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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
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   そして「愛国教育」で
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1427号 2022年5月29日
【一面トップ】 インド太平洋を廻る覇権争い――中国包囲網策すバイデンと岸田
【1面サブ】 沖縄から一切の基地撤去を――沖縄と本土の労働者による岸田政権一掃の闘いと共に
【コラム】 飛耳長目
【二面トップ】 北欧2国が中立と決別――強まるロシアへの軍事的圧力
【二面サブ1】 困難な問題の先送り――岸田政権の全世代型という社会保障改革
【二面サブ2】 那覇市議会での自衛隊「感謝決議」賛成――不真面目な「反省」でごまかす共産党
<1425号2面校正>

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

インド太平洋を廻る覇権争い

中国包囲網策すバイデンと岸田

 バイデンがアジアを歴訪した。最初は韓国、次いで日本を訪問し、日本では新たな「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)の発足を宣言した。そして最後は日米豪印のクワッド首脳会議だ。バイデンの目的は言うまでもなく、アジアでの中国包囲網を強化拡張することにある。しかし、それだけではない。

◇前のめりになったバイデン、混乱を暴露

 バイデンのアジア訪問の目的の一つは、台湾への中国の圧力や北朝鮮の威嚇に対して、日韓と協力して対処することを確認し、中国と北朝鮮を牽制することにある。

 岸田との会合後、バイデンは記者会見で台湾有事の際に米国が軍事的に関与する意思があるかと問われ、「YES」と答えた。マスコミは歴代米政権の政策変更と報道したが、直ぐに米オースティン国防省は「政策に変更はない」と火消しを図り、翌日の24日、バイデンは前日の「YES」を事実上撤回したのである。

◇「抑止」ではなく「対処」が課題に

 バイデンが前のめりの発言をするには布石があった。今回の日米首脳の確認事項の中に、日本の「敵攻撃の抑止」に加えて、日本の「対処」が追加され、日本は軍事力を大幅に強化することを約束していたからである。

 既に昨年4月の日米首脳共同声明では、自衛隊の軍事力強化をうたい、さらに今年1月の日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)では、具体的な日本軍の戦闘能力向上を確認していた(共同発表)。つまり、今回の日米首脳会議で、晴れて日本の軍事力強化が謳われたのだ。

 自衛隊が「抑止」のみならず実践的に「対処」するという意味は、「敵基地攻撃能力」を保持し使用するということである。最近、マスコミ各紙で、自民党や維新が騒ぐ「敵基地攻撃能力保有」論が紹介されているが、防衛省は大分前からこの実践配備に取りかかっている。

 例えば、防衛省は既に15年と17年に空母(政府は「多機能護衛艦」と呼称)である「いずも」と「かが」を就役させ、18年には、長距離ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)の導入を決定し、21年に南西諸島の奄美大島から宮古島にかけてミサイル部隊やレーダー網を配備する方針を決めた。

 さらに今年(22年)の4月、自民党の会合で、年末に予定する「防衛大綱」と「中期防衛力整備計画」の改定に合わせ、現在の900キロの射程距離をさらに伸ばした長距離巡航ミサイルなどの配備やこれを搭載できる戦闘機の改修を進めると述べている。

 米国は台湾有事を避けたいのであり、その意味でもバイデンは日本が積極的に攻撃的兵器を準備することに賛成し、日本が中国に影響力を行使することを期待するのである。

 日本政府が中国の軍事的行動に「抑止」のみならず「対処」を考えるのは、自動車や電機や化学などの大企業がアジア各地に資本を投下し、大きな資本権益を築き上げてきたからであり、それらを今後も拡大しなければ、日本資本主義は立ち行かないと考えているからだ。今や、日本と中国は資本主義大国どうしの、アジアにおける経済的軍事的な覇権争いの渦中にある。

◇IPEFの内実は「経済安保」

 バイデンは岸田同席の上で、IPEF発足を表明した。このIPEFについて、バイデンはインド太平洋領域の経済的枠組みだと言ったが、関税引き下げと貿易促進を柱とするTPPと同様なものを想定してはいない。米国は国内の自動車や鉄鋼やアルミなどの資本を保護するためにTPPから脱退し、むしろ関税を引き上げさえした。

 米国にとってIPEFは、中国に対する包囲網の一つとして機能すればいいのであり、中国外しの「温暖化対策」や「半導体供給網の構築」が出来れば御の字なのだ。

 しかし、バイデンや岸田らの思惑どおりに事が進むかは別問題だ。今年(22年)1月、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)が発効した。日本・中国・韓国・ASEAN10ヵ国に豪とNZを加えた15カ国が参加する自由貿易協定である。

 このRCEPに参加する諸国の人口とGDPをそれぞれ合計すると、共に世界の3割を占める。つまり、EUやTPPより大きな自由貿易圏が東アジアに誕生したのである(ちなみに参加した15カ国の人口は22・7億人でEUの4・5憶人の5倍、GDPは25・8兆ドルでEUの15・6兆ドルの1・6倍強だ)。

 このRCEPの誕生で関税が順次引き下げられる。これを想定し、経産省は工業製品や農産物の輸出効果が大きいと胸算用し、自動車などの大企業もアジアに築いた海外子会社から域内にて輸出入するメリット(安い原材料と高利潤を確保)が大きいと、ほくそ笑んでいる。岸田はバイデンのIPEFを支持したが、RCEPの自由貿易協定による企業や農家の実利を無視して進むことは不可能なのだ。

 また、中国とアジア諸国の依存関係も無視できない。「ASEANと中国の貿易額は2020年に5169億ドル(約58兆円)とこの10年で倍増、G7の総額の8割弱に迫っている。中国は2022年に発効する地域的な包括的経済連携(RCEP)にも加盟。TPP加盟も強力に推進し、地域における自由貿易の旗手の役割を演じようとしている」(『東洋経済』、21年12月23日)。要するに、IPEFは中国を目の敵にした「経済安保」にならざるを得ず、またそれがバイデンの狙いである。

 だが、供給網の囲い込みを中心に、中国との「経済切り離し」を前面に出せば、東アジアの自由貿易と矛盾する。ASEAN諸国は中国の軍事的圧力に脅威を感じるが、経済的に中国依存が強く、そう簡単にバイデンの策動に乗っかれない。

 ベトナムやマレーシアなどはバイデンの枠組みに参加したが、米国の市場開放というメリットは無く、様子見というところだろう。今後、バイデンの策略が功を奏するかは不明だが、少なくとも次のことは自明である。

 TPPを脱退し自らアジアから離れ、「米国第一」を引き継ぐバイデンは保守的でエゴイズムな反自由貿易主義にならざるをえず、従って、成長著しいASEAN諸国の資本主義とは相入れない。まして、アジアの労働者は「労働者には国境がない」という国際主義の立場から、諸国間と労働者間に対立を持ち込む「経済安保」には反対であり、米中や日中の覇権抗争・帝国主義的行動にも断固反対なのだ。 (W)

   

【1面サブ1】

沖縄から一切の基地撤去を

沖縄と本土の労働者による岸田政権一掃の闘いと共に

 15日、アメリカ軍統治下にあった沖縄が日本に復帰してから50年の「沖縄復帰50周年記念式典」が行われた。

 沖縄の会場には岸田が出席し、「戦争によって失われた領土を外交交渉で回復したことは史上まれで、日米両国の友好と信頼によって可能になったもの」と振り返った。

 岸田は沖縄復帰を日本の手柄のように言うが、住民の4人に1人が亡くなった沖縄戦の惨状をもたらし、沖縄がアメリカに占領される原因となったアメリカとの帝国主義戦争の反省から始めるべきだ。

 日本の支配階級が十五年にもわたる「アジア・太平洋戦争」を開始せず、敗戦が明らかになったにもかかわらず戦争を継続させなければ、沖縄戦は避けられた。原爆投下にしても、主要都市への無差別爆弾による空襲にしても、日本の支配階級の責任が問われなければならない。

 岸田が「50年たつ今もなお大きな基地負担を担っていただいている 基地負担軽減に全力で取り組む」というが、全く口先だけの誤魔化しである。

 普天間基地の移設は、移設先の辺野古基地の工事が難航して、目途がたたない。橋本首相とモンデール駐日大使が「普天間の57年以内の全面返還」で合意したのは1996年、すでに26年が経っているが、海底の軟弱地盤を改良する政府の設計変更を沖縄県側が承認しない対立が続いている。

 4月27日には敵基地攻撃能力保有や対国内総生産比2%を念頭に置いた5年以内の防衛費増額など、自民党安全保障調査会の党提言を受けて、岸田は議論を進めたいとしており、岸田は防衛のために軍備増強を図ろうとしている。

 先に岸田は、プーチンの核の使用も辞さないという発言や、それを利用した安倍一派や維新の「核共有」の議論の必要性の提言を受けて、「核兵器による威嚇も、ましてや使用も、万が一にも許されるものではない」、「非核三原則を堅持する」と平和勢力のように装い「核廃絶」まで口にしたが、岸田はアメリカの「核の傘」によって日本の安全保障が守られている、アメリカの核兵器は日本の安全保障に必要だとしている。

 岸田は歴代自民党政権と同様に、日本の防衛と軍備増強をアメリカに依存し、アメリカの力を借りて貫こうとし、基地の提供や思いやり予算等の措置をとってきた。

 日本の米軍基地は、基本的にはアメリカの世界戦略、世界的な覇権のためであるが、日本の支配層は日本の利益や防衛を前面に出して日本の防衛の要とし、日米は共同で米軍基地の固定化を図ってきた。

 政府は、住民の願いである基地撤廃や生活向上の課題を放置しそれとは裏腹に、さらに米軍との共同使用を進め、自衛隊の基地を増強している。

 岸田は今また、アメリカと同調して、中国やロシアの脅威を煽り立て、アメリカの核や軍備が日本のために必要であるとし、日本はそのアメリカの恩恵を受けているとする。そんな岸田には歴代自民党政権と同様に、アメリカに毅然と基地の国外撤去を要求する見識も信念も外交力もない。

 沖縄の米軍基地の国外退去を進めず、自衛隊基地の軍備増強の帝国主義的政策を強める岸田政権は、沖縄と本土の労働者による闘いで一掃しなければならない。 (佐)


           

【飛耳長目】

★沖縄が復帰50年を迎え、沖縄戦から既に77年を経た。本島南部の南城市に糸数アブチラガマがある。アブは縦洞穴、チラは崖、ガマは洞窟のこと。今は畑となっている一角に屈んでしか入れない狭い入口がある。中は真っ暗闇だが、懐中電灯を照らしながら奥へと進むと丸い井戸があり、今でも静かに水を湛える★戦後ここを訪れた婦人が「この井戸が父の命を救い、私が今日あるのもこの水のお陰ですね」と思わず涙ぐんだ。その婦人は、この洞窟で九死に一生を得た日々野勝廣さんの娘さんだった★この洞窟は負傷兵600人が運び込まれ、避難住民やひめゆり学徒らと共に〝生き地獄〟と化した洞窟の一つだ。日々野さんは生きて洞窟を出られた重傷兵6人の一人で、洞窟に落とされた爆弾で偶然にもこの井戸まで吹き飛ばされ、ここの水をたらふく飲んで生き返った。日比野さんは体験記『屍とともに半年』で克明に語っている(南城市「糸数アブチラガマ」で検索されたし)★今もって沖縄のガマの奥深くには、発見されることのない遺骨が眠る。沖縄戦は「本土防衛」の〝捨て石〟であり、その結果20万人もの犠牲者を出し、今日では米国の世界戦略の一環としての広大な基地を抱える。復帰50年、その〝捨て石〟的立場は変わっていない。 (義)


【2面トップ】

北欧2国が中立と決別

強まるロシアへの軍事的圧力

 ロシアのウクライナ侵攻を契機として、「中立」を国是としてきた北欧のフィンランド、スウェーデンの2カ国は、中立政策と決別して欧米を中心とする軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)に加盟することを決めた。「自国の安全と平和を守る」というのがその理由だ。ロシアのウクライナ侵攻として始まった戦争は、欧米帝国主義とロシア帝国主義との戦争の性格を強めている。

◇フィンランド、スウェーデンの「中立」政策

 フィンランドは、100年に及ぶロシア帝政の支配を経て、1917年に独立。しかし、独ソ戦争が始まった39年と第2次大戦中の41年の2度に渡りスターリンのソ連の侵攻を受け戦争、領土の1割を失った。

 戦後米国を中心とする自由資本主義圏とソ連を中心とする〝社会主圏〟が軍事的に対峙した〝東西冷戦〟時代には、資本主義体制を維持しながら、48年にはソ連と「友好協力相互条約」を締結、外交はいずれの陣営にもつかない「中立」の態度をとり、ソ連崩壊後もその姿勢を維持してきた。

 一方、スウェーデンも19世紀前半のナポレオン戦争の終結後、非同盟の中立政策を続け、第1次、第2次の2度の世界大戦にも参加せず、軍事的中立を貫いた。第2次大戦後は、国連中心の「積極的外交政策」を展開し、国連の平和維持活動(PKO)の基礎をつくり、核軍縮、平和促進、発展途上国支援などの分野で活動してきた。

 しかし、一方では、独立を維持するために軍事力強化を進めた。60年代までには自衛を目的に核兵器開発を進めたほか、国民皆兵制度や民間防衛を含めた防衛体制をとり、戦闘機開発(「グリンペン」)や潜水艦を保有するなど北欧きっての軍事力を持っている。

 フィンランドやスウェーデンが「中立」政策をとってきたのは、軍事に対立しあっている大国同士の狭間にあって、独立を維持し、生き延びようとするブルジョア小国家の政策であった。

 ソ連と長い国境線で隣接しているフィンランドの外交は、資本主義の体制をとり、欧米資本主義と経済的に結びつきながらも、ソ連とは「友好的な政策」をとることに徹し協調的な態度をとってきた。

 欧米の帝国主義とソ連の帝国主義との争いや国際的な争いは自分たちには無関係な他人事とだとみなして、資本の利益を追求するブルジョアジーの「中立」政策を、小ブルジョア平和主義者は、体制の違いを問わず、相互不干渉で「平和的に共存していく」政策として美化してきた。

 しかし、帝国主義的な大国同士の対立が激化するならば、「平和維持」のための「中立」政策は無力であることをフィンランド、スウェーデンの「中立」との決別、NATO加盟への転換は教えている。

◇ロシアの圧迫で中立放棄

 ロシアは、スウェーデンに対して「軍事的中立政策を放棄するのはまちがい」として、隣接するカリーニング州に極音速ミサイルを搭載可能な戦闘機を配備したり、核搭載可能な短距離弾道弾の模擬発射実験を行うなど圧力を強めている。

 しかし、フィンランドのマリン首相が「(ロシアの)ウクライナ侵攻ですべてが変わった」「ロシアのあらゆる行動に備えなければならない。NATOの抑止力の下でなければ、安全の保障は得られない」と述べたように、フィンランド、スウェーデンが「中立」政策を放棄し、NATO加盟に踏み切った責任はプーチンのウクライナ侵略にある。

 圧倒的な軍隊をウクライナに侵入させ、ロシアの属国にしようとするプーチンの野蛮な覇権主義は、資本主義の小国家を震え上がらせ、NATOの傘に入ることを決断した。

 ロシアのウクライナ侵攻を契機にして、フィンランドではNATO加盟賛成は26%から76%に、スウェーデンでも57%と過半数を超えた。このままなら自分たちもウクライナの二の舞になりかねないという、ブルジョアや小ブルの危機意識がNATO加盟への方針転換をもたらしたのである。

 プーチンは隣接国がNATO加盟国となり、核兵器を持ち込まれることを自国を危機に陥れると恐れていたが、自ら危機を招いたのである。影響は北欧2国にとどまらず、欧州の大国ドイツの対ロシア政策にも大きな影響をもたらした。

 ソ連崩壊後、ドイツは軍備費を大幅に削減した。しかし、ロシアのウクライナ侵攻に対し、ロシアとの協力が平和につながるという期待は「失敗」だった(シュタイン大統領)として、軍事費の増強を図る(対GDP比1・3%から2%に引き上げ、軍の増強するための1000億ユーロ=約13兆円の基金の創設)一方、核搭載可能な戦闘機配備を決定するなど強硬姿勢に転じた。ウクライナへの支援も当初のヘルメットなど防御的なものから対空戦車、ミサイルロケット砲など攻撃的な武器供与に変わった。EUの中心的存在であるドイツの対ロシア強硬姿勢への転換、北欧2国のNATO加盟などウクライナ戦争は、NATO対ロシアの戦争へと変わりつつある。

◇帝国主義の策動に反対して闘おう

 こうしたなか、日本においても、政府自民党や反動派は、北欧中立国のNATO加盟、ドイツの軍備増強などの例を引いて、日米同盟の強化、敵基地先制攻撃態勢の整備をはじめとする軍備増強、自衛隊の合憲化、非常事態宣言等を盛り込んだ憲法改定などの策動が強まっている。これは、ヨーロッパの情勢に便乗した反動的な策動である。

 北欧の中立の放棄=NATO加盟、ドイツの軍備増強は、欧米の帝国主義とロシア帝国主義との対立を激化させ、戦争の危機を強めている。労働者にとって、「中立」が「平和維持」だという主張をいささかも共有するものではない。

 帝国主義が存在する限り、戦争の危機はなくならない。労働者は米国帝国主義にもロシアの帝国主義にも反対であり、どちらにも加担しないという意味で「中立」である。北欧のNATO加盟は、緊張を強め戦争の危機を深めたのであって、日本が日米同盟を強化する理由にならない。自民党政府は、中国に対して米国との軍事同盟を強化し、対抗しようとしているが、それは日本の国家、大資本の利権、利益のためであって、労働者は労働者の国際的連帯の立場を堅持し、資本の支配克服、労働の解放をめざして闘い抜いていこう。 (T)


【二面サブ1】

困難な問題の先送り

岸田政権の全世代型という社会保障改革

 岸田政権が設置した「全世代型社会保障構築会議」が、5月17日に議論の中間整理を公表した。この会議は、「成長と分配の好循環の実現のためには、すべての世代が安心できる全世代型社会保障の構築が必要」と課題を位置づけている。岸田の掲げる「全世代型社会保障」は本当に社会保障足りうるであろうか。

◇困難さを増す現代社会の社会保障

 少子高齢化や25年問題(団塊世代がみな75歳以上の後期高齢者となる2025年には高齢者が4000万人になるが、それを支える15歳から64歳の生産年齢人口は6000万人ほどになる)があり、介護制度や年金制度の破綻、医療制度の崩壊など差し迫りつつある。

 中間整理の提言でも「生産年齢人口が急速に減少」という認識を示し、「少子化を克服」するために、「子育て・若者世代」への支援を行うことが喫緊の課題だとして、社会保障制度を構築していくとしている。

 これまでの社会保障が「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」となっている、それを見直し「若年期、壮中年期および高齢期のすべての世代が安心できる」「全世代型社会保障」を構築すると言うのだが、何か間違っていないか。

 社会保障が、年齢を重ねて自分で働いて生活し生きていくことが困難になる高齢者に「傾く」のは当然であり、自ら労働し、生活する現役世代は社会保障を支える人々であるのは当然でないか。

 現役世代をも社会保障の対象にするという「全世代型社会保障」の背景には、労働者の生活維持が困難で、子育てができないほど賃金が安く、労働が厳しく、労働時間が長いという厳しい現実が横たわっている。しかしその解決は、社会保障ではない。

 「仕事と子育ての両立」のためには、良質な保育を行う保育所を完備することが重要である。待機児童問題は幾分改善されたとはいえ、保育の質の問題や利用しにくい保育所への措置などいわゆる「隠れ待機児童」を解消する課題は依然重要であり、保育所等の設置は、労働者世帯や母子家庭・父子家庭が、自ら働き、社会のために働くためであって、社会によって救済されるための社会保障の問題ではない。

 労働者が求めるのは国家や権力者による生活保障ではなく、自らがまともに働くことができる諸条件、つまり生活するに必要な仕事や、十分な賃金や、健康に働き得る労働条件を手にすることである。

◇全世代型社会保障は困難の解決となるか

 中間整理は、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心となっているこれまでの社会保障の構造を見直し、将来世代へ負担を先送りせずに、能力に応じて皆が支え合うことを基本としながら、それぞれの人生のステージに応じて必要な保障をバランスよく確保すること」という。

 しかし、安倍・菅に続く岸田の全世代型社会保障は、矛盾した政策であり、その財源も示されていない空虚な打ち上げ花火である。労働者が日々さいなまれる資本による労働の搾取という、資本主義社会の問題を覆い隠すものでしかないのだ。

 これまでの様々な議論では、年金については、「マクロ経済スライド制度」の徹底・強化、受給開始年齢の70歳超への引き上げ、厚生年金の適用拡大、介護については、介護保険の利用者負担を2割に引き上げ、ケアプラン作成の利用者負担導入、医療については、後期高齢者の窓口負担を2割に引き上げ、湿布など市販薬で代用できるものは保険対象から外すといった方針が検討された。

 それらは結局労働者・働く者の負担を増やし、社会保障受益者負担で給付削減を図ることによって、社会保障制度の崩壊や解体に対処しようというもので、社会保障の課題の解決になるものでは全くない。 (S)


【二面サブ2】

那覇市議会での自衛隊「感謝決議」賛成

不真面目な「反省」でごまかす共産党

 那覇市議会4月臨時議会における「感謝決議」は、決議名にはないが、「自衛隊は、本来任務ではなかった緊急患者搬送……搬送数が総計1万件を超えるに至った。/その他にも……市民・県民の生命を守る活動を継続」云々と、自衛隊に敬意と感謝を表明する内容(海上保安庁などの活動にも触れているが)であった。

 発案したのが元航空自衛隊救難ヘリパイロットの自民党議員であり、「生命を守る任務遂行」を口実に、軍隊である自衛隊の存在を美化しようという狙いは明白であるにもかかわらず、共産党(5議席)は賛成し、賛成20、反対2、退席15、欠席2で25日に可決した。

 共産党那覇市議団の賛成理由として、「本土復帰50年に際し、関係機関並びに関係各位における市民・県民の生命を守る任務遂行に対して、深甚なる敬意と感謝の意を表する」とか、「自衛隊の住民の人命を守る災害救助活動(緊急空輸)については評価する立場です。……今回の決議は、離島住民の思いにも応えたものとして賛成」と、市議団ニュース第3号で表明していた。

 災害対策や医療救助はそれを専門とする組織を充実させておこなうべきであるにもかかわらず、自衛隊に肩代わりさせ続けている行政のあり方こそ問題であり、現状追認も情けないが、軍隊によって「生命を守る」ことを市民に受け入れさせようという反動的な策略に与し、共産党は軍国主義への策動に手を貸したのだ。

 共産党は、市議団第4号ニュースで、「決議」への対応について、「党市議団の対応を真摯に反省する」とのコメントを発表した。「寄せられた懸念の声(「自衛隊増強を進める岸田政権等に利用されかねない」といったもの)や自衛隊問題に関する様々な住民感情に対して思慮にかけていた」と述べているが、市議会に対して決議の修正・撤回をすることなどの表明はなく、「反省」で済ませて、うやむやにしようという不真面目な姿勢であり、〝真実を伝える〟「赤旗」も一切触れていない。

 ニュース第3号で、「憲法違反の自衛隊は、国民の合意を得て段階的に解消する考え」が言われ、党発行の「はてなリーフ」の自衛隊問題について一読せよ、第4号でも、21年衆院選政策の「自衛隊と憲法の矛盾解決は国民合意で段階的にすすめる」を参考にせよと言っており、自衛隊への感謝で右往左往したことは、「自衛隊活用論」のブルジョア現実主義では、岸田政権の危険な軍国主義と一貫して闘えないことを示したのである。 (岩)


<1425号の2面校正>

「国連改革の幻想」の囲み記事の2段目「フランスの改革案」の6行目の「場合には、」の次に以下の文を挿入。

「拒否権を行使した理由を明らかにすることを」

9行目の「必要とない」→「必要としない」   


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