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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1436号 2022年10月9日
【一面トップ】 ロシアの4州強制併合糾弾
         ――帝国主義に反対する労働者の国際的連帯を
【一面サブ】 強行された安倍礼讃の国葬
         ――反労働者的政治を進める岸田政権
【コラム】 飛耳長目
【二面トップ】 「大衆迎合」政党が世界で台頭
         ――バラまき政策のツケは労働者に
【二面サブ】 金持ち優遇の点数稼ぎ
         ――NISAで「資産所得倍増」の甘言

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

ロシアの4州強制併合糾弾

帝国主義に反対する労働者の国際的連帯を

  ロシアのプーチン大統領は9月30日、軍事侵攻で占領したウクライナの東部、南部の4州における「住民投票」での圧倒的「賛意」を根拠として、4州のロシアへの編入を強行した。しかし、その「賛意」なるものは、軍隊の圧力で住民に強制した「デッチあげ」以外のなにものでもない。4州の併合と時を同じくして実施された30万の予備役招集を契機に兵役逃れの国外脱出者の増加、戦争反対の運動の高まりなど国内の政権への不信・反発が広まりつつある。

◇「でっち上げ」の「住民投票」

 親ロシア勢力はロシアへの編入を問う「住民投票」について、各地域で賛成率は87・1~99・2%に達したと発表した。

 プーチンは、投票結果について、30日の演説でロシアとの併合を望む住民の自由意思のあらわれであり、「民族自決権」の行使だと強調した。

 しかし、テレビ報道でも明らかなように、武装し銃を持った軍人の監視つきで投票に駆り出された住民が、外から投票の内容が丸見えの透けた投票箱に投票用紙をいれるという非民主的な投票によってもたらされた結果でしかない。

 また、76・9~97・5%と報告された投票率についても、まったくインチキだ。占領地から逃避した者にはロシア国内で行われたが、ウクライナ国内に逃避した人は除外された。ルハンスク州のハイダイ知事は、6月の激戦で人口の9割が逃避したままのセベロドネツク市では、「空っぽになった地で、どうしてこの投票率が可能か」とその嘘を暴露している。

 ザボリージャ州メトロポリの市長も「戸別訪問の係員は、家にいた人が別人でもお構いなしに投票させている」と訴えている(「朝日」9・28)。

 選挙結果についてウクライナ政府は、住民の意思表示とは全く関係もない「偽り」と批判したが、ロシア軍の占領下で行われた「住民投票」は初めから結果の分かった「でっちあげ」であることは明白である。

 9・30演説でプーチンは併合に反対する欧米を「民族自決権」を否定する植民地主義と激しく非難し、「文化、信仰、伝統、言語によって自分たちをロシアの一部と考え、何世紀にもわたって一つの国家で暮らしてきた祖先を持つ何百万人もの人々の決意ほど強いものはない。この人たちの、本当の歴史的な故郷に帰ろうという決意ほど強いものはない」と、ウクライナとロシアの「歴史的一体性」を強調したが、初めからウクライナの独立の意思を踏みにじり、軍事侵攻を正当化してきたのはプーチン自身である。

 プーチンは、「私たちは、自由に使えるすべての力と手段でこの土地を守り、国民の安全な生活を確保するためにあらゆる手段を尽く」と核兵器の使用をほのめかし、ウクライナの独立の闘いを威嚇しているのである。

◇広がるプーチン政権への不信

 戦争は泥沼化し、ロシアの戦死者は5月まででも1・5万(英国防省)を超える等、多くの犠牲者を出している。プーチンは、兵力不足を補うために30万人の予備役を動員する計画に取り掛かっている。

 しかし、この予備役動員をきっかけに、厳しい弾圧に沈黙を余儀なくされてきた若者等を中心に戦争に抵抗する運動が広がりつつある。

 26日には東シベリアにあるイルクーツク州の徴兵事務所で発砲事件があったのをはじめ、25日までに発砲事件は全国で16件におよんだ。そのほか南部ダゲスタン共和国では、女性たちが動員に反対する集会を開き100人以上が高速道路を封鎖し、警官隊と衝突したという。ヤルクーツクでも、女性たちが「ジェノサイド(集団殺害)にノー」を叫び警官隊に拘束された。拘束はここ数日間に2千人に上るという(「朝日」9・27)。

 一方、「動員令」に反発して観光ビザなどで国外に脱出する者も増加している。連邦保安局の調査では「動員令」発動(21日)後に出国した男性は26・1万人に達するという。(同)

 独立系の世論調査機関・レバダセンターの調査によれば、「部分動員」決定後の9月の意識調査(18歳以上、1600人対象)では、戦争を支持する者の割合は77%と以前より6ポイント低下し、支持しないとする意見は21%と6ポイント増加した。この結果について「突然の動員発表による国民の不安や恐怖、不満の表れ」と分析している。

◇一切の帝国主義に反対する労働者の闘いを

 ウクライナ政府はロシアの4州併合への対抗手段としてNATO加盟申請を決定した。ウクライナは3月、停戦協議でロシア軍が撤兵すれば軍事的中立国になる用意があると提案したが、戦争が長期化するに伴い提案は立ち消えとなった。

 またロシアも併合した4州は撤兵の対象外との態度をとっている。このため、ウクライナ政府はNATO加盟申請に方針を転換し、加盟が実現するまでの間は、各国が国際条約でウクライナの安全を保証することを求めている。

 しかし、NATO加盟は、ウクライナのブルジョアジーの望みであって、戦争解決の手段とはならないだろう。ウクライナとロシアの戦争の背景は、帝国主義の欧米NATO勢力と帝国主義のロシアとの覇権争いがあるのであって、ウクライナがNATO陣営に加わることをロシアが許容するはずはなく、緊張を激化させるだけである。ウクライナは欧米にもロシアにも与さず、中立の立場を堅持すべきだ。

 労働者は欧米の帝国主義にもロシアの帝国主義にも反対である。ウクライナ、ロシアの戦争には欧米の帝国主義だけではなく、日本や中国の帝国主義国家の利害も複雑に絡んでいる。日本は〝自由〟帝国主義の一員として欧米NATO諸国との協調の姿勢をとっているし、米国と世界の覇権を争っている中国はロシアとは一定の距離をおきながらも協調関係を保っている。帝国主義が存在する限り、帝国主義国家間の利害の対立は不可避であり、戦争の火種は尽きない。

 国際的な恒久平和を実現するためには、世界から帝国主義を一掃することである。そのためには、労働の搾取に反対し、世界の協同を目指す労働者の国際的な階級的闘いを発展させることである。 (T)


【1面サブ】

強行された安倍礼讃の国葬

反労働者的政治を進める岸田政権

 9月27日、多くの労働者・働く者の国葬反対の声を封殺し、岸田政権は安倍元首相の「国葬」を強行し、その反労働者的な姿を明らかにした。国葬の法的根拠や憲法違反を問題にする野党は、帝国主義的な政治を進めるために国葬を利用した岸田政権打倒に向けての、労働者の階級的闘いから背を向けている。

◇安倍賛美に終始した国葬

 岸田の追悼の辞は、安倍が行ってきた反労働者的な政治を無批判に列挙し賛美するものであった。

 日の丸・君が代を強制する愛国主義教育を進める教育基本法の改悪を「日本のアイデンティティの種を撒き」と美化し、外国との集団自衛、自衛隊の海外派兵を可能にし、軍事大国化の道を切り開いた安保法制制定を「わが国の安全は、より一層保てる」と偽った。

 安倍が「従軍慰安婦」の事実を否定し、戦前の帝国主義戦争を「防衛戦争」と正当化し歴史の真実を歪めた等の言及はもとよりなかった。

 我々は、このように安倍が全く国葬に値する人物でないがゆえに、そして、岸田がそんな安倍を礼讃するがゆえに国葬に反対したのである。悪党を立派に見せるなら、悪党がはびこることになる。

◇統一教会と安倍自民党との癒着を隠蔽した国葬

 岸田は、安倍殺害については、「あってはならないことが起きてしまった」と言うだけで、事件直後の、「民主主義の根幹たる選挙が行われている中での卑劣な蛮行」との激しい非難を引っ込め、自らに非難の火の粉が降りかかるのを避けた。

 先の9月8日の閉会中審査でも岸田は、「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く」ために国葬をすると言ったのであるが、事件後、容疑者は統一教会への恨みがあり、安倍と統一教会とつながりがあると考え犯行に及んだと供述したのであり、安倍の言論を封じるために安倍殺害に及んだのではなかった。すなわち、〝言論の自由〟の問題とは直接関係はないのである。

 自民は、その後も「被害者は安倍」、「統一教会は悪だというのは容疑者の主張」などと言って、霊感商法などの犯罪的行為を助長した統一教会と自民党との関係の隠蔽を図った。一方、統一教会は、資本主義のもとでの生活不安、貧困に付け入り、信者に膨大な借金させてまで金を巻き上げ、私腹を肥やしてきた。自民党は、政権維持のために政治的利用した。岸田は国葬でも、安倍自民党と統一教会とのこの癒着関係を闇に葬った。

◇憲法違反という国葬批判は無力

 その後の菅の追悼も、安倍の防衛費増額、敵基地攻撃などの危険な国家主義的政治への進展を「平和国家日本を希求し」などと安倍を礼讃し、大衆を煙に巻いたのは岸田と同じである。しかしこんな偽りに満ちた安倍評価の弔辞を立憲・長妻は「良い話だった」、自らも哀悼する、国葬だから問題であり、合同葬ならよかった(プライムニュース9月27日)と、安倍政治を評価する情けない姿を現した。

 立憲、共産や自由主義的論調の朝日などは、国葬を規定する法律がないことや、国葬が憲法に違反することを理由に国葬に反対したが、それは国葬問題を法律の有無に矮小化することであった。その成れの果てが、長妻の安倍賛美である。

 彼らは国葬が社会の分断をもたらしたと非難する。しかし問題は、統一教会と結びつくような反労働者的な安倍・自民党の政治であり、岸田が安倍殺害で明らかになった安倍自民党と統一教会との癒着を隠蔽し、安倍の反動的政治を継承しその帝国主義的政治を進めるために、岸田が安倍国葬を利用したことである。岸田政権の打倒こそが労働者・働く者の課題である。 (佐)


       

【飛耳長目】

★ウクライナ危機と円安進行による原材料価格高騰で、10月からの食料品値上げは6700品目、年額7万円の家計負担増だと。岸田は、非課税世帯への5万円給付に続いて電気料金高騰に「前例のない対策(補助金?)」を表明、国民民主もインフレ手当10万円を言いだした★いずれも一過性の対策に過ぎない。財源も国債に大きく依存するもので、将来世代にツケを回すだけだ。同じ10月、社会保険加入条件を広げる変更もあった★だが税金と社会保険料の負担を根拠に、夫の扶養から外れる130万円等の「年収の壁」で「働き損」になると、労働時間を調整する女性パート労働者がいる。40年前に1千万人超いた専業主婦は、現在では570万人とほぼ半減、女性の社会進出が進む一方にである★専業主婦層の解体と賃金労働者化は、女性が社会や家庭での〝男性支配〟から脱け出し、非正規差別や家計補助的賃金に甘んじる存在から、労働者として自立する一歩なのだ★社会保険加入は労働者の権利であり、最低賃金の上昇(中小零細企業に配慮した少額だが)を含めて、資本からの譲歩である。現金給付や「働き損」といった目先の利益に捉われてはいけない★女性の賃金労働化は、階級的団結と闘いに接近する契機であり、女性の解放にとっても歓迎すべきことだ。 (Y)


【2面トップ】

「大衆迎合」政党が世界で台頭

バラまき政策のツケは労働者に

 世界中で物価高騰が進み、欧米各国政府は金利引上げ策に転じた。だが物価高騰は長期にわたり、人々の不満は高まり、大衆迎合策や排外主義で不満を吸収しようとする政治が強まっている。英国では新首相のトラスが大胆な財政膨張策を打ち出すや「金融不安」が走り、イタリアやスウエーデンでは右翼政党が躍進している。

◇英国版「アベノミクス」

 失脚した英国保守党のジョンソンに代わって、トラスが新首相になった(9月6日)。トラスはかねてから安倍や黒田・日銀の「アベノミクス」に賛同し、財政の積極的なバラまき策を主張してきた人物だ。

 トラス新政権は23日、物価高騰による国民の困難を救済することを名目に、5百億ポンド(約7・8兆円)に相当する所得税・不動産所得税の税率引き下げと共に、企業の法人税率引上げ撤回などを打出した。さらにトラスは1千5百億ポンド(約23・3兆円)規模の企業や家庭の電気・ガス料金の半年間凍結も表明。

 このトラス政権の財政バラまき策は、物価高騰を抑制するために採用してきた1年にも及ぶ金融引締め策(金利引上げ)とは真反対の財政膨張政策であり、かつ政府の借金を急増させるものだった。

 トラスのバラまき策に投資家が鋭く反応した。英国債は叩き売られ、金利は上昇(例えば10年債の金利は数日で3・4%から4・6%に急騰)、ポンド通貨と株式も全面安の「トリプル安」の展開となった。

 慌てたトラスは市場から国債を買い戻して国債価格の引上げにやっきになり、加えて10月3日、非難の嵐の中、トラスは高所得者減税案(45%の所得税率を一律40%にする案)については撤回してその場を取り繕った。だが、英国の金融政策に対する不信はそう簡単に癒えそうにない。

 英国は長期にわたって「経常赤字国」で、米国に次ぐ世界第2位の「対外純債務国」に転落しており、経済は海外からの投資に依存し、その利潤や利ざやは海外に流出するという後進国のような国家になっている。だから、為替相場ではポンドは常に下落傾向にあり、輸入物価は高くなっていた。そこへ今回の「金融ショック」が重なった。

 減税案の一部を修正したが、「経済成長」(バラまき政策)をやりつつ「インフレにも対処する」というトラスの矛盾した政治では、物価高騰やポンド下落を修正できず財政の健全化も遠ざける。

◇イタリアで極右政党が第一党

 英国同様に経済が低迷し、かつEU内でギリシャに次いで政府債務が大きいイタリアで(対GDP比150%)、移民や性的少数者への排他的立場を取る右派連合が政権をとりそうだ。与党左派連合の中心にいた「民主党」のドラギ首相が物価高騰を招いた対ロシア政策の批判を浴び辞任し、前倒しで行われた総選挙の結果(9月26日開票)、右翼政党が台頭したからだ。

 第1党となったのはメローニ党首が率いる「イタリアの同胞」(FDI)であり、メローニは反EUや親ロシアを表明し、そして何よりもムソリーニのファシズムを礼賛してきた愛国・排外主義者である。だが今回の選挙では、彼女は本心を隠して闘い労働者層からも票を掠め取った。このFDIと連立を組もうというのがロシアと協調し天然ガスの輸入を続けよと叫ぶ「同胞」や「フォルツア・イタリア」の右派政党だ。

 間もなく、FDIを中心に首相選びが行われるが、これらの右派政党が台頭した背景は何か?

 イタリアでは賃金水準が停滞したままだ。2020年までの30年間、他のEU諸国では実質賃金上昇率は数%以上であったが(スペインでさえ6%)、イタリアでは逆に3%も下落した。

 また、イタリアでは中々就職することができず、雇用されても非正規の労働者となることが多く、今では新規雇用の過半数を非正規が占める。しかも一旦非正規になると、正規雇用へと転換されることが少なく、非正規雇用は増えながら固定化する。

 IMFの資料を見ると、失業率は14年に12%超を記録し、その後低下したが21年でも9・5%を上回る。「若者失業率」(25歳未満)は現在30%以上という異常な数値を示す。

 イタリアはEU内で第3位のGDPを誇る。だが、前述のようにイタリア(資本)は低賃金の非正規労働者を大量に雇い、EU諸国を中心に商品を安売りして稼ぎ、貿易収支を黒字にしてきた国であり、労働者を犠牲にして生き長らえる資本主義の代表見本のような国家である。

 こうした現実を嫌悪する人々は、排外主義や愛国を叫びながら「大胆な減税や補助金政策」を打ち出した右派連合に飛びついた。しかし右派連合はイタリアの混迷や矛盾の原因を分析するのではなく、反対にそれらを隠蔽し(明らかにできず)大衆迎合で票をかすめ取ったが、そのやり方は、これまでのドラギ左派政権と大差がなかった。

 右派連合が勝利したのは、左派政権のもとで労働条件が悪化し、今年初めからの物価高騰で生活破綻が相次ぎ、貧困層を中心に左派離れが起きたからに他ならない。と同時に、イタリア労働者による階級闘争の未発展、労働者を真に代表する労働者党の不在がこうした結果を招いたと言える。

 しかし、イタリアの右派政権が公約通りにバラまき政策に走るなら、コロナの3年間で増えた政府債務残高(対GDP比で120%から150%に増加)は、さらに増える。イタリアの債務増大を危惧した投資家はイタリア国債を売り始めた。国債の金利は上がり始め、10年債の利回りは4%を突破した。イタリアの危機は深まるばかりだ。

◇スウェーデンでも右翼が躍進

 イタリアの総選挙が行われた直前に、福祉国家スウェーデンで総選挙が行われた(9月11日投開票)。その結果、アンデション首相率いる左派勢力が対立する右派勢力に3議席の差で敗北し、アンデションは14日に辞意を表明。アンデションは昨年11月、初の女性首相に任命されたが予算案の否決を受けてわずか数時間で辞任、数日後に再任され政権を率いてきた。

 今回の選挙で躍進したのは右翼政党のスウェーデン民主党(以下、民主党)であり、民主党は左派政権の柱である社民党に次ぐ議会第2党になった。

 民主党は80年代にネオナチ運動の中で生まれた人種差別的な政党で、今度の総選挙でも治安悪化や福祉の負担増はイスラム系移民のせいだと排外主義を煽った。

 しかし、スウェーデンは労働力不足を補うために移民を多数受け入れてきたのであるが、移民系労働者は就職においても賃金においても差別を受け続けてきた。移民労働者は「高福祉」の恩恵を受けられず、絶えず不満を充満させてきたのである。この移民差別の影響もあるが、失業率は93年~97年に10%を超え、それ以降も常に6%~8%以上を推移し、21年には8・8%を記録していた。「若者失業率」は長年にわたり15%~30%を推移し、22年8月現在でも20%を超えている。

 詳細な分析については割愛するが、要するにスウェーデン資本にとって、高福祉(失業対策などが手厚い)は労働者を雇いたい時にのみ雇うという資本の論理の支柱になってきたのだ。

 それに加えて、今年(22年)の4月、極右政治家がイスラム教の聖典コーランを燃やすという兆発的なイベントを計画したことから、各地で暴動が起き、治安悪化を印象付けた。

 民主党はスウェーデン社会の行き詰まりを利用し排外主義を煽った。同時に、消費者物価指数が7月に対前年比で8・5%増となったことに対する大胆な「恒久的な減税」や「雇用所得税減税」などの大衆迎合策を叫んだ、左派政権と同様にだ。

 右翼・民主党の躍進は社民党の改良主義政治の破産を意味したのである。ここから、労働者はEUに見られる福祉型資本主義の限界を学ばなければならない。 (W)


【二面サブ】

金持ち優遇の点数稼ぎ

NISAで「資産所得倍増」の甘言

 岸田首相の掲げる「新しい資本主義」は労働者・働く者からだけでなく、ブルジョアからも不人気で、当てにしていた「安倍国葬」での点数稼ぎも不振で、岸田政権の支持率低下に歯止めがかからない状況である。看板の「新しい資本主義」を降ろすこともできず、新機軸もパッとしない岸田は、NISA(少額投資非課税制度)の拡充を押し出していた。

◇日本への投資をアピールしたが

 岸田は今年5月、ロンドンの金融街・シティの講演で、「インベスト・イン・キシダ(岸田に投資を)」とアピールし、「この10年間で米国では家計金融資産が3倍、英国では2・3倍になったが日本では1・4倍にしかなっていない。ここに大きなポテンシャルがある。貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進め、投資による資産所得倍増を実現する。少額投資非課税制度(NISA)の抜本的拡充や、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など政策を総動員し『資産所得倍増プラン』を進めていく」と売りこんだ。

 9月には安倍「国葬」直前にニューヨークに飛び、「私は、『新しい資本主義』という経済政策を掲げている。これは、日本経済を再び成長させるための包括的なパッケージだ」と自慢し、日本の五つの優先課題の四番目に「資産所得倍増プラン」を挙げ、「日本には、2000兆円の個人金融資産がある。現状、その1割しか株式投資に回っていない。資産所得を倍増し、老後のための長期的な資産形成を可能にするためには、個人向け少額投資非課税制度の恒久化が必須だ」と、株式投資への幻想を曝け出す浅はかな理屈を披歴した。

 NISAは2024年度から新制度に移行することは決まっていたが、「根本的拡充」や「恒久化」は、これからの検討課題であるにもかかわらず、岸田は前のめりに押し出した。

 岸田は熱心だが、外国人投資家は、日本について投資対象として注目するのであって、NISAによる日本経済への影響は限定的として、無視はしなくとも、日本の経済成長力が行き詰っている中では、岸田の売り込みは冷ややかに受け取られただけであった。

◇金持ち優遇税制の拡充狙う

 NISAは「貯蓄から投資へ」という国策の投資優遇制度で、株式の配当や売却益の一部に税金がかからない。株や投資信託などに非課税で年120万円まで5年間投資できる「一般NISA」と、投信に年40万円まで20年間非課税で投資できる「つみたてNISA」、それと未成年向けの「ジュニアNISA」の三つがある。

 現状はいずれも投資可能な期間が限られ、23~42年までの時限措置である。一般NISAの場合は5年の期限を迎えると、翌年の投資枠に資産を移す手続きが必要になるなど、1120万のNISA口座(2022年3月末)があるとはいえ、複雑で使いにくいと言われてきた中で、すでに24年には改正する段取りであった。

 しかし岸田は「資産所得倍増プラン」を具体化する政策の目玉にしようと、改正案に対して抜本的改定を指示した。金融庁は三つに分かれている制度を、つみたてNISAをベースにしたものに一本化し、恒久的な制度に作りかえることを税制改正要望に盛り込んだ。

 新しい制度では、非課税で投信などの金融商品を保有できる期間を無期限にし、年間の投資枠も広げようとしており、さらに、生涯で投資できる限度額の範囲内で自由に金融商品を売り買いできるようにするなど、「金持ち優遇」になることを承知での制度改正の方向である。

 当初、岸田は「金持ち優遇」である株式譲渡などによる金融所得に対して課税を強化すると言っていたが、市場からの「岸田ショック」というような反応にたじろぎ、投げ捨ててしまった。

 「格差解消」とか「新自由主義批判」という建前に固執していては脆弱な政治基盤では政権を維持できないと判断したのであろう。「所得倍増」を「資産所得倍増」にすり替え、当初の路線を変更したのだ。老後については自助で、自己責任で資産形成しろということである。

 こうした岸田の卑怯なやり方は「国葬」や統一教会問題でも露呈したが、責任能力がないくせに「総理大臣」に治まっているのは、NISAの制度改革等で金融業界や経団連の期待に応えているからであり、大企業の利益実現のために貢献しているからである。 (岩)


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