 香港はこれら民族問題とは異なり、イギリスの植民地となった香港が1997年中国への返還後、香港の″民主主義″を守ろうとする民主化運動が香港独立化をめざす運動に発展したが、2020~2021年に習政権によって武力鎮圧されたのである。香港に残っていた″民主主義″は逼塞し、中国本土と同化してしまった。

 中国の人権問題は、このように民族問題とともに労働者の民主的権利の抑圧に起因する問題であり、それらの地域におけるブルジョア的発展、資本による労働者支配、労働者抑圧、厳しい搾取・収奪と軌を一にしている。

 中国社会は中国支配層が自ら唱えるような社会主義ではなく国家資本主義社会である。生産手段は国有化されているが、実際には資本として存在し機能し、労働者人民は搾取され・抑圧されている。年間10万件といわれる労働問題、都市・農村問題等に起因する集団的騒擾事件がそのことを物語っている。

 習政権は、国家安全法、反スパイ法、海外NGO管理法、インターネット安全法などを施行し、反政府活動を「国家の安全に危害を与える」ものとして弾圧している。

 中国のウイグルなどの民族抑圧、弾圧、虐殺を、我々労働者は断固抗議し、民主的な自由と平等と安全を保障するように中国政府を糾弾するが、人権問題は中国の民族抑圧問題であるとともに、中国国内の資本の支配に抗する労働運動の抑圧として、そして反政府運動の弾圧として現れているのである。日本の労働者は、中国の資本および習政権と闘う中国の労働者に国際的連帯を表明するものである。

◇人権問題決議の欺瞞性

 採択された決議は、スリランカ出身のウィシュマさん入管施設で死亡した事件に象徴される難民や外国人労働者に対する非人間的な対応に限らず、国内における労働現場における過労死などの様々な労働者抑圧を見ず、過去においては日本が戦争を惹き起こし中国を始めアジアの人々のみならず国内の住民、戦場に行かされた兵士を戦場で死に追いやった侵略戦争・帝国主義戦争を忘れている。

 自民党の高市などの反動派は、今回の人権決議が中国を明確にしていないことを問題にするが、アメリカのバイデン政権と同調し、中国との帝国主義的軋轢を煽るものであり、彼らの国家主義的な立場を如実に示すものである。

 れいわ新選組は、米軍の無人機による子どもを含む多数の民間人殺戮、イラクのアブグレイブ刑務所での捕虜虐待や、グアンタナモ収容所での違法な監禁・尋問などのアメリカの人権侵害、そして、国際社会から現代の奴隷労働として非難されている技能実習生に対する搾取、祖国での人権侵害を恐れ強制送還を拒んだ外国人に対する入管の劣悪な環境での人間でないような扱いなど日本国内での人権侵害をあげ、新疆ウイグル、チベット、香港などでの人権侵害は断固として許さないが、自国や同盟国に対しても人権侵害の是正と、被害者救済を厳しく求め続けるとして、人権決議に反対した。

 賛成した共産党は、資本とそして自公政権と同じ立場に立ち協調していることを明らかにした。しかし反対したれいわも、自由と平等という人権が認められる民主主義の体制の下で、労働者が資本の支配を受けて労働を搾取されるという真実を見ない、ブルジョア社会を擁護する立場であることには変わりない。

◇ブルジョア革命のスローガンである人権を超えて労働の解放を

 人権は封建制の身分制と闘い、資本による自由な生産力を発展させようとするブルジョアジーのスローガンであった。1789年人権宣言は、「人は生まれながらにして自由と平等の権利をもち、主権は本来国民にあり、思想・言論の自由や私有財産の所有権は保証されなければならない」とし、もっともラディカルな1793年のフランス憲法は、「人間および公民の権利宣言」で「これらの権利(自然的で不滅の権利)は、平等、自由、安全、所有権である」としたのである。それは将に私有財産制を基礎とするブルジョア体制の宣言である。

 自由と平等という人権は資本が労働者を搾取する自由であり、この自由と平等の形式の下で、賃金は労働と等価交換されるかに見える。だが、現実には、賃金は労働力の価値であり、それ以上に働かされて搾取されているのだ。

 もし資本の利益が損なわれるならば、この体制の維持のために自由と平等は制限され、生産現場における労働者抑圧、労働運動の抑圧として現れるのである。公共の福祉に反する場合は、いくらでも自由と平等は制限されるのである。その公共とは、労働者を搾取する体制であり、公共の福祉とはその体制を維持することに他ならない。

 我々労働者は労働者の民主的権利の侵害に断固として闘うとともに、社会を支配する資本および資本の維持を図る政治勢力との闘いを発展させ、資本を廃絶し労働者が主体となる共同体社会、労働を解放する社会主義社会をめざす闘いを進めなければならない。  (佐)


【二面サブ】

矛盾深めるゼロ金利・円安政策
物価高騰と円安圧力に無力

 物価が高騰し始めた。消費者物価に波及するのは時間の問題で、そうなれば労働者の、とりわけ低賃金労働者の生活は破滅的になる。ところが、日銀や政府が一番気を揉むのは、労働者の生活悪化ではなく、金利上げ圧力の高まりや円安の加速であり、景気への影響である。

◇長期金利再び上昇

 日銀が長期金利をゼロ%付近に固定する「金利操作」を開始(16年2月)して以来、長期金利は去る1月末に、20年2月の最高水準を超え、0・185%になった。

 米国や欧州では、コロナ禍や気候温暖化対策と銘打った政府による大規模な財政支出が行われ、また各国の中央銀行を通じて大量のカネが市中に流され、新たな景気循環を引き金としてエネルギー価格や消費者物価の高騰を招いている。

 しかし、昨年来の物価高騰は収まらず、加えて、ウクライナ情勢の悪化によるガス供給不足が懸念されており、さらに物価が押し上げられるのは必至だ。現に、英国エネルギー規制当局は、「消費者向けの電気・ガスの標準単価上限を4月から54%引き上げると表明した」(日経22・2・3)。

 米国のFRBは、物価高騰を抑えるために、この3月にも金利引上げに踏み切る方針を打ち出し、英国中銀であるBOEも、昨年(21年)12月に続き、金利の再引き上げを決定した。欧米各国は金利引上げに加え「量的緩和」も縮小させるという。

 欧米の金利引上げは、諸外国に大きな影響を与えずにおかない。トルコやアルゼンチンなど、海外資本に依存している諸国では自国通貨の下落が既に始まり、日本にも影響を与えている。

 その一つの例が日本の長期国債の利回り上昇であり、これにリンクしている住宅ローン金利の上昇である。「メガバンク3行は1日(2月)、住宅ローン金利の指標となる10年固定の基準金利を引き上げ(た)」(朝日22・2・2)。

 要するに、内外の投資家は金利が高くなった欧米の債権を買うために、日本の債券を売り払い、その結果、売り圧力が大きい債券価格は下落し流通利回り(金利)が上昇したのである。それが10年物などの長期国債だったというわけである。

◇金利上昇の圧力は国内にも

 金利上昇への圧力は、単に欧米の金利引上げだけではない。それは以下の様なことである。

 日本でも物価上昇が顕著になっている。既に、国内企業物価指数は昨年12月に9%を超え、卸売物価も欧米並みに高騰し始めた。生活に直結する消費者物価もじわじわ上がってきていたが、原材料費高騰を理由に半製品メーカーや食料品メーカーの価格引き上げが実施されるなら、相当な上昇幅になるのは明らかだ。

 そして、広範囲に物価が上昇していくなら、投資家が持っている「円建て債権」は目減りし、銀行の貸出利率も実質的に下がることになる。この動きに敏感な投資家はこれらの債権を売り、もっと金利の高い債権(怪しげな金融商品なども)を買うか不動産などに投資する。銀行も貸出利率を物価上昇率より上げなければ損することになる。こうして、金利の上昇圧力は高まる。

 ところが日銀は、「ゼロ金利政策」を変更できない。もし、金利が許容範囲を超えて大幅に上昇していくなら、500兆円を超える国債資産に、相当の「含み損」が生じることになるからだ。また政府にとっても、「新発国債」や「借換債」の金利が上がるなら、毎年の国債「利払費」(現在9兆円程)も増えていくことになる。さらに短期国債の利上げは日銀当座預金の「付利」上昇にもつながる。これらは、日銀と政府にとって尋常なことではない。

◇物価上昇と円安の悪循環

 国内物価の上昇は、金利面だけではなく為替相場にも影響を与える。例えば、1ドル=100円の時に、国内の物価が平均して10%上昇するなら、今まで100円で作った商品は110円の生産コストがかかる。この後に輸出するなら、商品を今まで通りに1ドルで売っても利益は出ず、1・1ドルで売るなら売れ行きは下がる。輸入の場合には、1ドルの海外商品は今まで通りに100円で売られるので、同じ日本産より安くなる。

 これが継続されるなら、輸出は減少し輸入は増大するので一般的に円安の傾向を生み出す。

 これは、表面だけ見れば、日本でインフレが進み円の価値が10%減価した場合と同じ現象である。違いは、商品の交換関係(生産が急拡大し原材料や労働力が逼迫して高騰するなど)で生まれる商品価格の上昇か、それとも通貨である円の「価値」下落による上昇かである。

 前者の場合は、各商品価値から乖離した価格上昇として現れ、一時的な場合が多い。だが後者の場合は、〝紙幣化〟した通貨円が流通に大量に投げ込まれることによって円の「価値」が下落し、その結果、あらゆる商品の価格が高騰していく現象であり、比較的長期間にわたって進行する。

 さらに、世界中でカネのバラまき政策が行われている中では、前者の物価上昇をきっかけに、条件次第ではインフレに転嫁する可能性を誰も否定できない。

 こうした国内の価格高騰が為替相場に円安(国内労働の安売り)として修正されることは、価値法則が貫徹する現れ方なのである。

 輸入が減り、または経常収支の黒字が増えて円高にならないかぎり、為替相場は円安のままであり、輸入物価の上昇が続き、加えて、政府と日銀の「ゼロ金利政策」が維持されるなら、より内外金利差が拡大し、それがまた円安を招き、物価を上昇させるという悪循環に陥る可能性を宿しているのだ。  (W)


    <前号(1419号)の訂正>

前号の「飛耳長目」署名は、(義)でした。

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