WPLLトップページ E-メール


労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

◆毎週日曜日発行/A3版2ページ
一部50円(税込み54円)

定期購読料(送料込み)25号分
  開封 2000円
  密封 2500円

ご希望の方には、見本紙を1ヶ月間無料送付いたします。

◆電子版(テキストファイル)
メールに添付して送付します

定期購読料1年分
 電子版のみ 300円

A3版とのセット購読
  開封 2200円
  密封 2700円

●お申し込みは、全国社研社または各支部・会員まで。
E-メールでのお申し込みもできます。



郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
●お申し込みは、全国社研社
または各支部・会員まで。
E-メールでのお申し込みもできます。
「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
●お申し込みは、全国社研社
または各支部・会員まで。
E-メールでのお申し込みもできます。
「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
  お申し込みは、全国社研社
  または各支部・会員まで。
  メールでの申し込みも可能です。

まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1431号 2022年7月24日
【一面トップ】 労働者政党の建設を進めよう――自民大勝、野党の無力さを暴露した参院選
【コラム】 飛耳長目
【二面トップ】 「安倍政治」を総括する――政治と経済・財政を国家主義で妄動
【二面サブ】 大統領国外逃亡のスリランカ――ブルジョア政治の底知れぬ腐敗

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

労働者政党の建設を進めよう

自民大勝、野党の無力さを暴露した参院選

 7月10日投票の参院選は、自民が非改選議員を含め単独過半数を獲得、また自民をはじめとする改憲勢力が3分の2を占め、反動的な勢力の勝利に終わった。参院選は、野党(立憲、共産ら)の無力さ、労働者の階級政党の建設なしには、自民党、反動勢力と闘うことができないことをあらためて明らかにした。

◇野党は物価対策で自民とバラまき競う

 参院選の主な争点の一つとなったのは、激しい物価騰貴による生活破壊の問題であり、これ等への対応であった。物価騰貴はガソリン、石油、電気、ガスを始めパン、麺類など食品、さらには日用品全般に及び、労働者・働く者の生活を直撃している。

 岸田首相は、ロシアのウクライナ侵略による「有事の物価高」だとして、ガソリン価格が一定の水準を越した場合には政府が補助金を支出して値上げを抑制する「トリガー方式」の設定、電気に関しては電力会社が設定する家庭向け節電ポイントサービスに参加すれば、世帯ごとに2千円相当のポイントを支給する「ポイント」制の導入、生活困窮者に対して補助金を支給するなどで「態勢は万全」と述べた。だが、これ等は一時的なその場しのぎの対応策でしかない。

 「有事物価高」論は、政府の責任を逃れる欺瞞である。というのは物価騰貴はウクライナ戦争だけではなくて、政府自民党の「アベノミクス」による「円安」によって加速されてきたからである。

 これに対して、立憲、共産、社民は「アベノミクスの金融緩和を見直すべきではないのか。いつまでもゼロ金利では、円安基調はなくならない」(泉)と述べたものの、重点は一時的な補助金支給策=バラまきを自民と競ったのである。

 立憲、共産、社民など野党が物価騰貴対応策として、強調したのは消費税の引き下げであった(立憲、共産は5%に、社民は3年間ゼロ、れいわは廃止)。

 しかし、1千兆円を超える借金を抱えている国家財政の下で、消費税減税を実施すればますます借金が膨らむばかりである。消費税の税(国+地方)に占める割合は、22年度(予算額)で34・5%と個人所得税30・5%、法人税21・5%と比べてトップである。消費税が貧しい者ほど重い負担がかかる逆進性の強い税金であるとしても、租税の約3分の1を占めている。

 野党の消費税減税策は、岸田の社会保障費の財源であり、社会保障をなりたたなくさせるという反撃で一蹴されてしまった。

 10%の消費税を半額の5%、あるいはそれ以上に減税するというのなら、たんに税金のことだけではなく、生産や労働など社会全体の在り方、大資本が支配している社会全体の変革と関連付けられて提起されるべきである。しかし、立憲、社民ら野党はそんな覚悟もなく、減税で個人消費が増加し景気がよくなるという誤った過少消費論をとなえるばかりであった。

 共産は、消費税5%への減税(12・5兆円)をはじめ年金削減中止、生活保護基準の引上げ、国民健康保険料の負担軽減など諸々の負担軽減策の財源として、法人税の改革として大企業優遇税制の廃止・縮小、所得税制の改革として富裕層の株取引の課税強化、所得税・住民税の最高税率の引き上げ、新税制の創設として富裕税、為替取引税の創設、軍事費・大型開発の見直し等を掲げ、その「現実性」を訴えた。

 しかし、大企業優遇税制の廃止・縮小にせよ軍事費・大型開発の見直しにせよ、資本の支配に反対する労働者の階級的闘いの発展なしには実現不可能なものばかりである。ところが共産は、資本の体制には反対ではない、当面は労働者に「やさしく、強い経済」を目指すという。結局、資本の支配を前提とする共産の主張は「絵にかいた餅」にすぎないものでしかなかった。

◇強まる軍備増強論

 第二の争点は、軍備増強についてであった。

 ロシアのウクライナ侵略、繰り返される北朝鮮のミサイル発射、中国の軍事的・経済的な進出が進むなかで、自民は国民の危機意識を煽りたて、公約の最初に「外交・安全保障」を置き、「毅然とした外交と国防力の強化で、国民の生命と財産を守り抜く」とし、日米安保体制を強化し、日本の軍事力を高めるべきだと訴えた。

 自民は、軍事力の「抜本的な強化」のために、これまでGDP比1%を目安にしてきた軍事費を5年以内に2%に引き上げる、「弾道ミサイル攻撃を含む日本への武力攻撃に対する反撃力を保有する」と公約に明記した。

 これまで「専守防衛」のもとで、「最小限の軍備」(GDP比1%)、外国に対する攻撃的軍事力を持たない、との内外への公約をかなぐり捨て、大軍拡に乗り出すというのである。軍事力の一層の強化は、日本がアジアの軍事大国として、国家の権益、大資本の利益を維持、拡大していこうとする帝国主義の意図の現れである。

 軍備増強を唱えたのは自民党だけではない。維新は米国の核に全面的に依存するのではなく、日本が米国の核兵器を使用できる「核共有」論を唱え、また「専守防衛」としての軍備の「必要最小限」の規定を見直すことを訴えるなど、その反動的本性を暴露した。

 国民は自民に全面的に賛成であり、立民も「軍備ばかり図るのは抑えなくてはならないが、必要な軍備力は整備する」と曖昧な態度をとり、自民の軍事大国化に対して真剣に闘おうとは訴えなかった。

 共産は「今回の参院選は戦争か、平和か、日本の命運がかかった選挙」だとして、自民の外交・安全保障を取り上げ、「軍拡で平和は守れない。日本が軍拡で構えれば、相手も軍拡を加速する。軍事対軍事の悪循環に陥る」と批判、話し合いによる平和外交こそ大切だ、と主張した。だが、日本が軍備増強し、軍事大国の道を歩むのは日本の国家権益と大資本の利益のためであるように、帝国主義を世界から一掃することなしには真の平和を実現することは出来ない。

 志位は自民や国民などから、共産は現在の資本主義の〝変革〟を目指しているとの批判を受け、それは将来のことであり、今は、資本の社会の否定ではなく、「民主的改良」を目指すといって、天皇制や自衛隊の容認を謳っている。

 そして志位は、共産の政策は「現実性」の証として、日本が外国によって「侵略された場合には自衛隊を活用する」と述べた。

 だが、志位の「自衛隊活用」論は、結局は、軍事力を強化して「国民の生命と財産を守る」という自民の主張を同じである。共産の「現実政策」は、帝国主義と軍事同盟を強化し、アジアの軍事大国として中国、北朝鮮、ロシアに対抗しようとする自民らの反動的な政策の露払いの役割を果たしたのである。

◇労働者の階級的闘いの組織化を

 選挙で、自民党は得票率は前回に比べて1ポイント減の34・4%であったが一人区で、28勝4敗と圧勝、議席を8増やし63と単独過半数を獲得した。

 維新は野党第1党、東京、京都に進出という野望は果たせなかったものの、得票数は立憲より約100万票上回る780万票を得て議席を6増やして12と前進した。

 国民は得票率1%減で議席は5。公明は議席は13。改憲4党が議席の3分の2を占めるという軍拡・改憲勢力の勝利となった。

 一方、野党、立憲や共産はいずれも大きく後退した。

 立憲は、得票率は3ポイント減の12・8%で、目標1300万票に対して677万票。新潟選挙区の参院幹事長が自民候補に敗れる等、議席は6も減らして17となった。前回の参院選での敗北を受けて、「反対党では説得力がない」として、泉新体制の下に「政策提言党への転身」を図ったが、資本の支配を前提として自民と政策を競うという日和見主義路線の破綻を暴露した。

 また立憲が共闘の頼みとする国民は、京都選挙区では、立憲の候補に対して維新候補を応援したことに象徴されるように、維新や自民よりの姿勢をますます鮮明にしている。

 また、共産との共闘に否定的であった連合も前回の参院選以降、芳野会長が自民の呼びかけに応じてその会合に参加するなど、自民との関係を深めている。

 一方、共産は得票数650万票、得票率10%以上を掲げて闘ったが、結果は前回よりもさらに得票を減らし、362万票、6・8%と目標に遠く及ばす、獲得議員数は前回より2人少ない3人と敗北した。

 共産の敗北は、日和見主義的な「現実政策」の破綻の結果である。彼らの物価対応策は非現実的な画餅として信頼されず、また自衛隊活用論は小ブルジョアにとっては自民の政策の方が現実的に思われたし、一方自覚した労働者にとっては信用できない政策であった。

 ところが志位は「現実路線」の破綻を棚上げして、党勢拡大、機関紙拡大が目標に達しなかった、「自力をつける取り組み」をしっかりやることが今回選挙の「最大の教訓」だと、敗因を党員に帰すような総括をし、ますます退廃を深めている。

 ウクライナ戦争をめぐってロシアと欧米帝国主義との対立、中国と米国との世界覇権をめぐっての確執の激化の中で、天皇中心の国家、自分の国は自分で守る、外国からの移民の禁止など国家主義・排外主義を掲げ、2年前に結成され、国政選挙初挑戦の参政党が、社民を上回る得票率3・3%、176万票、1議席を獲得したことに見られるように、反動的な風潮が強まっている。

 参院選でも改憲勢力が3分の2超となった結果を受けて、岸田は「国会で憲法論議を深めて発議できる案をまとめる努力を集中したい」と発言、改憲、軍備拡大の攻勢が強まろうとしている。

 参院選は、立憲、共産ら野党の無力さ、自民、反動勢力と闘えないことを明らかにした。多くの労働者・働く者が自らの政党(労働者党)に結集し、闘いを切り開いていくよう訴える。 (T)

   

           

【飛耳長目】

★一票を託すに値する候補者や政党がない!大方の労働者が感じた参議院選であった。円安や物価高騰で賃金や年金が目減りし、生活苦がじわじわと押し寄せるのに、岸田は「何らかの対策を講ずる」と言いつつ具体的な施策は打ち出せず、野党は「消費税の減税」の一点張りで双方かみ合わず、結局労働者の賃上げや生活救済は置いてきぼりになった★自民は大勝したが、比例得票率では前回を下回り、野党では維新が立憲を追い抜いた。「支持政党なし」層が、維新やれいわ、参政党へ流れ込んだ。参政党は綱領で「天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる」「日本の 精神と伝統を活かし」と謳う、時代錯誤のずぶずぶの保守反動の輩達である。労働者党が参戦していないことが誠に残念である★「世界(家庭)平和」を掲げて人の弱みにつけ込み、人をたぶらかしては金をむしり取る宗教法人も悪党だが、安倍元首相が亡くなって、「その思いを受け継ぐ」(岸田)という大合唱が起きて、改憲や防衛費増大、軍拡への風潮が益々強まることは必至である。安倍という重しが取れて、実はほっとしている岸田だが、最大派閥安倍派をはじめ右派反動勢力を抑える力は無い。流動し始めた政治状況を注視し、警笛を鳴らせ! (義)


【2面トップ】

「安倍政治」を総括する

政治と経済・財政を国家主義で妄動

 岸田政権は元派遣労働者に殺害された安倍の国葬を行うことを決めた。我々は安倍の国葬には断固反対する。安倍は天皇制国家主義者であり、軍事体制強化を図り、これに反対する労働者の闘いを圧殺しようと策動してきた反動政治家であった。本稿では、安倍政権の8年間を振り返り「安倍政治」を総括しておくことにする。

◇戦前の天皇制軍国主義を擁護

 安倍は国家主義者であり、若い時から天皇を国家の中心に置いた専制的国家体制を理想としていた。

安倍が強調した「戦後レジュームからの脱却」とは、現在の憲法は米国から押付けられたものだ、同時に戦前の天皇制を否定するのは間違いだ、天皇の軍隊によるアジア侵略はアジアの解放のためであった、米国との戦争は強いられた止むを得ないものであり、日本だけが悪者にされるのは受け入れられない、こうした「自虐史観」から脱却しなければならないといったものである。 

 この安倍の本性を暴露したのが「慰安婦」問題であった。

 93年、政府は河野洋平官房長官による「河野談話」を発表した。この談話は韓国などから慰安婦問題の政府見解を迫られ、政府の責任で一定の決着をつけるものであった。 ところが安倍は日本軍部がアジアの女性を直接に「人狩り」などしていないと強弁し出したのである。

しかし「河野談話」は、安倍の言うような人狩り・強制連行という言葉を敢えて控えていた。少し再録する。

「今回の調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設置されたものであり、慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接にこれに加担したこともあったことが明らかになった。また慰安所における生活は、強制的な状況の下で痛ましいものであった」。

 安倍の理屈は、軍隊が直接に人狩りなどをやっていない、現地の業者が金目当てにやったと言うものだが、安倍の思い込みや独断でしかなかった。

 「河野談話」は政治的配慮で控え目に表現されたが、多くの資料と証言に基づく歴史的事実であった。しかし、何の反省もしない安倍は、続いて01年には、NHKの慰安婦問題を扱った番組を改変させる事件を起こしたのである。

 「戦後レジュームからの脱却」を策動する安倍は、天皇の軍隊が直接間接の関与によって慰安婦問題に関わった事実を認めたくないだけなのだ。こんな男が首相になったのだから、本来なら世界から笑いものになったはずだ。

 実際、当時の世界では、そんな安倍は冷笑されたのである。安倍が政権に就いた翌年(07年)の2月には、米国下院公聴会で韓国女性の3人が証言し――その1人は昭和19年、16歳の時に、友人に誘われて家出し、国民服の日本人について行った。台湾に到着し、その男が慰安所の所有者だったと知った。男は彼女を電気ショックで拷問し電話器で殴るなどの暴力で売春を強要した等々――、6月には下院外交委員会で、性奴隷としての慰安婦を事実であると認め、安倍内閣の歴史歪曲とウソを非難する「慰安婦決議案」が大差で採択された(39対2)。

 だが、安倍が死ぬや、欧米の頭目たちは安倍賛美に勤しみ、立派な人間だったかに褒め称えるのであるから呆れる。

◇教育を国家統制し愛国教育を強要

 安倍が最初に権力を握ったのは07年9月であり、たった1年で政権を投げ出したが、労働者階級にとって不倶載天の敵として登場した。

 安倍は「戦後体制の総決算」を叫び、「歴史の見直し」や「靖国参拝」を掲げて総裁選挙に臨み、総裁になるや、お仲間の極反動共を大挙して政権に迎い入れた。「日本の前途と歴史を考える若手議員の会」のメンバーだった塩崎、菅(義偉)、長瀬、松岡、佐田を閣僚に取り込み、また官邸の補佐官には、下村、鈴木、根本、山谷(えり子)を入れた程である。

 これらの多くは「教育基本法改正促進委員会」にも所属し、05年の総選挙では、「日本会議」の支援を受けた連中であった。

 だが、安倍政権は反動攻勢という直球を投げるのではなく、まず教育改革から手を付けた。つまり、「戦後体制の総決算」は米国との相対化を意味し米国の反発を呼び、また靖国参拝は中国や韓国から猛反発が予想され、もっぱら教育に対する攻撃に集中していった。

 靖国公式参拝、皇室典範改定、自主憲法制定などは長い目で見ればいい、政権が固まってから手を付ければいいと判断をした(自主憲法と核武装を叫ぶ中川昭一らから突き上げられたが)。

 安倍の教育改革は、教育労働者との闘いを激化させた。06年11月には、教育基本法改定案が衆議院委員会を通過し、翌12月に国会を通過した。

 安倍政権による教育基本法改定の目的は、「世界の平和」や「真理の希求」という普遍的な文言を否定し、神代からの伝統を持つ日本国家に対する敬いを植え付けることにあった。さらに、改定基本法をテコにして学校の行事はもちろん、スポーツ大会や地域の行事においても、日の丸掲揚・君が代斉唱を常態化することで、労働者や児童に愛国精神を身体で覚えさせ、発酵・醸成させることにあった。

 教育基本法を改定した安倍は、その後「教育三法」の改定(学校教育法改定、教育における国と教育委員会の責任を明確にする法改定、教職員免許更新制導入及び人事管理厳格化を図る法の改定)に道を開いた。

 この安倍の教育改革は、愛国心教育に熱心な施設に便宜を図る形でも現れ、第二次安倍政権が成立するや、森友学園や加計学園に対して、事実上の公有地譲渡や補助金支給が実行された。森友では教育勅語を園児に暗唱させ、愛国道徳や天皇賛美を植え付けていたのである。

 このような教育改革が行われた背景には、教育荒廃もさることながら、日本資本主義の行き詰まりの中で「ワーキングプア」が大量に出現し、彼らの不満をなだめ、真実から目を逸らせる必要があった。同時に、「資本輸出」を急増させ始めた日本は中国や韓国とアジアの覇権を廻る争いに突入し、軍拡を進めるためにも愛国心教育が必要になっていたのだ。

◇「アベノミクス」の破綻と軍拡推進

 第一次安倍政権は07年の参院選で、労働者の反撃を受け、また「消えた年金」で混乱して大敗し、安倍は政権を投げ出した。安倍政権が復活したのは12年暮れであった。労働者を裏切り、信頼を失った民主党政権が瓦解したお陰であった。

 改憲や軍拡などの実行を反動共から期待されて、安倍は再登場したのである。実際、安倍は「アベノミクス」で不況を脱したかに見せかけ、第一次政権の時に実現できなかった「武器輸出解禁」(14年閣議決定)や集団的自衛権行使を認める「安保法」(15年成立)や改憲などを進め、ひいては強大な軍事国家を作ろうと目論み、実行して行った。

 だが、「アベノミクス」は大失敗に終わった。

 「アベノミクス」は黒田・日銀と結託して進められた。異次元の量的緩和策によるカネのバラまきを行えば、人々の心の中に「インフレ期待」が高まり、よって持続的な先行投資が進み、「年2%の物価上昇」というインフレが起こり、経済成長に繋がるはずだというシナリオを描いていた。

 だが、それはケインズ経済学特有の浅はかで観念的なしろものであり、むしろ矛盾を深める結果になった。

 要するに、「アベノミクス」は物価上昇も経済成長も成し得ず、ただ政府の借金によるバラまき策を助ける手段に堕したのだ。

 社会の成員の欲求と社会的必要性から、消費手段と生産手段(及び社会的インフラ)を合理的に再生産するのではなく、利潤獲得を推進動機とする資本主義的生産は、必ず資本の過剰を生み出す。

 この資本主義の行き詰まりを救済しようとして「アベノミクス」は登場した。しかし、カネのバラまき策は条件が揃えば、たちまちインフレに火が付くし、また政府の国債を日銀が買い続けるなら、借金証書を担保に発行する日銀券は国家紙幣に転化していく。即ち、国家信用・日銀信用が崩壊する方向に確実に進む。

 もう総括しよう。「安倍政治」とは、行き詰まり、帝国主義化する日本資本主義を支えるための、国家主義による政治、経済、財政に対する妄動であった。資本の社会は破綻に向かって進む。自ら学び、鍛え、団結して労働の解放をめざして進もうではないか! 労働者党に参加し共に闘おう。 (W)


【二面サブ】

大統領国外逃亡のスリランカ

ブルジョア政治の底知れぬ腐敗

 経済危機にあるスリランカでは、物価高騰や生活必需品の不足などで、政府への批判が高まり、ゴータバヤ・ラ―ジャパクサ大統領は国外に脱出して辞任表明、「経済危機極まったスリランカ」(7・15日経社説)とか「一族支配の果ての混乱」(7・15朝日社説)などとマスコミは論じた。

 スリランカは北海道の8割ほどの島国(「インド洋の真珠」と言われる)で、1948年に英国から独立した現在、多民族・多宗教の2200万人が暮らしている。経済危機をもたらしたのは、主要産業の観光がコロナ禍で大打撃を受けたことやウクライナ戦争による資源や食料価格の高騰という要因もあるが、農業政策での失政や無謀な借金による投資拡大で長年続く赤字体質の国家財政、貿易収支赤字といった経済体制にあった。

 農業での失政とは、有機農法の強引な導入のことで、21年4月から化学肥料を禁止し、収穫量が激減し、農業崩壊をもたらした。「環境に優しい農法」つまり、窒素酸化物による公害や温室効果を削減する取り組みの一環として導入されたのだが、米の生産量が19年に比べて43%も減少する結果になり、化学肥料禁止令は11月に撤回された。

 「国連人道問題調整事務所による6月9日付の報告書では、21~20年シーズンの作物生産量は前年度から40%から50%も減少した」(7・17 JBpress 「化学肥料禁止で農業生産が激減した『グリーン優等生』の結末」杉山大志)。

 ラージャパクサは、国際機関のグリーン・エリートが喜ぶようなESGスコアを高くすることで(98・1とほぼ満点であり、スウェーデンで96・1、米国は58・7)、ESGに熱心な国として売り込み、信用を高めて有利な経済条件を得ようとしたのであろうが、農業の現実的な条件を配慮せず、ブルジョア政治家たちの熱狂的な有機農業運動に支えられて、大きな損害をもたらした。

 ラージャパクサ一族は、兄のマヒンダが05~15年と大統領を務め、弟のゴータバヤが19年に大統領に就任すると首相になった。政権の主要ポストも親族で占め、「縁故主義」の政治を行った。マヒンダは25年以上も続いた悲惨な内戦を制圧した〝英雄〟として、権力を誇示しつつ海外からの借り入れ、とりわけ中国マネーを使い、人気とりで道路や鉄道、港湾などのインフラ整備を加速したが、それは国家債務を積み上げた。

 ゴータバヤの三男は財務大臣、長男は内務大臣、マヒンダの息子は青年・スポーツ大臣、ラージャパクシャ一族は、7つの大臣ポストを含む9つの重要なポストを占め、スリランカ国家総予算の75%を支配していた。

 スリランカは英国からの独立後も、紅茶などのプランテーション経済を継続。工業は繊維工業など軽工業が中心で、公共投資やインフラ整備によって海外から資本を誘致したが、それは一族の地盤である南部中心であった。

 内戦の原因であったシンハラ人とタミル人との対立は、地域的に南部・東部と北部との対立であったが、内戦こそ終息したとはいえ、「民族問題」は解消されず、毎回の大統領選での争点になっている。

 今回の経済危機に関して「債務の罠」ということが言われている。中国は「一帯一路」を進めていく中で、インフラ投資を通じて途上国を政治的影響力下に置くと指摘されている。実際、中国の支援の下で進められた南部のハンバントタ港建設の債務が返済できなくなり、中国国営企業が救済という形で港湾を99年間借り受ける契約で、実質的に中国が所有する港湾となった。

 マヒンダが大統領だった間の新規インフラプロジェクトの70%に中国が関与し、中国マネーから、少なくとも140億ドルの供与を受け、現時点で中国に対して100億ドル以上の借りがある。 (岩)


ページTOP