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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

◆第2第4日曜日発行/A3版2ページ
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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
  お申し込みは、全国社研社
  または各支部・会員まで。
  メールでの申し込みも可能です。

まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1445号 2023年2月26日
【一面トップ】 安全無視の暴挙を許すな!
         ――原発の運転期間上限規制撤廃を決定
【一面サブ】 膨張する兵器ローン
         ――後年度負担でローンを積み増しごまかす
【コラム】 飛耳長目
【二面トップ】 党勢拡大を画策する維新
【二面サブ】 信念を貫き通した半生
         ――故齋藤好明さんを偲ぶ
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

安全無視の暴挙を許すな!

原発の運転期間上限規制撤廃を決定

 政府は10日、脱炭素社会への移行を進めるグリーントランスフォーメーション(GX)に向けた基本方針を閣議決定した。これは脱炭素とエネルギーの安定供給の名のもとに、なんら安全確保の保障もないままに60年としてきた既存原発の運転期間の制限を撤廃するという無責任極まりない暴挙である。

◇有名無実化する規制委の役割

 60年超の原発運転を認めた閣議決定後、13日に開かれた原子力規制委員会の臨時会合は、運転開始30年を起点として10年以内に審査することを決め、現在の原子炉等規制法(高炉法)から運転期間の規定を削除することを了承した。これは政府の60年超運転を追認した形である。

 規制委員会の討論では、「運転期間をどれくらい認めるかは、利用政策側(推進側)の判断で、規制委は意見を言わない」ことになっているという政府に追随する意見に対して、石渡委員はこうした確認はなかったと異議を唱え、「不備があって審査を中断した場合も運転期間が延びる。事業者の責任でそういうことになっても、延ばしていいよというのは非常におかしい。そういう制度になるならば、審査をしている側として耐えられない」、「この改変は科学的、技術的な新知見に基づくものではない。安全側への改変とも言えない。審査を厳格にすればするほど、将来より高経年化(老朽化)した炉を運転することになる」として反対した。

 しかし、規制委員としてこのまっとうな意見は顧みられず、他の4人の賛成の多数決で運転期間制限撤廃を追認することを了承した。

 原発の運転期間が長くなれば、放射能や温度、圧力の変化で配管や機器の疲労が生まれ、設備は劣化し、事故が起こりやすくなるのであり、運転期間は原発の安全に深くかかわっている問題である。にもかかわらず運転期間については規制委員会がかかわることではないとして、政府の決定を追認したこの決定は、原発の安全を図るとする規制委員会の役割を自ら否定することである。

 規制委員会が組織されたのは、2011年の福島原発事故で、原発の推進・活用も規制も経産省など同じ官庁が担い、電力会社との癒着が事故につながったとの反省から、原発の規制を経産省から切り離し、環境省の〝独立性〟の高い外局として原子力規制庁の規制委員会が担うことになった。〝独立性〟が高いとはいっても政府機関の一つであり、限界があるとしても、今回の決定は福島事故の教訓を投げ捨てたことを意味している。

 現行の運転期間を60年としたのは、現在の原発は30~40年の運転を想定してつくられていることを根拠としている。2012年、原子炉等規制法が改定され、原発の運転期間は40年を原則として、規制委員会が認めた場合1回に限り、20年の延長を認めるということであり、これは当時の民主党政府と野党の自民、公明3党の合意に基づくものである。

 30~40年運転を前提として建てられた原発の運転をさらに20年も延長し60年とすること自体、多くの無理をしているが、運転期間制限をなくそうというのは安全を無視する無謀というしかない。

◇60年超の原発は世界にない

 政府関係者からは外国では運転期間の規制がないという声もある。米国は運転期間を40年と定め、安全基準をクリヤーすれば、20年以内の延長を何度でもできる仕組み。英国やフランスは運転期間の制限はなく、10年ごとに安全審査があり、運転が認可される仕組みである。政府関係者は、日本が40年と期間の原則を定めた際の科学的な根拠は乏しいという。しかし外国には運転期間の制限はないとはいっても60年になる前に廃止している。

 長期間運転することは、老朽化対策を含めて運転コストの増大が生じるし、自然災害のリスクにさらされるということもあるなど経済的な理由によって運転を止めた原発もある。国の政策転換によって運転されなくなった場合もある。

 フランスでは原子力の依存度を段階的に減らす計画の一環として、1977年に稼働を開始した国内最大の原発が2020年に停止された。ドイツでは福島第一原発事故後の脱原発政策で8基の原発が停止を命じられた。米国では17~18年ごろ、電力価格の低迷などの影響で、運転期間が残っていても廃炉を決める原発が相次いだ。

 60年を越して運転している原発は世界中のどこにもないのであり、政府の言うように延長しても大丈夫と言う根拠にならない。

◇将来の展望もなく目先の利益に走る岸田

 岸田はロシアのウクライナ侵攻による原油のひっ迫や脱炭素化などを持ち出して、エネルギーの安定確保のために原発の運転期間延長や新設の必要を強調している。しかし、運転の安全確保の問題以外にも、福島第一原発の事故処理、使用済み核燃料の処理など未解決な問題はそのままである。

 福島第一では溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出し計画も取り出しロボットの開発が遅れ大幅に遅れている。廃炉、汚染処理対策で使用した汚染水は、結局薄めて海に放出することにし、海水汚染問題を引き起こしている。帰還困難地域は福島県内の7市町村にまたがり、放射線量は避難指示基準を下回ったが、長期目標(年1ミリシーベルト)より3~4倍にも上っている。

 使用済み核燃料の放射能が天然ウラン並みに減るまでには数万年~10万年かかると言われるが、最終処分のための処理場も決まっていないという状態である。

 クリーンエネルギーの供給を言うなら、再生可能エネルギーの開発を目指すべきだ。しかし、岸田は目先の利益に捉われ、やみくもに原発の稼働に走っているのである。福島第1原発の事故はチョルノ―ビリとならんで、歴史上に名を残す大事故となった。老朽化した原発の稼働で第2の福島事故が起こらないという保証はない。 (T)


【1面サブ】

膨張する兵器ローン

後年度負担でローンを積み増しごまかす

 岸田は今後5年間(23~27年度)の軍事費を43兆円だと説明してきた。だが、岸田の説明は軍事予算の歳出を示しているのみで、兵器ローンについては何ら明らかにしていない。岸田の根性は腐りきっている。

◇後年度負担のからくり

 今後5年間の軍事費43兆円は、歳出予算(歳入/歳出のうちの歳出)で示したに過ぎず、後年度負担という借金支払いを隠した金額である。

 歴代自民党政府は、当初予算で示す軍事費を少なく見せるために、前年度に前倒して補正予算を組んできた(他の補正予算も同じ意味)。

 その上に、兵器などの高額な装備費については、5~10年のローンにして支払い、歳出予算には、過去のローンのうちから支払いが確定した金額のみを「歳出化経費」として計上してきた。

 このやり口は、国債費の年々の償還費(金利と元金)を一般会計の歳出に計上するのみで、国債残高(借金残高)を一般会計に示さないのと同じである。

 従って、軍事費の歳出予算には、過去のローンの一部が歳出予算の中に「歳出化経費」として計上されるが、この歳出予算とは別枠で、ローンの引継ぎが行われる仕組みになっている。

 新規に契約した装備費の後払い分が「新規後年度負担」として新たなローンとなり、「既定後年度負担」が過去のローン未払い分になるのである。つまり、この新規分と規定分の合計がローン残高であり、前年度のローン残高から当該年度の「歳出化経費」を引いた金額が当該年度のローン残高なのである。

◇軍事費は60兆円

 『東京新聞』は、今後5年間の軍事費43兆円について、実際には約60兆円であると、次のように報道している。

 「5年間で43兆円という金額は、政府が今月に閣議決定した安全保障関連文書の一つ『防衛力整備計画』で示した。

 内訳は自衛隊員の給与や食費など「人件・糧食費」11兆円、新たなローン契約額のうち27年度までの支払い額27兆円、22年度までに契約したローンの残額5兆円となっている。

 5年間に組む新たなローンの総額は、現計画の17兆円から43兆5千億円へ2・5倍に跳ね上がる。27年度までに支払う27兆円を差引くと、16兆5千億円が28年度以降のローン払いで、政府が5年間の規模とする43兆円と合わせれば、59兆5千億円になる計算だ」(22・12・31付)。

 このように、5年間の実際の軍事費は60兆円であり、27年度末のローン残高は16・5兆円と分析されているが、28年度以降も新規ローンが組まれ続けるのであるから、さらに膨らむことになる。

◇今年度のローン残高は10兆円超

 岸田政権が22年度の軍事費を当初予算と前年度の補正予算を合わせた「防衛力強化加速パッケージ」として示したことから、防衛省は10年度~23年度までの当初と補正を合わせた「パッケージ歳出予算」を公表した。

 この22年度ローン残高を見ると、5・86兆円、23年度のそれは10・72兆円へと2倍に膨らみ、しかも、23年度には軍事予算7・27兆円よりローン残高の方が3兆円以上も多くなっている。

 これだから、その後のローンが年に1兆円ずつ増えると計算すれば、『東京新聞』が27年度末のローン残高が16兆円を超えると判断するのは正当であろう

 岸田政権は軍事費に所得増税や国債を当てるが、その上に軍事費ローンを膨張させているのであり、ローンはちっとも減らない債務と化し、事実上の軍事国債になろうとしている。悪質極まりない。 (W)


   

【飛耳長目】

★百年に一度と言われる大地震がトルコ、シリアを襲った。27㎞にも及ぶ横ずれ断層の巨大な亀裂が確認され、死者は5万人に迫り、避難民は220万人を超えた。まだ瓦礫の下には多くの死者が埋もれている★瓦礫の中での生存率は24時間内で72%、72時間内で22%、170時間内で2%と言われる。しかし報道によると、18歳の女性が155時間、40歳の女性が170時間、77歳の女性が212時間で救出された。まさに奇跡と言うしかない。いずれも僅かな空間が命を救った★人は水なしでは4、5日で死ぬ。体内の20%の水が失われると生きていけない。体重50㎏だと10リットルの水だ。自らの尿を飲んで渇きを忍んだ人もいる★驚きなのは高層ビルやアパートが粉々に崩れ落ちていること、そして救助が重機なしの住民の手作業で行われていることだ。まず耐震性が全くない。10数年前にも大地震が起きたというのに、エルドアン政権は耐震の備えをサボタージュし、万一に備えての救助体制を含む防災対策を怠ってきた★地震は避けられぬが、「震災」はそうではない。40年も独裁を続けるアサド政権共々、民衆弾圧と権力欲に明け暮れる政権が被害を甚大なものにさせたのである。こんな政権は労働者大衆の力で直ちに打倒されねばならない。 (義)


【2面トップ】

党勢拡大を画策する維新

 維新は2011年に大阪府知事・大阪市長ダブル選で勝利し、21年衆院選で躍進し現有40議席、22年参院選でも比例区得票数で、立憲を抜くという目標を達成し現有21議席と党勢の拡大を進めている。しかし維新の党勢拡大は、労働者大衆の生活を改善するものになるであろうか。

◇維新の伸長

 維新は、大阪府内では11年時点で知事、大阪市長のほか、公認・推薦の市長が2人だったが、現在は知事に加えて、18人の市長・町長を擁し、自民・維新推薦で兵庫県と長崎県で知事を誕生させた。府外では公認候補が首長選に勝ったことがなかったが、2月の舞鶴市長選で、初めて維新単独推薦の市長が誕生した。

 22年8月の党代表選挙で松井から引き継いだ馬場は、今月5日の党大会で、春の統一選では地方議員を現有の1・5倍となる600人を擁することを目指す活動方針を決め、堺市長、神奈川県知事、奈良県知事、衆院補選にも候補の擁立を予定・検討している。

 規制緩和による資本の活性化と、セイフティーネットなどの甘言で労働者を資本の支配の下に縛り付ける、強権的な維新政治の実現を目論む、維新の全国政党化の動きである。

◇維新の看板政策

 維新の看板政策・大阪都構想は、2回の住民投票で否決され、今は、「身を切る改革」と「教育無償化」を前面に出し、国会でも暗躍している。

 維新は「身を切る改革」では、国会議員に支給される調査研究広報滞在費の使途公表、国会の委員長手当の廃止などを打ち上げ、自民と協調しようとしている。

 一方、旧公務員宿舎など国有財産の売却や、正当な理由なく国会を欠席する議員に対する歳費の支払い停止の立法措置の検討などで、立憲との共闘を進めている。

 しかし維新と立憲とは、改憲に対する考え方では大きな違いがあり、国民投票法改正法などが当面の主要テーマである衆院憲法審査会の開催を巡って、既に対応の齟齬が出はじめている。

 維新は、自公政権とともに、労働者に敵対する政党であり、看板の「身を切る改革」、「教育無償化」はそれを誤魔化す見掛け倒しのものである。

 今国会内外では、少子化対策を巡って、現行の児童手当の所得制限の撤廃に向けて議論が巻き起こり、「教育無償化」が議論されている。

 そんな「教育無償化」は、少子化対策にも本来の教育とも結びつかない、単なる人気取りのバラマキ政策であり、それに見合う財源はなく、将来の子どもに借金を背負わすものである。

◇国家主義的な維新の政治

 維新は安保3文書に対して、「敵基地攻撃能力」の保有を容認し、「核共有」の議論開始を盛り込んだ提言を政府に提出した(22年12月)。維新は政府の安全保障関係予算のGDP比2%の方針については「不可欠」とし、財源は増税に頼らず、経済成長による税収増でまかなうよう求めたが、教育無償化と同様に、維新は安易な国債に頼るしかない。

 維新はウクライナにおける核危機を利用して、「核共有」による核兵器の国内配備を主張する。しかし、プーチンのウクライナ民族の自立を認めない大国主義によって引き起こされたロシアのウクライナ侵攻は、ロ中と欧米日の帝国主義勢力争いを顕在化させている。

 「敵基地攻撃能力」や「核共有」は、帝国主義国家間の対立を拡大するものになる。

◇万博、IRカジノに見る腐敗

 維新が関西経済の成長の起爆剤としたのが万博とIRカジノである。

 25年に開催予定の万博は、これから建設工事が本格化するが、世界的な資源高や円安による資材費値上がりで、万博会場の建設費は当初想定の1・5倍の1850億円に膨張している。建設費高騰によって、すでに建設工事の入札で不成立が相次いでいる。

 開催による消費増などの波及効果は約2兆円と想定しているが、海外からのパビリオン参加そして来場者が目標に達しないことが予想されており、膨大な借金が残る可能性がある。

 そしてIRカジノでも、土壌汚染対策として約790億円が必要だとわかった。松井市長は「カジノに税金は一切使わない」と言っていたが、税金を投入すると表明した。これには地盤沈下対策、液状化対策は含まれておらず、公費負担はさらに膨らむ。高潮対策、津波対策も問題である。

 その他、カジノ出資企業から吉村知事が献金を受けている問題、府特別顧問がカジノ出資企業とアドバイザリー契約を結んでいたカジノの利権に関わる問題がある。

 そしてIR建設予定地を事業者に賃貸する賃料が不当に安い問題が現れ、その賃料の根拠となった不動産鑑定業者4社の談合疑惑が浮上した。

 しかも問題は、報道の指摘に対して、大阪市港湾局は賃料などが「一致したのはたまたま」といい、松井も疑惑を認めず調査もしないことである。

◇労働者大衆のための政治を

 万博、IRカジノを巡っては、維新や自民の政治家、資本家、官僚等のブルジョア支配階級が金銭や利権に深く絡んでおり、疑惑だらけで腐敗に満ち満ちている。そして万博、IRカジノが失敗すれば、その膨大な借金は「後は野となれ山となれ」と、労働者・働く者にのしかかってくるのであり、その可能性は拭い去ることはできない。

 労働者大衆は、こんな万博、IRカジノの計画の中止を求め、それに関わるブルジョア支配層を階級的な闘いで一掃しなければならない。

 労働市場改革、解雇の流動化などで、労働者の非正規化を進め、資本の活性化を図り資本に奉仕し、資本の支配に反発する労働者を抑圧する維新政治は、大阪府政・市政ですでに明らかである。

 労働者は、岸田政権打倒とともに、反動的な政治を標榜し党勢拡大を目論む維新との闘いを進めていく。 (佐)


【二面サブ】

信念を貫き通した半生

――故齋藤好明さんを偲ぶ

長野県支部長、齋藤好明さんが2月7日早朝逝去された。享年72歳、早すぎる死であった。ご家族から「9日に家族葬を済ませた」との知らせをいただいたのは2月15日、「苦しくもなく痛くもなく穏やかな最後」だったそうだ。少しずつ快方に向かっていると信じていたので、大変ショックであり、未だに喪失感を抜け出せないでいる。

◇闘病の記録

 齋藤さんから肺に違和感があり、診察を受けたところ肺がんと分かったとの連絡があったのは昨年春だった。既にステージ4で手術はできず、抗がん剤による治療を受けていると知らされた。

 抗がん剤の副作用はそれほど深刻ではなかったようで、活動の意欲は衰えていなかった。治療の合間に電話で連絡を取り合い、ネット会議を開いてきた。

 ただ、医師には余命は良くてあと2年くらいと言われたそうで、彼は「あと数年はこれまで通り活動できると思っていたのに残念だ」と悔しそうに語っていた。

 夏頃、自分がこれまで書いたものをまとめて出版したいとの希望を明かされた。私は、病状の深刻さをよく理解できていなかったので、過去の論文をまとめるより新しいテーマで『プロメテウス』に執筆して欲しいと〝叱咤激励〟した。

 しかし、同じ頃、長野県で長く活動を共にしてきた松本のOさんには、「ガンになってみて私も自分の生きた証と若い人たちへのメッセージを込めて今までの論文等をまとめたものを自費出版したいと思うようになりました」、「何かやはり長野県でも後を受けついでくれるような人を期待したいです」とメールしていたことをつい最近知った。もっと真剣に相談に乗るべきだったと今になって後悔している。

 その後、8月下旬に脳への転移で救急搬送され、脳出血により失語症と右麻痺に陥ったと知らされた。リハビリ入院中の10月下旬には右手麻痺がひどくなり、検査の結果、脳出血がくり返されていたことが分かり、26日に脳の機能停止部分の摘出手術をした。肺からの転移によるがん細胞が見つかったそうだ。

 それでも、11月初めには退院し、デイサービスを利用しながらのリハビリ生活になった。「時事問題」と言えるようになり、「海つばめ」を受け取りたいと言い出したとの連絡をご家族から受け、早速手配した。

 12月上旬には右手で鉛筆を持つことができ、「たまに発する言葉の発音や歩き方は少し良くなってきた」との知らせがあった。12月8日午後には齋藤さんから私の携帯に電話があり、会話にはならなかったが、私の話は理解できたようで、明るい気分になった。今思えば、これが私にとっては彼の声を聞いた最後となった。

◇常に支部の闘いを牽引

 齋藤さんは1950年長野県北部の栄村に生まれ、東京教育大学(現筑波大学)在学中に、急進派学生の70年安保・大学闘争が喧噪を極める中、全国社研の機関紙「火花」を知り、その真摯な姿勢と理論的卓越性に感銘を受け、活動に参加した。

 大学卒業後は、1975年から2013年まで長野県で県立高校の社会科教諭を務めた。80年代後半の「日の丸・君が代」闘争では、分会役員などとして先頭に立って闘った。バブル崩壊後の生活悪化の中、様々な悩みを抱える生徒に寄り添い、親身になって対応してきた。

 2007年から17年まで長野県支部の支部長を務め(その後、2019年参院選を前に再び支部長に復帰、以後継続)、長野支部の闘いの先頭に立ってきた。「信州・働く者のセミナー」を立ち上げ、討論会、シンポジウムなどを組織するなど、その実行力は目を見張らせるものがあった。

 長野市内で、月1回の『資本論』読書会を主宰する傍ら、近年は長野市周辺から上田市の勤労者グループの集会や学習会にも積極的に参加、レポーターを頼まれると、快く応じて信頼を勝ち取ってきた。

 組織内での活動にとどまらず、他のグループの活動にも積極的な要素があればためらうことなく参加し協力関係を広げてきたことは、オーガナイザーとしての齋藤さんの抜きん出た資質・力量を示している。

 齋藤さんには頑固一徹なところもあった。価値移転説や「社会主義における分配」問題で論争になったとき、彼は再生産表式にこだわって自説を展開し、故林さんに批判されても変えなかった。支部内での議論も平行線を辿った。私は、「信州人は頑固だな」と皮肉ったが、そんなことでへこむ彼ではなかった。

 しかし、齋藤さんの立派なところは、自説が批判されてもそれで党を辞めるなど考えもせず、意見の相違を棚上げして活動に邁進したことである。彼は「労働者の解放」という理想を実現するには、党に結集して闘う以外にないことを理解していた。組織の上に個人を置くインテリとは決定的に違っていたのだ。

◇2019参院選に立候補

 齋藤さんの党活動のハイライトは、やはり2019年参院選に長野選挙区から「労働の解放をめざす労働者党」の候補として立候補し、闘い抜いたことであろう。

 当時、「確認団体」として全国で10人の候補者を揃えるまでには様々な苦労があり、決してスムーズに決まったわけではなかった。色々ないきさつから長野県支部でも候補者を立てて選挙区で闘って欲しいとの要請が中央からあったとき、私たちは齋藤さんに立候補を要請した。長野県内で高校教師として長く勤務し、多くの同僚や生徒たちから信頼されてきた齋藤さんほど労働者党の候補者としてふさわしい人物はいないと確信したからである。

 齋藤さんは、内心では葛藤があったかもしれないが、潔く引き受け、敢然として選挙闘争を闘い抜いた。人手不足、資金不足の中、ほとんど一人で選挙カーや選挙公報などの準備をし、運転手を引き受けたOさんと一緒に県内を駆け回った。選挙が始まると、富山のYさんや静岡のMさん、読書会会員や元同僚、教え子たちから多くの支援が寄せられ、闘いの輪が広がっていった。

 最終的に齋藤さんは19211票(得票率2・1%)を獲得、7人の選挙区候補の中で票数、得票率ともにトップの成績を収めた(全国社研社刊『種は蒔かれた』参照)。

 選挙が終わった後も、またコロナ禍でも齋藤さんはそれまでと変わらぬ温厚で実直な人柄で、長野支部の闘いを牽引してきた。

 本当に惜しい人を失った。心から冥福を祈るのみである。 (鈴木)

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