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●1441号 2022年12月25日 【一面トップ】 有事を扇動する安保3文書 ――自衛の名で敵基地先制攻撃すると宣言 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 軍事費増は5年間で43兆円 ――財源は増税も国債も 【二面サブ】 被害者救済新法成立 ――真の解決は階級闘争と共に 《校正》1440号(前号) <お知らせ> ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】 有事を扇動する安保3文書――自衛の名で敵基地先制攻撃すると宣言岸田政権は去る16日(12月)、「国家安全保障戦略」(NSS)など「安保3文書」を閣議決定し、軍事強国化の道を突き進み始めた。軍事費確保のために、所得税増税を行い物価高騰で苦しんでいる労働者に向かって、さらなる「国民の覚悟」を強いている。「安保3文書」に書かれた岸田政権の狙いは何か。 ◇敵基地攻撃の「3要件」「安保3文書」の最上位がNSSであり、これは他の文書を規定すると共に、外交文書でもある。このNSSで敵基地攻撃能力について定義し、「国家防衛戦略」で次の様に書いている。 他国(中国や北朝鮮を想定)から日本への「武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイルなどで攻撃された場合」、「武力の行使の3要件」に基づき、「相手の領域において反撃する」能力であると。 「武力攻撃が発生」とは、直接に日本が被害を受けたことを意味しない。99年に野呂田防衛庁長官が国会で答弁したように、相手国が「武力攻撃に着手したとき」を指すのであり、日本(軍)が被害を受けたことではない。相手が実際に攻撃していなくても「着手」したと判断すれば「武力攻撃」と見なすということだ。 要するに、軍隊には戦前から「攻撃は最大の防御である」との格言があり、こちらが被害を受ける前に相手を叩くという常套手段を脚色して述べているだけなのだ。 相手国に反撃するための「武力行使の3要件」についても、適当にさじ加減がされている。 「3要件」とは、「日本への武力攻撃または日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされるなどの事態で」、「他に適当な手段がない場合」、「必要最小限度の実力行使に限って自衛隊は武力行使ができる」という、極めて曖昧な内容である。 この文書で謳う「密接な関係にある他国」とは、米国のことだとマスコミは解説するが果たしてそうか?「密接な」「他国」とは、台湾もまた含んでいるのは明らかであろう。日本政府は近年、何よりも中国による「台湾統一」を警戒し、牽制してきたのではなかったか。 ◇岸田の「歴史的転換点」岸田や防衛省は「専守防衛」を崩さないと言いながら、実際には、仮想敵国とする中国や北朝鮮が日本へ、また米国や台湾などの「密接な」「他国」に対してミサイル攻撃に「着手」したと見なせば、先制攻撃すると宣言するのである。 先制攻撃が可能な軍事体制の必要性について、NSSは中国の海洋進出や台湾への威嚇、ロシアのウクライナ侵略、また北朝鮮による核開発やミサイル発射実験などの脅威が増大してからだと説明する。確かに、中国やロシアや北朝鮮は「国家資本主義」(独裁的な資本主義体制)であるゆえに、帝国主義的である。 しかし、岸田らが中ロなどの脅威を煽り、高度な軍事化を進める本当の狙いは別にある。それは以下のことに帰着する。 世界秩序を守るためにと、米国は第二次大戦後の世界一の大国として、〝世界の憲兵〟として、自国や同盟国にとって脅威だと判断すれば、身勝手に他国を先制攻撃してきた(南ベトナムやイラクやアフガンを想起せよ)。 だが近年、中国などの台頭によって、米国の軍事的経済的な影響力は相対的に低下し、資本家国家の世界秩序は動揺し、流動化してきた。 とりわけ中国の影響力は巨大になり、このままでは、アジアに築いた日本の資本権益を守れないと岸田らは危機感を覚えるのである。 ゆえに、岸田や防衛省は、米国やNATOと共同して、中国や北朝鮮からの脅威から「防衛」するのみならず、アジアの護衛官の役割も果たすことを決意するのである。 ◇台湾有事にも関与するとだからこそ、岸田や防衛省は台湾を重視するし、台湾有事を避けて通れないと考えるのである。 安倍が美化して止まなかった戦前の天皇制軍部が支配した台湾は、朝鮮半島や中国へ侵攻するための重要な拠点であったが、戦後も天皇制軍国主義者で「反共」の岸信介や孫の安倍晋三にとって、台湾は「地政学」上の重要な戦略地域であった。だから、安倍などは、台湾を〝同胞〟であるかに公言してきたのである。 中国との貿易量が拡大し、日本にとって中国は米国と並ぶ最大の貿易相手国になったが、安倍やその後の菅政権のもとでも台湾重視の「地政学」は続いてきた。 その台湾重視をさらに強め、中国とのアジアにおける覇権争いを剥き出しにするきっかけとなったのが、トランプに始まりバイデンが強めてきた「中国包囲網」である。 菅義偉政権下で、日米外務・防衛相による「2プラス2」が開かれた(21年3月)。 この時、岸信夫防衛相は米国のオースチィン国防相に「台湾有事では緊密に連携する方針」を確認。台湾支援に向かう米軍にどのような協力が可能かを検討すると約束したのである。 これを受けて菅とバイデンの首脳会議が翌月に開かれ、「台湾海峡の平和と安定の重要性」の文言を、72年に台湾と「断交」して以来、初めて明記したのだ。要するに、日米同盟を「日本の防衛」から中国に対抗する軍事同盟へと変えたことを意味したが、立憲民主ら野党の反対は無く、与党も野党も、またマスコミの多くも中国脅威論で同調し共鳴し出したのである。 こうした流れがあったからこそ、岸田政権による敵基地先制攻撃が可能な「3文書」の閣議決定ができたのであり、「他国」の中に、米国だけではなく台湾も含めることができたのである。 萩生田が去る10~12日にかけて台湾政府を訪問した際に、「台湾有事は日本の有事」だと公言した意味はもはや明らかであろう。単に台湾友好を深めるためのお世辞としてではなく、台湾が中国から武力併合の攻撃を受けた時には、日本軍も共に戦うことを約束したのである。それがまた、日本の総資本の利益に繋がると考えるのである。 ◇市民主義では闘えない労働者にとって、現在の焦眉の課題は日本の軍事大国化・軍国主義化と闘うことである。共産党やれいわ新選組などは、敵基地攻撃能力保有を「憲法違反だ」、「米国のためだ」と非難している。果たしてそれは正しいのか。 第一次安倍政権時代、国家による教育現場に対する「日の丸・君が代」強制の嵐が吹き荒れた。 これに対して、共産党や日教組などは「法律が無く憲法違反」と批判したが、その後、「日の丸・君が代法」が国会を通過するや、彼らの論理は破綻し、彼らの〝闘い〟は消えて無くなった。それを岸田等はよく知っているのである。共産党やれいわ(また新左翼急進派の一部も)の憲法や法律を盾にした形式的な批判は、世界の帝国主義的対立が激化する今日、全く通用しない。 安倍がそうだったように、岸田や萩生田らも、米中対立――世界への資本輸出と資本権益獲得競争、市場囲い込み競争、関税引上げによる中国輸入製品の制限と中国の報復関税、「経済安保」による先端技術の中国流出防止、軍事的対峙、友好国囲い込みと勢力圏拡大競争など――を日中対立と捉えるし、「台湾有事は日本の有事」とブルジョア的に考えるのである。 安倍政権時代、空母を次々と就役させ、攻撃的な実戦部隊を増強し、さらに長距離ミサイルや攻撃型大型戦闘機を導入しようと計画してきたのは、安倍が現在の米中対立、日中対立を〝想定〟し、準備していたからである。 第一次安倍政権の頃には、日本からの海外直接投資(資本輸出)が急増しており、日本は前にも増して帝国主義国家に転化して行ったが、第二次政権を含めた安倍の軍事拡大路線はこうした腐朽した日本の帝国主義化の反映であった。 世界(とりわけアジア)に資本輸出を増やし、海外の労働者を5百万~6百万人も雇い、搾取し、日本に剰余価値(高利潤率で)を還流し、また現地から世界に製品輸出を行う巨大な資本権益を守るために、悪党の安倍は日本の総資本を代弁し行動していたのである。 共産党やれいわ等は、安倍の本性を知らない。 同時に資本主義の本質を理解していないし、帝国主義が資本主義から発生することさえ知らない――ケインズとマルクスを融合する共産党、ケインズ経済の亜流であるMMTを信奉するれいわ等の醜態を見よ! そして、帝国主義を基礎として軍拡が強化されることについて、仮に知識として知ってはいても、市民主義に寄って立つために、平和憲法が脅かされている、米国のための戦争に巻き込まれると非難するに止まるのである。 そして彼らは今なお、日本を米国の「半植民地」(特に共産党)に位置付ける。それは、日本が自立した帝国主義大国になった現実を見ようとせず、敢えて目を覆い逸らすからである。 従って、彼らは米国からの独立や自立を要求する「民族主義」の闘いの先頭に立つのである。彼ら市民主義者は、安倍や岸田らを突き動かす〝真の動機〟を理解できず、上っ面の批判しかできないのである。 いくら頭数を揃えてにぎやかな運動ができたとしても、市民主義の運動は無力であり、労働者の希望の星には絶対になれないのである。挙げ句には、共産党の志位が「自衛隊活用論」を打出したように、岸田や資本の立場に犯罪的に急接近していくのである。 こうした共産党やれいわの主張は、岸田にとって痛くも痒くもなく、岸田は安心して安倍がやろうとしてやれなかったことを推進するし、また実行できるのである。 ◇労働者の政治闘争を発展させよう!岸田政権が策動する有事体制は、確実に国家の借金を増やし経済的困難を招くこと、労働者(将来の労働者も)の犠牲において行われること、国家間の対立の拡大と愛国主義や国家主義を醸成すること、ひいては労働者同士を敵対させることに繋がる(NSSでも愛国心を強調している)。 労働者は、共産党やれいわ等の安直で無力な市民主義の政治ではなく、岸田の策動とその背後にある〝真実〟を見抜き、労働者の政治を対置して、自民党政権の軍拡政治と断固闘うのみである。労働者党と共に階級闘争の一環として闘おう。 (W) 【飛耳長目】 ★世界が熱狂したサッカーW杯カタール大会が終わった。カタールは中東の小国だが原油と天然ガスで潤う「金満国家」である。首長のサーニー家や幾つかの部族長がその利益を占有する★GDP一人当たりは約6万2千ドル(世界10位/2021年)と高く、所得税はなく、電気ガス、医療、教育は全て無償。但し、それは人口約270万人のほんの1割ほどのカタール人だけのことである★日中は40℃、夏場は50℃にも達するので、カタール人は涼しい室内で働き、灼熱の元で働くのは外国人労働者である。カタールは豊富な資源輸出と彼等への「奴隷的」搾取で成り立つ国だ★W杯開催決定から、スタジアム(7つ)、空港、地下鉄等を建設してきたが、それらはインドやネパールなど南アジアの出稼ぎ労働者によるものだ。W杯までに少なくとも6500人以上が死亡した★高所からの落下や生命維持に危険な灼熱の元での熱中症、心不全、呼吸器不全等の死亡が圧倒的に多い。雇用主からパスポートを取り上げられ、例え虐待を受け過酷な労働を強いられても転職や出国は許されない★「ドーハメトロ」を建設した日本の大手建設資本(大林組、竹中工務店、大成建設等)も、これらの「奴隷労働」に加担したことを世界の労働者は決して許さない。 (義) 【2面トップ】 軍事費増は5年間で43兆円――財源は増税も国債も岸田政権は敵基地攻撃を含む大軍拡=軍事費GDP比2%実現に向けて、2023年度から27年度の5カ年間の軍事費増額の財源を明らかにした。その内容は増税も国債(借金)もであり、労働者、働く者の生活への負担として、一層重くのしかかってくるのは必至である。 ◇一時しのぎの寄せ集めの財源軍事費増額の財源の項目を見てみよう。 政府は2027年度時点で増税額として4兆円程度を見込んでいる。その開始時期は24年度とし、27年度に向けて段階的に増税するという。第2は、剰余金で0・9兆円。第3は税外収入等で4・6兆円。第4は決算剰余金で3・5兆円。第5は歳出改革で3兆円強。第6は国債で1・6兆円である。合計17・6兆円。現在の軍事費25・9兆円と合わせて5か年で43兆円という計算である。 次にそれぞれの中身を詳しく見よう。 増税は、所得税、法人税、たばこ税の3つである。 まず所得税について。現在被災害支援としての復興財源として税額に2・1%上乗せしている「復興特別所得税」を転用する仕組みだ。13~37年の25年間で約7・5兆円の復興財源を確保することになっているが、東日本の災害被災地への支援を減らさないように25年の期間を延長することによって、2・1%の税率を引き下げ、その分を軍事費の財源に使おうという計画である。 岸田は「個人の所得税の負担が増加するような措置は行わない」と述べている。しかし、復興特別所得税の一部を軍事費に転用するために、25年の期間が延長されるのだから、実質的には転用分を所得税として負担することになる。 法人税は、大部分は大企業が負担することになる。法人税の21年度の税収は約13兆円。仮に6%を上乗せすると単純計算で約8千億円になる。 たばこ税については、巻きたばこに比べて低税率の加熱式たばこを1本につき3円程度の引上げが予定されている。 剰余金で主なものは、特別会計の剰余金である。為替介入に備える「外国為替特別会計」の剰余金である。 「外国為替特別会計」については、剰余金の原則7割は一般会計に繰り入れられることになっている。21年度は米国国債などの運用益で2・2兆円の剰余金が出て、22年度の一般会計に1・4兆円が繰り入れられた。22年度は米国の金利上昇で運用益が増えることが予想される。さらに円安・ドル高のために円建て収入は膨らむ。さらに円安・ドル高によって特別会計の外貨資産の含み益も出ている。 しかし、これら剰余金の増加や含み益は主にドル高という為替レートの上昇によってもたらされたのであって、ドルの為替レートが下がれば剰余金や含み益は縮小するのであり、「安定的」な財源とはいえない。 国債で調達したカネを官民ファンドなどへ低利で融資する「財政投融資特別会計」の積立金(1・1兆円)や予備費(700億円)の一部転用も予定されている。この特別会計の外資には円安・ドル高によって含み益がでており、これを軍事費に充てようというのだ。予備費は近年は使われていないので軍事費に充てるという。 その他、積立金の転用については、病院を運営する2つの独立法人、国立病院機構と地域医療機構の積立金(計1500億円)も転用に予定されている。コロナ患者の受け入れが見込みよりも少なく、病床確保の補助金が余ったというのがその理由である。 以上のほかにも決算剰余金3・5兆円を見込んでいるが、決算剰余金の半分は国の借金(国債)の返却のために充てられ、残りの半分は補正予算に充てられることになっている。これを軍事費に転用することは、借金の返済を遅らせ、補正予算の財源をなくすことであり、国の借金を膨らませ、国債依存をさらに高めることにつながる。 また歳出改革で3兆円強もの財源を見込んでいるが、一体どの歳出を減らそうというのか。政府は、少子高齢化が進み社会保障関係の国家支出が膨らむとして、既に社会保障の医療費で後期高齢者の窓口負担を2割負担へ、介護利用料の原則2割負担などを行ってきたが、軍事費の財源確保のために国家支出を削減するとなると、そのしわ寄せは労働者、働く者に行きかねない。 ◇軍事費増強の行き先は国債膨張軍事費増強の財源について、岸田は「いま生きる国民が自らの責任としてしっかり重みを背負って対応すべき」と強調している。しかし、実際に財源計画は予備費の転用や国有財産の売却、特別会計の運用益、積立金の転用など一時的、あるいは不安定な財源を寄せ集めて辻褄を合わせたものであり、これ等が減少するか無くなれば、借金(国債)依存になることは目に見えている。 増税については、自民党内の反発が強く、結局は実施時期については決められず、先送りとなった。 増税に反発したのは自民党の最大派閥である安倍派の議員らである。高市経済安全保障相は法人税の増税を財源としたことに対して、「賃上げマインドを冷やす発言を、このタイミングで発信された総理の真意が理解できない」と批判、西村経済産業相も「投資や賃上げを阻害しない、国民全体で負担という考え方に基づき、バランスの取れた議論を」と批判した。 彼らの批判の目的は、大企業への負担をできるだけ軽減することであり、来年の統一地方選に向けて増税を持ち出すのは自民党の票を減らすことになるという利己的な下心が透けて見える。 しかし、軍備拡張を声高に叫んできたのは安倍派ではなかったか。安倍は軍備拡張の財源は「防衛国債」でと言ったように、彼らの本心は借金による財源確保ということにあるのだ。 岸田は、自衛隊の施設である隊舎や倉庫は建物だから建設国債の対象となると言って、戦後初めて軍事費に建設国債を充てることを決めた。 だが、軍隊の施設と橋梁などインフラ施設とは根本的に性格が異なる。軍隊の施設は戦争=破壊、人殺しのためであり、社会のために有益なものではない。法律がインフラの建設に借金を認めているのは、社会に有益な施設として残るものであるとされているからだ。 自衛隊の隊舎や倉庫は物として残るから建設国債が認められるというなら、戦艦も国債でという理屈もでてくる。自衛隊の隊舎や倉庫建設の財源として国債を充てるという方針は、軍隊の費用を借金で賄うことを禁止した戦後の財政の根本原則を覆す反動的なものである。 ◇大軍備増強は経済破滅・生活破壊への道1947年施行された財政法7条は、「国の歳出は、公債又は借金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」と規定している。これは財政支出の根本原則であり、戦中、戦後の激しいインフレの苦い経験を踏まえたものである──これは建設国債、特例公債(赤字公債)によって骨抜きにされてきたのであるが──。 戦争の初期に設けられた「臨時軍事費特別会計」は会計期間を区切らず国会の関与のないままに国債発行を続け、敗戦までの8年余りの間に借金を膨らませ続けた。国の債務残高は敗戦直前には国民総生産(GNP)の200%を超えるまで増大した。戦争による生産設備の破壊も加わり、敗戦直後には激しいインフレに見舞われ、国債は紙切れ同然となったのである。 現在、国の借金は1千兆円を超え、GDPの2・5倍にも上っているが、この上さらに軍事費の国債発行を認めることは、財政を破綻させ、経済破滅・生活破壊をもたらすことになるだろう。 大規模な軍備増強に突き進む岸田政権打倒するために、労働者は立ち上がろう。 (T) 【二面サブ】 被害者救済新法成立真の解決は階級闘争と共に12月10日、統一教会の問題を受けた被害者救済新法「寄付の不当勧誘の防止等に関する法律」が成立した。7月8日の安倍元首相殺害事件以降、自民党と統一教会との癒着関係が次々と明らかにされ、統一教会を利用してきた自民党に対する労働者の怒りが増大した。安倍国葬強行で岸田内閣の支持率はさらに低下した。岸田は起死回生を狙って被害者救済新法を成立させた。 ◇救済新法の成立新法は統一教会が行ってきた悪質な寄付の勧誘を規制し、被害救済を図ることを目的としている。法案の「配慮義務」として、寄付に当たってマインドコントロール下に置かない、親族の生活の維持を困難にしないようにする、正体隠しをしないなどで、「禁止行為」には、霊感で不安をあおり個人を困惑させること、そして借入や資産の処分によって資金調達を要求すれば、被害者からの「取り消し可能」などが盛り込まれた。 これは当初新法制定に後ろ向きだった岸田、創価学会を支持母体とする公明が一貫して消極的だった自公政権が、被害者や世論の声に押されて、政権支持のために仕方なく制定したものである。 野党は衆院に提出された与党案に対して、「配慮義務」を「禁止行為」にすべきなどと主張したが、与党は「十分配慮しなければならない」という修正で、野党の合意を引き出した。 岸田は成果を強調し、野党は共闘の成果と言うが、新法が本当に被害者を救済し、統一教会の悪質な献金強要を防ぐかは疑問である。 元教団2世信者だった被害者は、新法が寄付の勧誘の際に困惑させることを禁じ、不当な勧誘行為を規定したことを「定めて下さって感謝したい」とし、「被害者の声を聞いてくれた議員の方々に感謝する」と極めて抑制的に涙ながら話した(12月8日)が、「これだけ被害者を出している悪質な団体が活動の一時停止もなく、今日も税制の優遇を受けていることはあってはならないことです」、「政府が本当に動いてくれるか信じられない、被害拡大の張本人の与党側にそのような動きがみられない」とその本音を厳しく語った。 ◇統一教会と自民党の底知れない癒着妻が入信し多額の献金などを繰り返し10年前に離婚し、長男が教会を恨み自死した被害者は、「家庭は崩壊した。何が『世界平和家庭連合会』だ。彼らのやっていることは全く平和でない」、「統一教会を解散させたい。被害者を救済する法律をつくってもらいたい」(12月7日)と訴えた。 霊感商法など人の弱みに付け込んで多額の献金を強いるカルト集団統一教会の犯罪的行為を、自民党は統一教会の名称変更を認め、支持を与え放置し野放し助長していたのである。 統一教会の友好団体の勝共連合は、「反共」とともに憲法改正を主張し、緊急事態条項や家族条項の創設、9条への自衛隊の明記などの改憲主要項目は、自民党の改憲案と全く同じである。 自民党は、このような反共主義や家父長制的な家庭観など、反動的反労働者的な統一教会の組織力を、政権維持を図る選挙の票集めに利用し、被害者を放置していた。 ◇宗教の克服は階級闘争の発展と共に世論調査(12月20日朝日)では、内閣支持率は31%に低下した。新法成立で岸田の対応を「評価する」は58%となったが、被害者の救済については「期待できる」35%、「期待できない」57%である。被害者は「今後は積極的な政府の被害救済に期待します」(12月9日)と、新法成立でも被害者救済を自民党に依存しなければならず、依然困難な状況に置かれていることを語っている。 共産党は、統一教会は半世紀にわたる違法な霊感商法や高額献金で人々の財産を収奪し、一人ひとりの人生を壊すなどの被害を広げてきたとし、それを放置してきた政府の責任は重大だ、政府の無作為に責任が問われる、と自民党の責任を追及する。しかし自民党政治の本質は、資本が支配する社会を維持するためであることが暴露されなければならない。私的所有と商品生産に基づく、労働者を搾取し抑圧する資本主義社会は、人間社会を分断と競争の下に置き、宗教の温床となっている。 資本の支配する社会の変革こそが労働者の闘いの課題である。 (佐) 《校正》1440号(前号) 2面6段33行目 郭鄚市→鄭州市 <お知らせ>1月は15日、29日の発行となります。 |
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