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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
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   そして「愛国教育」で
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1442号 2023年1月15日
【一面トップ】 政権維持を策して口三味線
         ――年頭の記者会見で大衆迎合策を吹く
【一面サブ】 豊田章男を震撼させる労働者の隊列を築こう
【コラム】 飛耳長目
【二面トップ】 破綻した「超金融緩和策」
         ――格差拡大、経済衰退を促進
【二面サブ】 南西諸島のミサイル配備糾弾!
         ――平和のために、岸田政権との階級的闘いを!
【二面サブ2】 外国人労働者の拡大を望み
         ――受け入れ制度の手直しへ
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

政権維持を策して口三味線

――年頭の記者会見で大衆迎合策を吹く

 岸田政権は昨年暮れに安保3文書を閣議決定した。これによって帝国主義戦争が始まる恐れが現実となり、軍事費増大による「国民」負担も確実となった。そんな人々の疑念や不安を紛らわそうと、岸田は年頭の会見で口三味線を奏でた。

◇高賃上げ謳う岸田の下心

 4日(1月)の記者会見で岸田は、安保3文書や軍事費倍増については大して触れずに、「インフレ率を超す賃上げ」や「異次元の少子化対策」などについておしゃべりした。

 労働者の大衆的な賃上げ闘争がすっかり消えてしまった昨今(労働の解放をめざす闘いと結合しない〝戦闘的労働運動〟は労使協調路線に堕落した)、安倍や菅に続いて、岸田も「官製春闘」を演じている。その目的は労働者のためを思ってではなく、賃上げを経済成長の梃子にしたいからに他ならない。

 既に、21年初めから進み出した円安によって、じわじわと輸入物価が上昇し、22年に入るとロシアのウクライナ侵攻に伴う原油や小麦の価格が上昇。さらに、米国内の物価高騰を鎮静化させるとした米の金利引上げによって、日米の金利差が拡大。その結果、円売りドル買いが進み円安が高進し、輸入物価上昇が諸物価に波及した。最近総務省が発表した「持家の帰属家賃を除く消費者物価総合指数」は昨年11月、対前年同月比で4・5%、食料品で見ると6・9%上昇した。今後も多数の品目で価格引上げが予定されている。

 一連の物価上昇は、労働者の生活を急速に悪化させ、岸田政権に対する支持率低下の大きな要因となった。だから、岸田は「インフレ率を超す賃上げ」を恋ねがい、賃上げを消費拡大に繋げ、金融緩和策による景気回復の失敗を挽回したいのだ。

 しかし、賃金は資本に買われる労働力の価格であり、この価格は資本と労働者間の闘いによって大きく左右される、即ち、賃金が上がれば資本の利潤は減るのである。資本は利潤獲得のために、常に労働者の賃金を引き下げて来たのであり、これまでも、労働者を大量に非正規化し、生活設計が出来ない不安的な雇用関係を作り上げ、しかも極少賃金を押付けてきた。

 加えて、資本側は正規労働者の採用も「ジョブ型雇用」に転換しており、長年勤めた中堅労働者に対しても、職務標準に満たないとの口実で振り落とし、とりわけ大企業では大量解雇を開始している。「ジョブ型雇用」は岸田の「新しい資本主義」の中でも謳われ、資本側と岸田政権は一体となって、労働力の流動化を推進し、労働者同士を競争させ、振るいにかけて選別し、そのことによって「労働生産性」を上げ、利潤拡大に繋げようと策動している。

 だから、こうした岸田政権と資本側の策動と対決し、雇用と生活を守るためには、労働者はしっかりした戦略と展望を持ち、大衆的な行動を伴う断固とした闘いを組織しなければならない。

 次いで、岸田は「異次元の少子化対策」を行うと述べた。しかし、何の具体的な説明が無いままの唐突で誇張したものであった。

◇「少子化」を恐れるブルジョア

 これに対して東京都知事の小池は同日、本来国がやるべきことだと岸田を批判して、都の少子化対策を発表した。小池は東京都に在住する0歳~18歳までの子供に毎月5千円を支給すると言う。

 小池は希望の党を創設し党首であった時、自民党の「教育無償化」に対抗して、国民の全てに毎月10万円を施すという「ベーシックインカム(最低所得保障の給付)」を謳ったように、国家の借金を後世代に負担させることなど微塵も恐れないカネのバラ撒き屋、即ち典型的なポピュリストである。だから小池は、岸田の口先だけの「異次元」を批判し、素早く大胆にやれとケチをつけた。

 既に小泉内閣の頃から、ブルジョアは日本の少子化や人口減少に多大な危機感を抱いていた。2006年に出生数と死亡数が逆転し、今後人口減少が進み50年には1億人にまで減り、2100年には5千万人になると騒がれ始めたからだ。

 だから、安倍内閣は少子化を「国難だ」と叫んだし、岸田や小池は22年の出生数が80万人を切ることが分かり一層危機感を募らせるのである。

 なぜなら、少子化は、資本にとって新しい搾取材料がどんどん減っていくことであり、従って「経済成長や創造力」が衰え、国際的な競争に敗北し、日本が二流三流の国家に転落していくことだからである。

 それゆえ岸田もまた、「少子化対策」のために「子ども予算を倍増」し、「児童手当」などを手厚くすると考えるのである。

 しかし、小池の対策案に見られるように、親の所得制限無しに毎月数千円、さらに増やして数万円のカネをバラ撒いたとしても、貧乏な家庭にとっては子供の給食費が助かる程度に過ぎず、これで子供を増やすことにはならない。また、金持ち家庭にとってはカネがあっても、現に子供を大勢育てようとはしていない。

 そもそも少子化の原因は、資本主義の矛盾や退廃と大きく関係してきたのではないのか。例えば、戦後の高度成長期には、労働者は働きバチのように働かされ、それが美徳だとおだてられ、バブル崩壊後には、多くの労働者が非正規に追いやられ、賃金差別、女性差別(妊娠・出産を契機に女性の解雇が隠然と行われてきた)がさらに強まった。

 だから、多くの労働者にとって、乳児・幼児を抱えながら働くことは至難の業なのであり、そして、その皺寄せはまず女性に来ていたし、今もそうなのだ。

 他方の正規労働者も成果主義やノルマなどを強いられ、誰もが羨むIT企業では、結果を出さなければ配転ではなく直ちに解雇されるようになってきた。

 こんな搾取と競争を強いられる社会で、安心して働き子供を産み育てる環境が無い社会で、わずかなカネの施しでどうして少子化を防げるのか!

 資本の支配を脱した搾取の無い共同体社会へ移行し、自主的に共同労働に参加して生活でき、あらゆる福祉が社会化された中で子育てや教育ができ、かつ抜本的に労働時間が短縮された社会が構築されない限り、子供を含めて各人の能力を最大限に延ばすことも自由に余暇を楽しむことも適わない相談なのだ!  (W)


【1面サブ】

豊田章男を震撼させる労働者の隊列を築こう

 1月5日、業界の賀詞交歓会での豊田章男の挨拶(代読)の中で、「どこの国でも、自動車は基幹産業です。ただ、海外では、日本の自動車産業が現地に根付き、その国や地域の成長に貢献することを『当たり前のことではない』と感じていただいているように思いました」、「しかし日本では自動車産業に対する期待や感謝が、なくなってきたと感じる」と。

 この発言の背景には、雇用や基幹産業として日本経済の中軸を担い、「悪いのはCO2だ、内燃機関ではない」という叫びにもかかわらず、脱炭素をEV中心に進める政府の政策や自動車に課される高額な税等々に対する反発がある。「賃上げの議論では、『単年』の『ベア』ばかりが注目」されるが、「本来注目されるべきは、地道に続けている分配の実績だ」。

 昨年の自動車工業会の記者会見で豊田章男は、「このコロナ禍においても、日本全国で約88万人の雇用が減少しているなかで、自動車産業は27万人の雇用増を成し遂げました。この27万人に平均年収500万円をかけると、約1兆3500億円というお金を、家計に分配している」。「自動車・部品産業は09年以降賃上げ率は年2・2%、この『流れ』の中に組み込まれているのは自動車産業550万の約3割で残り7割は『話し合いの場』にすら立てていない。連合と経団連の話し合いにも全労働者の内8割は話し合いに入れていない(組合化されていない)」「日本全体の『賃上げ』を達成するためには、この『賃上げに関する話し合いの場』に立つことができていない70~80%の人たちに、どう影響を与える活動をしてゆくか」、「『格差』を広げないためには、中間層を中心に『みんなにどう働く場を与えていくか』だ」。

 豊田章男が「格差」の広がりに憤りを感じ、「格差」を広げないために考えることに〝お手並み拝見″だ。

 組合に組織されていない8割の労働者に口先だけとはいえ、考えを巡らせるのはトヨタの経営が盤石だからである。

 22年3月期決算の数字は、営業収益(売上高)31兆円、営業利益3兆円もの数字をたたき出している。しかし「格差」を拡げないための対象は「中間層」(正規雇用で年収500万程か)であり、労働者の3割を占める非正規雇用の労働者はすっぽり抜け落ちている。

 分配にことさら言及するのは、自動車の消費者が圧倒的に個人だからである。自動車市場は縮小、22年自動車販売は420万台で世界4位に後退、人口が減少し若者の保有も減少している。

 理由は、維持費、車が高い、という経済的理由。車離れを防ぐために何としても支払能力ある需要が絶対に必要なのである。

 豊田章男に「組合化」されていない8割の労働者や「格差」の広がりを心配されるほど、労働運動は存在感を無くしている。組合に組織される労働者は21年6月で2万3392組合、1007万8千人。組織率は16・9%と一貫して低下している。

 「格差」を生み出し固定化したのは、資本家が自民党とグルになって合法化した派遣労働である。彼らは〝改正〟を次々に行い、派遣労働者は、労働者全体の3割を超えた。労働者に分断と身分差別を持ち込み、派遣労働者には、失業の恐怖を与え、低賃金や不満を抑え会社の理不尽な要求に物言わぬ〝従業員〟であることを強いている。

 トヨタや大企業は〝期間従業員〟を、三交替勤務の過酷な労働に耐える労働力として〝高収入〟〝正社員登用〟を餌に全国からかき集めている。〝期間従業員〟を経て採用された労働者は残念ながら、トヨタの労務管理と労資協調に染められ、抵抗の兆しは見えない。しかし労働者と資本家の利益は根本的に対立する。労働者が労資協調の路線をたたきつぶし、自らの手に労組を取り戻す時が必ずくる。〝どうする豊田章男〟と言っておこう。資本の墓堀人は必ず団結するのだ。 (愛知古川)

   
   

【飛耳長目】

★米国立研究所のレーザー核融合実験で、投入エネルギーを上回るエネルギー出力の成功発表が昨年12月にあった。この歴史的成果に識者は「物理実験の世界から炉工学の世界へ」と語った★本欄で同研究所の7割出力到達を紹介したのは昨年4月。「今世紀半ばの発電可能な実証炉完成」は一層現実味を帯び、残る技術的課題の壁は高いが、夢が現実に近づいた★燃料の三重水素=トリチウムは、半減期12・32年の不安定な核物質。地球では宇宙線と大気との反応で生成され、大気、海水や人体にも微量に拡散分布するが、燃料にするほどの抽出は不可能と★ここに月探査開発競争が登場する。月から運んで資源と呼べるのはレゴリス=砂だけだ。レゴリスには三重水素を含んだ太陽風ガスが吹き付け、吸着しているのだ★米NASAと民間宇宙会社が主導する日本と欧州、カナダ、豪州の宇宙機関など国際官民の月面着陸アルテミス計画の無人宇宙船オリオンが昨年11月、月周回を終え12月帰還した。中国も独自計画を進め、20年12月にレゴリス1・73㎏を持ち帰っている★今世紀半ば、千人規模の月面都市が構想され、核融合実証炉も完成時期を迎える。「人類が賢明かつ有効に使用できるなら、新しい未来は切り開かれる」のだが、それに値する世界になっているか? (Y)


【2面トップ】

破綻した「超金融緩和策」

――格差拡大、経済衰退を促進

 昨年12月20日、黒田日銀は長期金利の上限を「0・25%程度」から「0・5%程度」に引き上げた。政府・日銀にとって超低金利政策は長期低迷を続ける日本経済の〝再生〟の切り札であった。日銀が長期金利引き上げに追い込まれたことは、超低金利策の破綻を表している。

◇円安で日本の産業は腐朽、衰退を促進

 日銀の超低金利政策が破綻した要因を見よう。

 第1は、カネを市場にバラマキ、超低金利で円安を作り出し、輸出を増加させることで停滞してきた経済を活性化させることが出来るという安倍の主張は全くのペテンであった。

 安倍が主張した円安による〝効果〟とは次のような理屈である。

 例えば1ドル=100円の場合、1ドル=150円になれば、同じ1ドルで売ってもそれを円に換算すれば受取りは50円増える。輸出に関しては、1ドル以下の0・8ドルで売ることで競争力があって輸出が増える。円による受取りは120円であり、1ドル=100円の時と比べて20円増える。「円安」で多くの商品を販売し、利益を増加させる、これが〝円安効果〟である。安倍の円安政策は、自動車など輸出産業の輸出が増え、経済を活性化することができるかに見えた。

 しかし円安による輸出とは労働の安売りをすることであり、そのしわ寄せは労働者にかかってくる。輸出大企業は大きな利益をえたが、労働者の生活の大きな改善はなかったのである。

 実際、コロナの世界的な蔓延、ロシアのウクライナ侵略によって、状況は一変した。石炭、石油、天然ガスなどのエネルギー資源、鉄鉱石をはじめとする原材料、小麦、大豆など食料品輸入物価は大幅に値上がりし、円安でさらに価格は上昇した。例えば、昨年11月時点での輸入価格を品目別にみると原油価格は前年同月比で69・7%増。液化天然ガスは51・0%増。石炭は106・8%増といった具合だ。

 日本はエネルギー自給率12%、食料品の自給率38%の資源小国である。これまで、円安による輸出増加で利益を得てきた製造業界でも円安で「圧倒的に製造業が有利になると言われるが、収益に与えるメリットは以前に比べて大変減少している」と円安を危ぶむ声が上がっていると言われる。円安であることが、輸出にとって有利ではなく、反対に不利な条件に変わったのである。

 輸出産業がこうした惨状であるのに加えて、大企業は需要の大きかったり、賃金の低い海外に工場を移転させているなど産業の空洞化が進んでおり、円安による経済活性化といってもその〝効果〟はなくなっており、反対に輸入物資の高騰で労働者の生活を圧迫するものとなっているのである。

 さらに、超低金利でカネを企業にばら撒く政策は、企業の国家への依存を強め、市場から退場すべき停滞的な企業を生き長らえさせ、また新時代を切り拓くような新技術を生み出す活力を失うなど経済の衰退を促進してきたのである。

◇通貨=円の信用低下

 超低金利政策が破綻した第2の要因は、日本の通貨=円への国際的な信用が低下してきたためである。その顕著な現れは、外国投資ファンドらの日本国債離れである。

 米国をはじめEU、英国など欧米各国が激しいインフレに対して金利引き上げを行っている中で、日本は低金利に固執してきた。昨年10月時点で、米国の金利は3・25%、EU2・0%、英国2・25%に対して日本は0・25%であり、日本との金利の差は大きくひらいた。投資家にとって利子の低い円を持っていても魅力はない。低金利への不満は外国投資ファンドらによる日本の国債売りとして表面化した。国債価格の低下は、円の信用の低下であり、円の為替レートは一時1ドル=150円近くまで低下した。円の為替レート下落は、物価上昇の中、経済にとって更なる打撃である。

 政府・日銀は円の低下を防ぐために、6月、12月、2度のドル売り・円買いの為替介入を行った。買った円は約28兆円。しかし、世界の為替市場では1日約1000兆円の取引があり、この程度の小手先の介入で円の〝価値〟が守れるはずはない。結局、日銀は長期金利を「0・5%程度」に引き上げざるを得なくなった。

 円の為替レートは、たんに金利によって決まるものではなく、経済の総合力によってきまるのであり、経済が脆弱であり、将来の発展の見通しがなければ、その国の通貨の信用は弱くなる。グーグルやアマゾンのような最先端の技術を持つ有力産業もなく、貿易赤字が続き、21年の総輸出額では83兆円07年の水準と変わらないような、低迷する経済で円の信用が保たれなくなったとしても不思議ではない。

◇国家の財政破綻の危機も

 政府が借金を重ねて市場にカネをジャブジャブ供給し、超低金利で貸し出す「異次元の金融緩和」策で、国債は8年間で774兆円から1026兆円にまで膨らんだ。日銀の手元に集中した国債は、22年末で566・2兆円と国債発行額の半数を超すまでになった。

 黒田は「0・5%」への利上げについて、「超金融緩和策の変更ではない。今後も金融緩和策を継続していく」と述べたが、異次元の金融緩和策が、停滞する経済を再生しえなかったばかりではなく、ますます経済を衰退させてきたことを見てもわかるように、金利引き上げがこの程度で済むという保証はどこにもない。

 日本がさらに金利引き上げに追い込まれれば、政府の支払いは増加する。財務省の試算によれば、金利が1%上がると25年度の元利支払いは想定より3・7兆円も増加する。

 日銀の財政的な影響も大きい。日銀が金融機関から国債を買った代金は、金融機関の日銀にもつ当座預金に積み上げられているが、日銀の金融機関に支払わなくてはならない利子は増加し、債務超過に陥る可能性さえある。その先に待ち受けているのは、通貨の信用、財政の崩壊であり、激烈なインフレの爆発である。 (T)


【二面サブ1】

南西諸島のミサイル配備糾弾!

 ――平和のために、岸田政権との階級的闘いを!

 昨年12月16日、岸田政権は日本の帝国主義化の方向性を深化させた「安保3文書」を閣議決定した。23年度から27年度までの5年間の防衛費を43兆円程度とするとしたが、23年度当初予算では、防衛費を22年度の5・4兆円から26%増の6・8兆円とした。その中に、与那国島に地対空ミサイルを配備するための土地取得費用が盛り込まれた。

 岸田政権の軍事強大化のもくろみは、台湾有事への対応など中国との帝国主義的軋轢を生みだしている。

◇国家間の軋轢増大

 「3文書」の基本の「国家安全保障戦略」は、中国、北朝鮮、ロシアをインド太平洋地域の安全保障環境の懸念事項とし、敵基地攻撃能力を保有し防衛力を抜本的に強化するとしている。敵基地攻撃能力保有に示される日本の軍事強大化の志向は、先制攻撃に道を開く防衛政策の大転換と、近隣諸国にも受けとられるものであった。

 北朝鮮は、「徹頭徹尾、他国の領域を攻撃するための先制攻撃能力だ」と反発し、政府がいう北の〝脅威〟はためにするものであるが、北は23日にミサイル2発を発射した。中国は「互いに協力のパートナーであり、脅威とならない」と書かれている中日間の政治文書を引き合いに出し「中国の顔に泥を塗り続けている」と警戒と反発を強めた。ロシアは日本が「敵国の領土に反撃をする権利を得た」とした。韓国は韓国が実効支配する竹島の領有権を、日本が主張した部分を問題にし「削除を求める」などとした(12月17日朝日)。

 「3文書」は近隣諸国との帝国主義的軋轢を生みだしており、ひいては軍拡競争を加速するものである。

◇南西諸島で進む軍事要塞化

 「国家防衛戦略」では、「防衛力の抜本的強化で重視する能力」を挙げ、「機動展開能力・国民保護」で「島嶼部が集中する南西地域における空港・港湾施設等の利用可能範囲の拡大や補給能力の向上を実施していく」とし、南西諸島で軍事力増強を図ろうとしている。

 政府は、台湾から約110キロの日本最西端の与那国島に、16年に沿岸監視隊を配備し、19年に奄美大島、20年に宮古島に地対空ミサイル部隊を配備した。23年3月には石垣島に地対艦・地対空ミサイル部隊を配備する。与那国島には23年度には電子部隊を追加し、今回さらに地対空ミサイルが配備されることになる。

 このように台湾有事に軍事的に対応した要塞化がたくまれている。

 「国家安全保障戦略」は、その目的を「防衛力の抜本的強化を始めとして、最悪の事態をも見据えた備えを盤石なものとし、我が国の平和と安全、繁栄、国民の安全、国際社会との共存共栄を含む我が国の国益を守っていかなければならない」というが、南西諸島の軍事要塞化は、中国との帝国主義的対立を激化させるものでしかなく、沖縄の人々のみならず、日本および中国の労働者人民を戦争の惨禍に巻き込む軍事的対立を生み出すきっかけになりかねない。

 「国を守る」といって中国への侵略を進め、アメリカとの帝国主義戦争に突き進み、東南アジアに侵攻し、何百万人もの中国・アジアそして日本の人民を犠牲にした先の日本が始めた戦争に対する反省が全く欠如している。「国家安全保障戦略」は、まずその事実の認識と反省から始めなければならないであろう。

◇軍拡推進の岸田政権を階級的な闘いで倒そう

 共産党などは、「平和のために何をなすべきか」として、「攻撃的兵器の不保持」、「辺野古新基地建設と南西諸島への自衛隊基地建設の中止」などをあげ、「戦争をさせないのが政治の責任」というが、労働者はそこにとどまることはできない。

 重要なのは、現在の軍事的対立が、行き詰まった資本主義が生み出す帝国主義的対立であり、資本の支配が労働の搾取や生活苦をもたらしていることである。

 我々は沖縄の労働者・働く者とともに、大資本とその政府に反対する、軍事強大化を進める岸田政権を打倒する階級的闘いを推し進めていく。 (佐)


【二面サブ2】

外国人労働者の拡大を望み

受け入れ制度の手直しへ

 30年前に始まった外国人技能実習制度で、長年問題視されていた実習生の借金問題について、政府が現地調査を行うことを決めた(読売1/1)。 これは、政府が昨年11月22日、「外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議」において、有識者会議の設置を決定、12月14日には最初の有識者会議が開かれ、今春に中間報告書、今秋には最終報告書を取りまとめ、関係閣僚会議に提出することになり、そのためのヒヤリングの一環として、厚労省が現地の送り出し機関の調査を行うというものである。

 閣僚会議では、外国人が日本で技術を学ぶ「技能実習」と、外国人労働者の受け入れ拡大のために導入した「特定技能」の両制度の統合も含め、今後の方向性を検討するために有識者会議を設置することにしたが、長年問題になってきたのは、実習生の借金問題だけではない(悪徳ブローカーの存在も管理団体のリベート問題も放置してきた結果であって、問題の指摘はずっと行われてきた)。

 「危機感を抱いた政府がようやく重い腰を上げた形だが、遅きに失したと言われても仕方がない」と読売は書いているが、「問われるのは、(現地)調査の実効性」だというのでは、あまりに問題を矮小化している。

 「政府の危機感」は労働力不足に対してであって、労働者の困窮に対してではない。少子高齢化で人手不足、すなわち搾取材料不足が見込まれていることへの危機感である。問われるべきなのは、いかに搾取を廃絶するか、そのために何をすべきかということである。

 「調査は法令に基づくものではなく、任意で行われる。送り出し機関などがどこまで実態を明かすかは不透明だ。厚労省は、調査段階から相手国政府の協力を取り付け、是正も含めて連携していく必要がある」と、読売は注文をつけているが、相手国においてもブルジョア的な腐敗政治がはびこっていることも知らないかのように能天気だ。

 「仮に特定技能と(技能実習制度が)一本化された場合でも、就労者の派遣に送り出し機関が関与する方式は大きくは変わらないとみられる」と言うのは無責任ではないか。「外国人材の受け入れ拡大には、送り出し機関による不当な費用徴収をなくし、外国人労働者の保護を強化することが不可欠」と指摘しているけれども、外国人労働者の環境を根底から改善する展望こそ示すべきではなかったか。  (岩)

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