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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介(『海つばめ』第1048号)


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
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《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
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   そして「愛国教育」で
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1422号 2022年3月13日
【一面トップ】 ロシアは即時軍事侵略を止めよ――問題の解決は米・ロの覇権主義と闘う人民の意志で
【1面サブ】 核共有検討すべきという維新のまやかし――「資本の支配する国家」という真実を隠す維新
【コラム】 飛耳長目
【二面トップ】 帝国主義の権化に転化したプーチン――欧米諸国との対抗の中で
【二面サブ】 ご都合主義に満ちたロシア制裁――米国の残酷で野蛮な侵略には目を塞ぎ

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

ロシアは即時軍事侵略を止めよ

問題の解決は米・ロの覇権主義と闘う人民の意志で

 ロシアのウクライナ軍事侵攻について、国連総会は「国際的秩序を根底から揺るがす」行為であり、即刻中止すべきとの非難決議を圧倒的多数で採択した。国際社会の非難はロシアのプーチンの大国主義、覇権主義に集中している。しかし、ウクライナ問題の本質はプーチンの支配するロシア「国家資本主義」と米・西欧の「自由主義」帝国主義諸国との対立がある。

◇プーチンの大国主義的野望

 プーチンは「攻撃対象は軍事施設だけで民間人に危険はない」と繰り返したが、実際には、圧倒的軍隊による住民のアパート、学校、病院、公共施設などへの無差別な攻撃が行われ、ジェノサイドの様相を呈している。そして、プーチンはウクライナ政府を「ネオ・ナチス」政権呼ばわりし、ロシア軍の野蛮な殲滅作戦を正当化している。

 プーチンにとって、ウクライナは「民族も言語も同じくするロシアの一部」であり、ウクライナの主権は認められず、ウクライナ侵攻はロシアの領土を回復するするための正当な行為なのである。こうしたプーチンの思想は、かつて「民族の牢獄」と言われた帝政ロシアのような大国を回復しようとする反動的思想である。プーチンは帝政ロシアの版図の再建を追求してきた。ウクライナへの軍事侵攻もその一環である。

 これまでウクライナ政府との停戦のための会議が持たれてきたが、プーチンはウクライナ政府に対して、非武装、中立、現政府の退陣に加えて、独立を宣言した東部2地域の州全体への拡大の4条件を突き付けている。しかし、これで済むことはないだろう。プーチンがウクライナを形式的に国家として認めることがあったとしても、現政府に代わってロシアの言いなりになる傀儡政権をつくり、実際上はプーチンの支配する専制的な国家に吸収することだろう。

◇NATOの東方拡大政策

 ウクライナ問題を引き起こした責任はロシアばかりではなく、米をはじめとする英、仏、独の帝国主義諸国にもある。

 東西冷戦時代のソ連・東欧諸国の軍事同盟=ワルシャワ条約機構に対する欧米諸国の軍事同盟であったNATOは、ソ連崩壊後は、かつてソ連圏に属していたバルト3国、中欧のチェコ、ポーランド、ハンガリーなどが加入し、核大国ロシアに対する軍事同盟となった。中・東欧諸国が次々と加盟することによって、かつて16であった加盟国は2020年には30まで拡大してきた。

 2019年、大統領選挙でゼレンスキーは、EU加盟、NATO加盟、親ロシア派が支配し、分離独立を唱えているドネツク、ルガンスクの東部2地域との話し合い解決の3つを選挙公約に掲げ、また「すべての可能性を利用して東部の領土奪還のために闘う」として軍備増強を急ぐことを謳って当選した。ウクライナのNATO加盟についてロシアのラブロフ外相は、「NATOのミサイル攻撃システムがロシア国境に近いウクライナの領内に配置されることはロシアの安全保障上受け入れがたい」「欧州での大規模な紛争に至るほどの、深刻な軍事的リスクをすべての関係者(国)にひきおこすに等しい」と激しく反発した。

 ワルシャワ条約機構が消滅して多くの同盟国を失い、孤立を深めてきたロシアにとって、隣国にNATO加盟国が生まれることに危機意識を募らせたのである。ゼレンスキーのNATO加盟方針は、プーチンのウクライナ侵攻に口実を与えたことは明らかである。

 ウクライナ労働者にとって、ゼレンスキーに従って欧米帝国主義同盟のNATOに依存することは出来ない。NATOは、「国家資本主義」ロシアに対抗して自由主義体制を防衛する欧米帝国主義国家の軍事同盟である。

◇プーチンと米・EUの覇権主義に反対

 バイデンはプーチンのウクライナ侵略は、「国際的な秩序」を破壊する大罪を犯していると叫び、日本政府もまたそれに和しているが、バイデンのいう「国際的秩序」とは、米国を中心とした「自由主義的」帝国主義国が支配する秩序なのである。

 バイデンは、プーチンはウクライナ国民の平和と自由を軍隊によって踏みにじっていると非難する。しかし、米国は何十万という軍隊を投入し、太平洋戦争で日本に落とした爆弾13万トンの約20倍の爆弾を投下し、170万の人民を殺傷したベトナムへの軍事介入を始め、ソ連解体後の1991年以降も「大量の破壊兵器」を隠し持っているという偽の情報を流し、イラクへ大規模な軍隊を派遣、さらにリビア、ソマリア、アフガニスタン等々軍事介入を続けてきた。その他にも、パレスチナ人民を抑圧しているイスラエルに経済的、軍事的援助を行っているのだ。バイデンにプーチンを非難する資格などない。

 米国がウクライナ支援を謳っているのは「世界平和」や「民主主義」の ためではなく、米国の国家利益のためであって、労働者・人民は信頼することは出来ない。

 ウクライナの労働者・人民は、ロシアと米国を中心とするNATO諸国との対立の挟間にあって苦境に陥っている。労働者・人民はいずれかの側に依存することによっては苦境から抜け出ることは出来ない。覇権主義に反対し、労働者の搾取、民族差別を始めとする一切の差別に反対する闘いを闘い抜いていくことこそが、将来を切り開いていく道である。

 労働者はプーチンのウクライナへの侵略戦争に断固反対するとともに、米国・EUの軍事同盟であるNATOの膨張政策にも反対する。

 プーチンは内外のマスコミ、個人に対してウクライナの現実の報道を禁止、侵略反対の集会・デモを弾圧し、侵略戦争を拡大している。プーチンが国民の目や耳をふさぎ、野蛮な侵略戦争の真実を覆い隠そうとしても、国内の反対の声・行動を抑え込むことは出来ない。

 野蛮な戦争の負担は国内の大衆にのしかかっていくだろう。プーチン政府への不満や怒りの増大は避けられない。プーチンのウクライナ軍事侵略は、プーチン支配の終わりの始まりとなるかもしれない。我々労働者の課題は、野蛮な侵略戦争と闘うウクライナ人民の闘いを支持し、労働者の国際主義の立場に立って連帯し、資本の支配からの解放をめざして闘っていくことである。 (T)

   

【1面サブ】

核共有検討すべきという維新のまやかし

「資本の支配する国家」という真実を隠す維新

 ロシアのウクライナ侵攻は、ウクライナ労働者人民への残虐な破壊・殺戮をますます増大させ、野蛮なプーチンによる核による威嚇が強まっている。プーチンは「ロシアは世界で最も強力な核保有国の一つ」(2・24)、「抑止力を特別戦闘態勢にするよう命じた」(2・28)などと発言し、アメリカなどの介入を牽制するとともに、ウクライナのゼレンスキー政権を降伏させようと威圧した。

 これに反応したのが、自民安倍と維新橋下の極悪コンビである。彼らは、日本は非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)があるが、「持ち込ませず」を見直して、NATOがとっているような核共有の議論をすべきだ、と発言した(2・27フジ)。

 彼らの言う「核共有」とは、米国の核兵器を自国の基地に受け入れた上で、平時の管理は米軍、有事になると核の運搬・使用をNATOの作戦内で自国が行う取り決めである。NATO加盟国のうち、現在はドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、トルコが核共有しており、この5カ国は核攻撃能力を持った戦闘機を持ち、戦闘機に搭載可能なB61核爆弾が配備されているのである。

 橋下は「自分たちの国を守る力が絶対に必要だ」と、アメリカとの核の共有を考えるのである。橋下は、政界進出以降は封印していたが、タレント時代は「核武装すべき」と公言していたのであり、核保有論者の姿を再び現した。

 岸田首相は、国会の答弁では「政府において核共有は認めない。議論は行わない」と否定した(3・2)が、維新の松井は「議論し、国民に判断してもらえばいい」(3・2)と、ロシアのウクライナ侵攻を念頭に「核を保有している国が力による現状変更を試みた事実を目の前にして、議論するなというのは…無責任」と反論し、維新は「核共有」の議論を政府に求める提言を提出した(3・3)。

 提言には当初、「非核三原則の見直し」も議論すべきと、「核を持たない国は核保有国による侵略のリスクが高い」という文言が盛り込まれていたが、被爆者団体などから批判の声が上がり、それらの文言は削除した。しかし、維新の本音が、「国を守る」ために「核の保有」が必要である、というのは明らかである。維新はウクライナにおける核危機を利用して、「核共有」による核兵器の国内配備を主張するのである。

 しかし、ロシアのウクライナ侵攻はロシアとアメリカ・NATOの帝国主義国家間の勢力争いによって引き起こされたのであり、国家間の対立が問題であるが、「核共有」は近隣諸国の核保有を促し緊張を高め、国家間の対立を拡大する。

 そして維新は、維新が「守る」という「国」が、資本の支配するブルジョア社会であり、資本の僕である自民党政権が維持している真実を隠している。維新が守るのは、社会を支えている労働者ではなく、労働者を搾取して利潤を吸い上げる資本の支配体制である。

 労働者は、ブルジョア社会の国家間の対立を拡大させる「核共有」を主張する維新政治に反対する。我々は、国家間の対立をブルジョア社会の止揚によって解消するのであり、そのために資本との闘いを組織していくのである。 (佐)


       

【飛耳長目】

★連合傘下の労働組合が組合員の政党支持のアンケートをとったところ、自民党支持がトップとなり、公表を控えたという話を聞いた。最初は耳を疑ったが、連合が支援した民主党政権の消費増税や、普天間基地移設での迷走、わずか3年での下野の失政を思えば、「然(さ)も有りなん」★加えて、自民党の金権体質を象徴した小沢一郎を党代表に据えたり、民主党政権中枢で環境相の細野豪志、外相の山口壮・松本剛明らを筆頭に、自民党鞍替え議員が続出したことも、連合・民主党への失望の現われと解釈できる★民主党から別れた国民民主・玉木は、連合新会長芳野の非共産路線に加担して、次期衆院選での候補者一本化を軸とした野党共闘から共産党を排除、今国会では与党提出の予算案に賛成するなど与党化を進め、安保・憲法問題でも自民党に接近している★玉木は「新しい野党」と言うが、「寄らば大樹の陰」の卑屈な迎合路線でしかない。非正規労働者や女性労働者への差別待遇にアグラをかくダラ幹=ブルジョア組合主義者の醜い姿そのもの★立憲も連合の支援欲しさに非共産路線に同調したように、同じ穴のムジナである。資本の支配の片棒を担ぎ、労働者の切実な要求や問題に背を向ける連合と国民・立憲の策動を糾弾しよう! (Y)


【2面トップ】

帝国主義の権化に転化したプーチン

欧米諸国との対抗の中で

 ロシア軍の侵攻は、多数のウクライナ軍兵士と市民の命を奪いつつ、容赦なく続けられている。我々は、軍事力によって他国を制圧し、隷属化させようとするロシアの蛮行を断固糾弾すると共に、その背景を解明し事態の真実を見いださなければならない。

◇プーチンの怨念

 我々はまず、2月24日、ロシア軍のウクライナ侵攻に際してプーチンがぶち上げた演説を検討してみよう。そこには、欧米諸国に対するプーチンの積年の恨みと怨念がにじみ出ている。

 プーチンは、冒頭で、「欧米の無責任な政治家たちが毎年一歩一歩、我が国に対して突きつけている根本的な脅威」、「NATO圏の東方拡大とその軍事インフラがロシア国境に接近している」に注意を促す(文章はネットでの全文翻訳による)。

 そして、ロシアは「NATOの主要国との間で、欧州における対等且つ不可分の安全保障の原則について、粘り強く合意に達しようとしてきた」にもかかわらず、「常に冷笑的なごまかしや嘘、あるいは圧力や恐喝の試みに遭遇し、その一方で北大西洋諸国は、私たちのあらゆる抗議や懸念にもかかわらず、着実に拡大し・・戦争マシーンは動き出し、我々の国境に非常に近づいている」と主張する。

 1990年にゴルバチョフ大統領と当時のブッシュ政権が交わした「東方不拡大」の〝約束〟を破って、NATOが東欧諸国を次々と加盟させ、勢力圏を拡大してきたことは事実である。また、プーチンが言うように「国連安保理の承認なしに、ベオグラードに流血の軍事作戦が実行され」(1994~5年のNATO軍のセルビア空爆を指す)、その後、イラク、リビア、シリアなどで米国主導で西側諸国が軍事力を行使して政権転覆を図ったことも事実である。

 とりわけ、イラクが大量破壊兵器を隠し持っているとの口実のもとに多国籍軍が大規模な軍事攻撃をしかけ、「その結果、莫大な犠牲者と破壊、信じられないほどのテロの急増を招いた」が、その口実が実は嘘だったと言うプーチンの指摘は、その通りであろう。

 つまりは、ソ連邦の崩壊、「冷戦」の終結後、欧米主要国は、ロシアの国力の低下につけ込んで、勢力圏を拡大し、対立する諸国を容赦なく攻撃してきたのだ。こうした欧米「自由主義」諸国の帝国主義がプーチンの憤懣と憤りをあおり、対抗心をかき立てたのだ。

 今、世界中のブルジョア諸国は〝正義の騎士〟よろしく、侵略的だ、非人道的だとプーチンとロシアを糾弾しているが、自分たちも同じことをしてきたことを都合良く忘れている。プーチンのウクライナ侵攻の手口が如何に残酷で非人道的であったとしても、それは西側帝国主義がやってきたことと同じであり、これらの国々が帝国主義者としてのプーチンを育てたとも言えるだろう。西側諸国は、鏡に映ったプーチンの裏側に自画像を見て、慌てふためき、おののいているのだ。

◇プーチンのレトリック

 プーチンは演説で、ウクライナがNATOに加盟しようとし、ロシアの「存在、主権に対する真の脅威」となっているとして、侵攻の目的は、「8年間、キエフ政権による虐待や大量虐殺にさらされてきた人々を守ること」だ、「ウクライナの非軍事化と非ナチ化に務め、ロシア連邦の市民を含む民間人に対する数々の血なまぐさい犯罪を犯した者たちを裁く」ことだと主張している。

 こうした主張が被害者を装って自らを正当化するプーチン一流のレトリックであることは言うまでもない。

 そもそもドンバス地域での紛争はロシア住民の要望に応えたとの形を取ってロシアが軍や私兵を送り込んできたことから始まったのであり、犠牲者はロシア系住民だけに出ているわけではない。

 確かに、「ナチスに傾倒するテロリスト・ヘイトグループである数千人規模の『アゾフ連隊』がウクライナ内務省のお墨付きの下に蛮行を働いた」という説もある(岩田太郎、JBpress 3月4日号)。

 しかし、ロシア側も「国家親衛隊」というプーチンお抱えの荒くれ部隊を送り込んでいると言われており、その点では似たり寄ったりなのだ。

 また、ゼレンスキー政権が、当初70%だった支持率が汚職撲滅や経済発展などの公約を十分果たせず30%を切るまでに低下してきたために、ウクライナ民族主義をかき立て、ウクライナ語を公用語としてロシア系住民を排斥するといった政策でロシアを刺激してきたことも事実だ。

 ウクライナもまた、ロシア同様、少数のオリガルヒ(新興財閥)が支配するブルジョア国家であり、ゼレンスキーには徹底した改革を実施する能力がないが故に、反ロシア主義に走ってプーチンを刺激する愚行をくり返してきた面は否定できない。

 もちろん、だからといってウクライナを軍事的に制圧しようとするプーチンの試みが正当化されるわけではない。プーチンがウクライナの親欧米姿勢を槍玉に挙げながら、欧州や米国とは協議しつつも、ゼレンスキー政権とは一度も真剣に協議していないこと自体がプーチンのウクライナを見下し、侮蔑する大国主義者の姿勢を示している。

◇ドン・キホーテの大ロシア主義

 プーチンの本音は、「問題は、私たちに隣接する領土で、つまり私たち自身の歴史的領土で(注意!)『反ロシア』が作り出されていること」だという一節ににじみ出ている。つまり、ウクライナはロシア「自身の歴史的領土」なのであって、そこに西側諸国が進出することは許されないと言うのだ。

プーチンは、昨年7月に発表した「ロシア人とウクライナ人との歴史的一体性」と題する論文で、両者の「一体性」を説き、「ウクライナの真の主権は、ロシアとのパートナーシップの中でこそ可能になる」と主張した。これは、かつてのブレジネフ・ドクトリンと同じ「制限主権」論と同じであり、旧ソ連邦諸国の独立、国家的自立を認めない、大ロシア主義という形の帝国主義の主張である。

 ソ連邦解体期の混乱を目の当たりにし、その中を巧みにかいくぐって大統領の座にたどり着いたプーチンは、ソ連の解体は間違いだったと信じ込み、その再建を夢見るのだ。米国の弱体化、米欧間の亀裂、中国の台頭など、米国主導の体制が揺らぐ中、今こそ、ロシアを欧州あるいはユーラシアにおける強国として復活させようというプーチンの執念がウクライナ侵攻に駆り立てたとみるべきだろう。まさに、現代のドンキホーテである。

◇ロシア体制の矛盾の帰結

 ロシアのウクライナ侵攻は、プーチン政権の強さではなく、弱さの、もっと言えばその体制の矛盾の帰結であろう。

 プーチンがこれまで政権を維持してこれたのは、原油や天然ガスなどのエネルギーを輸出して得た莫大な収入をばら撒いて国民を〝買収〟してきたからである(もちろん、自身と取り巻き勢力の懐をたっぷり潤した上で)。

 その反面、プーチン政権は産業の育成を怠り、核兵器やミサイル、AIを駆使した攻撃能力など軍事部門では世界の最先端を行きながら、製造業は育っていない。海外の資本もロシアへの進出をためらい、GDP(国内総生産)は、11位と韓国をも下回っている。

 エネルギー収入が伸び悩み、財政が脆弱化して、プーチン政権は、2018年に年金支給年齢の引き上げを発表したが、これが広範な大衆の反発を買って支持率は低迷してきた。

 おまけに、プーチンの〝天敵〟、ナワリヌイが豪華絢爛たる〝プーチン宮殿〟を紹介する動画を流し、プーチンと取り巻き勢力(オリガルヒとシロビキ=治安機関出身者たち)の特権的生活と腐敗がロシア国民の知るところとなり、プーチンの権威は失墜している。

 プーチンは、批判的なジャーナリストや政敵を毒物や銃撃により何百人も暗殺してきた(中村逸郎氏の表現によれば、ロシアは「毒殺国家」なのだ)。もし、大統領の地位を失えば、彼のあらゆる罪状は暴かれ、極刑に処されるだろう

 それ故にこそ、彼は大ロシア主義、大国主義を振りかざし、〝生意気な小僧〟たるウクライナをねじ伏せることによって人気を取り戻そうとしたのだ。だが、この蛮行によってプーチンはウクライナのみならず、全世界の労働者人民を敵に回した。自ら墓穴を掘ったと言うべきである。(鈴木)


【二面サブ】

ご都合主義に満ちたロシア制裁

物価高騰と円安圧力に無力

 欧米はロシアの軍事侵攻に対する経済制裁を課し、ウクライナには兵器の追加供与を行っている。これに同調するように、岸田政権も次々と制裁を開始した。では、歴代の自民党政権は米国の野蛮な軍事進攻や侵略に対して、一つでも制裁したことがあったのか。それを問う。

◇欧米に同調した岸田のロシア制裁

 岸田政権は様子を見ながら、そろりと拳を振り上げた。ロシア政府による新規ソブリン債(国債など)を日本で発行し流通することを禁止すると宣言した。しかし、欧米の同盟国が厳しい制裁を課すのを見て、すぐさま追加制裁を行った。

 国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの特定銀行を排除することに参加したのである。このロシアの金融排除は、国際金融システムから遮断するものであり、日本とロシア間では、貿易や資本収支などの決済が止まる。さらに、岸田政権はプーチン及び関係者の資産を凍結し、軍事転用が可能な製品の輸出管理の強化、半導体の輸出規制などを行うことも決定した。しかし、金融制裁によって、日本の経済にも大きな影響が出ることは必至だ。なぜなら、ロシアから液化天然ガスや希少金属などを輸入している企業は簡単に別ルートに切り替えられないからだ。

◇数々の米国の軍事侵略に手を貸した自民党政権

 米国とその仲間による他国侵略や侵攻は数々あった。その度に、同盟国の〝親分〟である米国政府を支持し、米軍の残虐行為に目を塞ぎ、その残虐さを放映しようとするマスコミに中止を迫り、放映されると抗議を繰り返して来たのが自民党政権であり、自民党議員共であった。その中から、以下、日本政府の愚劣でご都合主義な対応の一つ二つを紹介する。

 米国は自国の利益になることだけを目的に軍事介入を繰り返してきたが、第二次大戦後、最も犠牲者を出したのが「ベトナム戦争」であった。フランスはインドシナの再植民地化を策したが失敗して諦め、代わりに、ベトナムの南北統一と「民族独立」を目指す闘いに介入したのが米国であった。米国は延べ50万人の兵力を注ぎこんだ。この戦争で米軍はゲリラ掃討だと言って、大量の重爆撃機で無差別爆撃を繰り返し、ベトナムを焦土と化し、さらに枯れ葉剤を頒布して奇形児を大量に生み出した。

 当時の自民党政府は、この何の大義も無い米国政府の侵略戦争を賛美し、米軍らの残虐行為に遺憾の声一つ上げることができなかった。日本テレビ(NTV)は米軍の支援を受けた南ベトナム軍を取材し、「ベトナム海兵大隊戦記(1部)」を作り、その中で敵の少年兵の生首を下げてくるシーンを放映。これに対して、当時の橋本富美三郎官房長官(自民党)が抗議し、日テレ側は政権に忖度し、第2部と3部を中止してしまったのである。

 さらに、記憶に新しいところでは、米軍のイラク侵略がある。

 ブッシュ米国政府は当時、イラク・フセイン打倒を掲げてイラクに侵略した。その理屈は、イラクが「大量破壊兵器」を持つテロを起こす国だ、米国の兵器廃棄要求を聞き入れないからだというものであった。このイラク侵略に対して、小泉純一郎内閣は、露骨に米国の軍事路線を支持したのである。

 しかし、フセイン打倒後、現地調査をした米政府調査責任者は「イラク戦争開始時に大量破壊兵器は無かった」と、米議会で証言したのである。だが、情報操作をして大義をでっち上げ、大量の無実の働く者を殺戮した米国政府は誰も責任を取らなかったし、その後の日本政府は米側の調査結果さえ否定し続けたのである。

 このように日本政府の対応は、同盟国の侵略や核保有を許すという自国の利益のみを考えたご都合主義と偽善に満ちたものであった。確かに、世界の経済制裁によって、プーチンは追詰められるであろう。だが、同時に、日本政府の過去と未来の対応もまた問われ続けるのである。 (W)


   
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