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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
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・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
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まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1444号 2023年2月12日
【一面トップ】 児童手当が「子育ての社会化」か
         ――「所得制限撤廃」の与野党の不毛な一致
【コラム】 飛耳長目
【二面トップ】 女性の自立妨げる〝主婦〟優遇策
         ――岸田は女性就労の「壁」見直し謳うが
【二面サブ】 環境債でなく移行債の欺まん
         ――火力や原発を援助目的に発行
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

児童手当が「子育ての社会化」か

 「所得制限撤廃」の与野党の不毛な一致

 1月23日に始まった通常国会では、岸田政権が最重要課題の一つだとする少子化対策について、3月末までに政策のたたき台をだすことになっている。その中で、現行の児童手当について、その所得制限を撤廃すべきという主張が与野党から出て、国会で取り上げられ百家争鳴の議論が沸き上がっている。

◇少子化問題をどうとらえるか

 日本の出生数は1973年以降減少傾向になり、2022年は初めて77万人と80万人を割り込むと見込まれている。岸田首相は、昨年の出生数が80万人を割り込んだことをあげ、「異次元の少子化対策に挑戦する」(1月4日年頭会見)とした。

 少子化は、支配者層にとっては国力の衰退とみられるのであり、岸田は、「経済の面から見ても、少子化で縮小する日本には投資できない、そうした声を払拭しなければなりません」と語り、「社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれている」(1月23日施政方針演説)という危機感を示した。

 ブルジョアジーにとって少子化は、資本による労働の搾取の対象の減少、ブルジョア社会の富である商品を生産する労働者の減少である。それは経済力を示す国内総生産DGPの減少に現れ、国力・経済成長が衰えることだととらえられる。

 そして少子化は現在の年金、介護、医療などの社会保障を支える現役世代の減少であり、久しく言われているブルジョア社会を維持するための社会保障制度の崩壊ともなる問題である。

 現在、社会保障を受ける高齢者にとっては、社会保障を支える現役世代が縮小すれば、介護・医療についても、高齢者の負担増・サービスの低下、年金では支給額の削減など社会保障を受けにくくなる状況になり、それらはすでに現れている。

 社会保障の破綻は、このままだと、今の現役世代においても将来被る状況になりかねないのであり、少子化は現在の高齢者が被るだけの問題ではないのである。

◇少子化対策について

 岸田首相は、少子化対策の基本的な方向性として、児童手当などの経済支援、学童や病児保育を含めた幼児・保育サービスの拡充、育児休業強化や働き方改革を掲げた。1月19日には「異次元の少子化対策」を議論する関係府省会議(座長・小倉将信こども政策相)の初会合が開かれた。

 経済支援の中心に据えられたのが児童手当の拡充策である。

 現行の児童手当は、3歳未満の子ども1人につき月1万5千円、3歳~小学生は1万円(第3子以降は1万5千円)、中学生は1万円が原則支給される。ただし所得制限があり、例えば会社員と専業主婦(夫)、子ども2人の世帯で、会社員の年収が960万円以上の場合は子ども1人につき一律5千円の「特例給付」となり、1200万円以上は昨年10月から不支給となった。

 しかし、児童手当が少子化対策となるであろうか。

 21年の政府の調査では、夫婦が理想とする平均の子ども数は2・25人であるが、1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数は1・30人であった。

 理想の子どもの数を実現できない理由の最多は、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」である。それに、将来結婚を希望の人(18~34歳未婚者)は、男性81%、女性84%(2021年)であるが、生涯未婚率(50歳時点)は、2020年では男性が28・25%、女性が17・81%であり、婚姻率の低下は「収入が上がらず経済的に厳しい」ことが挙げられている。

 「経済的に厳しい」には、労働が強化され長時間に渡ること、非正規労働や女性労働者が〝身分的〟不平等や低賃金などの差別労働に苦しむなどという内実だけでなく、将来の生活不安(非正規労働などの不安定雇用による)も含まれるであろう。

 これでは、若い人たちは安心して生活することは困難であり、若い人が出会い恋愛し結婚する人間の営みは遠ざかるだけである。

 待機児童こそようやく減少したが、保育の「社会化」は一向になされておらず、子育ての困難さや子どもの貧困という問題に突き当たらせ、子どもを欲しくても持つことができず、少子化の傾向は止まらない。

 労働者を生活苦に追いやり、少子化問題を出現させているのは、資本の支配の下での労働の搾取を基礎に置く社会である。政府は、少子化対策として児童手当の支給などの経済支援の充実を考えているが、子育て世代への児童手当などで解決できる問題ではない。

児童手当の「所得制限の撤廃」が問題?

 そして、この児童手当の「所得制限を撤廃すべき」という議論が、野党のみならず与党からも沸き起こっている。

 自民党の茂木幹事長は、25日の衆院本会議で岸田首相に「児童手当については、すべての子どもの育ちを支えるという観点から、所得制限を撤廃するべきだ」、また子どもが多い世帯への手当の加算についても「前向きに検討を進めるべきだ」と述べた。

 かつての民主党政権時代、民主党は子育てを社会全体として行うべきとし、これまでの自民党政権の「児童手当」を「子ども手当」と言い換え、所得制限を撤廃した(年少扶養控除は廃止)。

 当時自民党は、「子どもの育ちは、社会全体ではなく、一義的には、やはり親、家族が担うもの」、「手当の必要性のない高所得者にまで一律に支給する政策、理念と決別する」(2011年8月田村元厚労相)と言って、民主党の子ども手当や「社会で子どもを育てる」理念に反対した。

 本国会で、立憲泉代表がこのことを問題にした。

 岸田首相は「家族は引き続き重要な存在だ。家族か社会かという二者択一で物事を考えるという考え方はとらない」とあいまいな答弁に終始したが、自公政権を担う公明の山口代表は、今では自民の茂木幹事長などと同様に、「社会全体で子どもを育てる」という考え方から児童手当の「所得制限の撤廃」などを掲げた(1月31日)。

 そして、立憲、維新、国民、共産、れいわ、社民、有志の会の野党6党1会派の国対委員長も、2月2日、与党に対して児童手当の「所得制限の撤廃」を求めることで一致したのである。

 しかし、子育てを社会全体が責任を持つということが、児童手当の子育て世代への所得制限なしの支給ということにはならない。児童手当を支給すれば若い人々が子どもを持つようになるなどとすることは、全く少子化問題を矮小化している。

◇「子育ては全社会の責任」なら、「保育の社会化」を実施せよ

 所得制限なしの児童手当支給は、高額所得者にも支給するということであり、無駄に費用を膨らませるだけである。それがどうして「子育ては全社会の責任」ということになるであろうか。それを言うなら高額所得者にはもっと税を負担させ、「全社会の責任」を果たさせるべきである。

 また、「子育ては全社会の責任」と言うなら、まず、「保育の社会化」を図るべきである。

 長時間労働や変則的な勤務のため「延長保育」、「夜間保育」などに頼らざるを得ず、子どもの急な病気のためには仕事を休まなくてはならないなど、子育て世代にとって「保育の社会化」、保育の充実は急務であり、「所得制限なしの児童手当」で解決できる問題ではない。

 しかも岸田が少子化対策を最重要課題とし、茂木や山口が「児童手当の所得制限撤廃」などを打ち出したのは、30%台の低支持率に喘ぐ岸田政権が政権浮揚、そして統一地方選の勝利を目論んだバラマキ政策でしかなく、労働者の生活苦改善に供するものでさえない、人気取り政治であることが問題である。不甲斐ない野党が、それに同調しているのである。

 岸田は、「高等教育の負担軽減に向けた出世払い型の奨学金制度の導入にも取り組みます」(1月23日)などとも言い、他の政党も教育無償化などの少子化対策を並びたてるが、これらの少子化対策の財源はないのである。国民が反対する増税を強行することは今はないとすると、安易な理由を付けて国債発行による借金で賄うしかない。

 しかしそれは将来、インフレや増税によって、ますます労働者の生活苦を助長するものにしかならないのである。子ども支援といいながら、将来の世代に借金を背負わすのである。

◇少子化問題の真の解決は

 現在の少子化の問題は、社会の基礎的生産物を生産する労働者が減少し、社会保障を受ける高齢者の増加として現れている。

 しかし日本ではそもそも生産的労働者は減少しつつあり、生産的労働に依存する富裕層や軍隊・官僚などの非生産層が肥大化し、また、定年制度と一体となった年金制度は社会保障の年金受給者を増やしている。

 この定年制度・年金制度は、現行のようにまだまだ働ける労働者を、資本にとって能力の低下した労働者として定年で切り捨て、現役世代の保険料に支えられて年金が支給される仕組みである。資本主義社会はみずから社会保障費を増やして矛盾を深めている。

 しかし、働ける労働者まで退職させる定年制度をやめ、たとえ働く能力が低下するとしても、働ける人が喜びをもって働き、老後安心して生活できる社会であれば、このような問題はなくなる。そのためには社会の生産様式を根本的に変化させなければならない。

 階級差別をなくし、労働者を搾取する資本家階級とそれに寄生する階層をなくし、これらの膨大な不生産層も生産的労働に参加すれば、社会の基礎的生産物を生産する労働者の減少と社会保障を受ける高齢者の増加として現れている少子化問題は解消するのである。

 このように少子化問題は、利潤追求を目的とする資本が支配するブルジョア社会の固有の問題として現れている。

 少子化の真の解決のためには、資本主義社会の根本的変革こそが必要である。労働者は、団結して岸田政権を倒し、労働者の階級闘争を発展させ、資本の支配を打ち破っていかなければならない。 (佐)


   

【飛耳長目】

★朝日新聞「声」欄(2月5日)「『扶養の壁』議論深める時」の会社員氏の投稿が目に止まった★非正規の7割を占めるパート労働者の多くが、配偶者の扶養の範囲内で働こうとする主婦で、時給が増えても「壁」を理由に働く時間を減らすので年収は増えない、非正規に頼る業界では人手不足がさらに進む、という「壁」の悪循環が生まれる。上限引き上げが必要と★扶養控除制度の矛盾を突いた提案だが、たとえ実現して年収が増えても「壁」は残り、非正規労働とそれに頼る業界は温存される。加えて、夫に扶養され、家計補助的収入で家庭を守るという「男性優位」の社会秩序は、少しも変わらない★朝日は、ライフスタイルの多様化なる個人主義的風潮に迎合して、多様な働き方・生き方の紹介に紙面を割いている。読者層の高齢化もあってか、「資産設計、美容・健康、趣味や学びに関心を持つ専業主婦」、という生き方も肯定されるしかない★パート・専業主婦層は、各種の控除制度で優遇され、夫が会社員か公務員であれば、保険料を払わずに基礎年金を給付される。夫だけではなく、社会によっても養われる存在なのだ★彼女らは、守旧派にとっては「男性優位」を守る防人〔サキモリ〕だが、その労働者化と社会的進出は避けられず、進歩なのだ。 (Y)


【2面トップ】

女性の自立妨げる〝主婦〟優遇策

――岸田は女性就労の「壁」見直し謳うが

 岸田首相は、施政方針演説で、「女性の力を引き出していくための政策に力を入れる」として、女性の就労の「壁」となっている103万円の「壁」や130万円の「壁」の制度を見直すと述べた。しかし、それは女性の社会への参加を促進し、能力の発揮につながるか、それが問題である。

◇103万、130万円の「壁」とは

 配偶者のいる女性のパートやアルバイトは、一定の年収を超えると世帯主は納税で配偶者控除をうけられなくなったり、本人が健康保険、厚生(国民)年金に加入することになり、手取りの収入が減る場合がある。そのため手取り収入の減少を避けるために、働くのを止める労働者は少なくないが、これが就労の「壁」と言われていることである。「壁」には、所得税に関するものと社会保険に関するものとの2つがある。

 その1つは、所得税にかかわる103万円の「壁」である。

 配偶者のいる労働者がパートやアルバイトをして年収103万円以下の場合は、所得税はかからず(但し、100万円を超えると住民税の支払い義務が生ずる)、さらに世帯主の所得税は配偶者控除(38万円)が適用される。しかし、103万円を超えると、本人の収入に所得税がかかり、さらに配偶者控除が受けられなくなる。

 このため、年収が103万円を少し超えるぐらいでは、かえって収入が減ることになり、103万円を超えないようにするというのが103万円の「壁」である。例えば、世帯主の年収が600万円だったとすると、所得税はおよそ7万円程度が安くなる。このため約1400万人がこの配偶者控除の制度を利用しているとみられている。

 一方、130万円の「壁」というのは、社会保険(健康保険、年金保険)にかかわるものだ。

 社会保険の扶養範囲は、収入が130万円未満の配偶者である。130万円以上の収入があると社会保険の扶養からはずれ、自分自身で健康保険、年金保険に加入することになり、健康保険料、年金保険料負担の義務が生じ、手取り収入が減る。しかし世帯主の被扶養者になっていれば、自ら健康保険や年金保険に入らなくても、世帯主の健康保険や年金保険の適用を受けることが出来ることになっている。このため、130万円を超えないように就労を調整するというのが、130万円の「壁」と言われているのである。

 野村総研が厚労省のデータを基に推計したところ、有配偶者のパート労働者の年収(2015年)のほぼ半数が100万円の手前、8割近くが130万円の手前えだったとされている(「就労の実態と以降に関する調査」2022年9月)。

 このように被扶養者を優遇する制度は、女性が社会に進出し、働くことを妨げてきた。

◇政府の小手先の対応策

 以上のような優遇政策は、男性は家族のために働き、女性は家庭にあって子供を産み、育て、老親の介護をするという「男女役割分担」思想を引きずるものである。しかし、こうした女性を家庭に縛り付ける政策は、急速に少子高齢化が進むなかで労働力不足、社会保障費の膨張など資本にとって障害となっている。こうして、女性の就労促進策が政府から叫ばれているのである。

 この問題について2月1日の衆院予算委員会では自民党の平将明は、「(年収の壁により)働き控えが起き、人手不足が進む。時給を上げても、さらに(働く)時間を削るという〝無間地獄〟になっている」と指摘、働き手を確保するため、「壁」にぶち当たった際に所得が減らないように時限的な給付金の支給を提案した。

 平提案は自民党予算委の提案に沿ったものであるが、働き控えによって年収が減った分を時限的に国の支援金(約6千億円)で穴埋めし、労働時間と収入が増えた後で社会保険に加入するような仕組みに変えるというのだ。

 女性が働くことを妨げてきた収入の「壁」の解決といっても、労働力不足への対応として〝専業主婦〟を優遇する制度の手直しをしようとするものでしかない。女性が働くことを後押しするといっても「優遇措置」が残されている以上、〝専業主婦〟の立場を良しとしてこれを利用しようとする女性はなくならないであろう。

 自民党は労働力不足対応のために、収入の「壁」を乗り越えて女性の労働への参加を謳うが、パートやアルバイトをはじめ職場での女性差別解消については問題にしていない。女性の就労促進を言うならば、女性への一切の差別をなくすこと、女性に負わせてきた育児や老親の介護を解消していくために、保育施設や高齢者施設の整備、充実など、女性が働く環境の整備を行うべきである。しかし、自民党はこのことについて積極的ではない。

◇資本の女性差別に反対し闘おう

 配偶者の「優遇策」に対して、これまで働く女性と比較して「不平等」だと批判が行われてきた。しかし、たんに「優遇策」問題にとどまらない。女性がたとえパートやアルバイトとして家計補助的な労働を行って収入を得ているとしても、〝専業主婦〟として主として男性に経済的に依存している限り、女性の自立、男女の平等はありえない。

 女性は積極的に社会的労働に参加すべきである。しかし、それで解決ということにはならない。女性の社会的労働への参加を妨げているのは、資本による女性への差別である。労働の搾取に基づく利潤の獲得を目的とする資本にとって妊娠・出産で労働を中断する女性は男性に比べて劣った労働力として、女性はごく一部のエリートを除いて賃金や待遇で差別されている。女性の多くは低賃金、切り捨て自由のパートや派遣などである。

 女性は生産的労働に積極的に参加すべきだし、働く現場で男女平等の要求を資本に突き付けて闘うと共に、男性と共に資本の搾取に反対して闘っていかなくてはならない。 (T)


【二面サブ】

環境債でなく移行債の欺まん

――火力や原発を援助目的に発行

脱炭素事業に充てる国債が初めて発行される。23年度当初予算にて0・5兆円を計上したからだが、実際には、22年度第2次補正予算にて先取りした1・1兆円を合わせると、合計1・6兆円の国債発行となる。ところが、政府は世界の潮流である環境債ではなく移行債を発行するという。

◇世界と日本の環境債発行額

 地球温暖化対策や汚染対策などの資金集めを目的として、SDGs債(持続可能な開発目標債)なるものが世界中で発行されている。これを民間企業が発行するなら社債(私募債)となり、政府が発行するなら国債となる。

 SDGs債の中心になっているのが環境債であり、日本でも民間企業を中心に発行されてきた。

 環境債とは、「グリーンボンド」とも言われ、集めた資金を環境対策の事業に使うことを条件に、企業や自治体、そして各国政府が発行できる債券のことである。

 しかも環境債は4種類にて定義されている。①どこか別の原資ではなく発行主体の現金の収支の流れで管理・調達する、②事業収入や公共施設などの利用料や特別税を原資として償還する、③単一もしくは複数の環境対策事業の現金の収支にて償還する、④ソーラーパネルや省エネ性能の高い設備などを担保に、これらの資産から生まれる現金にて償還する。

 要するに、環境債は資金調達と償還を明確にするために、国際機関にて細かく規定され、環境債にて集めた資金は再生可能エネルギー、建物、水、廃棄物、産業などに充当される。

 現在、世界で発行されている環境債の金額は、13年に150億ドルであったが、次第に増え、20年には3257億ドル、22年には4722億ドルになった(環境省HPの「グリーンボンド実績」)。

 地域別では、欧州が世界の約半分を占め、次いでアジア太平洋、北アメリカと続いている。国別では、22年にてフランスがトップになり、次いでドイツ、米国(米国は民間による発行のみ)である。アジアでは、韓国、香港(22年5月、政府が200億香港ドルという世界最大規模の個人向け環境債を発行)、インドネシアなどが既に起債している。

 国内についても紹介する。

 日本では、環境債発行の中心は金融機関や企業連合による民間企業であり、民間企業による発行額は、14年に338億円、20年には1兆330億円、22年には2兆327億円に増加している(前出)。

 また、環境債のみでは金集めと投資対象が狭くなるとの考えから、環境分野と「社会貢献」を組み合わせた債券もあり、これもまた、時流に乗ったカネ集めとして発行主体から重宝され始めている。

◇移行債発行のご都合主義

 東北復興債は移行債の一種とされるが、今話題になっている移行債とは脱炭素移行債のことである。政府はこの脱炭素移行債を発行して、世界から遅れている脱炭素の事業を促進しようと、ようやく腰を上げた。しかし、環境債ではなく移行債を政府が発行するのは、単なるご都合主義によるものだ。

 この資金はEVや太陽光発電に使われるが、石炭や天然ガスを使った火力発電を温存させたまま、水素・アンモニアと混焼させ、CO2排出量を抑える改良資金にも提供される。

 加えて、政府は脱炭素に繋がるとの屁理屈を付けて、「次世代新型原子炉」の開発支援にも、この移行債を使おうとしている。

 政府は23年度を含めて、今後10年で計20兆円の移行債を発行するが、CO2の排出量に課金する「炭素課金」を導入して移行債を償還するから、政府の負担は無いかに言う。しかも、通常の国債より環境債と同様に、金利が小さくても投資家の需要があると、捕らぬ狸の皮算用をしている。

 既に紹介したように、英国やEUなどでは、2030年の脱炭素ゼロ(ネット)に向けて、環境債の発行が盛んになっている。

 英国政府は21年9月に、100億ポンドの環境債を発行し(JETRO短信)、EU政府は21年からの7年間で約70兆円を「グリーンリカバリー」に充当、約35兆円を3年間でグリーン分野に集中投入しようとしている(経産省「クリーンエネルギー戦略の策定に向けた検討」22年12月)。

 脱炭素に積極的なEUや英国などは、日本が発行を進める移行債に批判的である。それゆえ、世界の政府のうち、環境国債の未発行国は、主要7カ国(G7)では日本と米国のみになっている。

 世界の潮流とは違う路線を進み、大量の移行国債を発行することは、売れ残りも覚悟しなければならず、そうなれば、脱炭素が遅れることになりかねない。

 そうした矛盾を抱えながら、政府の脱炭素政策は進むが、今や、脱炭素は経産省による世界の分析(前述の「検討」)がいみじくも言っているように、「環境対応の成否が、企業・国家の競争力に直結する時代(GX時代)に突入」しているのであり、脱炭素競争は世界戦争状態になっている。

 移行債発行は、電力をはじめ鉄鋼や自動車産業が全面的に脱炭素に舵を切ろうとせず、脱炭素に真剣でないことの反映に過ぎない。したがって、産業資本の代弁者である政府の対応もまた、後ろ向きなのである。

◇労働者に転嫁される償還費

 政府の移行債は、環境債に比べれば、買い手の投資家にとって大して魅力がない。

 それでも政府は、産業資本への支援と自民党の国策である新型原発炉開発のために、移行債を発行するのである。加えて政府は、民間企業に大胆な移行債の発行を促し、今後10年で官民合わせて150兆円超を実現しようとしている――昨年1月、JFEが民間企業で初めて移行債を発行すると発表し、JALも続いたように。

 しかし、政府が発行する移行国債の償還は、炭素を発生させる企業等への課金によって行われると言っても、それで賄えるわけがなく、実際には新たな別歳入(炭素税など)によって行われることになる。さらに、企業が発生させるCO2及び新型原発の開発費用は製品価格(鉄鋼や自動車の価格、電力料金など)に転嫁される可能性が大きい。

 結局、移行債発行は、他の国債と同様に労働者に負担を押し付けることに帰着するのだ。 (W)

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