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●1430号 2022年7月10日 【一面トップ】 とどまることない物価上昇――労働者は生活防衛に立ち上がろう 【1面サブ】 賃上げを謳う与野党の偽り 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 軍事同盟の強化図るNATO――NATO「新戦略」に深く関与する岸田 【二面サブ】 相次ぐ郵政労働者の自殺――労働者を自死にまで追い込む管理職や当局 <1429号校正> ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】 とどまることない物価上昇労働者は生活防衛に立ち上がろう物価値上げが止まらない。帝国データバンクの調査によれば、6月末現在、今後年内に値上げされる食品は1万5257品目に及ぶとされている。6月の集計時点に比べて4千以上増え、上げ幅は全体で13%になる。値上げされてきたのは食品に限らず、電気、ガス、ガソリンをはじめ日用品など生活必需品全般に及び、労働者・働く者の生活を圧迫している。 ◇物価騰貴の原因はウクライナ戦争だけかすさまじい物価騰貴をもたらした原因はどこにあるのか。 岸田首相はロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされた「有事の物価高騰だ」と、政府の政策とは関係がないかに言っている。しかし、政府とは無関係と言い切ることができるのか。 物価騰貴の背景には、2008年のリーマンショック以来の世界的な大規模な財政金融政策による通貨の大量発行がある。各国政府は不況回復のために大量の通貨をバラ撒いたが、新型コロナの発生はこれに輪をかけることになった。不況対策や生活支援のための大量の通貨のバラ撒きによって、通貨の〝価値〟は下落し、物価の上昇をもたらした。 とりわけ日本では、安倍政権によって「経済成長戦略」として「異次元の金融緩和政策」として事実上の日銀の国債引き受け、マイナス金利などによって大量の通貨を市場にバラ撒き、「円安」政策がとられてきた。 しかし、それは景気振興どころか経済の一層の衰退をもたらした。2012年から2021年の9年間、経済成長は名目で僅かにGDPの0・8%にすぎず低迷、賃金は上がらず、実質賃金は低下した。 そして最近では、欧米がインフレ対応として金利引き上げを行う中で、欧米の通貨に対する円の為替レートはさらに低下した。円安は食品、原材料のほとんどを海外に依存する日本の物価を大きく押し上げてきた。 現在の物価上昇は、たんにウクライナ戦争によるだけではなく、経済低迷の下で景気回復策として日銀が通貨を大量発行したことによって引き起こされた結果であって、岸田の「有事の物価高騰」発言は、厚かましい責任回避以外の何ものでもない。 岸田は政府が対策を取っているから心配ないと言う。しかし、賃上げを行う企業への税の軽減による賃上げ奨励策、一定の水準を超えるガソリン価格に対する税軽減・補助金による価格抑制策、生活困窮者への一時金のバラ撒き等で、労働者・働く者の生活を守ることが出来るのか。 例えば、賃上げした企業が税を軽減されるといっても、賃上げを行う企業は一部に限られているし、対象は正規の労働者であり、派遣、臨時など非正規の労働者は対象外であり、労働者の生活を直撃する物価騰貴に対して役に立たない。このままならますます労働者・働く者の生活は酷くなっていくばかりである。 物価騰貴で最も打撃を受けるのは、低賃金で不安定な非正規労働者やシングルマザーら底辺の労働者、職場からリタイヤして乏しい年金に依存して生活している老齢者たちである。 ◇デモ、ストライキで立ち上がる欧州労働者海外では、労働者は激しい物価騰貴に対して、生活防衛のために、賃上げを要求して大規模なデモやストライキに立ち上がっている。 イギリスでは40年ぶりの物価騰貴(4月、前年同月比9%)に対して、賃上げを要求して、鉄道労働者らが「過去30年で最大規模」といわれるストを行った他、ゴミ収集労働者が全国各地で3日間のストライキに立ち上がり、通信産業労組はストライキを計画するなど闘いの波は広がっている。 ドイツでは、最大の産業別労組である金属産業労組(IGメタル)は警告ストで鉄鋼・製鉄部門で3万4000人の労働者に対して8月から6・5%の賃上げと、500ユーロ(7・15万円)の一時金を勝ち取った。また、金属産業派遣労働者は、最も低い労働者の時給は14%引き上げ、10月より12・43ユーロ(1777円)となり、24年には13・5ユーロ(1930円)とする賃上げを獲得した。 ベルギーでは、6月、8万人の労働者が賃上げや消費税停止を要求してデモを行い、またブリュッセル空港や国内各地の公共交通網は「1日ストライキ」でほぼ停止状態に陥った。 ◇労働者の階級的反撃を欧州の労働者は生活を守るためにストライキやデモに立ち上がり闘っている。黙っていては、生活を防衛することは出来ない。 野党は最低賃金時給1500円(社民、共産)への引上げ、消費税5%への減税(立憲、社民、共産)を掲げている。野党は最低賃金の増額や消費税減税は、物価騰貴によって縮小した個人需要を拡大し、景気回復につながると、その意義を強調している。 労働者にとって平均千円にも満たない最低賃金の引上げなど生活改善は当然の要求である。しかし、野党のように、労働者の大衆的闘いを呼びかけ、組織しようともせず、低迷する日本資本主義経済の振興・発展をとなえ、そのために政府・自民党と競い合っている限り、生活防衛のためのまともな改良さえも勝ち取ることは出来ない。資本主義は労働者の搾取を基礎とし、利潤の獲得・増加を生産の動機、目的としているからである。 現在の物価騰貴の原因となった通貨の大量発行の引き金となった過剰生産(恐慌)は利潤獲得目的の資本主義の無政府的生産がもたらしたものであったし、新型コロナの蔓延も資本の利益のために医療体制の整備をないがしろにしてきた結果である。そしてエネルギー、小麦等の世界的価格高騰をもたらしたロシアのウクライナ侵略も、利害が異なる国家に分裂し、対立している現代の資本主義世界の矛盾の表れである。 資本の支配に反対する労働者の階級的闘いとその発展が追求されなくてはならない。 (T) 【1面サブ1】 賃上げを謳う与野党の偽りメディアでは各党の代表者が出席して参院選の争点について議論が交わされているが、与野党間の主張は大同小異であり、多くの労働者・働く者が抱える課題が、全くなおざりにされている。ニュース番組等で取り上げられた「国民の暮らしをどう守るか」について、各党は賃上げ政策を上げているが、本当にそれが労働者のためになるかが問われる。 ◇労働者をたぶらかす自公の「賃上げ」論「物価高騰下における国民の暮らしをどう守るか」について、自民・岸田と公明・山口は、「切れ目のない物価対策」、「持続的な賃上げ」を上げた(テレビ朝日6・16)。 実質賃金は、1991年を100とすると2019年は105とほぼ横ばいである。岸田は、今年の賃上げ率は2%以上、過去20年間で2番目に高い水準というが、物価上昇率が2%に達する現状では、実質的に賃下げである。5月の消費者物価指数(生鮮食品を含む総合)は、前年同月より2・5%上昇し、食料・光熱費・医薬品など生活に欠かせない「基礎的支出項目」は前年同月比4・7%の上昇。今後もこのような消費者物価が上昇する趨勢は止まりそうもなく、岸田の誇る賃金上昇は、物価上昇で吹き飛んでしまうのである。 そして岸田は、「最賃1000円以上めざし、持続的な賃上げの流れを維持する」という(NHK7・3)。2021年の最低賃金(全国加重平均)が930円であるが、例え最賃1000円になっても、1日8時間月20日働いて月16万円では、せいぜい一人の労働者がぎりぎり生活できる賃金にしかならない。こんな賃金を岸田がめざすと言うのである。労働者はとても支持できるものではない。岸田は、労働者の不満や怒りをそらし篭絡するために安倍・菅にならって「官製春闘」演出し、企業やブルジョアの利益の根底を損なわない範囲で、「賃上げ」を言っているに過ぎない。 日銀の黒田が「賃金の本格的な上昇を実現するために、金融緩和を粘り強く続けることで、経済をしっかりとサポートしていくことが必要」というのだから、「賃金の本格的な上昇」はしていないと政府が認めている。 さんざん安倍や黒田が景気回復の目安だと言ってきた対前年比消費者物価上昇率が2%に達したのに、今度は「賃金の本格的な上昇」までと、金融緩和とは直接つながりのない理由を持ち出し、円安でさらに物価高になっても金融緩和を続けるというのだ。 労働者は「良い」インフレなど決してあり得ないことを確認し、断固として労働者・働く者の生活を追いつめ、破壊する物価上昇に反対する闘いを開始し、発展させていかなければならない。 ◇賃上げを景気回復のためと資本に媚びを売る不甲斐ない野党対する野党は、立憲、社民、共産が最賃1500円を掲げており、志位などはその効果を、「日本経済がぐっと底上げされ、経済の好循環が始まる」、「賃金が上がる国に」(6・25)、「国民のふところを温める」、「給料を上げてこそ経済好循環」(6・29)などと、資本主義の発展、資本の活性化を望むことで、要求がかなうようなことを言う。しかし例え最賃1500円でも、自公政権と資本との決然とした闘いなしに勝ち取ることはできない。 労働者の賃金は労働力の価値(労働力の再生産に最低必要な生活資料の価値)によって規定される。このマルクス主義の基本的な理論を知らない労働者でも、この真実は労働と生活の実感から真理と感じ取ることができるであろう。労働者が生きるための最低の生活しか保障しない賃金に押しさげることが、資本主義の内在的傾向であり本性である。労働者は団結を固めて、実力で闘うことによってのみ、ブルジョアから譲歩を引き出し、賃上げや労働条件の改善を勝ち取っていくことができる。 岸田は賃上げを騙り労働者をたぶらかし、野党は偽りの賃上げを掲げ、労働者・働く者の闘いを自公政権への請願におとしめる。労働者は野党の〝闘い〟を乗り越えて、労働者独自の階級的な闘いを発展させていかなければならない。 (佐) 【飛耳長目】 ★参院選の選挙公報を見ると、新参の極右勢は異様だ。3年前の労働者党の「女性・非正規労働者への差別待遇、過労死招く長時間労働、財政危機招くバラ撒き一掃」の訴えは、どの政党よりも働く者の切実な要求を代弁し、輝いている★野党の公約には、消費税率引き下げや撤廃、最低賃金引き上げ、あれこれの無償化や給付が並ぶが、困窮の根源である資本の支配への追及を欠き、財源を国債発行に頼るなど借金財政に加担している★岸田政権は、預貯金で〝眠る〟個人金融資産2千兆円を投資に回せば、景気回復と分配増が可能と「資産倍増」を打ち出すが、日銀調査で預貯金ゼロ世帯が36%を占め、働く者とは無縁の不労所得奨励に堕している★バブル期の1990年の個人金融資産は1千兆円。それが30年間で倍増、資産1億円以上の富裕層は年々10%ほど増えて3百万人も。彼等の資産だけが増えたのだ★所得税の税率は最高45%だが、不労所得の配当は分離課税で15%。所得に応じて増える国保料、後期高齢者支援金、介護保険料には65万、20万、17万の上限があり、それ以上は払わない。富裕層優遇は歴然だ★法人税は消費税率上昇に反比例してほぼ半減。企業の内部留保は、05年の2百兆円から20年には3百兆を超えた。勤労庶民への苛斂誅求は、即刻止めよ! (Y) 【2面トップ】 軍事同盟の強化図るNATONATO「新戦略」に深く関与する岸田NATOの首脳会議が6月末に行われ閉幕した。NATOはロシアに対抗するために、ウクライナ支援やNATOの軍事力増強を決めると共に、中国に対してはNATOに「挑戦」する国という新たな「戦略概念」を打ち出した。欧州・北大西洋の軍事同盟であるNATOはアジアにも足を延ばし関与すると言うのだ。 ◇NATOはロシアを敵国にバイデンやNATO首脳の働きかけもあって、スウェーデンとフィンランドの北欧2か国がNATOに加盟することになった。当初、NATOの一員であるトルコは、自国内で分離独立を求めて闘うクルド人の活動組織、クルディスタン労働者党(PKK)及び関連組織を2か国が支援しているとして頑迷に反対していたが、NATO加盟を優先する2か国は一転してトルコの言い分を認め、PKK等の活動阻止に同意したからだ――トルコには約850万人のクルド人が居住しトルコ人口の約14%を占める。隣国シリアの北部ではクルド人が実行支配している)。 このことは同時に、NATO加盟国もまた、クルド人の民族自決や独立の要求を認めないという立場に立つことを意味する。欧米諸国の言う民主主義の「普遍的価値」とは、所詮、自国の国家的利益(資本の利益)を守る〝打算的価値〟に過ぎないことを自ら暴露した。 NATOは今後、北欧2か国を加えて、現在の4万人の即応部隊を30万人規模に引上げる方針だ。米国も現在より2万人多い、10万人規模の兵力をヨーロッパに配置する。さらにスペインや英国などに駆逐艦や最新鋭ステルス戦闘機を配備することも決め、ロシアと対抗することを鮮明に打ち出した。NATOが採択した「戦略概念」の中に、「ロシアはもっとも重大かつ直接の脅威」だと明記した。今後、NATOとロシアの軍事的対立は極限にまで高まる可能性がある。 ◇中国は「体制」に挑戦している、と宣言前回の2010年NATO首脳会議においては、NATOは中国についてまったく触れていなかったが、今回初めて、中国は「体制上の挑戦」を突き付けていると宣言した。中ロ両国は、ルールに基づく秩序を破壊しようとしている、そのことがNATOの価値と利益に反していると言うのである。一体何のことか? その理屈を、採択された「戦略概念」の要旨(日経新聞7月1日)から見てみよう。 「一、中国は我々の利益、安全保障、価値に挑み、法に基づく国際秩序を壊そうと努めている。中国とロシアの戦略的協力関係の深化は我々の価値と利益に反する。一、中国と建設的な関係を築くための扉は開かれている。我々は中国が欧米の安全保障に突きつける体制上の挑戦に対応し、同盟国の防衛と安全を保障するNATOの能力を確保すべく、責任を持って取り組む。一、インド太平洋地域の発展は欧州・大西洋地域の安全保障に直接影響を及ぼし得るため、NATOにとって重要」。 ロシアへの言及は要旨を見る限り、7項目中2項目であり、4項目が中国を見据えた文言になっている。その意味で、NATOの戦略はバイデンらの注文に沿った中国対策そのものになっている。NATOは中国がロシアに接近することを牽制し、NATOや米国の「利益」に反する行動を取るなと言い、さらに、NATOの掲げる「価値」や「法に基づく国際秩序」に挑戦するなと釘を刺している。 しかし、NATOの言う「価値」や「法に基づく国際秩序」とは、自由や人権と騒ぐブルジョア民主主義の「普遍的価値」や資本主義の「体制」や「秩序」のことである。 また、バイデンや岸田らも言う自由とは、不当なあらゆる差別を廃絶し、この世の貧困を一掃し、人々が働きたい時に働くことができ、自分の意思で人生を豊かに過ごすという自由ではない。 バイデンや岸田らにとって、自由とは、まず私的所有の自由、商業の自由、資本投下の自由、利潤獲得の自由である。また人権とは、これらを保障する権利であり法律(憲法)のことである。 さらに商業の自由とは、資本主義では労働者の労働力を商品として売買する自由、従って労働力を労働過程で消費し、労働力の価値以上に生きた労働を支出させて搾取する自由のことである。つまり資本主義的生産様式の中で取る資本の運動の自由のことである。 自由や人権の「普遍的価値」と言うのなら、せめて、米国や日本での人種差別(日本では海外研修制度による現代奴隷制や外国人差別)や性差別や賃金差別だけでも廃絶してから言うべきだ。とんだ食わせ物だよ、バイデンも岸田も。 当然に、中国やロシアもまた、れっきとした(国家)資本主義であり、国家権力が政治も経済も支配し牛耳っている点が米国や日本といくらか違うが、賃金制度による搾取社会である点では全く同じである。 ◇バイデンや岸田の策動この「戦略概念」に中国対策を盛り込んだのは、米国のバイデンと日本の岸田から強い要請があったからだ。既に明らかな様に、バイデンはトランプ以上に、中国は米国の覇権を脅かしていると強く牽制してきた。 米国はトランプ政権時代には、「米国復活、米国第一」を謳い、中国との貿易赤字拡大を槍玉に挙げ、中国製品が国内の雇用を奪っていると強弁し、保護主義政策を採用し、輸入関税を引き上げた(もちろん中国以外にも適用した)。これによって、トランプは中国との「貿易戦争に簡単に勝てる」と豪語したが、そう簡単でないことを悟った次のバイデン政権は、中国を米国の「最も手強い競争相手」と位置付けた。 バイデンは経済的競争のみならず、政治的影響力や軍事的覇権争いにおいても、中国は米国の世界覇権を脅かす第一の存在であると断じてきたのである。だから米国は中国を封じ込めるために、「経済安保」を強め、半導体や通信やAIなどの先端技術を中国に利用させないという欧米圏市場からの排除を図り、同時にアジア重視(インドやASEAN諸国の取り込み等)を打ち出したのである。そのアジア重視の現れが、急ごしらえの「インド太平洋経済枠組み」の発足であった(『海つばめ』第1427号参照)。 このような危機意識に煽られた米国の強い意向を受けたからこそ、NATOは米国に同意し中国に対抗する姿勢を打ち出したのである。 同時に、中国とアジアの覇権争いの渦中にある日本の岸田もまた、バイデンに足を揃え、あるいは、それ以上にNATOに対して強い関与を要請したのである。これは東南アジアを舞台にした日中(また日中韓)による資本輸出と市場支配を廻る競争から必然化している。 もはや米国はかつてのような圧倒的な強国ではない。軍事的にもアフガニスタンでの10年にも及ぶ軍事介入に敗れて撤退し、一時、NATOからも米軍の一部撤退が図られたように、米国はヨーロッパでもアジアにおいても一国で軍事的「プレゼンス」を維持できなくなっている。米国の相対的な力量の低下がNATOを強化することを必然にしているのであり、NATOが日韓や豪ニュージーランドなどのインド太平洋諸国と連携するのもその表れである。 今後NATO(日本などの同意国も)と中ロは一層軍事拡大に突っ走り、世界の覇権を廻る帝国主義的対立を深めるのは必至である。労働者は、帝国主義的対立・戦争の根底は資本主義にあることを確認し、労働者の階級的闘いを発展させて行く時である。 (W) 【二面サブ】 相次ぐ郵政労働者の自殺労働者を自死にまで追い込む管理職や当局6月29日(水)、近鉄奈良線・学園前駅に「ダーティー企業・日本郵便株式会社を追求する会」のメンバー等、十数人が集まりました。 今年の5月6日、奈良西郵便局で働いていた21歳の集配労働者が仕事上のミスを上司から叱責され、自殺に追い込まれたのです。 それに対し「追求する会」のメンバー達は、駅前でビラを配って抗議活動、さらにその後、駅の近くにある奈良西郵便局の通用口前に行きました。そして、スピーカーで労働者に闘いを呼びかけ、管理者に抗議し、さらには局から出たり入ったりしている労働者にビラを配布しました。 「自殺者続出の郵便局」「5月、奈良西郵便局で21歳の社員が自殺!」と題されたビラには次のよう書かれています。「2019年4月1日、正社員として奈良西郵便局の集配部に採用された21歳の男性社員は、2022年5月6日に(ポストではなく)宅配ボックスへ郵便を配達するといった仕事上のミスをしました。上司からの叱責はとても厳しく、始末書の提出を要求されました。4日後の5月10日、彼が出勤して来ないので、管理者が自宅に見に行くと彼はすでに自殺し息絶えていました。/ところが、奈良西郵便局長は、自殺の原因分析や検証を全くせず、社員一同に対し『検索しないよう』に呼びかけ、社内に、『より一層仕事に邁進するように』といった張り紙をして何事もなかったかのように振舞っています」と、ビラは明らかにしています。 21歳の彼がどんな始末書を書いたのか、管理者からどのように叱責されたのかなど、不明な点はありますが、何ともやりきれない事態です。ビラの裏側は「奈良西局での自死事件は初めてではない!」と題し、今回のようなことは初めてではないと指摘しています。 奈良西郵便局では過去にも1人の自殺未遂者と2人の自殺者を出しているのです。1人は郵貯の社員で、屋上から飛び降り自殺しようとし、何とか保護されました。 もう1人は簡保の社員です。業績の少なさを理由に複数の上司に取り囲まれて叱責を何度も受けて自殺したのです。 さらにもう1人は郵便配達員で、年賀はがきの売り上げの少なさを強く責められ自殺したのです。 奈良西局内では3人の自殺者を出したのです。 さらに奈良西郵便局は過去にうつ病を患った労働者2人を強制配転させ、その2人は転勤先で病気を悪化させて自殺したのです。10数年の間に、5人の自殺者と1人の自殺未遂者を奈良西郵便局は出したのです。 スピーカーで、郵便局の管理者に対する怒りの声を発しながら、ビラを配布しました。郵便局員全員がビラを受け取っていました。 ◇大阪西局、さいたま新都心局でも自殺者が郵便局での自死事件は奈良西局に限られません。2019年3月に大阪西局で亡くなったHさんは執拗にパワハラを受けていました。そのため配達作業中に着用する「反射たすき」で首をつって局内で命を絶ちました。 また、2010年12月8日には「さいたま新都心局」でKさんが亡くなっています。彼の遺族によれば「夫は亡くなる直前までメールを送っていた、そもそも岩槻局から新都心局へ移動したくなかった」そうです。 さらに局内での「お立ち台」に立たせてのつるし上げや罵声を飛ばすなど、パワハラは日常茶飯事であった、更に営業ノルマに追われていたといいます。夫人は裁判に訴え、残された子供たちに「お父さんは悪くない、働くことは大切なこと」を伝えたい、と話されています。裁判では遺族の勝訴となっています。 ◇団結の輪を広げ、反撃の開始を!郵便局でのパワハラや自殺者の増加はこのところ顕著になっています。1980年頃までは「闘う全逓」と云われた郵便局の労働組合運動でしたが、しかし、当局から「組合が闘えば事業が危機に陥る」と攻撃され、今では職場の組合組織率は大幅に減少しています。社会主義と結びつかない、「戦闘的労働運動」は敗退してしまったのです。 当局の「合理化」攻撃は進んでいます。かつては職人技が要求された仕事が、今では「読み取り区分機」の導入で人減らしが進んでいます。 金儲け主義をすべての労働者に徹底しようとする管理職の言動は直接的な労働者への弾圧攻撃となって現れています。今、郵政の労働者に問われている課題は、労働者を自死にまで追い込むような管理職や当局に対し、労働者の団結した行動で反撃を開始することです。 解体した労働組合を新たに組織しなおし、現場の労働者の怒りの声を集め、郵政の職場環境の改善に取り組み、同時に多くの職場で闘っている労働者との団結の輪を広げ、社会を変革していく闘いを大きく前進させていきましょう。 (大阪 S) <1429号校正> ① 2面上部表記の号数と発行日が間違っていました。 1411号→1429号、2021年9月26日→2022年6月26日 ② 2面囲み記事 1段目後ろ3~4行目 「くりかえして調整する」→「繰り越して調整する」 2段目1行目 「今年のように」→削除 |
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