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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1426号 2022年5月15日
【一面トップ】 窮地に立たされたプーチン――5・9対独戦勝記念日演説に見る
【1面サブ】 労働者は平和をいかに構築するか
【メーデー闘争】 全国のメーデーでアピール――労働者党の訴えに、「その通り」の声
【コラム】 飛耳長目
【二面トップ】 岸田政権は軍事支援容認、改憲、軍拡を策動――ウクライナを利用した国家主義の扇動と闘おう
【二面サブ】 破綻した異次元金融緩和政策――生産衰退、物価上昇が労働者の生活直撃

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

窮地に立たされたプーチン

5・9対独戦勝記念日演説に見る

◇責任転嫁と弁明

 5・9対独戦勝記念日でのプーチン演説には、英国防相が示唆したような「戦争宣言」もなければ、もちろん、〝勝利宣言〟もなかった。プーチンの表情は冴えず、「赤の広場」に動員された兵士や幹部たちには高揚した気分はうかがえなかった(現場にいた報道記者は拍手もまばらと伝えていた)。

 それもそうであろう。「特別軍事作戦」によりウクライナ政権は、2、3日で崩壊するとの見通しは外れ、キーウ近郊のロシア軍戦車部隊は撤退を余儀なくされた。東部ドンバス地方では一進一退の攻防が続き、ロシア軍兵士の死者数は1万5000人を超えたと報じられている。

 プーチンは演説で、「正義の戦いで死を遂げた戦友に頭を下げる」「彼らの死は取り返しのつかない損失だ」と述べたが、戦死者の家族は〝どの面下げて〟言う!ロシアの若者たちを死に追いやった自分の責任を不問に付している!と糾弾するだろう(ロシアでは「兵士の母親の会」が粘り強く戦争反対の活動を続けている)。

 プーチンは、昨年末、西側諸国に「誠実な対話や、合理的で妥協的な解決の模索を呼びかけたが、すべて無駄だった」として、責任をすべて西側諸国に転化している。曰く、ドンバスやクリミア半島など「私たちの領土征服に向けた準備が公然と進み」、「ウクライナ政権は、核兵器の獲得があり得ると宣言した」、「絶対に受け入れられない脅威が国境沿いに造られた」、「NATOは最新兵器を定期的に提供し、危険は日増しに高まった。攻撃はやむを得なかった。時宜を得た、唯一の正しい決定だった」云々。

 軍事力でウクライナから分捕ったドンバス地方やクリミア半島を「我が領土」と呼び、「兄弟国」と言いながら、ゼレンスキー政権との直接の協議を回避し、昨年末に10万人を超えるロシア軍部隊を国境沿いに配置してウクライナに圧力をかけ続けてきたのはプーチンではなかったのか。

 「ネオナチとの衝突は避けられなかった」とプーチンは言うが、極右の民族主義勢力はどの国にも――もちろん、ロシアにも――いる。ゼレンスキー政権を「ネオナチ」というなら、軍事力によって先制攻撃し、何万人もの市民を虐待・虐殺し、極東などに強制移送しているプーチン政権の方がよほど「ネオナチ」的であろう。

◇危機深めるプーチン政権

 プーチンが「祖国の防衛」の旗印の下に、「愛国主義」を吹聴し、戦争継続を事実上宣言していることは、プーチン政権の危機の裏返しである。石油や天然ガスなどの資源頼みのロシア経済は近年低迷しているにもかかわらず、オリガルヒ(寡占的大企業)は巨額の富で豪奢な生活にふけり、資金を国外に逃避させてきた。他方、年金支給年齢の引き上げや物価上昇などに対する国民の不満は高まっている。

 プーチンは国民の不満をそらし、支持をつなぎ止めるために大ロシア民族主義、愛国主義に頼るしかないのだ。

 プーチン政権が続く限り、対ウクライナ戦争は長引き、両国の労働者大衆の犠牲は増える一方だろう。

 米欧諸国は停戦のための交渉を真剣に追求することなく、大量の兵器や資金を供与してウクライナを〝支援〟しており、ウクライナは西側諸国対ロシアとの軍事衝突の最前線に立たされている。米国の巨大な産軍複合体は武器需要の急増に笑いが止まらず、戦争の継続に利益を見いだしている。

 ロシア対ウクライナの戦争は、今や米欧帝国主義とロシア帝国主義の戦争に転化しつつあるとも言えるだろう。その先に、核戦争、第三次世界大戦が待ち構えていないと誰が保証できようか。

 ロシアとウクライナの労働者の連帯による戦争反対の闘い、全世界の労働者の帝国主義に対する反対の闘いを発展させ、ブルジョア的帝国主義的政権を打倒することなくして平和も労働者大衆の安全も安寧もないという時代に我々は突入していることを自覚しなければならない。  (鈴木)

   

【1面サブ】

労働者は平和をいかに構築するか

 ロシアのキ―ウ侵攻はウクライナの反撃によって撤退させられたが、東部ドンバス地方では戦闘が激化し、一進一退の攻防で、ウクライナ住民とともにロシア兵、ウクライナ兵士の犠牲者が増え続け、ますます悲惨な戦争状態となっている。

 このような状況の下、防衛のための軍事費増強や核武装による軍事拡張論から、平和外交に徹するべきという平和主義までが論じられている。ここでは共産の「核抑止論は無力、9条を生かした平和外交」という主張を検討し、平和をいかに構築するかを労働者の立場から考えたい。

◇核抑止は無力になったか

 プーチンは、ウクライナ侵攻時、「ロシアは世界で最も強力な核保有国」、「抑止力を特別戦闘態勢にする」などと核使用を示唆し、ウクライナを降伏させる威圧をし、アメリカの介入を牽制した。共産の志位は、核使用を躊躇しないプーチンを前に、核兵器を持てば核の使用が止められるという核抑止論は無力になった、核の使用を止める唯一の方法は、核兵器廃絶しかないと言う。

 「核抑止」は、「いざというときには核兵器を使う」ことが前提であり、核兵器保有国はそのために保有するのである。志位が言うように、核の使用を止める「核抑止」のために、保有するのでない。核保有国は、そもそも核兵器禁止条約には参加しないのである。アメリカの核の傘を日本の安全保障政策の根幹と考える岸田は、核兵器の使用や威嚇を禁止する核兵器禁止条約の締約には、慎重なのである。

 非核保有国が核廃絶を唱えても、全く実効性がない。ロシアによるウクライナでの核兵器使用の危険性は高まっている。ロシアは4月に、核弾頭が搭載可能な新型大陸間弾道ミサイルICBMの実験を成功させた。ウクライナではロシアが小型核を使うことが懸念されており、アメリカは削減していた小型核を持つべきだという必要論が出ている。

 志位が「核抑止論は無力になった」と言っても、核兵器廃絶、核兵器禁止の実現性はなく、むしろ、核兵器使用の危険性が高まっている。

◇9条の平和外交は有効か

 岸田は今年1月17日の施政方針演説で、「核兵器のない世界を追求する」と言いながら、「敵基地攻撃能力を含めあらゆる選択肢を排除しない」「防衛力を抜本的に強化する」と軍備拡張を宣言、「憲法改正」を掲げた。3月の自民党大会で岸田は、「9条改正」「緊急事態条項」など「改憲4項目」を「今こそ取り組まなければならない課題だ」とした。

 対する共産は、核兵器を持てば「核の使用が止められるという核抑止は、ロシアが核の使用を示唆した威嚇を現実に行い無力になった。核の使用を止めるには、核廃絶しかない」とし、「9条を生かした平和外交」を掲げた。しかし、こんなことで軍拡に突き進もうとする岸田、そして安倍や維新などの反動派と闘うことができるであろうか。

 共産は、「9条による平和外交」というが、9条の下に戦力である自衛隊が存在し、しかも対外的な防衛は日米安保で守られている。共産も「自衛隊発足以来、矛と言われる攻撃能力は日米安保体制のもとで米軍に依存し、日本は盾すなわち防御的な活動に徹するという役割分担を形成してきた」(5・3)と認めている。矛の攻撃能力は、アメリカの核による威嚇を基にしているのであり、9条による平和主義は盾の自衛隊と矛の米軍という軍事力によって守られている。

 9条「戦力不保持」は、「専守防衛」という「戦力保持」に変えられ、自衛隊がある。共産は「9条破壊、改憲は許さない」、「敵基地攻撃能力の保有は憲法違反」、「憲法9条との関係では決定的な矛盾がある」というが、そもそも自衛隊が9条の戦力不保持と決定的に矛盾している。しかも共産は、「万が一の急迫不正の侵害には自衛隊を含めあらゆる手段を使って命と主権を守る」と、自衛隊という戦力を使って日本を守るというのであるから、そんな偽りの9条による「平和外交」は、外国の政府はもとより世界の労働者に信頼され、有効となるはずはない。

 労働者は共産の「平和外交」を支持することはできない。国家間の対立を生むブルジョア社会、その根底にある労働者階級を搾取・抑圧する資本主義的生産を廃絶し、社会主義的生産を勝ち取る、資本及びブルジョア支配層に対する闘いを組織することこそが、核兵器のみならずすべての戦力をなくす、平和のための現実的な課題に取り組む第一歩である。  (佐)


       

【メーデー闘争】

全国のメーデーでアピール

労働者党の訴えに、「その通り」の声

 「労働者の祭典」メーデーもまた、コロナ禍で参集〝自粛〟し、沈滞する労働組合運動を象徴していたが、今年はコロナの行動規制が緩まったこともあって、各労働団体は盛大ではないが〝緩やかに〟メーデー〝闘争〟が取り組まれた。私たち労働者党は、北は北海道から南の沖縄まで全国各地域で、労働者の仲間たちに、微力ながら全力でアピール。

 配布した『海つばめ』メーデー号外は、「『管理春闘』を打ち破れ」と題し、「管理春闘」では賃上げ抑制や賃金差別と闘えないことを訴え、連合や全労連の幹部を「賃金闘争を資本と労働者間の不可避な闘いと考えない」と批判。急激な物価上昇に対して、「新しい闘いが必要です」と訴えると、「その通り」と、共感した労働者の声。

 ロシアのウクライナ軍事侵攻についても、「ウクライナでの対立の本質はロシアと欧米の覇権主義」と弾劾。「軍備増強を企む日本の反動派の策動粉砕」を呼びかけ、「労働者の国際的、連帯した闘いを発展させよう」とアピールした。賃金労働の廃絶に向け共に闘わん!

(メーデー号外は労働者党HP「党建設・党活動」のページに掲載されています。ご覧下さい。)


   

【飛耳長目】

★米国で、人工妊娠中絶を規制する州法を違憲無効とする1973年の連邦最高裁判決(ロウ判決)を破棄する新たな判決内容がリークされた。ロウ判決以前は容認か禁止かは州単位で分かれていたが、禁止は違憲とし、50年を経て覆す★中絶問題は米国が抱える矛盾と分断を象徴する問題で、政治的争点となってきた。そこには黒人やヒスパニックの増加と権利獲得が、白人たちの地位を脅かすという危機意識が伏在していた★この危機意識に、精神的荒廃は神への信仰で救済されるとする宗教右派勢力が働きかけ、進化論教育や同性婚容認の問題とからめて命を冒涜する中絶の禁止を訴え、共和党の固い支持基盤を形成してきた★一方、容認勢力たるリベラル派の立場は徹底した個人主義だ。ロウ判決も、中絶選択の女性の権利は憲法が保障するプライバシー権の範囲とし、人種差別を含めた社会の分断や、貧困・失業との関連は問題にされていない★中間選挙を前に民主党・バイデンは、勢いが衰えないトランプ旋風に苦戦が予想され、大統領選時の熱気もない。そこに中絶禁止を認める判決のリークが飛び出し、リベラル派の危機意識を焚きつけている。こんな形で選挙の争点になろうとしているが、米国社会の頽廃こそ問題の根源であることに焦点は当たっていない。(Y)


【2面トップ】

岸田政権は軍事支援容認、改憲、軍拡を策動

ウクライナを利用した国家主義の扇動と闘おう

 岸田政権はロシアへの制裁に加えて、「ウクライナ国民への支援」と称した軍備品の提供を開始した。岸田の目下の関心事は、ウクライナ問題で欧米との協調を図りながら、中国覇権主義への対抗措置を具体的に練りあげることであり、その為の策動を強めることである。

◇人道支援の名で軍事支援

 「人道支援」と言いながら、岸田政権は自衛隊が所持するドローンや防弾チョッキやヘルメットなどの軍備品をウクライナに供与した。

 政府はドローンを民生品だと強弁したが、既に市販用ドローンがウクライナ軍によって利用され、ロシア戦車攻撃用の優秀な偵察機や攻撃機として機能していた。自衛隊が提供するドローンはそれ以上であろうと誰もが予想する。防弾チョッキやヘルメットもまた戦闘用の装備である。

 要するに岸田政権は「防衛装備移転三原則」(14年に安倍政権が閣議決定)でうたう「紛争当事国には輸出しない」を簡単に破るのである。

 他方、日本政府のロシア制裁は〝本気でない〟。 ドイツなどはロシア依存度の高い石油や天然ガスの権益を放棄し、近い将来の禁輸まで決めているのに、日本はロシアサハリン沖石油・天然ガスから撤退せず、資本権益を守ると宣言している。

 岸田政権にとって、一番の懸案事項は中国が強めるアジアでの覇権に対してであり、とりわけ中国の軍事的プレゼンス(南沙諸島の軍事基地化や台湾海峡での示威行動など)に対してである。

 中国の覇権に対抗し、資本輸出によって、とりわけ東南アジアに築いた大きな資本権益を守るためには、米国の軍事力に頼り、また利用するだけでは機能せず、アジア諸国に日本と共同行動をとらせることが必要なのである。

 岸田はブルジョアの頭目として、そう自覚するからこそ、ウクライナ危機と中国の軍事進出をダブらせて考えたし、アジア・西欧を訪問して中国脅威論をぶって回ったのである。

◇東南アジアでも太平洋州でも中国を排除できず

 岸田の東南アジアと欧州訪問の目的は何であったのか。

 岸田は4月29日から5月6日にかけて、東南アジア主要3カ国(インドネシア、ベトナム、タイ)や欧州(イタリア、英国など)を歴訪し、英国での記者会見で「ウクライナの明日は東アジアかもしれない」(『Reuter』22年5月6日)と中国に対する警戒感を吐き、日本との共同行動を訴えたとのことだ。

 今回の岸田の訪問は、ロシア制裁への協力を表明することにあったが、岸田の眼目は中国の覇権を封じ込めることであり、そのための共同行動を特に東南アジア主要国に提起し、約束を取り付けることにあった。

 しかし、ベトナムとは企業協力関係進展で合意したが、共同して中国の覇権主義と闘うという賛意は得られず、タイとは日本から「防衛装備品を輸出することを可能にする協定」に署名したに止まった等。

 岸田の焦りや危機意識は中国の東南アジアへの覇権のみではない。岸田の諸国訪問に先立つ4月19日、中国とソロモン諸島は、米国の激しい牽制にもかかわらず、「安全保障協定」(中国の船舶の寄港を認め、軍・警察の派遣要請ができる内容)を締結したからだ。

 慌てた米国は直ちにソロモンへ政府代表団を送り込み、中国軍が常駐した場合には「重大な懸念が生じるため、対抗措置を取る」と恫喝し、警告を発したのである。

 マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、パラオとの間で、米国は「自由連合協定」を結び、財政支援のみならず、国防・安全保障権限の全面委託を受け、マーシャル諸島には米軍のミサイル実験基地がある。米国にとって、これらの島しょ国は沖縄やグアムと並んで、将来の中距離ミサイル基地の候補地である。

 ところが、第二次大戦以降米国が覇権を握っていた南太平洋島しょ国の一角で、19年には、キリバスとソロモン諸島が台湾と断交して中国と国交を結んでおり、そこに今回の中国とソロモンの安保協定締結事件が起きた。米国の焦りは半端でなかった。

 それでは日本はどうか。菅政権は21年7月に、太平洋州地域の19カ国・地域の首脳と「太平洋・島サミット」を開催し、中国の脅威への団結を呼び掛けた。だが同意は得られず、むしろ、福島第一原発の処理水海洋放出問題に関する強い懸念が強調される始末であった。

◇ウクライナを改憲、軍拡などの突破口に利用

 中国は経済的にも軍事的にも、米国の世界覇権を脅かす存在となり、米国の中国包囲網を切り崩す手を次々に打ち、アジア・アフリカ・太平洋州で資源開発や軍事基地化を進めている。

 安倍一派ら反動議員がウクライナ情勢を利用し、憲法改悪、軍事費増額、兵器の軍民共同開発、武器輸出促進を策動しているが、岸田政権もこれに乗っかり、利用する姿勢を見せている。

 とりわけ改憲論議がかしましい。反動議員達は「GHQの押付け」や「古い」とかの理由ではなく、明確に「安全保障」の面から自衛隊を軍隊として憲法に明記すべきだと叫ぶ。つまり、専守防衛は時代に合わない、敵国先制攻撃能力を保持できるようにすべきだ、防衛の盾として米軍の核兵器を共有すべきだとの声が自民党内で強まり、維新はもちろん、国民民主や立憲民主の中にも同調する動きが出始めている。

 共産党も参院選対策用パンフレットに「自衛隊の活用」論を載せ、これがロシアの侵攻と重なり、事実上、改憲や軍拡に反対する労働者の闘いを削ぐ役割を演じている。

 さらに、マスコミの世論調査によれば、安倍政権が安保法制を強行採択した当時(15年)、あれ程に「安保法制反対」「改憲反対」で盛り上がった市民運動の声は、今では憲法改定容認に変わっていると言う。

 それは当然であろう。連日連夜、中国やロシアの脅威だけがマスコミ報道され、これまでの米軍によるベトナム、イラク、シリアやアフガンなどへの侵攻・侵略や無差別な人民殺傷に対する批判は何一つ無いからだ。また、共産党や市民運動自体が日本を含めた世界の帝国主義の根底(資本主義の搾取体制そのもの)を批判できないことも大きな原因だ。だから、市民運動はブルジョアの国家主義、愛国主義にすっかり絡め取られている。

 米国と米国を脅かす唯一の国=中国との経済的軍事的覇権争いは、帝国主義的抗争そのものである。労働者は米国の帝国主義も中国の帝国主義にも反対する。

 さらに労働者は日本の改憲や軍拡の動きの根底を確認する。つまり、自衛隊の海外派兵が数十回も行われて来たのは、日本資本主義が既に帝国主義国家――製造業は国内生産額に比べて海外で3割~4割を生産し、輸送機器部門では海外で国内の2倍の生産台数を記録し、産業全体で毎年20兆円もの海外投資収益を国内に還流している国家、国内同様に海外労働者の労働を搾取している国家――に転化しているからであることを。

 安倍政権同様に岸田政権もまた、米国と共に、あるいは米国に代わって、アジアでも軍事的なプレゼンスを高めようと策動している。日本のブルジョアや安倍、岸田政権が中国の帝国主義的進出を声高にわめくのは、自らもまた帝国主義国家として中国と対抗し、張り合うために過ぎない。

 労働者は帝国主義や帝国主義者の策動に反対する。日本の労働者は搾取の廃絶を目指す闘いに立ち上がり、そのことを通じて世界の労働者との国際的な連帯を示すことができるのである。 (W)


【二面サブ】

破綻した異次元金融緩和政策

生産衰退、物価上昇が労働者の生活直撃

◇円安加速、一時131円台に

 円安が止まらない。4月28日、20年ぶりに、円は一時対ドルで131円台まで下落した。直接のきっかけは黒田日銀総裁の円安容認発言であった。3月以降急速に進む円安への懸念が高まるなか、円安の原因である異次元の緩和路線を日銀は修正するのではないかという市場の予測に反して、黒田総裁は「日本経済はコロナ前の水準を回復していない」「金融緩和の出口を探ることにはならない」と記者会見で語った。この緩和路線継続の黒田発言を受けて、1ドル=128円台後半までに推移していた円相場は一気に1ドル=131円台に迄に下落した。

◇物価上昇は労働者、貧困世帯を直撃

 欧米諸国は生活支援、企業救援など不況、コロナ禍の財政散布が物価上昇をもたらしているとして、金融引き締めに転じている。米国は政策金利を3月に0・25%引き上げゼロ金利を脱し、今後も0・5%程度引き上げる一方、8・9兆ドル(約1100兆円)に膨らんだ資産を来年末までに約2兆ドル圧縮する計画だ。英国も昨年末から連続して金利引き上げを行い、現在0・75%になった、EUも政策金利引き上げを予定している。

 これに対して、日本は0・1%の政策金利に固執しているのであり、欧米諸国との金利差は拡大し、円安は進む一方である。例えば米国では2%の政策金利であり、日本ではゼロ金利である場合、2%の利子が付くドルで持っていた方が、利子のつかない円を持っているよりも有利であり、円を手放しドルを得ようとするだろう。だから、円の対ドル相場は下落し、円安となる。

 円安は物価上昇として労働者、貧困世帯の生活を直撃している。例えば、「洋服」は過去十年間9%上昇、婦人用は13%である。衣料品は輸入割合が98%で円安の影響をもろに反映する。輸入比率が6割のエアコンも21%の値上がり等々。

 幅広い生活品の分野で輸入化が進んでいる。輸入比率を見ると、家電、家具などの耐久消費財では34%となり、10年前の1・7倍に高まった。食品・衣料などの消費財も1・4倍の25%に上昇。

 食費の家計における消費に占める割合を示すエンゲル係数の上昇は、21年1~11月には25%と1980年代半ば以降の水準に高まった(22・1・30「日経」)。

 物価上昇は円安ばかりではなく、コロナ禍による生産縮小、ウクライナへのロシアの侵略などの影響も大きい。穀物はロシアとウクライナで世界の取引量の4分の1、天然ガス・石油はロシアは各々世界の輸出量の1、2位をしめている。ウクライナに対するロシアの侵略は穀物、エネルギー価格の上昇に深刻な影響を及ぼしている。

◇異次元の緩和策の破綻

 生活物資、重要な原材料が大幅に値上がりしているにもかかわらず、黒田は異次元の緩和政策を継続していく必要があるというのだ。

 異次元の緩和政策というのは、ゼロ金利でカネをジャブジャブ市場に垂れ流し、そのカネで資本が生産的な投資を行い、停滞した経済の再生・発展を図る。円安も輸出を促進するための手段とされた。

 ところが国債を大量に発行、禁じ手である日銀直接引き受けまがいの手段を弄して、大量に市場にばら撒かれたカネは、生産的な投資にまわるのではなく株式投資などに向けられ株価を釣り上げ、企業や富裕な株式所有者を喜ばせただけに終わった。

 一方、円安による輸出効果もほとんど薄れていった。海外生産比率を見ると、輸出企業と1ドル=130円を付けた02年度では13%台であったが、21年度には22%台に達する見込みだ。国内に残った企業は衰え、円安効果を生かしにくい。エネルギー、食糧、原材料などほとんどを海外からの輸入に依存している日本にとって、現在では円安は資本にとっても大きな負担になっている。

 しかし黒田が異次元の緩和策を改めることが出来ないのは、まず金利が高まれば国債の利子率を上昇させ、財政を圧迫することである。政府は国債金利を低く固定し、財政破綻を先延ばししてきた。国債発行残高は約1000兆円、金利が上昇するなら国債の利子支払いの費用は数兆円規模で増え、財政危機が深刻化するのは避けられない。

 また金利上昇を認めることは、国債、株式など金融資本のバブルをつぶすことになり、混乱を招く。

 日本を取り巻く経済の現状は、黒田の異次元の金融緩和策の破綻を明らかにしている。2014年に安倍政権の下で始められた異次元の金融緩和は、経済の成長・発展をもたらすどころか経済は停滞したままであり、労働者の実質賃金は低下、増えたのは国家の借金といった体たらくである。コロナ禍、ロシアのイラク侵攻はこれまで隠されてきた日本経済の矛盾を激しい物価上昇など黒田の異次元の金融緩和策の矛盾を表面化させた。しかし、黒田はなすところなく、これまでの異次元の緩和策を継続するのみである。 (T)


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