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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
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   そして「愛国教育」で
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  または各支部・会員まで。
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1435号 2022年9月25日
【一面トップ】 労働者は「国葬」に断固反対
         ――統一教会との癒着を隠蔽
【1面サブ】 贈収賄まみれが発覚
         ――安倍五輪疑獄事件
【コラム】 飛耳長目
【二面トップ】 円安加速に動揺する政府
         ――政府は為替介入を匂わせるが
【二面サブ】 収容者死亡 国に賠償命令
         ――入管の横暴な管理に判決

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

統一教会との癒着を隠蔽

労働者は「国葬」に断固反対

  9月8日安倍元首相の「国葬」をめぐる閉会中審査が衆参両院の議員運営委員会で行われ、その終了後、自民党茂木幹事長は、党所属国会議員の統一教会や関連団体との関係についての点検結果を発表した。閉会中審査と点検結果の発表は、自民党と統一教会の癒着した底知れぬ深い関係と、その関係を隠蔽しようとする岸田政権の醜い腐敗した姿をさらした。

◇点検結果で統一教会との癒着を隠蔽

 7月8日の安倍殺害事件以降、自民党と統一教会との関係が次々に明らかにされる中で、自民は、「党として組織的関係がないことは確認している」としてきた。

 しかし岸信介をはじめとして、歴代総裁・首相を含め自民党が統一教会との密接な関係を持ち、党首・首相だった安倍が統一教会友好団体にビデオメッセージで出演し、選挙で教会員票を自派の候補者に割り振ったのであるから、単に議員個人ではなく自民党との癒着関係があったことは明らかであった。

 統一教会との関係を隠蔽し国葬を強行しようとする自民党に対する世論の非難が高まり、8月26日に茂木幹事長は、党所属国会議員に対して点検結果を報告する旨を通知し9月6日に公表するとした。

 そして8月31日に岸田は、教団と自民党議員が関係のあったことを認め、「自民党総裁として率直におわびを申し上げる」として、国葬について国会審議に出席し質問に答える場を設けるとした。

 公表した自己申告の点検結果は、自民がいう「党として組織的関係がない」ことを立証するものでは全くなかった。今回、379人中179人、自民議員の半数近くが接点をもっていたことが明るみになり「組織的な関係」があったことを裏付ける。

 茂木は、これは「党としての調査ではない。点検結果の集約」と強調し、党の責任をあいまいにし、安倍と統一教会との関係については、「亡くなったから、限界がある」と肝心な点を闇に葬った。

 点検結果の発表を閉会中審査後に発表し、審議で問題にされることを避けるなど、小手先の誤魔化しが目立つ。身内からも、自己申告に基づく点検や、安倍や細田を対象外としたことを「調べ方が不十分」(朝日9月15日)との批判が出ている。自民党と統一教会との癒着の事実を隠蔽することは許されるものではない。

◇閉会中審査で明らかになった岸田政権の腐敗

 自民党政権は統一教会の名称変更を認め支持を与え、霊感商法など人の弱みに付け込んで多額の献金を強いるカルト集団統一教会の犯罪的行為を放置し野放しにした。

 自民党は、政権維持を図る選挙の票集めに、反共主義や家父長制的な家庭観などの思想的に同調しうる反動的反労働者的な統一教会の組織力を利用していた。このような統一教会と深く結びついた安倍・自民党との癒着関係と、それを許し被害者を放置してきた怒りが、安倍国葬反対の世論となって表れている。

 国会で岸田は、統一教会との密接な関係があるのは自民党の議員であって、党との関係ではないと強弁し、立憲が安倍と統一教会との関係を取り上げると、衆院議運委員長山口は、本日の議題は「国葬儀である」と、追及の矛先を削ぎ、岸田は「自民党と統一教会とのありようは、点検結果で説明責任を果たす」と言い逃れた。

 岸田は「丁寧な説明を続ける」と言ったが、国葬の根拠の説明は首相在任期間が戦後最長、6回の国政選挙を勝ち抜いたなど、内容のない理由を並べ立て、これまでの説明を繰り返した。

 岸田は国葬を行うのは行政権の範囲内であり、内閣府設置法と閣議決定を根拠に決定した、国葬は内閣府設置法にもとづく内閣が行う「儀式」、すなわち「国葬儀」だと、これまでの自分勝手な説明を繰り返した。

 「国葬」にかかる費用は既に会場設備など約2億5千万円だけを公表し、警備などは国葬後に示すとしてきたが、世論に押されて、9月6日には警備費などを含めた費用の総額は約16億6千万円になるという試算を公表した。

 労働者・働く者の生活困難が進む中で、労働者・働く者から搾り取った税金からこんな大金を、安倍の国葬に使うことなど、労働者は認めるわけにはいかない。

 安倍は、教育基本法を改悪し愛国主義教育を進め、「従軍慰安婦」の事実を否定し、戦前の帝国主義戦争を「防衛戦争」と正当化し、歴史の真実を歪めた。安保法制を成立させ、外国との集団自衛、自衛隊の海外派兵を可能にし、軍事大国化の道を切り開いた。そして「モリ・カケ・サクラ」に見られる政治の私物化が横行した。

 岸田が言う安倍の「経済の実績」は、カネのバラまきで景気が回復するというデマゴギーに満ちたアベノミクスによる経済の腐敗の深化であった。

 潤ったのは大企業や金持ち階級だけで、経済は停滞したままで、労働者の賃金は上がらず、政府の借金だけが積み上がり、今では円安による物価上昇で労働者の生活を直撃するという有様である。

 こんな反労働者的な政治しかやってこなかった安倍を礼讃する国葬を労働者・働く者は許すわけにはいかない。

◇「国葬は憲法違反」で闘えるか

 共産党などは、「国葬」は「法の下の平等」を規定する憲法14条と相いれない、弔意を強制することは憲法19条が保障する「思想および良心の自由」にも違反する。すなわち、そもそも「国葬」は憲法に違反するから、「安倍国葬」に反対だとしている。

 しかし労働者・働く者は「国葬は憲法違反」であるから「安倍国葬」に反対するのではない。安倍が国葬に値する人物でないがゆえに「安倍国葬」に反対するのである。「安倍国葬」で反労働者的な政治を覆い隠し、安倍政治を讃え、安倍を継承して国家主義的政治を進める岸田政権打倒を呼び掛けるのである。

◇岸田政権を打倒して真実を明らかにすべき

 自民党の我が身をかばう悪巧みは底知れない。自民党と統一教会とが深く関わっていて、隠すことができないことは、閉会中審査・点検結果でも明らかになった。世論調査は、国葬説明について納得できないは64%、岸田内閣支持率は41%に下がり、不支持が47%と初めて逆転した(朝日9月13日)。

 自民党は、「今後一切関係を持たない」というが、まず世界平和統一家庭連合と名称を変えた統一教会の宗教法人格を取り消し、解散命令を出すべきである。統一教会票で当選した議員は、議員を返上しなければならない。そんな議員をかばう岸田は退陣させなければならない。反労働者的政策を行ない、安倍礼讃を演出し、自らの政権安定化を図ろうと岸田が強行する国葬の中止を労働者・働く者は求める。

 共産党などは、「党として責任をもった調査こそ必要」というが、それは犯罪者に自らの犯罪を取り調べよと言うようなものである。真実が明らかにされるために、岸田政権打倒の狼煙火を掲げ、労働者・働く者の階級的闘いが提起されなければならない。 (佐)

   

【1面サブ】

贈収賄まみれが発覚

安倍五輪疑獄事件


 先月17日、東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、東京地検特捜部が組織委元理事の高橋治之や「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲らを贈収賄の疑いで逮捕した。元電通幹部で「スポーツビジネスのドン」と呼ばれた高橋容疑者の周辺から芋づる式に、「カネまみれの祭典」の実態が明らかになってきている。

 青木が「みなし公務員とは知らなかった」などと見えすいた嘘をつき、KADOKAWAの角川歴彦会長が「スポーツ全体のコンサルタントで何ら問題ない」と、裏金、闇マネーを使って五輪で金儲けするなど、五輪の商業主義に便乗して私腹を肥やすことに悪びれることがない。

 東京五輪は安倍元首相が「コンパクト五輪」だとか、「アンダーコントロール」だとか嘘で取り繕い、IOCの「五輪貴族」におもねって招致し、菅前首相が緊急事態発令中のコロナ下で開催を強行した。腐った自民党政治が腐った連中を引き寄せたのである。

 経費として13年の招致段階では7340億円としていたのに、不足を次々加え、道路整備など「大会関連経費」も合わせると3兆円を超すという財政無視も甚だしい。

 「復興五輪」だとか、「コロナに勝利した証の五輪」とか、国民愚弄の政治主導で推進した五輪をめぐる汚職事件であるが、事件の中心人物である高橋を森元首相を通じて組織委理事にしたのは安倍である。

 組織委の初代会長が安倍の所属した「清和研」派閥ボスの森で、森は「ガン見舞」として高橋から2百万円も受け取っており、単なる汚職事件でなく、権力を背景にした疑獄事件として弾劾されるべきである。

 「最初は五輪招致に関わるつもりはなかった。安倍(晋三)さんから直接電話を貰って、『中心になってやって欲しい』とお願いされたが、『過去に五輪の招致に関わってきた人は、みんな逮捕されている。私は捕まりたくない』と言って断った。だけど、安倍さんは『大丈夫です。絶対に高橋さんは捕まらないようにします。高橋さんを必ず守ります』と約束してくれた。その確約があったから招致に関わるようになった」(西﨑伸彦『高橋治之・治則「バブル兄弟」の虚栄』、文藝春秋2022年10月号)と、西崎は〝控えめ〟に書いているが、全くの作り話ではないであろう。

 悪党の安倍は政権浮揚をかけて五輪を開催するために悪党の高橋を利用し、利用されたのである。五輪疑獄糾弾は労働者・働く者の腐敗政治との闘いの一環である。 (岩)


           

【飛耳長目】

★旧統一教会と最も深い関係にあったのは安倍元首相(及び安倍派)である。それは教会が「権力の中枢」に真っ先に手を伸ばし、安倍もまたそれを利用したと言うことからくる。このことが徹底して暴露されれば、国葬批判がさらに炎上し、岸田の支持率も下落するので岸田や茂木は「死人に口なし」と調査拒否を決め込んだ★安倍政権の後ろ盾はこのカルト教団と神道政治連盟、右派団体の連合体である日本会議などであるが、彼等(安倍も)は「アジアへの侵略」を巡って一見対立するように見える。旧統一教会(文鮮明)は、日本の植民地統治にかこつけて「エバ国日本はアダム国韓国に贖罪すべし」として日本信者からの多額の献金を正当化し、一方、安倍や神連、日本会議は「あれは侵略ではなく、アジアの解放であった」と詭弁を労する★しかし、「贖罪」を要求するなら堂々と日本政府にすべきであり、彼等の植民地云々は方便にすぎず、また日本のアジアへの侵略と植民地化は歴然とした事実である。対立どころか、むしろ両者は歴史の真実への虚言(嘘と嘘)という点で一致するのだ。彼等は〝共に〟おのが国家を美化する〝民族主義(者)〟と徹底した〝反共主義(者)〟という共通項で強く結びつき、協力し合ってきたのである。 (義)


【2面トップ】

円安加速に動揺する政府

政府は為替介入を匂わせるが

 昨年初めに1ドル=104円であった円為替相場は下落し始め、今年3月に114円を記録し、輸入物価が高騰し貿易収支の赤字も拡大した。それでも政府・日銀は、円安は日本経済に必要だ、米国の金利引上げも直に収まると〝余裕〟を見せていた。しかし、為替相場が1ドル=140円を超えて144円台後半に達するや政府・日銀は慌てて金融機関に「レートチェック」を実施した。

◇為替介入匂わす政府・日銀

 昨年来から続く貿易赤字に伴う経常収支の悪化や欧米の金利引上げによる日米(や日欧)の金利差拡大によって、円為替相場は3月の1ドル=114円台から半年で30円も下げた。年間ベースの円下落率は「変動相場制」に移行した73年以降で最大となった。

 また去る7日(9月)には、1日で4円も円安が進むなど、相場は激しく動揺している。この間の円安進行に〝余裕〟を見せていた政府・日銀は14日、一転して「レートチェック」を実施した。

 「レートチェック」を行うことで、政府・日銀は97年から98年にかけて行った「ドル売り円買い」の政府介入(米政府の了解のもと)を匂わせた。

 確かに当時、山一証券や日本長期信用銀行の破綻が相次ぎ、円に対する信用不安が広がり、円は急落した。他方、米国の自動車産業などからは「円安ドル高」の進展による安い日本製品が大量に輸入されることへの不満が高まった。日米両政府の為替介入への思惑は一致し、橋本政権は97年12月から98年6月にかけて、3回の政府為替介入を行ったのである。

 しかし、現在の米国は貿易赤字の是正どころか、金利を引き上げて物価高騰を抑えるのに必死であり、中国製品にかけた輸入関税を一部引き下げる交渉に乗り出すほどだ。従って、現在の米国にとっては、日本製品のドル価格が下がる「円安ドル高」の方がベターなのだ。米国政府は、よっぽどいい条件の裏取引でも無ければ、98年当時のような為替への協調介入には応じないだろう。

◇98年の日米為替介入と現在

 バブル崩壊後に過剰生産が顕在化した産業資本と金融危機に陥った金融機関にとって、信用不安の弊害を除けば、円安と低金利は日本の企業にとって「恵みの雨」であった。

 なぜなら、商品価値(商品を再生産するのに必要な社会的労働が対象化)は何ら変わらないのに、ドル圏では円安によって輸出商品のドル価格が小さく表示され、決済時に元の円を獲得するのだから、国内の停滞をカバーし輸出に活路を見出していた大企業にとって、円安は有利に作用した――例えば、1ドル=100円の時、1万円のある商品を100ドルで輸出したとする。その後、為替相場が1ドル=200円に振れるなら1万円の輸出商品は50ドルで表示され、それだけ良く売れる。そして決済時には50ドル為替を入手して円に換金するなら1商品当たり1万円となる。売り手は円安を利用し、より多く売ってより儲けるのである。

 また、当時の金利は日本の長期金利が1・1%であったのに対し、米国の30年国債の金利は5・7%で日本と4・6%もの差があった。従って、現在と同様に、日米の金利差を狙って貨幣資本は米国にどっと流出していたのである。この時代も現在も、余剰の貨幣資本は為替相場や利子率(また株価も)を利用して世界を行き来する。しかし、98年当時と現在を比較すると、円安と日米金利差はどちらも量的には同程度であるが、両国の経済状況はかなり違っている。

 98年当時の日本は産業資本も金融機関も青色吐息であったが、米国の方は回復が早かった。現在の日米政府の金利政策は当時と大きく違っているし、為替相場についても、98年当時の為替相場は現在と同じく円安であったが、日本の貿易黒字は相当に拡大していたのである。現在は、円安にも拘わらず、むしろその弊害が出ていて日本の貿易収支は黒字から赤字に転落している。

 貿易収支が悪化した理由を幾つか上げるなら、90年前後に行われた日米構造協議による日本からの輸出規制やバブル崩壊による国内産業の停滞によって、通信や半導体やパソコンなどの価格競争力が低下し、次第に、これらの主産業は後退を余儀なくされ、その代わりに、低賃金労働力が豊富なアジア諸国に資本進出を急増させていった、などである。

 要するに、膨らんだバブルが破裂した後、大企業は国内産業の衰退(縮小)をカバーするために、アジアに生産拠点を築き、またそこから世界に輸出していったのである。それだけ日本からの輸出は小さくなり、逆に輸入が大きくなってきたのである(『プロメテウス』第61号参照)。

◇不均衡はいかに是正されるか

 しかし、こうした資本の過剰は資本主義経済に特有であり、その過剰や膨張による不均衡は収縮によって何とか均衡が保たれて来たのである(もちろん、再生産過程での均衡条件は理論的には存在する)。

 「バブル経済」のさ中、ブルジョアはバブルが「青天井」かの幻想を持ち、「日本は世界の勝ち組」になったと浮かれた。だが、産業資本の過剰や貨幣資本の膨張は、利潤を求めて投資する資本の運動の結果であるが、その資本の過剰は決して放置され得ないのである。実際、理論どおりに「バブル経済」は弾けたのである。同様に、現在の円安高進もまた、是正を余儀なくされる。

 円安が進み、貿易収支を含む経常収支がかつての様に大幅な黒字になるなら、また米国の金利引上げが停止され、日本の金利引上げで米国への貨幣流出が減るなら、為替相場は円安から円高に向かう。

 だが政府・日銀は、現在、金利を引き上げることを考えていない、というよりも金利引上げによる弊害を強く感じている。金利を引き上げるなら、日米の金利差が縮小し、円安の動きを止めることが出来るが、長年にわたって景気低迷から脱しようとあがいて来た政府・日銀にとって、欧米のような金利の引上げはインフレ(過剰発行された紙幣または紙幣化した銀行券が流通過程に入り、それら紙券の価格標準を切り下げて過剰発行を解消する動きのこと、従って諸物価が全面的に継続的に上昇する)に火が付いた時であろう。お茶を濁すにしても、「出口戦略」を述べる程度であろう。

 従って、円安防止の対策を打ち出すことが出来なく、円安が今後も進行するなら、日本国内での輸入物価高騰のみならず、インフレによって円安は解消されていくしかない。

 円安は輸出においては国内労働者の労働の安売りであり、輸入においてはドル圏労働の高買いであり、この不均衡・矛盾は何らかの形で解消されるということである。

◇政府・日銀の円安観念

 98年の橋本政権下で、円安によって輸出が増え、内需の停滞をカバーしていたにも拘わらず、「円安ドル高」の是正を行ったのは、ブルジョアに特有な危機感、即ち円安は日本が低く評価され「日本売り」になっているという強い観念があったからである。この類の観念は現在でも巷に溢れているが、表面的である。なぜなら、例えばインフレが急進し円が減価していく場合には、円安は経済的に必然であるからだ。

 橋本の円安阻止の為替介入から24年後の現在、再び為替介入の是非が取り沙汰されている。しかし、日銀黒田は最近の円安による物価高騰に直面しても、円安は日本の輸出を押し上げる「純便益」であると言い、低金利も経済にとって不可欠だと繰り返し述べてきた。しかも、98年当時と違い、貿易赤字が増大し、かつ政府の借金は膨大になり、矛盾は巨大になっているにも拘わらず。安倍・黒田が始めた「アベノミクス」はもちろん、ブルジョアの経済・財政政策(ケインズ経済)は既に破綻し、ツケを労働者におしつけている。  (W)


【二面サブ】

収容者死亡 国に賠償命令

入管の横暴な管理に判決

 東日本入国管理センターで2014年3月に亡くなったカメルーン人男性をめぐる訴訟判決で、水戸地裁は、入管側が病院への緊急搬送義務を怠ったためだとして国に賠償支払いを命じた。判決は改めて日本の入管当局の横暴な管理実態を明らかにした。

◇人命軽視の体制

 判決によると男性は13年10月に成田空港に着いたが上陸は認められず、退去命令にも応じなかったため、入管管理センターに収容された。

 男性には来日前から糖尿病があり、2月より胃痛や運動後のめまいがあり、20日には「気分が悪くて立てない」と訴えた。そして29日には「死にそうだ」と叫び、ベッドから転げ落ち、ほとんど動かなくなった。しかし、そのまま放置され職員が心肺停止状態の男性を見つけて救急搬送したのは翌日の30日、病院で亡くなった。

 裁判長は遅くとも男性が死亡する前後30分以上にわたって、声をあげて苦しんだ時点で入管当局は緊急搬送を要請すべき義務があったと指摘、入管施設では、収容者が自由に外部の医療機関を受診できないことから、社会一般の医療水準に見合うだけの対応を取る義務があるにもかかわらず施設側にその義務を怠ったとして施設の管理責任を追及、賠償支払いを命じる判決を下した。

 判決は入管当局の恐るべき人命軽視の実態を明らかにしている。昨年3月にはスリランカのウイッシュマンさんが、尿検査で腎機能障害の疑いがあるにもかかわらず追加検査が行われず亡くなったのをはじめ、2007年以降でも17人が施設で生命を失っている。

 入管当局は医療機関受診に消極的なのは「詐病」を無視できないからだというが、そんなことは理由にならない。継続的に収容者の健康を管理することができ、休日を含め緊急時に対応しやすい常勤の医師の確保が図られるべきことは前々から指摘されてきたが、全ての施設に導入されたわけでなく、人命軽視の管理が行われているのである。

◇手前勝手な「入管」政策

 人命軽視の入管体制は、海外からの労働者を人間としてではなく利潤獲得の〝もの〟扱いしていることと表裏一体である。急速な少子高齢化の進展のもとで、労働力不足が叫ばれて久しいが、政府は海外からの〝出稼ぎ〟労働者に依存してきた。

 2019年10月末現在の外国人労働者は165・8万人で、在留資格別にみると定住者、永住者は約53・2万人で最も多く、次いで「技能実習生」が38・4万人、留学生のアルバイト等の「資格外活動」が37・3万人、「専門職・技術分野の在留資格」が32・9万人となっている。

 2019年には、技能労働者に相当程度の技能をもつ「特定技能1号」と熟練した技術をもつ「特定2号」が設けられ、「特定2号」以外の労働者は通算5年までしか日本に滞在できないし、家族帯同もできない。日本では留学生とか技術を学ぶという名目で、子どもや家族から引き離し、労働者としての権利を認めず、劣悪な労働条件で働かせている。

 「技能実習生」については、来日のために多額の借金をしている実習生は多い。例えば実習生の約6割を占めるベトナム人の場合、母国の「送り出し機関」の人材派遣会社などに数十万円から100万円の借金をしていることも珍しくない。

 基本的に3年間は転職ができない弱い立場で、雇い主から長時間労働を強いられたり、賃金をきちんと支払われないなど劣悪な労働環境のもとで借金を返済するために我慢しているケースが多い。

 実際、厚生労働省が監督指導した実習先の7割で、長時間労働などの法令違反があった。19年から導入された転職の自由もある「特定技能制度」を利用しなければ、所定の期間を終えるとそのまま帰国するのが前提である。このため国連から技能実習生制度は「奴隷労働」と指弾されている。

 発展途上国への「技術支援」「人材育成」という偽りの看板を下ろし、労働者としての権利を認め、定住することも認めるべきである。

 しかし、受け入れ企業の多くや地域経済を海外の労働者に依存している自治体では「実習生」制度の存続を望んでいるという。資本や自治体にとっては単純労働分野での「技能実習生」制度は低賃金・無権利の使い捨て自由な労働者を利用する制度としてある。

 少子高齢化による労働者不足を補うために海外の労働者に依存しながら、高度な技術・知識を持つ労働者を除いて、定住を認めず短期で帰国を強い、違反者に対しては入管法で厳しい罰則を科しているのは手前勝手も甚だしい。こうした政策を続けていくなら、ますます日本は国際社会から孤立するだけである。 (T)


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