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●1421号 2022年2月27日 【一面トップ】 一線を越えたプーチン――内外で反発強まる 【1面サブ】 連合、「野党共闘」からの離脱迫る 【コラム】飛耳長目 【二面トップ】 自らの首を絞める「経済安保」――新たな分断と対立の新冷戦時代へ 【二面サブ】 労働者・働く者に敵対する維新政治 ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】 一線を越えたプーチン プーチンは2月21日、ウクライナの親ロ派支配地域、ドネツク、ルガンスク両「共和国」を独立国家として承認する大統領令に署名し、〝平和維持〟目的でウクライナにロシア軍を派遣することを決定した。22日にはロシア議会上院が国外への派兵を全会一致で承認しており、ウクライナへの軍事侵攻懸念が強まっている。 プーチンはその前日まで、「ミンスク合意」の遵守をウクライナに要求していた。ミンスク合意は、両「共和国」にウクライナ領内での「特別の地位」(自治権)を認めるというものであり、ウクライナ国内に両「共和国」がとどまることが前提であったが、プーチンは自らこの「合意」を破棄したのである。 両「共和国」が「独立国家」としてロシアと安全保障条約を結び、集団防衛権を行使するということになれば、ロシアは両「共和国」がウクライナ軍に攻撃された(もしくは攻撃される恐れがある)という名目で、ウクライナに侵攻する〝法的根拠〟を得たことになる。プーチンは一線を越えたのである。 ◇露骨な帝国主義的策動 他国領内での親ロ派の〝要請〟に応えてロシア軍を派遣し、その地域を〝独立〟させ、ロシアの勢力圏に組み込むという手口は、プーチンの常套手段である。 ロシアは2008年8月にはジョージア(旧名「グルジア」)の南オセチア、アブハジア地域を「独立国」として承認し、ロシア軍を常駐させている。 2014年3月には同じ手口でクリミア半島を併合した。ウクライナに対しても同じやり方でその領土をそぎ取ろうというわけだ。 親ロ派支配地域と言ってもロシア支持者ばかりではなく、ウクライナ系住民も多く、それまでは平和的に共存していたのに、軍事力によってロシアに事実上併合する政策が帝国主義そのものであることは言うまでもない。 そして、ロシアはひとたびウクライナ領内に侵攻すれば、その支配地域を両「共和国」の〝領土〟を越えてドネツク、ルガンスク州全体に拡大するだろう。現に、プーチンは親ロ派が両州全体を「領土」と主張していることに言及し、「今すぐ(ロシア軍)部隊がそこに行くとは言っていない」としつつ、「それは現場で作られる具体的な状況次第だ」とさらなる拡大に含みをもたせている(毎日新聞2月23日)。 さらに、プーチンはウクライナはもはや「高いレベルの協議」ができるような国ではないと見下し、新しい政権の必要を示唆している。つまりは、ウクライナのNATO加盟を断念し、ロシアの勢力圏に甘んじるような傀儡政権を打ち立てようという意図だ。 このようなプーチンの思惑をもってすれば、ロシア軍の西部ウクライナへの侵攻、首都キエフ制圧の策動も十分あり得るとみなければならない。帝国主義者、大国主義者の野望はとどまることを知らないのだ。 ◇高まる反発と反撃 だが、ロシアがウクライナを支配しようとする試みは――傀儡政権を通じて間接的にであれ、直接統治するのであれ――、きわめて〝高くつく〟だろう。 4159万人のウクライナ国民が唯々諾々とロシアの支配に甘んじるはずがなく、様々な抵抗運動が激化し、政情不安に陥るだろう。治安維持、住民を懐柔するためのコストは膨大になる。しかも欧米諸国の経済制裁でロシア自身が経済的困難に陥ることは必至であり、ウクライナ統治コストをまかなえるはずがない。 ロシア国内ではどうか。クリミア半島併合の時は、プーチンの支持率は60%台から80%に跳ね上がったが、今回はその保証はない。プーチンは年金支給年齢の引き上げを提案して、国民の反発を買い、支持率が伸び悩んでいるのだ。 さらに、プーチンの〝天敵〟とも言うべきナワリヌイは、弾圧や暗殺策動にも屈せず、プーチンとその取り巻き連中の特権的生活や腐敗を動画を通じて暴露し、ロシア国民に衝撃を与えた。プーチン政権に対する抗議運動は若者を中心に広がりつつある。 ◇将校協会がプーチン辞任要求 もう一つ注目すべき動きがある。全ロシア将校協会、つまりれっきとした軍の組織がウクライナ侵攻に真っ向から反対し、プーチンに辞任要求を突きつけているのだ。 今年2月初め、同協会のHPに「プーチンの辞任を要求する公開書簡」が掲載された。協会のイヴァショフ会長は、今のロシアに脅威があるとすれば、それは外部にではなく、内部に、つまり「国家モデル」、「政権の質」、「社会の状態」にあるのであって、今のような状態では「どんな国でも長く生存することはできない」と説く。 ロシアの国家モデルと権力システムは魅力を欠き、すべての隣国と他の国々を遠ざけることになったとイヴァショフ会長は嘆き、ウクライナ侵攻に反対する。理由は、第一に、国家としてのロシアの存在を危ういものにする、第二に、ロシア人とウクライナ人を永遠の敵にしてしまう、第三に、ロシアとウクライナの若くて健康な男性が数万人亡くなるからである。 また、ウクライナへの侵攻は全NATO諸国との決定的な対立に追い込み、ロシアは世界から孤立し、制裁によって経済もボロボロになると指摘する。 イヴァショフ会長は、「指導者たちは、新興財閥、腐敗した官僚、マスコミと軍人、警察、諜報機関の支援を受け、ロシア国家の最終的破壊、ロシア国民を絶滅させるための政治路線を活性化させる決定を下した」、「(対ウクライナ)戦争は、しばらくの期間、反国家的権力[プーチン政権のことか]と、国民から盗んだ富を守るための手段だ」と断じ、全ロシア将校協会はプーチンの辞任を要求すると結論している(詳細は、北野幸伯「ついに内部崩壊か、全ロシア将校協会がプーチンに辞任要求の衝撃」МAG2NEWS2月13日付参照。同協会のロシア語声明文にもリンクしている)。 この協会がどれだけの勢力、影響力を持っているのかは分からない。しかし、軍の将校たちからこうした公然たるプーチン批判が出てきていることに注目すべきだろう。 プーチンの帝国主義的策動は、同時にウクライナだけでなくロシア国内にも反対勢力を、〝墓掘り人〟たちを生み出し、強化しているのだ。これこそ、歴史の弁証法というものである。 (鈴木) 【1面サブ】 連合、「野党共闘」からの離脱迫る 連合は、今年夏の参院選で、立憲や国民に対して支援政党とすることを止め、「人物重視・候補者本位」で臨む方針を決定した。 連合は1998年、旧民主党、民政党、新党友愛、民主改革連合の4党が合流し新たな民主党が結成されて以来、国政選挙では民主党の流れをくむ政党と政策協定を結びこれを支援してきた。 なぜ政党支援ではなく、「人物重視、候補者本位」とするのか。 その理由について、芳野連合会長は「立民、国民、連合三者で戦うことが望ましいという確認の上で、基本方針がつくられている」、「昨年秋の衆院選で共産党の行動で現場が混乱した」ので共産党と協力する候補者を推薦しない、「現場が一番戦いやすい環境をつくっていく」と述べている。 衆院選では、野党は1人選挙区を中心に立憲、国民、共産らの野党共闘を組織し、「政権選択」のための選挙として闘った。立憲との協定では野党連合が誕生した場合、共産党は「外からの協力」という位置づけであった。 これに対して、連合は「立憲と市民連合、共産党との関係で連合組合員の票の行き場がなくなった」、「基本政策や方向が大きく異なる政党同士が連携・協力することは、多くの有権者の理解を得ることは難しい」と批判、共産党抜きの共闘とすることを立憲に迫った。 大企業民間単産を中心とする連合幹部は、反共産主義、労資協調を謳った全労の流れを汲む連中であるが、激しさを増す国際的な資本の競争、米中など国家対立のもとで、これまでより一層政府自民党や資本よりの姿勢を強めている。 例えば先の衆院選では、トヨタ労連は「連携議員」を大幅に削減、愛知11区では7選を目指す組織内候補の擁立を止め自民党候補が当選した。脱炭素など「生きるか死ぬかの闘い」(トヨタ社長)に勝ち抜くために政・労・資一体となった協力が必要だとの理由からである。 外交・安全保障は自民党政府と同じで、国内政策では政府と競い合って生活改善・向上を目指す、というのがブルジョア的労働運動である連合の政策であり、共産党との連携・共闘は排除されることなのである。 これに対して共産党は、自衛隊について海外派兵や米軍との共同軍事行動などに反対するだけで、「自衛のための」自衛隊の存在そのものには反対しない、自衛隊の解消は自衛隊がなくても平和が持続するような段階になってから、「国民の総意」で行われる問題だと弁解している。また天皇制についても、平等の原則に反する存在であるが、現憲法上の制度でありすぐには廃止する問題ではない。これも「情勢が熟したときに、国民の総意によって解決されるべき」という。 当面めざすのは、資本主義の民主主義的改良であって、資本主義そのものには反対しないし、競争力を失い、停滞した日本経済を発展する「強い経済」にすることだと述べている。こうした共産党の主張は連合をますますつけ上がらせるだけである。 連合の野党共闘批判が高まるなかで、立憲は共産との共闘を止め、国民との共闘重視に転換する姿勢を強めている。いろいろ言い訳して共産党は野党共闘にしがみつこうとしているが、資本の体制の根本的な変革を目指さない野党共闘に労働者の未来はない。労働者に問われているのは、労働の搾取に基づく資本の支配に反対する階級的な労働者の闘いとその発展である。 (T) 【飛耳長目】 ★スポーツでの勝利は100の政治スローガンよりも国民を団結させる、とはロシアの独裁者プーチンの言葉だ。資本主義の世界ではスポーツは政治に従属させられ、国威発揚と国民統合の強力なプロパガンダとなる★北京五輪で、再びロシアフィギュア選手のドーピング問題が起きた。ロシアが国家ぐるみのドーピング違反で国家出場の停止という中での発覚である。フィギュアとアイスホッケーはロシアのお家芸だとプーチンも強く激励しコーチ陣に圧力をかけた★プーチンの報奨金は金メダルが400万ルーブル(約960万円)で、コーチには1000万円以上が贈られる。ロシアの労働者の平均年収は85万~100万円と低い。選手の低年齢化は益々進んでいるが、15歳の少女の金メダルは家族やコーチ陣に莫大な恩恵を与える。報酬制度は日本を含む多くの国に見られ、中国では報奨金に豪華住宅や高級自動車がつく。選手は飴(報償や名誉)と鞭(国威、軍隊的練習)の中を喘ぎ、国家の犠牲者となる★東京五輪を上回る4兆円をかけた北京五輪は習近平王朝(共産党)を称え、その独裁と帝国主義的野望を一段と高めるのに利用された。その陰で、ロシアが創り上げた最高傑作〝絶望〟と名付けられた少女に、本当の絶望を突きつけた。 (義) 【2面トップ】 自らの首を絞める「経済安保」 岸田政権は、「経済安全保障推進法案」(経済安保法)に関する有識者の提言を受け、これに対する経団連の意見を聞いて調整し、2月末の法案提出を狙っている。この「経済安保」構想はトランプ政権によって生まれ、バイデン政権によって補強された。この「経済安保」とは何かを検討し、岸田の「経済安保法」に労働者はどのような態度を取るべきかを考えることにする。 ◇保護主義を前面に出す米国 「世界の工場」となった中国の急成長が意味することは、米国のみならず日本やEUもまた、中国の安い工業製品を輸入し、かつ、「付加価値」の高い製品を中国など世界に輸出し、また中国市場へ資本を投下し、中国の労働者を搾取して資本収益を増大させてきた、ということである。 ところが、「米国第一」を掲げるトランプ政権が誕生するや、トランプは、中国からの安い鉄鋼材料や通信機器や自動車部品などの工業製品が「米国の労働者の職を奪う」と叫びだした。トランプの理屈は、中国が「米国の技術をタダで利用」して安い工業製品を輸出することによって、米国の製造業を破壊し、労働者の職を奪ったという合理性を欠いた煽情的なものだった。 トランプは、対中国の貿易赤字解消を狙い、18年から大幅な輸入制限(関税率引き上げ、輸入総量規制など)や通信機器、半導体などの戦略物資の国内採用規制を進めてきた。だが、「貿易戦争に簡単に勝てる」と豪語したトランプは恥を掻くことになった。何故なら、関税引上げによる国内価格の上昇が輸出品価格を押し上げ、輸出は減少し、他方の対中貿易赤字は拡大したからだ。 トランプの矛先は、20年の大統領選が始まるやEUや日本などに向けられた。トランプは急いで鉄鋼やアルミ製品に追加輸入関税を課したのだ。 ◇バイデンの中国包囲網形成へ その後、米大統領選に勝利したバイデンが政権に就くや、バイデンは西側諸国と妥協と修復を図った。その理由は、「中国包囲網」を形成するためであったが、妥協は米国の追加関税の撤廃ではなかった。アルミ製品に対する追加関税は維持され、さらに鉄鋼製品についても追加関税免除の上限規制が残ったのである。こうして、バイデン政権は米国資本主義の保護と強大化のために、また政権維持のためにトランプ流の「米国第一」を貫いたのである。 もはや米国資本主義には、かつて「自由競争の原理」を他国(日本や中国など)に要求していた姿は無い。 他方、中国に対する米国の姿勢は次第に強圧的になって行った。つまり、中国は「米国に挑戦する国」(18年10月のペンス副大統領演説)、米国の世界覇権を脅かす国だ、この中国の動きを封じ込め排除しなければならないというヤクザと同じ屁理屈を弄するようになったのである。 これらは、バイデン政権になっても基本的には維持されてきた。バイデン政権は、「トランプ政権の対中政策は、方法は別として、基本的には正しかった」(ブリンケン国務長官)との認識の下に、中国に対抗する姿勢をそのまま継承し、21年3月に発表した「国家安全保障戦略の暫定指針」では、「中国が唯一の競争相手」だと決めつけたのである。 こうして、米国を筆頭にする〝ヤクザ集団〟(世界の覇権を維持しようとする帝国主義国家群)は、他方の「一帯一路」を推進し、東南アジアや中東、南アメリカ諸国やアフリカ諸国とも経済的結び付きを強める新興の〝ヤクザ国家〟を一気に抑え込み、潰しにかかっている。これが「経済安保」の出発点なのである。 ◇岸田政権の愚昧な「経済安保」 岸田政権は、内閣に経済安保担当相と国際人権問題担当の首相補佐官を初めて設置し、「中国の脅威に備える」と称する「経済安保推進法案」の早期制定を目指している。この経済安保法案を今国会に提出するために、政府の下に作られた「有識者会議」が提言をまとめた(2月1日)。 この提言によれば、法案は4つの柱で構成されている。①半導体などの供給網(サプライチェーン)の強化、②サイバー攻撃に備えた基幹インフラの事前整備(安全性・信頼性の担保)、③先端技術の官民協力、④特許出願の非公開化。 しかし、この4つのうち、直ぐに着手ができるものは、④のみであり、残りの3つは優れた技術開発力が必要であり、それを基にした最新型設備の開発や工場新設や「人材」が必要なのである。 日本は先端技術開発力を低下させているだけではなく、肝心の製造業においては品質管理さえまともに行っておらず、組織ぐるみで「性能データの改ざん」をやり、不十分な品質の製品を供給してきたのである。三菱電機や日立や東洋ゴムや日本軽金属等々、日本の名だたる大手企業の面々は「性能保証」から外れた、言わば欠陥品を内外に供給してきたのではなかったか。 こうした製造業の現実を見るならば、バイデンの号令に従い、中国を追い落とすために「先端技術」や「基幹インフラ」などを整備し、国内に供給網を作り、それらを囲い込むことで「経済安保」になるかに思い込むのは、現実を直視せず、また未来を見通せない経済音痴と国家主義・排外主義の成せる業である。客観的に見れば、岸田の「経済安保」は、米国にとって利益になるかも知れないが、日本の企業にとっては重石になるだけである。中国は日本にとって、最大の貿易相手国であり、かつ有力な投資相手国であることを考えれば、答えは明らかであろう。 ◇対立と分断招く「経済安保」 トランプと同じように、世界の覇権を死守しようとするバイデンの策略にのっかり、世界の分断と対立を生み出すことは日本の製造業にとって、ロクなことにならない。日本はむしろ、中国や韓国をはじめ、多くの諸国と〝自由な往来〟と取引を求めていくべきである。 労働者は、国家間の対立や分断には断固反対する。 なぜなら、国家間対立の最たるものは経済ブロックであり、戦争であるが、バイデン流の「米国第一」と「経済安保」もまた、中国との対立を激化させ、新東西冷戦を作り出し、世界の経済と労働者の生活を破壊しかねないからだ。さらに、米中の対立と分断は、労働者を国家間の争いに巻き込み、労働者を国家主義や民族主義に染め上げることに繋がるのだ。だからこそ、労働者は岸田政権の「経済安保」に断固反対し、世界の労働者と共闘する道を選ぶのである。 世界恐慌後の米国の農業保護を目的にした「スムート・ホーリー関税法」成立に端を発し、世界各国は関税引き上げ競争に突入し、世界貿易は縮小し、各国の利害は鋭く対立していった。これが第二次世界大戦の経済的出発点になったことを思い起こすべきである。 (W) 【二面サブ】 労働者・働く者に敵対する維新政治 2021年衆院選で立憲や共産の後退を尻目に党勢を盛り返した維新は、国会では共産と立憲などの野党共闘派と一線を画する国民民主との接近を強め、「身を切る改革」と「規制改革による成長戦略」を目玉政策として、党勢拡大を図ろうとしている。 ◇労働者に敵対する維新の反動的政治 2020年の都知事選では維新推薦が得票率10・0%とれいわの山本に迫り維新の勢力伸長を窺わせたが、昨年8月に自民党と維新推薦の兵庫県知事、さらに今年2月に自民と維新推薦の長崎県知事が誕生した。 維新は去年の衆院選で野党第二党となり国会内でも存在感を示そうとしている。今月21日の衆院予算委員会では、2022年度予算案の採決に賛成した国民民主とは対蹠的に、維新は反対した。しかしこれまで「特定秘密保護法」、「安保法制」、「共謀罪法」などの自公政権による労働者に敵対する法律にはことごとく賛成し、維新が自公政権に協力する政治勢力である本性を露わにしている。 2018年に大阪市営地下鉄を民営「大阪メトロ」とし、収益があげるようになったと維新は自画自賛するが、民営化によって組合運動を解体し、現業職員の賃金引き下げや労働強化を受け入れさせたのである。大阪市では、組合運動を潰すために市労組の事務所を強制撤去させ、市労組との団体交渉を拒否する不当労働行為を行っている。 日本軍による従軍慰安婦制度を巡っては、維新はその歴史的真実を認めず、サンフランシスコ市との姉妹都市解消や、あいちトリエンナーレ2019での少女像展示への非難など、真実を捻じ曲げ自国の利益を優先する愛国主義的言動を行っている。本国会でも、維新の馬場共同代表は、河野談話の「撤回」を岸田首相に求めた(12・9)。維新は、自民党右派と同様に、先の戦争中の日本軍の慰安婦制度の事実を認めず、この戦争の帝国主義的性格の真実を隠蔽している。 大阪府で維新は「国旗国歌条例」を制定、君が代斉唱時に職員の起立を義務付け、国家主義的な維新の教育に反対する教育労働者を職場から追い出し弾圧している。そして全国学力テストの学校別の公表義務付け、中学での府独自テストと高校入試の内申書への反映など競争教育を煽り、本来の教育を歪めている。 維新の看板政策の大阪都構想は、二度住民投票で否決され、労働者・働く者の反撃にあった。 ◇偽りの身を切る改革 「身を切る改革」では議員の報酬カットや定数カットを掲げているが、「身を切る」と言いながら、政党助成金を受け取り、余っても国庫に返納せず13億円以上もため込み私物化している。また維新と深いつながりがある大阪府市統合本部特別顧問が代表取締役を務めるコンサルティング会社に「政策業務委託料」として5年間で1億5千万円も提供し、維新の税金の私物化が明るみになっている。 維新の身を切る改革は見掛け倒しである。労働者は政党助成金などを廃止し、比例代表制のより民主的な政治制度を求めるであろう。 ◇維新の成長策、規制緩和の内実 昨年9月自民党総裁選で岸田が「競争を重視する新自由主義的な政策を転換」して「新しい資本主義を構築」すると言い出した時、維新の松井や吉村は、自民党のこれまでの政策の「どこが新自由主義なのか」と批判し、「規制改革で民間の力を最大限活用する」と、後に控える衆院選に向けて維新の独自性を強調していた。 維新は大阪では、国の地域医療構想を率先して推進し、公立・公的病院の病床削減を進め、医療保険体制を後退させた。保健所の削減によって保健所機能が逼迫し、急遽作られた大規模医療・療養センターがほとんど利用されず、自宅療養のままにされ感染が拡大した。大阪は重症者と死者が都道府県単位では最大となる医療崩壊を引き起したのである。 維新の成長戦略は、万博とIRカジノを中心とした民間資本の呼び込みであるが、その構想の中心となる夢洲は、河川のしゅんせつ土や産業廃棄物の土捨て場であるため、地盤液状化や土壌汚染の問題があり、その対策にこれまでの設計建設費からさらに790億円も必要なことが判明したのである。松井市長は「カジノに税金は一切使わない」と言っていたのであるが、結局税金を投入しなければならないのである。 維新の成長策は、万博・IRなどのサービス産業に依存するものである。そして維新は資本が「もうかる仕組みをつくること」、「もうかればおのずと給料があがる」(12・10参院本会議)と、労働者を資本に従属させるのである。維新はその成長策を、労働市場改革、雇用の流動化で進めるという。資本家が労働者を解雇しやすくする「解雇紛争の金銭解決」を含む解雇の自由化のための労働法制の規制緩和である(音喜多2・11BSフジ)。これをセーフティーネット(毎月全国民への一律7万円程度の給付のベーシックインカム)で支えるという。結局、維新の規制緩和は、労働者を資本の下に縛り付けて、労働者を低賃金のまま奴隷化するに等しいものだ。 労働者は、自公だけでなく、維新のように資本の支配の維持を図る勢力と闘う隊列を整えなければならない。 (佐) |
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