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●1440号 2022年12月11日 【一面トップ】 軍事強国めざす岸田政権 ――軍事費GDP比2%超に 【一面サブ】 反撃能力で強まる軍備増強を許すな ――野党の政治はなぜ無力なのか 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 中国共産党への批判も ――爆発するゼロコロナ政策への不満 【二面サブ】 自民の救済を狙う ――被害者救済新法 《訂正とお詫び》 ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】 軍事強国めざす岸田政権――軍事費GDP比2%超に強大な帝国主義を目指す動きが加速している。岸田の「防衛力の抜本的強化」は中国とアジア覇権を争う資本の本性、帝国主義化した日本資本主義を代弁したものである。その岸田は防衛省と財務省に対して、軍事力強化と財源の「安定的な確保」を指示した。 ◇財源無いのに闇雲に突進岸田は浜田防衛相と鈴木財務相を招致し(11月28日)、軍事力強化を急ぐこと、仮想敵国の軍備増強に対応できる兵器の開発及び量産体制を築くと同時に、それらの研究開発や維持・改修を含めた恒久的な財源を確保し、27年度時点で軍事費がGDP比2%になるように指示した。要するに、岸田や防衛省の考えは、27年度時点の軍事費を約11兆円とするが、その後の増額も視野に入れているということだ。 そして、岸田の指示を基に政府は、23年度以降の「中期防衛力整備計画」を10年間の「防衛力整備計画」に改めて12月中に閣議決定する(総額はこれまで通りに5年間で明記)。既に、閣議決定に向けた調整が政権内で開始されており、政府は23~27年度の5年間の軍事費について、総額43兆円をめどとする算段だ。 現行の「中期防」では、19~23年度の軍事費は27・5兆円程度と過去最高額で記されてきたが、新たな計画では現行の1・6倍に膨れ上がる。 ところが、軍事費増額のためのカネは無く、これからカネの算段をしようというのであるから、泥縄式の岸田政権の野望は成功せず、財政負担が急増するだけだ。 ◇「埋蔵金」探しに躍起岸田の指示を受けた財務省は、軍事費GDP比2%に向けた財源探しに躍起になっている。 歳出削減については、岸田の軍事力強化に先立って、介護保険や健康保険などの社会保障費削減を決め、この間のコロナ対策費も来年早々に打ち切る方向を決めた。これらに海外援助費用などを含めた削減で軍事費の一部を捻出する計画だが、抜本的な歳出削減は不可能だ。 そこへ、急きょ出て来たのが特別会計だ。 特別会計は、租税収入などで予算を組み政府が管理する一般会計とは別に組織された会計であり、基本的に独立行政法人その他の国以外の者に移管されて事業が行われている。国債で集めた資金を原資にした低利子の貸し付けや民間金融機関による融資が難しい長期貸付などを行い、それらの「利ざや」で剰余金を生み出している(残高総額は1兆円強)。 この中で、よく知られているのが「国債整理基金」、「財政投融資」、「外国為替資金」、「エネルギー対策」、「年金」などの特別会計だ。 財務省はこれら特別会計の剰余金に目を付けているが、使ってしまえば復元させるのに長い時間がかかるのであり、過去には、外為資金の剰余金全額を一般会計に繰り入れたこともあったが、為替変動で消える可能性のあるカネに目を付けるなどは愚の骨頂である。仮に各特別会計剰余金を全部吐き出させてもわずか1兆円にすぎず、雀の涙にしかならないのだ。さらに、国公立病院が運営する独立法人が持つわずか1500億円の剰余金にまで悪魔の手を伸ばそうとしている。 このように岸田は、何よりも軍事費増額を優先させるのであり、「後は野となれ山となれ」の無責任な態度に終始している。 ◇萩生田は国債と増税が必要と安倍政権の番頭であった萩生田は、先月(11月)30日に都内で講演し、軍事費確保について「1年、2年は国債でやむを得ない」と述べ、これに付け加えて「将来的には安定した財源は確保しておいた方がいい」と「将来的な税負担」の必要を説いた。 萩生田や西田ら旧安倍派はMMT理論に賛同し、国家が無制限の財政膨張策を行っても財政破綻は起きないと主張し、第2次補正予算でも政府案より多い「30兆円以上」を要求し、土壇場で4兆円を上乗せさせた。だが、萩生田は軍事費増額については、なぜか持論を封印して将来の増税も説く。 国家の赤字が増える程、民間の黒字が増えると喝破するMMTにとって、軍事であろうとインフラや民間企業への投資であろうと、それらの区別はなかったはずだ。国家の赤字はそのまま民間部門の預貯金になることと同じだと言ったのではなかったのか。さらに、増税はインフレが爆発したら行うものだ、不況期に増税を行うのは犯罪的だとMMT派は強調してきたのではなかったのか? 萩生田の発言はMMTのいい加減さを暴露していると同時に、「埋蔵金」や歳出削減や借金依存では、強大な持続した帝国主義を作ることができないという資本の本音を吐露したものである。 だから萩生田は(岸田も)、ロシアのウクライナ侵攻や中国(国家資本主義)が米国と比肩する経済的軍事的大国にのし上がろうとする野望を利用し、中国とのアジア覇権を廻る闘いに勝利するために今が労働者に税負担を求める絶好のチャンスだと策動するのである。 (W) 【1面サブ】 反撃能力で強まる軍備増強を許すな野党の政治はなぜ無力なのか今月4日放送されたNHKの「日曜討論」は「迫る会期末―重要課題への対応は」というテーマで各党代表による議論があったが、その中で防衛費増額問題に関連して「敵基地攻撃能力」についての意見が表明された。野党の見解を中心に検討し、いかに軍国主義の深化と労働者は闘うべきか考えてみる。 与党側は安全保障環境が厳しくなっていることを強調し、「しっかりした抑止力をもちながら、国民の生命、財産、領土、領海、領空を守るための総体的な安全保障戦略が必要」(自民新藤)とか「安全保障の環境が変わった」、「世論調査をやっても国民の多くが防衛費を増やすのはいたしかたない、必要であろうと。こういうのが過半数を超えており、これはこれでやっていこう」(公明高木)と、軍備増強の必要性を主張した。 これに対して共産田村は「(防衛費は)額ありきではない」と、岸田の予算に積み上げる装備に米国製巡航ミサイル・トマホーク500発などの先制攻撃兵器が含まれていることを指摘、自公両党の敵地攻撃能力保有合意を批判したのはいいが、「安保法制のもとで、アメリカの軍事行動によって、日本が攻撃を受けていなくてもアメリカ軍と一緒に相手国を攻撃することが可能だという方向にかじを切っていけば、憲法9条に基づく日本のあり方をまったく変えて、周辺国の日本に対する見方も変えてしまう。これは軍事対軍事のエスカレーションも呼んでいく」と、日本がすでに軍事的にエスカレートしていないかのようだ。 共産は、軍備増強を日本が主体的に推し進めようとしていることを見ようとしない。その上、憲法に対して平和主義的な幻想から覚醒することなく、日本資本主義が帝国主義化している現実を理解できない。共産は軍国主義強化への恐怖心を持ちながら、労働者の階級的な闘いを前進させることはできないのだ。 維新の音喜多は「GDP2%まで引き上げるのに賛成」、「反撃能力の強化やサイバー防衛の強化、自衛隊の待遇改善を速やかに推し進めて行くべき」と、まるで与党の立場であり、強調する違いは「防衛費増を理由とした増税には明確に反対」ということだけだ。 国・民の大塚は「防衛力の強化は現下の環境では理解できるので、方向としては同意できる」としつつ、有識者会議が防衛政策に関して「受益者負担」という言葉を使ったということに異議を申し立て、「与野党で向き合って、どういう強化をするのか、その財源をどうするのか、これは政治が決めることだ」、「方向としては賛同するので、政治が逃げるのではなく、国民の皆さんと向き合って全てを決めていくべき」と、軍拡の方向に賛成する無責任さを臆面なく晒している。 立・民の長妻はまず初めに「私どももメリハリつけた防衛力強化は必要だと思っている」と、軍拡賛成を表明し、「特にインテリジェンス能力(情報戦略のことか――筆者)、日本は非常に遅れているので、これを中心にした増強は必要だ」と、提案型野党の面目躍如と自慢したいのか、ブルジョア軍隊が労働者に対して敵対的存在などと微塵にも思わないのだ。 長妻の注文は、「始めから2%、11兆円下さいと言って、中身はこれからというのはあまりにおそまつ」で、「積み上げて、合理的な兵器をあるいは機器を選んでいく」べきだ、「一番大きな問題はFMS(有償軍事援助)」で、「アメリカから提示された金額や納期を日本はそのまま受け入れ、購入している」、「これによって相当兵器体制が歪になっている」「これを大きく見直す」ことが必要だ、「そして有識者会議では、初めは法人税と書いてあった」、それが経済界の反対で、すぐに降ろしてしまったと憤慨して見せるが、「社会保障費自然増の問題もありますから、トータルでどうやって負担するのか、防衛費だけじゃなくてトータルで議論」してほしいと言うだけだ。 長妻には岸田政権の軍国主義強化への危機意識もなく、最後のまとめで、「問題山積ですけれども、本当にいい法律を作る、いい結論を出す。最後は総理のリーダーシップに期待しています」という発言に、立・民の自民追随政治は証明された。 れいわの大石は「防衛費の増額も反撃能力の保有も国民を守るためではありません」と、ばっさりと切り捨てたのはいいが、それは「アメリカのために日本が集団的自衛権の行使をできるようにするためのもの」と評価したり、「自国民を飢えさせない経済政策、そして徹底した平和外交、これが実現できる政権を誕生させるべく有権者の皆さんには立ち上がっていただきたい」と抽象的に呼びかけるだけで、「(戦争で)儲かるのは権力者と資本家だけ」と言いながら、労働者の立場を一貫できないのだ。 現代が帝国主義的対立の歴史的段階にあることを認識して、資本の支配の全世界的な克服を目指し、まずは岸田政権を追い詰め打倒して歴史を切り拓いて行こう。(岩) 【飛耳長目】 ★W杯スペイン戦の三苫の際どいクロスは、VARも使ったルールで救われた。ルール通りだがルールにもいろいろある★終戦直後、闇米を拒否して餓死した山口良忠氏は、食管法違反を裁く判事だった。この時代、庶民も役人も闇米を頼りに生きていたのだが、それを取締まる側が闇米を食べることは許されないと拒んだのだった。配給食糧は2人の子供に与え、粥汁と庭で育てたイモだけを食べ、親族の食事招待や食糧援助も断ったと言う。法律は明確に規定され適用されるべきだが、実情に沿わなければ悪法になるしかない★一票の格差が最大3・03倍の7月参院選に「違憲」「違憲状態」の判断も出たが、高額な供託金制度を含め、抜本的な改正なしには、民主主義の空洞化は必至だ。衆院の「10増10減」の成立も、格差是正には程遠い★旧統一教会の被害者救済法案が審議中だ。マインドコントロールの定義さえできず、創価学会を始めとする宗教勢力に忖度した消費者契約法のわずかな改正でお茶を濁している★宗教は、人間を支配する自然や社会的な力に対する非合理な畏怖や無力から発している。「良い宗教」「悪い宗教」の区分けに頭を悩ます全ての政党は、「信教の自由」を絶対視するが、労働者は、宗教法人を治外法権に置くような特権の制限を要求する。 (Y) 【2面トップ】 中国共産党への批判も爆発するゼロコロナ政策への不満中国では11月25日~27日にかけて、学生や市民のゼロコロナ政策に反発する集会・デモが広がった。ロックダウンによって市民の生活・活動を一方的に制限する習政権に対する市民の積りに積もった怒りの噴出であり、自由な発言・行動を弾圧してきたことに対する反発・抗議の現れである。 ◇広がる抗議デモ抗議行動が広まる発端となったのは、10月24日の新彊ウイグル自治区の集合住宅による火災事故による住居者19名の死傷事故であった。ゼロコロナ政策による封鎖措置で消防車が入れず、また住宅が封鎖されているため居住民が外に脱出することが出来なかったために多くの犠牲者が出た。これに対してウイグルでは政府に対する大規模な抗議が行われた。 この事故の録画はSNSなどで全国に拡散され、各地で政府に抗議する集会やデモが広がった。この春、2カ月間の都市封鎖の対象とされた北京では、26日ウルムチ通りに数百人の市民が集まって火災の犠牲者の追悼集会を行い、追悼後、参加者は白い紙を手にして、「報道の自由を!言論の自由を!」などと叫びデモを行った。なかには「習近平と共産党の退陣を」をもとめ、「独裁はいらない」とする声があがった。 デモ隊が掲げた白い紙は、政府の政策に異論を唱えるなど自由な発言が禁止されていることへの抗議の意思を表している。 また習の出身校である精華大では、数百人の学生が集まり抗議集会を開催、「いま抗議の声をあげなければ生涯後悔する」などと切実な訴えも出された。 27日、広州では数週間にわたって封鎖措置が続いている地区で数百人が集結。「封鎖措置はいらない。自由が欲しい」と訴え、デモが行われ、白い防護服を着た警官隊と衝突を繰り返した。 こうしたデモは、27日までに北京、広州、武漢などに広がり、数千人が抗議デモを行った。抗議行動は少なくても全国10カ所を超えたといわれる。 ◇共産党独裁政治への不満若者たちからは「習近平と共産党の退陣を」というシュプレヒコールもあった。公然と共産党支配を非難し、「退陣」を迫る声が現れたのは、独裁政治に対して「民主化」を求める大規模な学生、市民のデモが行われ、軍隊によって鎮圧された1989年の「天安門事件」でもなかったことだ。 ゼロコロナ政策は感染者が出ればその地域全体が長期間封鎖され、学校、病院など公共施設も閉鎖、食品や医薬品販売などの商店も営業が停止され、住民は外出もできず住宅に閉じ込められる。住民は毎日の食糧支給サービスも滞る場合もあり、病人、高齢者などは命の危険にさらされるといった苛酷な生活を強いられてきた。また、濃厚接触者は遠方の隔離施設に強制隔離させられるといったこともおこなわれた。 こうしたゼロコロナ政策に対するデモ隊の激しい怒りは、労働者・市民に沈黙を強い、政府の政策を押し付け、それに異議を唱える者に対して弾圧する共産党の独裁政治に向かったのである。 ゼロコロナ政策は、習政権にとって世界に誇るべき政策であった。コロナが世界的に拡大していくなかで、中国では世界に先駆けてコロナは収束に向かった。習は2021年、国外で数百万に上るコロナによる死者を出しているにもかかわらず、中国では「国民とその命を優先し、連帯性と強靭性を発揮してコロナとの闘いに勝利した」と宣言した。そして習は中国の共産党による独裁政治を欧米による「民主主義」よりも「制度的な優位性を示す」と内外に誇示してきたのである。 しかし、中国ではコロナのオミクロン新株が出ると感染者は再び増加し、中国政府の発表では、11月24日の時点で、新たな感染者は3・1万人とこれまでの最高を記録した。これまでは4月3日の2・9万人が最高であった。 欧米、日本などが「ウイズコロナ」政策に転換する中で、10月の党大会で、習はゼロコロナ政策を「揺るぎなく堅持する」ことで、「国民の命と健康を最大限に守れた」「経済的社会発展は大きな成果を上げた」、「政府は重大な感染病の防止・治療体制と応対能力をさらに強化し、感染拡大を有効に抑制する必要がある」との発言に見られるように、これまでのゼロコロナ政策を継続してきたのである。 だが、収束したはずのコロナ感染が再び拡大し、ゼロコロナ政策の継続は市民らの激しい怒りと反発を引き起こした。ゼロコロナ政策によって行動が制限されたばかりではなく、生産、物流が滞り、経済状況が悪化、仕事を失うなど生活困難が広がった。失業率は上昇し、若い世代の失業は約2割に上った。こうした中で共産党支配にまで怒りの矛先が向けられる声も現れたのである。 反発が共産党政権にまで及び、さらにはゼロコロナ政策が経済に大きな打撃を与えたこともあって、政府はゼロコロナ政策の緩和を余儀なくされた。 コロナ対策を担う孫副首相は、ワクチン接種の普及や変異株オミクロン株の病原性の低下、防疫の経験の蓄積によって「わが国の防疫対策は新たな局面を迎えている」と緩和を指示。これを受けて北京では、地下鉄や路線バスなど公共交通機関の利用者に対し、これまで求めていた48時間以内のPCR検査の陰性証明の提示を求めない、他の市でも商業施設や飲食店など公共の施設に入る際、24~72時間以内の陰性証明の提示が求められてきたが、証明書の提示を不要とする等、緩和の動きが広がっている。 しかし、ゼロコロナ政策については触れていない。なぜならゼロコロナ政策を転換することは中国の「制度的優位」の証と誇ってきたゼロコロナ政策の誤りを認めることになるからであり、反政府行動を助長しかねないからである。 政府はゼロコロナ政策の修正を行いながらも、他方では「社会秩序を乱す違法犯罪行為を断固取り締まる」と政府への抗議行動を敵視している。 ◇労働者への犠牲のしわ寄せデモの主体は都市の若者が中心であった。しかし、不満や怒りは都市の下層労働者にも広がっている。 国際ニュースナビ(NHK10・7)は上海の感染者の隔離施設で働いた農村出身の労働者の話を伝えている。 そこでは数百人から千人近くの「農民工」と呼ばれる貧しい農村からの出稼ぎ労働者が働いている。隔離されている人たちに食事を届けたり、部屋のゴミを回収したり、時には重い荷物を長時間運ぶのが仕事である。隔離施設では、すぐ隣にある専用のゴミが散乱する不潔な仮設のプレハブ宿舎に泊まらされた。仕事を始めて10日目、自分もコロナに感染、2週間近く隔離施設で療養、回復後仕事に復帰しようとすると、突然の解雇通告。「私は懸命に働いていました。それなのに突然、『もう来なくていい』と、それだけ。あまりにも不公平」、会社側の使い捨てに憤りを抑えられない、という。 また米アップル社のiphoneを受託生産している台湾・鴻海が経営するフォックスコン・テクノロジー・グループの中国拠点(河南省鄭州市)で、コロナ蔓延によって外部から遮断された工場封鎖に耐えながら働いてきたのに、賃金が約束通り支払われなかったとして数千人の労働者が抗議行動に立ち上がり警官隊と衝突、40名が逮捕された。 労働者は、コロナ感染者が増えたとして、食堂は閉鎖され、24時間以内の陰性証明携帯を義務化など厳しい労働環境で働かされた。感染は一向になくならず、医薬品も不足するという状況のなかで、工場の寮に寝泊まりして働いていた大量の出稼ぎ労働者は「こんな恐ろしい環境では働けない。早く、安全な実家に帰りたい」といって、フェンスを壊して工場からから脱走した。彼らは数10キロ、中には百キロにも及ぶ道のりを歩いて帰宅したという。(11・27読売新聞オンラインより) 中国政府は、「共産主義」を名乗りながら、実際には隔離施設労働者や鴻海工場のような劣悪な労働環境を許している。それは中国が労働者の国家ではなく、資本の国家(国家資本主義の国家)だからである。 ゼロコロナ政策に抗議するデモや鴻海工場の労働者の闘いは、中国が国家資本主義社会であり、独裁政治の矛盾の現れでである。北京や広州などの抗議デモは労働者解放をめざす意識的な意識的・組織的な闘いではなく、自然発生的であり、また労働者の怒りは習政権反対としてはまだ現れてはいない。しかし、中国がブルジョア的な社会、経済体制である限り、労働の解放を求める闘いは必至である。 (T) 【二面サブ】 自民の救済を狙う被害者救済新法岸田政権は12月1日、統一教会の問題を受けた被害者救済新法案を閣議決定し、衆院に提出した。11月18日に提出済みの、霊感商法の被害救済に向けた消費者契約法改正案と被害を未然に防ぐ体制を強化する国民生活センター法改正案と合わせて、10日までの臨時国会で成立させたいという。しかし新法にしろ、既存の法改正にしろ、その中身は統一教会そのものの存続を前提にして、いかに被害を防ぐ、あるいは、被害者を救済するかのものであり、被害者救済、被害防止は決定的に不十分である。岸田は、自民党と統一教会との腐敗した癒着から出てくる問題を、救済新法制定に野党を巻き込み、切り抜けようと腐心している。 ◇救済新法制定で救われようとする自民12月1日衆院に提出された被害者救済新法案は、統一教会が行ってきた悪質な寄付の勧誘を規制し、被害救済を図ることを目的としている。法案で、宗教法人の「配慮義務」としてあげられているのは、寄付に当たってマインドコントロール下に置かない、親族の生活の維持を困難にしないようにする、正体隠しをしないなどであり、「禁止行為」には、霊感で不安をあおり個人を困惑させること、そして借入や資産の処分によって資金調達を要求すれば、被害者からの「取り消し可能」などが盛り込まれている。しかしこれらは、すべてこれまで統一教会が行ってきた「社会的に問題のある」行為である。 しかしここまでいうのであれば、そもそもこのような悪質な行為を行ってきた統一教会をそのままにしてよいのかということになる。悪質な行為を行ってきた統一教会をそのまま宗教法人格にしておくことこそが問題である。 しかし自民党は、教団の解散請求の前提となる質問権の行使に慎重であり、その要件に「民法の不法行為は入らない」、「違法性と組織性がしっかり確認されることが重要だ」(岸田10月17日)、としていた。その後調査権行使を決めたが、解散命令請求には踏み込まず避けている。 岸田・自民党は、世論の風向きが悪いと、統一教会を規制する方向に変更し、一貫していることは、いかに自民と統一教会との癒着関係を隠蔽するか、自民を守り自らを救済するかであり、被害者の救済が課題ではないのである。 ◇統一教会と自民党の底知れない癒着統一教会が、自民党の政治と深く結びついていることは、今年の参院選や去年の衆院選の際、統一教会の関連団体が自民党議員に対して「政策協定」といえる「推薦確認書」を提示し、署名を求めていたことにも現われた(朝日10月20日)。岸田は、統一教会が自民党議員に「推薦確認書」への署名を求めていたことについて、20日に「実態把握に努める」と言いながら、24日には「各議員が点検し、説明すべきことだ」とし、またしても党の関与と切り離そうとしている。 ◇信教の自由ではなく、宗教を生み出す社会の変革を救済新法制定に当たっては、憲法の保障する財産権や信教の自由を抵触しないようにするというのが、与野党協議の要となっている。しかし、統一教会は財産権や信教の自由を盾に悪質な行為を行ってきており、自民党はそれを黙認し、支援し、利用してきたのであり、この癒着の問題を自民・岸田は拭い去ることはできない。 単に被害者の救済ではなく、統一教会と癒着し、被害者を放置した自民党政治こそが問題である。岸田政権は、信教の自由を隠れ蓑に宗教を利用し、権力維持に腐心している。労働者は、岸田政権との階級的闘いを進めていかなければならない。 (佐) 《訂正とお詫び》 1437号【飛耳長目】29行目を訂正いたします。申し訳ありませんでした。 (誤)大久保や伊藤、山県らが |
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