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●1437号 2022年10月23日 【一面トップ】 国家資本主義の深刻な矛盾を隠蔽 ――内容空疎な「活動報告」 中国共産党大会開幕 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 安保有識者会議を出しに使い ――帝国主義国家に相応しい軍事体制めざす岸田 【二面サブ】 中国への対抗心あらわ ――米国、「国家安全保障戦略」を公表 ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】 国家資本主義の深刻な矛盾を隠蔽――内容空疎な「活動報告」中国共産党大会開幕5年に一度の中国共産党大会が10月16日から始まった。習近平総書記は、〝異例の〟三期目就任が確実視される中、余裕綽々で「活動報告」を発表し、自らの実績を誇り、「社会主義現代化強国の全面的完成」をめざすと宣言した。以下、中国の現実を踏まえつつ、「活動報告」の内容を検討する(本稿執筆は18日)。 ◇自画自賛と国民の反撥「活動報告」は、まず、この間の実績を列挙し、誇って見せた――「小康社会(ややゆとりのある社会)の「全面的完成を推進した」、「ゼロコロナを堅持し、新型コロナウィルス感染症対策と経済・社会発展の両立で成果を収めた」、GDP世界2位を保ち、1人あたりGDPを10年間で倍増させた、「共同富裕(ともに豊かになる)が新たな成果を収めた」、「史上前例のない反腐敗闘争」により「党・国家・軍隊の内部に巣くう深刻なリスク要因を取り除いた」等々。 しかし、こうした自画自賛が、中国の体制に潜む深刻な矛盾から大衆の目をそらし、習近平の権力を正当化する空虚な言葉の羅列であることは明らかであり、中国の大衆自身が誰よりも良くそれを知っている。 大会の直前、北京の高架橋にスローガンを赤字で大書した横断幕が掲げられたことを想起せよ。スローガンはこうだ――「PCR検査は要らない、ご飯が欲しい」「ロックダウンは要らない、自由が欲しい」、「嘘は要らない、尊厳が欲しい」「文革は要らない、改革が欲しい」「習近平指導部は要らない、選挙が欲しい」、「奴隷になりたくない、国民になりたい」、「独裁者・国賊 習近平を辞めさせろ」。厳重な警備、言論統制の中、大会直前にこのような明確な政権批判スローガンが貼り出されたのは初めてであり、大衆の不満、怒りの深さが分かる。 ◇困難や危機を無視「活動報告」はまた、今中国が抱える深刻な矛盾――経済停滞、不動産危機、貧富の格差拡大、少子高齢化等々――に目をつむり、お題目や決まり文句でお茶を濁している。 中国の経済危機が生やさしいものでないことは、当局が18日に予定していた7~9月期のGDP成長率や関連指標(工業生産、消費指標など)の発表を延期したことからも分かる。経済の実態が習近平政権のイメージダウン、権威の低下をもたらすほど悪化している証拠だろう。 実際、春頃から上海をはじめ大都市で続いた「ゼロコロナ」対策によるロックダウンの結果、経済動線が寸断され、労働者の出勤が制限され、居住者は団地に押し込められていたのだから、生産も消費も減退しない方がおかしい。4月に習近平の腹心で上海市トップの李強が住宅街を視察したとき、住民の〝おばちゃん〟に「生きていけない、あなたたちは有罪だ。恥を知れ!」と罵倒されたのは有名な話だ。 お上(習近平)が直々に打ち出した「ゼロコロナ」政策であるが故に、下部組織は強引に推し進めるしかなく、状況を見て弾力的に運用することなど出来はしないという硬直した上意下達の官僚主義的体制――国家資本主義と不可分の――の帰結である。 8月には渇水で電力不足となり工場の操業停止が相次いだこともあり、7~9月期のGDP成長率は前年同期比3%台との予測も出ており、政府の年間目標「5・5%前後」を大きく下回ることは必至だ。 ◇深刻な不動産危機中国経済が抱える困難の象徴として不動産業を見てみよう。「活動報告」が無視している不動産危機は、ますます悪化しているように見える。 1~7月の分譲住宅販売面積は前年同期比23・1%減、販売額同28・8%減であり、在庫面積は同7・5%増だった。同じ時期の不動産開発投資も同6・4%減、うち住宅は5・8%減となっている。不動産投資は都市固定資産投資の21%を占めるから(同時期)、その減退の影響は大きい。 不動産業は、建設業、建材工業、不動産販売業と関連サービス業など関連産業が多く、その停滞の影響は経済全体に及ぶ。特に、中国の場合、これら関連産業を含めるとGDPに占めるシェアは29%に達するとの研究もある。習近平の誇る世界第2位のGDPは、不動産業のバブルで〝水増し〟された結果でもあるのだ。 不動産業は、雇用者も多い。建築業の雇用者数だけとっても20年に2153万人で、全就業者の12・6%を占める。 さらに、不動産業は地方政府財政と密接に絡み合っている。中国では土地は国有であり、土地の売買は禁止されている。「土地使用権」を得ようとする者は地方政府に「土地使用権譲渡金」を支払って開発に乗り出すことになるが、この「譲渡金」収入が地方政府財政の大きな部分を占めるのだ。地方財政の「土地使用譲渡金」への依存度は、20年度の統計で、江蘇、貴州、安徽、浙江、山東、四川など13省で40%を超えており、最も依存度の高い浙江省は55・5%、続く貴州省は46・%と財政の半分前後を譲渡金収入に依存している。 したがって、不動産投資の縮小は、直接、地方財政の崩壊につながるのだ。逆に言えば、土地バブルは地方政府にとって〝生命線〟であり、中央政府が土地バブルを収束させようとしても地方政府の抵抗は大きく、スムーズに進まないということになる。 さらに、不動産業は金融業界とも密接な関係にある。習近平が総書記に就任した12年以降、商業銀行の貸出残高に占める不動産向け貸出残高の割合は10%台から30%台近くまで拡大している。つまり、不動産危機は、金融危機に、したがってまた経済全体の危機へと発展するのだ(詳しくは、大西康男「中国経済を揺るがす不動産業の特殊な事情」、WedgeONLINE 2022年9月15日付参照)。 ◇「共同富裕」の欺瞞昨年8月、習近平が大々的に打ち出した「共同富裕」については、「活動報告」は軽く触れただけであった。 「共同富裕」は、毛沢東以来のスローガン「貧富の格差を是正し、すべての人が豊かになることをめざす」を実現するものとして、大いに喧伝されたが、毛沢東の後継者をめざす?はずの習近平にしては素っ気ない扱いである。 現実はどうか。中国の貧困層は依然膨大な数に上り、貧富の格差はむしろ拡大している。 中国全体の可処分所得統計を見ると、2021年の下位20%の低所得層の平均年収は8000元余(約17万円)で、月収にすると日本円で1万4000円ばかりとなる。中国の人口約14億人の20%、約2億8000万人は食うや食わずの生活を強いられているのだ。 一方、中国全体の上位20%の高所得層の平均年収は約8万5000元(約170万円)であり、格差は10倍以上になる。 所得格差を示す統計としてジニ係数がある。この数値が1に近づくほど格差が大きいことになるが、中国は2021年時点で0・46であり、「騒乱が起きる警戒ライン」0・4をとっくに超えている(2022年9月20日付NHK国際ニュースナビ参照)。 「共同富裕」は、〝絶対的貧困〟に苦しむ農民や都市の低所得層の不満をそらすために打ち出されたが、実際には、高所得層の一部(IT長者や芸能人など)から強制的に所得を巻き上げる姑息で矮小な〝対策〟に堕しており、誰をも満足させることはできず、ITや新興金融業者などの活動――中国のGDPの伸びに貢献してきた――を萎縮させただけであった。 「共同富裕」論が打ち出された当時、〝所得再分配〟を謳うなら、どうして固定資産税に相当する不動産税を打ち出さないのかという疑問が各方面から出された。中国政府は、地方政府の財政救済の必要もあり、不動産税の導入を検討しているとも伝えられた。その後どうなっただろうか。 「21年10月に開いた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会では、国務院に一部都市での試験導入を認めた。/だが、不動産市況が低迷から抜け出せないなか、22年3月になって中国財政省が改革の先送りを発表した。北京などで複数の物件を持つ党幹部の子弟や富裕層の反発が強く、習指導部が3期目に入ったとしても、導入にこぎつけられるかどうかはなお予断を許さない」(日本経済新聞デジタル版10月17日付)。 中国共産党がどのような階級を代表しているかが分かるというものだ。中国共産党とは党幹部やその子弟、国有大企業幹部や〝民間企業〟経営者などの特権的階層、富裕層の利益を体現しているのだ。 ◇累積する難題「活動報告」が無視あるいは軽視している難題は、他にも多々ある。先の日経紙は、それらを列記している。 ①人口減少と高齢化 中国の総人口は22年7月1日時点で前年比減少に転じた。高齢化も加速し、12年に35歳未満だった平均年齢(中央値)は22年に38歳を超え、47年には50歳を上回る。既に4割超の製造業は「採用難」を経営における最大の課題としている。 ②不動産市場が停滞、地方財政は疲弊(既述)。 ③若年に就職難の波、所得格差止まらず。 学生数は増えているが、経済停滞を背景とするホワイトカラーの求人減もあり、若年失業率は22年7月に19・9%と過去最悪になった。都市部ではマンション価格の高騰により「持てる者」と「持たざる者」の格差が拡大、15年に5・3倍だった都市内所得格差は足元で6倍を超す。 「活動報告」が「社会主義現代化強国の完成」や「中華民族復興の夢」の実現などを謳うのは、大国主義や民族主義を鼓吹することによって中国の抱える困難、危機から大衆の目をそらし、習近平権力の永続化を狙うものであることは明らかであろう。 だが、こうした謳い文句で中国の労働者大衆を慰撫し、黙らせるには中国体制の抱える矛盾はあまりにも深いと言わなければならない。(鈴木) 【飛耳長目】 ★岸田は己が息子を首相秘書官に登用し、内外からひんしゅくを買っている。明らかに跡目相続のための抜擢で、安倍に続く政治の私物化だ。岸田は祖父、父と続く世襲議員3世である★日本の歴代首相の内の7割は世襲議員であり、現国会議員の内の3人に1人、自民党では4割を占める。世襲とは「その家の地位・財産・職業等を嫡系の子孫が代々受け継ぐこと」(広辞苑)とある。歌舞伎、能、狂言、陶芸、茶華道、一族会社、老舗、家元等に世襲制が見られるが、今ではここに国会議員も入る★『児孫の為に美田を買わず』とは西郷隆盛の言葉だ。ここで言う『美田』とは、金儲けの手段としての財産という意味だ。大久保や伊藤、山県らが豪邸や別荘で豪勢な生活を送る一方で、西郷は政府から支給される給与袋を自宅の縁側にいつもほっぽいておいたと言われるほど無頓着であった★明治維新が今と違うのは、彼等には政治的世襲がなかった。それは変革期という時代がそれを許さなかったからだ。どんなに間抜けでも世襲で国会議員になれる今と違って、時代が優秀な人材を必要としていた★世襲制は、階級社会の下での権力者、有産階級らが己が地位や財産を守るための制度であって、労働者階級には全く無縁の廃棄すべき制度である。 (義) 【2面トップ】 安保有識者会議を出しに使い帝国主義国家に相応しい軍事体制めざす岸田岸田政権は帝国主義国家に相応しい軍事体制強化に向けて走り出している。今年の12月中旬までには、安保3文書を改定し、当面の軍事力拡大規模を決め、年末までに23年度予算案も決める。しかし、政府は外部からの意見を聞く振りをした方がいいと判断し、議事要旨を公開する「有識者会議」を組織した。 ◇「有識者会議」を招集岸田が急ぐのは、NSS(国家安全保障戦略)などの安保3文書(NSS、防衛計画大綱、中期防衛力整備計画)の改定である。そして、この改定に基づいて軍事予算を増大させ、防衛能力や攻撃能力を格段に高めて実戦配備し、また兵器の大量生産体制を築くことである。岸田は今年5月に来日したバイデンと首脳会議を行ったが、岸田が「公約」したのは、まさにこのことであった。 岸田が招集した軍事力強化のための安保戦略「有識者会議」が9月30日に始まった。 このメンバーは、シンクタンクの理事長(翁百合ら)、大学教授(中西寛)、元防衛事務次官(黒江哲郎)、元大手新聞社幹部(船橋洋一ら)など10人で構成されている。 座長は、元駐米大使で、現在は「日本国際問題研究所」(国策に沿って作られた外交・安全保障の財団法人)の理事長である佐々江賢一郎である。この有識者会議の提言が12月上旬に出るので、これを受けて与党内協議を図り、12月中旬には3文書を閣議決定する。そして、来年度の防衛予算案も与党内で事前に算定し、最後に閣議決定する。 何とも慌ただしい限りだが、既に今年の1月以来、計17回の非公開の軍事的・技術的専門家の「有識者会議」が行われてきたが、野党から「ブラックボックスで議論を進めるのか」と批判がおこり、公開用の「有識者会議」を形式的に急いで招集したというわけである。 だから、始めから結論ありきなのだ。安保3文書には、敵基地攻撃が可能な長距離ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)や巡航ミサイル搭載可能な大型戦闘機の量産体制の必要性を謳い、早急に配備させるべきと書かれるのは必至である。 かつて安倍政権時に就役させた2隻の空母を「多機能護衛艦」と呼称したように、3文書では、攻撃型兵器を防衛的兵器だと偽って呼称する可能性もあるが、それは3文書が外交文書でもあるからだ(英訳文も作られる)。 ◇強行姿勢示す「有識者会議」政府は9月30日に開いた公開用の「有識者会議」の初会合について、今月11日に議事要旨(発言者の名前は無い)を公開した。 それがマスコミ各紙で簡単に紹介されている。 敵基地攻撃能力については、「保有する必要がある」、「打撃能力を含め、日本の能力増強が抑止力の維持・発展に不可欠だ」との意見が相次いで出され、否定的な内容はなかったとしている。軍事費増額についても全体が賛成であり、ただ、「すべてを国債に頼るのではなく恒久財源についても議論すべきだ」とか、「GDP比2%を機械的に追い求めるのではなく実効的な防衛力に資する内容の検討が必要だ」との発言があった程度だ。 要するに、日本の軍事体制を抜本的に強化していくことに全員が賛成し、違いが出た点は、財源議論無くして、軍事費のGDP比2%の達成を機械的に決定することに注意を促した程度である。浜田靖一防衛相は初会合の最後に、「中途半端なもの(軍事力)では降りかかる火の粉を払うことはできない」と、戦前の「国防大臣」まがいの発言をしたが、それは、この機を逃がすなら、中国や北朝鮮に(韓国にも)大きく遅れを取るとの危機意識の表れであり、軍事費増額は躊躇なくやれと事実上言うのである。 浜田の発言こそ、帝国主義日本を代弁する発言であり、基本的に岸田と同じである。 この「有識者会議」は12月初旬に提言をまとめるが、その中味は岸田や浜田の意向にそったものになろう。既に「専門家」らの会議要旨は出されており、「専門家」は「GDP比2%の防衛費は妥当」だ、「防衛産業へ補助金を支出すべき」だ、「ゲームチェンジャーとなる最先端技術の開発を急げ」と発言していることを見れば、来年度防衛予算案は相当に増額されるであろう。 ◇国家主導で防衛整備品の輸出を推進安保3文書と同時に進めているのが、「防衛装備移転三原則」の見直しである。既に、浜田防衛相は来年度の概算要求が固まった7月29日に記者会見を行い、安倍が14年に閣議決定した「三原則」を改定し、武器輸出はもちろん、海外拠点から第三国への輸出も解禁すべきと匂わせていた。 政府は、この具体化も3文書の一つであるNSSに掲載する方針を決めた(『読売』22・9・25)。政府は「防衛装備品」の海外輸出を積極的に進めるとの立場から、政府が外国との受注交渉に全面的に関与し、軍需企業への財政支援も導入するとのことだ。軍需品の輸出を図り、軍需企業の「経営基盤を強化」しなければ、「有事の継戦能力を維持する」ことが出来ないとの判断だ。 ◇帝国主義国家との闘いこそ重要政府による姑息な世論操作が行われる中、敵基地攻撃能力の実践配備をテーマにした「NHK日曜討論」が行われた(22・10・16)。その中で、維新(青柳)は「相手をどう怖がらせるか」が重要だと言い、立憲(玄葉)は「反撃能力は排除しない」と言い、国民(前原)は「他に手段がない場合には他国の基地を攻撃することは憲法上認められている」と言い、他方の共産(山添)は「先制攻撃は専守防衛の逸脱」と言い、れいわ(櫛渕)は「形を変えた改憲になり反対する」と述べた。 一見して分かるように、共産やれいわの主張は「先制攻撃」は専守防衛を定めた憲法違反だ、改憲になるというものである。安倍「国葬」反対の理由に、憲法違反を押し出したと同様に、彼らの主張はブルジョア憲法を「平和憲法」として崇める「市民」の立場からのものである。だから彼らは政府の策動を根本的に批判しないし、できない。 安倍政権時代から、政府は安保法制を強行採決して「憲法違反」の批判を弱めつつ、軍事体制強化を図ってきた。それは単に中国や北朝鮮の軍事強化に対応するというに留まらない根源的な理由があったからである。 日本は既に世界に、とりわけアジア諸国に「資本輸出」を拡大し、海外諸国に資本権益を築き上げ、海外労働者から多くの剰余価値を搾取し、さらに、これらの海外拠点から貿易を繰り広げる帝国主義国家になっている。 安倍が進め、現在岸田政権が引き継ぐ軍事力強化策は帝国主義国家に相応しい軍事体制を築こうとするものである。岸田政権は、強化した軍事体制をバックに、政治的にまたは軍事的に、アジアの覇権を廻って中国と争おうとしているのである。つまり、現在の米中対立や日中対立は、世界やアジアの覇権をめぐる帝国主義国家どうしの争いなのである。だから、労働者は岸田政権の軍事強化に断固反対するのである。またそうでなくてはならない。 世界の労働者と連帯を同時に、労働者は国際主義に立脚する。それは、世界の労働者と連帯し協同し、互いに自国の資本主義を打倒し、「労働の解放」を目指して闘うためである。帝国主義がのさばり、人々を相い戦わせ、苦しめる根本原因は世界が資本主義社会であるからだ。 自民党や維新らは中国脅威論を叫び、これを利用して、愛国・国家主義を扇動し、軍事強化策に労働者を巻き込もうとする。ブルジョア政党への脱皮を急ぐ共産党もまた、「自衛隊活用」論を打出し、さらに志位は政権に就くなら「自衛隊合憲の立場をとる」(5月)と明言した。だが、労働者はこれらのブルジョア・半ブルジョア政党の策動に組みせず、軍事拡大を暴露して闘うのである。労働者党と共に闘おう! (W) 【二面サブ】 中国への対抗心あらわ米国、「国家安全保障戦略」を公表金持ち優遇の点数稼ぎ岸田首相の掲げる「新しい資本主義」は労働者・働く者からだけでなく、ブルジョアからも不人気で、当てにしていた「安倍国葬」での点数稼ぎも不振で、岸田政権の支持率低下に歯止めがかからない状況である。看板の「新しい資本主義」を降ろすこともできず、新機軸もパッとしない岸田は、NISA(少額投資非課税制度)の拡充を押し出していた。 米バイデン政権は10月12日、ロシアのウクライナ軍事侵攻で作成が延期されていた、「国家安全保障戦略」(以下、安保戦略)を発表した。「安保戦略」はウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対して、今後軍事面で核兵器への依存を高める恐れがあると指摘する一方、中国に対しては、米主導の国際秩序への挑戦国として位置づけ、軍事的・経済的に競争に勝ち抜かねばならないと対抗心をあらわにしている。 「安保戦略」は中ロが共に独裁主義国家として「権威主義的な統治」と、米国を主導とする自由主義的な国際秩序に対して「修正的な外交」をとっているとし「中国に打ち勝ち、ロシアを抑制する」と主張している。 ロシアも中国も米国主導の国際社会に異を唱え、プーチンはかつての「ソ連」を思わせるようなロシアを中心とするユーラシアも含めた「多極的世界」を掲げ、中国は米国と国際覇権を争ってきた。これにたいしてバイデンは21年3月「暫定安保戦略」を発表したが、そこでの中国とロシアの位置付けは、今回の「安保戦略」では異なっている。 ロシアのウクライナ侵攻以前につくられた「暫定安保戦略」では、「核兵器の役割を減らす努力をすすめる一方、核抑止力の効果と信頼性を維持する。核軍備管理や軍事技術の開発において、ロシアや中国との対話を進める」と、ロシア、中国両国との「対話」が述べられていた。しかし、今回の「安保戦略」からは中ロとの「対話」との言葉は消えた。 ロシアについては、イラク戦争を踏まえ中国のような軍事力の「全般的な能力を備えていない」としつつも、「ロシアの通常兵力は弱体化し、核兵器依存が高まる可能性が高い」と分析している。通常の軍事力が弱まったとしても、ロシアは米国を上回る世界最大の核兵器保有国である。プーチンはウクライナに対して度々「核使用も辞さない」の発言を繰り返しているが、ロシアが通常兵力の劣勢を核兵器使用で挽回しようとする危険が現実となる可能性を指摘し、「今日の国際社会の平和と安定への差し迫った持続的な脅威」と批判している。 しかし、米国が最も警戒し、対抗意識を燃やしているのは中国である。「安保戦略」は、中国を「国際秩序を作り変える意思と能力を兼ね備えた唯一の競争相手」だと位置付け、「最も重大な地政学的な挑戦だ」と指摘している。その最も顕著なのはインド太平洋地域で、中国は「経済力、外交力、軍事力、技術力をますます高めている」とし、「地域で巨大な影響力を持ち、世界を扇動する大国になる野望をいだいている」と述べ、そしてこれに対抗するためには、米国の「最も重要な戦略的資産」=同盟・有志国との協力で対抗すると訴えている。インド太平洋地域では米・英・豪3カ国による協力(「AUKUS」)や日・米・英・印4カ国による「クワッド」の協力、ヨーロッパ地域などでは北大西洋条約機構「NATO」の協力がそれである。これは米国の世界における軍事的、経済的な後退を表している。 中国の軍事的発展は目覚ましく、9月に発表された米国防省の中国解放軍に関する年次報告によると、「すでに一部で米軍を追い越している」という。水上艦や潜水艦の数は約350隻と米軍の293隻を上回った。議会の超党派による諮問機関、米中経済安全保障委員会も「中国は35年までにインド洋や太平洋の全域で米国に対抗できる能力を備える」と予測している。 軍事力を支えているのは経済力であるが、中国の名目国内総生産(GDP)は30年代中ごろには米国と肩を並べると言われている。また、「一帯一路」構想のもとに資本輸出を拡大し、米国と世界を二分する経済圏構築を目指している。 米国一国では中国の帝国主義的な膨張を抑えきれなくなってきている。「安全保障戦略」として同盟、有志国との軍事的・経済的な協力が強調しているのは、国際社会の支配力を後退させてきた米帝国主義の巻き返しであり、国際覇権をめぐっての米国、中国の闘争の激化を表している。 松野官房長官は、「安保戦略」について「国際社会が直面する戦略的な競争や各国共通の地球規模課題に対し、アメリカがリーダーシップをとりながら、日本を含む同盟国や同志国と連携しつつ対応していく考えを示したほか、自由で開かれたインド太平洋の推進や日本防衛への揺るぎないコミットメントを再確認しており、高く評価する」と述べたが、日本も国際緊張を高めているのだ。 (T) <お知らせ>『海つばめ』11月の発行は13日、27日です。 |
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