WPLLトップページ E-メール


労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

◆第2第4日曜日発行/A3版2ページ
一部50円(税込み54円)

定期購読料(送料込み)25号分
  開封 2000円
  密封 2500円

ご希望の方には、見本紙を1ヶ月間無料送付いたします。

◆電子版(テキストファイル)
メールに添付して送付します

定期購読料1年分
 電子版のみ 300円

A3版とのセット購読
  開封 2200円
  密封 2700円

●お申し込みは、全国社研社または各支部・党員まで。
E-メールでのお申し込みもできます。



郵政民営化の中で何が起きているのか?
郵政労働者は告発する!

■民営化の嵐の中で最大の御用組合の登場――JPU臨時全国大会議案批判
■郵政民営化――今、職場では/郵政現場からの報告
■恐竜化か、リリパット化か――郵政民営化のジレンマ
■西川善文著『挑戦――日本郵政が目指すもの』/民営化に賭けるトップの本音


憲法改悪と
いかに闘うか?


■改憲に執念燃やす安倍――「国民の自主憲法」幻想を打ち破れ
■労働者は改憲策動といかに闘うか
■国民投票法をどう考えるか
■安倍の「美しい国」幻想――憲法改定にかける野望


本書は何よりも論戦の書であり、その刊行は日和見主義との闘いの一環である。
マルクスが『資本論』で書いていることの本当の意味と内容を知り、その理解を深めるうえでも、さらに『資本論』の解釈をめぐるいくつかの係争問題を解決するうえでも助けとなるだろう。


全国社研社刊、B6判271頁
定価2千円+税・送料290円
●お申し込みは、全国社研社
または各支部・会員まで。
E-メールでのお申し込みもできます。
「不破哲三の“唯物史観”と『資本論』曲解』(林 紘義著)」紹介


全国社研社刊、B6判384頁
定価2千円+税・送料290円
●お申し込みは、全国社研社
または各支部・会員まで。
E-メールでのお申し込みもできます。
「天皇制を根底的に論じる『女帝もいらない 天皇制の廃絶を』(林 紘義著)」(『海つばめ』第989号)他

理論誌『プロメテウス』第54号
2010年10月(定価800円)

《特集》菅民主党のイデオロギーと“体質”
・神野直彦の思想と理論――菅直人のブレインは「曲学阿世の徒」
・原則なき寄せ集め政党――顕現するブルジョア的“体質”
反動的な「文化」の擁護に帰着――レヴィ=ストロースの「文化相対主義」批判


 
 
 教育のこれから
   「ゆとり」から「競争」
   そして「愛国教育」で
   いいのか
 林紘義 著 7月1日発売

  (全国社研社刊、定価2千円+税)
  お申し込みは、全国社研社
  または各支部・会員まで。
  メールでの申し込みも可能です。

まかり通る「偏向教育」、「つくる会」の策動、教育基本法改悪の動きの中で、“教育”とは何であり、いかに行われるべきかを、問いかける。  


 第一章  
教育基本法改悪案の出発点、
森の「教育改革策動」
 第二章  
破綻する「ゆとり」教育の幻想
 第三章  
“朝令暮改”の文科省、
「ゆとり」から「競争原理」へ
 第四章  
ペテンの検定制度と「つくる会」の教科書
 第五章  
歴史的評価なく詭弁とすりかえ
つくる会教科書(06年)の具体的検証
 第六章  
日の丸・君が代の強制と
石原都政の悪行の数々
 第七章  
憲法改悪の“露払い”、教基法改悪策動

●1458号 2023年9月10日
【一面トップ】 日中の帝国主義的対立
        ――〝汚染水〟をめぐる日中対立の本質
【一面サブ】  「野党第1党」から「第2与党」へ
         ――政権への接近狙う権力主義の維新
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 その場しのぎのバラ撒き策
        ――岸田政権、ガソリン補助金を継続
【二面サブ】  影響力の拡大図るBRICS
        ――欧米の支配に対抗と共存が見え隠れ
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

日中の帝国主義的対立

〝汚染水〟をめぐる日中対立の本質

〝汚染水〟の海洋放出が開始されて2週間が経過した。中国は直ちに日本産水産物の全面的禁輸を発表し、日本は〝科学的根拠〟に基づかいない措置だと抗議し、中国からの抗議電話が日本に殺到し、日本では「非科学的な狂乱」や「科学的根拠もなく理不尽な『反日カード』を切ってくるなら、対抗措置をとれ」と言う〝反中国〟キャンペーンが高まっている。海洋放出をめぐる対立は日中の帝国主義的対立の反映である。

◇〝禁輸〟と〝科学的根拠〟で対峙する日中

 東電・岸田の〝科学的根拠〟は信じるに足りるものなのか?(海つばめ1457号、HP「巻頭言」を参照)彼らはIAEAがALPSによって処理された〝処理水〟は基準値を満たし安全と報告している。中国の「IAEAのモニタリングの枠組みには他の国や国際機構は現地参加しておらず、国際モニタリングとは言えず、透明性を欠く」という批判には、モニタリングには米、仏、韓の分析機関も参加している、と答え、「公表しているモニタリング方法とデータだけで、福島核汚染水の海洋放出は安全で無害だというのは科学的根拠がなく、人々を納得させるのは難しい」という批判には、レビューに中国の専門家も参加している等々。中国大使館がHP上で公開した批判に対して、外務省は反論する声明を1日に出した。

 外務省の反論が〝科学的根拠〟を裏付けるものになっているのか、中国側の指摘する問題に対する回答になっているか疑問だが、「岸田政権は中国政府の不当さを一層明確に批判し、世界貿易機関(WTO)への提訴に踏み切るべきだ」(9/2産経)と、水産物禁輸をめぐる対立をWTOの場で争うように産経は焚きつけている。しかし、WTOで敗訴すれば中国の〝禁輸〟は正当となり、〝科学的根拠〟を振り回した東電・岸田は一層追い詰められる。彼らが提訴に踏みきれない理由である(13年に禁輸された韓国を日本はWTOに提訴し、18年には韓国に是正を求めた。しかし、19年にWTOはこの判断を覆し破棄した)。

◇日中が相互に応酬する貿易規制

 海洋放出をめぐる対立がWTOの場に移ろうとも、対立の背景、本質が日中の帝国主義的な対立にあることに変わりはない。日中の帝国主義的対立の〝今〟を見てみよう。

 中国の経済規模が日本を抜き去ったのは2010年である。その後も中国の経済発展は日本を大きく上回り、22年のGDPは17兆9579億㌦、日本は4兆㌦(1㌦=140円)。中国の2022年輸出額は 3兆5936億㌦、輸入額は2兆7160億ドルで、貿易額は世界1位。日本の輸出は99兆2千億円、輸入は120兆9550億円だった。中国は日本の最大の貿易相手国で、総額43兆8千億円、輸出の19・4%、輸入の21%を占める。資本の直接投資は、日本から中国への直接投資は、22年は1兆9百億円(92億ドル)で第三位の投資先国であり、日系企業の海外拠点数は中国が一位で3万1千拠点となっている。

 日中2国間の経済的相互依存関係は強固に見えるが、米国バイデン政権が進める最先端産業のデカップリング(切り離し)政策に日本も共同歩調をとり、7月23日からAIやスパコンに必須な先端半導体と製造装置など23品目の輸出規制を開始した。中国はそれに対抗して8月1日から半導体素材であるレアメタルの一部原料の輸出規制を発表した。今回の水産物禁輸も日中が相互に応酬しあう輸出入規制の一環に他ならない。

 日中の海外直接投資を2010年から20年までの10年間を見ると、日本が1兆6千2百万㌦、中国は1兆4千万㌦である。22年の海外直接投資額は1465億㌦。日本は1756億㌦。日中共に帝国主義国家の富の源泉である直接投資を増大させ海外労働者を搾取し、本国に資本の〝果実〟をもたらしている。日本は最大の純債権国であり、22年には228・6兆円の直接投資からの収益は50兆円にもなった。20年中国の第1次所得収支は、1052億㌦の赤字となっている。すなわち中国は海外投資で得る収益(2244億㌦)よりも支払い(3315億㌦)が多いということである。

 習近平が「中国製造2025」を2015年に発表し、産業構造の高度化を謳ったのは、中国の国際収支の構造を帝国主義国家にふさわしい第一次所得収支の大幅な黒字化を目指しての事でもある。

◇中国に反発するASEAN、中国に対抗する日本

 中国の帝国主義的拡張は海外直接投資に限定されるものではなく、日米が主導する「アジア開発銀行」(1966年発足)に対抗して中国が15年に発足させた「アジアインフラ投資銀行」によるものもある。13年に提唱した「一帯一路」は21年には140ヵ国に拡大した。

 「一帯一路」は中国の帝国主義的進出を相手国との対等な契約と装い、中国の利益を貫くことであり、返済が困難になれば〝債務の罠〟に絡めとることである。

 帝国主義的拡張は軍事力無くしては〝絵空事〟でしかない。5日から開催されたASEAN首脳会議において「中国が8月下旬に公表した最新版『標準地図』には一方的な領有権主張を示す点線が描かれ、ベトナムやフィリピン、マレーシアなど周辺国の猛反発を招いた」(9/5日経)ように、南シナ海を中国の「内海」として、中国は軍事基地を相次いで建設している。

 日中の帝国主義的対立を象徴するのが、台湾をめぐる対立である。昨年の中国共産党大会において台湾の〝武力統一〟の方針は否定されず、中国の台湾に対する軍事圧力に対して自民党麻生は「いまほど日本、台湾、アメリカなどに、抑止力の覚悟が求められている時代はない。戦う覚悟だ」(8/8台湾講演)と、中国を〝牽制〟した。中国は、武力行使の対象として「外部勢力からの干渉」も明記した。日本もまた、軍事力の沖縄方面へのシフトを進め、射程3千キロのミサイル量産も含む24年度軍事費の要求額は7兆7千億円! これらが、日中の帝国主義的対立の〝今〟であり、海洋放出をめぐる対立の本質である。

 「経済大国である中国は各国に経済的威圧を繰り返している。そのような暴挙を押しとどめる責務が日本にはある。日本が立ち向かわないようでは、米国以外の国々が中国に対抗することは難しくなる」(9/2産経)という。しかし、日本の労働者は中国との〝対抗〟に与することなく、中国の労働者も〝労働の解放〟を闘いとる仲間として〝連帯〟し、排外主義に反対する。共に闘おう! (古)


【1面サブ】

「野党第1党」から「第2与党」へ

政権への接近狙う権力主義の維新

 維新代表の馬場が立憲や共産について、「日本には必要ない政党」とか「日本からなくなったらいい政党」などと〝口撃〟を強めている。維新の狙いは〝発信力〟(マスコミやSNSなどでの〝拡散〟など)を強化して、「自公」の〝保守〟と「民主・共産」の〝革新〟との党派闘争に幻滅しているプチブル的な階層(階級意識の低い労働者層も)を取り込み、党勢拡大への思惑がある。

 維新は次期衆院選で「野党第1党を目指す」という方針を掲げているが、馬場は先月6日のラジオ番組では、自公との連立政権の可能性を問われて、「二つの政党で政権を維持できない状況になった場合、交渉のやり方とか、いろいろ考える余地が出てくる」と発言した。馬場の発言には維新内からも「党の存在意義(野党としての?…筆者)が問われる」と批判的な声もある(8/9北海道新聞)というが、維新の権力志向を象徴している(自民の国防族より熱心に、「核共有」や「敵基地攻撃能力保持」を叫んでいたことを想起せよ)。資本の支配維持のための「反共」であり、軍国主義の強化である。

 彼らが目指している「大改革」は、行き詰った資本主義を労働者の犠牲で維持していこうというものであり、ベーシックインカムなどポピュリズム政治は資本の支配強化、格差温存でしかない。

 そうした維新の反動的な姿勢は、維新改憲案の中に「緊急事態条項」を入れて、スローな自公の改憲ペースを尻押し、立憲などの改憲に消極的な動きを強く非難していることにも見ることができる。

 「緊急事態条項」に関する維新の改憲案では、「基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない」(第96条の6)としているが、この基本的人権について、「人権制限の限界の明記に関する改正」を維新は特に提起している。

 そこでは「思想及び良心の自由」において、「内心の自由の侵害は、絶対にこれを禁ずる」(第19条)ということを現行憲法に書き加えるというのだ。わざわざ「内心の自由」だけを強調する腹黒いやり方である。「隠すより現るは無し」であり、思想・良心の自由は「内心の自由」に押し込められ、政治的自由を制限しようという狙いは明白である。独裁政治を正当化するものであり、労働者の闘いを抑圧するファシズム的な意図が透けて見えるのである。

 維新は与党の尻押しをしているが、総選挙を控える中で、激烈な党派闘争を勝ち抜かなければならず、選挙に向けて公明への対抗を露わにしている。マスコミの支持率調査では立憲を抜いて第1野党だが、相次ぐ維新の不祥事、入管で殺されたウィシュマさんを「嘘をついていた」と騒ぎ立てた国会議員がいたり、パワハラやセクハラ事件など、腐敗している権力主義的な維新の本性が暴露され、健全な労働者の反発が広がっている。

 「これまでの社会システムをリセット」とか言っても、維新には「これまでの社会システム」への労働者的・根底的な批判は全く無い。無いばかりか、根底的な闘いへの、労働者の団結の広がりに恐怖し敵対心を持つのだ。

 ブルジョア的な秩序の欺瞞性、階級対立の現実の中で、維新はひたすら強制力を追い求めている。

 独善的なファッショ的な政治を推し進める維新との闘いも労働者の重要な課題であることをしっかり確認しよう。 (岩)


   

【飛耳長目】

★米国の社会保障番号は、ニューディール政策の一環として失業保険や年金制度のために創設された。戸籍制度のない米国では個人識別番号であり、社会保障に加え所得と資産、銀行口座と紐づけた納税者番号である★韓国の住民登録番号は、1968年の北朝鮮工作員による大統領殺害未遂事件を契機に18歳以上の国民に付与され、社会保障と納税、銀行口座など資産情報が一元管理されている★ソ連邦崩壊後、IT大国となったウクライナは、スマホと結んだ「電子政府」を構築していた。戦火にあっても国内外避難民の把握、年金・支援金の給付、空襲警報、露軍の情報とデマ宣伝に対抗するニュースも配信している★日本のマイナンバーは、1980年代の銀行・証券口座と納税を一元管理する納税者番号導入に始まるが、金融機関、資産家や個人情報を絶対化するプチブルの反対で撤回された。結局、住民基本台帳ネットワークをベースに健康保険情報などを手作業(!)で入力、トラブル続出となった★マイナンバーはたった一つの銀行口座と紐づいただけで、資産家や高額所得者の資産隠蔽と税逃れは放置されたままだ。こうした資産情報管理を、共産党はプライバシー権の侵害だと主張する。源泉徴収で全収入が丸裸の労働者は、露骨なプチブル追随に反対する。 (Y)


【2面トップ】

その場しのぎのバラ撒き策

岸田政権、ガソリン補助金を継続

 ガソリン価格の上昇が止まらない。8月30日、店頭のガソリン価格は15年ぶりに最高値を更新、1リットル当たり186・5円を記録した。政府・与党は、価格上昇を抑えるために9月末に終了予定であった補助金支給を年末まで延長することを決めた。だが、これはガソリン元売り業者に補助金を支給し、販売価格の上昇を抑えようとするためであって、問題の解決ではなく、その場しのぎのバラ撒きでしかない。

◇価格の4、5割は税金

 日本のガソリン価格は外国に比べて高いと言われているが、その4、5割は税金である。

 本来のガソリン税は、1リットル当たり28・7円。それに25・1円の暫定税率を加えた53・8円、これに加えて、石油税(2・8円)─地方公共団体への譲渡分─が加わる。そしてさらに消費税(10%)が加算されることになっている。

 つまり、ガソリンスタンドで表示される価格は、ガソリン本体の価格にガソリン税及び暫定税率の税、石油税を合計した金額に10%の消費税を加えた額となる。従って、ガソリンスタンドで表示されているガソリン価格は税の塊ともいえる。

 暫定税率とは、1973年~77年の道路整備5カ年計画の財源不足を賄うために1974年に導入された。

 ガソリン税は当初は、道路整備のための財源とされたが、2008年には一般財源となった。だが暫定税率は、2010年の税改正によって、当分の間、特例税率として残り、ガソリン1リットル当たり58・3円が維持されることになった。当初「当分の間」とされた暫定税率は、現在にいたるまで継続されているのである。

 消費税はガソリン本体にかかるだけでなく、ガソリン税(本体および上乗せ分)に対しても、消費者が負担することになっている。ガソリンの購入者がガソリン税を負担して、さらにそのガソリン税に対しても消費税を負担するのは、不条理な「2重課税」以外のなにものでもない。

 ちなみに185・6円のガソリン価格は、ガソリン本体は114・9円で、このほかガソリン税(本則)28・7円、ガソリン税(暫定税率)25・1円、消費税16・9円となる(石油税分は除く)。

◇原油価格の高騰と円安

 ガソリンの販売価格を引き上げているのは、重い税負担ばかりではない。石油産出国の原油減産での引上げ策による原油価格の高騰と円安の要因も大きい。

 「日本エネルギー経済研究所柳沢明研究主幹の試算によると、補助金の影響を加味した22年初のガソリン価格の上げ幅(1リットル19円)のうち、円安が押し上げに影響したのは16円分となった。ドル建て原油価格による押し上げ分の11円を上回り、全体への寄与率は84%に達した」(「日経」8・31)。

◇無責任な人気とりのためのバラ撒き

 ガソリン補助策は10月には終了する予定だったが、1リットル当たりのガソリン価格は、過去最高を記録した2008年8月の185・1円に迫った。

 8月29日の自民党本部で物価対策について開かれた会合では、「(レギュラーガソリン1リットル当たり)180円未満になるのが一つの目安だ」「とにかく、早く、途切れなく目に見えるよう」、「160円台にまで下げる必要がある」との価格引き下げのための補助金支給の継続・拡充の大合唱だったという(「朝日」8・30)。

 自民党の補助金支給継続の提言を受けて岸田政権は、9月以降の補助金拡充の方針を決定した。

 現在では、レギュラーガソリン1リットル当たりの小売価格を170円台に抑えるために、2段階の補助率を適用し、基準価格の168円を超えた分には30%を、193円を超えた分にはさらに高い85%をそれぞれ支給することになっている。

 新たな措置では、168円を上回った分はこれまでと同じ30%だが、185円を超えた分については全額補助することを検討しているという。これによって、小売価格は180円未満に抑えられる予定だという。

 岸田政権が自民党の提言を丸呑みし、補助金支給の継続・拡充を決めたのは、低下する内閣支持率を食い止めるためである。岸田政権の8月の支持率は33%(7月は37%)で3カ月連続の低下。自民党の支持率も28%で3カ月連続の20%台だ。物価上昇が政府、与党への反発を引き起こしている一因だとして、政府・自民党はガソリン価格抑制のために補助金支給継続を決めたのである。

 ガソリン価格の上昇を抑制すると言っても、政府が決めた価格水準を超えた額を政府が小売業者に補助するだけであって、ガソリン価格が抑制されるわけではない。補助金の原資は税金であり、いずれもその負担は、国民の負担として降りかかってくる。政府、自民党は低下した支持率を挽回するために、目先の利益で国民を篭絡し、人気とり政策としてカネをバラ撒いているのである。22年1月に始まった価格補助政策は、6・2兆円の巨額にのぼっている。

 この政策がバラ撒きであるのは、生活に困っていない金持ち連中も〝安い〟ガソリンの〝恩恵〟にあずかるからである。高いガソリンに困っているのは、自動車が移動の手段となっている過疎地の人々を始め、都市においても自動車を日常的に仕事の手段としている労働者、働く人々である。

 これらの人々と、レジャーなどのために自家用車を乗り回している金持ち連中と同一に扱うべきではない。支援を必要としているのはガソリン価格高騰で生活を脅かされている働く人々である。

 補助金による価格上昇を「抑制」したとしても、それはカネのバラ撒きによる一時的な現状糊塗策でしかなく、税金を使って石油元売り業者を助けるだけで、地球温暖化を防ぐための化石燃料の削減など将来に向けて問題が解決されるという見通しは全くない。

 政府は先のことなど一顧だにすることなく、政権維持のために国家のカネをバラ撒いている。これこそ国家権力の立場を利用した財政の私物化、犯罪行為である。労働者は党利党略のガソリン価格補助政策に反対し、岸田政権と闘っていかなくてはならない。 (T)


【二面サブ】

影響力の拡大図るBRICS

欧米の支配に対抗と共存が見え隠れ

 8月22~24日、南アフリカでBRICS首脳会議が開かれた。今回の会議で、新たに6カ国が加盟することが決まり、BRICSの影響力はさらに拡大されるかのようだ。BRICSの動きを探ってみることにする。

◇BRICSとは?

 BRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)が設立され、ロシアで初会議が開催されたのは2009年である。その後、11年に南アフリカが参加してBRICSとなり、政治・経済・文化などをテーマに首脳会議や専門会議が開催されてきた。

 BRICSは条約や本部を持たず、政治や統治体制の違いを重視せず、相互の経済発展のために具体的な懸案を話し合う場として機能してきたと言われる。

 しかし、新興国の仲間意識や協同のためにBRICSが設立されたわけではない。BRICSの各首脳は先進国に強い不満を抱き、対抗する力を得ようとしてきた。BRICS設立前の04年1月、インドを訪問したブラジル大統領・ルーラの言葉がそれを象徴していた。

 ルーラは「21世紀は、長年巨大通商ブロック(先進国)から二等国扱いされてきたインド、ロシア、ブラジル、中国など発展途上国のものになろう」、「泣いていても先進国は助けてくれない。自らの力で我々の状況を変えなくてはならない」と強調し、ブラジルが参加している「南米南部共同市場」とインドとの間で「特恵関税協定」(原則関税ゼロ)を結んだのである。これを契機に04年3月、ブラジル、インド、南アフリカの3カ国はグループ結成に向けて合意し、これがBRICSの出発点になった。

 BRICSの中で次第に発言力を増していったのは中国である。「世界の工場」に発展した中国と他の諸国との間で経済力の差が開いてきたことから、不均衡や対立が目立つようになった。例えば、インドでは対中国の貿易収支が大幅な赤字であり、国境軍事衝突に絡んで中国製品排斥運動が発生し、政府は中国に対する輸入関税強化や通信機器の使用禁止などを度々発動してきた程である。

 こうした内部の対立を抱えながらもBRICS諸国が連携してきたのは、先進国から市場開放の圧力に対抗した各国の保護主義を相互に容認してきたからであり、5カ国がそれぞれ特徴ある資源大国で、鉄鉱石・原油・ウラン・金などを相互に融通し合える関係にあったからである。さらに、ドル通貨体制の矛盾のしわよせ(米国の金利引上げ時に自国通貨が暴落など)を受ける立場にあり、これを防御する協力関係を構築したいという共通の思惑もあったからである。

◇新たに6カ国が加盟

 8月末に行われたBRICS首脳会議は、新たに6カ国――アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦――の加盟を承認。議長国・南アフリカのラマポーザ大統領は、6カ国の具体的な加盟基準や手続きについて言及しなかったが、24年1月初めより正式な加盟国になると発表。

 当初、マスコミによってインドやブラジルは加盟国拡大に反対しているかに報道されたが、インド首相・モディは23日の本会議で、「インドが議長国を務めた2016年にBRICSを迅速かつ包括的な集団的解決策を構築するグループと定義した」と述べ、その上で、「加盟国拡大を支持する」と発言。12年ぶりに再就任したブラジル大統領・ルーラも「新加盟国を含めるとBRICSのGDPは世界の37%、世界人口では46%まで増えると述べ、新規加盟を歓迎した」と述べている。

 ルーラが20数カ国の加盟申請がある中で「地政学的な重要性」を加盟の条件にしたと発言したように、欧米と核開発で対立しロシアに武器を提供するイランや米国とぎくしゃくしている間隙をついて中国が接近したサウジアラビアの加盟は、とりわけ米国に対する明確なメッセージとなっている。つまり、当初のBRICSの結成の目的――先進国からの圧力に協同して立ち向かう――に沿ったものになった。

◇共通通貨創設を提案

 今回のBRICS首脳会議の議題に、ロシアのプーチン(オンラインで参加)は金本位に基づく共通通貨の創設を提案したようだ(REUTERS、23・8)。

 ロシアは世界一の金保有国であり、この共通通貨制によって世界のドル通貨体制に楔を打つことができるなら、ロシアにとって一挙両得だとプーチンは幻想を抱いているようだ。

 もちろん、通貨として流通する貨幣は、私的労働の生産物である商品交換が持つ矛盾の中から生まれ、次第に貨幣は貴金属に付着していったが、世界貿易では金が常に貨幣であった。だから、貨幣とは元来金であり、国内で貨幣の章標として鋳貨や紙幣が頻繁に発行されていても、世界貿易では金が貨幣として通用してきたのである(資本主義でも)。

 だが、世界資本主義の急速な発展に伴い各国が保有する金は不足し、かつ、資本主義特有の不況や恐慌、さらには世界戦争が繰り返され、世界の頭目たちは資本主義を延命するために金本位制を相対化して行き、ついに金との兌換を廃止し、世界一の経済大国であった米国のドル(信用貨幣)を世界の通貨にせざるを得なかった――だがこれは一時的な延命策に過ぎなかったことを、将来、皆が知ることになろう。

 しかし、基軸通貨国である米国がドルを撒き散らしたあげく、金利引上げ策などの金融政策によって、中・後進国は常に自国通貨の暴落の憂き目にあい、輸入物価や国内物価が高騰し社会不安が発生するなど、ドル支配の弊害をもろに受けてきた。

 こうしたドル支配によるしわ寄せを受ける中・後進国を代表して、BRICSが金と兌換する共通通貨を発行して上手くやれば、BRICSに加盟する諸国が増え、欧米の支配に対抗する大きな勢力を作れるかにプーチンは考えるのである。

 これに賛成するのがブラジルのルーラであるが、習近平はむしろ「元の国際化」を願い実行しており、そのために「アジア・インフラ投資銀行」を15年に発足させ、その後に「BRICS開発銀行」を設立したのである。

 インドは中国との国境紛争を抱え、中国の海洋進出が強まることに警戒し、最近、米国に接近し始めているが、経済界は中国との関係を断ち切ることは得策でないと考えている。

 こうして、BRICSは対立を抱えながらも協同して欧米と対峙し、また共存を図っていくであろうが、労働者はBRICSの動きを「多国間主義」(共産党)として美化することはできない。 (W)