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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

◆第2第4日曜日発行/A3版2ページ
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郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
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「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
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「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
  お申し込みは、全国社研社
  または各支部・会員まで。
  メールでの申し込みも可能です。

まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1448号 2023年4月9日
【一面トップ】 米銀の破綻、世界へ波及
         ――財政バラ撒き策や低金利政策のツケ
【一面サブ】  フランスの年金制度改悪
         ――破綻するブルジョア的社会保障
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】  斉藤幸平著「ゼロからの『資本論』」を読んで
         ――エコ「コミュニズム」論の二番煎じ
【二面サブ】   政府・自民に高まる武器輸出拡大の声
         ――ウクライナ、台湾危機を口実に
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

米銀の破綻、世界へ波及

財政バラ撒き策や低金利政策のツケ

 米国のシリコンバレー銀行が3月10日に経営破綻し、12日にはシグネチャー銀行が破綻。ファーストパブリック銀行も破綻寸前で他銀行が救済。中小企業の株価は暴落。米銀への信用不安は欧州にも連鎖し、欧州を代表するスイスのクレディも経営危機に陥った。さらにこの余波は英国などにも波及し始めている。何が起きているのか。

◇大慌てで預金保護

 破綻したシリコンバレー銀行はシリコンバレーの中心的銀行であり、有望なIT起業家やテック企業、ベンチャーキャピタル(略称VC)――ハイリターンを狙う投資会社――向けに積極的に融資していた銀行である。米国の先端企業に融資して投資収益を稼ぎ、総資産は22年末時点で約2090億ドル(約28兆円)、全米16位にランクされていた。08年のリーマンショック以降、米国で最大の破綻銀行となった。

 シグネチャー銀行の方は、仮想通貨(暗号資産)関連企業との取引で知られ、資産規模は22年末時点で約1104億ドル(約15兆円)、全米29位であった。シグネチャー銀行と同様に、仮想通貨関連会社と取引が多かったシルバーゲート銀行が「自主清算」を発表し(3月8日)、信用不安が広がっていたところにシリコンバレー銀行が破綻。シグネチャー銀行は、預金が大量に流出し瞬く間に破産した。

 慌てた米バイデン政権と連邦準備理事会(FRB)は、全米に信用不安が拡がらないように、両銀行の「預金保護」を発表(08年のリーマンブラザースの破綻では預金保護は発動されなかった)。次いで、イエメン財務長官は「シリコンバレー銀行の破たん処理に伴う損失が納税者に負担されることはない」と信用不安の払しょくを図った。

 だが、米株式市場で中小企業の株価が急落している。財務基盤が弱まった地方銀行が投資収益を回収できない恐れのある融資を控えるのは当然であり、それゆえに、中小企業株の投げ売りが発生しているのだ。その上に、ファーストパブリック銀行なども破綻リスクにあることが暴露され、イエメンは米議会で「多くの銀行の経営破綻を引き起こしかねない深刻な伝染リスクがあると感じている」(16日)と嘆いた。

◇シリコンバレー銀行破綻の原因

 大手に属するシリコンバレー銀行(SVB)はなぜ破綻したのか。

 「米国では19年頃から、スタートアップの企業価値評価が拡大。低金利を背景としてVCによる投資が急増し、スタートアップのメインバンクであるシリコンバレー銀行の預金も増えた。

 急激に膨らんだ預金額は預貸のバランスを崩した。銀行持ち株会社SVBファイナンシャル・グループの貸借対照表(バランスシート、BS)からは、19年以降に預金に占める貸出比率が低下し、手元資金が増える傾向にあったことが分かる。預金者に金利を支払うため、手元資金を運用する必要に迫られた。SVBは手元資金で住宅ローン担保証券などを買いあさった。20年末で495億ドルだったSVBファイナンシャル・グループの有価証券残高は1年後には1285億ドルに急拡大している」(「日経ビジネス」23・3・22)。

 シリコンバレー銀行は先端技術関連に、しかも将来有望な起業家に融資し、彼らの預金が急増した一方で、コロナ不況により貸出が大して増えず、預金利子の支払いに四苦八苦するようになった。そこで、住宅ローン担保証券などを買い集め、デリバティブなどを使って〝高く売り〟利益を確保しようとした。

 ところが、22年に入るや物価高騰が相次ぎ、FRBは政策金利(短期金利)を次々と引き上げた。政策金利は1年間で4・5%も上がり預金金利が上昇。しかも、低利で買った長期債券との間で「金利の逆ざや」が生じた。

 さらに、バイデンとFRBの政策金利引上げによって長期債券も市場金利(利回り)が上昇し債券価格が下落。シリコンバレー銀行の資産はマイナスに転落し債務超過に陥った。

 それゆえに信用不安が駆け巡り、預金が流出し株価は暴落、そして破綻したのである。

◇低金利政策と財政バラ撒きのツケ

 シリコンバレー銀行の破綻は決して特殊な例ではない。各銀行の経営は皆〝個性的〟であるが、相次いだ米国の銀行破綻もスイスのクレディの破綻も英国で行き詰まる銀行も、皆同様な経緯を経ている。つまり、政府と中央銀行による低金利政策と財政バラ撒きから物価が高騰し、これを鎮めるために一転して金利引上げを開始したことに起因している。

 各国政府は、低金利政策によって銀行からの貸し出しを増やし、設備投資を増大させ景気を上昇させようとした。だが、上手く行かず、逆に銀行は体力を削ぎ、色々な債券投資に依存するようになった。銀行は本業である貨幣資本の貸出しで儲けることが出来なければ、国債や住宅ローン担保証券などの金融商品に投資し、さらにデリバティブも駆使して利潤確保に走るのは必然である。

 低金利のもと、コロナ不況対策と名打った莫大な財政支出が行われ、22年初めから物価が上がり始めたところに、ロシアのウクライナ侵攻が始まった。原油や小麦を輸入に頼らない米国でも、国内物価が5%~10%も上昇し始めた。政策金利が相次いで引上げられても、物価高騰は収まらず1年以上も続いている――信用貨幣であるドルは長年の垂れ流しでますます国家紙幣化しており、大量にバラ撒かれた紙券が景気上昇などを契機に流通経路に流入するならインフレは発生し、その結果、諸物価は一般的に上昇する。

 バイデン政権は、銀行破綻が起きた後でも、予定通りにさらに金利を0・25%引き上げた。物価高騰を止めることを優先した結果であるが、長期債券の価格下落が続くのであり、従って、どの銀行も少なからずに長期債券を持ち、売りたくても売れずにシリコンバレーの二の舞になりかねないリスクを抱えている。

 低金利政策は政府の財政膨張を野放図にする(日本は典型的)。そしてインフレが発生するなら金利を引上げて、それまでの景気上昇策から一転して景気を冷やして対応するのだ。矛盾も甚だしいが資本主義が続く限り繰り返され、企業や銀行の破綻は真っ先に労働者を犠牲にする。                             (W)


【1面サブ】

フランスの年金制度改悪

破綻するブルジョア的社会保障

 仏大統領のマクロンが1月に提出した改革案は「現在は62歳の受給開始年齢を2023年9月から段階的に遅らせ、30年に64歳とする。当初は65歳を想定していたが、組合などの反発が強かったため1歳早めた。受給額が少ない年金生活者への配慮として、年金の最低支給額を23年から月額1200ユーロ(約17万円)程度と、現状より100ユーロ程度引き上げる」(日経3/18)という内容。法案を受け経営者団体は「合理的で責任ある決定」と評価したが、主要労組は「長期間にわたる抗議の始まりだ」と反発した(東京新聞TOKYOWeb1/11)。

 改革案には懐柔策も盛り込んだが、受給開始を遅らせることへの国民の強い反発は弱まらなかった。政権側は下院での採択が難しいと判断し、法案を強制的に採択できる憲法49条3項を適用して成立させた。独裁的なやり方は政権への反発を更に強めた。

 マクロンは大統領選の公約の目玉として年金改革を掲げ、42ある公的年金制度の一本化と合わせ、膨らむ年金財政の赤字解消策の柱として年金受給を遅らせる法案を出してきた。

 特別扱いで優遇される年金制度の改革と抱き合わせにして、受給者の〝公平〟を装って分断を謀ったのであろうが成功せず、国民の信頼は一層堕ちた。

 フランス政府はこの改革による定年延長によって、「30年までに177億ユーロ(約2兆5000億円)の増収を見込む(前出TOKYOWeb4/4)という。2010年の公的年金制度改定では、60歳から62歳に年金支給開始年齢を引上げた際に、当時のサルコジ政権のヴォルト労働相は、この改革で18年までに約190億ユーロの財政赤字の節減効果があると言っていた(労働政策研JILPT2010・6)。

 これまではフランスの年金受給はドイツやイタリアが67歳で始まるのに対して62歳でEU域内で最も早い。そのこともあり年金財政は、20年の支出で国内総生産(GDP)比で見て15・9%と、加盟国で3番目に多い(前出Web4/4)。

 23年度予算案でフランスの財政赤字は国内総生産(GDP)の5%となる見込みで、EUが加盟国に求めている3%以内に抑える財政ルール(新型コロナの拡大を受け凍結されている)を超えていて危機的状況なのだ。

 「戦後、ブルジョアジーは社会保障による『豊かな安定した生活』と〝福祉国家〟の幻想を振りまいてきた。彼らは利潤のおこぼれによるわずかな改良で労働者大衆を資本の支配のもとに繋ぎ止めておこうとしたのだ。だが、資本主義経済の停滞のもとで国家財政は危機に陥り、この困難をブルジョアジーは〝福祉〟の切り捨て、増税、リストラ合理化など(現代なら非正規など不安定雇用も)労働者に犠牲をしわ寄せすることによって乗り切ろうとしている。これは資本の繁栄に依存し、労働の搾取を基礎とした資本の体制を維持するための欺瞞的なブルジョア〝福祉〟の破綻を暴露している」(労働者党理論誌『プロメテウス』第23号「巻頭言」より)

 フランスでは週35時間労働の制約がある中で業務量は変わらないため、労働者が同じ時間内でこなすべき業務量が増えたという。一方、企業は中高年にも同じ仕事量を求める。こなせない人は解雇されるか早期退職の道を選ばざるを得ない。シニア世代(55~64歳)の21年の就業率は56%で、77%のスウェーデンや72%のドイツとは大差がある(前出Web4/4)。労働者は資本の過酷な搾取のために定年延長に反発しているのだ。 (岩)


   

【飛耳長目】

★巨大IT企業GAFAは、ネット検索や通販、SNSで集めたビッグデータを使って急成長、世界市場を支配し、社会と人々の生活・文化にまで影響を及ぼしている★グーグルの便利なサービスは、全世界のネット検索で94%、アンドロイドOSは70%。アップル製品は開発から製造まで自社で賄い、その部品購買力は大きく、音楽配信やゲーム課金での収益も巨大だ。フェースブック(現メタ)の集める高度に個人的な情報の価値は高い。アマゾンの有料のプライム会員は1億人、商品検索ではグーグルに次ぐ2位だ★一方で、プライバシー侵害・独占禁止法違反、法整備不備による全世界で24兆円の法人税逃れへの批判も強い。バイデン政権は、「健全な市場形成とイノベーションを阻害している」と規制強化に乗り出した★加えて、Web3・0の次世代「分散型インターネット」と仮想空間「メタバース」の新市場、偽造困難なブロックチェーンによる「情報の分散管理」などの大波は、GAFA支配の盤石と思われたネット市場を破壊しつつあると言う★昨年来、株価は軒並みに急落、メタは1万1千人、アマゾンは1万8千人の人員整理などのリストラ策に躍起となっている。資本主義世界の市場争奪戦は激烈で、労働者の犠牲を伴って進行している。 (Y)


【2面トップ】

斉藤幸平著
「ゼロからの『資本論』」を読んで

エコ「コミュニズム」論の二番煎じ

 本書(NHK出版新書)は、「NHK100分de名著」において放送された「カール・マルクス『資本論』」をもとに加筆・修正し、新たに書き下ろした章を加えたもの(斉藤の解説)とのことであるが、資本の下での労働について述べている前半の部分をのぞけば、内容はほとんど『人新生の「資本論」』と変わらず、マルクスは晩年には資本による地球の環境破壊を重視するようになったということが強調されている。

◇新しい視点とは

 斉藤は、「近年の研究成果も踏まえて『資本論』をまったく新しい視点からでゼロから読み直し、マルクスの思想を21世紀に生かす」(8~9頁)と言っている。斉藤の言う「新しい視点」とはなにか。それは資本主義と地球環境危機を関連付けて論じることだという。

 マルクスは、晩年になって農業・化学学者リービッヒの著作などを熱心に研究し、資本の利潤獲得のための無政府的な生産が労働者の生活を破壊するばかりではなく、土地の豊かさを修復不可能にまで疲弊させるなど人間が生活する地球環境を悪化させることを指摘している。しかし、マルクスは、資本論1巻だけしか完成できなかったため、地球環境の破壊という問題は「資本論」には十分反映されていない、現代に生きる我々は、この問題を含めて「資本論」を学ぶ必要がある、と言うのである。

 マルクスは、「経済学批判」で原始共産制から資本主義までの歴史を総括して、歴史の発展法則として次のように書いた。「社会の物質的な生産力は、一定の発展段階に達すると、そのうちでそれが今まで動いてきた既存の生産関係、あるいは、その法的表現にすぎない所有関係と矛盾するようになる。これらの関係は、生産力の発展形態からその桎梏へと転化する。この時社会革命の時代が始まる」(全集、第13巻6頁)。

 しかし、こうした思想は晩年、マルクス自身によって放棄されたのであり、その新しい視点に立って資本論を学ばなくてはならないと言うのである。

◇唯物史観の否定

 斉藤は、マルクスは高度な生産力の発展を基礎として将来の社会=共産主義の社会を展望していたが、晩年にはこの考えを放棄したとして、こう述べている。

 「一般的なマルクスの理解によれば、生産力を発展させていくことが、歴史をより高い段階へと進めていく原動力だとされています。これを『唯物史観』と呼びます。

 ところがこのような歴史観は容易に、技術革新の進んでいる先進国が、世界で最も進歩的な地域であるという主張に結びついてしまいます。そうすると『野蛮人』を啓蒙するために資本主義による『文明化』が必要だ、という形で、植民地支配を正当化することになりかねません。『唯物史観』が人種差別の原因になってしまうわけです。事実マルクスは20世紀に入ってから、『ヨーロッパ中心主義の思想家』として繰り返し批判されました。

 しかし、マルクス自身はロシアやほかの非西欧共同体を研究する中で、そのような歴史観と決別するようになるわけです。西欧が失った平等や持続可能性をいまだに保持している共同体の可能性を高く評価するようになり、コミュニズムの基盤になると言うのです」(193頁)。

 マルクスがそのように評価したのはロシアのミールと呼ばれた農耕共同体である。そこでは、「富」が一部の人に集中したり、奪い合ったりしないように、生産規模や、個人が所有できる財産が規制されていたことを評価して、ミール共同体がそのままコミュニズムへの基礎組織となることを認めたというのである。

 斉藤がマルクスが共産主義社会を高度に発展した生産力を基礎にするという考えを変えたとする証拠として挙げているのは、ロシアのナロードニキであったザスーリッチの資本主義を飛び越えて社会主義に移行することは可能かという質問に対する返事の手紙である。

 マルクスの草稿ではこう述べている。

 「ロシアの共同体は、今なお、広大な帝国の農村生活の支配的な形態である。土地の共同所有が、それに集団的領有の自然的基礎を提供しており、またそれの歴史的環境、すなわちそれが資本主義的生産と同時的に存在しているという事情が、大規模に組織された協同労働の物質的諸条件を、すっかりできあがった形で提供している。それゆえ、それはカウディナの門(敗北したローマ兵が半裸にされ、敵兵の前で頸木の下をくぐらされた屈辱的な状態を指す)をとおることなしに資本主義制度によってつくりあげられた肯定的な諸成果を自らのなかに組み入れることによってできるのである」(全集第19巻408頁)。

 「資本主義制度によって作り上げられた肯定的な諸成果」とは高度に発展した生産力のことである。斉藤はマルクスが高度に発展した生産力をミールが「自らのなかに組み入れる」ことが出来ると述べたことを無視している。そしてマルクスがミール共同体がコミュニズムに移行できると述べたことを引き合いに出し、晩年にはマルクスは「唯物史観」を放棄したかに言うのである。

 斉藤は「唯物史観」は人種差別や植民地支配を正当化しかねないと批判する。しかし、資本の下での社会的な生産の発展(生産力の発展)は、私的生産である資本主義的生産との矛盾を深め、社会主義的生産を必然とするのである。労働者の共産主義(社会主義)運動は、資本主義の時代になって初めて現実的な運動となるのは、共産主義運動が頭の中で考えられた観念的な運動ではなくて、資本主義の矛盾の解決であるからである。

 ところが斉藤は、唯物史観を唱えたマルクスの思想は「ヨーロッパ中心」で、人種差別や植民地支配を正当しかねないなどと言う。これは科学的で革命的な思想であるマルクス主義に対する誹謗、中傷である。

◇協同組合の美化

 斉藤がマルクスのミールの評価から引き出した結論は、「持続可能性」の重視である。生産力が低くほとんどありのままの自然環境に適合した形で協同生活を営んでいるミールは斉藤の主張する「コモン」(協同体)の手本である。

 若きマルクスは生産力の発展の彼方に共産主義社会を展望してきたが、現在では生産力の発展は温暖化、廃棄物による汚染等々で地球環境を破壊している、脱経済成長の社会=持続可能性の社会を目指すべきだというのが斉藤の主張である。

 だが、温暖化や汚染などによる地球環境破壊は利潤獲得のための資本の無政府的な生産にあるのであって資本主義的生産の克服を抜きにして、環境破壊の問題の根本的な解決はありえない。斉藤は将来の共産主義社会では「能力に応じて働き、必要に応じて受けとる」ということが可能になるというが、それが実現されるのは高度な生産力がなくては不可能である。ところが斉藤は、生産力の発展はもはや限界に達した、持続的な社会を目指して生産力の発展は抑制すべきだというのであり、言っていることが全く矛盾している。

 コミュニズム運動として斉藤が提起しているのは、各々がカネを出し合って共同経営を行う協同組合運動である。協同組合運動が広がれば資本主義を掘り崩し、未来の平等、協同の社会が実現できるだろうという展望である。労働者の資本に対する階級闘争ではなく、資本の支配の隙間に存在するような協同組合運動を美化する斎藤の主張こそ、インテリの無責任さを暴露している。 (T)


【二面サブ】

政府・自民に高まる武器輸出
拡大の声

ウクライナ、台湾危機を口実に 

 政府、自民党内で、武器輸出規制緩和の声が高まっている。

 2月の衆院予算委員会では自民党の熊田裕通議員は武器輸出について、「不法な侵略を受けるウクライナの防衛目的でも、現行では殺傷力のある装備品を移転(輸出)ができない。殺傷性ではなく、安保上、日本と関係を深めていく国か(どうか)で考えては」と発言、政府に武器輸出規制を緩和するように迫った。

 また3月の参院予算委員会で、佐藤正久議員も「台湾有事、日本有事で日本は兵器や弾薬を他の国に求めないと全然たりない」「ほかの国の危機のときは(兵器や弾薬を)あげず自分が危機のときはくれ、というのは通じるか」と訴え、陸上自衛隊が29年までに利用をやめる多連装ロケットシステム(MLRS)をウクライナに提供するよう提案した。

 武器輸出に関して安倍政権は2014年、それまでの全面禁輸を見直して「防衛装備移転三原則」として国際平和への貢献や日本の安全保障に資する場合には、紛争当事国などを除いて輸出が出来るようにした。しかし、運用指針で、共同開発・生産国を除き、戦車や戦闘機などの武器の輸出は認めてこなかった。

 このためウクライナからの支援の要請に対して、欧米諸国が戦車やミサイルなどの武器を送ったのに対して、日本は防弾チョッキ等の支援にとどまったことに対して、熊田や佐藤は武器輸出が出来るようにすべきだというのである。

 これに対して、岸田は「国際法に違反する侵略を受けた国への支援などのために重要な政策的な手段となる」と述べ、「防衛装備移転三原則」と運用指針の改定については「結論を出していかなければならない」と答弁している。

 この答弁は昨年末に決定された「国家安全保障戦略」に謳われていることをなぞったものである。「国家安全保障戦略」は次のように述べている。

 「防衛装備品の海外への移転は、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、力による一方的な現状変更を抑止して、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略や武力の行使又は武力による威嚇を受けている国への支援等のための重要な政策的な手段となる。こうした観点から、安全保障上意義が高い防衛装備移転や国際共同開発を幅広い分野で円滑に行うため、防衛装備移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しについて検討する」、と。

 「国家安全保障戦略」は、ロシアのウクライナ侵攻や台湾をめぐる米・中緊張の激化を口実に、戦後「国是」としてきた「専守防衛」を投げ捨て、軍事費の2倍化、「敵基地攻撃」容認へと軍備増強、自衛隊の攻撃的軍隊化へと大転換を謳ったが、それと歩調を合わせて、日本が武器輸出国家となることを謳っているのである。

 「国家安全保障戦略」は武器輸出を「我が国にとって望ましい安全保障環境の創出」のための「重要な政策的な手段となる」と述べている。政府自民党は米国と一緒になって「専制主義」から「自由・民主主義」の国際秩序を守るとして、中国やロシアに対抗してきた。そして東アジアでは、国家資本主義大国の中国に対抗して日・米・豪・印による軍事協力をはじめ、フィリピン、インドネシア、ベトナム等々東アジア諸国との軍事的な協力体制の構築を追求してきた。「望ましい安全保障環境」とは、日本や米国のような〝自由主義的〟帝国主義の支配する国際秩序のことである。

 アジアには日本からの多くの資本が進出しているが、これ等の国々への武器輸出は政治的・軍事的に日本との関係を強める手段でもある。

 また、武器輸出の解禁は、日本の軍需産業の利害が反映している。昨年11月に公表された有識者会議の報告書は、「政府だけが買手である構造から脱却し、海外に市場を広げ、国内企業が成長産業としての防衛部門に積極的に投資する環境を作ることが必要」と指摘している。

 自衛隊の攻撃的な軍隊への転換と武器輸出の解禁は一体のものであり、日本資本主義の反動化の深化と退廃を示している。 (G)

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