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●1432号 2022年8月14日 【一面トップ】 安倍元首相の「国葬」に断固反対する――強権・反動の安倍政治礼賛を許さない 【1面サブ】 岸田の欺瞞的な「核兵器のない世界」 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 「新しい資本主義」の弁護論――吉川洋による低成長日本の処方箋 【二面サブ】 『プロメテウス』61号発行される――激化する帝国主義的対立を特集 <1431号校正> ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】 安倍元首相の「国葬」に断固反対する強権・反動の安倍政治礼賛を許さない岸田政権は、参院選挙応援演説中に銃撃され死亡した安倍元首相の「国葬」を9月27日に行うことを閣議決定した。しかし、安倍の約9年間の政治は国会の議席多数を頼みにし、労働者・働く者の声を無視した強権・反動の政治であり、断固、「国葬」に反対する。 ◇なぜ国葬なのか戦前には、天皇らの他にも「国家に功績のあった」者に対して、「特旨」(天皇の思し召し)による「国葬」があり、国民に服喪が義務付けられた。そして太平洋戦争中には米軍機に撃墜され死亡した山本五十六連合艦隊司令官が国葬されるなど、国民の戦意高揚に利用された。 しかし、戦後の〝民主化〟によって、1947年国葬令は廃止された。 「国葬」の法律がないにもかかわらず、国費(国民の税金)を投じて、安倍元首相の「国葬」を行うのはなぜか。 岸田首相は安倍元首相が選挙応援演説中に銃撃され死亡したことを挙げて、〝言論の自由〟を損なう行為であり、「民主主義を断固守り抜く」ためだという。 だが、安倍元首相が銃撃・殺害されたのは、母親から多額の財産・カネをむしり取り、家族も生活も破壊したカルト宗教団体・旧統一教会(現「世界平和統一家庭連合」)への恨みであり、安倍が統一教会と密接な関係にあったためであって、〝言論の自由〟の問題とは直接関係はないのである。 安倍の殺害が明らかにしたのは、安倍を先頭とする自民党と「反共産主義」を掲げる統一教会との癒着である。自民党は霊感商法など反社会的行為を続けている統一教会の名称変更を認めるなど統一教会をかばいだてする一方、選挙では統一教会からビラ配布、街頭演説の聴衆の動員、電話での働きかけ、票の提供等支援を受けてきたのである。 ◇日本軍国主義の犯罪を否定し、軍拡を推し進めた安倍安倍は反共産主義のカルト集団と癒着し、その犯罪を野放しにしたばかりではなく、歴史修正主義を唱え、戦前の日本帝国主義の戦争を弁護、正当化した。 日本のファシスト軍国主義者は、米国との戦争で労働者、農民、前途のある若者たちを兵士として戦場に駆り出し何百万の生命を犠牲にし、国内全土を灰塵にする一方、国外においては中国、朝鮮をはじめとするアジアへの侵略で、何千万もの生命を奪い、生活を破壊した。だが安倍は、日本の帝国主義戦争を欧米の圧迫にたいする日本の国家防衛のためであるかに言ってその犯罪を正当化したのである。 また安倍は、従軍慰安婦や朝鮮人の奴隷労働を自由意思に基づくものであるかに偽り否定し、従軍慰安婦問題を取り扱ったNHKの番組放送を事実に反するとして中止させた。 さらに国会での議員の多数を頼りに安保法制を強行成立させ、憲法が禁止する外国との集団的自衛、自衛隊の海外派兵を可能にした。まさに安保関連法は、〝平和憲法〟の下での戦後日本の自衛隊の行動を一変させ、日本の軍事大国化の道を切り拓く反動的な政策であった。 ◇国家財産の私物化と嘘で塗り固めた安倍政治「桜を見る会」、森・加計事件は、安倍の政治の私物化を象徴している。安倍は、首相という権力の座を利用して、自分の後援会のために国費を使ったり、〝お友達〟に国有財産を格安で売り渡す便宜を図ったのである。そして、その事実が発覚すると、現場の官僚が勝手にやったことと責任を他人になすりつけ、自分の関与を否定するなど嘘をつきとおし、現在なおこの事件の決着は未解決のままになっている。 国民を欺く嘘つき政治は、安倍政治を象徴することであって、労働統計や交渉記録など公文書の改竄、福島原発事故による放射性物質の漏れがあるにもかかわらず、東京オリンピック誘致のため、福島原発は完全にコントロールされているとの嘘つき発言など、とどまるところを知らない。 ◇「アベノミクス」で貧富の格差は拡大安倍政治の最大の「功績」として持ち上げられているのは「異次元の金融緩和」策を柱とする「アベノミクス」である。 しかし、2012年から21年の間のGDPでは、ドル表示で6・7兆ドルから5・1兆ドルと21・6%縮小、世界経済で8・3%占めていた日本経済は4・7%に低下した。国内の設備投資は進まず、大企業の利益剰余金は383・5兆円から466・8兆円と1・2倍に増える一方、実質賃金(3・9万ドル)は、OECDの平均賃金(4・9万ドル)からさらに引き離された。 大企業や金持ち階級を潤しただけで、政府債務も1132兆円から1422兆円と1・2倍に増え(20年)、経済は依然停滞したままで、労働大衆の生活は一向に改善されなかったのである。 ◇改憲・軍拡めざす岸田労働者・働く者にとって安倍政治は災厄でしかなく、世論調査によっても安倍の「国葬」について賛成45・1%に対して反対は53・3%(7月末の共同通信の調査)と過半数に達している。 しかし、岸田は日本軍国主義を正当化し、軍拡・反動を進めた安倍を政治に「功績があった」として「国葬」を強行しようとしている。 全国の公立小・中学校では、半旗を掲揚し安倍への弔意を示すよう指導が広がっている。歴史を歪め、軍国主義を正当化したり、嘘を並べ立て国民を愚弄し続けた安倍を国政に功績のあった「立派な政治家」であるかのように美化することは、次代を担う子供たちへの教育を歪め、日本の将来を危うくすることである。 岸田は、安倍「国葬」を強行し、改憲、軍拡を推し進めようとしている。労働者・働く者は、「国葬」に反対し、闘いを前進させていかなくてはならない。 (T) 【1面サブ】 岸田の欺瞞的な「核兵器のない世界」岸田首相は、8月1日に核不拡散条約(NPT)再検討会議に参加し、「核兵器のない世界」に向け、現実的に歩みを進めていかなければならないと演説した。その「理想」を実現するためにNPT体制を守り抜くというが、アメリカの「核兵器」の傘を頼りとして、岸田はどのように「核兵器のない世界」を実現しうるであろうか。 ◇NPT体制による岸田の欺瞞岸田は「核兵器のない世界」へのロードマップの第一歩として「ヒロシマ・アクション・プラン」に取り組むとした。そこに述べられたことは、「核兵器不使用の継続」、「核兵器国の核戦力の透明性」、「核兵器数の減少傾向の維持」などであり、岸田が「守り抜く」とするNPT体制によったものである。 1970年に発効したNPTは、「核兵器国」と定めた米、ロ、英、仏、中の核保有を認め、「核兵器国」以外への核兵器の拡散の防止を目的とする国際条約である。 NPTは、「核軍縮を誠実に交渉する義務」(第6条)を定めているが、「核兵器国」の核保有を認めるもので、NPTは核廃絶をそもそも課題としていない。「核兵器のない世界」といって核廃絶を匂わし、聞く人をその甘い夢想の世界に赴かせるが、岸田は具体的な行動アクションでは核の「不使用」、「透明性」、「減少」というだけで核廃絶には進まずに、それは核廃絶の幻想を掻き立てるだけに終わっている。 今回の演説でも、2017年に国連本部で採択された核兵器を全面的に廃絶するとした核兵器禁止条約への言及はなく、初めてだという首相としての岸田のNPT出席に、核廃絶の進捗を夢見る被爆者らを落胆させた。 被爆地・広島出身の首相を謳い文句に「核兵器のない世界」に進めていくというが、岸田は日本が被害者であったように装い、アメリカによる原爆投下がアメリカなどとのアジア支配をめぐる帝国主義戦争の結果であることを不問にする。 岸田は今年1月の施政方針演説では、「新時代リアリズム外交」を展開していくとし、「外交・安全保障の基軸である日米同盟の抑止力・対処力を一層強化する」とした。岸田は、アメリカの「核の傘」の下で日本の安全保障が守られている、アメリカの核兵器は日本の安全保障に必要だとする。 それゆえ、岸田は核の保有を禁じる核兵器禁止条約締結に背を向ける。核兵器保有国の核保有を認めるNPT体制では、核兵器の廃絶が事実上不可能なのである。岸田の「核兵器のない世界」の希求は、自らの政策と矛盾する口先だけのもので、欺瞞的に岸田は平和主義を装っている。 ◇岸田が進める軍備増強の帝国主義化との闘い1月の施政方針演説では「敵基地攻撃能力を含めあらゆる選択肢を排除しない」「防衛力を抜本的に強化する」と軍備拡張を宣言し、「憲法改定」を掲げた。 今年7月の参院選の自民公約では、軍事力の「抜本的な強化」のために、これまでGDP比1%を目安にしてきた軍事費を5年以内に2%に引き上げ、「弾道ミサイル攻撃を含む日本への武力攻撃に対する反撃能力を保有する」と明記した。 軍事力の一層の強化は、日本がアジアの軍事大国として、国家の権益、大資本の利益を維持、拡大していこうとする帝国主義の意図の現れである。岸田は、アメリカとの同盟関係を強固にしつつ軍備を増強し、中国・ロシアと抗争する日本の帝国主義化の志向を示した。 資本の支配が存在するかぎり、国家の暴力装置、武装は避けられない。その国家はできるだけ効率的で、強力な武器で自らを武装しようとするであろう。そこに核兵器を保有する理由がある。 労働者は、資本による搾取の廃絶をめざし、資本との闘いを強めその闘いの中に、核兵器のみならず一切の武器を必要としないような、労働者を主体とする社会の実現を求める。 (佐) 【飛耳長目】 ★官民を問わない不正蔓延は、日本の資本主義の退廃を象徴している。取り分け製造業トップのトヨタ自動車の傘下に01年に入った日野自動車のエンジン試験不正は、特筆に値する★「徹底したムダの排除」を掲げた「トヨタ方式」は、労使一体となったカイゼン活動や、部品在庫を極限まで減らすカンバン方式で有名だ。日野自動車も系列会社として「徹底したムダの排除」を強く求められたことは疑いない★不正を調査した特別調査委員会の報告書は、新たな不正を暴くだけでなく、性能試験を担う部署という「局所的な問題ではなく、企業体質・風土が真因だ」と断じた。企業体質・風土とは、まさしく「トヨタ方式」のことではないか!★不正はトヨタ傘下後の03年に始まっている。トヨタ本社に約束した「ムダ排除」や開発スケジュールは「必達」であり、トヨタから送り込まれた社長以下の役員のパワハラは苛烈で、責任者を「お立ち台」に立たせて追及したという★「トヨタ方式」には、問題の内容を全員が共有するという「問題の見える化」もあるが、切羽詰まった現場責任者は、隠れて不正で切り抜けるしかなかった★「トヨタ方式」を強要するトヨタ資本は、「生きた労働を吸収することによってのみ吸血鬼のように活気づく」資本のラスボスである。 (Y) 【2面トップ】 「新しい資本主義」の弁護論吉川洋による低成長日本の処方箋岸田の「新しい資本主義」の具体化がようやく始まり、7月27日には「脱炭素社会の実現をめざすGX実行会議」の初会合が開かれた。これは、「新しい資本主義」の閣議決定(6月7日)を受けた後の新たな動きであるが、『海つばめ』(第1428号)で閣議決定の内容と意味を明らかにしているので、ここでは、岸田の応援を買って出ているマクロ経済学者、吉川洋・東大名誉教授の岸田弁護論(『朝日』22・8・3)を批判的に検討する。 ◇吉川教授の言い分吉川名誉教授(以下敬称略)は「新しい資本主義」を成功させるためには、まず資本主義経済の「弱み」を知らなければならないとして、次の様に語る。 資本主義が約200年前に誕生して以来、避けがたい「弱み」を持ち続けてきた。資本主義は企業などの担い手同士の自由競争を前提にすることから、勝ち組集団と負け組集団を生み出す。従って、資本主義では格差の発生が必然であるから、格差を是正する方策(税制や社会保障など)を模索し、負け組を救済することで「弱み」を克服してきた。 しかし、資本主義の現実は格差が広がるばかりであり、格差の是正には元手が必要だが、バブル経済崩壊以降の低成長が続いた結果、格差を是正する元手が足りなくなったと。 さらに、吉川は日本の一人当たりのGDPは、2000年には世界2位であったが、今や(21年)28位に落ち込んだ。欧米を始め、韓国にも追い抜かれた日本経済の現状認識抜きに問題を解決できないと述べ、日本が行き詰った「固有の原因」は「成長するためにやるべきことをやらなかった」からだと結論する。 だから、日本が今「やるべきこと」は、脱炭素という今後の中核産業のみならず、シルバーの分野などで、世界標準となる製品や規格を創造(イノベーション)することだ、これが「成長力の鍵」であり、「格差解消の前提」だと宣う。イノベーションを実現するためには、それを支える人材教育の拡充が必要であり、その担い手は財政を含めた公共部門の力だそうだ。 「新しい資本主義」を実現するために、吉川が一番言いたいことを簡単にまとめると、資本主義の「弱み」は格差を必然とすることであるが、格差の是正は経済成長が前提だ、経済成長のためにはイノベーションを起すことが肝要であり、そのための政府による人材投資が必要だといったものである。 吉川はケインズの有効需要創出が政府の財政出動や低金利政策と一体であったこと、だが、これが有効に機能してこなかったことを暗に認めている。ケインズが一言も発しなかったイノベーション(シュンペーターがかつて言った言葉)を「いまやるべき」こととして強調しているからだが、どうやら吉川はケインズ経済を不十分だと感じているようだ。 ◇低成長はイノベーション不足かしかし、90年代以降の日本経済の低成長は、政府が手をこまねいて、イノベーションを主導してこなかったからだと総括するのは片手落ちであろう。 なぜなら、90年のバブル崩壊やその後の金融危機(いずれも恐慌の現れ)は、80年代後半に進んだ急速な拡大再生産と共に、資本のための生産(利潤拡大のための無政府的生産)が行われ、資本の過剰が形成された結果だからだ。 吉川が問題にする、その後の深刻な長引く不況においても、資本の過剰を整理・解消して新たな拡大再生産の循環を生み出すことができず、さらにまた、国際的な価格競争力を失った半導体やパソコンなどの部門が海外や国内から相次いで撤退していったのだ。 こうした国内状況に「見切りをつけた」資本は次第に、海外(アジアを中心に)へ「資本輸出」を急増させて行ったが、それは日本資本主義に内在する矛盾の解決の一つであった。 吉川は資本主義を運動法則として理解せず、従って、恐慌やその後の不況を資本主義経済そのものに関わる深刻な問題として捉えず、資本主義の現象の分析、技術的分析で済ませようとしている。要するに、イノベーションが不足したという技術的な問題に解消しているように見える。 もちろん、脱炭素は必至であり、そのための社会インフラを含む技術革新は不可欠である。だが、吉川は「国際競争に負けるな」とハッパをかけ、政府の尻を突っつくのであるが、こうした資本間(国際間)の熾烈な競争は、資本の過剰はもちろん、国家の借金を一層積み上げることに帰着する。さらに、EV電池製造に必要なリチウムや水素製造に必要な天然ガスなどの資源獲得競争、囲い込み競争は帝国主義的争いを招く。 資本主義が続く限り、市場争奪競争のみならず、貿易戦争やイノベーション開発競争もまた資本間(国家間)の新たな覇権争いに転化するし、帝国主義的対立を激化させるのが常なのだ。 しかし吉川はブルジョアの片棒を担ぐ仕事で大枚を手に入れているのであり、帝国主義的対立の激化によって労働者が被る犠牲については、見ぬふりをするしかない。 ◇ケインズ経済は堕落の一途ケインズは「有効需要の管理」(国家の財政出動による需要喚起)や十分な貨幣供給や投資を行う必要性を説いた「貨幣論」を発表し、世界の資本と政府に大きな影響を与えて来た。 「アベノミクス」を引っ提げて登場した黒田と安倍のゼロ金利政策や財政膨張政策はケインズ経済学そのものであった。 しかし、「アベノミクス」の惨憺たる結果を見れば明らかなように、ケインズの処方箋は有効性を発揮せず、むしろ、日本の財政を破綻寸前に追い込んでいる。吉川は日本の特殊事情であるかに匂わせて、ケインズ経済学を弁護しているが、言い逃れはできない。 しかも、れいわ新選組や共産党や市民運動家(新左翼も含む)を引きつけ、自民党でも主流を形成しているMMT(ケインズ経済学の亜流)は、国内市場をあたかも単純商品生産社会であるかに捉え、政府の借金による財政支出によってのみ、資本の利潤や労働者の所得が形成されると主張する。 つまり、「政府の赤字(負債)=民間の黒字(資産)」が成立すると言い、資本主義経済の把握を「資産会計」に解消するのである。MMTには、資本主義経済を資本による剰余価値の増殖運動として捉え、科学的分析を行う姿勢は皆無である。まるで、〝カルト〟のような屁理屈が流行しているが、政府によるイノベーション投資・人的投資を掲げるMMTに、吉川は賛成するのか? ◇「新しい資本主義」の行方吉川は現在の円安と物価上昇に警戒感を示しており、物価上昇率が年2%を超えたのだから、超低金利政策を続けるのは理解できないと嘆く。吉川は早く超低金利政策から脱し、国債残高を減らす方向に持っていく必要があるとも説く。GDPの2倍もの国債残高を抱えるのは危険であり、いくら残高が増えても「大丈夫、という虚構の世界を脱し、現実を直視」せよと、吉川は強調する。 しかし、吉川のこの主張はケインズ経済の不十分さどころか、破綻を白状しているのと同意である。危険水域に達した国債残高や日銀勘定を見て、今更ながら、シュンペーターに学んで、技術革新を説くのは滑稽である。 さらに「全世代型社会保障」を提言して年金支給削減による財源確保の動きもあるが、こうした「新しい資本主義」は資本主義の新たな処方箋とは成りえず、いずれ、労働者階級に敵対的な側面を見せるのがオチであろう。 (W) 【二面サブ】 『プロメテウス』61号発行される激化する帝国主義的対立を特集◇3つの特集論文労働者党の理論誌、『プロメテウス』61号が発行される。特集テーマは「激化する帝国主義的対立」である。 ロシアのウクライナ侵攻は、現代世界が帝国主義の支配する時代、帝国主義諸国が勢力圏や世界覇権を目指して抗争し激突する時代であるという真実を明らかにした。この現実を踏まえなければ、どんな立派な改革案も平和構想も画餅に帰すのであり、時宜を得た企画であろう。 特集を構成するのは、米中の対立に焦点を当てた田口論文、〝プーチンの戦争〟に帰着したロシアの体制を分析した鈴木論文、資本輸出を急増させ帝国主義に転化した日本資本主義を解明した渡辺論文の3つである。 田口論文は、激化する米中対立の根底が、急速な経済発展を遂げ、今や米国に迫る国家資本主義の大国に成長した中国と衰退しつつある米国との世界覇権をめぐる帝国主義的抗争であることを具体的に明らかにしている。 激化する米中対立は、ペロシ下院院内総務の台湾訪問に見られるように、日本を含め世界中を巻き込んで世界戦争へと発展する可能性さえ否定できないのであり、労働者はすべての帝国主義に反対し国際主義の立場を堅持して闘わなければならないと筆者は説いている。 鈴木論文は、ゴルバチョフ、エリツィン時代から説き起こし、2000年に登場したプーチン政権の本質、政治経済体制の解明に取り組んでいる。 筆者はさしあたって「シロビキ〔治安機関・軍関係者〕支配の資源依存型国家資本主義」と規定し、次号では、さらにそのメカニズムと矛盾、プーチンの歴史観と対外政策、ロシアの反政府運動などを論じると予告している。ロシアの社会経済体制の全面的分析は重要な課題であり、完結が待たれるところである。 渡辺論文は、日本資本主義の急増する資本輸出を克明に分析し、日本が今やアジアを中心に世界中の何百万人もの労働者を搾取する帝国主義国家に転化していることを立証している。 さらに、日本資本主義を「金融資本主義」とみなす金子勝氏の見解や、「利潤原理を相対化」した「ポスト資本主義」論を説く共産党系の学者、小西一雄氏の主張を徹底的に批判し、「帝国主義化を政治の面で推進する」岸田政権との闘いを呼びかけている。 ◇ミャンマー、リニア新幹線問題など特集の他に、本誌には二つの論文が掲載されている。一つは、ミャンマー論である。執筆者の佐々木氏は、ミャンマーの歴史を踏まえ、スーチー政権の転覆と国軍支配下の現実、中国やロシア、日本の果たしている役割を暴露し、現地の労働者人民の闘いの性格と展望を論じている。 もう一つは、是永氏の執筆したリニア新幹線建設の問題点を解明した論文である。今は二人とも故人となった安倍、葛西の利害と思惑から生まれたこの巨大プロジェクトが如何に許しがたい暴挙であるかを是永氏は淡々と客観的に証明している。 最後に、故林紘義氏の「樺さんを偲んで」という追悼文を紹介したい。これは『友へ 樺美智子の手紙』(三一書房、1969年刊行)に掲載されたものであり、三一書房の了解を得て再録された。60年安保闘争の〝シュトルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)〟の中で新しい労働者党を作る活動の必要を自覚していた二人の若い魂のふれあい、共感、哀惜が胸を打つ。 林氏は、獄中で樺さんの死を知って号泣し、「人類の資本のくさりからの解放という事業のために」「一生闘う」と決意し、実際に生涯をかけて闘い抜いたのである。若い人々に是非とも読んでいただきたい。 (S) <1431号校正> 1面参院選結果の記事 ①7段 4パラ 4行 79万票→ 677万票 ②8段 3パラ 13行 177票→176万票 |
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